霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
設定
|
ヘルプ
ホーム
霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第30巻(巳の巻)
序
凡例
総説
第1篇 高砂の松
第1章 主従二人
第2章 乾の滝
第3章 清めの滝
第4章 懐旧の歌
第2篇 珍野瞰下
第5章 下坂の歌
第6章 樹下の一宿
第7章 提燈の光
第8章 露の道
第3篇 神縁微妙
第9章 醜の言霊
第10章 妖雲晴
第11章 言霊の妙
第12章 マラソン競争
第13章 都入
第4篇 修理固成
第14章 霊とパン
第15章 花に嵐
第16章 荒しの森
第17章 出陣
第18章 日暮シの河
第19章 蜘蛛の児
第20章 雉と町
第5篇 山河動乱
第21章 神王の祠
第22章 大蜈蚣
第23章 ブール酒
第24章 陥穽
附記 湯ケ島温泉
附記 天津祝詞解
附記 デモ国民歌
余白歌
×
設定
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
文字サイズ
S
【標準】
M
L
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側だけに表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注[※]用語解説
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
【標準】
脚注マークを表示しない
脚注[*]編集用
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
脚注マークを表示しない
【標準】
外字の外周色
[?]
一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。
[×閉じる]
無色
【標準】
赤色
現在のページには外字は使われていません
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は
従来バージョン
をお使い下さい|
サブスク
のお知らせ
霊界物語
>
海洋万里(第25~36巻)
>
第30巻(巳の巻)
> 第5篇 山河動乱 > 第21章 神王の祠
<<< 雉と町
(B)
(N)
大蜈蚣 >>>
第二一章
神王
(
しんわう
)
の
祠
(
ほこら
)
〔八六三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第30巻 海洋万里 巳の巻
篇:
第5篇 山河動乱
よみ(新仮名遣い):
さんかどうらん
章:
第21章 神王の祠
よみ(新仮名遣い):
しんおうのほこら
通し章番号:
863
口述日:
1922(大正11)年08月16日(旧06月24日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年9月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
国依別一行は、アラシカ峠の頂上に至り、東北方面に平原に伸びるヒルの都を見渡した。一方西南には日暮シ山がそびえている。三人はこの様子を見て、ヒルの都は無防備だが交通の便に勝れ、一方日暮シ山は要害堅固だか交通に不便である点を比べ評している。
三人が峠を下っていく途中、二三本の樟の大木に守られて、古い祠があった。ウラル教の神・常世神王を祀った祠であるという。その前に、妙齢の女が跪き、何事かを熱心に祈願している。
三人は祠に近づき、天津祝詞を奏上すると傍らの石に腰掛けた。女は涙を流して祈願している。キジは女に近づき、同情の言葉をかけて、何か悩み事があれば力になろうと申し出た。
女はエリナと名乗り、父・エスはウラル教の宣伝使であったが、ある日三五教の宣伝使が家に立ち寄ったところ、その宣伝使の話に感銘を受けて投合し、家に何日か泊め、またウラル教徒たちにも三五教の美点を説いて聞かせたという。
しかしそのことが日暮シ山の本山に伝わり、教主ブールに呼び出されてその後消息が絶えてしまった。日暮シ山本山から親切に消息を知らせてくれた者があり、それによると、ブールの逆鱗に触れた父・エスは、水牢に投げ込まれて苦しんでおり、家族にも危害が及ぶかもしれない、とのことであった。それを聞いた母は重い病に倒れてしまったという。
国依別、キジ、マチはこの話を聞いて、自分たちが三五教徒でであることを明かし、力になろうと申し出た。国依別は、キジとマチに日暮シ山に引き返して、エリナの父・エスを助け出すように命じ、自分はエリナを送って行き、エリナの母に鎮魂を施すこととした。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-02-19 17:48:52
OBC :
rm3021
愛善世界社版:
239頁
八幡書店版:
第5輯 656頁
修補版:
校定版:
255頁
普及版:
95頁
初版:
ページ備考:
001
国依別
(
くによりわけ
)
一行
(
いつかう
)
は
足
(
あし
)
に
任
(
まか
)
せて、
002
旭
(
あさひ
)
を
浴
(
あ
)
び
乍
(
なが
)
ら、
003
東南
(
とうなん
)
に
向
(
むか
)
ひ
前方
(
ぜんぱう
)
に
突当
(
つきあた
)
つたアラシカ
山
(
やま
)
の
大峠
(
おほたうげ
)
をソロソロと
登
(
のぼ
)
り
始
(
はじ
)
めた。
004
此
(
この
)
地点
(
ちてん
)
は
最早
(
もはや
)
今年
(
こんねん
)
の
旱魃
(
かんばつ
)
にも
遭
(
あは
)
ず、
005
極
(
きは
)
めて
安全
(
あんぜん
)
にして、
006
山々
(
やまやま
)
の
草木
(
さうもく
)
は
色
(
いろ
)
美
(
うる
)
はしく、
007
旭
(
あさひ
)
に
照
(
て
)
り
輝
(
かがや
)
き、
008
活々
(
いきいき
)
として
居
(
ゐ
)
る。
009
一行
(
いつかう
)
は
心
(
こころ
)
も
勇
(
いさ
)
み、
010
何
(
なん
)
となく
愉快
(
ゆくわい
)
げに
此
(
この
)
急坂
(
きふはん
)
を
知
(
し
)
らず
知
(
し
)
らずの
間
(
あひだ
)
に
半日
(
はんにち
)
を
費
(
つひ
)
やして、
011
峠
(
たうげ
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
に
達
(
たつ
)
した。
012
東北
(
とうほく
)
を
眺
(
なが
)
むれば、
013
ヒルの
都
(
みやこ
)
は
細
(
ほそ
)
く
長
(
なが
)
く
帯
(
おび
)
の
如
(
ごと
)
く
人家
(
じんか
)
が
並
(
なら
)
んで
居
(
ゐ
)
る。
014
戸数
(
こすう
)
に
於
(
おい
)
て
殆
(
ほとん
)
ど
二三千
(
にさんぜん
)
計
(
ばか
)
りの、
015
此
(
この
)
時代
(
じだい
)
に
取
(
と
)
つては
大都会
(
だいとくわい
)
である。
016
又
(
また
)
西南
(
せいなん
)
を
瞰下
(
かんか
)
すれば、
017
ウラル
教
(
けう
)
のブールが
立籠
(
たてこも
)
りたる
日暮
(
ひぐら
)
シ
山
(
やま
)
は
手
(
て
)
に
取
(
と
)
る
如
(
ごと
)
く、
018
青々
(
あをあを
)
と
緑
(
みどり
)
の
衣
(
ころも
)
を
被
(
かぶ
)
り、
019
八合目
(
はちがふめ
)
以上
(
いじやう
)
は
雲
(
くも
)
に
包
(
つつ
)
まれてゐる。
020
キジは
国依別
(
くによりわけ
)
に
向
(
むか
)
ひ、
021
キジ
『モシ、
022
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
023
あの
未申
(
ひつじさる
)
の
方向
(
はうこう
)
に
当
(
あた
)
つて
白雲
(
しらくも
)
の
帽子
(
ばうし
)
を
着
(
き
)
てゐる
高山
(
かうざん
)
が、
024
例
(
れい
)
の
日暮
(
ひぐら
)
シ
山
(
やま
)
で
御座
(
ござ
)
いますよ。
025
随分
(
ずゐぶん
)
景勝
(
けいしよう
)
の
地点
(
ちてん
)
を
選
(
えら
)
んだものですなア。
026
三方
(
さんぱう
)
山
(
やま
)
に
囲
(
かこ
)
まれ、
027
一方
(
いつぱう
)
に
日暮
(
ひぐら
)
シ
河
(
がは
)
の
清流
(
せいりう
)
を
控
(
ひか
)
え、
028
四神
(
ししん
)
相応
(
さうおう
)
の
地点
(
ちてん
)
だと
云
(
い
)
つて、
029
ウラル
教
(
けう
)
の
連中
(
れんぢう
)
が
非常
(
ひじやう
)
に
誇
(
ほこ
)
つて
居
(
ゐ
)
る
所
(
ところ
)
で
御座
(
ござ
)
いますよ。
030
ヒルの
都
(
みやこ
)
はあの
通
(
とほ
)
り、
031
茫々
(
ばうばう
)
たる
原野
(
げんや
)
の
中
(
なか
)
に
築
(
きづ
)
かれてありますから、
032
大変
(
たいへん
)
に
便利
(
べんり
)
は
宜
(
よろ
)
しいが、
033
要害
(
えうがい
)
の
点
(
てん
)
に
於
(
おい
)
ては、
034
日暮
(
ひぐら
)
シ
山
(
やま
)
に
比
(
くら
)
ぶれば、
035
非常
(
ひじやう
)
に
劣
(
おと
)
つて
居
(
ゐ
)
る
様
(
やう
)
ですなア』
036
国依
(
くにより
)
『
成程
(
なるほど
)
ウラル
教
(
けう
)
も
恰好
(
かつかう
)
な
地点
(
ちてん
)
を
見付
(
みつ
)
け
出
(
だ
)
したものだなア。
037
併
(
しか
)
し
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
の
様
(
やう
)
に
肝心
(
かんじん
)
の
日暮
(
ひぐら
)
シ
河
(
がは
)
があの
通
(
とほ
)
り
涸切
(
かれき
)
つて
了
(
しま
)
つては、
038
交通
(
かうつう
)
の
点
(
てん
)
に
於
(
おい
)
て
最
(
もつと
)
も
不便
(
ふべん
)
であらう。
039
何事
(
なにごと
)
も
一利
(
いちり
)
あれば
一害
(
いちがい
)
ある
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だから、
040
吾々
(
われわれ
)
なれば
矢張
(
やつぱり
)
ヒルの
都
(
みやこ
)
の
方
(
はう
)
が
余程
(
よほど
)
気
(
き
)
に
入
(
い
)
るよ』
041
マチ『
気
(
き
)
に
入
(
い
)
ると
云
(
い
)
つたら、
042
此
(
この
)
涼風
(
すずかぜ
)
、
043
暑
(
あつ
)
い
坂
(
さか
)
を
汗
(
あせ
)
タラダラと
流
(
なが
)
して
登
(
のぼ
)
り
詰
(
つ
)
め、
044
山上
(
さんじやう
)
に
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
めて
四方
(
よも
)
の
景色
(
けしき
)
を
見晴
(
みは
)
らし、
045
浩然
(
こうぜん
)
の
気
(
き
)
を
養
(
やしな
)
ふ
吾々
(
われわれ
)
は、
046
実
(
じつ
)
に
天国
(
てんごく
)
へ
登
(
のぼ
)
りつめた
様
(
やう
)
な
心持
(
こころもち
)
になつて
来
(
き
)
ました。
047
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
人
(
ひと
)
は
高山
(
かうざん
)
に
登
(
のぼ
)
り
下界
(
げかい
)
を
見下
(
みおろ
)
すに
限
(
かぎ
)
りますなア。
048
コセコセと
狭
(
せま
)
い
谷間
(
たにあひ
)
に
潜
(
ひそ
)
んで、
049
日々
(
にちにち
)
何
(
なん
)
とかかとか
云
(
い
)
つて
騒
(
さわ
)
いで
居
(
を
)
るよりも、
050
時々
(
ときどき
)
は
山登
(
やまのぼ
)
りも
又
(
また
)
愉快
(
ゆくわい
)
なものです』
051
国依別
(
くによりわけ
)
は、
052
国依別
『サア
皆
(
みな
)
さま、
053
参
(
まゐ
)
りませうか』
054
とスタスタと
坂路
(
さかみち
)
を
降
(
お
)
り
行
(
ゆ
)
く。
055
二人
(
ふたり
)
は『モウ
少
(
すこ
)
し
休
(
やす
)
みたいなア……』と
小声
(
こごゑ
)
に
囁
(
ささや
)
き
乍
(
なが
)
ら、
056
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひ、
057
急坂
(
きうはん
)
を
下
(
くだ
)
りて
行
(
ゆ
)
く。
058
見
(
み
)
れば
坂路
(
さかみち
)
の
傍
(
かたはら
)
に
一
(
ひと
)
つの
祠
(
ほこら
)
が
建
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
059
樟
(
くす
)
の
大木
(
たいぼく
)
は
二三本
(
にさんぼん
)
天
(
てん
)
を
封
(
ふう
)
じ
此
(
この
)
祠
(
ほこら
)
に
対
(
たい
)
し、
060
雨傘
(
あまがさ
)
の
役
(
やく
)
を
勤
(
つと
)
めて
居
(
ゐ
)
る。
061
ふと
見
(
み
)
れば、
062
面
(
おも
)
やつれのした
妙齢
(
めうれい
)
の
女
(
をんな
)
、
063
社前
(
しやぜん
)
に
跪
(
ひざまづ
)
き
何事
(
なにごと
)
か
切
(
しき
)
りに
祈願
(
きぐわん
)
をこめてゐる。
064
マチ、
065
キジの
両人
(
りやうにん
)
は
早
(
はや
)
くも
之
(
これ
)
を
認
(
みと
)
め、
066
マチ、キジ
『ヤア
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
067
アレ
御覧
(
ごらん
)
なさいませ。
068
あすこには
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
を
祀
(
まつ
)
つた
祠
(
ほこら
)
が
御座
(
ござ
)
います。
069
さうして
何
(
なん
)
だか
一人
(
ひとり
)
の
女
(
をんな
)
が
荐
(
しき
)
りに
祈願
(
きぐわん
)
して
居
(
ゐ
)
るやうですが、
070
一
(
ひと
)
つ
立寄
(
たちよ
)
つて
様子
(
やうす
)
を
聞
(
き
)
いて
見
(
み
)
ませう。
071
此
(
この
)
淋
(
さび
)
しい
山路
(
やまみち
)
、
072
若
(
わか
)
い
女
(
をんな
)
の
身
(
み
)
として、
073
此
(
この
)
祠
(
ほこら
)
へ
参
(
まゐ
)
つて
来
(
く
)
るのは
何
(
なに
)
か
深
(
ふか
)
い
曰
(
いは
)
く
因縁
(
いんねん
)
が
無
(
な
)
けねばなりますまい』
074
国依
(
くにより
)
『アヽ
成程
(
なるほど
)
、
075
古
(
ふる
)
い
社
(
やしろ
)
が
立
(
た
)
つてゐるなア。
076
実
(
じつ
)
に
立派
(
りつぱ
)
な
楠
(
くすのき
)
が
栄
(
さか
)
えて
居
(
ゐ
)
る。
077
これ
位
(
くらゐ
)
な
大木
(
たいぼく
)
にならうと
思
(
おも
)
へば
数千
(
すうせん
)
年
(
ねん
)
の
星霜
(
せいさう
)
を
経
(
へ
)
て
居
(
ゐ
)
るであらう。
078
吾々
(
われわれ
)
の
様
(
やう
)
に
二百
(
にひやく
)
歳
(
さい
)
や
三百
(
さんびやく
)
歳
(
さい
)
で
死
(
し
)
んで
了
(
しま
)
う
弱
(
よわ
)
い
人間
(
にんげん
)
と
違
(
ちが
)
つて、
079
数千
(
すうせん
)
年
(
ねん
)
の
寿命
(
じゆめう
)
を
保
(
たも
)
ち、
080
尚
(
なほ
)
青々
(
あをあを
)
として
枝葉
(
しえふ
)
を
繁茂
(
はんも
)
させ、
081
所在
(
あらゆる
)
暴風雨
(
ばうふうう
)
に
対
(
たい
)
し
依然
(
いぜん
)
として
少
(
すこ
)
しも
騒
(
さわ
)
がず、
082
此
(
この
)
高山
(
かうざん
)
に
生活
(
せいくわつ
)
を
続
(
つづ
)
けて
居
(
ゐ
)
る
楠
(
くすのき
)
は、
083
実
(
じつ
)
に
偉
(
えら
)
いものだ。
084
これを
思
(
おも
)
へば
植物
(
しよくぶつ
)
位
(
ぐらゐ
)
偉
(
えら
)
いものはない
様
(
やう
)
な
気
(
き
)
がするネ。
085
樟
(
くす
)
の
木
(
き
)
に
霊
(
れい
)
あり、
086
且
(
かつ
)
言語
(
げんご
)
を
発
(
はつ
)
するならば、
087
遠
(
とほ
)
き
神代
(
かみよ
)
の
有様
(
ありさま
)
を
聞
(
き
)
かして
貰
(
もら
)
ふのだけれど、
088
併
(
しか
)
しそれも
仕方
(
しかた
)
がない』
089
マチ『モシモシそれはさうと、
090
あの
女
(
をんな
)
を
御覧
(
ごらん
)
なさい。
091
随分
(
ずゐぶん
)
痩衰
(
やせおとろ
)
へて
居
(
ゐ
)
るぢやありませぬか?
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
へ
立寄
(
たちよ
)
つて
調
(
しら
)
べて
見
(
み
)
たら
如何
(
どう
)
でせう』
092
国依
(
くにより
)
『
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
参詣
(
さんけい
)
した
序
(
ついで
)
に
尋
(
たづ
)
ねて
見
(
み
)
るもよからうよ』
093
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
らツカツカと
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
に
進
(
すす
)
みよる。
094
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
祠
(
ほこら
)
の
前
(
まへ
)
に
跪
(
ひざまづ
)
き
拍手
(
はくしゆ
)
再拝
(
さいはい
)
、
095
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
清
(
きよ
)
く
涼
(
すず
)
しく
奏上
(
そうじやう
)
し
終
(
をは
)
り、
096
傍
(
かたはら
)
の
長
(
なが
)
き
石
(
いし
)
に
腰
(
こし
)
打掛
(
うちかけ
)
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
めた。
097
キジは
祠前
(
しぜん
)
に
跪
(
ひざまづ
)
き
何事
(
なにごと
)
か
切
(
しき
)
りに、
098
落涙
(
らくるい
)
と
共
(
とも
)
に
祈
(
いの
)
つて
居
(
ゐ
)
る
女
(
をんな
)
の
側近
(
そばちか
)
く
寄
(
よ
)
り、
099
いたいたしげに
脊
(
せ
)
を
撫
(
な
)
でさすり
乍
(
なが
)
ら、
100
キジ『モシモシ、
101
何処
(
どこ
)
の
御
(
お
)
方
(
かた
)
か
知
(
し
)
りませぬが、
102
大変
(
たいへん
)
な
御
(
ご
)
信仰
(
しんかう
)
で
御座
(
ござ
)
いますな。
103
此
(
この
)
お
社
(
やしろ
)
は、
104
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神霊
(
しんれい
)
が
御
(
お
)
祀
(
まつ
)
り
申
(
まを
)
してあると
云
(
い
)
ふことで
御座
(
ござ
)
いますれば、
105
貴女
(
あなた
)
がここへ
御
(
お
)
参
(
まゐ
)
りになつてることを
思
(
おも
)
へば、
106
大方
(
おほかた
)
ウラル
教
(
けう
)
の
御
(
お
)
方
(
かた
)
でせうネ。
107
かよわき
女
(
をんな
)
の
只一人
(
ただひとり
)
、
108
此
(
この
)
高山
(
たかやま
)
の
祠
(
ほこら
)
に
詣
(
まう
)
でて
御
(
お
)
祈
(
いの
)
りをなさるのは、
109
何
(
なに
)
か
深
(
ふか
)
き
御
(
ご
)
様子
(
やうす
)
のある
事
(
こと
)
と
御
(
お
)
察
(
さつ
)
し
申
(
まを
)
します。
110
吾々
(
われわれ
)
の
力
(
ちから
)
に
及
(
およ
)
ぶ
事
(
こと
)
なれば、
111
何
(
なん
)
とかして
御
(
ご
)
相談
(
さうだん
)
に
乗
(
の
)
つてあげたいと
思
(
おも
)
ひますが、
112
どうか
御
(
お
)
差支
(
さしつかへ
)
なくば、
113
大略
(
たいりやく
)
丈
(
だけ
)
なりとお
話
(
はなし
)
下
(
くだ
)
さいませ。
114
及
(
およ
)
ばず
乍
(
なが
)
ら
御
(
お
)
力
(
ちから
)
になりませう』
115
此
(
この
)
同情
(
どうじやう
)
のこもつたキジの
言葉
(
ことば
)
に、
116
女
(
をんな
)
は
漸
(
やうや
)
く
顔
(
かほ
)
をあげ、
117
女(エリナ)
『ハイ、
118
私
(
わたし
)
はアラシカ
山
(
やま
)
の
山麓
(
さんろく
)
に
住居
(
すまゐ
)
いたすエリナと
申
(
まを
)
す
者
(
もの
)
で
御座
(
ござ
)
います。
119
私
(
わたし
)
の
父
(
ちち
)
は、
120
ウラル
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
でエスと
申
(
まを
)
しますが、
121
一
(
いつ
)
ケ
月
(
げつ
)
以前
(
いぜん
)
に
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
が
御
(
お
)
立寄
(
たちよ
)
りになり、
122
いろいろと
尊
(
たふと
)
きお
話
(
はなし
)
を
父
(
ちち
)
と
共
(
とも
)
に、
123
夜中
(
よぢう
)
遊
(
あそ
)
ばした
結果
(
けつくわ
)
、
124
父
(
ちち
)
も
非常
(
ひじやう
)
に
喜
(
よろこ
)
びまして、
125
四五
(
しご
)
日
(
にち
)
の
間
(
あひだ
)
其
(
その
)
宣伝使
(
せんでんし
)
を
吾家
(
わがや
)
に
止
(
とど
)
めおき、
126
ウラル
教
(
けう
)
の
信者
(
しんじや
)
にも
三五教
(
あななひけう
)
の
美点
(
びてん
)
を
説
(
と
)
き
聞
(
き
)
かせ、
127
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
神徳
(
しんとく
)
を
受
(
う
)
けて、
128
大変
(
たいへん
)
に
喜
(
よろこ
)
び
勇
(
いさ
)
んで
居
(
を
)
りました。
129
所
(
ところ
)
が
此
(
この
)
事
(
こと
)
忽
(
たちま
)
ち
日暮
(
ひぐら
)
シ
山
(
やま
)
の
岩窟
(
がんくつ
)
に
聖場
(
せいぢやう
)
を
立
(
た
)
ててウラル
教
(
けう
)
をお
開
(
ひら
)
き
遊
(
あそ
)
ばす、
130
云
(
い
)
はばヒルの
国
(
くに
)
に
於
(
お
)
けるウラル
教
(
けう
)
の
総大将
(
そうだいしやう
)
、
131
ブールの
教主
(
けうしゆ
)
の
耳
(
みみ
)
に
入
(
い
)
り、
132
至急
(
しきう
)
吾
(
わが
)
父
(
ちち
)
のエスに
参
(
まゐ
)
れとの
御
(
おん
)
使
(
つかひ
)
、
133
父
(
ちち
)
は
喜
(
よろこ
)
び
勇
(
いさ
)
んで、
134
其
(
その
)
霊地
(
れいち
)
へ
参
(
まゐ
)
りましたが、
135
其
(
その
)
後
(
ご
)
は
何
(
なん
)
の
音沙汰
(
おとさた
)
もなく
非常
(
ひじやう
)
に
母
(
はは
)
と
共
(
とも
)
に
心配
(
しんぱい
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
りましたが、
136
四五
(
しご
)
日
(
にち
)
前
(
まへ
)
にウラル
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
尋
(
たづ
)
ねて
来
(
こ
)
られ、
137
エスさまは
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
を
自宅
(
じたく
)
に
宿泊
(
しゆくはく
)
させ
其
(
その
)
上
(
うへ
)
ウラル
教
(
けう
)
の
信者
(
しんじや
)
に
対
(
たい
)
して
三五教
(
あななひけう
)
を
説
(
と
)
き
勧
(
すす
)
めたと
云
(
い
)
つて、
138
日暮
(
ひぐら
)
シ
山
(
やま
)
の
岩窟内
(
がんくつない
)
の
暗
(
くら
)
き
水牢
(
みづらう
)
に
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
まれ、
139
大変
(
たいへん
)
な
苦
(
くる
)
しみを
受
(
う
)
けて
居
(
を
)
られる、
140
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
も
妻子
(
さいし
)
たる
廉
(
かど
)
を
以
(
もつ
)
て、
141
何時
(
なんどき
)
召捕
(
めしと
)
りに
来
(
く
)
るかも
知
(
し
)
れないから、
142
気
(
き
)
を
付
(
つ
)
けよと、
143
秘密
(
ないない
)
に
知
(
し
)
らして
呉
(
く
)
れた
親切
(
しんせつ
)
な
方
(
かた
)
がありました。
144
母
(
はは
)
はそれを
聞
(
き
)
くより
忽
(
たちま
)
ち
癪気
(
しやくき
)
を
起
(
おこ
)
し、
145
重
(
おも
)
き
病
(
やまひ
)
の
床
(
とこ
)
に
臥
(
ふ
)
し、
146
日
(
ひ
)
に
日
(
ひ
)
に
体
(
からだ
)
は
弱
(
よわ
)
り
果
(
は
)
て、
147
見
(
み
)
る
影
(
かげ
)
もなく
痩衰
(
やせおとろ
)
へ、
148
一滴
(
いつてき
)
の
水
(
みづ
)
も
食物
(
しよくもつ
)
も
喉
(
のど
)
を
越
(
こ
)
さず、
149
此
(
この
)
まま
死
(
し
)
を
待
(
ま
)
つより
外
(
ほか
)
に
途
(
みち
)
なき
悲運
(
ひうん
)
に
陥
(
おちい
)
つて
居
(
を
)
ります。
150
それ
故
(
ゆゑ
)
私
(
わたし
)
はウラル
教
(
けう
)
の
教祖
(
けうそ
)
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
様
(
さま
)
の
祠
(
ほこら
)
に
日々
(
にちにち
)
詣
(
まう
)
でまして、
151
父
(
ちち
)
の
危難
(
きなん
)
を
救
(
すく
)
ひ、
152
母
(
はは
)
の
病気
(
びやうき
)
を
助
(
たす
)
け
玉
(
たま
)
へと、
153
祈
(
いの
)
つて
居
(
を
)
るので
御座
(
ござ
)
います』
154
と
涙
(
なみだ
)
片手
(
かたて
)
に
包
(
つつ
)
まずかくさず
事情
(
じじやう
)
を
物語
(
ものがた
)
る。
155
キジ『それはそれは、
156
承
(
うけたま
)
はれば
実
(
じつ
)
にお
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
です。
157
私
(
わたくし
)
も
今迄
(
いままで
)
ウラル
教
(
けう
)
の
信者
(
しんじや
)
で
日暮
(
ひぐら
)
シ
山
(
やま
)
の
霊場
(
れいぢやう
)
へは、
158
二度
(
にど
)
計
(
ばか
)
り
参拝
(
さんぱい
)
した
事
(
こと
)
もある
位
(
くらゐ
)
で
御座
(
ござ
)
いますが、
159
実
(
じつ
)
にウラル
教
(
けう
)
は、
160
今
(
いま
)
となつて
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
れば
残虐
(
ざんぎやく
)
な
教
(
をしへ
)
ですよ。
161
人
(
ひと
)
の
死
(
し
)
ぬ
事
(
こと
)
を
何
(
なん
)
とも
思
(
おも
)
はず、
162
天国
(
てんごく
)
へ
救
(
すく
)
はれるのだから、
163
無上
(
むじやう
)
の
光栄
(
くわうゑい
)
だなんて、
164
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
事
(
こと
)
を
教
(
をし
)
へるのですからたまりませぬワ。
165
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
らあなたの
御
(
お
)
父上
(
ちちうへ
)
が
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
を
四五
(
しご
)
日
(
にち
)
も
御
(
お
)
泊
(
と
)
めになつたと
云
(
い
)
ふのは、
166
ウラル
教
(
けう
)
に
愛想
(
あいさう
)
をつかし、
167
三五教
(
あななひけう
)
の
美
(
うつく
)
しい
所
(
ところ
)
をお
悟
(
さと
)
りになつた
結果
(
けつくわ
)
でせう。
168
コリヤ、
169
キツと
因縁
(
いんねん
)
があるに
違
(
ちが
)
ひない。
170
こんな
所
(
ところ
)
でこんな
御
(
お
)
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
くのも、
171
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
引合
(
ひきあは
)
せに
違
(
ちがひ
)
ない。
172
必
(
かなら
)
ず
必
(
かなら
)
ず
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな。
173
キツと
吾々
(
われわれ
)
が
御
(
お
)
父上
(
ちちうへ
)
や
御
(
お
)
母
(
か
)
アさまを
助
(
たす
)
けて
上
(
あ
)
げませう』
174
エリナ『どこの
御
(
お
)
方
(
かた
)
か
知
(
し
)
りませぬが、
175
初
(
はじめ
)
て
会
(
あ
)
うた
此
(
この
)
私
(
わたし
)
に、
176
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
によく
云
(
い
)
つて
下
(
くだ
)
さいます。
177
何分
(
なにぶん
)
にも
憐
(
あはれ
)
な
私
(
わたし
)
の
今日
(
こんにち
)
の
境遇
(
きやうぐう
)
、
178
どうぞ
御
(
お
)
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さいませ』
179
と
手
(
て
)
を
合
(
あは
)
せて、
180
涙
(
なみだ
)
乍
(
なが
)
らに
頼
(
たの
)
む
憐
(
あは
)
れさ。
181
国依
(
くにより
)
『モシ、
182
エリナさまとやら、
183
必
(
かなら
)
ず
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
なさいますな。
184
吾々
(
われわれ
)
一同
(
いちどう
)
がキツとお
父
(
とう
)
さまを、
185
如何
(
どん
)
な
水牢
(
みづらう
)
の
中
(
なか
)
からでも、
186
日
(
ひ
)
ならずお
助
(
たす
)
け
申
(
まを
)
して、
187
あなたの
宅
(
うち
)
へ
送
(
おく
)
り
届
(
とど
)
けませう』
188
エリナ『ハイハイ、
189
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
190
何分
(
なにぶん
)
宜
(
よろ
)
しう
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
致
(
いた
)
します。
191
……あなたは、
192
さうしてウラル
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
で
御座
(
ござ
)
いますか』
193
国依
(
くにより
)
『イエイエ、
194
吾々
(
われわれ
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
国依別
(
くによりわけ
)
と
申
(
まを
)
す
者
(
もの
)
、
195
今
(
いま
)
此処
(
ここ
)
に
居
(
ゐ
)
る
両人
(
りやうにん
)
は、
196
チルの
国
(
くに
)
の
方
(
かた
)
で、
197
キジ、
198
マチと
云
(
い
)
ふ
非常
(
ひじやう
)
な
豪傑
(
がうけつ
)
ですよ。
199
キツと
助
(
たす
)
けて
上
(
あ
)
げますから、
200
機嫌
(
きげん
)
を
直
(
なほ
)
して
早
(
はや
)
く
家路
(
いへぢ
)
に
帰
(
かへ
)
り、
201
お
母
(
か
)
アさまにも
安心
(
あんしん
)
させて
上
(
あ
)
げなさい』
202
エリナ『ハイ、
203
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います』
204
と
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
にくれ、
205
地
(
ち
)
に
伏
(
ふ
)
して
泣
(
な
)
いて
居
(
ゐ
)
る。
206
国依
(
くにより
)
『キジ、
207
マチの
両人
(
りやうにん
)
、
208
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
だが、
209
モ
一度
(
いちど
)
ウラル
教
(
けう
)
の
霊場
(
れいぢやう
)
へ
引返
(
ひきかへ
)
し、
210
モウ
一戦
(
ひといくさ
)
を
始
(
はじ
)
め、
211
エスさまを
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
して
来
(
こ
)
ようぢやないか?』
212
キジ『ハイ、
213
それは
大変
(
たいへん
)
に
面白
(
おもしろ
)
いでせう。
214
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら、
215
たかの
知
(
し
)
れたブールやユーズにアナンの
如
(
ごと
)
き
木端
(
こつぱ
)
武者
(
むしや
)
が
大将株
(
たいしやうかぶ
)
をして
居
(
ゐ
)
る
様
(
やう
)
なウラル
教
(
けう
)
へ、
216
宣伝使
(
せんでんし
)
にワザワザ
往
(
い
)
つて
貰
(
もら
)
ふのは
実
(
じつ
)
に
畏
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
いぢやありませぬか。
217
あんな
者
(
もの
)
は
吾々
(
われわれ
)
一人
(
ひとり
)
にて
余
(
あま
)
つて
居
(
を
)
ります。
218
どうぞ
私
(
わたくし
)
一人
(
ひとり
)
を
日暮
(
ひぐら
)
シ
山
(
やま
)
に
差向
(
さしむ
)
けて
下
(
くだ
)
さい。
219
さうしてマチはエリナさまに
従
(
つ
)
いて
行
(
ゆ
)
き、
220
お
母
(
か
)
アさまの
病気
(
びやうき
)
を
鎮魂
(
ちんこん
)
して
直
(
なほ
)
して
上
(
あ
)
げる
役
(
やく
)
となり、
221
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
は
之
(
これ
)
よりヒルの
都
(
みやこ
)
へお
越
(
こ
)
しになり、
222
吾々
(
われわれ
)
が
芽出
(
めで
)
たく
凱旋
(
がいせん
)
して
帰
(
かへ
)
る
迄
(
まで
)
、
223
待
(
ま
)
つてゐて
下
(
くだ
)
さいませぬか?』
224
国依
(
くにより
)
『
随分
(
ずゐぶん
)
偉
(
えら
)
い
元気
(
げんき
)
だが、
225
必
(
かなら
)
ず
油断
(
ゆだん
)
は
出来
(
でき
)
ないぞ。
226
夜前
(
やぜん
)
大勝利
(
だいしようり
)
を
得
(
え
)
たからと
云
(
い
)
つて、
227
何時迄
(
いつまで
)
も
勝
(
か
)
つ
計
(
ばか
)
りにきまつたものぢやない。
228
随分
(
ずゐぶん
)
気
(
き
)
を
付
(
つ
)
けて、
229
両人
(
りやうにん
)
共
(
とも
)
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
くエスさまを
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
す
様
(
やう
)
に
御
(
ご
)
苦労
(
くらう
)
にならうかな。
230
エリナさまは
私
(
わし
)
がヒルの
都
(
みやこ
)
へ
行
(
ゆ
)
く
途中
(
とちう
)
だから、
231
お
宅
(
たく
)
迄
(
まで
)
送
(
おく
)
り
届
(
とど
)
け、
232
お
母
(
か
)
アさまの
大病
(
たいびやう
)
を
治
(
なほ
)
しておいて、
233
ヒルの
都
(
みやこ
)
へ
行
(
ゆ
)
くことと
致
(
いた
)
しませう』
234
キジはニタリと
笑
(
わら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
235
キジ『
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
236
中々
(
なかなか
)
抜目
(
ぬけめ
)
がありませぬなア』
237
と
心
(
こころ
)
ありげに
笑
(
わら
)
ふ。
238
マチ『きまつた
事
(
こと
)
だ。
239
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
のお
道
(
みち
)
に
一分
(
いちぶ
)
一厘
(
いちりん
)
、
240
毛筋
(
けすぢ
)
の
横巾
(
よこはば
)
も
抜目
(
ぬけめ
)
があつて
堪
(
たま
)
るかい。
241
お
前
(
まへ
)
こそ
今度
(
こんど
)
は
抜目
(
ぬけめ
)
なく、
242
気
(
き
)
を
付
(
つ
)
けて
行
(
ゆ
)
かないと、
243
思
(
おも
)
はぬ
失敗
(
しつぱい
)
を
演
(
えん
)
ずるぞよ』
244
国依
(
くにより
)
『マチさまも
是非
(
ぜひ
)
同道
(
どうだう
)
を
願
(
ねが
)
ひますよ。
245
どうもキジさま
一人
(
ひとり
)
では
心許
(
こころもと
)
ないからなア』
246
キジ『
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
247
余
(
あま
)
りひどいですな。
248
高
(
たか
)
が
知
(
し
)
れたウラル
教
(
けう
)
の
霊場
(
れいぢやう
)
、
249
私
(
わたくし
)
一人
(
ひとり
)
にて
喰
(
く
)
ひ
足
(
た
)
らぬ
様
(
やう
)
な
気分
(
きぶん
)
が
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
ります。
250
マチの
様
(
やう
)
な
男
(
をとこ
)
、
251
連
(
つ
)
れて
行
(
ゆ
)
くのは
何
(
なん
)
だか
足手纏
(
あしてまと
)
ひの
様
(
やう
)
な
気
(
き
)
が
致
(
いた
)
しますけれど、
252
あなたの
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
とあらば
伴
(
つ
)
れて
行
(
ゆ
)
きます。
253
……コレ、
254
マチ、
255
貴様
(
きさま
)
は
余程
(
よつぽど
)
果報者
(
くわほうもの
)
だ。
256
征夷
(
せいい
)
大将軍
(
だいしやうぐん
)
キジ
公
(
こう
)
の
副将
(
ふくしやう
)
となつて
行
(
ゆ
)
くのだから、
257
さぞ
光栄
(
くわうえい
)
に
思
(
おも
)
つてゐるだらうなア』
258
マチ『アハヽヽヽ
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬ
)
かすのだ。
259
余
(
あま
)
り
調子
(
てうし
)
に
乗
(
の
)
つて
失敗
(
しつぱい
)
をせぬ
様
(
やう
)
にせよ。
260
……そんなら
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
261
キジ
公
(
こう
)
の
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひ、
262
これより
日暮
(
ひぐら
)
シ
山
(
やま
)
に
立向
(
たちむか
)
ひ、
263
ウラル
教
(
けう
)
の
大将
(
たいしやう
)
ブール
其
(
その
)
他
(
た
)
の
奴原
(
やつばら
)
を
片
(
かた
)
つ
端
(
ぱし
)
から
言向
(
ことむ
)
け
和
(
やは
)
し、
264
エスの
宣伝使
(
せんでんし
)
を
救
(
すく
)
ひ
出
(
だ
)
し、
265
日
(
ひ
)
ならず
凱旋
(
がいせん
)
の
上
(
うへ
)
、
266
ヒルの
都
(
みやこ
)
の
楓別
(
かへでわけの
)
命
(
みこと
)
が
御
(
おん
)
館
(
やかた
)
に
於
(
おい
)
て
御
(
ご
)
面会
(
めんくわい
)
申
(
まを
)
しませう。
267
……サア、
268
キジ
公
(
こう
)
の
大将
(
たいしやう
)
、
269
早
(
はや
)
く
出立
(
しゆつたつ
)
遊
(
あそ
)
ばせよ』
270
と、
271
からかひ
乍
(
なが
)
ら、
272
早
(
はや
)
くも
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
後
(
あと
)
に、
273
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つて
元来
(
もとき
)
し
坂路
(
さかみち
)
を
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
274
キジ『オイオイ
大将
(
たいしやう
)
を
後
(
あと
)
にして、
275
先
(
さき
)
へ
行
(
ゆ
)
くと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるものか。
276
待
(
ま
)
つた
待
(
ま
)
つた』
277
と
呼
(
よば
)
はり
乍
(
なが
)
ら、
278
キジ『
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
279
エリナ
様
(
さま
)
、
280
左様
(
さやう
)
なら、
281
後日
(
ごじつ
)
お
目
(
め
)
にかかりませう』
282
と
言葉
(
ことば
)
を
残
(
のこ
)
し、
283
マチの
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
つかけ
行
(
ゆ
)
く。
284
これより
国依別
(
くによりわけ
)
はエリナと
共
(
とも
)
にアラシカ
山
(
やま
)
の
山麓
(
さんろく
)
エスの
宅
(
たく
)
に
至
(
いた
)
り、
285
エリナの
母
(
はは
)
テールの
病
(
やまひ
)
を
癒
(
い
)
やさむと
祈願
(
きぐわん
)
し、
286
数日
(
すうじつ
)
逗留
(
とうりう
)
の
後
(
のち
)
ヒルの
都
(
みやこ
)
を
指
(
さ
)
して
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
287
(
大正一一・八・一六
旧六・二四
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 雉と町
(B)
(N)
大蜈蚣 >>>
霊界物語
>
海洋万里(第25~36巻)
>
第30巻(巳の巻)
> 第5篇 山河動乱 > 第21章 神王の祠
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【第21章 神王の祠|第30巻|海洋万里|霊界物語|/rm3021】
合言葉「みろく」を入力して下さい→