霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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附記(ふき) ()(しま)温泉(をんせん)

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第30巻 海洋万里 巳の巻 篇:後付 よみ(新仮名遣い):
章:附記 湯ケ島温泉 よみ(新仮名遣い):ゆがしまおんせん 通し章番号:
口述日:1922(大正11)年08月15日(旧06月23日) 口述場所: 筆録者: 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年9月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
暑い夏の季節に、四週間にわたって天城山麓の景勝地である湯ケ島温泉で松村真澄・出口宇知麿の二人と霊界物語を口述したのは、実に爽快であった。
宿の主人や四五人の信徒とともに吊り橋を渡り、山田峠の畷に登っていった。下田街道に出て、日光の届かぬ山路をさらに登っていく。
新道から旧道に外れる松が二三本生えたところを登っていくと、一面の原野に細い道が通っており、それを登ると清滝近道の石碑が立っている。草原を四五町右に取って行くと、ダラダラくだりとなり、次第に谷川へ降りていく。そこは狩野川上流の滝である。
休息の後、元来た道を旧道へ戻り、山へ登っていく。次第に山の頂上から雨雲が出てきて、ぽつりぽつりと雨が落ちてきた。右滑沢道という木標の方へ行くと、水車小屋のある谷川を俯瞰できた。
二三町行くと、大川端というところに着く。ここからは天城山中のもっとも険しいところである。檜の暗く茂った谷間に踏み入れると、樹木は苔厚くむしている。左右を絶壁に挟まれた谷底に出た。
丸木橋を渡って絶壁を登り切ると、天城山随道の北に近い。北口の茶屋で一服してから湯ケ島に戻ろうとしていたとき、右も左も一面の霧で、四五間先の木立でさえもぼんやりとして茫漠たる霧の海を夢路のように迷うのであった。
一行は一日の光陰を有意義に費やして、夕方に湯本館の大本臨時教主殿に戻ってきた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-02-22 19:06:21 OBC :rm309901
愛善世界社版:280頁 八幡書店版:第5輯 673頁 修補版: 校定版:297頁 普及版:118頁 初版: ページ備考:
001 三伏(さんぷく)(あつ)(なつ)(あさ)002河辺(かはべ)()ちて水流(すゐりう)打見(うちみ)やれば(こころ)(すず)し。003(きり)()谷川(たにがは)両岸(りやうがん)()(なら)種々(しゆじゆ)木立(こだち)(かす)ませて、004(おぼろ)なる向山(むかふやま)姿(すがた)は、005(まつ)(すぎ)(かへで)雑木(ざふき)青葉(あをば)()(まじ)はり、006()()はれぬ(まぼろし)(やう)色彩(しきさい)(うか)べて(たに)から(たに)へと(うご)いて()く。007湯本館(ゆもとくわん)湯煙(ゆけむ)りは谷川(たにがは)(うへ)(しづ)かに(しづ)かに(わた)つて()く。
008 猫児川(ねつこがは)狩野川(かのがは)との出会(であ)つた景勝(けいしよう)地点(ちてん)に、009一廓(いつくわく)(つく)つて()天城山(あまぎさん)(ろく)温泉場(おんせんば)湯ケ島(ゆがしま)で、010(よん)週間(しうかん)松村(まつむら)真澄(まさずみ)()011出口(でぐち)宇知丸(うちまる)(とも)霊界(れいかい)物語(ものがたり)口述(こうじゆつ)筆記(ひつき)しながら(すご)したのは(じつ)壮快(さうくわい)であつた。012見上(みあ)ぐる猫児峠(ねつこたうげ)(いただ)きは(いま)朝日(あさひ)()(はじ)めた(とき)で、013大空(おほぞら)には紺碧(こんぺき)絵衣(ゑぎぬ)(ひろ)げて五色(ごしき)光彩(くわうさい)(てら)し、014天城(あまぎ)連峰(れんぽう)(おほ)きなうねりの太陽(たいやう)()にしてコバルト(いろ)(なが)(つづ)いて()るのが楼上(ろうじやう)から()えて、015(かは)()(げき)する水音(みなおと)(たうげ)()(かぜ)(おと)(みみ)につく。016宿(やど)主人(しゆじん)四五(しご)信徒(しんと)(ともな)はれて(あさ)(はや)くより(あやふ)釣橋(つりばし)(わた)ると(ただち)山田(やまだ)(なはて)(のぼ)る。017(かき)(くり)()青々(あをあを)(しげ)り、018未熟(みじゆく)(くだもの)(あき)()(がほ)(あを)(かほ)(さら)して(われ)()一行(いつかう)目送(もくそう)して()る。019(すこ)(のぼ)つて下田(しもだ)街道(かいだう)()た。020(あさ)(かぜ)(なん)となく気分(きぶん)()(すず)しい(かぜ)谷底(たにそこ)から()()たり、021日光(につくわう)(とど)かぬ山路(やまみち)辿(たど)()は、022(なつ)()(わす)るる(くらゐ)である。023(すぎ)木立(こだち)(おほ)(やま)()うて(のぼ)つて()く。024谷川(たにかは)(へだ)てて雑木(ざふき)青葉(あをば)色々(いろいろ)濃厚(のうこう)(いろ)()せるばかりで、025(かぜ)()かるる(すすき)(やいば)が、026さらさらと(おと)()てて(なみ)()つやうに(なび)いて()る。027一面(いちめん)蒼黒(あをぐろ)(くさ)(いろ)がうねうねと(つづ)いて、028(みぎ)(ひだり)(たか)(やま)(やま)(うへ)から(うへ)からと(いただ)きを(あら)はして()ると、029真蒼(まつさを)()れた(そら)にふわりふわりと(しろ)(けぶり)のやうな(くも)(うか)んで()る。030新道(しんだう)から旧道(きうだう)(はづ)れる(まつ)二三本(にさんぼん)ある(ところ)(のぼ)ると一面(いちめん)原野(げんや)で、031(はぎ)(すすき)竜胆(りんだう)()元気(げんき)よく(かぜ)にひるがへつて(せう)ダンスを(はじ)めて()る。032(なか)一筋(ひとすぢ)(ほそ)小道(こみち)(とほ)つて、033それを四五町(しごちやう)(ばか)(のぼ)ると清滝(きよたき)近道(ちかみち)石碑(せきひ)()つて()る。034(やや)平坦(へいたん)草原(くさはら)(つづ)きの(つゆ)()けて(また)もや四五町(しごちやう)(みぎ)()つて()くと、035ダラダラ(くだ)りになつた坂道(さかみち)青々(あをあを)としたくぬぎ(はやし)があつて、036(その)(した)(ふか)谷川(たにがは)物凄(ものすさ)まじく木魂(こだま)(かへ)(みづ)(おと)山々(やまやま)(ひろ)がつて()る。037(まつ)老樹(らうじゆ)(あやふ)げに(たに)(たふ)れかかつて()るのを()()えて(すす)んで()くと、038(わづ)かに(あし)()れる(くらゐ)羊腸(やうちやう)小径(こみち)団子石(だんごいし)がゴロリゴロリと(ころ)がつて()て、039(あゆ)(たび)谷川(たにがは)()ちて()く。040()()(すが)(つる)(つた)(した)(した)へと二町(にちやう)(ばか)りも(くだ)ると、041(すぐ)狩野川(かのがは)上流(じやうりう)(たき)で、042(いつ)(しやく)以上(いじやう)もあるヤマメの(あつ)まつて()(たき)である。043安藤(あんどう)044杉山(すぎやま)045福井(ふくゐ)()()二三(にさん)日前(にちまへ)料理(れうり)して()()げたのは(この)(たき)捕獲(ほくわく)したヤマメだと愉快気(ゆくわいげ)(はな)しつつ()く。
046 此処(ここ)狩野川(かのがは)上流(じやうりう)(たき)で、047二十丈(にじふぢやう)(あま)飛瀑(ひばく)薄曇(うすぐも)りになつた大空(おほそら)反射(はんしや)()けて鼠色(ねずみいろ)(くづ)()ちる(いきほひ)()()(えだ)(なつ)谷風(たにかぜ)にあほられてひるがへるのが、048如何(いか)にも見事(みごと)である。049(ここ)でしばらく休息(きうそく)して(ふたた)(もと)()(みち)(かへ)つて、050それから(また)旧道(きうだう)(のぼ)る。051山道(やまみち)左右(さいう)雑草(ざつさう)(しげ)つて(かぜ)になびきつつ一行(いつかう)(まね)いて()るやうな心地(ここち)がする。052次第(しだい)々々(しだい)に、053(やま)頂上(ちやうじやう)から雨雲(あまぐも)()()た。054湯ケ嶋(ゆがしま)新田(しんでん)小村(こむら)はモウぽつりぽつりと(あめ)()ちて()る。
055 委細(ゐさい)(かま)はずどしどしと山路(やまみち)(のぼ)る。056(まつ)(もみ)一面(いちめん)生茂(おひしげ)つた(やま)(へだ)てて谷底(たにそこ)水音(みなおと)(みみ)にしながら木小屋(きごや)(ひと)(とほ)()すと、057(みち)真直(まつすぐ)()ても()(つづ)いて雑木(ざふき)(さき)(あめ)()れて()()えしい(いろ)をして()るのに、058平素(へいそ)から蒼白(あをじろ)(かほ)宇知丸(うちまる)さまは一層(いつそう)(あを)(かほ)になつて()る。059(はやし)静子(しづこ)浪子(なみこ)紅裙隊(こうくんたい)今日(けふ)(なん)となく元気(げんき)(うす)いやうな(かん)じがした。060小禽(ことり)(さへづ)(こゑ)(おく)られて、061右滑(みぎなめ)沢道(ざはだう)()いた木標(もくへう)(みぎ)(した)見下(みをろ)しながら()くと、062(こな)(やう)(あめ)(なか)水車(みづぐるま)をかけて()()()小屋(こや)(ちい)さく(かす)んで、063(かけひ)水車(みづぐるま)谷川(たにがは)(なが)れが面白(おもしろ)俯瞰図(ふかんづ)(ゑが)いて()る。
064 二三町(にさんちやう)()くと出水(でみづ)山道(やまみち)()(ところ)(とほ)ると大川端(おほかはばた)()(ところ)()く。065これから(さき)天城山(あまぎさん)(ちう)(もつと)(けは)しき(ところ)となる。066(ひのき)(くら)(しげ)つた谷間(たにま)一歩(いつぽ)()()れると、067(いづ)れの樹木(じゆもく)(みな)(こけ)(あつ)()して木々(きぎ)(しづく)(あめ)よりも(おほ)く、068生々(なまなま)しい草木(くさき)(にほ)ひが湿(しめ)つぽく(はな)()いて()る。069(みぎ)(ひだり)見上(みあ)ぐる(ばか)りの絶壁(ぜつぺき)(つつ)まれ、070(くも)つた(そら)雨雲(あまぐも)(かげ)のやうに頭上(づじやう)(はし)つて()る。071(みち)もロクに()(なか)()けて()くと谷底(たにそこ)()た。072此処(ここ)には(おほ)きな(いは)(いは)とに掛渡(かけわた)した丸木橋(まるきばし)があつて、073それを(あやふ)(わた)ると(また)もや()()がるやうにして絶壁(ぜつぺき)(のぼ)らねばならぬ。074明治(めいじ)四十二(よんじふに)(ねん)山崩(やまくづ)れに()(たふ)されたと()大木(たいぼく)が、075(いま)だに(いは)(いは)との(あひだ)(はさ)まつて()るのを(つた)つて、076(わづ)かに(いは)(うへ)()(のぼ)ると、077さつと()()山風(やまかぜ)(みね)木々(きぎ)()(まは)すので自然(しぜん)舞踏(ぶたふ)(えん)ぜられる。
078 (この)山路(やまみち)(のぼ)()ると天城山(あまぎさん)隧道(すゐだう)(きた)(ちか)いので、079(はや)幾重(いくへ)にも(した)になつた連山(れんざん)雨雲(あまぐも)(うご)いて()(あひだ)から頂上(ちやうじやう)だけを()して(そら)灰色(はいいろ)(くも)灰色(はいいろ)(やま)(くろ)ずんだ(いろ)とで(いろ)()えて()ても、080(あめ)(かす)んだ(ゆめ)(やう)木々(きぎ)(いろ)()(ゑが)くには(きは)めて面白(おもしろ)さうに(かん)じられた。081北口(きたぐち)茶屋(ちやや)一寸(ちよつと)休息(きうそく)(のち)湯ケ嶋(ゆがしま)出立(しゆつたつ)しようとした(とき)082(みぎ)(ひだり)一面(いちめん)(きり)四五間(しごけん)さきの立木(たちき)でさへもぼんやりとして(たに)勿論(もちろん)(そら)(やま)との(さかひ)さへ()えず、083(ただ)茫々(ばうばう)漠々(ばくばく)たる(きり)(うみ)夢路(ゆめぢ)(やう)(まよ)ふのであつた。084一行(いつかう)(いち)(にち)光陰(くわういん)有意義(いういぎ)(つひ)やして、085夕方(ゆふがた)(そら)湯本館(ゆもとくわん)(がは)大本(おほもと)臨時(りんじ)教主殿(けうしゆでん)へと(かへ)つて()た。
086   大正十一年八月十五日
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