霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二九章 千秋楽(せんしうらく)〔四九六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第11巻 霊主体従 戌の巻 篇:第5篇 乾坤清明 よみ(新仮名遣い):けんこんせいめい
章:第29章 千秋楽 よみ(新仮名遣い):せんしゅうらく 通し章番号:496
口述日:1922(大正11)年03月04日(旧02月06日) 口述場所: 筆録者:松村仙造 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年9月10日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
石凝姥神は、これまでの旅路を歌に歌い、めでたい結末に終わった結婚式への祝歌を歌った。
鉄谷村の時公は、時置師神の化身であった(後の杢助)。時置師神は、立って祝いの歌を歌った。歌も踊りも滑稽な様に、一同は笑い転げた。
続いて秋月姫、深雪姫、橘姫も再度祝歌を歌った。
時公は八公、鴨公にも歌を所望した。八公、鴨公は滑稽な祝歌を歌って場をにぎわした。コーカス山の婚礼は、ここにめでたく千秋楽を迎えることになった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-08-11 19:59:28 文字数:6427 OBC :rm1129
愛善世界社版:275頁 八幡書店版:第2輯 611頁 修補版: 校定版:282頁 普及版:115頁 初版: ページ備考:
001 顕国玉(うつしくにたま)の宮(みや)の祭典(さいてん)は、002恙(つつが)なく神霊(しんれい)鎮座(ちんざ)せられ、003次(つい)で男女(だんぢよ)三組(みくみ)の結婚式(けつこんしき)は行(おこな)はれた。004石凝姥(いしこりどめの)神(かみ)は此(この)祭典(さいてん)慶事(けいじ)を祝(しゆく)すべく立(た)つて歌(うた)ひ始(はじ)めたり。
005石凝姥(いしこりどめの)神(かみ)『東雲(しののめ)の空(そら)別(わけ)昇(のぼ)る朝日子(あさひこ)の
006光(ひかり)眩(まば)ゆき神(かみ)の道(みち)
007西(にし)北(きた)南(みなみ)東彦(あづまひこ)
008石凝姥(いしこりどめ)の宣伝使(せんでんし)
009黄金山(わうごんざん)を立出(たちい)でて
010栗毛(くりげ)の駒(こま)にウチの河(かは)
011鞭(むちう)ち渡(わた)る膝栗毛(ひざくりげ)
012クス野ケ原(のがはら)や明志湖(あかしうみ)
013雪(ゆき)積(つ)む野辺(のべ)を踏(ふ)みさくみ
014言霊(ことたま)清(きよ)き琵琶(びは)の湖(うみ)
015渡(わた)りて此処(ここ)に梅ケ香(うめがか)の
016姫(ひめ)の命(みこと)や説明可笑(ときをかし)
017神(かみ)の命(みこと)と諸共(もろとも)に
018雲(くも)に抜(ぬ)き出(で)たコーカスの
019山(やま)の砦(とりで)に来(き)て見(み)れば
020大気津(おほげつ)姫(ひめ)と現(あ)れませる
021喰物(をしもの)着物(きもの)住(す)む家(いへ)に
022奢(おご)り極(きは)めし此(この)深山(みやま)
023ウラルの姫(ひめ)に服従(まつろ)ひし
024百(もも)の八王(やつこす)ヒツコスや
025酒(くす)の神(かみ)まで寄(よ)り集(つど)ひ
026顕(うつし)の国(くに)の宮(みや)の前(まへ)
027三柱神(みはしらがみ)を斎(いは)ひつつ
028饗宴(うたげ)の酒(さけ)に酔痴(ゑひし)れて
029節(ふし)も乱(みだ)れし酒歌(さかうた)を
030唄(うた)ひ狂(くる)へる折柄(をりから)に
031松竹梅(まつたけうめ)の宣伝使(せんでんし)
032天之(あめの)児屋根(こやね)や太玉(ふとたま)の
033神(かみ)の命(みこと)を始(はじ)めとし
034月(つき)雪(ゆき)花(はな)や目一箇(まひとつ)の
035神(かみ)諸共(もろとも)に宮(みや)の前(まへ)
036来(きた)りて詔(の)れる言霊(ことたま)に
037ウラルの姫(ひめ)は雲(くも)霞(かすみ)
038後(あと)を暗(くら)ましアーメニヤ
039大空(おほぞら)高(たか)く逃(に)げて行(ゆ)く
040此処(ここ)に再(ふたた)び大宮(おほみや)の
041庭(には)を清(きよ)めて厳(おごそ)かに
042三柱神(みはしらがみ)の祭典(まつりごと)
043仕(つか)へ奉(まつ)りて太祝詞(ふとのりと)
044称(たた)へ奉(まつ)りて頼母(たのも)しく
045直会(なほらひ)神酒(みき)に村肝(むらきも)の
046心(こころ)を洗(あら)ひ清(きよ)めつつ
047歓(よろこ)び尽(つく)す折柄(をりから)に
048神(かむ)素盞嗚(すさのを)の大神(おほかみ)の
049許(ゆる)しの儘(まま)に松竹(まつたけ)の
050姫(ひめ)の命(みこと)の御(おん)慶事(けいじ)
051天之(あめの)児屋根(こやね)や太玉(ふとたま)や
052天之(あめの)目一箇(まひとつ)神司(かむづかさ)
053永遠(とは)に結(むす)びし妹(いも)と背(せ)の
054珍(うづ)の御儀式(みのり)ぞ畏(かしこ)けれ
055アヽ三夫婦(みめをと)の神(かみ)達(たち)よ
056神(かみ)の恵(めぐ)みをコーカスの
057山(やま)より高(たか)く琵琶(びは)明志(あかし)
058湖(うみ)の底(そこ)より猶(なほ)深(ふか)く
059授(さづ)かりまして幾千代(いくちよ)も
060色(いろ)は褪(あ)せざれ万代(よろづよ)も
061色(いろ)はさめざれ押並(おしな)べて
062五六七(みろく)の御代(みよ)の楽(たの)しさを
063三夫婦(みめをと)共(とも)に松代姫(まつよひめ)
064心(こころ)も開(ひら)く梅ケ香(うめがか)の
065姫(ひめ)の命(みこと)や世(よ)に猛(たけ)き
066曲(まが)言向(ことむ)けし竹野姫(たけのひめ)
067北光(きたてる)神(かみ)や高彦(たかひこ)の
068神(かみ)の御稜威(みいづ)を天(あめ)が下(した)
069四方(よも)に広道別(ひろみちわけ)の神(かみ)
070此(この)世(よ)を包(つつ)む烏羽玉(うばたま)の
071雲霧(くもきり)四方(よも)に掻分(かきわ)けて
072神(かみ)の教(をしへ)を中津国(なかつくに)
073海(うみ)の内外(うちと)に弘(ひろ)めかし
074神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて
075須弥仙(しゆみせん)山(ざん)に腰(こし)を掛(か)け
076此(この)世(よ)を守(まも)り給(たま)ふごと
077心(こころ)の駒(こま)の手綱(たづな)執(と)り
078神(かみ)の御教(みのり)を過(あやま)たず
079安(やす)の河原(かはら)の永久(とこしへ)に
080流(なが)れて清(きよ)き玉(たま)の湖(うみ)
081海(うみ)より深(ふか)き父母(たらちね)の
082恵(めぐ)みに勝(まさ)る神(かみ)の恩(おん)
083山(やま)より高(たか)き神(かみ)の稜威(いづ)
084コーカス山(ざん)はまだ愚(おろか)
085天教(てんけう)地教(ちけう)の山(やま)よりも
086功績(いさを)を高(たか)く現(あら)はして
087神(かみ)の御国(みくに)の太柱(ふとばしら)
088千木高(ちぎたか)知(し)りて仕(つか)へませ
089日(ひ)は照(て)る光(ひか)る月(つき)は盈(み)つ
090みづの身魂(みたま)の三巴(みつどもゑ)
091甍(いらか)も清(きよ)く照(て)る如(ごと)く
092遠(とほ)き近(ちか)きの国原(くにばら)を
093救(すく)うて通(とほ)れ汝(な)が命(みこと)
094我(わ)れは石凝姥(いしこりどめ)の神(かみ)
095堅磐(かきは)常盤(ときは)に村肝(むらきも)の
096心(こころ)固(かた)めて皇神(すめかみ)の
097御稜威(みいづ)を広(ひろ)く増鏡(ますかがみ)
098鏡(かがみ)の面(おも)を見(み)はるかし
099三人(みたり)夫婦(めをと)の行末(ゆくすゑ)を
100守(まも)らせ給(たま)へ百(もも)の神(かみ)
101心(こころ)尽(つく)しの有丈(ありたけ)を
102傾(かたむ)け願(ねが)ひ奉(たてまつ)る
103百代(ももよ)も千代(ちよ)も万代(よろづよ)も
104松(まつ)の操(みさを)の色(いろ)褪(あ)せず
105枯(か)れて松葉(まつば)の二人(ふたり)連(づれ)
106力(ちから)をあはせ村肝(むらきも)の
107心(こころ)を神(かみ)に任(まか)せつつ
108仮令(たとへ)山川(やまかは)どよむとも
109天津(あまつ)国土(くにつち)揺(ゆら)ぐとも
110青山(あをやま)萎(しを)れ海河(うみかは)は
111涸(か)れ干(ほ)す事(こと)のあるとても
112永遠(とは)に変(かは)るな妹(いも)と脊(せ)の
113産霊(むすび)の道(みち)の何時(いつ)までも
114鴛鴦(をし)の契(ちぎり)の何処(どこ)までも
115百年(ももとせ)千年(ちとせ)万歳(よろづとせ)
116万(よろづ)の花(はな)に魁(さきが)けて
117薫(かを)る梅ケ香姫(うめがかひめ)の如(ごと)
118色香(いろか)ゆかしく語(かた)りませ
119色香(いろか)ゆかしく渡(わた)りませ
120恋(こひ)しき妻(つま)に手(て)を引(ひ)かれ
121黄金(こがね)の橋(はし)を渡会(わたらひ)の
122松竹梅(まつたけうめ)の姉妹(おとどひ)が
123揃(そろ)ひも揃(そろ)ふ今日(けふ)の宵(よひ)
124宵(よひ)に結(むすび)し喜悦(よろこび)は
125神(かみ)の守護(まもり)の弥(いや)深(ふか)き
126千尋(ちひろ)の海(うみ)の底(そこ)までも
127届(とど)かざらめや何処(どこ)迄(まで)も
128神(かみ)の恵(めぐ)みの尊(たふと)けれ
129神(かみ)の恵(めぐ)みの尊(たふと)けれ』
130と歌(うた)ひ終(をは)つて元(もと)の座(ざ)に就(つ)きぬ。
131 時置師(ときおかしの)神(かみ)と現(あらは)れたる鉄谷村(かなたにむら)の時公(ときこう)[※後の杢助。第26巻第8章参照]は、132又(また)もや立(た)つて祝(いは)ひの歌(うた)を詠(よ)み始(はじ)めたり。133その歌(うた)、
134時公『三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)
135松竹梅(まつたけうめ)の三柱(みはしら)は
136花(はな)の春(はる)をば仇(あだ)に越(こ)え
137夏(なつ)の真中(まなか)となりし身(み)の
138花(はな)は散(ち)れども遅桜(おそざくら)
139山(やま)は青々(あをあを)葉桜(はざくら)の
140いよいよ開(ひら)く返(かへ)り咲(ざき)
141三五教(あななひけう)と聞(き)いた時(とき)
142縁(えん)の遅(おそ)いは当然(あたりまへ)
143嫁(とつ)ぎの道(みち)は何時迄(いつまで)も
144なさらぬ方(かた)と思(おも)て居(ゐ)た
145人(ひと)は見(み)かけに依(よ)らぬもの
146色(いろ)よき夫(をつと)を松代姫(まつよひめ)
147永(なが)き月日(つきひ)の浮節(うきふし)に
148待(ま)ちに待(ま)つたる縁(えん)の糸(いと)
149今日(けふ)は愈(いよいよ)結(むす)び昆布(こぶ)
150摘(つま)み肴(さかな)の切(きり)鯣(するめ)
151名(な)さへ粋(すゐ)なる梅ケ香(うめがか)の
152姫(ひめ)の命(みこと)の肝玉(きもだま)は
153此処(ここ)に現(あら)はれ高彦(たかひこ)の
154神(かみ)の命(みこと)の妻(つま)となり
155いよいよ三人(みたり)の姉妹(おとどひ)は
156神(かみ)に貰(もら)うた雨(あめ)に濡(ぬ)れ
157水(みづ)も漏(もら)さぬ蒸衾(むしぶすま)
158小夜具(さよぐ)が下(した)にたくづぬの
159白(しろ)きただむき玉(たま)の手(て)を
160互(たがひ)に抱(いだ)きさし巻(ま)きて
161いをしましませ腿長(ももなが)に
162豊(とよ)の神酒(みき)をばきこし召(め)し
163いよいよ今日(けふ)から二柱(ふたはしら)
164神(かみ)の祝(いはひ)の餅(もち)搗(つ)いて
165子餅(こもち)もたんと拵(こしら)へて
166天(あま)つ国土(くにつち)轟(とどろ)かし
167天(てん)に輝(かがや)く星(ほし)の如(ごと)
168浜(はま)の真砂(まさご)の数(かず)多(おほ)く
169青人草(あをひとぐさ)の種(たね)をまけ
170三夫婦(みめをと)揃(そろ)うた世(よ)の中(なか)に
171東雲別(しののめわけ)の東彦(あづまひこ)
172石凝姥(いしこりどめ)の宣伝使(せんでんし)
173時公(ときこう)さまや八彦(やつひこ)や
174鴨彦(かもひこ)さまの顔(かほ)の色(いろ)
175峠(たうげ)の下(した)の小僧(こぞう)の様(よ)に
176上(のぼ)り下(くだ)りの客人(きやくびと)の
177姿(すがた)眺(なが)めて指(ゆび)噛(か)むで
178蜥蜴(とかげ)の様(やう)な面(つら)をして
179恨(うら)めし相(さう)に眺(なが)めいる
180ホンに芽出(めで)たいお目出度(めでた)い
181心(こころ)をかがみの時(とき)さまは
182鏡餅(かがみもち)ではなけれども
183滅多(めつた)に妬(や)きはせぬ程(ほど)に
184必(かなら)ず案(あん)じて下(くだ)さるな
185牛(うし)は牛(うし)連(づ)れ馬(うま)は馬(うま)
186八公(やつこう)は八公(やつこう)鴨(かも)は鴨(かも)
187八(や)つの足(あし)をばさし巻(ま)いて
188キウと吸(す)いつく蛸坊主(たこばうず)
189チンチン鴨(かも)の神楽舞(かぐらまひ)
190上(うへ)を下(した)へと戦(いくさ)して
191神(かみ)に仕(つか)ふる時(とき)も来(く)る
192アヽ三柱(みはしら)の夫婦神(めをとがみ)
193石凝姥(いしこりどめ)の石(いし)の如(ごと)
194堅(かた)く誓(ちか)ひて離(はな)れざれ
195時公(ときこう)八公(やつこう)鴨公(かもこう)の
196真心(まごころ)籠(こ)めて神(かみ)の前(まへ)
197偏(ひとへ)に祈(いの)り奉(たてまつ)る
198偏(ひとへ)に祈(いの)り奉(たてまつ)る』
199と歌(うた)ひ終(をは)り、200大口(おほぐち)を開(あ)けて
201時公『アツハヽヽヽヽ』
202と笑(わら)ひ転(こ)ける。203一同(いちどう)は時置師(ときおかしの)神(かみ)の手(て)つき身振(みぶり)の可笑(をか)しさに、204天地(てんち)も揺(ゆる)ぐ許(ばか)り笑(わら)ひ崩(くづ)れけり。205秋月姫(あきづきひめ)はスツクと立(た)つて、206長袖(ちやうしう)しとやかに祝歌(しゆくか)を歌(うた)ひ舞(ま)ふ。
207秋月姫『天(あめ)と地(つち)とに三五(あななひ)の
208道(みち)を教(をし)ふる宣伝使(せんでんし)
209三五(さんご)の月(つき)の澄(す)み渡(わた)る
210秋月姫(あきづきひめ)の空(そら)清(きよ)く
211今日(けふ)の喜(よろこ)び幾千代(いくちよ)も
212松竹梅(まつたけうめ)の何時(いつ)までも
213心(こころ)に掛(か)けて忘(わす)れまじ
214松(まつ)は千歳(ちとせ)の色(いろ)深(ふか)く
215竹(たけ)の姿(すがた)の末(すゑ)永(なが)く
216梅(うめ)の莟(つぼみ)の香(かんば)しく
217一度(いちど)に開(ひら)く神(かみ)の舞(まひ)
218鶴(つる)は千歳(ちとせ)と舞納(まひをさ)め
219亀(かめ)は万代(よろづよ)歌(うた)ふなり
220千歳(ちとせ)の鶴(つる)や万代(よろづよ)の
221亀(かめ)の齢(よはひ)を保(たも)ちつつ
222天地(てんち)と共(とも)に永久(とこしへ)に
223月日(つきひ)と共(とも)に限(かぎ)りなく
224此(この)世(よ)の続(つづ)く其(その)限(かぎ)り
225夫婦(めをと)の中(なか)は睦(むつま)じく
226心(こころ)を協(あは)せ神国(かみくに)に
227尽(つく)させ給(たま)へや三柱(みはしら)の
228神(かみ)の命(みこと)の夫婦(めをと)連(づれ)
229秋月姫(あきづきひめ)のいと円(まる)く
230家(いへ)も治(をさ)まり身(み)も魂(たま)も
231治(をさ)まり清(きよ)く照(て)り渡(わた)り
232神(かみ)の御水火(みいき)を受継(うけつ)ぎて
233御子(みこ)沢々(さはさは)に生(う)みなして
234神(かみ)の柱(はしら)を経緯(たてよこ)の
235錦(にしき)の機(はた)の神(かみ)の教(のり)
236宣(の)るも涼(すず)しき神嘉言(かむよごと)
237三柱(みはしら)神(かみ)の大前(おほまへ)に
238君(きみ)が千歳(ちとせ)を寿(ほ)ぎまつる
239君(きみ)が千(ち)とせを寿(ほ)ぎまつる』
240と歌(うた)つて元(もと)の座(ざ)に就(つ)きぬ。241深雪姫(みゆきひめ)は又(また)もや立上(たちあが)り長袖(ちやうしう)しとやかに歌(うた)ひ舞(ま)ふ。
242深雪姫『三柱神(みはしらがみ)の三(み)つ身魂(みたま)
243棟(むね)に輝(かがや)く三(み)つ巴(どもゑ)
244三夫婦(みめをと)揃(そろ)ふ今日(けふ)の宵(よひ)
245見(み)ても見飽(みあ)かぬ妖艶姿(あだすがた)
246三葉(みつば)の彦(ひこ)の又(また)の御名(みな)
247天(あめ)の太玉(ふとたま)神司(かむづかさ)
248青雲別(あをくもわけ)の高彦(たかひこ)が
249天之(あめの)児屋根(こやね)と現(あら)はれて
250白雲(しらくも)別(わ)けて北光(きたてる)の
251天(あめ)の目一箇(まひとつ)神司(かむづかさ)
252鴛鴦(をし)の契(ちぎり)を今(いま)此処(ここ)に
253結(むすび)の莚(むしろ)深雪姫(みゆきひめ)
254夫婦(めをと)の仲(なか)も睦(むつま)じく
255互(たがひ)に心(こころ)を相生(あひおひ)の
256松(まつ)も深雪(みゆき)の友白髪(ともしらが)
257尉(じやう)と姥(うば)との末(すゑ)永(なが)く
258高砂島(たかさごじま)にあらねども
259御稜威(みいづ)も高(たか)きコーカスの
260山(やま)に鎮(しづ)まる三柱(みはしら)の
261神(かみ)の御前(みまへ)に妹(いも)と背(せ)の
262契(ちぎり)を結(むす)ぶ金(かね)の神(かみ)
263神(かみ)の恵(めぐ)みの幸(さち)はひて
264撞(つき)の御柱(みはしら)右(みぎ)左(ひだり)
265巡(めぐ)り会(あ)ひつつ愛男(えーをのこ)
266愛女(えーをみな)よと宣(の)らせつつ
267鶺鴒(ほとり)の教(をしへ)畏(かしこ)みて
268学(まな)ばせ給(たま)ふゆかしさよ
269芽出度(めでたく)儀式(のり)を深雪姫(みゆきひめ)
270黄金(わうごん)世界(せかい)銀世界(ぎんせかい)
271月日(つきひ)は清(きよ)く照(て)り亘(わた)る
272神(かみ)の光(ひかり)を身(み)に浴(あ)びて
273千代(ちよ)も八千代(やちよ)も栄(さか)えませ
274幾千代(いくちよ)までも松竹(まつたけ)の
275色香(いろか)も褪(あ)せず咲匂(さきにほ)ふ
276梅ケ香姫(うめがかひめ)のあだ姿(すがた)
277月(つき)の鏡(かがみ)に美(うる)はしく
278尊(たふと)き御子(みこ)を望月(もちづき)の
279百千万(ももちよろづ)に生(う)みなして
280神(かみ)の御水火(みいき)の神業(かむわざ)に
281仕(つか)へましませ三柱(みはしら)の
282妹背(いもせ)の仲(なか)は吉野川(よしのがは)
283流(なが)れも清(きよ)きみづ身魂(みたま)
284神(かむ)素盞嗚(すさのを)の大神(おほかみ)の
285恵(めぐ)みの露(つゆ)にうるほひて
286色(いろ)も褪(あ)せざれ変(かは)らざれ
287たとへ天地(てんち)は変(かは)るとも
288夫婦(めをと)の仲(なか)は何時迄(いつまで)も
289弥(いや)次々(つぎつぎ)に栂(つが)の木(き)の
290孫子(まごこ)の世(よ)迄(まで)栄(さか)えませ
291孫子(まごこ)の世(よ)迄(まで)栄(さか)えませ
292深雪(みゆき)の姫(ひめ)が真心(まごころ)を
293神(かみ)の御前(みまへ)に捧(ささ)げつつ
294三柱神(みはしらがみ)の行末(ゆくすゑ)を
295畏(かしこ)み畏(かしこ)み寿(ほ)ぎまつる
296畏(かしこ)み畏(かしこ)み祝(ほ)ぎまつる』
297と歌(うた)ひ終(をは)り元(もと)の座(ざ)に就(つ)く。298橘姫(たちばなひめ)は又(また)もや立上(たちあが)り、299声(こゑ)も涼(すず)しく祝歌(しゆくか)を歌(うた)ふ。300其(そ)の歌(うた)、
301橘姫『秋月姫(あきづきひめ)の空(そら)晴(は)れて
302深雪(みゆき)も積(つも)る銀世界(ぎんせかい)
303春山彦(はるやまひこ)の珍(うづ)の子(こ)と
304生(うま)れ出(い)でたる姉妹(おとどひ)は
305恋(こひ)しき父(ちち)の館(やかた)をば
306橘姫(たちばなひめ)の姉妹(おとどひ)が
307三五教(あななひけう)を開(ひら)かむと
308神(かみ)のまにまに進(すす)み来(く)る
309雪(ゆき)積(つ)む野辺(のべ)を右左(みぎひだり)
310寒(さむ)けき風(かぜ)に梳(くしけづ)り
311山河(やまかは)越(こ)えてコーカスの
312三柱神(みはしらがみ)の御(おん)前(まへ)に
313橘姫(たちばなひめ)の喜(よろこ)びは
314色(いろ)も目出度(めでた)き松代姫(まつよひめ)
315薫(かをり)ゆかしき梅ケ香姫(うめがかひめ)の
316貴(うづ)の命(みこと)や竹野姫(たけのひめ)
317神(かみ)の詔勅(みこと)を畏(かしこ)みて
318人目(ひとめ)の関(せき)の隔(へだ)てなく
319妹背(いもせ)の契(ちぎり)結(むす)びます
320芽出度(めでた)き今日(けふ)の新莚(にひむしろ)
321神酒(みき)は甕(みか)の瓶(へ)高(たか)しりて
322饗宴(うたげ)の蓆(むしろ)賑(にぎは)しく
323夜(よ)は更(ふ)けわたる戌(いぬ)の刻(こく)
324亥(ゐ)の刻(こく)過(すぎ)て腿長(ももなが)に
325各(おの)も各(おの)もの子(ね)の刻(こく)や
326丑寅神(うしとらがみ)の御(おん)守護(まもり)
327嬉(うれ)し嬉(うれ)しの花(はな)も咲(さ)く
328心(こころ)の卯(う)さも辰(たつ)の刻(こく)
329巳(み)ぢかき春(はる)の夢(ゆめ)醒(さ)めて
330午(うま)く納(をさ)まる此(この)縁(えにし)
331瑞(みづ)の身魂(みたま)の未申(ひつじさる)
332互(たがひ)に盃(さかづき)取(と)り交(か)はし
333悪魔(あくま)もいぬや亥(ゐ)の時刻(じこく)
334夜半(よは)の嵐(あらし)も収(をさ)まりて
335宿世(すぐせ)行末(ゆくすゑ)物語(ものがた)り
336睦(むつ)ばせ給(たま)ふ間(ま)もあらず
337青垣山(あをがきやま)に鳴(な)く烏(からす)
338雉子(きぎす)は動(ど)よむ鶏(かけ)は鳴(な)く
339雉子(きぎす)どよむな鶏(かけ)鳴(な)くな
340今朝(けさ)は烏(からす)も唖(をし)となれ
341鴛鴦(をし)の衾(しとね)の楽(たの)し夜(よ)を
342遮(さへぎ)る勿(なか)れ今日(けふ)の朝(あさ)
343東(ひがし)の山(やま)に日(ひ)は昇(のぼ)り
344昼(ひる)より明(あ)かくなるとても
345今日(けふ)一(いち)日(にち)は烏羽玉(うばたま)の
346闇(やみ)にてあれや暗(やみ)となれ
347暗(やみ)の岩戸(いはと)を押開(おしひら)き
348互(たがひ)に含笑(ほほゑ)む顔(かほ)と顔(かほ)
349岩戸(いはと)の前(まへ)に橘(たちばな)の
350姫(ひめ)の命(みこと)の太祝詞(ふとのりと)
351聞(きこ)ゆる迄(まで)は三柱(みはしら)の
352神(かみ)も眠(ねむり)を覚(さ)まさまじ
353明(あ)けて悔(くや)しき今日(けふ)の日(ひ)は
354竜(たつ)の宮居(みやゐ)の姫神(ひめがみ)の
355御手(みて)より受(うけ)し玉手箱(たまてばこ)
356アヽ恨(うら)めしや浦島(うらしま)の
357年(とし)も取(と)らずに何時(いつ)までも
358若(わか)やぐ胸(むね)をすだ抱(だ)きて
359夫婦(めをと)の中(なか)は睦(むつ)び合(あ)ひ
360真玉手(またまで)玉手(たまで)携(たづさ)へて
361神(かみ)の御業(みわざ)を務(つと)めよや
362結(むす)びの神(かみ)と聞(きこ)えたる
363金勝要(きんかつかね)の大御神(おほみかみ)
364山河(やまかは)動(ど)よみ国土(くぬち)揺(ゆ)り
365海(うみ)は涸(か)れ干(ほ)す世(よ)ありとも
366夫婦(めをと)の中(なか)は何時(いつ)までも
367月日(つきひ)と共(とも)に変(かは)らざれ
368月日(つきひ)と共(とも)に永久(とこしへ)に
369栄(さか)えましませ何時迄(いつまで)も
370橘姫(たちばなひめ)が真心(まごころ)を
371こめて御前(みまへ)に鰭伏(ひれふ)しつ
372畏(おそ)れ慎(つつし)み願(ね)ぎまつる
373畏(おそ)れかしこみ寿(ほ)ぎまつる』
374と歌(うた)つて元(もと)の座(ざ)に就(つ)きぬ。
375時公(ときこう)『サアサア、376芽出度(めでた)く婚姻(こんいん)の式(しき)も済(す)み、377三夫婦(みふうふ)の濃艶(のうえん)なる宣詞(のりごと)も聞(き)かして貰(もら)つた。378加(くは)ふるに月(つき)雪(ゆき)花(はな)の三柱神(みはしらがみ)の祝(いは)ひの詞(ことば)、379時(とき)さまも一寸(ちよつと)仲間(なかま)入(い)りをさして貰(もら)つた。380石凝姥(いしこりどめの)神(かみ)様(さま)の御(お)祝歌(いはひうた)は一寸(ちよつと)感心(かんしん)した。381サアサア八(やつ)さま、382鴨(かも)さま、383神酒(おみき)ばつかり頂(いただ)いて居(ゐ)ても、384芸(げい)無(な)し猿(さる)では巾(はば)が利(き)かない。385何(なん)でも構(かま)はぬ、386芽出(めで)たい事(こと)を歌(うた)つたり歌(うた)つたり』
387八公(やつこう)『時(とき)さま、388何(なん)でもええか』
389時公(ときこう)『芽出度(めでた)い事(こと)を歌(うた)つたがよかろう』
390八公(やつこう)『笑(わら)うて呉(く)れな、391わしの歌(うた)は拙劣(へた)だから』
392と云(い)ひ乍(なが)ら、393ヌツと立(た)つて歌(うた)ひ始(はじ)めた。
394八公(やつこう)『今日(けふ)は如何(いか)なる吉日(きちじつ)か
395大気津(おほげつ)姫(ひめ)は逃(に)げて行(ゆ)く
396コーカス山(ざん)の貴(うづ)の宮(みや)
397三柱神(みはしらがみ)のお祭(まつり)に
398みんな揃(そろ)うて酒(さけ)に酔(ゑ)ひ
399ヨイヨイヨイと舞狂(まひくる)ふ
400松竹梅(まつたけうめ)の宣伝使(せんでんし)
401月雪花(つきゆきはな)の乙女(をとめ)達(たち)
402北光(きたてる)神(かみ)や高彦(たかひこ)や
403心(こころ)の太(ふと)い太玉(ふとたま)の
404神(かみ)の命(みこと)がヒヨイと来(き)て
405夢(ゆめ)に牡丹餅(ぼたもち)食(く)た様(やう)に
406松竹梅(まつたけうめ)の宣伝使(せんでんし)
407女房(にようばう)に持(も)つて嬉(うれ)しかろ
408この八(やつ)さまも嬉(うれ)しいぞ
409ヤツトコドツコイ、ドツコイナ
410それに引替(ひきか)へ気(き)の毒(どく)な
411石凝姥(いしこりどめ)の宣伝使(せんでんし)
412身体(からだ)の大(おほ)きい時(とき)さまは
413ほつとけぼりを喰(く)はされて
414見(み)るも憐(あは)れな鰥鳥(やもめどり)
415とりつく島(しま)もないじやくり
416時(とき)さま許(ばか)りか八(やつ)さまも
417鴨(かも)さままでが指(ゆび)銜(くは)へ
418青(あを)い顔(かほ)して淋(さび)しそに
419こんな馬鹿気(ばかげ)た事(こと)はない
420大勢(おほぜい)の前(まへ)でてらされて
421茹蛸(ゆでだこ)見(み)たよな顔(かほ)をして
422妬(や)きはせないが日(ひ)に焦(や)けた
423黒(くろ)い顔(かほ)してくすぶつて
424勘定(かんぢやう)に合(あ)はぬ此(この)仕末(しまつ)
425俺(おれ)も男(をとこ)ぢや何時(いつ)か又(また)
426綺麗(きれい)な女房(にようばう)を持(も)つてやる
427其(その)ときや皆(みな)さま見(み)てお呉(く)れ
428小野(をの)の小町(こまち)か照手(てるて)の姫(ひめ)か
429天津(あまつ)乙女(おとめ)か乙姫(をとひめ)さまが
430跣(はだし)で逃(に)げ出(だ)す素的(すてき)な奴(やつ)を
431貰(もら)ふか貰(もら)はぬかそら知(し)らぬ
432知(し)らぬが仏(ほとけ)神心(かみごころ)
433何時(いつ)かはカミの厄介(やくかい)に
434なつて喜(よろこ)ぶ時(とき)も来(く)る
435オイ時公(ときこう)よ鴨公(かもこう)よ
436俺(おれ)の胸先(むねさき)トキトキと
437何(なん)ぢや知(し)らぬが轟(とどろ)いた
438足(あし)は知(し)らぬに鴨々(かもかも)と
439震(ふる)ひあがつて気(き)に喰(く)はぬ
440淡白(あつさり)焼(や)いた蛤(はまぐり)の
441美味(うま)い汁(しる)吸(す)ふ時(とき)は何時(いつ)
442何時(いつ)か何時(いつ)かと松代姫(まつよひめ)
443松(まつ)かひあつて太玉(ふとたま)の
444神(かみ)の命(みこと)の妻(つま)となり
445角(つの)を隠(かく)した綿帽子(わたばうし)
446姿(すがた)かくして鳴(な)く鳥(とり)は
447山時鳥(やまほととぎす)丈(だけ)ぢやない
448此処(ここ)にも一人(ひとり)や三(さん)人(にん)は
449泣(な)いて居(ゐ)るかも知(し)れはせぬ
450千秋(せんしう)万歳(ばんざい)末(すゑ)永(なが)う
451松竹梅(まつたけうめ)のお姫(ひめ)さま
452夫婦(ふうふ)仲(なか)良(よ)く暮(くら)しやんせ
453心(こころ)の堅(かた)き宣伝使(せんでんし)
454夫(をつと)を持(も)つて忽(たちま)ちに
455心(こころ)緩(ゆる)みて神(かみ)の道(みち)
456必(かなら)ず粗末(そまつ)にせぬがよい
457それ丈(だけ)わたしが頼(たの)み置(お)く
458アヽ三柱(みはしら)の神(かみ)さまへ
459此(この)三(さん)人(にん)の夫婦仲(ふうふなか)
460水(みづ)も漏(も)らさず末(すえ)永(なが)う
461添(そ)はしてやつて下(くだ)さンせ
462これが八公(やつこう)の願(ねがひ)なり
463これが八公(やつこう)の願(ねがひ)なり』
464 時公(ときこう)は大口(おほぐち)を開(あ)けて、
465時公『アハヽヽヽヽ』と、466又(また)もや笑(わら)ひ転(こ)けて腹(はら)を抱(かか)へる。
467八公(やつこう)『オイ時公(ときこう)、468何(なん)で笑(わら)ふか、469人(ひと)をあまり馬鹿(ばか)にしよまいぞ。470お前(まへ)は拙劣(へた)でもよいと云(い)つただらう、471拙(へた)な歌(うた)が却(かへ)つて面白(おもしろ)いのだ。472併(しか)し乍(なが)らお前(まへ)の歌(うた)もあまり立派(りつぱ)な作(さく)ではなかつた。473担(にな)うたら棒(ぼう)が折(を)れる様(やう)なものだ』
474時公(ときこう)『コラコラ、475棒(ぼう)が折(を)れるとは何(なん)だ。476宣(の)り直(なほ)さぬか』
477八公(やつこう)『それでも、478是丈(これだけ)歌(うた)ふのには棒(ぼう)所(どころ)か、479随分(ずゐぶん)骨(ほね)が折(を)れたのだよ。480アハヽヽヽ』
481時公(ときこう)『サア鴨公(かもこう)の番(ばん)だ。482どうせ碌(ろく)な事(こと)は云(い)やせまいが、483貴様(きさま)の偽(いつは)らぬ心(こころ)を歌(うた)つて見(み)よ』
484鴨公(かもこう)『ヨシヨシ、485俺(おれ)も男(をとこ)だ。486気張(きば)つてフーフーと息(いき)継(つ)ぎ乍(なが)らやつて見(み)る。487良(よ)かつたら、488メヨト喝采(かつさい)するのだぞ』
489時公(ときこう)『ヨシヨシ、490よしと云(い)つても養子婿(やうしむこ)ぢやないぞ』
491 鴨公(かもこう)の歌(うた)、
492鴨公『明志(あかし)の湖(うみ)から従(つ)いて来(き)て
493雪(ゆき)の路(みち)をばザクザクと
494黒野(くろの)ケ原(はら)に行(や)つて来(き)た
495孔雀(くじやく)の姫(ひめ)が人(ひと)喰(く)うと
496聞(き)いてビツクリ会(あ)うて見(み)りや
497十五(じふご)の月(つき)の様(やう)な顔(かほ)
498案(あん)に相違(さうゐ)の松代姫(まつよひめ)
499ウラルの教(をしへ)を振棄(ふりす)てて
500三五教(あななひけう)に寝返(ねがへ)りを
501打(う)つて又(また)もや琵琶(びは)の湖(うみ)
502烈(はげ)しき風(かぜ)に曝(さら)されて
503汐干(しほひ)の丸(まる)の潮(しほ)を浴(あ)び
504牛(うし)馬(うま)鹿(しか)虎(とら)四人(よつたり)の
505目附(めつけ)の神(かみ)に送(おく)られて
506コーカス山(ざん)に来(き)て見(み)れば
507思(おも)ひがけなき神祭(かむまつり)
508八王(やつこす)ヒツコス酒(くす)の神(かみ)
509祝(いはひ)の酒(さけ)に酔潰(ゑひつぶ)れ
510何処(どこ)も彼処(かしこ)も泥(どろ)まぶれ
511ウラルの姫(ひめ)も泥(どろ)の衣(きぬ)
512心(こころ)の泥(どろ)を吐(は)き出(だ)して
513うまい事(こと)づくめに神(かみ)の前(まへ)
514ツベコベほざく其(その)時(とき)に
515松竹梅(まつたけうめ)を始(はじ)めとし
516鴨彦(かもひこ)さまも共々(ともども)に
517三五教(あななひけう)の宣伝歌(せんでんか)
518歌(うた)つて見(み)ればアラ不思議(ふしぎ)
519忽(たちま)ち鬼女(きじよ)となり変(かは)り
520黒雲(くろくも)起(おこ)して逃(に)げ去(さ)つた
521後(あと)に尊(たふと)き神祭(かむまつり)
522祝(いはひ)の酒(さけ)をグツと呑(の)み
523酔(ゑひ)がまはつた最中(さいちう)に
524皇(すめ)大神(おほかみ)の神勅(みことのり)
525松竹梅(まつたけうめ)の三柱(みはしら)に
526婿(むこ)を貰(もら)へと仰(あふ)せられ
527開(あ)いたる口(くち)に牡丹餅(ぼたもち)を
528詰(つ)めたる様(やう)に一口(ひとくち)に
529ウンと呑(の)み込(こ)む男(をとこ)方(がた)
530三(さん)人(にん)揃(そろ)うて妹(いも)と背(せ)の
531芽出度(めでた)い盃(さかづき)三々(さんさん)九度(くど)
532何方(どなた)も此方(こなた)も歌(うた)を詠(よ)み
533品姿(しな)能(よ)く踊(をど)り舞(ま)ひ狂(くる)ふ
534我(わ)れは素(もと)より芸無(げな)し猿(ざる)
535何(な)んにも知(し)らぬヨウせぬと
536断(ことわ)る訳(わけ)には行(ゆ)かないで
537猿(さる)の人真似(ひとまね)やつて見(み)よう
538猿(さる)が三疋(さんびき)飛(と)ンで来(き)て
539婚礼(こんれい)したのはサル昔(むかし)
540昔々(むかしむかし)の大昔(おほむかし)
541その又(また)昔(むかし)の昔(むかし)から
542神(かみ)の結(むす)ンだ因縁(いんねん)で
543夫婦(ふうふ)になつたに違(ちがひ)ない
544夫婦(ふうふ)は天地(てんち)にたとへられ
545山(やま)と海(うみ)とに比(くら)べられ
546神(かみ)生(う)み国(くに)生(う)み島(しま)生(う)みの
547道(みち)を開(ひら)きし伊弉諾(いざなぎ)の
548神(かみ)の命(みこと)の初(はじ)めてし
549美斗能(みとの)麻具波比(まぐはひ)妹背(いもとせ)の
550今日(けふ)の芽出度(めでた)い此(この)祝(いは)ひ
551此(この)喜(よろこ)びはここよりは
552外(ほか)へはやらじ やらざれと
553祈(いの)る真心(まごころ)神(かみ)の前(まへ)
554金勝要(きんかつかね)の大御神(おほみかみ)
555国治立(くにはるたち)の大御神(おほみかみ)
556神(かむ)素盞嗚(すさのを)の大御神(おほみかみ)
557三夫婦(みめをと)揃(そろ)うて縁(えん)結(むす)ぶ
558こんな芽出度(めでた)い事(こと)はない
559どうぞわたしも一(いち)日(にち)も
560早(はや)く結(むす)ンで下(くだ)さンせ
561家(いへ)をば治(をさ)め国(くに)治(をさ)め
562心(こころ)治(をさ)まる夫婦中(ふうふなか)
563落(お)ちて離(はな)れぬ枯松葉(かれまつば)
564二人(ふたり)の水火(いき)は相生(あひおひ)の
565待(ま)ちに待(ま)つたる嫁(よめ)貰(もら)ひ
566貰(もら)ひ喜(よろこ)び貰(もら)ひ泣(な)き
567ないて明志(あかし)や琵琶(びは)の湖(うみ)
568深(ふか)き契(ちぎり)を何時(いつ)までも
569続(つづ)かせられよ三柱(みはしら)の
570聞(き)くも芽出度(めでた)い夫婦仲(ふうふなか)
571仲(なか)善(よ)く暮(くら)せ何時迄(いつまで)も
572天(てん)に輝(かがや)く星(ほし)の如(ごと)
573浜(はま)の真砂(まさご)の数(かず)多(おほ)く
574御子(みこ)を生(う)め生(う)め地(ち)の上(うへ)に
575所(ところ)狭(せ)き迄(まで)生(う)みおとせ
576落(お)ちて松葉(まつば)の二人(ふたり)連(づ)れ
577三人(みたり)四人(よつたり)夫婦仲(めをとなか)
578三人(みたり)四人(よつたり)鰥仲(やもめなか)
579盈(み)つれば虧(か)くる世(よ)の慣(なら)ひ
580御空(みそら)の月(つき)の影(かげ)を見(み)よ
581何時(いつ)も満月(まんげつ)キラキラと
582明(あか)るく暮(くら)せ夫婦(めおと)連(づ)れ
583連添(つれそ)ふ妻(つま)を振棄(ふりす)てな
584妻(つま)も夫(をつと)に尻(しり)ふるな
585神(かみ)の恵(めぐ)みの雨(あめ)に濡(ぬ)れ
586何時(いつ)も青々(あをあを)稚翠(わかみどり)
587若(わか)やぐ姿(すがた)永久(とこしへ)に
588年(とし)は取(と)るなよ皺(しわ)よせな
589寄(よ)せては返(かへ)す荒浪(あらなみ)の
590濤(なみ)も凪(な)げ凪(な)げ春(はる)の海(うみ)
591生(う)み落(おと)したる子宝(こだから)は
592養(はぐく)み育(そだ)て天地(あめつち)の
593神(かみ)の御用(ごよう)に立(た)てて呉(く)れ
594くれぐれ頼(たの)む鴨公(かもこう)の
595是(これ)が一生(いつしやう)の願(ねがひ)ぞやと
596願掛巻(ねがひかけまく)神(かみ)の前(まへ)
597神(かみ)の恵(めぐ)みの幸(さち)はひて
598夫婦(めをと)の仲(なか)は睦(むつま)じく
599八千代(やちよ)の春(はる)の玉椿(たまつばき)
600栄(さか)えに栄(さか)えよ松代姫(まつよひめ)
601梅ケ香姫(うめがかひめ)よ竹野姫(たけのひめ)
602天之(あめの)目一箇(まひとつ)太玉(ふとたま)や
603天之(あめの)児屋根(こやね)の神司(かむづかさ)
604神(かみ)の御前(みまへ)に太祝詞(ふとのりと)
605称(たた)へ奉(まつ)るぞ尊(たふと)けれ
606称(たた)へ奉(まつ)るぞ畏(かしこ)けれ
607畏(かしこ)き神(かみ)の御教(みをしへ)を
608夫婦(めをと)力(ちから)を協(あは)せ合(あ)ひ
609海(うみ)の内外(うちと)に隈(くま)もなく
610輝(かがや)き渡(わた)せ神(かみ)の道(みち)
611輝(かがや)き渡(わた)せ神(かみ)の教(のり)』
612と歌(うた)ひ終(をは)り座(ざ)に着(つ)きぬ。613コーカス山(ざん)の神祭(かむまつり)、614瑞(みづ)の身魂(みたま)に因縁(ゆかり)ある三柱神(みはしらがみ)の婚姻(こんいん)は茲(ここ)に芽出度(めでた)く千秋楽(せんしうらく)を告(つ)げにける。
615(大正一一・三・四 旧二・六 松村真澄録)
616(昭和一〇・二・一九 王仁校正)
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