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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第30巻(巳の巻)
序
凡例
総説
第1篇 高砂の松
第1章 主従二人
第2章 乾の滝
第3章 清めの滝
第4章 懐旧の歌
第2篇 珍野瞰下
第5章 下坂の歌
第6章 樹下の一宿
第7章 提燈の光
第8章 露の道
第3篇 神縁微妙
第9章 醜の言霊
第10章 妖雲晴
第11章 言霊の妙
第12章 マラソン競争
第13章 都入
第4篇 修理固成
第14章 霊とパン
第15章 花に嵐
第16章 荒しの森
第17章 出陣
第18章 日暮シの河
第19章 蜘蛛の児
第20章 雉と町
第5篇 山河動乱
第21章 神王の祠
第22章 大蜈蚣
第23章 ブール酒
第24章 陥穽
附記 湯ケ島温泉
附記 天津祝詞解
附記 デモ国民歌
余白歌
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> 第1篇 高砂の松 > 第1章 主従二人
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(B)
(N)
乾の滝 >>>
第一章
主従
(
しゆじう
)
二人
(
ふたり
)
〔八四三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第30巻 海洋万里 巳の巻
篇:
第1篇 高砂の松
よみ(新仮名遣い):
たかさごのまつ
章:
第1章 主従二人
よみ(新仮名遣い):
しゅじゅうふたり
通し章番号:
843
口述日:
1922(大正11)年08月14日(旧06月22日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年9月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
メソポタミヤの顕恩郷をバラモン教から取り戻した神素盞嗚尊の八人の娘たちは、各地に宣教の旅に出ましたが、バラモン教の残党に取り押さえられて各々、小舟に乗せられて海に流されてしまいました。
その中のひとつ、末子姫と侍女・捨子姫の主従は、なんとか艪をあやつって高砂島のハラの港に上陸し、桃上彦の旧跡地の珍の国の都を目指して進んでいた。
二人はテルとウヅの国境にあるテル山峠にさしかかった。すでに月が出る夜であった。二人は懐旧にふけりつつ、肘を枕に眠りについた。テル山峠を降ってきた五人の男たち(イサク、カール、シーナ、チール、ネロ)は、二人が傍らで寝ているのに気付かず、話を始めた。
男たちはバラモン教徒であり、この地の教主から、神素盞嗚尊の娘主従がやってくるからそれを捕らえろと命じられて辺りを張っていたが、見つからずに疲れ果てていた。
男たちはそこで眠って休息を取ることにしたが、中にシーナという男、過去に旅人を殺めたことからその幽霊を恐れており、仲間からしきりにからかわれている。他の男たちが寝てしまった後も、シーナだけは震えおののいていた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-01-15 01:43:38
OBC :
rm3001
愛善世界社版:
7頁
八幡書店版:
第5輯 575頁
修補版:
校定版:
7頁
普及版:
2頁
初版:
ページ備考:
001
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
に
現
(
あ
)
れませる
002
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
自在天
(
じざいてん
)
003
大国彦
(
おほくにひこ
)
を
主神
(
しゆしん
)
とし
004
バラモン
教
(
けう
)
を
開
(
ひら
)
きたる
005
大国別
(
おほくにわけ
)
の
神司
(
かむづかさ
)
006
万里
(
ばんり
)
の
波
(
なみ
)
を
乗越
(
のりこ
)
えて
007
埃及国
(
エジプトこく
)
に
出現
(
しゆつげん
)
し
008
イホの
都
(
みやこ
)
にバラモンの
009
教
(
をしへ
)
の
射場
(
いば
)
を
築
(
きづ
)
き
上
(
あ
)
げ
010
一
(
いち
)
時
(
じ
)
は
旭
(
あさひ
)
の
昇
(
のぼ
)
る
如
(
ごと
)
011
教
(
をしへ
)
の
光
(
ひかり
)
も
四方
(
よも
)
の
国
(
くに
)
012
輝
(
かがや
)
き
渡
(
わた
)
れどバラモンの
013
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
は
人草
(
ひとぐさ
)
の
014
生血
(
いきち
)
を
見
(
み
)
ねば
治
(
をさ
)
まらぬ
015
残虐
(
ざんぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
荒修業
(
あらしうげふ
)
016
入信
(
にふしん
)
したる
信徒
(
まめひと
)
は
017
霊主
(
れいしゆ
)
体従
(
たいじう
)
の
名
(
な
)
の
下
(
もと
)
に
018
釘
(
くぎ
)
の
打
(
う
)
ちたる
足駄
(
あしだ
)
履
(
は
)
き
019
裸
(
はだか
)
となりて
茨室
(
いばらむろ
)
020
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
み
体
(
からだ
)
をかき
破
(
やぶ
)
り
021
或
(
あるひ
)
は
猛火
(
まうくわ
)
の
中
(
なか
)
に
入
(
い
)
り
022
水底
(
みなそこ
)
潜
(
くぐ
)
りさまざまと
023
怺
(
こら
)
へ
切
(
き
)
れない
苦
(
くるし
)
みに
024
一度
(
ひとたび
)
寄
(
よ
)
り
来
(
き
)
し
信徒
(
まめひと
)
も
025
悲
(
かな
)
しみもだえ
日
(
ひ
)
に
月
(
つき
)
に
026
何時
(
いつ
)
とはなしに
逃
(
に
)
げ
去
(
さ
)
りて
027
法灯
(
ほふとう
)
いまや
滅
(
めつ
)
せむと
028
悲運
(
ひうん
)
に
傾
(
かたむ
)
く
折柄
(
をりから
)
に
029
夏山彦
(
なつやまひこ
)
や
祝姫
(
はふりひめ
)
030
行平別
(
ゆきひらわけ
)
の
神司
(
かむづかさ
)
031
埃及都
(
エジプトみやこ
)
を
根拠
(
こんきよ
)
とし
032
霊主
(
れいしゆ
)
体従
(
たいじう
)
の
真相
(
しんさう
)
を
033
洽
(
あまね
)
く
世人
(
よびと
)
に
宣
(
の
)
り
伝
(
つた
)
へ
034
仁慈
(
じんじ
)
無限
(
むげん
)
の
国
(
くに
)
の
祖
(
おや
)
035
国治立
(
くにはるたちの
)
大神
(
おほかみ
)
の
036
厳
(
いづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
守
(
まも
)
ります
037
三五教
(
あななひけう
)
の
御教
(
みをしへ
)
は
038
月日
(
つきひ
)
と
共
(
とも
)
に
栄
(
さか
)
え
行
(
ゆ
)
く。
039
バラモン
教
(
けう
)
の
大棟梁
(
だいとうりやう
)
040
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
を
始
(
はじ
)
めとし
041
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
の
二夫婦
(
ふたふうふ
)
042
埃及
(
イホ
)
の
都
(
みやこ
)
を
後
(
あと
)
にして
043
数多
(
あまた
)
の
信徒
(
しんと
)
を
引率
(
いんそつ
)
し
044
南天王
(
なんてんわう
)
の
籠
(
こも
)
りたる
045
由緒
(
ゆいしよ
)
の
深
(
ふか
)
き
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
046
エデンの
河
(
かは
)
を
打渡
(
うちわた
)
り
047
茲
(
ここ
)
に
再
(
ふたた
)
びバラモンの
048
道
(
みち
)
の
根拠
(
こんきよ
)
を
築固
(
つきかた
)
め
049
巌
(
いはほ
)
を
畳
(
たた
)
み
石
(
いし
)
を
積
(
つ
)
み
050
難攻
(
なんこう
)
不落
(
ふらく
)
の
絶壁
(
ぜつぺき
)
と
051
頼
(
たの
)
みて
拠
(
よ
)
れる
顕恩城
(
けんおんじやう
)
052
曲
(
まが
)
の
教
(
をしへ
)
は
再生
(
さいせい
)
の
053
機運
(
きうん
)
に
向
(
むか
)
ひて
中津国
(
なかつくに
)
054
メソポタミヤを
始
(
はじ
)
めとし
055
フサの
国
(
くに
)
より
印度
(
つき
)
の
国
(
くに
)
056
勢
(
いきほひ
)
猛
(
たけ
)
く
宣
(
の
)
りて
行
(
ゆ
)
く
057
さはさり
乍
(
なが
)
ら
世
(
よ
)
の
人
(
ひと
)
は
058
野蛮
(
やばん
)
極
(
きは
)
まる
荒行
(
あらげう
)
に
059
堪
(
たま
)
りかねてか
遠近
(
をちこち
)
に
060
怨嗟
(
えんさ
)
の
声
(
こゑ
)
は
聞
(
きこ
)
え
来
(
き
)
て
061
蚊
(
か
)
の
鳴
(
な
)
く
如
(
ごと
)
き
憐
(
あは
)
れさを
062
見
(
み
)
るに
見兼
(
みか
)
ねて
瑞御霊
(
みづみたま
)
063
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
は
064
バラモン
教
(
けう
)
の
神司
(
かむづかさ
)
065
数多
(
あまた
)
の
宣伝使
(
とりつぎ
)
言向
(
ことむ
)
けて
066
天地
(
てんち
)
を
造
(
つく
)
り
玉
(
たま
)
ひたる
067
大慈
(
だいじ
)
大悲
(
だいひ
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
068
大御心
(
おほみこころ
)
を
懇
(
ねんご
)
ろに
069
バラモン
人
(
びと
)
に
説
(
と
)
き
諭
(
さと
)
し
070
世界
(
せかい
)
揃
(
そろ
)
うて
皇神
(
すめかみ
)
の
071
恵
(
めぐみ
)
の
露
(
つゆ
)
に
浴
(
よく
)
せしめ
072
五六七
(
みろく
)
の
御世
(
みよ
)
の
神政
(
しんせい
)
を
073
仰
(
あふ
)
がしめむと
思
(
おぼ
)
し
召
(
め
)
し
074
八人
(
やたり
)
乙女
(
をとめ
)
を
使
(
つか
)
はして
075
バラモン
教
(
けう
)
の
信徒
(
まめひと
)
と
076
表面
(
うはべ
)
を
飾
(
かざ
)
りて
顕恩郷
(
けんおんきやう
)
の
077
教館
(
をしへやかた
)
に
入
(
い
)
らしめぬ
078
八人
(
やたり
)
乙女
(
をとめ
)
は
大神
(
おほかみ
)
の
079
深
(
ふか
)
き
心
(
こころ
)
を
麻柱
(
あなな
)
ひて
080
尊
(
たふと
)
き
御
(
おん
)
身
(
み
)
も
厭
(
いと
)
ひなく
081
大胆
(
だいたん
)
不敵
(
ふてき
)
に
曲神
(
まがかみ
)
の
082
醜
(
しこ
)
の
砦
(
とりで
)
に
朝夕
(
あさゆふ
)
に
083
心
(
こころ
)
配
(
くば
)
りて
仕
(
つか
)
へける。
084
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
は
085
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
を
開
(
ひら
)
きたる
086
五伴緒
(
いつとものを
)
の
其
(
その
)
一人
(
ひとり
)
087
太玉神
(
ふとたまがみ
)
を
遣
(
つか
)
はして
088
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
の
一類
(
いちるゐ
)
を
089
誠
(
まこと
)
の
道
(
みち
)
に
言向
(
ことむ
)
けて
090
メソポタミヤに
神国
(
かみくに
)
の
091
清
(
きよ
)
き
基
(
もとい
)
を
開
(
ひら
)
かむと
092
エデンの
河
(
かは
)
を
只一人
(
ただひとり
)
093
渡
(
わた
)
りて
深
(
ふか
)
く
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る
094
後
(
あと
)
より
追
(
お
)
ひ
来
(
く
)
る
神司
(
かむつかさ
)
095
駒
(
こま
)
の
頭
(
かしら
)
を
並
(
なら
)
べつつ
096
八人
(
やたり
)
乙女
(
をとめ
)
の
忍
(
しの
)
びます
097
顕恩城
(
けんおんじやう
)
の
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
098
難
(
なん
)
なく
進
(
すす
)
めばバラモンの
099
鬼雲彦
(
おにくもひこ
)
は
出迎
(
いでむか
)
へ
100
言葉
(
ことば
)
巧
(
たくみ
)
に
取
(
と
)
りなして
101
毒酒
(
どくしゆ
)
の
企
(
たく
)
みを
始
(
はじ
)
めける
102
悪
(
あく
)
の
企
(
たく
)
みは
忽
(
たちま
)
ちに
103
徹底
(
てつてい
)
的
(
てき
)
に
曝露
(
ばくろ
)
して
104
おのが
住家
(
すみか
)
を
振棄
(
ふりす
)
てて
105
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
波斯
(
フサ
)
の
国
(
くに
)
106
脆
(
もろ
)
くも
姿
(
すがた
)
隠
(
かく
)
しける。
107
茲
(
ここ
)
に
太玉
(
ふとたま
)
宣伝使
(
せんでんし
)
108
顕恩城
(
けんおんじやう
)
に
居残
(
ゐのこ
)
りて
109
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
伝
(
つた
)
へまし
110
八人
(
やたり
)
乙女
(
をとめ
)
は
各自
(
めいめい
)
に
111
八洲
(
やしま
)
の
国
(
くに
)
に
蟠
(
わだか
)
まる
112
八岐
(
やまた
)
の
大蛇
(
をろち
)
の
醜魂
(
しこだま
)
を
113
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
し
天
(
あめ
)
の
下
(
した
)
114
百
(
もも
)
の
災
(
わざはひ
)
払
(
はら
)
はむと
115
各
(
おのおの
)
侍女
(
じぢよ
)
を
伴
(
ともな
)
ひて
116
波斯
(
フサ
)
の
国
(
くに
)
をば
振出
(
ふりだ
)
しに
117
宣伝
(
せんでん
)
せむと
進
(
すす
)
む
折
(
をり
)
118
バラモン
教
(
けう
)
の
残党
(
ざんたう
)
に
119
取押
(
とりおさ
)
へられ
別々
(
べつべつ
)
に
120
棚無
(
たなな
)
し
舟
(
ぶね
)
に
乗
(
の
)
せられて
121
海原
(
うなばら
)
遠
(
とほ
)
く
流
(
なが
)
されぬ
122
八人
(
やたり
)
乙女
(
をとめ
)
の
末
(
すゑ
)
の
子
(
こ
)
と
123
生
(
うま
)
れましたる
末子姫
(
すゑこひめ
)
124
尊
(
たふと
)
き
生命
(
いのち
)
を
捨小舟
(
すてをぶね
)
125
波
(
なみ
)
に
浮
(
うか
)
びて
捨子姫
(
すてこひめ
)
126
主人
(
あるじ
)
の
君
(
きみ
)
を
慰
(
なぐさ
)
めつ
127
甲斐
(
かひ
)
々々
(
がひ
)
しくも
艪
(
ろ
)
をとりて
128
大西洋
(
たいせいやう
)
の
中央
(
まんなか
)
に
129
散在
(
さんざい
)
したる
大島
(
おほしま
)
や
130
小島
(
こしま
)
の
間
(
あひだ
)
をくぐりつつ
131
波
(
なみ
)
のまにまにテルの
国
(
くに
)
132
ハラの
港
(
みなと
)
に
上陸
(
じやうりく
)
し
133
宇都山
(
うづやま
)
峠
(
たうげ
)
を
乗越
(
のりこ
)
えて
134
桃上彦
(
ももがみひこ
)
の
旧跡地
(
きうせきち
)
135
都
(
みやこ
)
を
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
136
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
137
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ。
138
末子姫
(
すゑこひめ
)
は
捨子姫
(
すてこひめ
)
と
共
(
とも
)
に
漸
(
やうや
)
くハラの
港
(
みなと
)
に
安着
(
あんちやく
)
し、
139
足
(
あし
)
を
早
(
はや
)
めて
珍
(
うづ
)
の
国
(
くに
)
に
進
(
すす
)
まむと、
140
テルとウヅとの
国境
(
くにざかひ
)
、
141
テル
山峠
(
やまたうげ
)
の
麓
(
ふもと
)
にさしかかつた。
142
八日
(
やうか
)
の
月
(
つき
)
は
高
(
たか
)
く
中天
(
ちうてん
)
に
楕円形
(
だゑんけい
)
の
姿
(
すがた
)
を
現
(
あら
)
はし
此
(
この
)
愛
(
あい
)
らしき
二人
(
ふたり
)
の
美女
(
びぢよ
)
の
頭
(
かしら
)
を
覗
(
のぞ
)
かせ
玉
(
たま
)
ふ。
143
末子姫
(
すゑこひめ
)
『
大変
(
たいへん
)
な
恐
(
おそ
)
ろしい
目
(
め
)
に、
144
幾度
(
いくたび
)
ともなく
出会
(
であ
)
ひましたが、
145
神
(
かみ
)
さまのおかげで
漸
(
やうや
)
く
高砂島
(
たかさごじま
)
まで
送
(
おく
)
られ、
146
こんな
嬉
(
うれ
)
しい
事
(
こと
)
はありませぬなア。
147
これも
全
(
まつた
)
くバラモン
教
(
けう
)
の
手
(
て
)
を
使
(
つか
)
つて、
148
妾
(
わらは
)
両人
(
りやうにん
)
を
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
深
(
ふか
)
き
御
(
お
)
経綸
(
しぐみ
)
の
下
(
もと
)
に、
149
お
遣
(
つか
)
はし
遊
(
あそ
)
ばしたのでせう。
150
此
(
この
)
国
(
くに
)
は
昔
(
むかし
)
、
151
正鹿山津見
(
まさかやまづみ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
がお
治
(
をさ
)
め
遊
(
あそ
)
ばした
所
(
ところ
)
と
聞
(
き
)
きましたが、
152
これから
珍
(
うづ
)
の
都
(
みやこ
)
へ
参
(
まゐ
)
つて、
153
三五教
(
あななひけう
)
の
今日
(
こんにち
)
の
様子
(
やうす
)
を
探
(
さぐ
)
り、
154
宣伝
(
せんでん
)
を
致
(
いた
)
さうぢやありませぬか』
155
捨子姫
(
すてこひめ
)
『
左様
(
さやう
)
で
御座
(
ござ
)
いますなア。
156
貴女
(
あなた
)
はまだお
年
(
とし
)
がお
若
(
わか
)
いのに、
157
此
(
この
)
広
(
ひろ
)
い
国
(
くに
)
へお
越
(
こ
)
しになり、
158
宣伝
(
せんでん
)
をせうとお
考
(
かんが
)
へ
遊
(
あそ
)
ばす
其
(
その
)
勇気
(
ゆうき
)
には
妾
(
わたし
)
も
実
(
じつ
)
に
心強
(
こころづよ
)
く
存
(
ぞん
)
じます。
159
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
160
バラモン
教
(
けう
)
やウラル
教
(
けう
)
の
勢力
(
せいりよく
)
も
混入
(
こんにふ
)
し、
161
侮
(
あなど
)
る
可
(
べか
)
らざる
潜勢力
(
せんせいりよく
)
があると
云
(
い
)
ふことをハラの
港
(
みなと
)
に
着
(
つ
)
いた
時
(
とき
)
、
162
人々
(
ひとびと
)
が
話
(
はな
)
して
居
(
を
)
りましたから、
163
決
(
けつ
)
して
油断
(
ゆだん
)
はなりますまい。
164
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
斯
(
こ
)
う
夜分
(
やぶん
)
になつては、
165
山路
(
やまみち
)
を
行
(
ゆ
)
くのも
何
(
なん
)
となく
心許
(
こころもと
)
なく、
166
又
(
また
)
大変
(
たいへん
)
に
体
(
からだ
)
も
草疲
(
くたび
)
れましたから、
167
此
(
この
)
芝生
(
しばふ
)
の
上
(
うへ
)
にて
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りで、
168
お
土
(
つち
)
に
体
(
からだ
)
を
親
(
した
)
しみ、
169
夜明
(
よあ
)
けを
待
(
ま
)
つて、
170
此
(
この
)
峠
(
たうげ
)
を
越
(
こ
)
すことに
致
(
いた
)
しませうか』
171
末子姫
(
すゑこひめ
)
『それが
宜
(
よろ
)
しう
御座
(
ござ
)
いませう』
172
と
両人
(
りやうにん
)
は
肱
(
ひぢ
)
を
枕
(
まくら
)
に
眠
(
ねむ
)
りに
就
(
つ
)
いた。
173
テル
山峠
(
やまたうげ
)
をシトシトと
降
(
くだ
)
つて
来
(
き
)
た
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
の
男
(
をとこ
)
、
174
二人
(
ふたり
)
が
木蔭
(
こかげ
)
の
芝生
(
しばふ
)
に
他愛
(
たあい
)
もなく
草疲
(
くたび
)
れ
果
(
は
)
てて
眠
(
ねむ
)
つてゐるのも
知
(
し
)
らず、
175
茲
(
ここ
)
に
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
176
甲『オイ、
177
大分
(
だいぶん
)
足
(
あし
)
も
草臥
(
くたび
)
れて
来
(
き
)
たやうだ。
178
ここらで
一
(
ひと
)
つ
休息
(
きうそく
)
をしたら
如何
(
どう
)
だ』
179
乙『
膝栗毛
(
ひざくりげ
)
の
停電
(
ていでん
)
かなア。
180
ヨシヨシ
休
(
やす
)
んで
行
(
ゆ
)
かう』
181
丙『そんな
気楽
(
きらく
)
な
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
うてをれまいぞ。
182
石熊
(
いしくま
)
の
大将
(
たいしやう
)
から
今夜頃
(
こんやごろ
)
三五教
(
あななひけう
)
の
女
(
をんな
)
宣伝使
(
せんでんし
)
の
一行
(
いつかう
)
が
漂着
(
へうちやく
)
して
来
(
く
)
るに
違
(
ちが
)
ひないから、
183
見
(
み
)
つけ
次第
(
しだい
)
捉
(
つか
)
まへて、
184
185
高照山
(
たかてるやま
)
の
館
(
やかた
)
へ
召捕
(
めしとり
)
帰
(
かへ
)
れとの
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
だから、
186
今晩
(
こんばん
)
は
余
(
あんま
)
り
気楽
(
きらく
)
に
休
(
やす
)
んでる
訳
(
わけ
)
には
往
(
ゆ
)
かうまい。
187
ハラの
港
(
みなと
)
へキツと
到着
(
たうちやく
)
するに
違
(
ちが
)
ひないと
云
(
い
)
うたが、
188
フサの
国
(
くに
)
から
無声
(
むせい
)
霊話
(
れいわ
)
で
石熊
(
いしくま
)
様
(
さま
)
の
御
(
おん
)
大将
(
たいしやう
)
に
通知
(
つうち
)
があつたのだ。
189
サアもう
一気張
(
ひときば
)
りだ。
190
アリナの
滝
(
たき
)
の
方
(
はう
)
へでも
行
(
ゆ
)
かれちや
大変
(
たいへん
)
だから、
191
休息
(
きうそく
)
は
後
(
のち
)
にして、
192
夜
(
よる
)
の
涼
(
すず
)
しい
中
(
うち
)
にモウ
一足
(
ひとあし
)
駆出
(
かけだ
)
さうぢやないか』
193
丁
(
てい
)
、
194
戊
(
ぼう
)
両人
(
りやうにん
)
は
口
(
くち
)
を
揃
(
そろ
)
へて、
195
丁、戊両人
『おりやモウ
交通
(
かうつう
)
機関
(
きくわん
)
の
油
(
あぶら
)
が
切
(
き
)
れて
来
(
き
)
たから、
196
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
駄目
(
だめ
)
だ。
197
欲
(
よく
)
にも
得
(
とく
)
にも
変
(
か
)
へられない。
198
マーさう
云
(
い
)
はずと、
199
おつき
合
(
あ
)
ひに
一服
(
いつぷく
)
したら
何
(
ど
)
うだい』
200
甲『
弱
(
よわ
)
い
奴
(
やつ
)
だなア。
201
そんなら、
202
ドツと
譲歩
(
じやうほ
)
して
少時
(
しばらく
)
の
休養
(
きうやう
)
を
与
(
あた
)
へてやらう』
203
丁『
朝
(
あさ
)
遅
(
おそ
)
う
出
(
で
)
て
午後
(
ごご
)
に
早
(
はや
)
く
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
る
盲判
(
めくらばん
)
押
(
お
)
しの
役人
(
やくにん
)
でさへも、
204
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
暑中
(
しよちう
)
休暇
(
きうか
)
が
貰
(
もら
)
へるのだから
俺
(
おれ
)
だつて、
205
夜
(
よる
)
も
昼
(
ひる
)
も
働
(
はたら
)
かされちや、
206
やりきれないワ、
207
ハヽヽヽヽ』
208
甲『
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
役人
(
やくにん
)
だつて、
209
暑中
(
しよちう
)
休暇
(
きうか
)
を
廃止
(
はいし
)
されて
了
(
しま
)
つたよ』
210
丙『
暑中
(
しよちう
)
休暇
(
きうか
)
を
廃
(
はい
)
してまで、
211
無理
(
むり
)
に
鈍物
(
どんぶつ
)
を
動
(
うご
)
かさうとした
所
(
ところ
)
で
駄目
(
だめ
)
だ。
212
却
(
かへつ
)
て
能率
(
のうりつ
)
が
低下
(
ていか
)
する
位
(
くらゐ
)
なものだ。
213
チールやネロの
云
(
い
)
ふ
通
(
とほ
)
り、
214
今晩
(
こんばん
)
はここでグツスリと
休暇
(
きうか
)
を
賜
(
たま
)
はつて
行
(
ゆ
)
くことにせう。
215
なア……イサクの
大将
(
たいしやう
)
……』
216
イサク『イサクさ
言
(
い
)
はずに、
217
仕方
(
しかた
)
がない、
218
休
(
やす
)
んで
行
(
ゆ
)
け。
219
黙
(
だま
)
つてねるのだよ』
220
チール『
俺
(
おれ
)
はお
前
(
まへ
)
の
様
(
やう
)
に
寝
(
ね
)
てものを
言
(
い
)
つたり、
221
そんな
器用
(
きよう
)
な
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ないから、
222
安心
(
あんしん
)
してくれ。
223
お
前
(
まへ
)
こそズイ
分
(
ぶん
)
能
(
よ
)
く
寝言
(
ねごと
)
を
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
だよ。
224
あんな
寝言
(
ねごと
)
を
云
(
い
)
ひよると、
225
見
(
み
)
つともなくて、
226
そばに
安閑
(
あんかん
)
として
居
(
を
)
れない
様
(
やう
)
な
気分
(
きぶん
)
になるワ』
227
シーナ『
俺
(
おれ
)
の
寝言
(
ねごと
)
を
貴様
(
きさま
)
聞
(
き
)
いたかい。
228
天下
(
てんか
)
万民
(
ばんみん
)
を
安堵
(
あんど
)
せしむる
為
(
ため
)
の
一心
(
いつしん
)
が
凝
(
こ
)
り
固
(
かた
)
まつて
居
(
ゐ
)
るから、
229
寝
(
ね
)
ても
覚
(
さ
)
めても、
230
天下
(
てんか
)
を
憂
(
うれ
)
ふる
至誠
(
しせい
)
の
言葉
(
ことば
)
に
充
(
み
)
たされて
居
(
ゐ
)
るのだ。
231
貴様
(
きさま
)
はあまり
学問
(
がくもん
)
がないから、
232
俺
(
おれ
)
の
言葉
(
ことば
)
が
分
(
わか
)
らないのだろ』
233
チール『
天下
(
てんか
)
の
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
つてゐるなんぞと
馬鹿
(
ばか
)
にするない。
234
何時
(
いつ
)
とても
貴様
(
きさま
)
の
宅
(
うち
)
は
嬶
(
かかあ
)
天下
(
てんか
)
ぢやから、
235
余程
(
よほど
)
下鶏
(
したどり
)
になつとると
見
(
み
)
えて、
236
ねると
直
(
す
)
ぐ、
237
アア アア アア アアと
大
(
おほ
)
きな
口
(
くち
)
あけて、
238
鼾
(
いびき
)
をかきやがつて、
239
痛
(
いた
)
い
痛
(
いた
)
いとか、
240
重
(
おも
)
たい
重
(
おも
)
たいとか、
241
言
(
い
)
ひよるのだ。
242
……なア、
243
ネロ、
244
何時
(
いつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
の
寝言
(
ねごと
)
は
活版
(
くわつぱん
)
で
押
(
お
)
した
様
(
やう
)
なものだろよ』
245
ネロ『
此奴
(
こいつ
)
アな、
246
何
(
なん
)
でも
高照山
(
たかてるやま
)
の
谷間
(
たにあひ
)
で
通
(
とほ
)
りがかりの
旅人
(
たびびと
)
をひつとらまへ、
247
何々
(
なになに
)
した
上
(
うへ
)
、
248
何々
(
なになに
)
しやがつた
事
(
こと
)
があるに
違
(
ちが
)
ひない。
249
何時
(
いつ
)
とても
妙
(
めう
)
な
寝言
(
ねごと
)
を
言
(
い
)
ひよるぢやないか。
250
……オイ、
251
シーナ、
252
貴様
(
きさま
)
も
余程
(
よほど
)
今
(
いま
)
こそバラモン
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
ぢやと
云
(
い
)
うて
威張
(
ゐば
)
つて
居
(
を
)
るが、
253
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
をやつたと
見
(
み
)
えるなア』
254
シーナ『
知
(
し
)
らぬワイ。
255
そんなうるさいことを、
256
夜
(
よる
)
の
夜中
(
よなか
)
に
云
(
い
)
つて
呉
(
く
)
れるな、
257
気分
(
きぶん
)
が
悪
(
わる
)
くなつた。
258
知
(
し
)
らぬ
神
(
かみ
)
に
祟
(
たた
)
りなしだ』
259
チール『アツハヽヽヽ、
260
夜分
(
やぶん
)
になると、
261
高照山
(
たかてるやま
)
の
話
(
はなし
)
を
大変
(
たいへん
)
に
怖
(
こわ
)
がる
男
(
をとこ
)
だなア』
262
ネロ『きまつた
事
(
こと
)
よ。
263
ズイ
分
(
ぶん
)
えらい
事
(
こと
)
があるのだ。
264
其
(
その
)
秘密
(
ひみつ
)
の
鍵
(
かぎ
)
を
握
(
にぎ
)
つて
居
(
ゐ
)
るのはネロさま
丈
(
だけ
)
だ。
265
此奴
(
こいつ
)
の
後
(
あと
)
を
何時
(
いつ
)
もつけ、
266
ネロさんと
云
(
い
)
ふ
亡霊
(
ばうれい
)
が、
267
たつた
二人
(
ふたり
)
計
(
ばか
)
りついてゐるのだから、
268
エラ
相
(
さう
)
に
云
(
い
)
つても
夜分
(
やぶん
)
になると
門口
(
もんぐち
)
一
(
ひと
)
つ
出
(
で
)
るのもビリビリものだからな。
269
こんなこと
話
(
はな
)
して
居
(
ゐ
)
ると、
270
あの
亡霊
(
ばうれい
)
がやつて
来
(
き
)
て、
271
又
(
また
)
ヒユー、
272
ドロドロだ』
273
シーナ『
頼
(
たの
)
みぢやから、
274
どうぞ
言
(
い
)
うてくれな』
275
ネロ『モウ
是
(
こ
)
れで
云
(
い
)
ひ
納
(
をさ
)
めだから、
276
半分
(
はんぶん
)
丈
(
だけ
)
云
(
い
)
つて
止
(
や
)
めたらう。
277
高照山
(
たかてるやま
)
の
谷間
(
たにあひ
)
に
於
(
おい
)
て、
278
妙齢
(
めうれい
)
の
美人
(
びじん
)
二人
(
ふたり
)
に
対
(
たい
)
し
何々
(
なになに
)
を
致
(
いた
)
し、
279
遂
(
つひ
)
には
何々
(
なになに
)
をして、
280
谷底
(
たにそこ
)
へ
何々
(
なになに
)
し、
281
其
(
その
)
亡霊
(
ばうれい
)
が
何時
(
いつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
の
生首
(
なまくび
)
引抜
(
ひきぬ
)
かむと、
282
夢幻
(
ゆめまぼろし
)
に
立
(
た
)
つのだよ。
283
……オイ
皆
(
みな
)
の
奴
(
やつ
)
、
284
こんなシーナ、
285
オツトドツコイ
代物
(
しろもの
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に
歩
(
ある
)
いて
居
(
ゐ
)
ると、
286
何時
(
いつ
)
かおかシーナ
手附
(
てつき
)
をして、
287
ヒユーと
御
(
ご
)
出現
(
しゆつげん
)
遊
(
あそ
)
ばすかも
知
(
し
)
れやしないぞ。
288
アヽ
何
(
なん
)
だかそこらがゾクゾクし
出
(
だ
)
した。
289
モウ
此
(
この
)
話
(
はなし
)
は
止
(
や
)
めとこかい』
290
イサク『オイ、
291
シーナ、
292
お
前
(
まへ
)
そんな
覚
(
おぼ
)
えがあるのか。
293
何
(
なん
)
だかネロの
物語
(
ものがたり
)
を
聞
(
き
)
いて、
294
俺
(
おれ
)
も
気分
(
きぶん
)
が
悪
(
わる
)
くなつて
来
(
き
)
たワイ。
295
サアもう、
296
こんな
話
(
はなし
)
を
止
(
や
)
めにして
行
(
ゆ
)
かうぢやないか』
297
ネロ『
俺
(
おれ
)
やモウ
何
(
ど
)
うしても
動
(
うご
)
けないから、
298
ここでチール
計
(
ばか
)
りネロとせう、
299
グウ グウ グウ』
300
カール『ハツハヽヽヽ、
301
らつち
もない
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
やがつて、
302
シーナにからかつて
居
(
ゐ
)
たが、
303
早
(
はや
)
モウ
寝
(
ね
)
て
了
(
しま
)
ひよつた。
304
罪
(
つみ
)
のない
男
(
をとこ
)
だなア。
305
サア
一層
(
いつそう
)
のこと
休
(
やす
)
んで
行
(
い
)
かう』
306
とカールは
又
(
また
)
もやグレンと
肱
(
ひぢ
)
を
枕
(
まくら
)
に
路
(
みち
)
の
傍
(
かたはら
)
に
横
(
よこた
)
はつた。
307
イサクもチールも
亦
(
また
)
眠
(
ねむ
)
りに
就
(
つ
)
いた。
308
シーナは
後
(
あと
)
に
一人
(
ひとり
)
何
(
なん
)
だか
首筋元
(
くびすぢもと
)
がオゾオゾするので、
309
眠
(
ねむ
)
りも
得
(
え
)
せず、
310
イサクの
腰
(
こし
)
に
喰
(
くら
)
ひついて
慄
(
ふる
)
ひ
戦
(
をのの
)
いてゐる。
311
(
大正一一・八・一四
旧六・二二
松村真澄
録)
312
(昭和一〇・六・九 王仁校正)
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