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幼ながたり
まえがき
幼ながたり
01 父のこと
02 母の生いたち
03 因果応報ばなし
04 石臼と粉引きの意味
05 父の死
06 わたしのこと
07 奉公
08 幼なき姉妹
09 母は栗柄へ
10 母の背
11 屑紙集めと紙漉きのこと
12 清吉兄さん
13 蘿竜の話
14 およね姉さん
15 ひさ子姉さん
16 不思議な道づれ
17 仕組まれている
18 おこと姉さんの幼時
19 王子のくらし
20 ご開祖の帰神
21 霊夢
22 教祖と大槻鹿造
23 牛飼い
24 ねぐら
25 不思議な人
思い出の記
1 料亭づとめ
2 神火
3 天眼通
4 直日のこと
5 夫婦らしい暮しの日
6 尉と姥
獄中記
監房へ
一ぱいの水
青い囚人服
一本の桐の木と蝉
風の中の雀
ぼっかぶりの夫婦
オツルさん
孫の絵便り
獄中の歌
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一三 蘿竜の話
インフォメーション
題名:
13 蘿竜の話
著者:
出口澄子
ページ:
目次メモ:
概要:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
B124900c15
001
先生は蒙古で
清吉
(
せいきち
)
兄さんの娘であるという
蘿竜
(
らりょう
)
という人に会われたというのです。
002
お筆先では、
003
清吉兄さんは死んでいないと言うことになってましたので、
004
これは死んでしまってもう居ないということであると言う人と、
005
まだ死んではいない、
006
生きていると言うことであると言う人もありましたが、
007
私は清吉兄さんはお筆先で、
008
日の出のご守護となっていましたから、
009
なにか深いご守護のもとに、
010
お
仕組
(
しぐみ
)
のことで支那に渡られたように思えてならなかったので、
011
私は先生からラリョウの話を聞いたとき、
012
人とは別な気持ちで驚かされたのであります。
013
先生の蒙古入りのことは、
014
ずっとあとで詳しく述べますが、
015
大へん深いお
仕組
(
しぐみ
)
でまだ先でないと、
016
このことを言うても、
017
たれにも通じないことでありまして、
018
やがてこのお
仕組
(
しぐみ
)
が実地にまわってくるのであります。
019
先生が
入蒙
(
にゅうもう
)
されたときは、
020
方々
(
ほうぼう
)
から
馬賊
(
ばぞく
)
と言われておるものが、
021
先生の徳を慕うて集ってきたのであります。
022
馬賊と言いましても、
023
あの時に先生を一番
援
(
たす
)
けてくれた
慮占魁
(
ろせんかい
)
にしても、
024
みな馬賊といわれておりますが、
025
あの人も立派な方でして、
026
あの時分の満洲としてはああいう形で働いていたので、
027
慮占魁も馬賊と言われることを残念がっていたそうです。
028
そういう人びとが集ってきた中に
蘿竜
(
らりょう
)
という女馬賊の
頭目
(
とうもく
)
がおりまして、
029
それは蒙古のようにまだ開けておらないところにおいておくのは勿体ないほどの美しい人であったそうです。
030
そのラリョウが先生を一目みるなり、
031
なんとなく先生を慕うてきまして、
032
先生の
理想
(
はなし
)
を聞くと、
033
大へん喜びまして、
034
先生のために三千の部下をつれて
生命
(
いのち
)
がけで尽くしたいと言ってきたのであります。
035
それが上手な日本語で話してきましたので先生も不思議に思われたと言うことです。
036
それから夜になってラリョウが先生と二人きりで話しをしたいと言うので、
037
テントの中のラリョウの部屋に行かれましたとき、
038
初めてラリョウの身の上ばなしを聞かれたのであります。
039
ラリョウの父は
王文泰
(
おうぶんたい
)
という名でした。
040
王文泰
(
おうぶんたい
)
という人は
北清
(
ほくしん
)
事変の時に日本の新聞にも載った人で、
041
先生もその時の新聞で
王文泰
(
おうぶんたい
)
のことを読まれたときハッと感じておられたそうです。
042
それで先生が蒙古に行かれた時、
043
日本人であることを
秘
(
かく
)
すため、
044
王文泰
(
おうぶんたい
)
と名乗られたのであります。
045
まずラリョウが驚いたのは自分の父の名と同じ名の人が出てきたことでありました。
046
そのことをラリョウが先生に言いましたところ、
047
先生が、
048
私は本当は日本人でデグチ・オニサブロウというものだと言われたので、
049
ラリョウは更にびっくりして私の母は蒙古人でしたが、
050
父は日本人でデグチと申しておりました。
051
父は初め台湾にいたことがあったようです。
052
蒙古ではラシンキチ(
蘿
(
ら
)
清吉
(
しんきち
)
)と名のっておりました、
053
と打明けたと言うのです。
054
デグチ、
055
ラ・シンキチ、
056
タイワン
057
不思議ですなア、
058
先生が
北清
(
ほくしん
)
事変のころに
王文泰
(
おうぶんたい
)
という名を新聞で見て感じておられたことが本当であったのであります。
059
先生は蒙古で清吉兄さんの娘さんに会われたのであります。
060
ちょうどその晩はよい月夜でありましたそうで、
061
ラリョウはコキュウというものを弾いて先生にきかせたそうです。
062
清吉兄さんは台湾から
上海
(
シャンハイ
)
の方にわたり、
063
それから
北京
(
ペキン
)
の方でも仕事をされ、
064
蒙古で先生の考えておられたと同じようなことを目的にして仕事をされていたそうです。
065
蒙古というところは、
066
神界からは
理
(
わけ
)
のあるところでありまして、
067
大本にあることは不思議なことばっかりであります。
068
先生が蒙古にわたられました三年ほどまえに、
069
蘿
(
ら
)
清吉
(
しんきち
)
と言うておられた
清吉
(
せいきち
)
兄さんは
張
(
ちょう
)
作霖
(
さくりん
)
の軍隊にとらえられ、
070
そうしてそのまま帰ってこられなかったと言うことです。
071
そのあとラリョウも先生のパインタラの
御難
(
ごなん
)
のとき盧占魁という方といっしょに、
072
可哀
(
かわい
)
そうなことになったのであります。
073
この清吉兄さんと同じように、
074
私たちのきょうだいは、
075
教祖さまの子と生まれ、
076
それぞれにみな神様のお
仕組
(
しぐ
)
みでいろいろのことをさせられています。
077
私の
兄姉
(
きょうだい
)
にあらわれていることの中には、
078
世間では
いみきらわれ
ていることがでてきますが、
079
これはみんな神様から世界の型をさせられていたので、
080
その一つ一つに
理
(
わけ
)
があるのであります。
081
神様は
他
(
た
)
の人にはさせられない一ばんいやな悪の型を、
082
教祖さまの子にそれぞれ負わせられたのであります。
083
このことは教祖さまの筆先にも、
084
085
「
誠善
(
まこと
)
一つの
御道
(
おみち
)
は、
086
他
(
ひと
)
にキズは附けられんから、
087
わが
血統
(
ひっぽう
)
に
厭
(
いや
)
なことはさしてありたぞよ。
088
未
(
いま
)
だに出口なおのひっぽうにさせてあるから、
089
何事もよく出口なおの血筋の
所作
(
しょさ
)
がらを見ておいて改心をいたさんとわれ
好
(
よ
)
しの
行
(
や
)
り
方
(
かた
)
では……これまでは好きなようにして
行
(
ゆ
)
けたなれど、
090
二度目の世の立替えをいたしたら、
091
全部
(
さっぱり
)
行り方を代えてしまうから、
092
云々」
093
とあるとおりであります。
094
こういうことの小さな型は世の中で悪人と言われている人のなかにもあることで、
095
人としては
善
(
よ
)
い人でも悪の
行
(
ぎょう
)
を負わせられ、
096
させられているという人もありましょう。
097
一
(
いち
)
がいに人を頭から悪人じゃときめることができない
理
(
わけ
)
もここにあると思われます。
098
しかしこれは身魂の因縁というてなかなか難しいことであります。
099
私の兄や姉にでてきますことは、
100
入
(
い
)
りくんでいますが、
101
まことにあらましのことだけを書きわけておきます。
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