わが身の上を偲ぶれば
波に漂ふ木の葉なり
月にこがるる胡蝶なり
今の吾が身をたとふれば
木の葉ただよふ浪荒く
胡蝶こがるる月高し
この行く先を如何にせむ(大正十一年八月十四日)〈序(初版)〉
万有の運化の豪差なきを視て主の大神の力を悟らへ〈第1章(三版)〉
近づき来たる 靴の音
止まりし如き 気配しぬ
胸躍らせつ 出て見れば
四更の空に 月も無く
垣根の虫の 声ほそく
ひびくに連れて〈どことなく〉
聞こえ初めけり 秋の声〈第3章(初版)〉
空照る月よ〈わがために〉
恋ふる心を 伝へずや
空飛ぶ鳥よ〈わがために〉
たえぬ思ひを 伝へずや
おしき袂を わかち来て
月の半ばも 過ぎむとす
如何で告げまし この思ひ
雲井のよその 彼の人に〈第4章(初版)〉
われは淋しき ひとり寝の
便りなき身と なりにけり
希望の月も 掻き曇り
楽しき恋も 中たえて
悲しき一人と〈なりにけり〉
浮世の雲も 恨むまじ
彼女の情も 頼むまじ
神のまにまに 渡るべし
胸の焔も 打ち消しつ〈第8章(初版)〉
曇りはてたる現し世を 捨つるは最とど易からむ
弊れし靴を捨つるより なほ捨て易き浮世なり
世はかく曇りはてたれど 弥仙の山は影清し
峯より落つる谷川の ながれは水の御魂かな
自然はかくも清けきを 人の住まへる世の中は
などてや濁り果てつらむ 自然のごとき世なりせば
人は神国に楽しまむ ア丶麗しきこの自然
人はそむきて何時までも 迷ひ行くべき世なるかな
神は叫びぬ吾は言ふ 自然にかへせ世の中を〈第11章(初版)〉
君をおきて人をし恋ふといのちみななげも出ださば快からまし〈第13章(初版)〉
なつかしき人もあらなくなつかしき国もあらなく住める心地す〈第15章(初版)〉
いと低う灰色なせる空のもと住めるにも似し佗びしきこころ〈第15章(初版)〉
一列に青みわたれる春の野にいま真盛りと咲ける菜の花〈第17章(初版)〉
[この余白歌は八幡書店版霊界物語収録の余白歌を参考に他の資料と付き合わせて作成しました]