霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一二章 マラソン競争(きやうそう)〔八五四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第30巻 海洋万里 巳の巻 篇:第3篇 神縁微妙 よみ(新仮名遣い):しんえんびみょう
章:第12章 マラソン競争 よみ(新仮名遣い):まらそんきょうそう 通し章番号:854
口述日:1922(大正11)年08月15日(旧06月23日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年9月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
末子姫、捨子姫、カール、石熊と、一行を迎えに来た春公、幾公、鷹公の七人は、巽の池の竜神を解脱せしめ、今後この池に再び竜神が棲んで人々を苦しめることがないように深く鎮魂を施した。
一行はいよいよ珍の都に向かって進んで行く。このとき、不思議にも左右違っていたカールの足の長さは、いつの間にか長短そろい、歩行が容易になっていた。しかしカールは少しもそのことに気付いていなかった。
末子姫は天津祝詞を奏上し天の数歌を歌い上げ、先に立って進み始めた。石熊は、なぜか足が立たなくなっていたので皆を呼び止めて助けを求めた。末子姫は、時節が来ればきっと立つようになる、不言実行だと諭した。
カールは残って石熊の足を立たせようとすることになり、他の一行は先に珍の都に向かって出発することになった。カールは、バラモン教に潜入していたときに石熊に世話になったのだから、恩返しとして何とか足を立たせてやろうと祈念を凝らし始めた。
カールは天の数歌を歌いながら石熊の足を撫で、言霊歌を歌い始めた。カールは滑稽な歌で石熊の改心と足の平癒を祈願していたが、最後には石熊をからかい、置いてさっさと先に逃げだした。
石熊は歯噛みをしながらも、怒りにまぎれて足の痛みを忘れ、立ってカールを追いかけ始めた。追いかけているうちに石熊は、わざと自分を怒らせて足を立たせてくれたカールの心を悟り、お礼を言おうとカールを呼ばわりながら走っていく。
カールは都についたらとっくり聞かせてやろうと先に走って行く。二人はマラソン競争のように都に向かって走っていった。
これこそ、カールが大神に教えられた神策を実地に活用させた働きであった。二人は珍の都に着くと、互いに胸を割って慈愛の神の御心を語り合い、感謝するのであった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-01-28 20:06:57 OBC :rm3012
愛善世界社版:138頁 八幡書店版:第5輯 621頁 修補版: 校定版:148頁 普及版:53頁 初版: ページ備考:
001 (ここ)末子姫(すゑこひめ)捨子姫(すてこひめ)002カール、003春公(はるこう)004幾公(いくこう)005鷹公(たかこう)006石熊(いしくま)一行(いつかう)(とも)芽出(めで)たく(たつみ)(いけ)大蛇(をろち)言向(ことむ)(やは)し、007解脱(げだつ)せしめ、008(いけ)(むか)つて感謝(かんしや)(ことば)()べ、009向後(こうご)(けつ)して(この)(いけ)に、010従前(じゆうぜん)(ごと)竜蛇神(りうじやしん)棲居(せいきよ)して、011世人(よびと)(くるし)めざる(やう)(ふか)鎮魂(ちんこん)(しう)し、012(わざはひ)(ふう)じおき、013いよいよ(うづ)(みやこ)(むか)つて(すす)むこととなりにけり。
014 (この)(とき)不思議(ふしぎ)にもカールの(あし)長短(ちやうたん)何時(いつ)()にか両足(りやうあし)相揃(あひそろ)ひ、015行歩(かうほ)(きは)めて容易(ようい)になつてゐた。016されどカールは(すこ)しも気付(きづ)かず、017依然(いぜん)として(びつこ)不具者(かたは)(しん)じてゐるものの(ごと)くであつた。018末子姫(すゑこひめ)天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、019(あま)数歌(かずうた)(うた)()げ、020一同(いちどう)(むか)ひ、
021末子姫(すゑこひめ)『サア皆様(みなさま)022()苦労(くらう)御座(ござ)いました。023これからボツボツと(まゐ)りませう』
024(さき)()つて(すす)()く。
025石熊(いしくま)『モシモシ皆様(みなさま)! ()つて(くだ)さい。026どうしたものか、027チツとも(あし)(うご)かなくなりました。028どうぞ鎮魂(ちんこん)をして(くだ)さいませ。029(なん)だか(しめ)つけられる(やう)で、030仕方(しかた)御座(ござ)いませぬ』
031カール『もし、032末子姫(すゑこひめ)(さま)033石熊(いしくま)大将(たいしやう)034(あし)()たないと()つてゐます。035(こま)つた(もの)ですなア』
036末子(すゑこ)『イエイエ(けつ)して()心配(しんぱい)には(およ)びませぬ。037キツと時節(じせつ)(まゐ)れば、038()(やう)になります……なア、039カールさま、040不言(ふげん)実行(じつかう)()ふことを御存(ごぞん)じですか?』
041カール『ハイ、042(わか)りました。043どうぞ、044そんなら(ひめ)(さま)045一足(ひとあし)(さき)へお()(くだ)さいませ。046捨子姫(すてこひめ)(さま)()一緒(いつしよ)()(ねがひ)(いた)します……オイ(はる)047(いく)048(たか)三公(さんこう)049(まへ)はお二人(ふたり)(さま)のお(とも)して(かへ)つて()れ。050(おれ)(すこ)石熊(いしくま)大将(たいしやう)(あし)(なほ)してから(かへ)るから……』
051(はる)『オイ、052カール、053いい加減(かげん)にしとかぬかい。054(あま)今迄(いままで)悪党(あくたう)なこと(ばか)りやつて()(むく)いで神罰(しんばつ)(あた)つたのだ。055(まへ)がどれ(だけ)言霊(ことたま)上手(じやうづ)でも()(いの)りが立派(りつぱ)でも駄目(だめ)だよ。056(かみ)(さま)()(ゆる)しがなければ到底(たうてい)(あし)()(はず)がないワ。057(あま)(けが)れた身魂(みたま)だから、058(かみ)(さま)がウヅの聖地(せいち)()ないようと、059不動(ふどう)金縛(かなしば)りをかけて御座(ござ)るのだよ。060いい加減(かげん)(かへ)つたらどうだ』
061カール『そんな(わけ)()くものか。062(ひと)難儀(なんぎ)()て、063それを(すく)はずに(かへ)(やう)なことで、064如何(どう)して(かみ)(さま)取次(とりつぎ)出来(でき)るものか。065(なに)()もあれ(ひめ)(さま)()命令(めいれい)だ。066グツグヅ()はずに(はや)(ひめ)(さま)()(とも)をして(かへ)つて()れ。067すぐに(おれ)()()くから……』
068(はる)『さうか、069ソリヤ(じつ)感心(かんしん)(こころ)になつたものだなア』
070(あざけ)(やう)()(なが)ら、071二人(ふたり)(あと)(したが)ひ、072ウヅの(みやこ)をさして(かへ)()く。
073 (あと)二人(ふたり)(やや)少時(しばし)074水面(すゐめん)(むか)つて暗祈(あんき)黙祷(もくたう)(つづ)けて()た。
075カール『オイ石熊(いしくま)大将(たいしやう)! 今迄(いままで)(おれ)はお(まへ)弟子(でし)となつて、076エライお世話(せわ)になつたものだ。077今日(けふ)(その)御恩(ごおん)(がへ)しと罪亡(つみほろ)ぼしの(ため)に、078(じや)()でもお(まへ)(あし)(なほ)して、079やらねばならぬ。080如何(どう)しても(あし)()たなければ、081(おれ)背中(せなか)()うてでもウヅの(みやこ)()れて()覚悟(かくご)だからマア安心(あんしん)せよ』
082石熊(いしくま)『ソリヤどうも有難(ありがた)い。083苦労(くらう)をかけて()まぬなア』
084カール『()(なか)相身互(あひみたがひ)だ。085さう病気(びやうき)(なほ)らない(うち)から(れい)()つてくれると、086如何(どう)()つて()いやら、087(おれ)返答(へんたふ)(こま)つて(しま)ふ。088マアゆつくりと()をしづめたが()からう。089マア()て、090(おれ)(これ)から新規(しんき)蒔直(まきなほ)しの言霊(ことたま)奏上(そうじやう)するから、091キツとお(まへ)(あし)(たつみ)(いけ)となるのは受合(うけあひ)だ。092さうなつたら二人(ふたり)()()()つて(いさぎよ)宣伝歌(せんでんか)(うた)ひ、093ウヅの(みやこ)をさしてサツサと(いぬゐ)(いけ)だよ。094(みづ)()らさぬ二人(ふたり)(なか)だ。095(いけ)ないことは(たがひ)(つつみ)かくさず、096打明(うちあ)けて、097兄弟(きやうだい)(ごと)親切(しんせつ)(つく)()はうぢやないか。098(この)(いけ)(やう)(みづ)がタツプリ()ぎて、099水臭(みづくさ)交際(かうさい)最早(もはや)(あらた)めねばならないよ。100サア(これ)から(ひと)つカールさまの生言霊(いくことたま)だ。101マアそこへ(あし)をニヨツと()せ。102(ひと)鎮魂(ちんこん)()(ねがひ)してやらう。103さうして言霊歌(ことたまうた)奏上(そうじやう)することにせう。104(わら)ふなよ!』
105石熊(いしくま)勿体(もつたい)ない、106祈念(きねん)をして(もら)つて(わら)(やつ)があるものか。107(しか)(なが)病気(びやうき)(なほ)つたら、108(あま)(うれ)しくて、109(わら)()きをするかも()れないから、110夫丈(それだけ)前以(まへもつ)てお(ことわ)りをしておく』
111カール『(うれ)(わら)ひなら、112ドツサリ(わら)つて()れ。113(おれ)()()つて(うれ)(わら)ひをするからなア』
114 石熊(いしくま)(いけ)(ほとり)芝生(しばふ)(うへ)(あし)をヌツと(そろ)へ、115突出(つきだ)してゐる。116カールは(れい)()り、117叮嚀(ていねい)大腿骨(だいたいこつ)(あた)りから爪先(つまさき)まで、118(あま)数歌(かずうた)(うた)(なが)ら、119幾回(いくくわい)となく()でおろし、120そろそろ祈願(きぐわん)(うた)(うた)(はじ)めた。121(その)(うた)
122カール天津(あまつ)(かみ)(さま)八百万(やほよろづ)
123国津(くにつ)(かみ)(さま)八百万(やほよろづ)
124此奴(こいつ)(あんま)(あく)()ぎた(ゆゑ)
125最早(もはや)運命(うんめい)月照彦(つきてるひこ)
126(かみ)(さま)どうぞ(この)(あし)
127カールに(なほ)して(くだ)さんせ
128高砂島(たかさごじま)(まも)ります
129生国魂(いくくにたま)(かみ)(さま)
130石熊(いしくま)さまの両足(りやうあし)
131(いち)()(はや)竜世姫(たつよひめ)
132()つて(をど)つてシヤンシヤンと
133ウヅの(くに)へと(よろこ)んで
134(いさ)んで(まゐ)ります(やう)
135(まも)りなさつて(くだ)さりませい
136(いち)()(はや)(この)(いざり)
137(たつみ)(いけ)竜神(たつがみ)
138(つみ)はほどけて天上(てんじやう)
139立帰(たちかへ)りました(その)(ごと)
140(たちま)平癒(へいゆ)さしてたべ
141(こし)から(うへ)はどうもない
142なぜ(この)(あし)(わる)いだろ
143ヤツパリあしき(こと)をした
144(ふか)いめぐりが()たのだろ
145(あし)きを(はら)うて(たす)(たま)
146転輪王(てんりんわう)ではなけれ(ども)
147(てん)にまします(かみ)(さま)
148(つち)にまします(かみ)(さま)
149カールが(かは)つて(おん)(ねがひ)
150完美(うまら)委曲(つばら)にきこし()
151(はや)(たす)けて(くだ)さりませい
152(わたし)もこんな(をとこ)をば
153()れにするのは(いや)なれど
154(たび)道伴(みちづ)()(なさけ)
155(かみ)(いまし)(こは)(ゆゑ)
156せうことなさに介抱(かいほう)する
157オツトドツコイ石熊(いしくま)さま
158これは(わたし)冗談(ぜうだん)
159瓢箪(へうたん)からは(こま)()
160冗談(ぜうだん)からは(ひま)()
161灰吹(はひふ)きからは(じや)アが()
162(いち)()(はや)石熊(いしくま)
163憑依(ひようい)(いた)した悪霊(あくれい)
164()(やう)(まも)つて(くだ)さんせ
165此奴(こいつ)(からだ)這入(はい)つた以上(いじやう)
166キツと入口(いりぐち)あるであろ
167出口(でぐち)(かみ)さま一時(いつとき)
168(はや)()()(くだ)さんせ
169百人(ひやくにん)一首(いつしゆ)ぢやなけれ(ども)
170(あし)(いた)めた足引(あしびき)
171山鳥(やまどり)()のしだり()
172長々(ながなが)しくも何時迄(いつまで)
173()うしてゐては(たま)らない
174どうで(つみ)をば(かさ)ねた(をとこ)
175()無礼(ぶれい)数々(かずかず)いつとなく
176(つく)しましたで御座(ござ)いませう
177(はら)()つのは(もつと)もぢや
178(しか)(かみ)(さま)(わたくし)
179(ねがひ)()れて腹立(はらた)てず
180(あし)()つよにしてお()
181夜明(よあ)けに()つは○○ぢや
182(おや)一度(いちど)(うま)れたる
183(せがれ)()(ごと)()つなれど
184此奴(こいつ)(あし)はどうしてか
185容易(ようい)()たうと(いた)さない
186如何(いか)なる(つみ)があらうとも
187今度(こんど)(ばか)りはお(たす)けを
188たつて()(ねがひ)(まを)します
189こりや(また)不思議(ふしぎ)何時(いつ)()
190(おれ)一方(いつぱう)(なが)(あし)
191(たれ)(ぬす)んで()んだのか
192いつの(あひだ)にやら両足(りやうあし)
193高低(たかひく)なしに(そろ)うてゐる
194かうなる(うへ)(おれ)とても
195採長(さいちやう)補短(ほたん)融通(ゆうづう)
196コレから()かすこた出来(でき)
197いやまて(しば)()てしばし
198そんな不足(ふそく)()はれない
199これも(たふと)(かみ)(さま)
200一方(いつぱう)(あし)(ちぢ)めたか
201(ただし)一方(いつぱう)()ばしたか
202(なん)ぢや()らぬが(うれ)しいぞ
203(こころ)もカールなつて()
204石熊(いしくま)さまよ! これ()やれ
205(まこと)天地(てんち)(つう)じたら
206一生(いつしやう)(やまひ)のド(ちんば)
207いつの()にやら(かみ)さまが
208(たの)みもせぬのに()()かし
209チヤンと(なほ)して(くだ)さつた
210(まへ)(あし)真直(まつすぐ)
211(なが)(みじか)いない(あし)
212こんな(ところ)(こし)ぬかし
213()つも()たぬもあるものか
214()引立(ひきた)てて()つてみよ
215三五教(あななひけう)御教(みをしへ)
216(たて)(よこ)との(おん)仕組(しぐみ)
217(うしとら)鬼門(きもん)金神(こんじん)
218気勘(きかん)(かな)うたことなれば
219(にしき)(あや)(はた)をあげ
220天晴(あつぱ)(かみ)太柱(ふとはしら)
221(した)岩根(いはね)()(とほ)
222(うは)岩根(いはね)につきこらし
223信仰(しんかう)(とく)をつむならば
224どんな悪魔(あくま)もたてつかぬ
225()てよ()()(はや)()
226()てと()うたら()たぬかい
227(まへ)余程(よつぽど)腰抜(こしぬけ)
228(たつみ)(いけ)竜神(りうじん)
229あの(いきほひ)辟易(へきえき)
230肝玉(きもだま)つぶして(こし)をぬき
231アタ(はづ)かしい荒男(あらをとこ)
232(こし)をぬかして(なん)とする
233(おれ)のぬかすは(くち)(ばか)
234何時(いつ)もグヅグヅ(ぬか)(やつ)
235(だま)つて()れよと何時(いつ)()
236(おれ)(しか)つたことがあろ
237あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
238(かな)はぬなれば(たち)あがれ
239(たち)のよくない(この)(やまひ)
240耆婆(きば)扁鵲(へんじやく)(あら)はれて
241(たちま)(なほ)して()れまいか
242(おれ)言霊(ことたま)立所(たちどこ)
243御兆候(みしるし)がなければならぬ(はず)
244(はづか)(なが)是程(これほど)
245言霊車(ことたまぐるま)運転(うんてん)
246きばつて()れどまだ()たぬ
247()つた ()つた ()つた ()つたラツパ(ぶし)
248法螺貝(ほらがい)()いた(その)(むく)
249こんな憂目(うきめ)()ふのだろ
250竜世(たつよ)(ひめ)(かみ)さまよ
251(まへ)水火(いき)(うま)れた()
252なぜに()たして(くだ)さらぬ
253(わたし)(いた)うも()ゆもない
254さは()(なが)(こころ)(なか)
255ホンに歯痒(はがゆ)(いた)ましい
256いたつて(くち)のやかましい
257(この)石熊(いしくま)(いま)(はや)
258往生(わうじやう)(いた)して()りまする
259最早(もはや)慢心(まんしん)(いた)すまい
260改心(かいしん)記念(きねん)(いま)一度(いちど)
261(あし)()つよに(たの)みます
262()()船戸(ふなど)(かみ)(さま)
263(おん)()()へる(この)(つゑ)
264(ちから)にチヨツと()つて()
265あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
266どうして是程(これほど)(まへ)(やまひ)
267しぶとう(なほ)らぬ(こと)だらう
268末子(すゑこ)(ひめ)()一行(いつかう)
269()つて()かれた(その)(あと)
270()()でならぬ二人(ふたり)()
271(かみ)さまたつて(たの)みます
272オイオイ石熊(いしくま)()つて()
273()つて()てない(こと)はない
274(まへ)(こころ)引立(ひきた)てて
275(まこと)(みち)()(とほ)
276猜疑(さいぎ)(こころ)()つならば
277キツと(この)(あし)()つだらう
278たつからお(まへ)(なが)めても
279(よこ)から()ても()にくはぬ
280ハラの()つよなスタイルだ
281これでは(やく)()つまいぞ
282ヤレ()て ソラ()て (はや)()
283ドツコイドツコイ ドツコイシヨ
284()けつ(まろ)びつ()引立(ひきた)つて
285カールの(あと)()いて()
286最早(もはや)(おれ)さまは()(ほど)
287石熊(いしくま)さまよ()ゆつくり
288そこで()隠居(いんきよ)なされませ
289(はら)()つかは()らね(ども)
290()たねばならぬ(この)場合(ばあひ)
291(はや)(かへ)りて(ひめ)(さま)
292(やく)()つが(おれ)(やく)
293サアサア()かうサア()かう
294ドツコイドツコイ ドツコイシヨ
295ウントコ()つたり石熊(いしくま)さま
296気張(きば)つて()つたり石熊(いしくま)さま
297(ひだり)のお(あし)一寸(ちよつと)(かが)
298(みぎ)()(あし)一寸(ちよつと)(かが)
299(かみ)さま(ちから)()つて()
300()つに()たれぬことはない
301(こころ)(ひと)つの持様(もちやう)
302さらばさらば』と立帰(たちかへ)
303(あと)石熊(いしくま)只一人(ただひとり)
304石熊(いしくま)『オイオイカール()つて()
305(おれ)(たち)一人(ひとり)をこんな(とこ)
306()てておくのは胴欲(どうよく)ぢや
307こんな無情(むじやう)(こと)されて
308(はら)()たずにおかうかい
309(はら)()たずに()むものか
310残念(ざんねん)至極(しごく)(おも)()れ』
311無念(むねん)()がみし(なが)らも
312(いか)りにまぎれて両足(りやうあし)
313(いたみ)(わす)れて立上(たちあ)がり
314『コラコラカール一寸(ちよつと)()
315貴様(きさま)(まこと)()まぬ(やつ)
316コレから素首(そつくび)引抜(ひきぬ)いて
317(いのち)()らねばおかうか』と
318(しり)ひつからげドンドンと
319カールの(あと)()うて()く。
320あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
321(かみ)御霊(みたま)(さち)はひて
322カールの(ねがひ)竜世姫(たつよひめ)
323完美(うまら)委曲(つばら)(きこ)()
324(たす)(たま)ひし有難(ありがた)
325(あし)()つたる石熊(いしくま)
326(はじ)めて天地(てんち)神徳(しんとく)
327(さと)ると(とも)(にげ)()
328カールの(こころ)()(さと)
329(たちま)両手(りやうて)(あは)せつつ
330『コレコレカール()つて()
331(まへ)のおかげで()ちました
332(たちま)神徳(しんとく)(あら)はれて
333(おれ)(からだ)(この)(とほ)
334(けつ)してお(まへ)(うら)まない
335一口(ひとくち)(まへ)()ひついて
336(いま)()(れい)(まを)したい
337たつて(たの)みぢや()つて()れ』
338(こゑ)(かぎ)りにドンドンと
339(あと)おつかけて(はし)()
340カールは(あと)振返(ふりかへ)
341カール『ここまで(ござ)(はや)(ござ)
342甘酒(あまざけ)()まして()げませう
343ウヅの(みやこ)末子姫(すゑこひめ)
344捨子(すてこ)(ひめ)両人(りやうにん)
345(くび)(のば)して()つて御座(ござ)
346(まへ)(やう)なヒヨツトコに
347(はなし)する()があるものか
348(よう)があるなら()いて()
349ウヅの(みやこ)でトツクリと
350(まへ)合点(がてん)()(やう)
351(くは)しう説明(せつめい)してやらう
352あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
353御霊(みたま)(さち)はひましませ』と
354二人(ふたり)はマラソン競争(きやうそう)
355決勝点(けつしようてん)(きそ)ふよに
356大地(だいち)威喝(ゐかつ)させ(なが)
357阿修羅(あしうら)(あれ)たる(いきほひ)
358(すす)()くこそ(いさ)ましき。
359これぞカールが大神(おほかみ)
360(をし)へられたる神策(しんさく)
361実地(じつち)活用(くわつよう)(いた)したる
362千変(せんぺん)万化(ばんくわ)(はたら)きぞ
363いよいよ(ここ)両人(りやうにん)
364ウヅの(みやこ)安着(あんちやく)
365(たがひ)(むね)打割(うちわ)つて
366慈愛(じあい)(かみ)御心(みこころ)
367(なみだ)(とも)(かた)()
368感謝(かんしや)するこそ(かしこ)けれ
369あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
370御霊(みたま)(さち)はひましませよ。
371大正一一・八・一五 旧六・二三 松村真澄録)
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