霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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四 直日のこと

インフォメーション
題名:4 直日のこと 著者:出口澄子
ページ: 目次メモ:
概要: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :B124900c32
001 教祖さまが弥仙山(みせんざん)におこもり中、002このたびは()花咲耶姫(はなさくやひめ)御霊(みたま)の宿られる女の子が産まれると言伝(ことづて)がありまして、003産まれたのが“直日(なおひ)”でした。004仰せの通り、005まことに変わり者ができたのであります。
006 直日をみごもったのは出雲参りの頃でした。007この旅は往復(ゆきき)二十日(はつか)ほどの長旅で、008当時汽車はないので手甲脚絆(てっこうきゃはん)菅笠(すげがさ)草鞋(わらじ)ばき、009教祖さま、010先生(聖師)ともども同勢(どうぜい)二十八人ほどの一行でありました。
011 この大宇宙界には(たて)(いづ)御霊(みたま)御系統(ごけいとう)と、012(よこ)(みづ)の御霊の御系統の二大系統があるのでありますが、013出雲参りの帰り道に、014弥仙山(みせんざん)ごもりへとつながる厳の御霊の教祖さまと、015瑞の御霊の先生の霊的なたたかいが初まったのであります。016と言いましても、017四六時中喧嘩をされるというのではありません。018神懸(かむがか)りの時だけであります。019先生のことを「このかたは三千世界にかけがえのない方であるから、020大事にしてくれ」と神さまは教祖さまに申されておられたのですが、021それが教祖さまはてんしょうこうたいじんぐう様、022先生はすさのおのみこと様の帰神となりまして、023ここにお二人の激しい荒れようとなられたのであります。
024 それで平常のときは、025教祖さまは
026「これではかないません」と神様にお願いされるのですが、027
028「なおよ、029三千年の因縁ごとであるからもうしばらく辛棒(しんぼう)をしてくだされよ」と説き諭すように、030また頼むように申されるのが常でありました。
031 先生の場合は、032まだ大本へ来られて間のないこととて、033先生を押しのけ後釜(あとがま)にすわろうとする野心家や、034ズバリと見通しのきく先生をけぶたがる鼻高(はなだか)や、035先生の御用のわからない者など種々(しゅじゅ)さまざまで、036先生を虐待し仕事の邪魔をして大変な苦難を与えたものであります。
037 厳と瑞との霊的の激しいたたかいにともなって、038このころは大本としては大変難しい時代でありました。039家に居たたまれない先生は、040暇さえあれば教会の門をくぐってキリスト教の研究をしておられました。041すると教会の牧師さんは、042教祖さまと先生の、043たたかいをよそながら見て知っておりますから、044
045「別におすみさんがあんたの一生をかけるほどの美人でもなし、046おなおさんにもこれというほどの財産もないのだから、047何も好きこのんで、048親子喧嘩や役員の悪さの中にいないで私の所へ来たらどうですか。049私のあとをついでもらいますが」
050と誘いかけられたそうであります。
051 先生が一を知って十を悟るという図抜(ずぬ)けて頭が良いのを見込んで、052自分の後釜(あとがま)にしようと思われたのでありましょう。053ところが先生はキリスト教の奥義をつかんでしまうと、054このころから大本も忙がしくなって来たこととて、055あまり教会へは行かれなくなりました。
056 私は私で、057教祖さま、058先生、059役員たちの板ばさみで、060まことに言うに言われぬ苦労をなめたのであります。
061 そうこうしているうちに、062明治三十四年九月、063「瑞の御霊の変性女子(へんじょうにょし)敵対(てきた)う」と大変怒られ、064弥仙山(みせんざん)という山にこもられました。065これが天の岩戸がくれと言われるお仕組(しぐみ)であります。
066 弥仙山(みせんざん)(ひら)けてから千四百年の間女人(にょにん)禁制の神山(しんざん)で、067あらたかな竜神様の御住所(おすまいどころ)とされていました。068それで教祖さまは村人には秘密で知人が神主(かんぬし)であったのを幸い、069(こも)りになったのであります。070そして彦火火出見命(ひこほほでみのみこと)様のお宮に篭って大望(たいもう)な御用をされたのであります。
071 丁度そのころ私は五カ月の身重でした。072教祖さまのところへ位田(いでん)のおすみさん達が御用聞きに時たま行きまして、073開祖さまから、074
075「この世がすっかり暗闇になって水晶の種がなくなってしまったから、076このままでおいたら此の世は泥海になるより(ほか)はない。077今度水晶の種を地の高天原に授ける。078それは木花咲耶姫命の御霊(みたま)である。079大本は代々(だいだい)女のお世継(よつぎ)080末代(まつだい)女のお世継(よつぎ)とする。081男を世継にしておくと目的を立てる者が現われて仕組の邪魔をするから、082七柱の大神が代るがわる女と生まれて世を持つのである」
083とおおせられ、084
085「このたびの(おび)の祝いは機嫌よく清らかに祝うてくれるよう。086女の子が生まれる。087それも、088変わりものが出来る」
089とのことでありました。
090 私はこれを聞いて、091神様のお言葉は結構とは思いながらも、092全部素直には聞けませんでした。093一度は必ず反対したものですが、094今度のことも半信半疑でおりますと、095明治三十五年旧一月二十八日、096予言どおり女の子が生まれました。097その子が直日であります。
098 直日が生まれまして初めて弥仙山(みせんざん)にお(まい)りしたのは、099四魂(しこん)(そろ)うたそのお礼詣りであります。100日の出の神様は直日であります。101すでに四魂(しこん)は揃うたのでありますから、102取違いのないように願いたいのであります。
103 四本(しほん)の松が三本になったのは「清吉の肉体はないのである」とのお知らせで、104三代直日が清吉の現われであります。105それで四魂(しこん)の揃うた御礼(おんれい)であると言うて、106教祖さま、107先生、108私が直日を抱いて四人がお礼詣りをしたのであります。109この日が、110弥仙山(みせんざん)(ひら)けてから千四百四十余年、111直日が生まれてから四百四十日目や」、112こう言って先生は大変おどろいておられました。
113 私は直日の種痘(しゅとう)についてはなかなか苦労したものでした。
114 教祖さまは「この子には決して疱瘡(ほうそう)を植えられぬ」と言われます。
115「そういうわけにはゆきません。116私が植えまいと思うても役場が植えさせますがな」と反対するのですが、117
118「水晶の御種(おんたね)(つらぬ)かんならんで、119まぜこぜには出来ぬ」と申されるのであります。
120 ところが役場や警察からは(やかま)しく言うて()121板ばさみの私も仕方がなく、122どうかして疱瘡(ほうそう)を植えさせようと思案しました。123私はよく子供を抱いて出歩く(たち)でしたが、124疱瘡(ほうそう)を植えにゆこうとすると、125竜体(りゅうたい)が私や家の周囲を取りまいて、126どうしても出ることが出来ないのであります。127こういうことを繰り返しては年を積んでゆきました。
128 私が植えに行こうと思うていますと、129教祖さまがヒョッコリと出て来られ、130
131「おすみや、132お前はこの子に疱瘡(ほうそう)を植えようと思うて居ってじゃ。133神様は、134この子に疱瘡(ほうそう)を植えたら世界がいったん泥海になると仰せられている。135もしそんなことになれば、136私は申しわけのために自害をする」と、137きつく言われるのが常でありました。
138 こんな調子でありますから、139役場から罰金をとられたり、140警察へ呼び出されて(しか)られたこともたびたびありました。141ある時など、142「お婆さんがどうしても聞かねばお前の家へ大砲を向けるぞ」と警察で脅かされたりしました。143帰って教祖さまに申し上げますと、144「兵隊なと大砲なと向けるがよい。145私のことで言うているのではない、146世界のためにいうておるのじゃ。147そんなことに恐れるような神ではない」と答えられるのであります。
148 かれこれ七、149八年も暮れたでしょうか。150学校で役場と相談して疱瘡(ほうそう)を植えることになりました時も、151いざ植えようとしますと、152もう直日の姿は霧のように消えてそこらに居なくなるのであります。
153 教祖さまはいつも直日を抱いて寝ておられまして「疱瘡(ほうそう)を植えるでないぞ」と寝ても覚めても言い聞かせておられます。154そのためどうしても植えさせませんので、155私は腹が痛いから吉川(よしかわ)医師(せんせい)に見てもらうと(だま)して直日を連れて行き、156役場の村上さん立会の上、157植えることにしまして「お前が植えなんだらお祖母(ばあ)さんも、158お父さんもお母さんも皆(しば)られて(ろう)へ入れられるんですよ」こういうて植えるよう言いふくめました。
159 そして直日が部屋へ這入(はい)ったら()ぐに戸を閉めて貰うことにしたのであります。160医者が直日に「疱瘡(ほうそう)……」とひとこというが早いか、161「だました!」と叫ぶとともに、162大変な勢いでどうして戸を開けたか眼にも止まらず、163飛び出してしまったのであります。
164 私はあわてました。165教祖さまに告げられては一大事と跣足(はだし)で追いかけます。166直日は「だました!おばあちゃんにいうてやる」とわめいて走ります。167私は「植えせんで教祖さまにはいうてくれな」と一生懸命かけりました。168しかし、169とうとう取り()がしてしまいました。
170 教祖さまが怒られると金色(こんじき)に輝く玉のような眼をカッと開いて、171それはそれは恐ろしいお顔であります。172直日に()げられて「もうキット教祖さまに告げているに違いない。173教祖さまは大変なご立腹であろう」と、174私は恐るおそる教祖さまのお部屋の(ふすま)をあけてのぞき「よいお天気ですなあ」とそれとはなしに様子を伺って見ますと「よいお天気やな」と大変に機嫌がおよろしい。
175 私はこの時ほどヤレヤレと思ったことはありません。176今までは植えようと思うていると、177先方で感ずいて叱られたのに、178今日に限ってまことによい御機嫌であります。179なにげないふりして「直日さんはえ?」と尋ねますと、180()らんで、181何処(どこ)へか遊びに行ったんやろう」と答えられました。182見ると廊下の隅にむつかしいふくれ(がお)をした直日がいます。183私が小声であやまると「おばあちゃんにいわんけど(だま)した」とプリプリ怒って居ましたが、184ついにそのまま教祖さまには解らずに済みました。
185 しかしこれで事が片付いたのではありません。
186 役場からはしょっちゅう(やか)ましくいうて来ます。187直日は植えさせません。188途方に暮れた揚句、189五斤(ごきん)の砂糖を買いまして──そのお金に心配したことは今の十万円のお金を出すよりも当時は苦しみました──吉川さんへ行き「どうぞ植えた事にして貰いたい」とお願いしたのでありますが、190それも聞いてもらえず、191そこで、192「それではお(たく)へ行って教祖さんに得心(とくしん)の行くように話をしてあげます」と出て来られたのであります。
193 教祖さまは(おだや)かに神様のお言葉を伝えて、194どうしても植えられぬ旨を述べられたのであります。195吉川さんもキリスト教の信者ですから、196その信仰の強いのに感心し、197「実は疱瘡(ほうそう)というものは外国の牛のたねを持って来て植えるものですから、198(けが)れるとおっしゃるのももっともです。199それでは機械も(すべ)て清めて、200(かた)ばかりの種痘(しゅとう)をいたしますから」。201そこで教祖さまの血をもって直日の足に真似だけの種痘(しゅとう)を施されたのであります。
202 教祖さまは直日の傷口を塩で念を入れ念を入れて清められたのは申すまでもないことであります。203今では跡かたも残ってないそうです。
204 直日の幼い時はまことに物言わずで何時(いつ)もふくれた子でありましたが、205一度だけ人を笑わしたことがあります。206私が寺小(てらこ)(下駄屋)へ連れて行きましたら、207其処(そこ)にある高下駄(たかげた)先掛(さきが)けを見て(かんむり)と間違え「オッチャン、208ウチのお父ちゃん、209(かみ)ちゃんの前で、210それ頭へのせて、211(かみ)ちゃん(おが)んでやで」と申したものですから、212一同大笑いで「直日さんがものを言うた」と不思議がったほどでありました。
213 直日が小学校に上がるころの大本はまことに貧窮(ひんきゅう)な時代で、214私は内職の麦稈(むぎわら)帽子のウズを作ったりして居りました。215それでも親心で、216また何んといっても初めての子の入学でしたから、217着物を新調して初登校を飾ろうとしましたところが、218「こんな赤いベベはいや」と言ってどうしても着ようとしません。219男の子のような娘とは知りながらも、220折角のこととて私はえろう怒ったことがありました。
221 学校は嫌いらしく、222ただ国語と歴史の時間だけ眼の色が光ったということであります。
223 六年を卒業しましたので女学校に入れようとしますと、224教祖さまは反対で、225直日も、226「神さまは何もない(ところ)から造られたのだから、227私も勝手に覚える」といってなかなか聞きません。228それでも入学はしました。
229 ある日髪を結いながら、230泣いています。231()いてみると、232女学校では先生が、233「髪を二つに分けるよう」と言うのだそうです。234それが嫌いで髪を一束(ひとたば)にして、235二三十本だけチョッピリと結び、236これで二つに見えるか、237といって泣いていたことがあります。
238 兵古帯(へこおび)でも女らしいのは大嫌いで、239()ぐ引きさいて帰る。240下駄も女物だと()ぐ割って来る。241余りのことにある日「黒い三尺帯(さんじゃくおび)でも()めたがよかろう」と冗談を飛ばしますと、242「ほんまかい、243黒い帯をしてもよろしいか」と大変な喜びようで、244早速黒帯をしめました。
245 一事(いちじ)万事(ばんじ)このさまで、246(あそ)(ごと)でもまるきりの男振り、247馬に乗る真似をしてハイヨハイヨハイヨハイヨと飛び廻り、248剣術が好きで毎日お(めん)(どう)の掛け声勇ましい状態です。249もうこれからは自分の思うようになるといって、250黒足袋(くろたび)穿()き、251厚歯(あつば)な下駄に太鼻緒(ふとはなお)をつけて喜んでおりました。
252 ある日のこと「修業をさしてくれ」と言いますから、253何の修業かと聞くと、254「剣術の修業」だと申します。255私はかまわないが教祖さまにお願いしてみよ、256と言いますと「思うようにやらさせてやってくれ」とのことでありました。257これまで直日は教祖さまの(そば)一時(いっとき)も離れたことがなかったのでありますが、258これより名古屋の朝倉さんに依頼して剣術を習うことになったのであります。
259 大本の役員で京都の御召問屋(おめしといや)の主人であった梅田さんから、260(めし)裾模様(すそもよう)のある反物(たんもの)を直日にと買ったので、261一度女らしくして見ようと思い、262「これを着て写真を撮って来れば、263後はズーとどんな着物を着てもよい」と言いましたところ、264喜んで写真を撮りに行きましたが、265後でその写真を見ると、266裾を膝の辺りまでまくし上げ、267片足をグッと前方に伸ばして()るではありませんか。268これは一体何かと聞きますと、269「下駄を写そうと思って」とのこと。270(めし)裾模様(すそもよう)の下には、271棕梠(しゅろ)太緒(ふとお)の大きな下駄がお相撲さんの足かなんぞのように、272でんとうつっているのでした。
273 そのように、274することなすことが余り男ばっていますので、275どうなることかと心配になり、276時々教祖さまに(うかが)いますと「今はこうして()るけれども、277時節が来れば神さまが女らしくして下さいます」と申されるのでした。278それでも私にすれば親心から気をもんだものでありました。
279 しかし、280このように表面(うわべ)豪傑(ごうけつ)の直日も、281真実(まこと)(さが)は優しい(じょう)の深い子でありました。
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