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第二二章 大蜈蚣(おほむかで)〔八六四〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第30巻 海洋万里 巳の巻 篇:第5篇 山河動乱 よみ(新仮名遣い):さんかどうらん
章:第22章 大蜈蚣 よみ(新仮名遣い):おおむかで 通し章番号:864
口述日:1922(大正11)年08月16日(旧06月24日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1923(大正12)年9月15日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
キジとマチは、昨夜にウラル教徒たちを蹴散らした日暮シ川の丸木橋までやってきた。二人は軽口を叩きながら疲れてその場に寝込んでしまった。
そこへどこからともなく這って来た大ムカデに耳を刺されてキジは飛び起きた。キジは思わずムカデに唾を吐きかけた。唾が嫌いなムカデはその場に伸びてしまった。
マチはムカデを憐れに思って、日暮シ川の水中に投げて唾の毒を消してやった。するとムカデは息を吹き返し、二人の元に全速力でやってきた、二人を追い立てる。
キジとマチは気味悪く、どんどん逃げていく。とうとう二人がウラル教の本拠である岩窟の前までやってきたところで、ムカデは消えてしまった。これは言依別命が球の玉の霊力をもって、キジとマチの出陣を励ますようにと顕現させたものであった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2022-02-20 19:00:34 OBC :rm3022
愛善世界社版:250頁 八幡書店版:第5輯 660頁 修補版: 校定版:266頁 普及版:100頁 初版: ページ備考:
001マチとキジとの両人(りやうにん)
002三五教(あななひけう)宣伝使(せんでんし)
003国依別(くによりわけ)(したが)ひて
004夜道(よみち)辿(たど)りやうやうに
005()()(はな)(つゆ)(みち)
006(いきほひ)()んでスタスタと
007(くだ)らぬ(うた)をうたひつつ
008アラシカ(やま)(ふもと)まで
009(きた)りてここに息休(いきやす)
010(また)もや乗出(のりだ)膝栗毛(ひざくりげ)
011(けは)しき(さか)(いさぎよ)
012やうやう頂上(ちやうじやう)(のぼ)りつめ
013(すず)しき(かぜ)()(なが)
014あゝ面白(おもしろ)面白(おもしろ)
015四方(よも)国原(くにはら)見渡(みわた)せば
016山野(さんや)(あを)(かは)(きよ)
017西南方(せいなんぱう)屹然(きつぜん)
018(くも)(かむり)(いただ)きて
019(そそ)()ちたる日暮(ひぐら)シの
020(やま)(ふもと)聖場(せいぢやう)
021(ゆび)さし(なが)らウラル(けう)
022ブールの教主(けうしゆ)立籠(たてこも)
023霊地(れいち)彼処(あこ)国依別(くによりわけ)
024(うづ)(つかさ)()(しめ)
025()はず(がたり)(はじ)めつつ
026(また)もや東北(とうほく)(ゆび)さして
027広袤(くわうばう)(せん)()平原(へいげん)
028(なが)(きづ)きしヒルの(まち)
029(かへで)(わけ)(しづ)まりて
030三五教(あななひけう)(ひら)きます
031(かみ)(やかた)()(した)
032(いらか)(たか)(そび)えつつ
033(たしか)にそれと(わか)らねど
034(かぜ)(ひらめ)旗印(はたじるし)
035勝利(しようり)(みやこ)足許(あしもと)
036近寄(ちかよ)りたりと(いさ)()
037(こころ)のままに涼風(すずかぜ)
038(あぢ)はふ折柄(をりから)国依別(くによりわけ)
039(うづ)(つかさ)(さき)()
040(はや)()かうと駆出(かけだ)せば
041二人(ふたり)名残(なごり)()しみつつ
042是非(ぜひ)なく(あと)(したが)ひて
043(けは)しき(さか)(くだ)りゆく
044(みち)片方(かたはう)(くす)()
045老木(ろうぼく)(しげ)りウラル(けう)
046(をしへ)(おや)(まつ)りたる
047神王祠(しんわうほこら)発見(はつけん)
048近寄(ちかよ)()れば妙齢(めうれい)
049(をんな)一人(ひとり)(おも)やつれ
050(かみ)もおどろに()(あは)
051(ほこら)(まへ)(うつむ)いて
052(なに)かヒソヒソ(いの)()
053(あや)しき様子(やうす)にキジ(こう)
054(そば)()()(せな)をなで
055言葉(ことば)(やさ)しく(いた)はりて
056(こと)様子(やうす)(たづ)ぬれば
057(をんな)(やうや)(かほ)をあげ
058アラシカ(やま)山麓(さんろく)
059ウラルの(をしへ)宣伝使(せんでんし)
060(つか)へまつれるエスの()
061(わたし)(ちち)三五(あななひ)
062(かみ)(つかさ)呼止(よびと)めて
063吾家(わがや)()めし(つみ)()
064日暮(ひぐら)(やま)聖場(せいぢやう)
065引立(ひきた)てられて仄暗(ほのぐら)
066残酷(ざんこく)無情(むじやう)水牢(みづらう)
067(とざ)され(たま)朝夕(あさゆふ)
068(くる)しみ(なげ)(たま)ひつつ
069(この)()果敢(はか)なみ(たま)ふらむ
070(ちち)(わざはひ)()くよりも
071(わたし)(はは)(おどろ)いて
072持病(ぢびやう)癪気(しやくき)再発(さいはつ)
073(みづ)さへ()めぬ重態(ぢうたい)
074痩衰(やせおとろ)へて(たま)()
075(いのち)()きむとする場合(ばあひ)
076いかで(わたし)(この)(まま)
077のめのめ(なが)めて()れませう
078ウラルの(をしへ)(ひら)きたる
079教祖(けうそ)(かみ)(おん)(まへ)
080(ちち)危難(きなん)(のが)れしめ
081(はは)(やまひ)一日(いちじつ)
082(はや)(なを)させ(たま)へよと
083(こころ)(まこと)(ささ)げつつ
084一心(いつしん)不乱(ふらん)(かみ)(まへ)
085朝夕(あさゆふ)(いの)(わが)(こころ)
086推量(すゐりやう)あれと(こた)ふれば
087キジ(こう)(なみだ)()(なが)
088心配(しんぱい)なさるなエリナさま
089(かみ)(つか)へしキジ(こう)
090とつとき(ちから)(あら)はして
091(まへ)(ちち)のエスさまを
092キツと(たす)けて()げませう
093マチ(こう)(まへ)(この)(かた)
094(したが)ひエスの(いへ)()
095(やまひ)(くるし)母親(ははおや)
096鎮魂(ちんこん)帰神(きしん)神業(かむわざ)
097(はや)(たす)けて()げて()
098国依別(くによりわけ)(かみ)(さま)
099(いち)()(はや)楓別(かへでわけ)
100(かみ)(つかさ)(しづ)まれる
101ヒルの(やかた)()でまして
102キジが凱旋(がいせん)する(あひだ)
103ゆるゆる()()(くだ)されと
104(いさ)()つたるキジ(こう)
105言葉(ことば)にマチは()りよつて
106オイオイキジ(こう)そりや無理(むり)
107何程(なにほど)(よわ)(てき)だとて
108(まへ)一人(ひとり)ぢや険呑(けんのん)
109国依別(くによりわけ)命令(めいれい)
110(したが)(おれ)もついて()
111国依別(くによりわけ)(かみ)(さま)
112()いではエリナの(むすめ)さま
113天晴(あつぱ)凱旋(がいせん)した(うへ)
114後日(ごじつ)にお()(かか)りませう
115()ふより(はや)くマチ(こう)
116(しり)ひつからげアラシカの
117(たうげ)(のぼ)(くだ)りつつ
118一目散(いちもくさん)駆出(かけだ)せば
119オイオイ()つたマチ(こう)
120キジ(こう)(けつ)をひつからげ
121韋駄天(ゐだてん)(ばしり)(すす)()
122あゝ惟神(かむながら)々々(かむながら)
123御霊(みたま)(さち)はひましませよ。
124 キジ、125マチの両人(りやうにん)(やうや)くにして、126日暮(ひぐら)(がは)丸木橋(まるきばし)(たもと)辿(たど)()いた。
127キジ『オイ、128マチ(こう)129夜前(やぜん)のキジ(こう)奮戦(ふんせん)激闘(げきとう)結果(けつくわ)130大功名(だいこうみやう)(あら)はしたる古戦場(こせんじやう)へやつて()た。131(この)(へん)死屍(しし)累々(るいるい)として(よこ)たはり、132地下(ちか)(いつ)(しやく)()れば、133白骨(はくこつ)(あら)はれ、134()鬼哭(きこく)啾々(しうしう)として寂寥(せきれう)()(せま)ると()記憶(きおく)すべき印象(いんしやう)(ふか)地点(ちてん)だ。135(ひと)(てき)亡霊(ばうれい)(ともら)御校正本では「吊」つてやらうぢやないか。136アハヽヽヽ、137南無(なむ)アナン、138ユーズ大居士(だいこじ)139頓生(とんしやう)菩提(ぼだい)だ、140どうだ(ひと)宣伝歌(せんでんか)でも手向(たむ)けてやらうぢやないか?』
141マチ『(なに)()ふのだ。142古戦場(こせんじやう)(どころ)か、143(きは)めて新戦場(しんせんぢやう)だ。144吾々(われわれ)大勝利(だいしようり)()聖地(せいち)だから、145(かみ)(さま)()(れい)(ため)神饌(しんせん)(たてまつ)るべき神饌場(しんせんぢやう)だよ。146あゝ新鮮(しんせん)空気(くうき)(みづ)(ごと)(なが)(きた)り、147(われ)()(あせ)(ぬぐ)ふ。148(ゆう)なる(かな)149(さう)なる(かな)150どれどれ一服(いつぷく)(つかまつ)らう』
151()ふより(はや)く、152芝生(しばふ)(うへ)(だい)()(ゑが)いた。
153キジ『ヤア、154(はや)から大勝利(だいしようり)(いは)つて、155(だい)()になつてゐるのか。156さう背部(はいぶ)(した)にして()ると、157キツと大敗(だいはい)憂目(うきめ)()はなくてはならないよ』
158マチ『(なに)159(てき)をして大敗(だいはい)せしむると()縁起(えんぎ)(いは)つてゐるのだ。160(うつ)むいて()れば(てき)(おほい)屈伏(くつぷく)さすると()大腹(たいふく)となるのだ。161アハヽヽヽ』
162(つみ)なき(こと)(しやべ)()らし(なが)ら、163(あま)(いきほひ)()んで(はし)つて()(からだ)(つか)れに、164何時(いつ)()にか両人(りやうにん)(とも)熟睡(じゆくすゐ)して(しま)つた。
165 何処(いづく)よりともなくガサガサと()うて()大蜈蚣(おほむかで)に、166(みみ)一方(いつぱう)()され、167(いた)さに()()まし起上(おきあが)つたキジ(こう)は、168矢庭(やには)蜈蚣(むかで)(むか)つて(つばき)()きかけた。169蜈蚣(むかで)(たい)大禁物(だいきんもつ)(つばき)(たちま)ち、170大蜈蚣(おほむかで)はピンと(たい)()ばし、171(あを)くなつて(その)()(たふ)れて(しま)つた。172キジ(こう)(みみ)(いた)さに何気(なにげ)なく、173(つばき)(ゆび)につけ、174(これ)疵所(きずしよ)()つた。175不思議(ふしぎ)(いた)みは(たちま)()まり、176(みみ)(はれ)(またた)(うち)にひすぼつて(しま)つた。177マチ(こう)(この)(さわ)ぎに()()まし、178四辺(あたり)()れば、179大蜈蚣(おほむかで)(つば)(どく)にあてられて、180(ほとん)(むし)(いき)になつてゐる。181マチは(これ)(なが)めて、
182マチ『オイ、183キジ(こう)184殺生(せつしやう)のことをするない。185貴様(きさま)蜈蚣(むかで)敵薬(てきやく)たる(つばき)をかけたのだな、186生物(いきもの)(ころ)すと()(こと)天則(てんそく)違反(ゐはん)だぞ。187(はや)蜈蚣(むかで)(たす)けてやらないか』
188キジ『(おれ)だつて(べつ)無益(むえき)殺生(せつしやう)(この)んでする(もの)ではない。189安眠中(あんみんちう)(うかが)ひ、190(おれ)(みみ)(かみ)よつた(わる)(やつ)だから、191此奴(こいつ)こそ唾棄(だき)すべき悪虫(あくちう)だと(おも)つて()きかけたのだ。192(おれ)(つばき)(えら)いものだらう。193一口(ひとくち)()くが最後(さいご)194こんな大蜈蚣(おほむかで)(たちま)寂滅(じやくめつ)為楽(ゐらく)195頓生(とんしやう)菩提(ぼだい)となるのだからなア。196アハヽヽヽ、197武士(つはもの)()(もの)(かは)つたものだらう』
198マチ『グヅグヅして()ると、199蜈蚣公(むかでこう)200本当(ほんたう)縡切(ことき)れて(しま)ふぢやないか。201(はや)(かは)()れて()つて(みづ)()ましてやれ。202さうすれば(たちま)全快(ぜんくわい)して、203(もと)(とほ)りシヤンシヤンと活動(くわつどう)する(やう)になるワ』
204キジ『(この)蜈蚣(むかで)(ある)姿(すがた)()ると、205夜前(やぜん)アナンの(やつ)206沢山(たくさん)竹槍隊(たけやりたい)()れ、207単縦陣(たんじうぢん)(つく)つてやつて()(とき)姿(すがた)にソツクリだ。208これも(なに)かの前兆(ぜんてう)だ。209(この)(まま)()てておかうぢやないか。210蜈蚣(むかで)蘇生(そせい)した(やう)に、211ブールの(やつ)212(あま)元気(げんき)()きよると、213一寸(ちよつと)此方(こちら)少数党(せうすうたう)だから険呑(けんのん)だよ』
214マチ『アハヽヽヽ、215ヤツパリどつかに不安(ふあん)(いだ)いてゐると()えるなア。216国依別(くによりわけ)(さま)(まへ)ではズイ(ぶん)()いたぢやないか。217こんな(ところ)でこんな弱音(よわね)()(くらゐ)だつたら、218肝腎要(かんじんかなめ)戦場(せんじやう)(むか)つては、219如何(どう)することも出来(でき)なくなつて(しま)ふよ』
220キジ『(なに)さ、221(はたら)(とき)(はたら)きさへすれば()いのだ。222(いま)()(よわ)さうにして(ちから)(たくは)へ、223潜勢力(せんせいりよく)(やしな)つておくのだ。224エヽ邪魔(じやま)(くさ)い、225蜈蚣(むかで)(やつ)226(たす)けてやらう』
227()(なが)ら、228(かは)(なか)(なが)れを()がけて、229()(つか)んで()()んだ。230蜈蚣(むかで)(みづ)(おちい)ると(とも)に、231(どく)()ゑ、232水中(すゐちう)(から)うじて(およ)(なが)ら、233(きし)(のぼ)り、234二人(ふたり)足許(あしもと)(いきほひ)()く、235百本(ひやくぽん)(あし)馬力(ばりき)をかけ、236大速力(だいそくりよく)突進(とつしん)(きた)る。237二人(ふたり)(なん)となく、238怖気(おぢけ)つき、239トントンと()()した。240不思議(ふしぎ)蜈蚣(むかで)何処(どこ)までもと()調子(てうし)()つかけ()る、241(いや)らしさ、242とうとうウラル(けう)霊地(れいち)(きこ)ゑたる日暮(ひぐら)(やま)岩窟(がんくつ)(まへ)(まで)()つかけ(きた)り、243忽然(こつぜん)として姿(すがた)()して(しま)つた。244(この)蜈蚣(むかで)言依別(ことよりわけの)(みこと)(きう)(たま)霊力(れいりよく)(もつ)て、245二人(ふたり)出陣(しゆつぢん)(はげ)ますべく顕現(けんげん)せしめたのであつた。
246大正一一・八・一六 旧六・二四 松村真澄録)
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