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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第30巻(巳の巻)
序
凡例
総説
第1篇 高砂の松
第1章 主従二人
第2章 乾の滝
第3章 清めの滝
第4章 懐旧の歌
第2篇 珍野瞰下
第5章 下坂の歌
第6章 樹下の一宿
第7章 提燈の光
第8章 露の道
第3篇 神縁微妙
第9章 醜の言霊
第10章 妖雲晴
第11章 言霊の妙
第12章 マラソン競争
第13章 都入
第4篇 修理固成
第14章 霊とパン
第15章 花に嵐
第16章 荒しの森
第17章 出陣
第18章 日暮シの河
第19章 蜘蛛の児
第20章 雉と町
第5篇 山河動乱
第21章 神王の祠
第22章 大蜈蚣
第23章 ブール酒
第24章 陥穽
附記 湯ケ島温泉
附記 天津祝詞解
附記 デモ国民歌
余白歌
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霊界物語
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海洋万里(第25~36巻)
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第30巻(巳の巻)
> 第4篇 修理固成 > 第14章 霊とパン
<<< 都入
(B)
(N)
花に嵐 >>>
第一四章
霊
(
れい
)
とパン〔八五六〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第30巻 海洋万里 巳の巻
篇:
第4篇 修理固成
よみ(新仮名遣い):
しゅうりこせい
章:
第14章 霊とパン
よみ(新仮名遣い):
れいとぱん
通し章番号:
856
口述日:
1922(大正11)年08月15日(旧06月23日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年9月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
言依別命と国依別は、テルの港から北へ進んで、御倉山という高山に到着した。竜世姫命を奉斎した立派な社が建っている。二人はここに参拝した。
谷川には御倉魚という美しい魚が棲んでいたが、国人たちはこれを神の使いと信じ、食べるとたちまち口がきけなくなり斑紋が体に現れると恐れて、口にするものはなかった。
この地方はこのごろ、飢饉に襲われて、人々が祈願をしに社に集まってきていた。言依別命は国依別とともにこの有様を見て、人々を救おうと思案にくれていた。谷底には白衣を着たウラル教の宣伝使が人々に向かって説教をしている。
なぜこのような苦しみを受けなければならないのか、と問う人々に対して、ウラル教の宣伝使は苦しみの世界である現世を離れよ、と説いていた。飢饉の苦しみを訴える人々に対して、ただ殺生を禁じ、神を称えることのみを説いていた。
言依別命は宣伝歌を歌いながら谷底に下りてきた。その歌には、御倉魚を人々に与えて飢饉を救ってやろうと歌われていた。
ウラル教の宣伝使ブールは二人のところにやってきて、神の御使いの魚を取って喰わせようという言依別命に抗議した。言依別命は人の命と魚の命とどちらが大切か、と問いかける。ウラル教の宣伝使はあくまで人は罪の子であり、贖罪のために苦しみを受けるべきだと主張する。
国依別は売り言葉に買い言葉で、皆の目の前で御倉魚を実地に食べて、神の祟りがあるかどうか確かめることになった。国依別が谷川に下りて、たくさん泳いでいる御倉魚を掴み取ってむしゃむしゃ食べるのを目にして、人々は安心して国依別に続いた。
ウラル教の宣伝使たちはこそこそと姿を消してしまった。これより、この国のひとたちはウラル教に愛想をつかし、三五教を奉じることになった。
言依別命はテルの国を越えてウヅの国に行くこととなった。国依別は言依別命の命を奉じてしばらくここに留まり、ヒルの都からハルの国を廻ってからウヅの国に合流することになった。
国依別の布教によって、三五教は非常な勢いを得ることになった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-06-10 17:28:26
OBC :
rm3014
愛善世界社版:
165頁
八幡書店版:
第5輯 630頁
修補版:
校定版:
177頁
普及版:
64頁
初版:
ページ備考:
001
テルの
港
(
みなと
)
に
安着
(
あんちやく
)
した
高島丸
(
たかしままる
)
を
乗
(
のり
)
すてて、
002
言依別
(
ことよりわけの
)
神
(
かみ
)
、
003
国依別
(
くによりわけ
)
は
北
(
きた
)
へ
北
(
きた
)
へと
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
004
此処
(
ここ
)
には
御倉山
(
みくらやま
)
と
云
(
い
)
ふ
高山
(
かうざん
)
があり、
005
国人
(
くにびと
)
の
信仰
(
しんかう
)
に
依
(
よ
)
りて、
006
竜世姫
(
たつよひめの
)
命
(
みこと
)
を
奉斎
(
ほうさい
)
したる
可
(
か
)
なり
立派
(
りつぱ
)
な
社
(
やしろ
)
が
建
(
た
)
つてゐる。
007
之
(
これ
)
を
御倉
(
みくら
)
の
社
(
やしろ
)
と
云
(
い
)
ふ。
008
テルとヒルとの
国境
(
くにざかひ
)
に
秀立
(
しうりつ
)
せる
大山脈
(
だいさんみやく
)
の
最
(
もつと
)
もすぐれて
高
(
たか
)
き
峰
(
みね
)
である。
009
祠
(
ほこら
)
は
御倉山
(
みくらやま
)
の
麓
(
ふもと
)
にあつた。
010
さうして
清
(
きよ
)
き
広
(
ひろ
)
き
谷川
(
たにがは
)
が
飛沫
(
ひまつ
)
を
飛
(
と
)
ばして
唸
(
うな
)
りを
立
(
た
)
てて
居
(
ゐ
)
る。
011
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
は
国依別
(
くによりわけ
)
と
共
(
とも
)
に、
012
先
(
ま
)
づ
第一
(
だいいち
)
に
此処
(
ここ
)
に
参詣
(
さんけい
)
した。
013
此
(
この
)
谷川
(
たにがは
)
に
限
(
かぎ
)
つて、
014
御倉魚
(
みくらうを
)
と
称
(
しよう
)
する、
015
長
(
なが
)
さ
五六
(
ごろく
)
尺
(
しやく
)
のいろいろ
雑多
(
ざつた
)
の
斑紋
(
はんもん
)
ある
美
(
うつく
)
しき
魚
(
うを
)
が
沢山
(
たくさん
)
に
棲
(
す
)
んで
居
(
ゐ
)
る。
016
されど
国人
(
くにびと
)
はこれ
全
(
まつた
)
く
御倉
(
みくら
)
の
社
(
やしろ
)
の
御
(
おん
)
使
(
つかひ
)
と
信
(
しん
)
じて、
017
之
(
これ
)
を
捕獲
(
ほくわく
)
せむとする
者
(
もの
)
は
一人
(
ひとり
)
もなかつた。
018
もしも
此
(
この
)
魚
(
うを
)
を
取
(
と
)
り
食
(
くら
)
ふ
者
(
もの
)
ある
時
(
とき
)
は、
019
忽
(
たちま
)
ち
口
(
くち
)
歪
(
ゆが
)
み、
020
唖
(
おし
)
となり、
021
顔面
(
がんめん
)
全部
(
ぜんぶ
)
に
青
(
あを
)
赤
(
あか
)
白
(
しろ
)
黄
(
き
)
紫
(
むらさき
)
萌黄
(
もえぎ
)
などの
斑紋
(
はんもん
)
が
現
(
あら
)
はれるので、
022
誰
(
たれ
)
も
之
(
これ
)
を
捕獲
(
ほくわく
)
する
者
(
もの
)
なきのみならず、
023
此
(
この
)
魚
(
うを
)
を
見
(
み
)
れば
神
(
かみ
)
の
如
(
ごと
)
くに
尊敬
(
そんけい
)
し、
024
手
(
て
)
を
合
(
あは
)
せて
吾
(
わが
)
願望
(
ぐわんもう
)
を
祈願
(
きぐわん
)
するを
常
(
つね
)
としてゐた。
025
此
(
この
)
頃
(
ころ
)
ヒルとテルとの
国境
(
くにざかひ
)
に
於
(
お
)
ける
殆
(
ほと
)
んど
五十
(
ごじふ
)
里
(
り
)
四方
(
しはう
)
の
地域
(
ちゐき
)
は
連日
(
れんじつ
)
雨
(
あめ
)
降
(
ふ
)
らず、
026
草木
(
さうもく
)
は
殆
(
ほと
)
んど
枯葉
(
かれは
)
の
如
(
ごと
)
く、
027
果物
(
くだもの
)
は
実
(
み
)
入
(
い
)
らず、
028
五穀
(
ごこく
)
も
亦
(
また
)
一粒
(
ひとつぶ
)
も
取
(
と
)
れなかつた。
029
夫
(
そ
)
れが
為
(
ため
)
路傍
(
ろばう
)
に
餓孚
(
がへう
)
充
(
み
)
ち、
030
其
(
その
)
惨状
(
さんじやう
)
目
(
め
)
も
当
(
あ
)
てられない
計
(
ばか
)
りであつた。
031
数多
(
あまた
)
の
国人
(
くにびと
)
は
御倉山
(
みくらやま
)
の
山麓
(
さんろく
)
に
集
(
あつ
)
まり、
032
此
(
この
)
御倉魚
(
みくらうを
)
に
向
(
むか
)
つて、
033
饑饉
(
ききん
)
を
免
(
のが
)
れむことを
祈願
(
きぐわん
)
する
者
(
もの
)
引
(
ひ
)
きも
切
(
き
)
らず、
034
此
(
この
)
谷間
(
たにま
)
は
殆
(
ほとん
)
ど
人
(
ひと
)
を
以
(
もつ
)
て
埋
(
うづ
)
もれてゐた。
035
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
は
国依別
(
くによりわけ
)
と
共
(
とも
)
に
此
(
この
)
有様
(
ありさま
)
を
眺
(
なが
)
め
憐愍
(
れんびん
)
の
情
(
じやう
)
に
堪
(
た
)
へかね、
036
如何
(
いか
)
にもして
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
が
飢
(
うゑ
)
を
救
(
すく
)
ひ、
037
大切
(
たいせつ
)
なる
生命
(
いのち
)
を
保
(
たも
)
たしめむと、
038
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
けて
思案
(
しあん
)
に
暮
(
くれ
)
て
居
(
ゐ
)
る。
039
谷底
(
たにそこ
)
深
(
ふか
)
く
見渡
(
みわた
)
せば、
040
白衣
(
びやくい
)
を
着
(
き
)
たるウラル
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
現
(
あら
)
はれて、
041
切
(
しき
)
りに
天国
(
てんごく
)
の
福音
(
ふくいん
)
を
説
(
と
)
き
諭
(
さと
)
して
居
(
ゐ
)
る。
042
人々
(
ひとびと
)
は
宣伝使
(
せんでんし
)
の
前
(
まへ
)
に
蝟集
(
ゐしふ
)
し、
043
空腹
(
くうふく
)
を
抱
(
かか
)
へて、
044
いろいろと
質問
(
しつもん
)
を
試
(
こころ
)
みてゐた。
045
甲
(
かふ
)
、
046
細
(
ほそ
)
き
声
(
こゑ
)
にて、
047
甲『
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
048
どうして
此
(
この
)
様
(
やう
)
な
饑饉
(
ききん
)
が
参
(
まゐ
)
つたので
御座
(
ござ
)
いませう?
吾々
(
われわれ
)
等
(
たち
)
は
最早
(
もはや
)
生命
(
いのち
)
は
旦夕
(
たんせき
)
に
迫
(
せま
)
り、
049
死
(
し
)
を
待
(
ま
)
つより
途
(
みち
)
なき
者
(
もの
)
、
050
両親
(
りやうしん
)
は
四五
(
しご
)
日
(
にち
)
前
(
まへ
)
に
餓死
(
がし
)
し
妻
(
つま
)
は
乳児
(
ちのみご
)
を
抱
(
だ
)
いたまま、
051
之
(
こ
)
れ
亦
(
また
)
餓死
(
がし
)
し、
052
後
(
あと
)
に
私
(
わたし
)
一人
(
ひとり
)
取残
(
とりのこ
)
されましたが、
053
最早
(
もはや
)
三日
(
みつか
)
の
寿命
(
じゆみやう
)
もむづかしくなつて
来
(
き
)
ました。
054
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ひ
給
(
たま
)
ふ
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
、
055
真
(
まこと
)
におはしますならば、
056
なぜ
斯様
(
かやう
)
な
罪
(
つみ
)
のない
子供
(
こども
)
までが、
057
饑餓
(
きが
)
の
苦
(
くるし
)
みを
受
(
う
)
けて
居
(
ゐ
)
るのに、
058
どうもして
下
(
くだ
)
さらないのでせうか?
私
(
わたくし
)
等
(
ら
)
は
今日
(
こんにち
)
に
至
(
いた
)
つて、
059
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
存在
(
そんざい
)
を
疑
(
うたが
)
はねばならなくなりました。
060
私
(
わたし
)
の
村
(
むら
)
は
最早
(
もはや
)
七八分
(
しちはちぶ
)
まで、
061
ウラル
教
(
けう
)
を
信
(
しん
)
じて
居乍
(
ゐなが
)
ら、
062
餓死
(
がし
)
して
了
(
しま
)
ひました。
063
斯
(
こ
)
うやつて
此処
(
ここ
)
に
参
(
まゐ
)
つて
居
(
ゐ
)
る
人々
(
ひとびと
)
は、
064
御存
(
ごぞん
)
じの
通
(
とほ
)
り
痩
(
や
)
せ
衰
(
おとろ
)
へ、
065
何程
(
なにほど
)
達者
(
たつしや
)
な
者
(
もの
)
でも、
066
ここ
十日
(
とをか
)
の
間
(
あひだ
)
には
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
らず
餓死
(
がし
)
をせなくてはならぬ
運命
(
うんめい
)
におかれてる
者
(
もの
)
計
(
ばか
)
りです。
067
どうか
此
(
この
)
苦
(
くるし
)
みをお
助
(
たす
)
け
下
(
くだ
)
さる
訳
(
わけ
)
には
参
(
まゐ
)
らぬものでせうか?』
068
宣伝使
(
せんでんし
)
『
迷
(
まよ
)
へる
者
(
もの
)
よ!
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
ウラル
教
(
けう
)
の
神
(
かみ
)
の
福音
(
ふくいん
)
を
聞
(
き
)
け!
人
(
ひと
)
の
斯世
(
このよ
)
に
生
(
うま
)
れ
来
(
きた
)
るや、
069
幽窮
(
いうきう
)
無限
(
むげん
)
の
天地
(
てんち
)
に
比
(
くら
)
ぶれば、
070
旦
(
あした
)
の
露
(
つゆ
)
の
短
(
みじか
)
き
命
(
いのち
)
のみ。
071
現世
(
げんせ
)
は
仮
(
かり
)
の
浮世
(
うきよ
)
なるぞ、
072
苦
(
くるし
)
みの
家
(
いへ
)
なるぞ、
073
火宅
(
くわたく
)
なるぞ。
074
何
(
なに
)
を
苦
(
くるし
)
んで
現世
(
げんせ
)
にあこがれ、
075
苦
(
くるし
)
みを
求
(
もと
)
めむとするか。
076
時
(
とき
)
は
近
(
ちか
)
づきたり、
077
審判
(
さばき
)
の
時
(
とき
)
は……
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
、
078
わが
前
(
まへ
)
に
悔
(
く
)
い
改
(
あらた
)
め、
079
盤古
(
ばんこ
)
大神
(
だいじん
)
の
前
(
まへ
)
に
今迄
(
いままで
)
の
重
(
おも
)
き
罪
(
つみ
)
を
謝
(
しや
)
せよ。
080
然
(
しか
)
らば
汝
(
なんぢ
)
が
生命
(
せいめい
)
は
仮令
(
たとへ
)
飢
(
う
)
ゑ
死
(
じ
)
にする
共
(
とも
)
、
081
其
(
その
)
霊魂
(
れいこん
)
は
永遠
(
ゑいゑん
)
の
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
きみのる
天国
(
てんごく
)
に
救
(
すく
)
はれ、
082
無限
(
むげん
)
の
栄楽
(
ゑいらく
)
を
受
(
う
)
け、
083
常世
(
とこよ
)
の
春
(
はる
)
を
楽
(
たのし
)
む
事
(
こと
)
を
得
(
え
)
む。
084
悔
(
く
)
い
改
(
あらた
)
むるは
今
(
いま
)
なるぞ。
085
あゝ
愚
(
おろか
)
なる
者
(
もの
)
よ、
086
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
は
神
(
かみ
)
の
国
(
くに
)
の
尊
(
たふと
)
きことを
知
(
し
)
らず、
087
物質
(
ぶつしつ
)
上
(
じやう
)
の
欲
(
よく
)
に
囚
(
とら
)
はれて、
088
焦熱
(
せうねつ
)
地獄
(
ぢごく
)
の
消
(
き
)
えぬ
火
(
ひ
)
に
焼
(
や
)
かれて、
089
身
(
み
)
を
苦
(
くるし
)
まむとするか。
090
天国
(
てんごく
)
は
近
(
ちか
)
づけり、
091
悔
(
く
)
い
改
(
あらた
)
めて、
092
救世
(
きうせい
)
の
福音
(
ふくいん
)
をきけ!
神
(
かみ
)
は
汝
(
なんぢ
)
と
倶
(
とも
)
にあり、
093
汝
(
なんぢ
)
は
清
(
きよ
)
き
神
(
かみ
)
の
僕
(
しもべ
)
として、
094
日夜
(
にちや
)
に
神
(
かみ
)
をほめ
称
(
たた
)
へよ!』
095
と
諄々
(
じゆんじゆん
)
として
説
(
と
)
いてゐる。
096
乙『
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
097
あなたの
御
(
お
)
話
(
はなし
)
は
誠
(
まこと
)
に
結構
(
けつこう
)
で
御座
(
ござ
)
いますが、
098
吾々
(
われわれ
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
今
(
いま
)
や
瀕死
(
ひんし
)
の
境
(
さかひ
)
に
陥
(
おちい
)
り
現
(
げん
)
に
地獄
(
ぢごく
)
の
苦
(
くるし
)
みを
受
(
う
)
けてをります。
099
現在
(
げんざい
)
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
に
恋
(
こひ
)
しき
父
(
ちち
)
は
飢
(
うゑ
)
に
倒
(
たふ
)
れ、
100
妻
(
つま
)
亦
(
また
)
倒
(
たふ
)
れ、
101
兄弟
(
けうだい
)
姉妹
(
しまい
)
幼児
(
ようじ
)
に
至
(
いた
)
る
迄
(
まで
)
、
102
飢饉
(
ききん
)
の
為
(
ため
)
に
斃
(
たほ
)
れ
亡
(
ほろ
)
び
行
(
ゆ
)
く
此
(
この
)
有様
(
ありさま
)
、
103
天国
(
てんごく
)
に
救
(
すく
)
ひ
給
(
たま
)
ふは
有難
(
ありがた
)
しとは
思
(
おも
)
へ
共
(
ども
)
、
104
パンを
与
(
あた
)
へ
給
(
たま
)
はずば、
105
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
は
生
(
い
)
くるを
得
(
え
)
ず、
106
如何
(
いか
)
なれば
此
(
この
)
惨状
(
さんじやう
)
を
神
(
かみ
)
は
救
(
すく
)
ひ
給
(
たま
)
はざるか!』
107
宣伝使
(
せんでんし
)
『
吾
(
わ
)
れは
天国
(
てんごく
)
の
福音
(
ふくいん
)
を
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
に
伝
(
つた
)
ふる
聖職
(
せいしよく
)
なり。
108
汚
(
けが
)
れ、
109
濁
(
にご
)
り
切
(
き
)
つたる
此
(
この
)
現世
(
げんせ
)
に
執着
(
しふちやく
)
せず、
110
神
(
かみ
)
の
御
(
お
)
召
(
め
)
しの
手
(
て
)
に
曳
(
ひ
)
かれて、
111
現世
(
げんせ
)
を
後
(
あと
)
に
天国
(
てんごく
)
に
至
(
いた
)
るこそ、
112
最上
(
さいじやう
)
至極
(
しごく
)
の
楽
(
たのし
)
みならむ。
113
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
神
(
かみ
)
の
国
(
くに
)
の
真相
(
しんさう
)
を
悟
(
さと
)
らば、
114
現世
(
げんせ
)
を
厭
(
いと
)
ひて、
115
直
(
ただち
)
に
死
(
し
)
を
見
(
み
)
ること、
116
眠
(
ねむ
)
るが
如
(
ごと
)
く
且
(
か
)
つ
甘露
(
かんろ
)
を
嘗
(
な
)
むるが
如
(
ごと
)
き
法悦
(
はふえつ
)
の
喜
(
よろこ
)
びに
充
(
み
)
たされむ。
117
信仰
(
しんかう
)
浅
(
あさ
)
き
者
(
もの
)
よ!
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
神
(
かみ
)
に
来
(
きた
)
りて
神
(
かみ
)
を
称
(
たた
)
へよ、
118
神
(
かみ
)
は
汝
(
なんぢ
)
と
倶
(
とも
)
にましますぞ、
119
神
(
かみ
)
の
御手
(
みて
)
にひかれて
天国
(
てんごく
)
浄土
(
じやうど
)
に
至
(
いた
)
るはこれ
人生
(
じんせい
)
の
最大
(
さいだい
)
目的
(
もくてき
)
の
遂行
(
すゐかう
)
であるぞよ』
120
乙『
何卒
(
どうぞ
)
一塊
(
いつくわい
)
の
食物
(
しよくもつ
)
を
与
(
あた
)
へて
下
(
くだ
)
さることは
出来
(
でき
)
ますまいか? あなたは
神
(
かみ
)
の
福音
(
ふくいん
)
を
伝
(
つた
)
へ
給
(
たま
)
ふ
宣伝使
(
せんでんし
)
ならば、
121
現在
(
げんざい
)
の
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
を
救
(
すく
)
ひ、
122
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
をして
生
(
い
)
き
乍
(
なが
)
ら
天国
(
てんごく
)
の
福音
(
ふくいん
)
を
悟
(
さと
)
り、
123
神業
(
しんげふ
)
に
参加
(
さんか
)
せしめ
給
(
たま
)
はずや。
124
今
(
いま
)
吾々
(
われわれ
)
は
如何
(
いか
)
に
有難
(
ありがた
)
き
福音
(
ふくいん
)
なればとて、
125
飢
(
うゑ
)
に
迫
(
せま
)
りし
苦
(
くる
)
しき
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
、
126
現世
(
げんせ
)
に
於
(
おい
)
て
救
(
すく
)
はれず
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
き
悲惨
(
ひさん
)
の
境遇
(
きやうぐう
)
にある
者
(
もの
)
、
127
いかでか
天国
(
てんごく
)
の
春
(
はる
)
を
楽
(
たのし
)
むことを
得
(
え
)
む、
128
……
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
!
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
く
此
(
この
)
谷間
(
たにあひ
)
には
御倉魚
(
みくらうを
)
が
沢山
(
たくさん
)
に
居
(
を
)
りますが、
129
之
(
これ
)
を
頂
(
いただ
)
いて
食物
(
しよくもつ
)
となし、
130
飢
(
うゑ
)
を
凌
(
しの
)
ぐことは
許
(
ゆる
)
されぬでせうか?』
131
宣伝使
(
せんでんし
)
『
生
(
せい
)
ある
者
(
もの
)
を
殺
(
ころ
)
す
勿
(
なか
)
れ、
132
汝
(
なんぢ
)
も
亦
(
また
)
殺
(
ころ
)
されむ!』
133
丙『あーあ、
134
サツパリモウ
駄目
(
だめ
)
だ、
135
何程
(
なにほど
)
有難
(
ありがた
)
い
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
かして
貰
(
もら
)
うても、
136
吾々
(
われわれ
)
を
救
(
すく
)
ふ
者
(
もの
)
は、
137
食物
(
しよくもつ
)
より
外
(
ほか
)
にはないと
思
(
おも
)
ふ。
138
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
沢山
(
たくさん
)
の
魚
(
うを
)
が
泳
(
およ
)
ぎ
居
(
ゐ
)
るを
見乍
(
みなが
)
ら、
139
捉
(
とら
)
へて
食
(
く
)
ふことを
許
(
ゆる
)
されず、
140
もし
食
(
くら
)
はば
忽
(
たちま
)
ち
神罰
(
しんばつ
)
にふれ、
141
眼
(
め
)
は
眩
(
くら
)
み、
142
口
(
くち
)
は
曲
(
まが
)
り、
143
顔
(
かほ
)
には
斑紋
(
はんもん
)
を
生
(
しやう
)
じ、
144
忽
(
たちま
)
ち
吾身
(
わがみ
)
が
吾
(
わが
)
姿
(
すがた
)
に
恐
(
おそ
)
るる
如
(
ごと
)
き
形相
(
ぎやうさう
)
になつて
了
(
しま
)
ふ……あゝ、
145
如何
(
どう
)
したらよからうかなア』
146
と
数多
(
あまた
)
の
飢人
(
うゑびと
)
は
吐息
(
といき
)
をもらし、
147
溌溂
(
はつらつ
)
たる
谷川
(
たにがは
)
の
魚
(
うを
)
を
眺
(
なが
)
めつつあつた。
148
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
は
国依別
(
くによりわけ
)
と
共
(
とも
)
に、
149
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
150
国魂
(
くにたま
)
の
神
(
かみ
)
を
祭
(
まつ
)
りたる
御倉
(
みくら
)
の
社
(
やしろ
)
に
参拝
(
さんぱい
)
し、
151
声
(
こゑ
)
も
涼
(
すず
)
しく
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
天
(
あま
)
の
数歌
(
かずうた
)
を
唄
(
うた
)
ひ
了
(
をは
)
り、
152
ウラル
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
が
数多
(
あまた
)
の
信徒
(
しんと
)
に
向
(
むか
)
ひ、
153
天国
(
てんごく
)
の
福音
(
ふくいん
)
を
宣
(
の
)
べ
伝
(
つた
)
へ
居
(
ゐ
)
たる
前
(
まへ
)
に
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
154
言依別
(
ことよりわけ
)
『
神
(
かみ
)
が
表
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はれて
155
善
(
ぜん
)
と
悪
(
あく
)
とを
立
(
たて
)
わける
156
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
157
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
158
只
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は
159
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
せ
聞直
(
ききなほ
)
せ
160
過
(
あやま
)
ちあれば
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
す
161
仁慈
(
じんじ
)
無限
(
むげん
)
の
三五
(
あななひ
)
の
162
教
(
をしへ
)
を
守
(
まも
)
らす
百
(
もも
)
の
神
(
かみ
)
163
此
(
この
)
国人
(
くにびと
)
の
惨状
(
さんじやう
)
を
164
完美
(
うまら
)
に
委曲
(
つばら
)
に
見
(
み
)
そなはし
165
飢
(
うゑ
)
に
悩
(
なや
)
める
民草
(
たみくさ
)
の
166
生命
(
いのち
)
を
助
(
たす
)
け
給
(
たま
)
へかし
167
其
(
その
)
生魂
(
いくたま
)
は
天国
(
てんごく
)
の
168
恵
(
めぐみ
)
を
如何
(
いか
)
に
受
(
う
)
くる
共
(
とも
)
169
今
(
いま
)
目
(
ま
)
のあたり
身体
(
からたま
)
の
170
悩
(
なや
)
みを
救
(
すく
)
ひ
与
(
あた
)
へずば
171
心
(
こころ
)
は
拗
(
ねぢ
)
け
魂
(
たま
)
くもり
172
神
(
かみ
)
の
御国
(
みくに
)
に
昇
(
のぼ
)
るべき
173
珍
(
うづ
)
の
身魂
(
みたま
)
も
忽
(
たちま
)
ちに
174
根底
(
ねそこ
)
の
国
(
くに
)
に
陥
(
おちい
)
らむ
175
此
(
この
)
谷川
(
たにがは
)
を
見
(
み
)
わたせば
176
所狭
(
ところせ
)
き
迄
(
まで
)
泳
(
およ
)
ぎ
居
(
ゐ
)
る
177
げに
美
(
うる
)
はしき
御倉魚
(
みくらうを
)
178
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
に
与
(
あた
)
へ
給
(
たま
)
へかし
179
神
(
かみ
)
は
霊界
(
れいかい
)
のみならず
180
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
住
(
す
)
める
人々
(
ひとびと
)
を
181
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
さず
御恵
(
みめぐみ
)
の
182
露
(
つゆ
)
にうるはせ
永久
(
とこしへ
)
の
183
命
(
いのち
)
を
守
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
ふなり
184
三五教
(
あななひけう
)
の
神司
(
かむづかさ
)
185
言依別
(
ことよりわけ
)
や
国依別
(
くによりわけ
)
の
186
教司
(
をしへつかさ
)
は
今
(
いま
)
ここに
187
国魂神
(
くにたまがみ
)
に
詣
(
まう
)
で
来
(
き
)
て
188
これの
谷間
(
たにま
)
に
寄
(
よ
)
り
来
(
きた
)
る
189
飢
(
うゑ
)
になやめる
人々
(
ひとびと
)
を
190
視
(
み
)
るに
忍
(
しの
)
びず
天地
(
あめつち
)
の
191
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
請
(
こ
)
ひまつる
192
神
(
かみ
)
の
使
(
つかひ
)
の
魚
(
うを
)
ならば
193
世人
(
よびと
)
の
命
(
いのち
)
を
保
(
たも
)
つ
為
(
ため
)
194
神
(
かみ
)
よ!
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
に
賜
(
たま
)
へかし
195
吾
(
わ
)
れはこれより
諸人
(
もろびと
)
に
196
谷間
(
たにま
)
の
魚
(
うを
)
を
生捕
(
いけど
)
らせ
197
命
(
いのち
)
を
助
(
たす
)
け
与
(
あた
)
へなむ
198
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
199
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
200
と
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
る。
201
此
(
この
)
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
聞
(
き
)
いて、
202
ウラル
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は
眼
(
め
)
を
釣
(
つ
)
りあげ、
203
言依別
(
ことよりわけ
)
の
前
(
まへ
)
にツカツカと
進
(
すす
)
み
寄
(
よ
)
り、
204
宣伝使
(
せんでんし
)
『
私
(
わたし
)
はウラル
教
(
けう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
ブールと
申
(
まを
)
す
者
(
もの
)
、
205
只今
(
ただいま
)
あなたの
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
承
(
うけたま
)
はらば、
206
実
(
じつ
)
に
怪
(
け
)
しからぬことを
仰
(
あふ
)
せらるる
様
(
やう
)
で
御座
(
ござ
)
る。
207
神
(
かみ
)
は
一切
(
いつさい
)
の
生物
(
せいぶつ
)
を
殺
(
ころ
)
す
勿
(
なか
)
れと
諭
(
さと
)
させ
給
(
たま
)
ふ。
208
然
(
しか
)
るに
神
(
かみ
)
の
使
(
つか
)
はせ
給
(
たま
)
ふ
谷間
(
たにま
)
の
魚
(
うを
)
を
生捕
(
いけど
)
り、
209
数多
(
あまた
)
の
人々
(
ひとびと
)
に
食
(
く
)
はしめ、
210
命
(
いのち
)
を
助
(
たす
)
けやらむとの
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
……
天則
(
てんそく
)
違反
(
ゐはん
)
も
実
(
じつ
)
に
甚
(
はなはだ
)
しと
申
(
まを
)
さねばなりますまい。
211
それだから
三五教
(
あななひけう
)
の
教
(
をしへ
)
はいつ
迄
(
まで
)
も
世
(
よ
)
を
暗黒
(
あんこく
)
に
導
(
みちび
)
くもので
御座
(
ござ
)
る。
212
速
(
すみやか
)
に
神
(
かみ
)
に
向
(
むか
)
つて
宣
(
の
)
り
直
(
なほ
)
しをなさるが
良
(
よ
)
からう。
213
吾々
(
われわれ
)
は
其
(
その
)
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
いては
聞捨
(
ききずて
)
なりませぬ。
214
サア
返答
(
へんたふ
)
を
承
(
うけたまは
)
りませう』
215
言依別
(
ことよりわけ
)
『
成程
(
なるほど
)
神
(
かみ
)
は
至仁
(
しじん
)
至愛
(
しあい
)
にましませば、
216
其
(
その
)
御心
(
みこころ
)
より
生物
(
せいぶつ
)
の
命
(
いのち
)
を
取
(
と
)
ることを
嫌
(
きら
)
はせ
給
(
たま
)
ふは、
217
当然
(
たうぜん
)
の
理
(
り
)
で
御座
(
ござ
)
る。
218
さり
乍
(
なが
)
ら
人
(
ひと
)
の
生命
(
いのち
)
が
大切
(
たいせつ
)
か、
219
魚
(
うを
)
の
命
(
いのち
)
が
大切
(
たいせつ
)
で
御座
(
ござ
)
るか?
能
(
よ
)
く
御
(
お
)
考
(
かんが
)
へになれば
分
(
わか
)
るでせう』
220
ブール『
人間
(
にんげん
)
は
罪
(
つみ
)
の
塊
(
かたまり
)
なれば、
221
生
(
い
)
き
乍
(
なが
)
ら、
222
地獄
(
ぢごく
)
の
苦
(
くるし
)
みを
受
(
う
)
くるは
当然
(
たうぜん
)
で
御座
(
ござ
)
る。
223
夫
(
そ
)
れ
故
(
ゆゑ
)
に
無限
(
むげん
)
絶対力
(
ぜつたいりよく
)
のおはします
世界
(
せかい
)
の
造
(
つく
)
り
主
(
ぬし
)
盤古
(
ばんこ
)
神王
(
しんわう
)
の
御徳
(
みとく
)
を
賛美
(
さんび
)
し、
224
苦
(
くる
)
しみ、
225
悩
(
なや
)
み
災
(
わざはひ
)
多
(
おほ
)
き
現
(
うつ
)
し
世
(
よ
)
を
捨
(
す
)
てて、
226
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
天国
(
てんごく
)
に
上
(
のぼ
)
るを
以
(
もつ
)
て、
227
人生
(
じんせい
)
の
本領
(
ほんりやう
)
と
致
(
いた
)
すでは
御座
(
ござ
)
らぬか?
罪
(
つみ
)
もなき
神
(
かみ
)
の
御
(
おん
)
使
(
つかひ
)
の
御倉魚
(
みくらうを
)
を
取
(
と
)
り
食
(
くら
)
ひ、
228
汚
(
けが
)
れたる
人間
(
にんげん
)
の
腹
(
はら
)
に
葬
(
はうむ
)
らむか、
229
神罰
(
しんばつ
)
立所
(
たちどころ
)
に
至
(
いた
)
り、
230
永遠
(
えいゑん
)
に
地獄
(
ぢごく
)
の
苦
(
くるし
)
みを
受
(
う
)
くるは、
231
神教
(
しんけう
)
のきめさせ
給
(
たま
)
ふ
所
(
ところ
)
で
御座
(
ござ
)
る。
232
あなたは
天
(
あめ
)
が
下
(
した
)
の
人民
(
じんみん
)
を
真
(
しん
)
に
愛
(
あい
)
し
給
(
たま
)
ふにあらず、
233
神
(
かみ
)
の
心
(
こころ
)
に
背
(
そむ
)
かせ、
234
永遠
(
えいゑん
)
に
地獄
(
ぢごく
)
の
苦
(
くる
)
しみを
受
(
う
)
けさせむとし
給
(
たま
)
ふ
無慈悲
(
むじひ
)
の
御
(
おん
)
仕打
(
しうち
)
、
235
吾々
(
われわれ
)
は
天下
(
てんか
)
万民
(
ばんみん
)
の
為
(
ため
)
、
236
飽
(
あ
)
く
迄
(
まで
)
もあなたと
主義
(
しゆぎ
)
の
為
(
ため
)
に
戦
(
たたか
)
はねばなりませぬ。
237
論
(
ろん
)
より
証拠
(
しようこ
)
、
238
此
(
この
)
谷川
(
たにがは
)
の
魚
(
うを
)
を
取食
(
とりくら
)
ふ
者
(
もの
)
たまたまある
時
(
とき
)
は、
239
神
(
かみ
)
の
怒
(
いか
)
りにふれて、
240
天罰
(
てんばつ
)
立所
(
たちどころ
)
に
至
(
いた
)
るは
国人
(
くにびと
)
の
既
(
すで
)
に
既
(
すで
)
に
知悉
(
ちしつ
)
する
所
(
ところ
)
、
241
あなたは
此
(
この
)
国
(
くに
)
の
風習
(
ふうしふ
)
をも
知
(
し
)
らず、
242
又
(
また
)
神
(
かみ
)
の
掟
(
をきて
)
をも
弁
(
わきま
)
へず、
243
左様
(
さやう
)
な
乱暴
(
らんばう
)
な
事
(
こと
)
を
仰
(
あふ
)
せらるるは、
244
甚
(
はなはだ
)
以
(
もつ
)
て
悪虐
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
御
(
ご
)
精神
(
せいしん
)
と
申
(
まを
)
さねばなりますまい』
245
言依別
(
ことよりわけ
)
『
今日
(
こんにち
)
は
人民
(
じんみん
)
将
(
まさ
)
に
餓死
(
がし
)
せむとする
危急
(
ききふ
)
存亡
(
そんばう
)
の
場合
(
ばあひ
)
なれば、
246
如何
(
いか
)
に
神
(
かみ
)
の
御使
(
みつかい
)
なればとて、
247
仁慈
(
じんじ
)
無限
(
むげん
)
の
神
(
かみ
)
の
之
(
これ
)
を
許
(
ゆる
)
させ
給
(
たま
)
はざる
道理
(
だうり
)
がありませうか? モシ
左様
(
さやう
)
な
神
(
かみ
)
ありとせば、
248
取
(
と
)
りも
直
(
なほ
)
さず
八岐
(
やまた
)
大蛇
(
をろち
)
の
醜神
(
しこがみ
)
か、
249
或
(
あるひ
)
は
金毛
(
きんまう
)
九尾
(
きうび
)
の
悪狐
(
あくこ
)
か、
250
又
(
また
)
は
曲鬼
(
まがおに
)
の
所為
(
しよゐ
)
で
厶
(
ござ
)
らう。
251
吾々
(
われわれ
)
はあなたの
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
こそ、
252
神
(
かみ
)
の
御子
(
みこ
)
たる
人間
(
にんげん
)
を
魔道
(
まだう
)
に
導
(
みちび
)
き
苦
(
くるし
)
むる、
253
悪虐
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
行方
(
やりかた
)
と
思
(
おも
)
はねばならなくなりました。
254
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して
此
(
この
)
魚
(
うを
)
を
取
(
と
)
り
食
(
くら
)
へばとて、
255
神罰
(
しんばつ
)
の
当
(
あた
)
るべき
理由
(
りいう
)
は
毛頭
(
まうとう
)
ありませぬ。
256
私
(
わたし
)
は
断言
(
だんげん
)
致
(
いた
)
しますよ』
257
ブール『
三五教
(
あななひけう
)
の
教
(
をしへ
)
は
実
(
じつ
)
に
無道
(
ぶだう
)
極
(
きは
)
まる
無慈悲
(
むじひ
)
の
教
(
をしへ
)
では
御座
(
ござ
)
らぬか。
258
然
(
しか
)
らばあなた
試
(
こころ
)
みに、
259
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
く
沢山
(
たくさん
)
な
魚
(
うを
)
の
中
(
うち
)
、
260
仮令
(
たとへ
)
小魚
(
こうを
)
の
一匹
(
いつぴき
)
でも
吾
(
わが
)
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
にて
捉
(
とら
)
へ
食
(
く
)
つて
御覧
(
ごらん
)
なさい。
261
忽
(
たちま
)
ち
神罰
(
しんばつ
)
至
(
いた
)
ることは
火
(
ひ
)
を
睹
(
み
)
るよりも
明
(
あき
)
らかな
事実
(
じじつ
)
で
御座
(
ござ
)
る。
262
何程
(
なにほど
)
理窟
(
りくつ
)
は
立派
(
りつぱ
)
に
立
(
た
)
つても、
263
事実
(
じじつ
)
其
(
その
)
物
(
もの
)
には
勝
(
か
)
つことは
出来
(
でき
)
ますまい……サアこれでもお
食
(
あが
)
りになる
勇気
(
ゆうき
)
がありますか?』
264
国依別
(
くによりわけ
)
『ウラル
教
(
けう
)
のブールさまとやら、
265
何
(
なん
)
とあなたは、
266
訳
(
わけ
)
のわからぬことを
云
(
い
)
ひますなア。
267
ウラル
教
(
けう
)
はそんな
狭義
(
けふぎ
)
な
教
(
をしへ
)
で
御座
(
ござ
)
いますか? それでは
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
とは
申
(
まを
)
されますまい。
268
論
(
ろん
)
より
証拠
(
しようこ
)
、
269
私
(
わたくし
)
が
今
(
いま
)
、
270
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
にて、
271
神
(
かみ
)
の
使
(
つかひ
)
と
称
(
しよう
)
する
御倉魚
(
みくらうを
)
を
捉
(
とら
)
へ、
272
茲
(
ここ
)
にて
作
(
つく
)
り
身
(
み
)
と
致
(
いた
)
し、
273
食
(
く
)
つてお
目
(
め
)
にかけませう。
274
其
(
その
)
代
(
かは
)
り
万々一
(
まんまんいち
)
、
275
私
(
わたくし
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
に
対
(
たい
)
し、
276
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
於
(
おい
)
て
神罰
(
しんばつ
)
至
(
いた
)
ることあらば
三五教
(
あななひけう
)
全部
(
ぜんぶ
)
を
挙
(
あ
)
げてウラル
教
(
けう
)
の
軍門
(
ぐんもん
)
に
兜
(
かぶと
)
を
脱
(
ぬ
)
ぎませう。
277
之
(
こ
)
れに
反
(
はん
)
して、
278
私
(
わたくし
)
が
此
(
この
)
魚
(
うを
)
を
取
(
と
)
り
食
(
くら
)
ひ
何
(
なに
)
の
反応
(
はんのう
)
もなしとせば、
279
あなたは
如何
(
どう
)
して
下
(
くだ
)
さる
考
(
かんが
)
へですか?
先
(
ま
)
づこれから
第一
(
だいいち
)
にお
約束
(
やくそく
)
をして
置
(
お
)
かねばなりますまい。
280
御
(
ご
)
返答
(
へんたふ
)
は
如何
(
いかが
)
で
御座
(
ござ
)
いますか?』
281
ブール『それは
面白
(
おもしろ
)
う
御座
(
ござ
)
らう。
282
サア
美事
(
みごと
)
、
283
神
(
かみ
)
の
使
(
つかひ
)
の
御倉魚
(
みくらうを
)
、
284
私
(
わたし
)
の
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
で
捕獲
(
ほくわく
)
して
取
(
と
)
り
食
(
くら
)
つて
御覧
(
ごらん
)
なさい。
285
何
(
なん
)
の
反応
(
はんのう
)
もなければ、
286
吾々
(
われわれ
)
はウラル
教
(
けう
)
全部
(
ぜんぶ
)
を
引率
(
いんそつ
)
して、
287
貴教
(
きけう
)
の
軍門
(
ぐんもん
)
に
兜
(
かぶと
)
を
脱
(
ぬ
)
ぎませう』
288
国依別
(
くによりわけ
)
『
確
(
たし
)
かですか? キツト
間違
(
まちがひ
)
はありますまいなア』
289
ブール『
苟
(
いやし
)
くも
宣伝使
(
せんでんし
)
の
言葉
(
ことば
)
に
二言
(
にごん
)
があつて
堪
(
たま
)
らうか。
290
サア
早
(
はや
)
く
御
(
ご
)
決行
(
けつかう
)
なされよ』
291
国依別
(
くによりわけ
)
『ヤア
有難
(
ありがた
)
い!
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
なら
一
(
ひと
)
つ、
292
一番
(
いちばん
)
大
(
おほ
)
きさうな
奴
(
やつ
)
から
取
(
と
)
つて、
293
舌鼓
(
したつづみ
)
を
打
(
う
)
たうかなア。
294
ズイ
分
(
ぶん
)
甘
(
うま
)
さうな
魚
(
さかな
)
だ。
295
何
(
なに
)
を
食
(
く
)
つてゐるのか
知
(
し
)
らぬが
能
(
よ
)
くマア
肥太
(
こえふと
)
つてゐよるワイ。
296
……モシモシ
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
、
297
面白
(
おもしろ
)
い
事
(
こと
)
になつて
来
(
き
)
ました。
298
あなた
能
(
よ
)
くブール
宣伝使
(
せんでんし
)
の
言葉
(
ことば
)
を
腹
(
はら
)
へ
入
(
い
)
れておいて
下
(
くだ
)
さいませや。
299
あゝ
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い!』
300
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
国依別
(
くによりわけ
)
は、
301
谷川
(
たにがは
)
に
下
(
お
)
り
立
(
た
)
ち、
302
水
(
みづ
)
と
魚
(
うを
)
と
殆
(
ほとん
)
ど
等分
(
とうぶん
)
になつて
居
(
を
)
る
数多
(
あまた
)
の
魚
(
うを
)
の
群
(
むれ
)
に
飛
(
と
)
んで
入
(
い
)
り、
303
三尺
(
さんじやく
)
計
(
ばか
)
りの
溌溂
(
はつらつ
)
たる
斑紋
(
はんもん
)
の
美
(
うる
)
はしき
御倉魚
(
みくらうを
)
を
一尾
(
いちび
)
抱
(
かか
)
えて、
304
ブールの
前
(
まへ
)
に
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
305
国依別
(
くによりわけ
)
『どうも
此奴
(
こいつ
)
は
最
(
もつと
)
も
尤物
(
いうぶつ
)
と
見
(
み
)
えます。
306
同
(
おな
)
じ
神
(
かみ
)
のお
使
(
つかひ
)
でも、
307
一寸
(
ちよつと
)
師団長
(
しだんちやう
)
格
(
かく
)
と
云
(
い
)
ふ
代物
(
しろもの
)
ですから、
308
同
(
おな
)
じ
殺
(
ころ
)
して
食
(
く
)
つて
神罰
(
しんばつ
)
が
当
(
あた
)
るのなら、
309
大
(
おほ
)
きな
甘
(
うま
)
さうな
奴
(
やつ
)
を
平
(
たひら
)
げる
方
(
はう
)
が
利益
(
りえき
)
ですからなア。
310
何程
(
なにほど
)
霊主
(
れいしゆ
)
体従
(
たいじう
)
だと
云
(
い
)
つても、
311
肉体
(
にくたい
)
のある
限
(
かぎ
)
り、
312
胃
(
ゐ
)
の
腑
(
ふ
)
の
虫
(
むし
)
が
食物
(
しよくもつ
)
を
請求
(
せいきう
)
する。
313
ジツとして
怺
(
こら
)
へ
切
(
き
)
れるものではない。
314
……サア、
315
ブールさま
始
(
はじ
)
めそこに
居並
(
ゐなら
)
ぶ
数多
(
あまた
)
の
人々
(
ひとびと
)
、
316
今
(
いま
)
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
国依別
(
くによりわけ
)
が、
317
神
(
かみ
)
さまの
禁
(
きん
)
じ
給
(
たま
)
うたと
云
(
い
)
ふ
此
(
この
)
魚
(
うを
)
を
叩
(
たた
)
き
殺
(
ころ
)
して
作
(
つく
)
りとなし、
318
皆
(
みな
)
さまの
目前
(
もくぜん
)
に
於
(
おい
)
て、
319
ムシヤ ムシヤ ムシヤとやつて
見
(
み
)
ませう。
320
私
(
わたくし
)
が
食
(
く
)
つて
神罰
(
しんばつ
)
が
当
(
あた
)
らなければ、
321
皆
(
みな
)
さまにもキツと
神罰
(
しんばつ
)
の
当
(
あた
)
るものでない。
322
人
(
ひと
)
はパンのみにて
活
(
い
)
くる
者
(
もの
)
に
非
(
あら
)
ずとか
言
(
い
)
つて
威張
(
ゐば
)
つて
居
(
ゐ
)
るどこやらの
宣伝使
(
せんでんし
)
の
様
(
やう
)
に、
323
私
(
わたくし
)
はそんな
気楽
(
きらく
)
なことは
出来
(
でき
)
ませぬよ。
324
人
(
ひと
)
は
霊
(
れい
)
のみにて
活
(
い
)
くる
者
(
もの
)
に
非
(
あら
)
ずと、
325
反対
(
はんたい
)
に
云
(
い
)
ひたくなつて
来
(
く
)
るのです。
326
……パンなくて
何
(
なん
)
のおのれが
人間
(
にんげん
)
かな……だ』
327
と
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
328
短刀
(
たんたう
)
を
取出
(
とりだ
)
し、
329
溌溂
(
はつらつ
)
たる
此
(
この
)
大魚
(
たいぎよ
)
を、
330
喉
(
のど
)
のあたりをグサと
刺
(
さ
)
し、
331
一思
(
ひとおも
)
ひに
殺
(
ころ
)
し、
332
手早
(
てばや
)
く
肉片
(
にくへん
)
を
取
(
と
)
つては
頬張
(
ほうば
)
り
頬張
(
ほうば
)
り、
333
国依別
(
くによりわけ
)
『アハヽヽヽ、
334
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
へぬ
甘
(
うま
)
い
味
(
あぢ
)
が
致
(
いた
)
すワイ。
335
これ
丈
(
だけ
)
魚
(
うを
)
が
無尽蔵
(
むじんざう
)
に
居
(
を
)
る
以上
(
いじやう
)
は、
336
五十万
(
ごじふまん
)
や
百万
(
ひやくまん
)
の
人間
(
にんげん
)
を
養
(
やしな
)
ふのは
易
(
やす
)
いことだ。
337
あゝ
早
(
はや
)
く
口
(
くち
)
が
歪
(
ゆが
)
まぬかいなア、
338
物
(
もの
)
が
云
(
い
)
へぬようにならぬかいなア、
339
眼
(
め
)
がつぶれさうなものだ、
340
顔
(
かほ
)
一面
(
いちめん
)
に
斑紋
(
はんもん
)
がなぜ
出来
(
でき
)
てくれぬのだ。
341
出来
(
でき
)
ぬ
筈
(
はず
)
だよ、
342
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
人間
(
にんげん
)
に
与
(
あた
)
へて
生命
(
いのち
)
をつながさうと
思召
(
おぼしめ
)
し、
343
此
(
この
)
国
(
くに
)
に
限
(
かぎ
)
つて
此
(
この
)
魚
(
うを
)
をお
造
(
つく
)
り
遊
(
あそ
)
ばしたのだ。
344
斯
(
こ
)
う
云
(
い
)
ふ
饑饉
(
ききん
)
が
来
(
き
)
た
時
(
とき
)
の
用意
(
ようい
)
に、
345
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
が
食
(
く
)
つてはならないと
云
(
い
)
つて、
346
平素
(
ふだん
)
はワザとお
差止
(
さしと
)
めになり、
347
蓄
(
たくは
)
へておいて
下
(
くだ
)
さつたのだ。
348
……モシ、
349
ブールさま、
350
どうで
御座
(
ござ
)
います。
351
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
乍
(
なが
)
ら、
352
ウラル
教
(
けう
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
軍門
(
ぐんもん
)
に
降服
(
かうふく
)
をなさらにやなりますまい……ヤアヤア
皆
(
みな
)
の
方々
(
かたがた
)
、
353
決
(
けつ
)
して
決
(
けつ
)
して
驚
(
おどろ
)
くには
及
(
およ
)
びませぬ。
354
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
私
(
わたくし
)
がお
手本
(
てほん
)
を
示
(
しめ
)
しました。
355
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
与
(
あた
)
へて
下
(
くだ
)
さつた、
356
此
(
この
)
餌
(
ゑ
)
さを
頂
(
いただ
)
きもせずに、
357
餓
(
かつ
)
ゑて
死
(
し
)
ぬとは
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
でせう。
358
サア
早
(
はや
)
くお
食
(
あが
)
りなさい』
359
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
数多
(
あまた
)
の
人々
(
ひとびと
)
はヤツと
安心
(
あんしん
)
したものの
如
(
ごと
)
く、
360
矢庭
(
やには
)
に
川
(
かは
)
に
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
み、
361
手頃
(
てごろ
)
の
魚
(
うを
)
を
抱
(
いだ
)
き
上
(
あ
)
げ、
362
其
(
その
)
場
(
ば
)
で
嬉
(
うれ
)
しさうに
舌鼓
(
したつづみ
)
をうつて
食
(
く
)
つてゐる。
363
ウラル
教
(
けう
)
のブール
始
(
はじ
)
め
四五
(
しご
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか、
364
コソコソと
此
(
この
)
場
(
ば
)
より
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
して
了
(
しま
)
つた。
365
これより、
366
此
(
この
)
国人
(
くにびと
)
はウラル
教
(
けう
)
に
愛想
(
あいさう
)
を
尽
(
つ
)
かし、
367
国魂
(
くにたま
)
の
神
(
かみ
)
の
社
(
やしろ
)
を
日夜
(
にちや
)
に
崇敬
(
すうけい
)
し、
368
且
(
か
)
つ
三五教
(
あななひけう
)
の
固
(
かた
)
き
信者
(
しんじや
)
となつて
了
(
しま
)
つた。
369
言依別
(
ことよりわけの
)
命
(
みこと
)
は
国依別
(
くによりわけ
)
に
向
(
むか
)
ひ、
370
言依別
『
私
(
わたし
)
は
是
(
これ
)
からテルの
国
(
くに
)
を
越
(
こ
)
え、
371
直
(
ただ
)
ちにウヅの
都
(
みやこ
)
に
直行
(
ちよくかう
)
致
(
いた
)
しますから、
372
あなたは
此処
(
ここ
)
に
暫
(
しばら
)
く
止
(
とどま
)
つて、
373
国人
(
くにびと
)
に
教
(
をしへ
)
を
宣
(
の
)
べ
伝
(
つた
)
へ、
374
それよりヒルの
都
(
みやこ
)
に
渡
(
わた
)
りハルの
国
(
くに
)
を
一巡
(
ひとめぐ
)
りしてウヅへ
廻
(
まは
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
375
其
(
その
)
上
(
うへ
)
でゆつくり、
376
改
(
あらた
)
めて
御
(
ご
)
相談
(
さうだん
)
を
致
(
いた
)
しませう』
377
国依別
(
くによりわけ
)
『
委細
(
ゐさい
)
承知
(
しようち
)
仕
(
つかまつ
)
りました。
378
左様
(
さやう
)
ならば、
379
是非
(
ぜひ
)
に
及
(
およ
)
びませぬ。
380
ここでお
別
(
わか
)
れ
致
(
いた
)
します。
381
どうぞ
御
(
ご
)
健勝
(
けんしやう
)
にて
御
(
ご
)
神務
(
しんむ
)
に
御
(
ご
)
奉仕
(
ほうし
)
遊
(
あそ
)
ばします
様
(
やう
)
祈
(
いの
)
ります』
382
言依別
(
ことよりわけ
)
『ハイ
有難
(
ありがた
)
う』
383
と
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
谷
(
たに
)
の
谺
(
こだま
)
に
響
(
ひびき
)
かせつつ、
384
ウヅの
国
(
くに
)
を
目当
(
めあ
)
てに
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
385
国依別
(
くによりわけ
)
は
御倉
(
みくら
)
の
社
(
やしろ
)
に
暫
(
しばら
)
く
足
(
あし
)
を
止
(
とど
)
め、
386
詣
(
まゐ
)
り
来
(
く
)
る
国人
(
くにびと
)
に
教
(
をしへ
)
を
伝
(
つた
)
へ
洗礼
(
せんれい
)
を
施
(
ほどこ
)
した。
387
是
(
これ
)
より
三五教
(
あななひけう
)
の
教
(
をしへ
)
は
旭日
(
きよくじつ
)
昇天
(
しようてん
)
の
勢
(
いきほ
)
ひとなりける。
388
(
大正一一・八・一五
旧六・二三
松村真澄
録)
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