霊界物語.ネット
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幼ながたり
まえがき
幼ながたり
01 父のこと
02 母の生いたち
03 因果応報ばなし
04 石臼と粉引きの意味
05 父の死
06 わたしのこと
07 奉公
08 幼なき姉妹
09 母は栗柄へ
10 母の背
11 屑紙集めと紙漉きのこと
12 清吉兄さん
13 蘿竜の話
14 およね姉さん
15 ひさ子姉さん
16 不思議な道づれ
17 仕組まれている
18 おこと姉さんの幼時
19 王子のくらし
20 ご開祖の帰神
21 霊夢
22 教祖と大槻鹿造
23 牛飼い
24 ねぐら
25 不思議な人
思い出の記
1 料亭づとめ
2 神火
3 天眼通
4 直日のこと
5 夫婦らしい暮しの日
6 尉と姥
獄中記
監房へ
一ぱいの水
青い囚人服
一本の桐の木と蝉
風の中の雀
ぼっかぶりの夫婦
オツルさん
孫の絵便り
獄中の歌
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四 直日のこと
インフォメーション
題名:
4 直日のこと
著者:
出口澄子
ページ:
目次メモ:
概要:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
B124900c32
001
教祖さまが
弥仙山
(
みせんざん
)
におこもり中、
002
このたびは
木
(
こ
)
の
花咲耶姫
(
はなさくやひめ
)
の
御霊
(
みたま
)
の宿られる女の子が産まれると
言伝
(
ことづて
)
がありまして、
003
産まれたのが“
直日
(
なおひ
)
”でした。
004
仰せの通り、
005
まことに変わり者ができたのであります。
006
直日をみごもったのは出雲参りの頃でした。
007
この旅は
往復
(
ゆきき
)
二十日
(
はつか
)
ほどの長旅で、
008
当時汽車はないので
手甲脚絆
(
てっこうきゃはん
)
の
菅笠
(
すげがさ
)
草鞋
(
わらじ
)
ばき、
009
教祖さま、
010
先生(聖師)ともども
同勢
(
どうぜい
)
二十八人ほどの一行でありました。
011
この大宇宙界には
経
(
たて
)
の
厳
(
いづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
御系統
(
ごけいとう
)
と、
012
緯
(
よこ
)
の
瑞
(
みづ
)
の御霊の御系統の二大系統があるのでありますが、
013
出雲参りの帰り道に、
014
弥仙山
(
みせんざん
)
ごもりへとつながる厳の御霊の教祖さまと、
015
瑞の御霊の先生の霊的なたたかいが初まったのであります。
016
と言いましても、
017
四六時中喧嘩をされるというのではありません。
018
神懸
(
かむがか
)
りの時だけであります。
019
先生のことを「このかたは三千世界にかけがえのない方であるから、
020
大事にしてくれ」と神さまは教祖さまに申されておられたのですが、
021
それが教祖さまはてんしょうこうたいじんぐう様、
022
先生はすさのおのみこと様の帰神となりまして、
023
ここにお二人の激しい荒れようとなられたのであります。
024
それで平常のときは、
025
教祖さまは
026
「これではかないません」と神様にお願いされるのですが、
027
028
「なおよ、
029
三千年の因縁ごとであるからもうしばらく
辛棒
(
しんぼう
)
をしてくだされよ」と説き諭すように、
030
また頼むように申されるのが常でありました。
031
先生の場合は、
032
まだ大本へ来られて間のないこととて、
033
先生を押しのけ
後釜
(
あとがま
)
にすわろうとする野心家や、
034
ズバリと見通しのきく先生をけぶたがる
鼻高
(
はなだか
)
や、
035
先生の御用のわからない者など
種々
(
しゅじゅ
)
さまざまで、
036
先生を虐待し仕事の邪魔をして大変な苦難を与えたものであります。
037
厳と瑞との霊的の激しいたたかいにともなって、
038
このころは大本としては大変難しい時代でありました。
039
家に居たたまれない先生は、
040
暇さえあれば教会の門をくぐってキリスト教の研究をしておられました。
041
すると教会の牧師さんは、
042
教祖さまと先生の、
043
たたかいをよそながら見て知っておりますから、
044
045
「別におすみさんがあんたの一生をかけるほどの美人でもなし、
046
おなおさんにもこれというほどの財産もないのだから、
047
何も好きこのんで、
048
親子喧嘩や役員の悪さの中にいないで私の所へ来たらどうですか。
049
私のあとをついでもらいますが」
050
と誘いかけられたそうであります。
051
先生が一を知って十を悟るという
図抜
(
ずぬ
)
けて頭が良いのを見込んで、
052
自分の
後釜
(
あとがま
)
にしようと思われたのでありましょう。
053
ところが先生はキリスト教の奥義をつかんでしまうと、
054
このころから大本も忙がしくなって来たこととて、
055
あまり教会へは行かれなくなりました。
056
私は私で、
057
教祖さま、
058
先生、
059
役員たちの板ばさみで、
060
まことに言うに言われぬ苦労をなめたのであります。
061
そうこうしているうちに、
062
明治三十四年九月、
063
「瑞の御霊の
変性女子
(
へんじょうにょし
)
が
敵対
(
てきた
)
う」と大変怒られ、
064
弥仙山
(
みせんざん
)
という山にこもられました。
065
これが天の岩戸がくれと言われるお
仕組
(
しぐみ
)
であります。
066
弥仙山
(
みせんざん
)
は
開
(
ひら
)
けてから千四百年の間
女人
(
にょにん
)
禁制の
神山
(
しんざん
)
で、
067
あらたかな竜神様の
御住所
(
おすまいどころ
)
とされていました。
068
それで教祖さまは村人には秘密で知人が
神主
(
かんぬし
)
であったのを幸い、
069
お
篭
(
こも
)
りになったのであります。
070
そして
彦火火出見命
(
ひこほほでみのみこと
)
様のお宮に篭って
大望
(
たいもう
)
な御用をされたのであります。
071
丁度そのころ私は五カ月の身重でした。
072
教祖さまのところへ
位田
(
いでん
)
のおすみさん達が御用聞きに時たま行きまして、
073
開祖さまから、
074
075
「この世がすっかり暗闇になって水晶の種がなくなってしまったから、
076
このままでおいたら此の世は泥海になるより
外
(
ほか
)
はない。
077
今度水晶の種を地の高天原に授ける。
078
それは木花咲耶姫命の
御霊
(
みたま
)
である。
079
大本は
代々
(
だいだい
)
女のお
世継
(
よつぎ
)
、
080
末代
(
まつだい
)
女のお
世継
(
よつぎ
)
とする。
081
男を世継にしておくと目的を立てる者が現われて仕組の邪魔をするから、
082
七柱の大神が代るがわる女と生まれて世を持つのである」
083
とおおせられ、
084
085
「このたびの
帯
(
おび
)
の祝いは機嫌よく清らかに祝うてくれるよう。
086
女の子が生まれる。
087
それも、
088
変わりものが出来る」
089
とのことでありました。
090
私はこれを聞いて、
091
神様のお言葉は結構とは思いながらも、
092
全部素直には聞けませんでした。
093
一度は必ず反対したものですが、
094
今度のことも半信半疑でおりますと、
095
明治三十五年旧一月二十八日、
096
予言どおり女の子が生まれました。
097
その子が直日であります。
098
直日が生まれまして初めて
弥仙山
(
みせんざん
)
にお
詣
(
まい
)
りしたのは、
099
四魂
(
しこん
)
揃
(
そろ
)
うたそのお礼詣りであります。
100
日の出の神様は直日であります。
101
すでに
四魂
(
しこん
)
は揃うたのでありますから、
102
取違いのないように願いたいのであります。
103
四本
(
しほん
)
の松が三本になったのは「清吉の肉体はないのである」とのお知らせで、
104
三代直日が清吉の現われであります。
105
それで
四魂
(
しこん
)
の揃うた
御礼
(
おんれい
)
であると言うて、
106
教祖さま、
107
先生、
108
私が直日を抱いて四人がお礼詣りをしたのであります。
109
この日が、
110
「
弥仙山
(
みせんざん
)
が
開
(
ひら
)
けてから千四百四十余年、
111
直日が生まれてから四百四十日目や」、
112
こう言って先生は大変おどろいておられました。
113
私は直日の
種痘
(
しゅとう
)
についてはなかなか苦労したものでした。
114
教祖さまは「この子には決して
疱瘡
(
ほうそう
)
を植えられぬ」と言われます。
115
「そういうわけにはゆきません。
116
私が植えまいと思うても役場が植えさせますがな」と反対するのですが、
117
118
「水晶の
御種
(
おんたね
)
を
貫
(
つらぬ
)
かんならんで、
119
まぜこぜには出来ぬ」と申されるのであります。
120
ところが役場や警察からは
喧
(
やかま
)
しく言うて
来
(
き
)
、
121
板ばさみの私も仕方がなく、
122
どうかして
疱瘡
(
ほうそう
)
を植えさせようと思案しました。
123
私はよく子供を抱いて出歩く
性
(
たち
)
でしたが、
124
疱瘡
(
ほうそう
)
を植えにゆこうとすると、
125
竜体
(
りゅうたい
)
が私や家の周囲を取りまいて、
126
どうしても出ることが出来ないのであります。
127
こういうことを繰り返しては年を積んでゆきました。
128
私が植えに行こうと思うていますと、
129
教祖さまがヒョッコリと出て来られ、
130
131
「おすみや、
132
お前はこの子に
疱瘡
(
ほうそう
)
を植えようと思うて居ってじゃ。
133
神様は、
134
この子に
疱瘡
(
ほうそう
)
を植えたら世界がいったん泥海になると仰せられている。
135
もしそんなことになれば、
136
私は申しわけのために自害をする」と、
137
きつく言われるのが常でありました。
138
こんな調子でありますから、
139
役場から罰金をとられたり、
140
警察へ呼び出されて
叱
(
しか
)
られたこともたびたびありました。
141
ある時など、
142
「お婆さんがどうしても聞かねばお前の家へ大砲を向けるぞ」と警察で脅かされたりしました。
143
帰って教祖さまに申し上げますと、
144
「兵隊なと大砲なと向けるがよい。
145
私のことで言うているのではない、
146
世界のためにいうておるのじゃ。
147
そんなことに恐れるような神ではない」と答えられるのであります。
148
かれこれ七、
149
八年も暮れたでしょうか。
150
学校で役場と相談して
疱瘡
(
ほうそう
)
を植えることになりました時も、
151
いざ植えようとしますと、
152
もう直日の姿は霧のように消えてそこらに居なくなるのであります。
153
教祖さまはいつも直日を抱いて寝ておられまして「
疱瘡
(
ほうそう
)
を植えるでないぞ」と寝ても覚めても言い聞かせておられます。
154
そのためどうしても植えさせませんので、
155
私は腹が痛いから
吉川
(
よしかわ
)
医師
(
せんせい
)
に見てもらうと
詐
(
だま
)
して直日を連れて行き、
156
役場の村上さん立会の上、
157
植えることにしまして「お前が植えなんだらお
祖母
(
ばあ
)
さんも、
158
お父さんもお母さんも皆
縛
(
しば
)
られて
牢
(
ろう
)
へ入れられるんですよ」こういうて植えるよう言いふくめました。
159
そして直日が部屋へ
這入
(
はい
)
ったら
直
(
す
)
ぐに戸を閉めて貰うことにしたのであります。
160
医者が直日に「
疱瘡
(
ほうそう
)
……」とひとこというが早いか、
161
「だました!」と叫ぶとともに、
162
大変な勢いでどうして戸を開けたか眼にも止まらず、
163
飛び出してしまったのであります。
164
私はあわてました。
165
教祖さまに告げられては一大事と
跣足
(
はだし
)
で追いかけます。
166
直日は「だました!おばあちゃんにいうてやる」とわめいて走ります。
167
私は「植えせんで教祖さまにはいうてくれな」と一生懸命かけりました。
168
しかし、
169
とうとう取り
遁
(
に
)
がしてしまいました。
170
教祖さまが怒られると
金色
(
こんじき
)
に輝く玉のような眼をカッと開いて、
171
それはそれは恐ろしいお顔であります。
172
直日に
遁
(
に
)
げられて「もうキット教祖さまに告げているに違いない。
173
教祖さまは大変なご立腹であろう」と、
174
私は恐るおそる教祖さまのお部屋の
襖
(
ふすま
)
をあけてのぞき「よいお天気ですなあ」とそれとはなしに様子を伺って見ますと「よいお天気やな」と大変に機嫌がおよろしい。
175
私はこの時ほどヤレヤレと思ったことはありません。
176
今までは植えようと思うていると、
177
先方で感ずいて叱られたのに、
178
今日に限ってまことによい御機嫌であります。
179
なにげないふりして「直日さんはえ?」と尋ねますと、
180
「
居
(
お
)
らんで、
181
何処
(
どこ
)
へか遊びに行ったんやろう」と答えられました。
182
見ると廊下の隅にむつかしいふくれ
顔
(
がお
)
をした直日がいます。
183
私が小声であやまると「おばあちゃんにいわんけど
誑
(
だま
)
した」とプリプリ怒って居ましたが、
184
ついにそのまま教祖さまには解らずに済みました。
185
しかしこれで事が片付いたのではありません。
186
役場からはしょっちゅう
喧
(
やか
)
ましくいうて来ます。
187
直日は植えさせません。
188
途方に暮れた揚句、
189
五斤
(
ごきん
)
の砂糖を買いまして──そのお金に心配したことは今の十万円のお金を出すよりも当時は苦しみました──吉川さんへ行き「どうぞ植えた事にして貰いたい」とお願いしたのでありますが、
190
それも聞いてもらえず、
191
そこで、
192
「それではお
宅
(
たく
)
へ行って教祖さんに
得心
(
とくしん
)
の行くように話をしてあげます」と出て来られたのであります。
193
教祖さまは
穏
(
おだや
)
かに神様のお言葉を伝えて、
194
どうしても植えられぬ旨を述べられたのであります。
195
吉川さんもキリスト教の信者ですから、
196
その信仰の強いのに感心し、
197
「実は
疱瘡
(
ほうそう
)
というものは外国の牛の
たね
を持って来て植えるものですから、
198
汚
(
けが
)
れるとおっしゃるのももっともです。
199
それでは機械も
凡
(
すべ
)
て清めて、
200
形
(
かた
)
ばかりの
種痘
(
しゅとう
)
をいたしますから」。
201
そこで教祖さまの血をもって直日の足に真似だけの
種痘
(
しゅとう
)
を施されたのであります。
202
教祖さまは直日の傷口を塩で念を入れ念を入れて清められたのは申すまでもないことであります。
203
今では跡かたも残ってないそうです。
204
直日の幼い時はまことに物言わずで
何時
(
いつ
)
もふくれた子でありましたが、
205
一度だけ人を笑わしたことがあります。
206
私が
寺小
(
てらこ
)
(下駄屋)へ連れて行きましたら、
207
其処
(
そこ
)
にある
高下駄
(
たかげた
)
の
先掛
(
さきが
)
けを見て
冠
(
かんむり
)
と間違え「オッチャン、
208
ウチのお父ちゃん、
209
神
(
かみ
)
ちゃんの前で、
210
それ頭へのせて、
211
神
(
かみ
)
ちゃん
拝
(
おが
)
んでやで」と申したものですから、
212
一同大笑いで「直日さんがものを言うた」と不思議がったほどでありました。
213
直日が小学校に上がるころの大本はまことに
貧窮
(
ひんきゅう
)
な時代で、
214
私は内職の
麦稈
(
むぎわら
)
帽子のウズを作ったりして居りました。
215
それでも親心で、
216
また何んといっても初めての子の入学でしたから、
217
着物を新調して初登校を飾ろうとしましたところが、
218
「こんな赤い
ベベ
はいや」と言ってどうしても着ようとしません。
219
男の子のような娘とは知りながらも、
220
折角のこととて私はえろう怒ったことがありました。
221
学校は嫌いらしく、
222
ただ国語と歴史の時間だけ眼の色が光ったということであります。
223
六年を卒業しましたので女学校に入れようとしますと、
224
教祖さまは反対で、
225
直日も、
226
「神さまは何もない
処
(
ところ
)
から造られたのだから、
227
私も勝手に覚える」といってなかなか聞きません。
228
それでも入学はしました。
229
ある日髪を結いながら、
230
泣いています。
231
訊
(
き
)
いてみると、
232
女学校では先生が、
233
「髪を二つに分けるよう」と言うのだそうです。
234
それが嫌いで髪を
一束
(
ひとたば
)
にして、
235
二三十本だけチョッピリと結び、
236
これで二つに見えるか、
237
といって泣いていたことがあります。
238
兵古帯
(
へこおび
)
でも女らしいのは大嫌いで、
239
直
(
す
)
ぐ引きさいて帰る。
240
下駄も女物だと
直
(
す
)
ぐ割って来る。
241
余りのことにある日「黒い
三尺帯
(
さんじゃくおび
)
でも
締
(
し
)
めたがよかろう」と冗談を飛ばしますと、
242
「ほんまかい、
243
黒い帯をしてもよろしいか」と大変な喜びようで、
244
早速黒帯をしめました。
245
一事
(
いちじ
)
が
万事
(
ばんじ
)
このさまで、
246
遊
(
あそ
)
び
事
(
ごと
)
でもまるきりの男振り、
247
馬に乗る真似をしてハイヨハイヨハイヨハイヨと飛び廻り、
248
剣術が好きで毎日お
面
(
めん
)
お
胴
(
どう
)
の掛け声勇ましい状態です。
249
もうこれからは自分の思うようになるといって、
250
黒足袋
(
くろたび
)
を
穿
(
は
)
き、
251
厚歯
(
あつば
)
な下駄に
太鼻緒
(
ふとはなお
)
をつけて喜んでおりました。
252
ある日のこと「修業をさしてくれ」と言いますから、
253
何の修業かと聞くと、
254
「剣術の修業」だと申します。
255
私はかまわないが教祖さまにお願いしてみよ、
256
と言いますと「思うようにやらさせてやってくれ」とのことでありました。
257
これまで直日は教祖さまの
側
(
そば
)
を
一時
(
いっとき
)
も離れたことがなかったのでありますが、
258
これより名古屋の朝倉さんに依頼して剣術を習うことになったのであります。
259
大本の役員で京都の
御召問屋
(
おめしといや
)
の主人であった梅田さんから、
260
お
召
(
めし
)
の
裾模様
(
すそもよう
)
のある
反物
(
たんもの
)
を直日にと買ったので、
261
一度女らしくして見ようと思い、
262
「これを着て写真を撮って来れば、
263
後はズーとどんな着物を着てもよい」と言いましたところ、
264
喜んで写真を撮りに行きましたが、
265
後でその写真を見ると、
266
裾を膝の辺りまでまくし上げ、
267
片足をグッと前方に伸ばして
居
(
い
)
るではありませんか。
268
これは一体何かと聞きますと、
269
「下駄を写そうと思って」とのこと。
270
お
召
(
めし
)
の
裾模様
(
すそもよう
)
の下には、
271
棕梠
(
しゅろ
)
の
太緒
(
ふとお
)
の大きな下駄がお相撲さんの足かなんぞのように、
272
でん
とうつっているのでした。
273
そのように、
274
することなすことが余り男ばっていますので、
275
どうなることかと心配になり、
276
時々教祖さまに
伺
(
うかが
)
いますと「今はこうして
居
(
い
)
るけれども、
277
時節が来れば神さまが女らしくして下さいます」と申されるのでした。
278
それでも私にすれば親心から気をもんだものでありました。
279
しかし、
280
このように
表面
(
うわべ
)
は
豪傑
(
ごうけつ
)
の直日も、
281
真実
(
まこと
)
の
性
(
さが
)
は優しい
情
(
じょう
)
の深い子でありました。
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