霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
URL:
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
行間
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。

第一三章 都入(みやこいり)〔八五五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第30巻 海洋万里 巳の巻 篇:第3篇 神縁微妙 よみ(新仮名遣い):しんえんびみょう
章:第13章 都入 よみ(新仮名遣い):みやこいり 通し章番号:855
口述日:1922(大正11)年08月15日(旧06月23日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年9月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
珍の館の神司・松若彦は、数多の国人を引き連れて、二挺の輿を用意し、都のはずれのカリナの里に陣を張り、末子姫一行の到着を待っていた。
松若彦は馬を下りて姫の前に罷り出で、ご来臨への感謝を慇懃に述べ立てた。末子姫は、テル山の麓まではるばる使いの者を迎えに寄越してくれたことに感謝の意を表した。互いに挨拶を終えると、麗しい森陰に立ち入って、しばし休息した。
松若彦は、末子姫に輿に乗っての入城を懇願したが、末子姫は神様から賜った足にて歩きたいと拒んだ。松若彦は、国人が至誠を込めて姫の降臨を祝って作った御輿にぜひ乗って欲しいと頼み込んだ。
松若彦は、末子姫の来臨は、珍の国の最初の国司・正鹿山津見神が、松若彦の父・国彦に予言したことであり、それは神素盞嗚大神の御子がこの国を治めるということに他ならないという謂れを明かして説いた。
末子姫も、実は珍の国の国司を継ぐという自分の使命について、父神から聞かされていたと明かした。松若彦は、女王が御輿に乗るのは決して贅沢のためではなく、人民に代わって大地に足を踏まないようにして神祇に敬意を払うお役目なのだと諭した。
これを聞いて末子姫は、捨子姫ともども御輿に乗ることを了承した。末子姫の言葉はなんとなく威厳を帯びてきた。
末子姫は、御輿にかつがれてウヅの国の立派な城門をくぐり、本城指して進み入った。道の左右には数多の国人が、救世主の降臨と涙を流して歓喜に暮れている。カールは石熊とともに、白砂を敷き詰めた道を、息せき切って城内に進み入った。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-01-30 19:24:11 文字数:3216 OBC :rm3013
愛善世界社版:152頁 八幡書店版:第5輯 626頁 修補版: 校定版:163頁 普及版:59頁 初版: ページ備考:
001巽(たつみ)の池(いけ)の曲神(まがかみ)を
002神(かみ)の伊吹(いぶき)の言霊(ことたま)に
003言向(ことむ)け和(やは)し末子姫(すゑこひめ)
004捨子(すてこ)の姫(ひめ)を従(したが)ひて
005焼(や)きつく如(ごと)き炎天(えんてん)を
006かよわき足(あし)を運(はこ)びつつ
007春(はる)、幾(いく)、鷹(たか)に送(おく)られて
008草野(くさの)をわたり河(かは)をこえ
009再(ふたた)び山(やま)を乗越(のりこ)えて
010又(また)もや谷間(たにま)を辿(たど)りつつ
011旅(たび)の枕(まくら)も数(かず)重(かさ)ね
012桃上彦(ももがみひこ)の鎮(しづ)まりし
013三五教(あななひけう)の神館(かむやかた)
014ウヅの聖地(せいち)の間近(まぢか)まで
015漸(やうや)く進(すす)み来(きた)りける。
016松若彦(まつわかひこ)は馬(うま)に乗(の)り
017御輿(みこし)二挺(にちやう)を舁(か)つがせつ
018数多(あまた)の国人(くにびと)引率(いんそつ)し
019神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)の
020珍(うづ)の御子(みこ)なる末子姫(すゑこひめ)
021捨子(すてこ)の姫(ひめ)を迎(むか)へむと
022威儀(ゐぎ)を正(ただ)して白旗(しらはた)に
023赤(あか)き十曜(とえう)の紋(もん)を染(そ)め
024風(かぜ)に靡(なび)かせ堂々(だうだう)と
025長蛇(ちやうだ)の陣(ぢん)を張(は)り乍(なが)ら
026ウヅの都(みやこ)の町外(まちはづ)れ
027カリナの里(さと)に現(あら)はれぬ
028松若彦(まつわかひこ)の一行(いつかう)は
029末子(すゑこ)の姫(ひめ)の一行(いつかう)と
030カリナの里(さと)に出会(しゆつくわい)し
031忽(たちま)ち馬(うま)を飛(と)び下(お)りて
032末子(すゑこ)の姫(ひめ)の前(まへ)に寄(よ)り
033松若彦(まつわかひこ)『珍(うづ)の都(みやこ)の国彦(くにひこ)が
034御子(みこ)と生(うま)れし神司(かむづかさ)
035松若彦(まつわかひこ)は今(いま)茲(ここ)に
036瑞(みづ)の御霊(みたま)の末(すゑ)の御子(みこ)
037末子(すゑこ)の姫(ひめ)や捨子姫(すてこひめ)
038御(おん)二方(ふたかた)の御(お)出(で)ましを
039神(かみ)の御(お)告(つげ)に知(し)らされて
040新(あらた)に御輿(みこし)を造(つく)り上(あ)げ
041茲(ここ)にお迎(むか)へ申(まを)したり
042殊更(ことさら)暑(あつ)きウヅの国(くに)
043尊(たふと)き御(おん)身(み)を持(も)ち乍(なが)ら
044神(かみ)の御(おん)為(ため)道(みち)の為(ため)
045世人(よびと)の為(ため)とは云(い)ひ乍(なが)ら
046よくも御(お)出(で)まし下(くだ)さつた
047指(ゆび)折(を)り数(かぞ)へて国人(くにびと)が
048瑞(みづ)の御霊(みたま)の御(ご)降臨(かうりん)
049今(いま)か今(いま)かと待佗(まちわび)て
050喜(よろこ)び勇(いさ)んで居(を)りまする
051尊(たふと)き珍(うづ)の姫(ひめ)様(さま)よ
052従(したが)ひませる捨子(すてこ)様(さま)
053茲(ここ)にてお休(やす)み願(ねが)ひます』
054いと慇懃(いんぎん)に宣(の)りつれば
055末子(すゑこ)の姫(ひめ)も会釈(ゑしやく)して
056末子姫(すゑこひめ)『噂(うはさ)に高(たか)きウヅ館(やかた)
057松若彦(まつわかひこ)は汝(な)が事(こと)か
058吾(われ)等(ら)一行(いつかう)を親切(しんせつ)に
059テル山峠(やまたうげ)の麓(ふもと)まで
060春(はる)、幾(いく)、鷹(たか)の御(お)三方(さんかた)
061迎(むか)への為(ため)に遥々(はるばる)と
062よくも遣(つか)はし玉(たま)ひしぞ
063おかげで道中(だうちう)恙(つつが)なく
064いよいよ此処(ここ)へ着(つ)きました
065あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
066尊(たふと)き神(かみ)の引合(ひきあは)せ
067はてしも知(し)らぬ白雲(しらくも)の
068メソポタミヤを立出(たちい)でて
069教(をしへ)を開(ひら)く折柄(をりから)に
070吾(われ)等(ら)が姉妹(けうだい)主従(しゆじゆう)は
071バラモン教(けう)の司(つかさ)等(ら)に[※御校正本・愛世版では「メソポタミヤを立出でて バラモン教の司等に 教を開く折柄に 吾等が姉妹主従は 虐げられて棚無しの」だが、それでは「末子姫がバラモン教の司らに対して三五教を開いた」と読めてしまう。校定版・八幡版では「バラモン教の司等に」の位置が変更され、「メソポタミヤを立ち出でて 教を開くをりからに 吾らが姉妹主従は バラモン教の司らに 虐げられて棚無しの」になっている。霊界物語ネットでも読者の混乱を避けるため校定版と同様に「バラモン教の司等に」の位置を変えた。]
072虐(しへた)げられて棚無(たなな)しの
073寄(よ)るべなぎさの捨小舟(すてをぶね)
074さも恐(おそ)ろしき荒波(あらなみ)に
075つき放(はな)されし苦(くる)しさよ
076妾(わらは)は幸(さいは)ひ天地(あめつち)の
077神(かみ)の恵(めぐみ)を蒙(かか)ぶりて
078捨子(すてこ)の姫(ひめ)と諸共(もろとも)に
079ハラの港(みなと)に安着(あんちやく)し
080テル山峠(やまたうげ)を乗越(のりこ)えて
081巽(たつみ)の池(いけ)に潜(ひそ)みたる
082大蛇(をろち)の神(かみ)を服従(まつろ)はせ
083心(こころ)も勇(いさ)み身(み)も勇(いさ)み
084松若彦(まつわかひこ)の現(あ)れませる
085ウヅの都(みやこ)を当途(あてど)とし
086いよいよ此処(ここ)に現(あら)はれぬ
087松若彦(まつわかひこ)の神司(かむつかさ)
088妾(わらは)は未(いま)だ手弱女(たをやめ)の
089力(ちから)少(すく)なきまな娘(むすめ)
090何卒(なにとぞ)宜(よろ)しく頼(たの)み入(い)る
091あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
092神(かみ)の教(をしへ)に服従(まつろ)へる
093教司(をしへつかさ)の御(おん)前(まへ)に
094始(はじ)めて述(の)ぶる御(ご)挨拶(あいさつ)
095完美(うまら)に委曲(つばら)に聞(きこ)し召(め)せ』
096言葉(ことば)静(しづ)かに宣(の)りつれば
097松若彦(まつわかひこ)は腰(こし)屈(かが)め
098揉手(もみで)し乍(なが)ら喜(よろこ)んで
099末子(すゑこ)の姫(ひめ)の御手(みて)を取(と)り
100力(ちから)の限(かぎ)り握(にぎ)りしめ
101松若彦(まつわかひこ)『あゝ姫(ひめ)様(さま)よ姫(ひめ)様(さま)よ
102いよいよ是(これ)よりウヅの国(くに)
103汝(なれ)が命(みこと)の降臨(かうりん)に
104いと平(たひら)けく安(やす)らけく
105戸(と)ざさぬ御世(みよ)と治(をさ)まりて
106鬼(おに)も大蛇(をろち)も荒風(あらかぜ)に
107吹(ふ)かれて散(ち)りて影(かげ)もなく
108神(かみ)の御稜威(みいづ)はいやちこに
109輝(かがや)き渡(わた)り玉(たま)ふべし
110あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
111神(かみ)の御末(みすゑ)の末子姫(すゑこひめ)
112珍(うづ)の身魂(みたま)の御(おん)前(まへ)に
113松若彦(まつわかひこ)が赤誠(せきせい)を
114捧(ささ)げて感謝(かんしや)し奉(たてまつ)る』
115と互(たがひ)に挨拶(あいさつ)を終(をは)り、116麗(うるは)しき森蔭(もりかげ)に立入(たちい)りて、117少時(しばし)息(いき)を休(やす)むる事(こと)となつた。
118 松若彦(まつわかひこ)は詞(ことば)丁寧(ていねい)に、119末子姫(すゑこひめ)、120捨子姫(すてこひめ)に向(むか)ひ、121腰(こし)を屈(かが)め乍(なが)ら、
122松若(まつわか)『噂(うはさ)に高(たか)き瑞(みづ)の御霊(みたま)、123神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)様(さま)の珍(うづ)の御子(みこ)と現(あらは)れませる末子姫(すゑこひめ)様(さま)、124並(ならび)にお付添(つきそ)ひの捨子姫(すてこひめ)様(さま)、125よくマア遥々(はるばる)と此(この)熱国(ねつこく)へ御(ご)降臨(かうりん)下(くだ)さいました。126私(わたし)は申(まを)すに及(およ)ばず、127ウヅの都(みやこ)の神殿(しんでん)に仕(つか)へ奉(まつ)る神司(かむづかさ)を始(はじ)め、128数多(あまた)の国人(くにびと)はどんなに喜(よろこ)ぶことで御座(ござ)いませう。129全(まつた)く私(わたし)は救世主(きうせいしゆ)の御(ご)降臨(かうりん)と欣喜(きんき)雀躍(じやくやく)の余(あま)り、130二三(にさん)日(にち)以前(いぜん)から、131余(あま)りの嬉(うれ)しさに夜(よる)も碌々(ろくろく)に休(やす)むことも出来(でき)ませなんだ。132余(あま)り俄(にはか)に拵(こしら)へました此(この)御輿(みこし)、133お粗末(そまつ)では御座(ござ)いますが、134どうぞ是(これ)から、135これにお乗(め)し下(くだ)さいまして、136御(ご)入城(にふじやう)の程(ほど)偏(ひとへ)に希(こひねが)ひ上(あ)げ奉(たてまつ)ります』
137と頼(たの)み入(い)る。138末子姫(すゑこひめ)は首(かうべ)を左右(さいう)に振(ふ)り、
139末子(すゑこ)『折角(せつかく)の思召(おぼしめし)、140無(む)に致(いた)すは誠(まこと)に済(す)まない訳(わけ)で御座(ござ)いますが、141勿体(もつたい)ない、142結構(けつこう)な神(かみ)様(さま)より、143足(あし)を頂戴(ちやうだい)致(いた)し乍(なが)ら、144どうして輿(こし)なんかに乗(の)ることが出来(でき)ませう。145折角(せつかく)乍(なが)ら是(これ)計(ばか)りはお許(ゆる)し下(くだ)さいませ』
146捨子(すてこ)『姫(ひめ)様(さま)もあの様(やう)に仰(あふ)せられまするから、147どうぞ是(これ)計(ばか)りは御(ご)無用(むよう)にして下(くだ)さいませ。148又(また)妾(わたし)は姫(ひめ)様(さま)の侍女(じぢよ)として、149お側近(そばちか)く、150朝(あさ)な夕(ゆふ)なに御(ご)奉公(ほうこう)致(いた)す婢女(はしため)なれば、151仮令(たとへ)姫(ひめ)様(さま)が御(お)召(め)しになつても、152妾(わたし)は左様(さやう)な勿体(もつたい)ないことは、153到底(たうてい)出来(でき)ませぬから、154悪(あ)しからず御(お)収(をさ)め下(くだ)さいませ』
155松若(まつわか)『左様(さやう)では御座(ござ)いませうが、156あなた様(さま)の御(ご)降臨(かうりん)を国人(くにびと)が喜(よろこ)び、157寄(よ)つて集(たか)つて昼夜(ちうや)の別(べつ)なく作(つく)り上(あ)げた御輿(みこし)で御座(ござ)いますれば、158どうぞ国人(くにびと)の至誠(しせい)に免(めん)じ御(お)乗用(め)し下(くだ)さいます様(やう)、159一同(いちどう)に代(かは)り、160たつて御(お)願(ねがひ)申上(まをしあ)げます』
161末子(すゑこ)『頑固(ぐわんこ)のようで御座(ござ)いますが、162妾(わたし)の様(やう)な若(わか)い女(をんな)、163神徳(しんとく)もない者(もの)が、164如何(どう)して此(この)様(やう)な立派(りつぱ)な、165神(かみ)様(さま)の御(お)召(め)し遊(あそ)ばす御輿(みこし)に乗(の)せて頂(いただ)くことが出来(でき)ませうか』
166松若(まつわか)『貴女(あなた)様(さま)は神(かみ)様(さま)の御(ご)経綸(けいりん)に依(よ)つて、167ウヅの国(くに)の司(つかさ)として御(お)出(い)で遊(あそ)ばしたので御座(ござ)いませう。168貴女(あなた)様(さま)に取(と)つては左様(さやう)な事(こと)は御(お)考(かんが)へ遊(あそ)ばさないでせうが、169正鹿山津見(まさかやまづみ)の神(かみ)様(さま)が、170黄泉(よもつ)比良坂(ひらさか)の戦(たたか)ひに、171御(ご)出陣(しゆつぢん)の際(さい)、172私(わたし)の父(ちち)の国彦(くにひこ)に向(むか)つて仰(あふ)せらるる様(やう)……神(かむ)素盞嗚(すさのをの)大神(おほかみ)様(さま)の姫御子(ひめみこ)が此(この)国(くに)へ降臨(かうりん)遊(あそ)ばして、173宇都(うづ)の国(くに)一(いち)円(ゑん)をお治(をさ)め遊(あそ)ばす時(とき)が来(く)るから、174それ迄(まで)は汝(なんぢ)国彦(くにひこ)、175吾(わが)館(やかた)を預(あづか)り能(よ)く守(まも)り居(を)れよ、176珍(うづ)の御子(みこ)降臨(かうりん)の時(とき)は、177是(これ)を奉(ほう)じて国(くに)の司(つかさ)となし、178汝(なんぢ)は左守(さもり)右守(うもり)の神(かみ)となつて、179神業(しんげふ)に奉仕(ほうし)せよ……との御(ご)教示(けうじ)で御座(ござ)いました。180吾(わが)父(ちち)は最早(もはや)国替(くにがへ)を致(いた)しましたが、181其(その)後(あと)を継(つ)いだ此(この)松若彦(まつわかひこ)、182父(ちち)の言葉(ことば)を無寐(むび)にも忘(わす)れず、183珍(うづ)の御子(みこ)の降臨(かうりん)あるまでは、184大切(たいせつ)に守(まも)らねばならぬと、185今日(けふ)まで力(ちから)の及(およ)ぶ限(かぎ)り守(まも)つて参(まゐ)りました。186貴女(あなた)はいよいよ此(この)国(くに)の女王(ぢよわう)となつて、187国民(こくみん)を治(をさ)め、188又(また)教主(けうしゆ)となつて国人(くにびと)を尊(たふと)き神(かみ)の御(お)道(みち)に教(をし)へ導(みちび)き下(くだ)さらねばならぬ御(お)役目(やくめ)で御座(ござ)います』
189末子(すゑこ)『及(およ)ばぬ乍(なが)ら、190其(その)使命(しめい)は妾(わらは)も父(ちち)大神(おほかみ)より承(うけたま)はつて居(を)りました。191何卒(どうぞ)宜(よろ)しく御(ご)輔導(ほだう)の程(ほど)を御(お)頼(たの)み申(まを)します』
192松若(まつわか)『御(ご)勿体(もつたい)ない其(その)お言葉(ことば)……松若彦(まつわかひこ)身(み)に取(と)り、193実(じつ)に無上(むじやう)の光栄(くわうえい)に存(ぞん)じます。194至(いた)らぬ愚者(おろかもの)なれ共(ども)、195宜(よろ)しく御(ご)指導(しだう)下(くだ)さいまして、196永(なが)くお使(つか)ひ下(くだ)さりませ。197偏(ひとへ)に願(ねがひ)奉(たてまつ)ります』
198末子(すゑこ)『御(お)互(たがひ)様(さま)に宜(よろ)しく願(ねが)ひます』
199松若(まつわか)『あなた様(さま)は父(ちち)大神(おほかみ)より、200此(この)国(くに)の女王(ぢよわう)とならせ玉(たま)ふことを御存(ごぞん)じとあらば猶更(なほさら)の事(こと)此(この)御輿(みこし)に御(お)乗(め)し下(くだ)さらねばなりますまい。201決(けつ)して御輿(みこし)にお召(め)し遊(あそ)ばすのは贅沢(ぜいたく)の為(ため)でも、202又(また)は楽(らく)に道中(だうちう)を遊(あそ)ばす為(ため)でも御座(ござ)いませぬ。203此(この)世界(せかい)は天地(てんち)の御恩(ごおん)に依(よ)つて造(つく)られた以上(いじやう)は、204天(てん)はさて置(お)き、205地(ち)には至(いた)る所(ところ)に国魂神(くにたまがみ)の神霊(しんれい)宿(やど)らせ玉(たま)へば、206大地(だいち)の上(うへ)を踏(ふ)み歩(ある)くも、207吾々(われわれ)人民(じんみん)は恐(おそ)れ多(おほ)い次第(しだい)で御座(ござ)います。208ぢやと申(まを)して、209国人(くにびと)一般(いつぱん)が大地(だいち)を踏(ふ)むことを恐(おそ)れて居(を)りましては、210道(みち)行(ゆ)くことも出来(でき)ず、211耕(たがや)し一(ひと)つすることも出来(でき)ませぬ道理(だうり)、212そこで国(くに)の司(つかさ)と現(あら)はれます女王(ぢよわう)様(さま)は、213万民(ばんみん)に代(かは)り、214天(てん)に跼(せぐく)まり、215地(ち)に蹐(ぬきあし)して、216神祇(しんぎ)を尊敬(そんけい)遊(あそ)ばし、217国民(くにたみ)の代表(だいへう)となつて、218お土(つち)を御(お)踏(ふ)み遊(あそ)ばさないのが御(ご)天職(てんしよく)で御座(ござ)いますから、219どうぞ此処(ここ)の道理(だうり)を聞分(ききわ)け下(くだ)さいまして、220これより先(さき)は城下(じやうか)で御座(ござ)いますれば、221せめて城下(じやうか)丈(だけ)なりと、222お土(つち)をふまない様(やう)に、223吾々(われわれ)に代(かは)つて御(ご)苦労(くらう)に預(あづか)りたう存(ぞん)じます。224又(また)捨子姫(すてこひめ)様(さま)も御(ご)近侍(きんじ)の役(やく)、225どうぞ姫(ひめ)様(さま)に御(お)伴(とも)遊(あそ)ばすので御座(ござ)いますれば、226此(この)御輿(みこし)に是非(ぜひ)是非(ぜひ)御(お)乗(め)しを願(ねが)はねばなりませぬ。227此(この)儀(ぎ)偏(ひとへ)に御(お)願(ねがひ)申(まを)し上(あ)げます』
228末子(すゑこ)『さう承(うけたま)はらば、229否(いな)むに由(よし)なきことで御座(ござ)います。230左様(さやう)ならば仰(あふ)せの通(とほ)り、231御(お)世話(せわ)になりませう。232……捨子姫(すてこひめ)殿(どの)、233妾(わらは)が許(ゆる)します、234否(いな)命令(めいれい)します、235あの輿(こし)に乗(の)つて妾(わらは)が後(あと)に従(したが)ひ来(こ)られよ』
236と漸(やうや)く末子姫(すゑこひめ)の言葉(ことば)は何処(どこ)となく権威(けんゐ)を帯(お)びて来(き)た。237捨子姫(すてこひめ)は否(いな)むに由(よし)なく、238素直(すなほ)に『ハイ』と答(こた)へて、239末子姫(すゑこひめ)の輿(こし)の後(うしろ)より外(ほか)の輿(こし)に乗(の)せられ、240数多(あまた)の国人(くにびと)の歓呼(くわんこ)の声(こゑ)に送(おく)られ、241賑々(にぎにぎ)しく入城(にふじやう)することとなつた。
242 ウヅの都(みやこ)の入口(いりぐち)には非常(ひじやう)な立派(りつぱ)な門(もん)が建(た)てられてある。243末子姫(すゑこひめ)は此(この)表門(おもてもん)より輿(こし)に舁(か)つがれ、244行列(げうれつ)勇(いさ)ましく本城(ほんじやう)さして進(すす)み入(い)る。245通路(つうろ)は白砂(はくしや)を布(し)き詰(つ)め、246道(みち)の左右(さいう)には数多(あまた)の国人(くにびと)、247地上(ちじやう)に跪(ひざまづ)き、248救世主(きうせいしゆ)の降臨(かうりん)と涙(なみだ)を流(なが)し、249感喜(かんき)の真情(しんじやう)に暮(く)れてゐる。250いろいろの音楽(おんがく)の音(ね)に送(おく)られ黄昏前(たそがれまへ)、251奥殿(おくでん)に安着(あんちやく)した。
252 カールは途中(とちう)に石熊(いしくま)に追(お)つ付(つ)かれ、253茲(ここ)に両人(りやうにん)は手(て)に手(て)を取(と)つて、254白砂(はくしや)の布(し)きつめたる道(みち)を、255息(いき)もせきせき城内(じやうない)指(さ)して進(すす)み入(い)る。
256(大正一一・八・一五 旧六・二三 松村真澄録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス】
合言葉「みろく」を入力して下さい→