霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 マラソン競争(きやうそう)〔八五四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第30巻 海洋万里 巳の巻 篇:第3篇 神縁微妙 よみ(新仮名遣い):しんえんびみょう
章:第12章 マラソン競争 よみ(新仮名遣い):まらそんきょうそう 通し章番号:854
口述日:1922(大正11)年08月15日(旧06月23日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年9月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
末子姫、捨子姫、カール、石熊と、一行を迎えに来た春公、幾公、鷹公の七人は、巽の池の竜神を解脱せしめ、今後この池に再び竜神が棲んで人々を苦しめることがないように深く鎮魂を施した。
一行はいよいよ珍の都に向かって進んで行く。このとき、不思議にも左右違っていたカールの足の長さは、いつの間にか長短そろい、歩行が容易になっていた。しかしカールは少しもそのことに気付いていなかった。
末子姫は天津祝詞を奏上し天の数歌を歌い上げ、先に立って進み始めた。石熊は、なぜか足が立たなくなっていたので皆を呼び止めて助けを求めた。末子姫は、時節が来ればきっと立つようになる、不言実行だと諭した。
カールは残って石熊の足を立たせようとすることになり、他の一行は先に珍の都に向かって出発することになった。カールは、バラモン教に潜入していたときに石熊に世話になったのだから、恩返しとして何とか足を立たせてやろうと祈念を凝らし始めた。
カールは天の数歌を歌いながら石熊の足を撫で、言霊歌を歌い始めた。カールは滑稽な歌で石熊の改心と足の平癒を祈願していたが、最後には石熊をからかい、置いてさっさと先に逃げだした。
石熊は歯噛みをしながらも、怒りにまぎれて足の痛みを忘れ、立ってカールを追いかけ始めた。追いかけているうちに石熊は、わざと自分を怒らせて足を立たせてくれたカールの心を悟り、お礼を言おうとカールを呼ばわりながら走っていく。
カールは都についたらとっくり聞かせてやろうと先に走って行く。二人はマラソン競争のように都に向かって走っていった。
これこそ、カールが大神に教えられた神策を実地に活用させた働きであった。二人は珍の都に着くと、互いに胸を割って慈愛の神の御心を語り合い、感謝するのであった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-01-28 20:06:57 文字数:4430 OBC :rm3012
愛善世界社版:138頁 八幡書店版:第5輯 621頁 修補版: 校定版:148頁 普及版:53頁 初版: ページ備考:
001 茲(ここ)に末子姫(すゑこひめ)は捨子姫(すてこひめ)、002カール、003春公(はるこう)、004幾公(いくこう)、005鷹公(たかこう)、006石熊(いしくま)の一行(いつかう)と共(とも)に芽出(めで)たく巽(たつみ)の池(いけ)の大蛇(をろち)を言向(ことむ)け和(やは)し、007解脱(げだつ)せしめ、008池(いけ)に向(むか)つて感謝(かんしや)の詞(ことば)を述(の)べ、009向後(こうご)決(けつ)して此(この)池(いけ)に、010従前(じゆうぜん)の如(ごと)き竜蛇神(りうじやしん)の棲居(せいきよ)して、011世人(よびと)を苦(くるし)めざる様(やう)と深(ふか)く鎮魂(ちんこん)を修(しう)し、012災(わざはひ)を封(ふう)じおき、013いよいよ珍(うづ)の都(みやこ)に向(むか)つて進(すす)むこととなりにけり。
014 此(この)時(とき)不思議(ふしぎ)にもカールの足(あし)の長短(ちやうたん)は何時(いつ)の間(ま)にか両足(りやうあし)相揃(あひそろ)ひ、015行歩(かうほ)極(きは)めて容易(ようい)になつてゐた。016されどカールは少(すこ)しも気付(きづ)かず、017依然(いぜん)として跛(びつこ)の不具者(かたは)と信(しん)じてゐるものの如(ごと)くであつた。018末子姫(すゑこひめ)は天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し、019天(あま)の数歌(かずうた)を歌(うた)ひ上(あ)げ、020一同(いちどう)に向(むか)ひ、
021末子姫(すゑこひめ)『サア皆様(みなさま)、022御(ご)苦労(くらう)で御座(ござ)いました。023これからボツボツと参(まゐ)りませう』
024と先(さき)に立(た)つて進(すす)み行(ゆ)く。
025石熊(いしくま)『モシモシ皆様(みなさま)! 待(ま)つて下(くだ)さい。026どうしたものか、027チツとも足(あし)が動(うご)かなくなりました。028どうぞ鎮魂(ちんこん)をして下(くだ)さいませ。029何(なん)だか締(しめ)つけられる様(やう)で、030仕方(しかた)が御座(ござ)いませぬ』
031カール『もし、032末子姫(すゑこひめ)様(さま)、033石熊(いしくま)の大将(たいしやう)、034足(あし)が立(た)たないと云(い)つてゐます。035困(こま)つた者(もの)ですなア』
036末子(すゑこ)『イエイエ決(けつ)して御(ご)心配(しんぱい)には及(およ)びませぬ。037キツと時節(じせつ)が参(まゐ)れば、038立(た)つ様(やう)になります……なア、039カールさま、040不言(ふげん)実行(じつかう)と云(い)ふことを御存(ごぞん)じですか?』
041カール『ハイ、042分(わか)りました。043どうぞ、044そんなら姫(ひめ)様(さま)、045一足(ひとあし)お先(さき)へお越(こ)し下(くだ)さいませ。046捨子姫(すてこひめ)様(さま)も御(ご)一緒(いつしよ)に御(お)願(ねがひ)致(いた)します……オイ春(はる)、047幾(いく)、048鷹(たか)の三公(さんこう)、049お前(まへ)はお二人(ふたり)様(さま)のお伴(とも)して帰(かへ)つて呉(く)れ。050俺(おれ)は少(すこ)し石熊(いしくま)の大将(たいしやう)の足(あし)を直(なほ)してから帰(かへ)るから……』
051春(はる)『オイ、052カール、053いい加減(かげん)にしとかぬかい。054余(あま)り今迄(いままで)悪党(あくたう)なこと計(ばか)りやつて来(き)た酬(むく)いで神罰(しんばつ)が当(あた)つたのだ。055お前(まへ)がどれ丈(だけ)言霊(ことたま)が上手(じやうづ)でも御(お)祈(いの)りが立派(りつぱ)でも駄目(だめ)だよ。056神(かみ)様(さま)が御(お)許(ゆる)しがなければ到底(たうてい)足(あし)が立(た)つ筈(はず)がないワ。057余(あま)り汚(けが)れた身魂(みたま)だから、058神(かみ)様(さま)がウヅの聖地(せいち)へ来(こ)ないようと、059不動(ふどう)の金縛(かなしば)りをかけて御座(ござ)るのだよ。060いい加減(かげん)に帰(かへ)つたらどうだ』
061カール『そんな訳(わけ)に行(ゆ)くものか。062人(ひと)の難儀(なんぎ)を見(み)て、063それを救(すく)はずに帰(かへ)る様(やう)なことで、064如何(どう)して神(かみ)様(さま)の取次(とりつぎ)が出来(でき)るものか。065何(なに)は兎(と)もあれ姫(ひめ)様(さま)の御(ご)命令(めいれい)だ。066グツグヅ云(い)はずに早(はや)く姫(ひめ)様(さま)の御(お)伴(とも)をして帰(かへ)つて呉(く)れ。067すぐに俺(おれ)は追(お)ひ付(つ)くから……』
068春(はる)『さうか、069ソリヤ実(じつ)に感心(かんしん)な心(こころ)になつたものだなア』
070と嘲(あざけ)る様(やう)に言(い)ひ乍(なが)ら、071二人(ふたり)の後(あと)に従(したが)ひ、072ウヅの都(みやこ)をさして帰(かへ)り行(ゆ)く。
073 後(あと)に二人(ふたり)は稍(やや)少時(しばし)、074水面(すゐめん)に向(むか)つて暗祈(あんき)黙祷(もくたう)を続(つづ)けて居(ゐ)た。
075カール『オイ石熊(いしくま)の大将(たいしやう)! 今迄(いままで)俺(おれ)はお前(まへ)の弟子(でし)となつて、076エライお世話(せわ)になつたものだ。077今日(けふ)は其(その)御恩(ごおん)返(がへ)しと罪亡(つみほろ)ぼしの為(ため)に、078邪(じや)が非(ひ)でもお前(まへ)の足(あし)を直(なほ)して、079やらねばならぬ。080如何(どう)しても足(あし)が立(た)たなければ、081俺(おれ)が背中(せなか)に負(お)うてでもウヅの都(みやこ)へ連(つ)れて行(ゆ)く覚悟(かくご)だからマア安心(あんしん)せよ』
082石熊(いしくま)『ソリヤどうも有難(ありがた)い。083苦労(くらう)をかけて済(す)まぬなア』
084カール『世(よ)の中(なか)は相身互(あひみたがひ)だ。085さう病気(びやうき)も直(なほ)らない内(うち)から礼(れい)を云(い)つてくれると、086如何(どう)云(い)つて良(よ)いやら、087俺(おれ)も返答(へんたふ)に困(こま)つて了(しま)ふ。088マアゆつくりと気(き)をしづめたが良(よ)からう。089マア待(ま)て、090俺(おれ)が是(これ)から新規(しんき)蒔直(まきなほ)しの言霊(ことたま)を奏上(そうじやう)するから、091キツとお前(まへ)の足(あし)が巽(たつみ)の池(いけ)となるのは受合(うけあひ)だ。092さうなつたら二人(ふたり)手(て)に手(て)を取(と)つて潔(いさぎよ)く宣伝歌(せんでんか)を謡(うた)ひ、093ウヅの都(みやこ)をさしてサツサと乾(いぬゐ)の池(いけ)だよ。094水(みづ)も洩(も)らさぬ二人(ふたり)の仲(なか)だ。095池(いけ)ないことは互(たがひ)に堤(つつみ)かくさず、096打明(うちあ)けて、097兄弟(きやうだい)の如(ごと)く親切(しんせつ)を尽(つく)し合(あ)はうぢやないか。098此(この)池(いけ)の様(やう)に水(みづ)がタツプリ過(す)ぎて、099水臭(みづくさ)い交際(かうさい)は最早(もはや)改(あらた)めねばならないよ。100サア是(これ)から一(ひと)つカールさまの生言霊(いくことたま)だ。101マアそこへ足(あし)をニヨツと出(だ)せ。102一(ひと)つ鎮魂(ちんこん)を御(お)願(ねがひ)してやらう。103さうして言霊歌(ことたまうた)を奏上(そうじやう)することにせう。104笑(わら)ふなよ!』
105石熊(いしくま)『勿体(もつたい)ない、106祈念(きねん)をして貰(もら)つて笑(わら)ふ奴(やつ)があるものか。107併(しか)し乍(なが)ら病気(びやうき)が直(なほ)つたら、108余(あま)り嬉(うれ)しくて、109笑(わら)ひ泣(な)きをするかも知(し)れないから、110夫丈(それだけ)は前以(まへもつ)てお断(ことわ)りをしておく』
111カール『嬉(うれ)し笑(わら)ひなら、112ドツサリ笑(わら)つて呉(く)れ。113俺(おれ)も手(て)を拍(う)つて嬉(うれ)し笑(わら)ひをするからなア』
114 石熊(いしくま)は池(いけ)の畔(ほとり)の芝生(しばふ)の上(うへ)に足(あし)をヌツと揃(そろ)へ、115突出(つきだ)してゐる。116カールは例(れい)に依(よ)り、117叮嚀(ていねい)に大腿骨(だいたいこつ)の辺(あた)りから爪先(つまさき)まで、118天(あま)の数歌(かずうた)を謡(うた)ひ乍(なが)ら、119幾回(いくくわい)となく撫(な)でおろし、120そろそろ祈願(きぐわん)の歌(うた)を謡(うた)ひ始(はじ)めた。121其(その)歌(うた)、
122カール『天津(あまつ)神(かみ)様(さま)八百万(やほよろづ)
123国津(くにつ)神(かみ)様(さま)八百万(やほよろづ)
124此奴(こいつ)は余(あんま)り悪(あく)が過(す)ぎた故(ゆゑ)
125最早(もはや)運命(うんめい)は月照彦(つきてるひこ)の
126神(かみ)様(さま)どうぞ此(この)足(あし)を
127カールに直(なほ)して下(くだ)さんせ
128高砂島(たかさごじま)を守(まも)ります
129生国魂(いくくにたま)の神(かみ)様(さま)よ
130石熊(いしくま)さまの両足(りやうあし)が
131一(いち)時(じ)も早(はや)く竜世姫(たつよひめ)
132立(た)つて踊(をど)つてシヤンシヤンと
133ウヅの国(くに)へと喜(よろこ)んで
134勇(いさ)んで参(まゐ)ります様(やう)に
135お守(まも)りなさつて下(くだ)さりませい
136一(いち)時(じ)も早(はや)く此(この)躄(いざり)
137巽(たつみ)の池(いけ)の竜神(たつがみ)の
138罪(つみ)はほどけて天上(てんじやう)に
139立帰(たちかへ)りました其(その)如(ごと)く
140忽(たちま)ち平癒(へいゆ)さしてたべ
141腰(こし)から上(うへ)はどうもない
142なぜ此(この)足(あし)が悪(わる)いだろ
143ヤツパリあしき事(こと)をした
144深(ふか)いめぐりが来(き)たのだろ
145悪(あし)きを払(はら)うて助(たす)け玉(たま)へ
146転輪王(てんりんわう)ではなけれ共(ども)
147天(てん)にまします神(かみ)様(さま)よ
148地(つち)にまします神(かみ)様(さま)よ
149カールが代(かは)つて御(おん)願(ねがひ)
150完美(うまら)に委曲(つばら)にきこし召(め)し
151早(はや)く助(たす)けて下(くだ)さりませい
152私(わたし)もこんな男(をとこ)をば
153連(つ)れにするのは厭(いや)なれど
154旅(たび)は道伴(みちづ)れ世(よ)は情(なさけ)
155神(かみ)の戒(いまし)め恐(こは)い故(ゆゑ)
156せうことなさに介抱(かいほう)する
157オツトドツコイ石熊(いしくま)さま
158これは私(わたし)の冗談(ぜうだん)だ
159瓢箪(へうたん)からは駒(こま)が出(で)る
160冗談(ぜうだん)からは隙(ひま)が出(で)る
161灰吹(はひふ)きからは蛇(じや)アが出(で)る
162一(いち)時(じ)も早(はや)く石熊(いしくま)に
163憑依(ひようい)致(いた)した悪霊(あくれい)が
164出(で)る様(やう)に守(まも)つて下(くだ)さんせ
165此奴(こいつ)の体(からだ)に這入(はい)つた以上(いじやう)
166キツと入口(いりぐち)あるであろ
167出口(でぐち)の神(かみ)さま一時(いつとき)も
168早(はや)く追(お)ひ出(だ)し下(くだ)さんせ
169百人(ひやくにん)一首(いつしゆ)ぢやなけれ共(ども)
170足(あし)を痛(いた)めた足引(あしびき)の
171山鳥(やまどり)の尾(を)のしだり尾(を)の
172長々(ながなが)しくも何時迄(いつまで)も
173斯(か)うしてゐては堪(たま)らない
174どうで罪(つみ)をば重(かさ)ねた男(をとこ)
175御(ご)無礼(ぶれい)の数々(かずかず)いつとなく
176尽(つく)しましたで御座(ござ)いませう
177お腹(はら)の立(た)つのは尤(もつと)もぢや
178併(しか)し神(かみ)様(さま)私(わたくし)の
179願(ねがひ)を容(い)れて腹立(はらた)てず
180足(あし)の立(た)つよにしてお呉(く)れ
181夜明(よあ)けに立(た)つは○○ぢや
182親(おや)と一度(いちど)に生(うま)れたる
183伜(せがれ)は見(み)ん事(ごと)立(た)つなれど
184此奴(こいつ)の足(あし)はどうしてか
185容易(ようい)に立(た)たうと致(いた)さない
186如何(いか)なる罪(つみ)があらうとも
187今度(こんど)計(ばか)りはお助(たす)けを
188たつて御(お)願(ねがひ)申(まを)します
189こりや又(また)不思議(ふしぎ)何時(いつ)の間(ま)に
190俺(おれ)の一方(いつぱう)の長(なが)い足(あし)
191誰(たれ)が盗(ぬす)んで帰(い)んだのか
192いつの間(あひだ)にやら両足(りやうあし)が
193高低(たかひく)なしに揃(そろ)うてゐる
194かうなる上(うへ)は俺(おれ)とても
195採長(さいちやう)補短(ほたん)の融通(ゆうづう)は
196コレから利(き)かすこた出来(でき)ぬ
197いやまて暫(しば)し待(ま)てしばし
198そんな不足(ふそく)は云(い)はれない
199これも尊(たふと)き神(かみ)様(さま)が
200一方(いつぱう)の足(あし)を縮(ちぢ)めたか
201但(ただし)は一方(いつぱう)を伸(の)ばしたか
202何(なん)ぢや知(し)らぬが嬉(うれ)しいぞ
203心(こころ)もカールなつて来(き)た
204石熊(いしくま)さまよ! これ見(み)やれ
205誠(まこと)が天地(てんち)に通(つう)じたら
206一生(いつしやう)病(やまひ)のド跛(ちんば)も
207いつの間(ま)にやら神(かみ)さまが
208頼(たの)みもせぬのに気(き)を利(き)かし
209チヤンと直(なほ)して下(くだ)さつた
210お前(まへ)の足(あし)は真直(まつすぐ)に
211長(なが)い短(みじか)いない足(あし)だ
212こんな所(ところ)で腰(こし)ぬかし
213立(た)つも立(た)たぬもあるものか
214気(き)を引立(ひきた)てて立(た)つてみよ
215三五教(あななひけう)の御教(みをしへ)に
216経(たて)と緯(よこ)との御(おん)仕組(しぐみ)
217艮(うしとら)鬼門(きもん)金神(こんじん)の
218気勘(きかん)に叶(かな)うたことなれば
219錦(にしき)の綾(あや)の機(はた)をあげ
220天晴(あつぱ)れ神(かみ)の太柱(ふとはしら)
221下(した)つ岩根(いはね)に立(た)て通(とほ)し
222上(うは)つ岩根(いはね)につきこらし
223信仰(しんかう)の徳(とく)をつむならば
224どんな悪魔(あくま)もたてつかぬ
225立(た)てよ立(た)て立(た)て早(はや)く立(た)て
226立(た)てと云(い)うたら立(た)たぬかい
227お前(まへ)は余程(よつぽど)腰抜(こしぬけ)だ
228巽(たつみ)の池(いけ)の竜神(りうじん)の
229あの勢(いきほひ)に辟易(へきえき)し
230肝玉(きもだま)つぶして腰(こし)をぬき
231アタ恥(はづ)かしい荒男(あらをとこ)
232腰(こし)をぬかして何(なん)とする
233俺(おれ)のぬかすは口(くち)計(ばか)り
234何時(いつ)もグヅグヅ吐(ぬか)す奴(やつ)
235黙(だま)つて居(を)れよと何時(いつ)の日(ひ)か
236俺(おれ)を叱(しか)つたことがあろ
237あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
238叶(かな)はぬなれば立(たち)あがれ
239性(たち)のよくない此(この)病(やまひ)
240耆婆(きば)扁鵲(へんじやく)が現(あら)はれて
241忽(たちま)ち直(なほ)して呉(く)れまいか
242俺(おれ)の言霊(ことたま)立所(たちどこ)に
243御兆候(みしるし)がなければならぬ筈(はず)
244恥(はづか)し乍(なが)ら是程(これほど)に
245言霊車(ことたまぐるま)を運転(うんてん)し
246きばつて見(み)れどまだ立(た)たぬ
247立(た)つた 立(た)つた 立(た)つた 立(た)つたラツパ節(ぶし)
248法螺貝(ほらがい)吹(ふ)いた其(その)酬(むく)い
249こんな憂目(うきめ)に合(あ)ふのだろ
250竜世(たつよ)の姫(ひめ)の神(かみ)さまよ
251お前(まへ)の水火(いき)に生(うま)れた子(こ)
252なぜに立(た)たして下(くだ)さらぬ
253私(わたし)は痛(いた)うも痒(か)ゆもない
254さは去(さ)り乍(なが)ら心(こころ)の中(なか)は
255ホンに歯痒(はがゆ)い痛(いた)ましい
256いたつて口(くち)のやかましい
257此(この)石熊(いしくま)も今(いま)は早(はや)
258往生(わうじやう)致(いた)して居(を)りまする
259最早(もはや)慢心(まんしん)致(いた)すまい
260改心(かいしん)記念(きねん)に今(いま)一度(いちど)
261足(あし)が立(た)つよに頼(たの)みます
262衝(つ)き立(た)つ船戸(ふなど)の神(かみ)様(さま)の
263御(おん)名(な)を負(お)へる此(この)杖(つゑ)を
264力(ちから)にチヨツと立(た)つて見(み)よ
265あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
266どうして是程(これほど)お前(まへ)の病(やまひ)
267しぶとう直(なほ)らぬ事(こと)だらう
268末子(すゑこ)の姫(ひめ)の御(ご)一行(いつかう)
269立(た)つて行(ゆ)かれた其(その)跡(あと)で
270気(き)が気(き)でならぬ二人(ふたり)連(づ)れ
271神(かみ)さまたつて頼(たの)みます
272オイオイ石熊(いしくま)立(た)つて見(み)よ
273立(た)つて立(た)てない事(こと)はない
274お前(まへ)の心(こころ)を引立(ひきた)てて
275誠(まこと)の道(みち)を立(た)て通(とほ)し
276猜疑(さいぎ)の心(こころ)を絶(た)つならば
277キツと此(この)足(あし)立(た)つだらう
278たつからお前(まへ)を眺(なが)めても
279横(よこ)から見(み)ても気(き)にくはぬ
280ハラの立(た)つよなスタイルだ
281これでは役(やく)に立(た)つまいぞ
282ヤレ立(た)て ソラ立(た)て 早(はや)う立(た)て
283ドツコイドツコイ ドツコイシヨ
284転(こ)けつ輾(まろ)びつ気(き)を引立(ひきた)つて
285カールの後(あと)に跟(つ)いて来(こ)い
286最早(もはや)俺(おれ)さまは立(た)つ程(ほど)に
287石熊(いしくま)さまよ御(ご)ゆつくり
288そこで御(ご)隠居(いんきよ)なされませ
289お腹(はら)が立(た)つかは知(し)らね共(ども)
290立(た)たねばならぬ此(この)場合(ばあひ)
291早(はや)く帰(かへ)りて姫(ひめ)様(さま)の
292お役(やく)に立(た)つが俺(おれ)の役(やく)
293サアサア行(ゆ)かうサア行(ゆ)かう
294ドツコイドツコイ ドツコイシヨ
295ウントコ立(た)つたり石熊(いしくま)さま
296気張(きば)つて立(た)つたり石熊(いしくま)さま
297左(ひだり)のお足(あし)を一寸(ちよつと)屈(かが)め
298右(みぎ)の御(お)足(あし)を一寸(ちよつと)屈(かが)め
299神(かみ)さま力(ちから)に立(た)つて見(み)よ
300立(た)つに立(た)たれぬことはない
301心(こころ)一(ひと)つの持様(もちやう)だ
302さらばさらば』と立帰(たちかへ)る
303後(あと)に石熊(いしくま)只一人(ただひとり)
304石熊(いしくま)『オイオイカール待(ま)つて呉(く)れ
305俺(おれ)達(たち)一人(ひとり)をこんな所(とこ)に
306捨(す)てておくのは胴欲(どうよく)ぢや
307こんな無情(むじやう)な事(こと)されて
308腹(はら)が立(た)たずにおかうかい
309腹(はら)が立(た)たずに済(す)むものか
310残念(ざんねん)至極(しごく)思(おも)ひ知(し)れ』
311無念(むねん)の歯(は)がみし乍(なが)らも
312怒(いか)りにまぎれて両足(りやうあし)の
313痛(いたみ)を忘(わす)れて立上(たちあ)がり
314『コラコラカール一寸(ちよつと)待(ま)て
315貴様(きさま)は誠(まこと)に済(す)まぬ奴(やつ)
316コレから素首(そつくび)引抜(ひきぬ)いて
317命(いのち)を取(と)らねばおかうか』と
318尻(しり)ひつからげドンドンと
319カールの後(あと)を追(お)うて行(ゆ)く。
320あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
321神(かみ)の御霊(みたま)の幸(さち)はひて
322カールの願(ねがひ)も竜世姫(たつよひめ)
323完美(うまら)に委曲(つばら)に聞(きこ)し召(め)し
324助(たす)け玉(たま)ひし有難(ありがた)さ
325足(あし)の立(た)つたる石熊(いしくま)は
326始(はじ)めて天地(てんち)の神徳(しんとく)を
327悟(さと)ると共(とも)に逃(にげ)て行(ゆ)く
328カールの心(こころ)を能(よ)く悟(さと)り
329忽(たちま)ち両手(りやうて)を合(あは)せつつ
330『コレコレカール待(ま)つて呉(く)れ
331お前(まへ)のおかげで立(た)ちました
332忽(たちま)ち神徳(しんとく)現(あら)はれて
333俺(おれ)の体(からだ)は此(この)通(とほ)り
334決(けつ)してお前(まへ)を恨(うら)まない
335一口(ひとくち)お前(まへ)に追(お)ひついて
336今(いま)の御(お)礼(れい)が申(まを)したい
337たつて頼(たの)みぢや待(ま)つて呉(く)れ』
338声(こゑ)を限(かぎ)りにドンドンと
339後(あと)おつかけて走(はし)り行(ゆ)く
340カールは後(あと)を振返(ふりかへ)り
341カール『ここまで厶(ござ)れ早(はや)厶(ござ)れ
342甘酒(あまざけ)飲(の)まして上(あ)げませう
343ウヅの都(みやこ)に末子姫(すゑこひめ)
344捨子(すてこ)の姫(ひめ)の両人(りやうにん)が
345首(くび)を伸(のば)して待(ま)つて御座(ござ)る
346お前(まへ)の様(やう)なヒヨツトコに
347話(はなし)する間(ま)があるものか
348用(よう)があるなら従(つ)いて来(こ)い
349ウヅの都(みやこ)でトツクリと
350お前(まへ)の合点(がてん)が行(ゆ)く様(やう)に
351詳(くは)しう説明(せつめい)してやらう
352あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
353御霊(みたま)幸(さち)はひましませ』と
354二人(ふたり)はマラソン競争(きやうそう)の
355決勝点(けつしようてん)を競(きそ)ふよに
356大地(だいち)を威喝(ゐかつ)させ乍(なが)ら
357阿修羅(あしうら)の荒(あれ)たる勢(いきほひ)で
358進(すす)み行(ゆ)くこそ勇(いさ)ましき。
359これぞカールが大神(おほかみ)に
360教(をし)へられたる神策(しんさく)を
361実地(じつち)に活用(くわつよう)致(いた)したる
362千変(せんぺん)万化(ばんくわ)の働(はたら)きぞ
363いよいよ茲(ここ)に両人(りやうにん)は
364ウヅの都(みやこ)に安着(あんちやく)し
365互(たがひ)に胸(むね)を打割(うちわ)つて
366慈愛(じあい)の神(かみ)の御心(みこころ)を
367涙(なみだ)と共(とも)に語(かた)り合(あ)ひ
368感謝(かんしや)するこそ畏(かしこ)けれ
369あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
370御霊(みたま)幸(さち)はひましませよ。
371(大正一一・八・一五 旧六・二三 松村真澄録)
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