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霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第30巻(巳の巻)
序
凡例
総説
第1篇 高砂の松
第1章 主従二人
第2章 乾の滝
第3章 清めの滝
第4章 懐旧の歌
第2篇 珍野瞰下
第5章 下坂の歌
第6章 樹下の一宿
第7章 提燈の光
第8章 露の道
第3篇 神縁微妙
第9章 醜の言霊
第10章 妖雲晴
第11章 言霊の妙
第12章 マラソン競争
第13章 都入
第4篇 修理固成
第14章 霊とパン
第15章 花に嵐
第16章 荒しの森
第17章 出陣
第18章 日暮シの河
第19章 蜘蛛の児
第20章 雉と町
第5篇 山河動乱
第21章 神王の祠
第22章 大蜈蚣
第23章 ブール酒
第24章 陥穽
附記 湯ケ島温泉
附記 天津祝詞解
附記 デモ国民歌
余白歌
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霊界物語
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海洋万里(第25~36巻)
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第30巻(巳の巻)
> 第2篇 珍野瞰下 > 第5章 下坂の歌
<<< 懐旧の歌
(B)
(N)
樹下の一宿 >>>
第五章
下坂
(
げはん
)
の
歌
(
うた
)
〔八四七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第30巻 海洋万里 巳の巻
篇:
第2篇 珍野瞰下
よみ(新仮名遣い):
うづのかんか
章:
第5章 下坂の歌
よみ(新仮名遣い):
げはんのうた
通し章番号:
847
口述日:
1922(大正11)年08月14日(旧06月22日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年9月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
一行四人は初夏の炎天下に山道を下っていく。緩勾配の山道にさしかかった。石熊はそれを機に、心中の思いを宣伝歌にして歌い始めた。バラモン教に深く帰依して活動して三五教と教勢を争っていたかつての自分を歌い、乾の滝で大蛇に魅入られたところを、末子姫らに救われた経緯を歌った。
カールは声調整わない滑稽歌に謎を込めて歌いだした。松若彦の命でバラモン教に入り込んで内偵をしていた自分の役目を歌いながら、敵の中にも味方があり、味方の中にも敵があると気をつける歌を歌った。
歌っているうちに急坂にさしかかり、ひとしきり坂を下った一行は坂の傍らにある石に腰を掛けて息をつき、汗を拭った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-01-14 17:50:40
OBC :
rm3005
愛善世界社版:
55頁
八幡書店版:
第5輯 592頁
修補版:
校定版:
59頁
普及版:
21頁
初版:
ページ備考:
001
一行
(
いつかう
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
初夏
(
しよか
)
の
炎天
(
えんてん
)
に
曝
(
さら
)
され
乍
(
なが
)
ら、
002
吹
(
ふ
)
き
来
(
く
)
る
涼風
(
りやうふう
)
に
衣
(
ころも
)
の
袖
(
そで
)
を
翻
(
ひるがへ
)
しつつ、
003
岩石
(
がんせき
)
起伏
(
きふく
)
の
急坂
(
きふはん
)
を、
004
アブト
式
(
しき
)
に
一足
(
ひとあし
)
々々
(
ひとあし
)
爪先
(
つまさき
)
に
力
(
ちから
)
を
入
(
い
)
れ
乍
(
なが
)
ら
降
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
005
少
(
すこ
)
しく
緩勾配
(
くわんこうばい
)
の
山路
(
やまみち
)
に
差
(
さし
)
かかつた。
006
新
(
あらた
)
に
帰順
(
きじゆん
)
したる
石熊
(
いしくま
)
はテル
山峠
(
やまたうげ
)
の
山上
(
さんじやう
)
にて
末子姫
(
すゑこひめ
)
、
007
捨子姫
(
すてこひめ
)
の
驥尾
(
きび
)
に
附
(
ふ
)
し
述懐歌
(
じゆつくわいか
)
を
歌
(
うた
)
はむと、
008
心中
(
しんちう
)
深
(
ふか
)
く
期
(
き
)
する
所
(
ところ
)
ありしが、
009
意外
(
いぐわい
)
にも
末子姫
(
すゑこひめ
)
の
休息
(
きうそく
)
を
早
(
はや
)
く
切
(
き
)
り
上
(
あ
)
げて
坂
(
さか
)
を
降
(
くだ
)
り
始
(
はじ
)
めしより、
010
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず
沈黙
(
ちんもく
)
を
守
(
まも
)
り、
011
急坂
(
きふはん
)
を
降
(
くだ
)
りつつあつた。
012
今
(
いま
)
しも
稍
(
やや
)
緩勾配
(
くわんこうばい
)
の
安全
(
あんぜん
)
なる
坂道
(
さかみち
)
に
差
(
さし
)
かかりたるを
機会
(
きくわい
)
に、
013
歩
(
あゆ
)
み
乍
(
なが
)
ら
足拍子
(
あしびやうし
)
を
取
(
と
)
り、
014
石熊
(
いしくま
)
は
述懐
(
じゆつくわい
)
の
歌
(
うた
)
を
唄
(
うた
)
ひ
始
(
はじ
)
めたり。
015
石熊
『あゝ
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い
016
テル
山峠
(
やまたうげ
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
に
017
古今
(
ここん
)
無双
(
むさう
)
の
二人
(
ふたり
)
のナイス
018
天津
(
あまつ
)
乙女
(
をとめ
)
の
降来
(
かうらい
)
か
019
木
(
こ
)
の
花姫
(
はなひめ
)
の
出現
(
しゆつげん
)
か
020
木石
(
ぼくせき
)
ならぬ
石熊
(
いしくま
)
も
021
バラモン
教
(
けう
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
022
固
(
かた
)
く
守
(
まも
)
りて
今迄
(
いままで
)
は
023
巌
(
いはほ
)
の
如
(
ごと
)
く
頑強
(
ぐわんきやう
)
に
024
教
(
をしへ
)
を
楯
(
たて
)
にバラモンの
025
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
の
信徒
(
しんと
)
等
(
ら
)
に
026
化石
(
くわせき
)
したかと
笑
(
わら
)
はれた
027
此
(
この
)
堅蔵
(
かたざう
)
も
三五
(
あななひ
)
の
028
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
に
入信
(
にふしん
)
し
029
優
(
やさ
)
しき
姿
(
すがた
)
顔容
(
かんばせ
)
に
030
心
(
こころ
)
の
動
(
うご
)
いた
恥
(
はづ
)
かしさ
031
さはさり
乍
(
なが
)
ら
吾々
(
われわれ
)
は
032
素
(
もと
)
より
賤
(
いや
)
しき
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
ぞ
033
高根
(
たかね
)
に
咲
(
さ
)
ける
松
(
まつ
)
の
花
(
はな
)
034
如何
(
いか
)
に
憔
(
あこが
)
れ
慕
(
した
)
うとも
035
天津
(
あまつ
)
御空
(
みそら
)
の
星影
(
ほしかげ
)
を
036
竿
(
さを
)
の
先
(
さき
)
にてがらつよな
037
極
(
きは
)
めて
至難
(
しなん
)
の
事
(
こと
)
であろ
038
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
039
御霊
(
みたま
)
の
頼
(
ふゆ
)
を
蒙
(
かうむ
)
りて
040
三五教
(
あななひけう
)
に
服従
(
まつろ
)
ひし
041
此
(
この
)
石熊
(
いしくま
)
が
心根
(
こころね
)
を
042
厳
(
きび
)
しく
鞭撻
(
べんたつ
)
なし
玉
(
たま
)
ひ
043
怪
(
け
)
しき
怪
(
あや
)
しき
恋
(
こひ
)
の
暗
(
やみ
)
044
忍
(
しの
)
びて
来
(
きた
)
る
曲鬼
(
まがおに
)
を
045
早
(
はや
)
く
征服
(
せいふく
)
させ
玉
(
たま
)
へ
046
バラモン
教
(
けう
)
の
神
(
かみ
)
の
法
(
のり
)
047
別
(
べつ
)
に
変
(
かは
)
りしこともなし
048
さは
去
(
さ
)
り
乍
(
なが
)
ら
三五
(
あななひ
)
の
049
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
に
比
(
くら
)
ぶれば
050
どこやら
一
(
ひと
)
つ
物足
(
ものた
)
らぬ
051
吾
(
わ
)
がバラモンの
主唱
(
しゆしやう
)
する
052
霊主
(
れいしゆ
)
体従
(
たいじう
)
の
御教
(
みをしへ
)
は
053
神
(
かみ
)
に
貰
(
もら
)
うた
肉体
(
にくたい
)
を
054
損
(
そこな
)
ひ
破
(
やぶ
)
ること
許
(
ばか
)
り
055
普
(
あまね
)
く
世界
(
せかい
)
の
人々
(
ひとびと
)
を
056
大事
(
だいじ
)
の
大事
(
だいじ
)
の
神徳
(
しんとく
)
に
057
助
(
たす
)
くる
道
(
みち
)
に
欠
(
か
)
けてゐる
058
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
059
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
は
皆
(
みな
)
一
(
ひと
)
つ
060
只
(
ただ
)
実行
(
じつかう
)
と
不実行
(
ふじつかう
)
の
061
差別
(
けじめ
)
に
依
(
よ
)
りて
変
(
かは
)
るのみ
062
高天原
(
たかあまはら
)
を
退
(
や
)
らはれし
063
此
(
この
)
世
(
よ
)
を
救
(
すく
)
ふ
生神
(
いきがみ
)
の
064
尊
(
たふと
)
き
御子
(
みこ
)
と
現
(
あ
)
れませる
065
心
(
こころ
)
も
澄
(
す
)
める
末子姫
(
すゑこひめ
)
066
世人
(
よびと
)
の
為
(
ため
)
に
身
(
み
)
を
捨
(
す
)
てて
067
教
(
をしへ
)
を
開
(
ひら
)
く
捨子姫
(
すてこひめ
)
068
か
弱
(
よわ
)
き
女
(
をんな
)
の
身
(
み
)
乍
(
なが
)
らに
069
遠
(
とほ
)
き
山河
(
やまかは
)
踏
(
ふ
)
みさくみ
070
長
(
なが
)
き
潮路
(
しほぢ
)
を
打渡
(
うちわた
)
り
071
はるばるここにテル
山
(
やま
)
の
072
雲
(
くも
)
突
(
つ
)
く
峰
(
みね
)
に
現
(
あら
)
はれて
073
神
(
かみ
)
の
御
(
おん
)
為
(
ため
)
世
(
よ
)
の
為
(
ため
)
に
074
尽
(
つく
)
させ
玉
(
たま
)
ふ
尊
(
たふと
)
さよ
075
吾
(
われ
)
は
常世
(
とこよ
)
の
目
(
め
)
の
国
(
くに
)
に
076
生
(
うま
)
れて
茲
(
ここ
)
にバラモンの
077
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
に
入信
(
にふしん
)
し
078
鬼熊別
(
おにくまわけ
)
に
導
(
みちび
)
かれ
079
バラモン
教
(
けう
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
080
誹
(
そし
)
り
走
(
ばし
)
りに
聞
(
き
)
き
覚
(
おぼ
)
え
081
高照山
(
たかてるやま
)
の
山麓
(
さんろく
)
に
082
教
(
をしへ
)
の
館
(
やかた
)
を
造
(
つく
)
りつつ
083
天地
(
てんち
)
の
間
(
あひだ
)
此
(
この
)
道
(
みち
)
に
084
優
(
まさ
)
りし
教
(
のり
)
はあらざらむ
085
実
(
げ
)
にも
尊
(
たふと
)
き
教
(
をしへ
)
ぞと
086
心
(
こころ
)
も
身
(
み
)
をも
打任
(
うちまか
)
せ
087
身
(
み
)
もたなしらに
朝夕
(
あさゆふ
)
に
088
沐雨
(
もくう
)
櫛風
(
しつぷう
)
の
労
(
らう
)
を
積
(
つ
)
み
089
教
(
をしへ
)
は
日々
(
ひび
)
に
天津
(
あまつ
)
日
(
ひ
)
の
090
豊栄
(
とよさか
)
昇
(
のぼ
)
ります
如
(
ごと
)
く
091
月日
(
つきひ
)
と
共
(
とも
)
に
栄
(
さか
)
えけり
092
さはさり
乍
(
なが
)
らバラモンの
093
教
(
をしへ
)
に
一
(
ひと
)
つ
疵
(
きず
)
がある
094
生血
(
なまち
)
を
出
(
だ
)
して
大神
(
おほかみ
)
の
095
御
(
おん
)
目
(
め
)
に
示
(
しめ
)
し
犠牲
(
いけにへ
)
の
096
誠
(
まこと
)
と
思
(
おも
)
ひ
謬
(
あやま
)
りし
097
其
(
その
)
醜業
(
しこわざ
)
に
信徒
(
まめひと
)
は
098
朝日
(
あさひ
)
に
氷
(
こほり
)
の
解
(
と
)
くる
如
(
ごと
)
099
次第
(
しだい
)
々々
(
しだい
)
に
衰
(
おとろ
)
へて
100
法灯
(
ほふとう
)
消
(
き
)
えむとなしければ
101
茲
(
ここ
)
に
一計
(
いつけい
)
案出
(
あんしゆつ
)
し
102
テル
山峠
(
やまたうげ
)
に
名
(
な
)
も
高
(
たか
)
き
103
大蛇
(
をろち
)
の
棲処
(
すみか
)
と
聞
(
きこ
)
えたる
104
さも
恐
(
おそ
)
ろしき
大瀑布
(
だいばくふ
)
105
人
(
ひと
)
の
恐
(
おそ
)
れて
近
(
ちか
)
よらぬ
106
乾
(
いぬゐ
)
の
瀑
(
たき
)
に
朝夕
(
あさゆふ
)
に
107
しげしげ
通
(
かよ
)
ひて
水垢離
(
みづごうり
)
108
取
(
と
)
りて
身魂
(
みたま
)
を
清
(
きよ
)
めつつ
109
二年
(
ふたとせ
)
計
(
ばか
)
り
荒行
(
あらげふ
)
を
110
励
(
はげ
)
み
居
(
ゐ
)
たるを
何時
(
いつ
)
しかに
111
四方
(
よも
)
の
国々
(
くにぐに
)
知
(
し
)
れ
渡
(
わた
)
り
112
吾
(
わが
)
熱誠
(
ねつせい
)
に
感歎
(
かんたん
)
し
113
又
(
また
)
もや
枯木
(
かれき
)
に
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
きて
114
教
(
をしへ
)
は
高
(
たか
)
く
照
(
て
)
りわたる
115
高照山
(
たかてるやま
)
の
聖場
(
せいぢやう
)
は
116
残枝
(
ざんし
)
忽
(
たちま
)
ち
花
(
はな
)
開
(
ひら
)
き
117
いと
賑
(
にぎ
)
はしくなりにけり
118
此
(
この
)
機
(
き
)
を
逸
(
いつ
)
せずバラモンの
119
教
(
をしへ
)
を
四方
(
よも
)
に
伝
(
つた
)
へむと
120
珍
(
うづ
)
の
国
(
くに
)
まで
教線
(
けうせん
)
を
121
張
(
は
)
らむとすれば
国彦
(
くにひこ
)
の
122
御子
(
みこ
)
と
生
(
うま
)
れし
神司
(
かむづかさ
)
123
松若彦
(
まつわかひこ
)
の
熱誠
(
ねつせい
)
に
124
三五教
(
あななひけう
)
の
信仰
(
しんかう
)
は
125
雷
(
いかづち
)
の
如
(
ごと
)
鳴
(
な
)
り
渡
(
わた
)
り
126
バラモン
教
(
けう
)
に
相対
(
あひたい
)
し
127
侮
(
あなど
)
り
難
(
がた
)
き
教敵
(
けうてき
)
と
128
今
(
いま
)
は
全
(
まつた
)
くなりにけり
129
三五教
(
あななひけう
)
が
倒
(
たふ
)
れるか
130
バラモン
教
(
けう
)
が
倒
(
たふ
)
れるか
131
生死
(
せいし
)
の
境
(
さかひ
)
と
肝胆
(
かんたん
)
を
132
砕
(
くだ
)
いて
茲
(
ここ
)
に
一計
(
いつけい
)
を
133
ひねり
出
(
いだ
)
して
神司
(
かむづかさ
)
134
ウヅの
都
(
みやこ
)
の
三五
(
あななひ
)
の
135
教
(
をしへ
)
の
館
(
やかた
)
にさし
廻
(
まは
)
し
136
三五教
(
あななひけう
)
の
信徒
(
まめひと
)
と
137
佯
(
いつは
)
らせつつ
日
(
ひ
)
に
夜
(
よる
)
に
138
内外
(
うちと
)
の
様子
(
やうす
)
を
窺
(
うかが
)
ひつ
139
善
(
よか
)
らぬ
事
(
こと
)
と
知
(
し
)
り
乍
(
なが
)
ら
140
権謀
(
けんぼう
)
術数
(
じゆつすう
)
の
有
(
あ
)
り
丈
(
だけ
)
を
141
今迄
(
いままで
)
尽
(
つく
)
し
来
(
きた
)
りける
142
神
(
かむ
)
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
の
143
珍
(
うづ
)
の
御
(
おん
)
子
(
こ
)
と
現
(
あ
)
れませる
144
末子
(
すゑこ
)
の
姫
(
ひめ
)
の
主従
(
しゆじゆう
)
が
145
テルの
国
(
くに
)
へと
出
(
い
)
でまして
146
テル
山峠
(
やまたうげ
)
を
打渉
(
うちわた
)
り
147
進
(
すす
)
み
来
(
き
)
ますとバラモンの
148
道
(
みち
)
の
根本
(
こんぼん
)
霊場
(
れいぢやう
)
より
149
無言
(
むげん
)
霊話
(
れいわ
)
をかけ
来
(
きた
)
る
150
容易
(
ようい
)
ならざる
出来事
(
できごと
)
と
151
信任
(
しんにん
)
厚
(
あつ
)
き
神司
(
かむづかさ
)
152
イサク、カールを
始
(
はじ
)
めとし
153
シーナ、チールやネロ
五
(
ご
)
人
(
にん
)
154
テル
山峠
(
やまたうげ
)
の
西麓
(
せいろく
)
に
155
差遣
(
さしつか
)
はして
両人
(
りやうにん
)
の
156
道
(
みち
)
を
遮
(
さへぎ
)
り
高照
(
たかてる
)
の
157
山
(
やま
)
の
館
(
やかた
)
に
連
(
つ
)
れ
帰
(
かへ
)
り
158
其
(
その
)
目的
(
もくてき
)
を
達
(
たつ
)
せむと
159
乾
(
いぬゐ
)
の
滝
(
たき
)
に
現
(
あら
)
はれて
160
何時
(
いつ
)
も
慣
(
な
)
れたる
水垢離
(
みづこうり
)
161
一心
(
いつしん
)
不乱
(
ふらん
)
に
祈
(
いの
)
る
折
(
をり
)
162
忽
(
たちま
)
ち
身体
(
しんたい
)
強直
(
きやうちよく
)
し
163
ビクともならぬ
苦
(
くるし
)
さに
164
空
(
そら
)
を
仰
(
あふ
)
いで
滝
(
たき
)
の
上
(
うへ
)
165
見上
(
みあ
)
ぐる
途端
(
とたん
)
に
恐
(
おそ
)
ろしき
166
醜
(
しこ
)
の
大蛇
(
をろち
)
が
口
(
くち
)
を
開
(
あ
)
け
167
目
(
め
)
を
怒
(
いか
)
らして
眺
(
なが
)
めゐる
168
心
(
こころ
)
戦
(
をのの
)
き
体
(
たい
)
縮
(
ちぢ
)
み
169
進退
(
しんたい
)
維
(
ここ
)
に
谷
(
きは
)
まりて
170
覚悟
(
かくご
)
の
臍
(
ほぞ
)
を
固
(
かた
)
めたる
171
時
(
とき
)
しもあれや
末子姫
(
すゑこひめ
)
172
二人
(
ふたり
)
の
伴
(
とも
)
を
引連
(
ひきつ
)
れて
173
現
(
あら
)
はれ
来
(
き
)
まし
三五
(
あななひ
)
の
174
清
(
きよ
)
き
尊
(
たふと
)
き
言霊
(
ことたま
)
を
175
宣
(
の
)
らせ
玉
(
たま
)
へば
曲神
(
まがかみ
)
は
176
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せぬ
177
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
178
末子
(
すゑこ
)
の
姫
(
ひめ
)
の
来
(
きた
)
らずば
179
吾
(
わ
)
れは
蛇腹
(
じやふく
)
に
葬
(
ほうむ
)
られ
180
漸
(
やうや
)
く
茲
(
ここ
)
まで
築
(
きづ
)
きたる
181
バラモン
教
(
けう
)
は
忽
(
たちま
)
ちに
182
嵐
(
あらし
)
に
木葉
(
このは
)
の
散
(
ち
)
る
如
(
ごと
)
く
183
崩壊
(
ほうくわい
)
せむは
目
(
ま
)
のあたり
184
吾
(
われ
)
は
尊
(
たふと
)
き
生命
(
せいめい
)
を
185
実
(
げ
)
にも
畏
(
かしこ
)
き
大神
(
おほかみ
)
の
186
珍
(
うづ
)
の
御
(
おん
)
子
(
こ
)
に
助
(
たす
)
けられ
187
天下
(
てんか
)
無二
(
むに
)
なる
果報者
(
くわほうもの
)
188
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
三五
(
あななひ
)
の
189
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
は
大空
(
おほぞら
)
に
190
輝
(
かがや
)
き
亘
(
わた
)
る
日月
(
じつげつ
)
の
191
光
(
ひかり
)
に
優
(
まさ
)
る
如
(
ごと
)
くなり
192
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
193
今迄
(
いままで
)
犯
(
をか
)
せし
罪悪
(
ざいあく
)
を
194
乾
(
いぬゐ
)
の
滝
(
たき
)
の
水
(
みづ
)
清
(
きよ
)
く
195
洗
(
あら
)
ひ
清
(
きよ
)
めて
永久
(
とこしへ
)
に
196
生
(
うま
)
れ
赤子
(
あかご
)
と
成
(
な
)
り
変
(
かは
)
り
197
命
(
いのち
)
の
続
(
つづ
)
く
其
(
その
)
限
(
かぎ
)
り
198
皇
(
すめ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
おん
)
道
(
みち
)
に
199
使
(
つか
)
はせ
玉
(
たま
)
へ
天津
(
あまつ
)
神
(
かみ
)
200
国津
(
くにつ
)
神
(
かみ
)
たち
八百万
(
やほよろづ
)
201
国魂神
(
くにたまがみ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
202
謹
(
つつし
)
み
敬
(
うやま
)
ひ
願
(
ね
)
ぎまつる
203
末子
(
すゑこ
)
の
姫
(
ひめ
)
や
捨子姫
(
すてこひめ
)
204
何卒
(
なにとぞ
)
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
佯
(
いつ
)
はらぬ
205
此
(
この
)
告白
(
こくはく
)
を
平
(
たひら
)
かに
206
いと
安
(
やす
)
らかに
聞
(
きこ
)
し
召
(
め
)
し
207
汝
(
なれ
)
が
命
(
みこと
)
の
従僕
(
しもべ
)
とし
208
千代
(
ちよ
)
も
八千代
(
やちよ
)
も
末永
(
すえなが
)
く
209
伴
(
ともな
)
ひ
玉
(
たま
)
へ
惟神
(
かむながら
)
210
神
(
かみ
)
かけ
祈
(
いの
)
り
奉
(
たてまつ
)
る
211
神
(
かみ
)
かけ
祈
(
いの
)
り
奉
(
たてまつ
)
る』
212
と
歌
(
うた
)
ひ
終
(
をは
)
り、
213
潔
(
いさぎよ
)
く
急坂
(
きふはん
)
を
降
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
214
再
(
ふたた
)
び
山路
(
やまぢ
)
は
峻
(
さか
)
しくなつて
来
(
き
)
た。
215
一行
(
いつかう
)
は
一歩
(
ひとあし
)
々々
(
ひとあし
)
、
216
坂路
(
さかみち
)
に
起伏
(
きふく
)
せる
岩
(
いは
)
の
頭
(
あたま
)
に
足
(
あし
)
を
踏
(
ふ
)
みしめ
乍
(
なが
)
ら
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
217
カールは
此
(
この
)
山路
(
やまみち
)
に
相当
(
さうたう
)
したる、
218
声調
(
せいてう
)
も
碌
(
ろく
)
に
整
(
ととの
)
はぬ
歌
(
うた
)
を
唄
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
219
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひ
下
(
くだ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
220
カール
『ドツコイシヨウ ドツコイシヨウ
221
テル
山峠
(
やまたうげ
)
は
高
(
たか
)
い
山
(
やま
)
222
岩石
(
がんせき
)
起伏
(
きふく
)
の
谷道
(
たにみち
)
を
223
危
(
あぶ
)
ない
危
(
あぶ
)
ないアブト
式
(
しき
)
224
力
(
ちから
)
を
入
(
い
)
れる
指
(
ゆび
)
の
先
(
さき
)
225
まかり
違
(
ちが
)
へば
転倒
(
てんたふ
)
し
226
虻蜂
(
あぶはち
)
取
(
と
)
らずになるだらう
227
皆
(
みな
)
さま
気
(
き
)
をつけなさりませ
228
敵
(
てき
)
の
中
(
なか
)
にもドツコイシヨ
229
味方
(
みかた
)
が
隠
(
かく
)
れて
居
(
を
)
りまする
230
オツト
辷
(
すべ
)
つた
危
(
あぶ
)
ないぞ
231
味方
(
みかた
)
の
中
(
なか
)
にもドツコイシヨ
232
敵
(
てき
)
が
隠
(
かく
)
れて
居
(
を
)
るであろ
233
人間
(
にんげん
)
万事
(
ばんじ
)
塞翁
(
さいをう
)
の
234
馬
(
うま
)
と
聞
(
き
)
いたがドツコイシヨ
235
コラ
又
(
また
)
危
(
あぶな
)
い
石車
(
いしぐるま
)
236
乗
(
の
)
つて
怪我
(
けが
)
をばなさるなや
237
ドツコイドツコイ
災
(
わざはひ
)
の
238
後
(
あと
)
にはキツと
福
(
ふく
)
が
来
(
く
)
る
239
福
(
ふく
)
が
来
(
き
)
たとて
油断
(
ゆだん
)
すな
240
油断
(
ゆだん
)
をすれば
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
241
キツい
坂道
(
さかみち
)
ドツコイシヨ
242
下
(
くだ
)
つて
行
(
ゆ
)
くよな
者
(
もの
)
ぢやぞえ
243
三五教
(
あななひけう
)
の
神司
(
かむづかさ
)
244
松若彦
(
まつわかひこ
)
の
命令
(
めいれい
)
で
245
高照山
(
たかてるやま
)
の
神館
(
かむやかた
)
246
飛
(
と
)
ぶ
鳥
(
とり
)
までも
落
(
おと
)
すよな
247
勢
(
いきほひ
)
強
(
つよ
)
き
石熊
(
いしくま
)
の
248
ドツコイドツコイ ドツコイシヨ
249
オツト
危
(
あぶな
)
い
石車
(
いしぐるま
)
250
お
側
(
そば
)
仕
(
つか
)
ひとなりすまし
251
一伍
(
いちぶ
)
一什
(
しじふ
)
を
偵察
(
ていさつ
)
し
252
隙
(
ひま
)
行
(
ゆ
)
く
駒
(
こま
)
のドツコイシヨ
253
悪
(
あく
)
の
企
(
たく
)
みを
細々
(
こまごま
)
と
254
珍
(
うづ
)
の
館
(
やかた
)
に
報告
(
はうこく
)
し
255
今迄
(
いままで
)
来
(
き
)
たのはドツコイシヨ
256
天
(
てん
)
の
与
(
あた
)
へに
違
(
ちが
)
ひない
257
罷
(
まか
)
り
違
(
ちが
)
へばバラモンの
258
石熊
(
いしくま
)
さまに
嗅出
(
かぎだ
)
され
259
五体
(
ごたい
)
も
何
(
なに
)
もグタグタに
260
バラモン
教
(
けう
)
とバラされて
261
惜
(
を
)
しき
命
(
いのち
)
の
安売
(
やすう
)
りを
262
やつて
居
(
を
)
つたか
分
(
わか
)
らない
263
ドツコイシヨウ ドツコイシヨウ
264
知
(
し
)
らぬが
仏
(
ほとけ
)
の
石熊
(
いしくま
)
さま
265
バラモン
教
(
けう
)
に
一心
(
いつしん
)
に
266
なつて
御座
(
ござ
)
つた
其
(
その
)
為
(
ため
)
か
267
間者
(
かんじや
)
となつて
入
(
い
)
り
込
(
こ
)
みし
268
カールとネロの
両人
(
りやうにん
)
を
269
オツト
危
(
あぶな
)
い、
又
(
また
)
辷
(
すべ
)
る
270
此上
(
こよ
)
なき
者
(
もの
)
と
愛
(
あい
)
しつつ
271
重
(
おも
)
く
用
(
もち
)
ゐて
下
(
くだ
)
さつた
272
深
(
ふか
)
い
情
(
なさけ
)
に
絆
(
ほだ
)
されて
273
三五教
(
あななひけう
)
の
信仰
(
しんかう
)
も
274
時々
(
ときどき
)
怪
(
あや
)
しくなつて
来
(
き
)
た
275
一向
(
いつかう
)
私
(
わたし
)
もバラモンの
276
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
に
入信
(
にふしん
)
し
277
一
(
ひと
)
つ
腕
(
うで
)
をば
研
(
みが
)
き
上
(
あ
)
げ
278
珍
(
うづ
)
の
都
(
みやこ
)
の
人々
(
ひとびと
)
を
279
アフンとさしてやらうかと
280
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
が
囁
(
ささや
)
いて
281
ドツコイシヨ ドツコイシヨ
282
危
(
あぶな
)
い
危
(
あぶな
)
い
誘惑
(
いうわく
)
の
283
手
(
て
)
を
伸
(
の
)
ばしたる
事
(
こと
)
もある
284
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
285
神
(
かみ
)
に
貰
(
もら
)
うたドツコイシヨ
286
直日
(
なほひ
)
の
霊魂
(
みたま
)
が
輝
(
かがや
)
いて
287
オツトドツコイそりや
悪
(
わる
)
い
288
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
の
御教
(
みをしへ
)
と
289
偽
(
いつは
)
り
神
(
がみ
)
の
教
(
をしへ
)
とを
290
神
(
かみ
)
に
貰
(
もら
)
うたドツコイシヨ
291
稜威
(
いづ
)
の
霊
(
みたま
)
に
省
(
かへり
)
みて
292
必
(
かなら
)
ず
迷
(
まよ
)
ふこと
勿
(
なか
)
れ
293
天国
(
てんごく
)
地獄
(
ぢごく
)
の
国境
(
くにざかひ
)
294
胸
(
むね
)
に
手
(
て
)
を
当
(
あ
)
て
思案
(
しあん
)
せと
295
何
(
なに
)
か
知
(
し
)
らぬが
囁
(
ささや
)
いた
296
アイタタ、ドツコイ
躓
(
つまづ
)
いた
297
拇指
(
おやゆび
)
小指
(
こゆび
)
をしたたかに
298
尖
(
とが
)
つた
岩
(
いは
)
に
突
(
つ
)
きあてて
299
千尋
(
ちひろ
)
の
谷間
(
たにま
)
に
危
(
あやふ
)
くも
300
辷
(
すべ
)
りおちむとドツコイシヨ
301
ドツコイドツコイ ドツコイシヨ
302
傾
(
かたむ
)
く
身体
(
からだ
)
を
手
(
て
)
を
広
(
ひろ
)
げ
303
中心
(
ちうしん
)
取
(
と
)
つてドツコイシヨ
304
おかげで
体
(
からだ
)
が
立直
(
たてなほ
)
り
305
ヤツと
命
(
いのち
)
を
取
(
と
)
り
止
(
と
)
めた
306
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
307
神
(
かみ
)
程
(
ほど
)
尊
(
たふと
)
い
方
(
かた
)
はない
308
モウシ
末子
(
すゑこ
)
のお
姫
(
ひめ
)
さま
309
捨子姫
(
すてこひめ
)
さまお
二方
(
ふたかた
)
310
足許
(
あしもと
)
用心
(
ようじん
)
なさりませ
311
ズイ
分
(
ぶん
)
高
(
たか
)
い
石熊
(
いしくま
)
が
312
ゴロゴロゴロと
坂道
(
さかみち
)
に
313
転
(
こ
)
かしてやらうと
待
(
ま
)
つてゐる
314
ドツコイ
油断
(
ゆだん
)
は
大敵
(
たいてき
)
ぢや
315
人
(
ひと
)
の
心
(
こころ
)
は
分
(
わか
)
らない
316
とは
云
(
い
)
ふものの
石熊
(
いしくま
)
さま
317
お
前
(
まへ
)
の
事
(
こと
)
ではない
程
(
ほど
)
に
318
気
(
き
)
を
悪
(
わる
)
なさつて
下
(
くだ
)
さるな
319
躓
(
つまづ
)
く
石
(
いし
)
も
縁
(
えん
)
の
端
(
はし
)
320
一樹
(
いちじゆ
)
の
蔭
(
かげ
)
の
雨宿
(
あまやど
)
り
321
一河
(
いちが
)
の
流
(
なが
)
れを
汲
(
く
)
むさへも
322
深
(
ふか
)
い
因縁
(
いんねん
)
あればこそ
323
お
前
(
まへ
)
の
館
(
やかた
)
に
住
(
す
)
み
込
(
こ
)
んで
324
朝晩
(
あさばん
)
同
(
おな
)
じ
物
(
もの
)
を
食
(
く
)
ひ
325
水
(
みづ
)
も
洩
(
も
)
らさぬ
親切
(
しんせつ
)
を
326
尽
(
つく
)
して
貰
(
もら
)
うた
其
(
その
)
時
(
とき
)
の
327
私
(
わたし
)
の
心
(
こころ
)
の
苦
(
くる
)
しさは
328
口
(
くち
)
で
言
(
い
)
ふよな
事
(
こと
)
でない
329
一層
(
いつそう
)
お
前
(
まへ
)
に
真実
(
しんじつ
)
を
330
心
(
こころ
)
の
底
(
そこ
)
から
打明
(
うちあ
)
けて
331
白状
(
はくじやう
)
せうかと
思
(
おも
)
うたが
332
ドツコイドツコイ
待
(
ま
)
て
暫
(
しば
)
し
333
松若彦
(
まつわかひこ
)
の
神司
(
かむづかさ
)
334
私
(
わたし
)
を
男
(
をとこ
)
と
見込
(
みこ
)
んでの
335
最上
(
さいじやう
)
破格
(
はかく
)
の
御
(
ご
)
信任
(
しんにん
)
336
無
(
む
)
にしちやならぬとドツコイシヨ
337
再
(
ふたた
)
び
心
(
こころ
)
を
立直
(
たてなほ
)
し
338
猫
(
ねこ
)
を
被
(
かぶ
)
つてやつて
来
(
き
)
た
339
カールは
腹
(
はら
)
のドツコイシヨ
340
汚
(
きたな
)
い
奴
(
やつ
)
ぢやと
思
(
おも
)
はずに
341
今迄
(
いままで
)
お
前
(
まへ
)
を
詐
(
いつは
)
つた
342
心
(
こころ
)
の
罪
(
つみ
)
を
赦
(
ゆる
)
してよ
343
ドツコイドツコイ
其
(
その
)
代
(
かは
)
り
344
お
前
(
まへ
)
の
深
(
ふか
)
い
計
(
はか
)
らひで
345
ウヅの
都
(
みやこ
)
に
遣
(
つか
)
はした
346
間者
(
かんじや
)
は
幾人
(
いくにん
)
あるとても
347
末子
(
すゑこ
)
の
姫
(
ひめ
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
348
俺
(
おれ
)
が
代
(
かは
)
つてお
詫
(
わび
)
して
349
綺麗
(
きれい
)
に
綺麗
(
きれい
)
に
帳消
(
てうけ
)
しと
350
流
(
なが
)
れ
勘定
(
かんぢやう
)
にして
貰
(
もら
)
ふ
351
皆
(
みな
)
さま
危
(
あぶな
)
い
足許
(
あしもと
)
に
352
気
(
き
)
をつけなされよ
坂路
(
さかみち
)
は
353
ますます
急
(
きふ
)
になつて
来
(
き
)
た
354
ウツカリ
辷
(
すべ
)
つて
谷底
(
たにそこ
)
へ
355
転落
(
てんらく
)
したら
大変
(
たいへん
)
だ
356
胸
(
むね
)
がドキドキ
騒
(
さわ
)
ぎ
出
(
だ
)
す
357
三五教
(
あななひけう
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
よ
358
どうぞ
一行
(
いつかう
)
四人
(
よにん
)
連
(
づ
)
れ
359
此
(
この
)
急坂
(
きふはん
)
を
恙
(
つつが
)
なく
360
あなたの
厚
(
あつ
)
き
御守
(
みまも
)
りに
361
通過
(
つうくわ
)
をさせて
下
(
くだ
)
さんせ
362
偏
(
ひとへ
)
に
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
申
(
まを
)
します
363
ドツコイドツコイ ドツコイシヨ
364
アイタタ、ドツコイ
又
(
また
)
転
(
こ
)
けた
365
あんまり
調子
(
てうし
)
に
乗
(
の
)
り
過
(
す
)
ぎて
366
知
(
し
)
らずに
乗
(
の
)
つた
石車
(
いしぐるま
)
367
背中
(
せなか
)
は
少
(
すこ
)
し
打
(
う
)
つたれど
368
生命
(
いのち
)
は
別状
(
べつじやう
)
はない
程
(
ほど
)
に
369
皆
(
みな
)
さま
安心
(
あんしん
)
しておくれ
370
ウントコ、ドツコイ ドツコイシヨ
371
降
(
くだ
)
れば
広
(
ひろ
)
きウヅの
国
(
くに
)
372
青野
(
あをの
)
ケ
原
(
はら
)
の
右左
(
みぎひだり
)
373
青葉
(
あをば
)
の
蔭
(
かげ
)
に
身
(
み
)
を
休
(
やす
)
め
374
ゆつくり
一服
(
いつぷく
)
致
(
いた
)
しませう
375
ホントに
長
(
なが
)
い
峠
(
たうげ
)
ぢやなア
376
グヅグヅしてると
日
(
ひ
)
が
暮
(
く
)
れる
377
さうだと
云
(
い
)
つて
無茶
(
むちや
)
苦茶
(
くちや
)
に
378
走
(
はし
)
つて
降
(
くだ
)
れば
又
(
また
)
転
(
こ
)
ける
379
坊主
(
ばうづ
)
と
尼
(
あま
)
ならケがないが
380
俺
(
おい
)
等
(
ら
)
の
様
(
やう
)
な
長髪
(
ちやうはつ
)
は
381
中々
(
なかなか
)
此
(
この
)
道
(
みち
)
や
物騒
(
ぶつそう
)
な
382
あゝ
惟神
(
かむながら
)
ドツコイシヨ
383
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ
384
旭
(
あさひ
)
は
照
(
て
)
る
共
(
とも
)
曇
(
くも
)
る
共
(
とも
)
385
月
(
つき
)
は
盈
(
み
)
つ
共
(
とも
)
虧
(
か
)
くる
共
(
とも
)
386
仮令
(
たとへ
)
大地
(
だいち
)
は
沈
(
しづ
)
むとも
387
再
(
ふたた
)
びこんな
山路
(
やまみち
)
を
388
私
(
わたし
)
は
通
(
とほ
)
ろと
思
(
おも
)
はない
389
本当
(
ほんたう
)
に
危
(
あぶ
)
ない
坂道
(
さかみち
)
ぢや
390
神
(
かみ
)
の
御
(
おん
)
為
(
ため
)
世
(
よ
)
の
人
(
ひと
)
を
391
助
(
たす
)
ける
道
(
みち
)
と
思
(
おも
)
やこそ
392
音
(
おと
)
に
名高
(
なだか
)
き
此
(
この
)
坂
(
さか
)
を
393
登
(
のぼ
)
りつ
下
(
くだ
)
りつ
致
(
いた
)
すのだ
394
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
も
吾々
(
われわれ
)
が
395
此
(
この
)
真心
(
まごころ
)
を
御
(
ご
)
照覧
(
せうらん
)
396
遊
(
あそ
)
ばしまして
世
(
よ
)
に
高
(
たか
)
く
397
誉
(
ほまれ
)
を
残
(
のこ
)
させ
玉
(
たま
)
へかし
398
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
や
駒山
(
こまやま
)
の
399
彦
(
ひこの
)
命
(
みこと
)
や
珍山
(
うづやま
)
の
400
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
の
通
(
とほ
)
りたる
401
此
(
この
)
山坂
(
やまさか
)
を
改
(
あらた
)
めて
402
二人
(
ふたり
)
の
美人
(
びじん
)
に
導
(
みちび
)
かれ
403
黄金
(
こがね
)
の
橋
(
はし
)
を
渡
(
わた
)
るよな
404
危
(
あぶ
)
ない
気分
(
きぶん
)
で
下
(
くだ
)
りゆく
405
天教山
(
てんけうざん
)
ではなけれ
共
(
ども
)
406
木
(
こ
)
の
花
(
はな
)
匂
(
にほ
)
ふウヅの
国
(
くに
)
407
花
(
はな
)
の
都
(
みやこ
)
にドツコイシヨ
408
ドツコイドツコイ ドツコイシヨ
409
上
(
のぼ
)
り
行
(
ゆ
)
くこそ
楽
(
たの
)
しけれ
410
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
411
早
(
はや
)
言霊
(
ことたま
)
の
油
(
あぶら
)
きれ
412
停電
(
ていでん
)
するより
仕様
(
しやう
)
がない
413
二人
(
ふたり
)
の
親
(
おや
)
が
遺
(
かた
)
みとて
414
残
(
のこ
)
して
呉
(
く
)
れた
膝栗毛
(
ひざくりげ
)
415
どうやら
怪
(
あや
)
しくなつて
来
(
き
)
た
416
そこには
丁度
(
ちやうど
)
恰好
(
かつかう
)
な
417
腰掛岩
(
こしかけいは
)
が
並
(
なら
)
んでる
418
皆
(
みな
)
さま
一服
(
いつぷく
)
せうぢやないか
419
叔母
(
をば
)
が
死
(
し
)
んでも
直休
(
ぢきやす
)
み
420
暑中
(
しよちう
)
休暇
(
きうか
)
の
避暑
(
ひしよ
)
旅行
(
りよかう
)
421
青葉
(
あをば
)
の
蔭
(
かげ
)
に
横
(
よこ
)
たはり
422
息
(
いき
)
をついだら
如何
(
どう
)
であろ
423
あゝ
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
424
御霊
(
みたま
)
幸
(
さち
)
はひましませよ』
425
と
一歩
(
ひとあし
)
々々
(
ひとあし
)
、
426
九十九
(
つくも
)
折
(
を
)
りの
石
(
いし
)
だらけの
危
(
あぶ
)
なき
急坂
(
きふはん
)
を
下
(
くだ
)
つて
来
(
き
)
たが、
427
稍
(
やや
)
少
(
すこ
)
し
計
(
ばか
)
り
緩勾配
(
くわんこうばい
)
の
坂
(
さか
)
の
左側
(
さそく
)
に
腰掛
(
こしかけ
)
の
如
(
ごと
)
く
並
(
なら
)
んでゐる
天然
(
てんねん
)
椅子
(
いす
)
に
一行
(
いつかう
)
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
腰
(
こし
)
を
卸
(
おろ
)
し
息
(
いき
)
をつぎ、
428
汗
(
あせ
)
を
涼風
(
りやうふう
)
に
拭
(
ぬぐ
)
ふ。
429
(
大正一一・八・一四
旧六・二二
松村真澄
録)
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