霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
設定
|
ヘルプ
ホーム
霊界物語
海洋万里(第25~36巻)
第30巻(巳の巻)
序
凡例
総説
第1篇 高砂の松
第1章 主従二人
第2章 乾の滝
第3章 清めの滝
第4章 懐旧の歌
第2篇 珍野瞰下
第5章 下坂の歌
第6章 樹下の一宿
第7章 提燈の光
第8章 露の道
第3篇 神縁微妙
第9章 醜の言霊
第10章 妖雲晴
第11章 言霊の妙
第12章 マラソン競争
第13章 都入
第4篇 修理固成
第14章 霊とパン
第15章 花に嵐
第16章 荒しの森
第17章 出陣
第18章 日暮シの河
第19章 蜘蛛の児
第20章 雉と町
第5篇 山河動乱
第21章 神王の祠
第22章 大蜈蚣
第23章 ブール酒
第24章 陥穽
附記 湯ケ島温泉
附記 天津祝詞解
附記 デモ国民歌
余白歌
×
設定
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
文字サイズ
S
【標準】
M
L
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側だけに表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注[※]用語解説
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
【標準】
脚注マークを表示しない
脚注[*]編集用
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
脚注マークを表示しない
【標準】
外字の外周色
[?]
一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。
[×閉じる]
無色
【標準】
赤色
現在のページには外字は使われていません
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は
従来バージョン
をお使い下さい|
サブスク
のお知らせ
霊界物語
>
海洋万里(第25~36巻)
>
第30巻(巳の巻)
> 第2篇 珍野瞰下 > 第7章 提燈の光
<<< 樹下の一宿
(B)
(N)
露の道 >>>
第七章
提燈
(
ちやうちん
)
の
光
(
ひかり
)
〔八四九〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第30巻 海洋万里 巳の巻
篇:
第2篇 珍野瞰下
よみ(新仮名遣い):
うづのかんか
章:
第7章 提燈の光
よみ(新仮名遣い):
ちょうちんのひかり
通し章番号:
849
口述日:
1922(大正11)年08月14日(旧06月22日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1923(大正12)年9月15日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
一行は楠の森の木陰に今日一日の不思議を物語りながら夜を更かした。カールは心いそいそと勇み立って、饒舌を発揮している。仲間のシーナが二人の女に言い寄って、肘鉄砲をくらった腹いせに女たちを谷川に突き落とし、それから女たちの亡霊に悩まされるようになり、相談された経緯を嘘とも本当ともつかぬ滑稽まじりに話した。
末子姫、捨子姫、石熊の三人は寝についた。カールは一人、寝られずに鼻歌を歌いながら涼んでいると、向こうから十曜の紋の入った提燈を下げて、二三人が近寄ってくる。
カールは、珍の都から末子姫と捨子姫を迎えに来た三五教の仲間だと悟り、女の造り声をしてからかいだした。おかしな会話をしているうちにカールは笑い出し、正体が割れてしまった。
末子姫は一人目を覚まし、カールが三人の男たちと話しているところへやってきた。男たちは、松若彦の命で末子姫一行を迎えに来たことを告げた。一行は今日はここで夜を明かすことになった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-01-17 18:09:37
OBC :
rm3007
愛善世界社版:
84頁
八幡書店版:
第5輯 602頁
修補版:
校定版:
91頁
普及版:
32頁
初版:
ページ備考:
001
楠
(
くすのき
)
の
森
(
もり
)
のこかげに
蓑
(
みの
)
を
布
(
し
)
き、
002
木
(
こ
)
の
間
(
ま
)
をもるる
九日
(
ここのか
)
の
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
を
浴
(
あ
)
び
乍
(
なが
)
ら、
003
早速
(
さつそく
)
眠
(
ねむ
)
りもならず、
004
今日
(
けふ
)
一
(
いち
)
日
(
にち
)
に
起
(
おこ
)
りし
不思議
(
ふしぎ
)
の
運命
(
うんめい
)
を
物語
(
ものがた
)
りつつ、
005
夜
(
よ
)
を
更
(
ふ
)
かした。
006
はしやぎ
切
(
き
)
つたカールは
末子姫
(
すゑこひめ
)
、
007
捨子姫
(
すてこひめ
)
の
渡来
(
とらい
)
に
何
(
なん
)
となく
心
(
こころ
)
欣々
(
いそいそ
)
として
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
ち、
008
又
(
また
)
バラモン
教
(
けう
)
の
石熊
(
いしくま
)
教主
(
けうしゆ
)
が
苦
(
く
)
もなく、
009
三五教
(
あななひけう
)
に
帰順
(
きじゆん
)
した
嬉
(
うれ
)
しさに
心気
(
しんき
)
興奮
(
こうふん
)
して
眠
(
ねむ
)
られぬ
儘
(
まま
)
に、
010
日頃
(
ひごろ
)
の
饒舌車
(
しやべりぐるま
)
を
運転
(
うんてん
)
し
始
(
はじ
)
めた。
011
カール
『
空
(
そら
)
に
飛
(
と
)
ぶ
天狗
(
てんぐ
)
の
鼻
(
はな
)
の
高照山
(
たかてるやま
)
の
谷底
(
たにそこ
)
に、
012
教
(
をしへ
)
の
館
(
やかた
)
を
構
(
かま
)
へつつ、
013
バラモン
教
(
けう
)
を
遠近
(
をちこち
)
に、
014
開
(
ひら
)
いて
人
(
ひと
)
を
導
(
みちび
)
きし、
015
心
(
こころ
)
も
固
(
かた
)
き
石熊
(
いしくま
)
が、
016
館
(
やかた
)
に
仕
(
つか
)
へし
神司
(
かむづかさ
)
、
017
中
(
なか
)
にも
分
(
わ
)
けて
男振
(
をとこぶ
)
り、
018
人
(
ひと
)
に
優
(
すぐ
)
れたカールさま、
019
あまたの
女
(
をんな
)
にチヤホヤと、
020
持囃
(
もてはや
)
されて
朝夕
(
あさゆふ
)
に、
021
姿
(
すがた
)
をうつす
水鏡
(
みづかがみ
)
、
022
心
(
こころ
)
の
波
(
なみ
)
も
静
(
しづ
)
まりて、
023
教
(
をしへ
)
の
庭
(
には
)
に
穿
(
うが
)
ちたる、
024
鏡
(
かがみ
)
の
池
(
いけ
)
に
立向
(
たちむか
)
ひ、
025
イヽヽヽ、
026
吾
(
わ
)
れと
吾
(
わが
)
手
(
て
)
にすかし
見
(
み
)
て、
027
呆
(
あき
)
れ
果
(
は
)
てたる
色男
(
いろをとこ
)
、
028
田舎娘
(
いなかむすめ
)
がガヤガヤとカールさまよと
取
(
と
)
り
巻
(
ま
)
いて、
029
騒
(
さわ
)
ぐは
強
(
あなが
)
ち
無理
(
むり
)
でない、
030
げにも
五月蠅
(
うるさ
)
き
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
や。
031
何
(
なん
)
の
因果
(
いんが
)
で
此
(
この
)
様
(
やう
)
に、
032
玉子
(
たまご
)
に
目鼻
(
めはな
)
を
付
(
つ
)
けたような、
033
お
色
(
いろ
)
の
白
(
しろ
)
い
好
(
よ
)
い
男
(
をとこ
)
、
034
惚
(
ほれ
)
られる
男
(
をとこ
)
は
見目
(
みめ
)
よしと、
035
立派
(
りつぱ
)
に
生
(
うま
)
れた
身
(
み
)
の
因果
(
いんが
)
、
036
宅
(
うち
)
の
女房
(
にようばう
)
が
気
(
き
)
を
揉
(
も
)
んで、
037
悋気
(
りんき
)
するのも
無理
(
むり
)
でない。
038
うるさの
娑婆
(
しやば
)
に
永
(
なが
)
らへて、
039
惚
(
ほ
)
れた
女
(
をんな
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
る、
040
私
(
わし
)
の
心
(
こころ
)
のうるささよ。
041
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
先
(
さき
)
の
世
(
よ
)
に、
042
如何
(
いか
)
なる
善事
(
ぜんじ
)
を
尽
(
つく
)
せしか、
043
今更
(
いまさら
)
云
(
い
)
ふも
野暮
(
やぼ
)
乍
(
なが
)
ら、
044
なぜにモ
少
(
すこ
)
しヒヨツトコに、
045
生
(
うま
)
れて
来
(
こ
)
なんだであらう、
046
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
神
(
かみ
)
の
前
(
まへ
)
、
047
どうぞ
煩雑
(
うるさ
)
いナイス
奴
(
め
)
が
私
(
わし
)
の
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
ひ
切
(
き
)
り、
048
後足
(
あとあし
)
で
砂
(
すな
)
でもかけて
唾
(
つば
)
吐
(
は
)
いて、
049
肱鉄砲
(
ひぢでつぱう
)
の
数々
(
かずかず
)
を
喰
(
く
)
はして
呉
(
く
)
れる
醜男
(
ぶをとこ
)
に、
050
造
(
つく
)
り
直
(
なほ
)
して
下
(
くだ
)
さんせ、
051
シーナの
様
(
やう
)
なヒヨツトコが、
052
去年
(
きよねん
)
の
秋
(
あき
)
の
末
(
すゑ
)
つ
頃
(
ごろ
)
、
053
見目
(
みめ
)
容
(
かたち
)
よき
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
、
054
高照山
(
たかてるやま
)
の
麓
(
ふもと
)
まで、
055
漸
(
や
)
う
漸
(
や
)
う
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
るのを、
056
目敏
(
めざと
)
く
眺
(
なが
)
めて
涎
(
よだれ
)
くり、
057
目
(
め
)
を
細
(
ほそ
)
くしてにじり
寄
(
よ
)
り、
058
コレコレモウシ
旅
(
たび
)
の
人
(
ひと
)
、
059
どこの
何方
(
どなた
)
か
知
(
し
)
らね
共
(
ども
)
、
060
私
(
わたし
)
はシーナと
申
(
まを
)
す
者
(
もの
)
、
061
仮令
(
たとへ
)
姿
(
すがた
)
は
此
(
この
)
様
(
やう
)
に、
062
蜥蜴
(
とかげ
)
の
様
(
やう
)
な
顔
(
かほ
)
なれど、
063
心
(
こころ
)
の
中
(
なか
)
のドン
底
(
そこ
)
に、
064
誠
(
まこと
)
の
花
(
はな
)
は
咲
(
さ
)
き
乱
(
みだ
)
れ、
065
実
(
げ
)
に
芳
(
かん
)
ばしき
男
(
をとこ
)
ぞや、
066
馬
(
うま
)
には
乗
(
の
)
つて
見
(
み
)
よ、
067
人
(
ひと
)
には
添
(
そ
)
うて
見
(
み
)
よ、
068
世
(
よ
)
の
諺
(
ことわざ
)
もあるなれば、
069
バラモン
教
(
けう
)
の
神司
(
かむづかさ
)
、
070
中
(
なか
)
にも
分
(
わ
)
けて
神徳
(
しんとく
)
の、
071
備
(
そな
)
はりゐます
此
(
この
)
わしに、
072
秋波
(
しうは
)
を
送
(
おく
)
り
一時
(
ひととき
)
も、
073
早
(
はや
)
く
私
(
わたし
)
の
側
(
そば
)
に
寄
(
よ
)
り、
074
麝香
(
じやかう
)
の
様
(
やう
)
な
男
(
をとこ
)
の
匂
(
にほひ
)
、
075
一度
(
いちど
)
は
嗅
(
か
)
いで
見
(
み
)
やしやんせ、
076
男
(
をとこ
)
ひでりもない
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に、
077
お
前
(
まへ
)
の
様
(
やう
)
な
鯱面
(
しやつつら
)
男
(
をとこ
)
、
078
いかに
男
(
をとこ
)
にかつえたとて、
079
どうしてこれが
忍
(
しの
)
ばれよう、
080
なんぞと
野暮
(
やぼ
)
な
撥
(
は
)
ね
言葉
(
ことば
)
、
081
言
(
い
)
はしやんすかは
知
(
し
)
らね
共
(
ども
)
、
082
人
(
ひと
)
は
見
(
み
)
かけに
寄
(
よ
)
らぬ
者
(
もの
)
、
083
仮令
(
たとへ
)
南瓜
(
かぼちや
)
と
言
(
い
)
はれても、
084
色好
(
いろよ
)
い
茄子
(
なす
)
に
比
(
くら
)
ぶれば、
085
天地
(
てんち
)
隔
(
へだ
)
つる
味
(
あぢ
)
がある。
086
いが
で
包
(
つつ
)
んだ
柴栗
(
しばくり
)
も、
087
恐
(
こわ
)
いようには
見
(
み
)
ゆれ
共
(
ども
)
、
088
開
(
ひら
)
いて
見
(
み
)
れば
芳
(
かん
)
ばしき、
089
三
(
み
)
つの
御霊
(
みたま
)
が
御座
(
ござ
)
るぞえ。
090
渋皮
(
しぶかは
)
一
(
ひと
)
つ
剥
(
は
)
いだなら、
091
女
(
をんな
)
の
好
(
す
)
きな
薩摩芋
(
さつまいも
)
、
092
芝居
(
しばゐ
)
蒟蒻
(
こんにやく
)
南瓜
(
かぼちや
)
より、
093
百倍
(
ひやくばい
)
千倍
(
せんばい
)
いやまさる、
094
云
(
い
)
ふに
言
(
い
)
はれぬ
味
(
あぢ
)
がある。
095
私
(
わたし
)
の
願
(
ねがひ
)
を
一通
(
ひととほ
)
り、
096
聞
(
き
)
いてお
呉
(
く
)
れとすり
寄
(
よ
)
つて、
097
口説
(
くど
)
けば
二人
(
ふたり
)
は
立止
(
たちど
)
まり、
098
どこの
何方
(
どなた
)
か
知
(
し
)
らね
共
(
ども
)
、
099
砂原
(
すなばら
)
夕立
(
ゆふだち
)
か
土手
(
どて
)
南瓜
(
かぼちや
)
、
100
薬鑵頭
(
やくわんあたま
)
に
瓢箪面
(
へうたんづら
)
、
101
万金丹
(
まんきんたん
)
を
計
(
はか
)
るよな、
102
デコボコだらけの
其
(
その
)
顔
(
かほ
)
に、
103
何程
(
なにほど
)
醜
(
みにく
)
い
女
(
をんな
)
ぢやとて、
104
どうして、
105
どうして
秋波
(
しうは
)
が
送
(
おく
)
られう。
106
是
(
これ
)
ばつかりはシーナさま、
107
お
許
(
ゆる
)
しなされて
下
(
くだ
)
さりませと、
108
態
(
てい
)
能
(
よ
)
く
打出
(
うちだ
)
す
肱鉄砲
(
ひぢでつぱう
)
、
109
此方
(
こなた
)
は
中々
(
なかなか
)
屈
(
くつ
)
せばこそ、
110
情火
(
じやうくわ
)
の
光
(
ひかり
)
炎々
(
えんえん
)
と、
111
天
(
てん
)
に
冲
(
ちう
)
する
凄
(
すさ
)
まじさ、
112
一旦
(
いつたん
)
男
(
をとこ
)
の
言
(
い
)
ひ
出
(
だ
)
した、
113
言葉
(
ことば
)
をお
前
(
まへ
)
に
反古
(
ほご
)
にされ、
114
如何
(
どう
)
して
男
(
をとこ
)
が
立
(
た
)
つ
者
(
もの
)
か、
115
破
(
やぶ
)
れかぶれの
此
(
この
)
私
(
わたし
)
、
116
ウンと
言
(
い
)
はさにやおきませぬと、
117
又
(
また
)
も
執拗
(
しつか
)
う
摺寄
(
すりよ
)
つて、
118
恋
(
こひ
)
の
涙
(
なみだ
)
の
一雫
(
ひとしづく
)
、
119
落
(
おと
)
せば
二人
(
ふたり
)
はあざ
笑
(
わら
)
ひ、
120
コレコレシーナの
爺
(
ぢい
)
さまへ、
121
お
前
(
まへ
)
の
顔
(
かほ
)
と
御
(
ご
)
相談
(
さうだん
)
、
122
遊
(
あそ
)
ばしませよ
余
(
あんま
)
りぢや、
123
私
(
わたし
)
の
好
(
すき
)
なはカールさま、
124
あんなお
方
(
かた
)
と
末永
(
すえなが
)
う、
125
添
(
そ
)
はれる
事
(
こと
)
はさて
措
(
お
)
いて、
126
仮令
(
たとへ
)
一夜
(
いちや
)
の
仮枕
(
かりまくら
)
、
127
それも
叶
(
かな
)
はぬ
事
(
こと
)
なれば、
128
せめてお
側
(
そば
)
にさぶらうて、
129
水仕事
(
みづしごと
)
門掃
(
かどは
)
きや、
130
褌
(
まはし
)
の
洗濯
(
せんたく
)
喜
(
よろこ
)
んで、
131
致
(
いた
)
しませうと
朝夕
(
あさゆふ
)
に、
132
頼
(
たの
)
む
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
仏
(
ほとけ
)
様
(
さま
)
、
133
妙見
(
めうけん
)
様
(
さま
)
もチヨロ
臭
(
くさ
)
い、
134
ガラクタ
国
(
こく
)
の
法螺貝
(
ほらがひ
)
山
(
やま
)
に、
135
止
(
とど
)
まり
給
(
たま
)
ふ
天狗
(
てんぐ
)
様
(
さま
)
に、
136
お
願
(
ぐわん
)
を
朝夕
(
あさゆふ
)
かけ
巻
(
まく
)
も、
137
畏
(
かしこ
)
き
神
(
かみ
)
の
御
(
ご
)
利益
(
りやく
)
で、
138
どうぞ
会
(
あ
)
はして
会
(
あ
)
はしてと、
139
思
(
おも
)
ふ
女
(
をんな
)
の
真心
(
まごころ
)
を、
140
仇
(
あだ
)
になされたカールさま、
141
恨
(
うら
)
めしいわいなと、
142
目
(
め
)
を
拭
(
ぬぐ
)
ひイヽヽ、
143
悔
(
くや
)
み
歎
(
なげ
)
けばシーナさま、
144
ハツと
計
(
ばか
)
りに
腹
(
はら
)
を
立
(
た
)
て、
145
男
(
をとこ
)
の
意地
(
いぢ
)
は
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
百
(
ひやく
)
里
(
り
)
二百
(
にひやく
)
里
(
り
)
三百
(
さんびやく
)
里
(
り
)
、
146
筑紫
(
つくし
)
の
国
(
くに
)
の
果
(
はて
)
までもお
前
(
まへ
)
の
後
(
あと
)
を
付
(
つ
)
け
狙
(
ねら
)
ひ、
147
思
(
おも
)
ひ
通
(
とほ
)
さでおくものか、
148
厭
(
いや
)
なら
厭
(
いや
)
でシーナにも、
149
覚悟
(
かくご
)
があると
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
150
無残
(
むざん
)
や
二人
(
ふたり
)
を
谷川
(
たにがは
)
に、
151
力限
(
ちからかぎ
)
りに
突落
(
つきおと
)
し、
152
人
(
ひと
)
の
花
(
はな
)
と
眺
(
なが
)
めむよりは
一層
(
いつそう
)
殺
(
ころ
)
して
了
(
しま
)
うたら、
153
恋
(
こひ
)
の
亡執
(
まうしう
)
は
晴
(
は
)
れるだろと、
154
無法
(
むはふ
)
を
尽
(
つく
)
した
其
(
その
)
酬
(
むく
)
い、
155
二人
(
ふたり
)
の
女
(
をんな
)
の
怨霊
(
をんりやう
)
は、
156
夜
(
よ
)
な
夜
(
よ
)
な
青
(
あを
)
い
火玉
(
ひだま
)
となり、
157
或
(
あるひ
)
は
髪
(
かみ
)
を
振乱
(
ふりみだ
)
し、
158
あゝ
恨
(
うら
)
めしや
恨
(
うら
)
めしや、
159
お
前
(
まへ
)
は
気強
(
きつよ
)
いシーナさま、
160
私
(
わたし
)
は
深
(
ふか
)
い
谷底
(
たにそこ
)
に、
161
突落
(
つきおと
)
されて
死
(
し
)
にました。
162
恨
(
うら
)
みを
晴
(
は
)
らさでおくものかと、
163
夜
(
よ
)
な
夜
(
よ
)
な
出
(
い
)
づる
幽霊
(
いうれい
)
姿
(
すがた
)
、
164
さすがのシーナも
弱
(
よわ
)
り
果
(
は
)
て、
165
カールの
館
(
やかた
)
に
尋
(
たづ
)
ね
来
(
き
)
て、
166
コレコレモウシ、
167
カールさま、
168
お
前
(
まへ
)
に
済
(
す
)
まぬ
事
(
こと
)
乍
(
なが
)
ら、
169
テルとハルとの
亡霊
(
ばうれい
)
を、
170
どうぞ
鎮
(
しづ
)
めて
下
(
くだ
)
さんせ、
171
お
前
(
まへ
)
の
様
(
やう
)
な
好
(
よ
)
い
男
(
をとこ
)
、
172
テルとハルとの
亡霊
(
ばうれい
)
に、
173
たつた
一言
(
ひとこと
)
鎮
(
しづ
)
まれと、
174
云
(
い
)
うて
呉
(
く
)
れたら
俺
(
おれ
)
達
(
たち
)
が、
175
千言
(
せんげん
)
万語
(
ばんご
)
を
費
(
つゐや
)
して、
176
言訳
(
ことわけ
)
するより
効
(
かう
)
がある。
177
バラモン
教
(
けう
)
のお
経
(
きやう
)
をば、
178
千僧
(
せんそう
)
万僧
(
まんそう
)
寄
(
よ
)
り
合
(
あ
)
うて、
179
唱
(
とな
)
へるよりも
喜
(
よろこ
)
んで、
180
一度
(
いちど
)
に
成仏
(
じやうぶつ
)
するであろ、
181
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
のあつたら
生命
(
いのち
)
、
182
助
(
たす
)
けてやらうと
思
(
おも
)
ふなら、
183
慈悲
(
じひ
)
ぢや
情
(
なさけ
)
ぢや
聞
(
き
)
いてたべ、
184
などと
五月蠅
(
うるさ
)
い
矢
(
や
)
の
使
(
つかひ
)
、
185
お
門
(
かど
)
の
広
(
ひろ
)
い
此
(
この
)
男
(
をとこ
)
、
186
どうして
死
(
し
)
んだ
女
(
をんな
)
にまで、
187
応対
(
おうたい
)
してやる
暇
(
いとま
)
があらう。
188
あちら
此方
(
こちら
)
の
女
(
をんな
)
奴
(
め
)
に、
189
袖
(
そで
)
を
引
(
ひ
)
かれて
何時
(
いつ
)
とても、
190
女房
(
にようばう
)
の
小言
(
こごと
)
を
聞
(
き
)
く
計
(
ばか
)
り、
191
こんな
詰
(
つま
)
らぬ
事
(
こと
)
あろか、
192
どうぞ
此
(
この
)
苦
(
く
)
が
逃
(
のが
)
れたさ、
193
珍
(
うづ
)
の
都
(
みやこ
)
に
現
(
あ
)
れませる、
194
松若彦
(
まつわかひこ
)
の
神司
(
かむづかさ
)
に、
195
一伍
(
いちぶ
)
一什
(
しじふ
)
を
打
(
うち
)
あけて、
196
神
(
かみ
)
の
司
(
つかさ
)
に
助
(
たす
)
けられ、
197
やうやう
此処
(
ここ
)
まで
安楽
(
あんらく
)
に、
198
女難
(
ぢよなん
)
に
逃
(
のが
)
れて
来
(
き
)
た
男
(
をとこ
)
、
199
思
(
おも
)
へば
思
(
おも
)
へば
夢
(
ゆめ
)
ぢやつた……アハヽヽヽ』
200
石熊
(
いしくま
)
『アハヽヽヽ、
201
喧
(
やかま
)
しい
奴
(
やつ
)
だなア。
202
丸
(
まる
)
で
蜂
(
はち
)
の
巣
(
す
)
を
側
(
そば
)
においた
様
(
やう
)
なものだ。
203
モウいい
加減
(
かげん
)
に
沈黙
(
ちんもく
)
せぬか』
204
カール『ハーイ、
205
ハイ、
206
沈黙
(
ちんもく
)
致
(
いた
)
すで
御座
(
ござ
)
いませう。
207
時
(
とき
)
は
早
(
はや
)
子
(
ね
)
の
正刻
(
しやうこく
)
何
(
いづ
)
れも
様
(
さま
)
も、
208
早
(
はや
)
くお
休
(
やす
)
みなされませい。
209
某
(
それがし
)
は
少
(
すこ
)
し
用事
(
ようじ
)
も
御座
(
ござ
)
らば、
210
後程
(
のちほど
)
寝所
(
しんじよ
)
に
参
(
まゐ
)
りませう』
211
石熊
(
いしくま
)
『
馬鹿
(
ばか
)
ツ』
212
と
大喝
(
だいかつ
)
する。
213
末子姫
(
すゑこひめ
)
『カールさま
能
(
よ
)
く
滑車
(
かつしや
)
が
運転
(
うんてん
)
しましたねい』
214
カール『
是
(
これ
)
が
所謂
(
いはゆる
)
カール
口
(
くち
)
と
申
(
まを
)
します。
215
アハツハヽヽ』
216
末子姫
(
すゑこひめ
)
を
始
(
はじ
)
め
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
漸
(
やうや
)
く
寝
(
しん
)
に
就
(
つ
)
いた。
217
カールはどうしても
眠
(
ねむ
)
られぬが
儘
(
まま
)
に
森
(
もり
)
を
立出
(
たちい
)
で、
218
路傍
(
みちばた
)
に
涼
(
すず
)
み
乍
(
なが
)
ら、
219
小声
(
こごゑ
)
に
鼻唄
(
はなうた
)
を
唄
(
うた
)
つて
涼
(
すず
)
んで
居
(
ゐ
)
る。
220
向
(
むか
)
うの
方
(
はう
)
より
十曜
(
とえう
)
の
紋
(
もん
)
の
印
(
しるし
)
の
入
(
い
)
つた
丸提灯
(
まるちやうちん
)
をブラつかせ
乍
(
なが
)
ら、
221
二三
(
にさん
)
人
(
ひと
)
の
話声
(
はなしごゑ
)
刻々
(
こくこく
)
と
近寄
(
ちかよ
)
つて
来
(
く
)
る。
222
カールは
透
(
す
)
かし
見
(
み
)
て、
223
カール『ハハー、
224
来
(
き
)
よつたなア。
225
ウヅの
都
(
みやこ
)
から
松若彦
(
まつわかひこ
)
のお
使
(
つかひ
)
として
末子姫
(
すゑこひめ
)
、
226
捨子姫
(
すてこひめ
)
様
(
さま
)
を
御
(
お
)
迎
(
むか
)
への
為
(
ため
)
、
227
出張
(
しゆつちやう
)
したのらしい。
228
一
(
ひと
)
つ
此
(
この
)
木蔭
(
こかげ
)
に
潜
(
ひそ
)
んで、
229
からかつて
見
(
み
)
てやらう。
230
余
(
あま
)
り
暑
(
あつ
)
くつて
寝
(
ね
)
る
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
231
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
連中
(
れんぢう
)
さまは
寝
(
ね
)
て
了
(
しま
)
ふなり、
232
俺
(
おれ
)
一人
(
ひとり
)
斯
(
か
)
うしてブラついてをつても
仕方
(
しかた
)
ない。
233
狐
(
きつね
)
でも
狸
(
たぬき
)
でも
来
(
き
)
やがつたら、
234
一
(
ひと
)
つ
相手
(
あひて
)
になつて
見
(
み
)
ようと
思
(
おも
)
つて
居
(
を
)
つた
所
(
ところ
)
だ。
235
どうやら
向
(
むか
)
うも
三
(
さん
)
人
(
にん
)
と
見
(
み
)
える、
236
ヤア
面白
(
おもしろ
)
い
面白
(
おもしろ
)
い』
237
と
独言
(
ひとりごと
)
を
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
238
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
通
(
とほ
)
りかかるを
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
239
三
(
さん
)
人
(
にん
)
はカールがこんな
所
(
ところ
)
に
潜
(
ひそ
)
んで
居
(
を
)
るとは
夢
(
ゆめ
)
にも
知
(
し
)
らず、
240
行過
(
ゆきす
)
ぎむとする。
241
カールは
俄
(
にはか
)
に
女
(
をんな
)
の
作
(
つく
)
り
声
(
ごゑ
)
、
242
カール『モシモシ
旅
(
たび
)
のお
方
(
かた
)
さま、
243
あなたの
提灯
(
ちやうちん
)
には
十曜
(
とえう
)
のお
印
(
しるし
)
が
入
(
はい
)
つて
居
(
を
)
ります。
244
もしや
三五教
(
あななひけう
)
のお
方
(
かた
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬか?
妾
(
わらは
)
ははるばると
海原
(
うなばら
)
を
渡
(
わた
)
り
参
(
まゐ
)
つた
者
(
もの
)
で
御座
(
ござ
)
います。
245
余
(
あま
)
りの
急坂
(
きうはん
)
で
思
(
おも
)
ひの
外
(
ほか
)
、
246
暇取
(
ひまど
)
りまして、
247
此処
(
ここ
)
で
一夜
(
いちや
)
を
明
(
あ
)
かさむと
主従
(
しゆじゆう
)
二人
(
ふたり
)
が
心
(
こころ
)
安
(
やす
)
き
雨宿
(
あまやど
)
り、
248
珍
(
うづ
)
の
都
(
みやこ
)
へはまだ
余程
(
よほど
)
里程
(
みちのり
)
が
御座
(
ござ
)
いますかなア?』
249
提灯
(
ちやうちん
)
持
(
も
)
つた
男
(
をとこ
)
『ハイ、
250
お
察
(
さつ
)
しの
通
(
とほ
)
り、
251
私
(
わたくし
)
は
珍
(
うづ
)
の
都
(
みやこ
)
の
松若彦
(
まつわかひこ
)
様
(
さま
)
の
身内
(
みうち
)
の
者
(
もの
)
で
御座
(
ござ
)
います。
252
そう
仰有
(
おつしや
)
る
貴女
(
あなた
)
様
(
さま
)
は
失礼
(
しつれい
)
乍
(
なが
)
ら、
253
素盞嗚
(
すさのをの
)
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
おん
)
娘子
(
むすめご
)
、
254
末子姫
(
すゑこひめ
)
様
(
さま
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬか?』
255
カール『
御
(
お
)
察
(
さつ
)
しの
通
(
とほり
)
妾
(
わらは
)
は
末子姫
(
すゑこひめ
)
で
御座
(
ござ
)
んす。
256
さう
云
(
い
)
ふあなたは
何方
(
どちら
)
へお
越
(
こ
)
し
遊
(
あそ
)
ばすので
御座
(
ござ
)
いますか?』
257
甲『ハイ、
258
良
(
よ
)
い
所
(
ところ
)
でお
目
(
め
)
にかかりました。
259
実
(
じつ
)
は
御
(
ご
)
神勅
(
しんちよく
)
に
依
(
よ
)
つて
貴女
(
あなた
)
様
(
さま
)
主従
(
しゆじゆう
)
、
260
ウヅの
都
(
みやこ
)
へお
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さる
事
(
こと
)
を
教主
(
けうしゆ
)
様
(
さま
)
がお
伺
(
うかが
)
ひ
遊
(
あそ
)
ばされ、
261
吾々
(
われわれ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
に……サア
是
(
これ
)
からお
迎
(
むか
)
ひに
参
(
まゐ
)
れキツとテル
山峠
(
やまたうげ
)
の
近辺
(
きんぺん
)
でお
出会
(
であ
)
ひ
申
(
まを
)
すであらう……と
仰
(
あふ
)
せられましたので、
262
実
(
じつ
)
は
足
(
あし
)
の
達者
(
たつしや
)
な
者
(
もの
)
ばかりお
迎
(
むか
)
へに
参
(
まゐ
)
りました。
263
……サア
是
(
これ
)
からお
伴
(
とも
)
を
致
(
いた
)
しませう』
264
カール『それはそれは
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
に
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
265
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
妾
(
わらは
)
は
生
(
うま
)
れ
付
(
つ
)
き
一方
(
いつぱう
)
の
足
(
あし
)
が
長過
(
ながす
)
ぎますので、
266
あなた
方
(
がた
)
の
御
(
お
)
伴
(
とも
)
は
到底
(
たうてい
)
叶
(
かな
)
ひませぬ。
267
何程
(
なにほど
)
カールでも
草臥
(
くたびれ
)
果
(
は
)
てて、
268
お
足
(
みや
)
が
重
(
おも
)
くなりまして、
269
森蔭
(
もりかげ
)
に
休息
(
きうそく
)
……
否
(
いな
)
安眠
(
あんみん
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
りまする。
270
どうぞ
明日
(
みやうにち
)
にして
下
(
くだ
)
さいませ』
271
乙『それは
又
(
また
)
妙
(
めう
)
な
事
(
こと
)
を
仰
(
あふ
)
せられます。
272
安眠
(
あんみん
)
して
御座
(
ござ
)
るお
方
(
かた
)
が
立
(
た
)
つてものを
仰有
(
おつしや
)
るとは、
273
少
(
すこ
)
しく
合点
(
がてん
)
が
参
(
まゐ
)
りませぬ』
274
カール『
所
(
ところ
)
変
(
かは
)
れば
品
(
しな
)
変
(
かは
)
る、
275
お
家
(
いへ
)
変
(
かは
)
れば
風
(
ふう
)
変
(
かは
)
る、
276
嬶
(
かか
)
が
変
(
かは
)
れば
顔
(
かほ
)
変
(
かは
)
ると
申
(
まを
)
しまして、
277
妾
(
わたくし
)
の
国
(
くに
)
では
立
(
た
)
つた
儘
(
まま
)
安眠
(
あんみん
)
を
致
(
いた
)
し、
278
寝
(
ね
)
乍
(
なが
)
らものを
申
(
まを
)
すのが
国
(
くに
)
の
習慣
(
しふくわん
)
で
御座
(
ござ
)
います』
279
乙『
何
(
なん
)
と
妙
(
めう
)
で
御座
(
ござ
)
いますなア。
280
さうするとあなたは
女
(
をんな
)
でゐらつしやいますけ
共
(
ども
)
、
281
厳
(
いづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
で
御座
(
ござ
)
いますか?
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
とか
申
(
まを
)
して、
282
霊界
(
れいかい
)
物語
(
ものがたり
)
を
作
(
つく
)
る
男
(
をとこ
)
は、
283
横
(
よこ
)
にねたまま、
284
鼾
(
いびき
)
をかき
乍
(
なが
)
ら
話
(
はなし
)
をするとか
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
きましたが、
285
ヤツパリそんな、
286
国
(
くに
)
に
依
(
よ
)
つて
風俗
(
ふうぞく
)
があるので
御座
(
ござ
)
いますかなア』
287
カール『それはいろいろと
国
(
くに
)
に
依
(
よ
)
つてカール……オツトドツコイ、
288
アールさうで
御座
(
ござ
)
いますワイ。
289
何分
(
なにぶん
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
連中
(
れんぢう
)
が
白河
(
しらかは
)
夜船
(
よぶね
)
で
森
(
もり
)
の
中
(
なか
)
にお
休
(
やす
)
みになつたものですから、
290
仕方
(
しかた
)
なしに
一寸
(
ちよつと
)
此処
(
ここ
)
まで、
291
末子姫
(
すゑこひめ
)
様
(
さま
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
が
出張店
(
しゆつちやうてん
)
を
開
(
ひら
)
いてゐられる
所
(
ところ
)
で
御座
(
ござ
)
います。
292
アハヽヽヽ』
293
甲『ヤア
其
(
その
)
声
(
こゑ
)
はカールさまぢやないか』
294
カール『カールだから、
295
声
(
こゑ
)
もカール、
296
末子姫
(
すゑこひめ
)
様
(
さま
)
に
一寸
(
ちよつと
)
カール(
代
(
かは
)
る)と
云
(
い
)
ふ
言霊
(
ことたま
)
だ、
297
オツホヽヽヽ』
298
甲『
何
(
なん
)
だチツト
可怪
(
をか
)
しいと
思
(
おも
)
つて
居
(
を
)
つた。
299
一方
(
いつぱう
)
の
足
(
あし
)
が
長
(
なが
)
すぎると
云
(
い
)
つた
時
(
とき
)
から、
300
チと
臭
(
くさ
)
いと
考
(
かんが
)
へて
居
(
を
)
つたが、
301
まさか
貴様
(
きさま
)
がそんな
洒落
(
しやれ
)
をするとは
思
(
おも
)
はなかつた』
302
カール『
足引
(
あしひき
)
のチンバのカールが、
303
したり
顔
(
がほ
)
、
304
中々
(
なかなか
)
甘
(
うま
)
く
人
(
ひと
)
をたばかる……アハヽヽヽ。
305
これが
新派
(
しんぱ
)
の
百人
(
ひやくにん
)
一首
(
いつしゆ
)
だ……
否
(
いや
)
悪人
(
あくにん
)
一首
(
いつしゆ
)
だ。
306
アハヽヽヽ』
307
甲『さうして、
308
姫
(
ひめ
)
様
(
さま
)
はどこに
休
(
やす
)
んで
御座
(
ござ
)
るのだ。
309
案内
(
あんない
)
して
呉
(
く
)
れないか
』
310
カール『
馬鹿
(
ばか
)
云
(
い
)
ふな。
311
とうに
暮
(
く
)
れて
了
(
しま
)
つて、
312
最早
(
もはや
)
子
(
ね
)
の
刻
(
こく
)
だ。
313
くれない
……なんて、
314
何
(
なに
)
を
言
(
い
)
ふのだ』
315
乙『
相変
(
あひかは
)
らず
馬鹿口
(
ばかぐち
)
を
叩
(
たた
)
く
男
(
をとこ
)
だなア。
316
早
(
はや
)
く
御
(
おん
)
所在
(
ありか
)
を
知
(
し
)
らして
呉
(
く
)
れぬか』
317
カール『
御
(
お
)
知
(
し
)
らせ
申
(
まを
)
したいは
山々
(
やまやま
)
なれど、
318
何分
(
なにぶん
)
御
(
ご
)
存知
(
ぞんぢ
)
の
通
(
とほ
)
り、
319
暗夜
(
やみよ
)
の
事
(
こと
)
とて
御
(
お
)
行方
(
ゆくへ
)
を
見失
(
みうしな
)
ひ、
320
どこにどうして
御座
(
ござ
)
るかと、
321
暗
(
やみ
)
にさまよふ、
322
いぢらしさ、
323
せめて
提灯
(
ちやうちん
)
一
(
ひと
)
つあつたなら、
324
そこらブラブラ ブラついて、
325
見付
(
みつ
)
け
出
(
だ
)
したいとは
思
(
おも
)
へ
共
(
ども
)
、
326
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
うても、
327
畜生
(
ちくしやう
)
ならぬ
人
(
ひと
)
の
身
(
み
)
は、
328
悲
(
かな
)
しや
夜
(
よる
)
は
目
(
め
)
が
見
(
み
)
えぬ、
329
推量
(
すゐりやう
)
あれや
旅
(
たび
)
の
人
(
ひと
)
』
330
甲『
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬ
)
かすのだ。
331
真面目
(
まじめ
)
に
云
(
い
)
はないか』
332
カール『
折角
(
せつかく
)
お
草臥
(
くたびれ
)
になつて、
333
お
休
(
やす
)
みの
最中
(
さいちう
)
だ。
334
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
がガサガサとお
側
(
そば
)
へ
寄
(
よ
)
らうものなら、
335
お
目
(
め
)
をさましては
済
(
す
)
まないから、
336
俺
(
おれ
)
が
斯
(
こ
)
うして
一息
(
ひといき
)
でも
御
(
ご
)
安眠
(
あんみん
)
遊
(
あそ
)
ばす
様
(
やう
)
に、
337
喰
(
く
)
ひ
止
(
と
)
めてゐるのだ。
338
マア
茲
(
ここ
)
でゆつくりしたらどうだ。
339
お
前
(
まへ
)
は
春
(
はる
)
に、
340
幾
(
いく
)
に
鷹
(
たか
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
ぢやないか』
341
甲『オウさうだ。
342
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
折角
(
せつかく
)
此処
(
ここ
)
まで
来
(
き
)
たのだから、
343
一寸
(
ちよつと
)
御
(
ご
)
挨拶
(
あいさつ
)
をしたいものだなア』
344
カール『
分
(
わか
)
らぬ
奴
(
やつ
)
だなア。
345
明日
(
あす
)
になつたら、
346
いやと
云
(
い
)
ふ
程
(
ほど
)
御
(
ご
)
挨拶
(
あいさつ
)
をさしてやる。
347
今頃
(
いまごろ
)
にお
目
(
め
)
をさまして
安眠
(
あんみん
)
妨害
(
ばうがい
)
をすると、
348
警察犯
(
けいさつはん
)
処罰令
(
しよばつれい
)
でやられるぞ。
349
夫
(
そ
)
れ
共
(
とも
)
御
(
ご
)
挨拶
(
あいさつ
)
がしたけら、
350
お
前
(
まへ
)
達
(
たち
)
提灯
(
ちやうちん
)
を
持
(
も
)
つてるのだから、
351
勝手
(
かつて
)
に
捜索隊
(
さうさくたい
)
を
組織
(
そしき
)
して
捜
(
さが
)
したがよからう』
352
四
(
よ
)
人
(
にん
)
が
路傍
(
ろばう
)
に
立
(
た
)
つて
喧
(
やか
)
ましく
掛合
(
かけあ
)
うて
居
(
ゐ
)
る
話声
(
はなしごゑ
)
が、
353
夜敏
(
よざと
)
い
末子姫
(
すゑこひめ
)
の
耳
(
みみ
)
に
響
(
ひび
)
いた。
354
末子姫
(
すゑこひめ
)
はやをら
身
(
み
)
を
起
(
おこ
)
し、
355
向
(
むか
)
うを
見
(
み
)
れば
十曜
(
とえう
)
の
紋
(
もん
)
の
記
(
しる
)
された
丸提灯
(
まるちやうちん
)
が
一張
(
ひとはり
)
、
356
二三
(
にさん
)
人
(
にん
)
の
影
(
かげ
)
が、
357
森
(
もり
)
の
中
(
なか
)
の
木間
(
このま
)
をすかして
見
(
み
)
えてゐる。
358
末子姫
(
すゑこひめ
)
は
折角
(
せつかく
)
能
(
よ
)
く
寝入
(
ねい
)
つてゐる
捨子姫
(
すてこひめ
)
、
359
石熊
(
いしくま
)
の
両人
(
りやうにん
)
に
眼
(
め
)
をさまさしては
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
と
思
(
おも
)
ひ
煩
(
わづら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
360
明
(
あか
)
りを
目当
(
めあて
)
に
探
(
さぐ
)
り
足
(
あし
)
にて、
361
街道
(
かいだう
)
に
漸
(
やうや
)
く
姿
(
すがた
)
を
現
(
あら
)
はした。
362
末子姫
(
すゑこひめ
)
『あなたはカールさまぢや
御座
(
ござ
)
いませぬか。
363
其
(
その
)
お
提灯
(
ちやうちん
)
のお
光
(
ひかり
)
は
何
(
いづ
)
れのお
方
(
かた
)
で
御座
(
ござ
)
いますかなア』
364
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
四
(
よ
)
人
(
にん
)
は
驚
(
おどろ
)
き、
365
四人
『ハイ
只今
(
ただいま
)
松若彦
(
まつわかひこ
)
様
(
さま
)
の
命令
(
めいれい
)
に
依
(
よ
)
つて、
366
あなた
様
(
さま
)
御
(
ご
)
一行
(
いつかう
)
をお
迎
(
むか
)
へに
参
(
まゐ
)
つた
使
(
つかひ
)
の
者
(
もの
)
で
御座
(
ござ
)
います』
367
末子姫
(
すゑこひめ
)
『それはそれは
御
(
ご
)
親切
(
しんせつ
)
に、
368
遠方
(
ゑんぱう
)
の
所
(
ところ
)
、
369
能
(
よ
)
くマア
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいました。
370
どうぞ
此方
(
こちら
)
へお
越
(
こ
)
し
下
(
くだ
)
さいませ』
371
カール『
誠
(
まこと
)
に
御
(
ご
)
一同
(
いちどう
)
様
(
さま
)
、
372
見
(
み
)
るもいぶせき
茅屋
(
あばらや
)
なれど、
373
カールの
住宅
(
ぢうたく
)
、
374
サア
御
(
ご
)
遠慮
(
ゑんりよ
)
なうトツトと
奥
(
おく
)
へ
御
(
お
)
通
(
とほ
)
り
遊
(
あそ
)
ばせや』
375
末子姫
(
すゑこひめ
)
『ホヽヽヽ』
376
三
(
さん
)
人
(
にん
)
『アハヽヽヽ』
377
と
笑
(
わら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
378
末子姫
(
すゑこひめ
)
の
後
(
あと
)
に
従
(
したが
)
ひ、
379
二人
(
ふたり
)
の
眠
(
ねむ
)
れる
森蔭
(
もりかげ
)
に
探
(
さぐ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
380
(
大正一一・八・一四
旧六・二二
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 樹下の一宿
(B)
(N)
露の道 >>>
霊界物語
>
海洋万里(第25~36巻)
>
第30巻(巳の巻)
> 第2篇 珍野瞰下 > 第7章 提燈の光
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【第7章 提燈の光|第30巻|海洋万里|霊界物語|/rm3007】
合言葉「みろく」を入力して下さい→