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幼ながたり
まえがき
幼ながたり
01 父のこと
02 母の生いたち
03 因果応報ばなし
04 石臼と粉引きの意味
05 父の死
06 わたしのこと
07 奉公
08 幼なき姉妹
09 母は栗柄へ
10 母の背
11 屑紙集めと紙漉きのこと
12 清吉兄さん
13 蘿竜の話
14 およね姉さん
15 ひさ子姉さん
16 不思議な道づれ
17 仕組まれている
18 おこと姉さんの幼時
19 王子のくらし
20 ご開祖の帰神
21 霊夢
22 教祖と大槻鹿造
23 牛飼い
24 ねぐら
25 不思議な人
思い出の記
1 料亭づとめ
2 神火
3 天眼通
4 直日のこと
5 夫婦らしい暮しの日
6 尉と姥
獄中記
監房へ
一ぱいの水
青い囚人服
一本の桐の木と蝉
風の中の雀
ぼっかぶりの夫婦
オツルさん
孫の絵便り
獄中の歌
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二四 ねぐら
インフォメーション
題名:
24 ねぐら
著者:
出口澄子
ページ:
目次メモ:
概要:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
B124900c26
001
十六になって私にも帰ってゆく家が出来ました。
002
教祖さまにお蔭をいただいた人達の手で倉を手入れした、
003
ささやかなお住まいが出来ていました。
004
家がなくなったのは確か九ツの時でありますから、
005
七年もの間、
006
私達母子が一緒に暮らすことはなかったわけです。
007
私は教祖さまと、
008
このままズッと一緒に暮らせたら、
009
どんなに幸せだろうと、
010
どれほど念じたかわかりません。
011
しかし私の
私市
(
きさいち
)
での
患
(
わずら
)
いもあっけなく
癒
(
なお
)
り、
012
再び奉公先に帰って行きました。
013
すると、
014
今度はへンナイという病気をわずらい、
015
また綾部に帰って来ました。
016
そしてこの時は西町の鹿造のところで治療しました。
017
病がいえて、
018
もう一度
私市
(
きさいち
)
で働きました、
019
その
間
(
あいだ
)
、
020
私市
(
きさいち
)
でこんなことがありました。
021
私は昼間の労働につかれ果て、
022
灯
(
ひ
)
のない真っ暗な部屋で、
023
グッスリ寝込んでいました。
024
ふと、
025
人の気配を感じて眼をさましますと、
026
驚いたことには、
027
枕元にうずくまってる人がいます。
028
何か私を、
029
うかがっている様子です。
030
私は大声で怒鳴りつけ、
031
その男をひどい勢いで、
032
なぐり倒してやりました。
033
男はぎょう天して、
034
腰でも抜かしたのか、
035
足が立たなくなったのか、
036
ごそごそと這いながら逃げてゆきました。
037
これは、
038
一緒に働いている、
039
男衆
(
おとこしゅう
)
のリキさんという人でした。
040
リキさんは平素は
極
(
ご
)
く真面目な働きものでありまして、
041
とてもそんなことをするような人柄には思われませんので意外に思っていましたが、
042
当時、
043
丹波には
夜這
(
よば
)
いという悪習があたりまえのことのように行われたらしいです。
044
山へ草刈りに行っておりますと、
045
村の若い者が、
046
やって来て、
047
048
「ワシが草を刈ってやるからワシのいうことを聞いてくれ」というのですが「何いうとるのやろ」と思っていただけでした。
049
夜になりますと、
050
村の若い者が五、
051
六人毎晩のように、
052
私の家の前にやって来て、
053
何だか唄ったりオカシナ声を出して、
054
おそくまで騒いでいました。
055
それもなんのことか分からずにおりましたが。
056
私市
(
きさいち
)
からすっかり暇をもらい帰って来たのは、
057
たしか十七の時でした。
058
それからの私は頼まれるままに、
059
西町で髪結いをしていた、
060
おしもさんの手伝いや、
061
綾部から二里程ある
大原
(
おおはら
)
でお茶よりの仕事というように、
062
あちらの家、
063
こちらの家へ、
064
四、
065
五日のちょっとした手伝いから、
066
二、
067
三カ月から半年ぐらいずつ、
068
年期奉公でなく、
069
割りに気軽く手伝いに廻っておりました。
070
その頃、
071
教祖さまは
裏町
(
うらまち
)
の倉の家におられました。
072
私が手伝いに行ってる先から時々帰って来たおりなど、
073
教祖さまはよく、
074
金神様を祀られた御神前に向かい、
075
076
「神様、
077
あなた様は、
078
私に“その
方
(
ほう
)
の力になる者は、
079
神が用意している”と、
080
おっしゃります故、
081
そのかたがみえる時まで、
082
あなた様と二人で
此処
(
ここ
)
に、
083
こうしておりましょう」
084
といって、
085
神様と問答されていたり、
086
あるいはせっせと、
087
お筆先を書いたりしておられました。
088
そうしておられるうちに、
089
この
裏町
(
うらまち
)
の倉にお
祀
(
まつ
)
りしてある金神様にお参りに来る人が、
090
ボツボツと出来て来たようです。
091
私のおぼえている人達でも、
092
位田
(
いでん
)
からは、
093
おすみさんに、
094
田中
善一郎
(
ぜんいちろう
)
、
095
村上
清次郎
(
せいじろう
)
、
096
西原
(
にしばら
)
からは、
097
文衛門
(
ぶんえもん
)
に
西原
(
にしはら
)
正太郎
(
しょうたろう
)
、
098
鷹
(
たか
)
ノ
栖
(
す
)
からは、
099
四方
(
しかた
)
平蔵
(
へいぞう
)
、
100
祐助
(
ゆうすけ
)
、
101
与平次
(
よへいじ
)
、
102
上谷
(
うえたに
)
からは
四方
(
しかた
)
春一
(
はるいち
)
、
103
喜久衛門
(
きくえもん
)
、
104
おくまさん、
105
村の名は忘れましたが
弥仙山
(
みせんざん
)
に参る道筋に当る方角から
木下
(
きのした
)
慶太郎
(
けいたろう
)
、
106
地元の綾部の人では中村
竹蔵
(
たけぞう
)
、
107
塩見
(
しおみ
)
じゅん、
108
という人達がお参りに来ていました。
109
中でも木下慶太郎という人は、
110
教祖さまが
殊
(
こと
)
の
外
(
ほか
)
お気に入りで、
111
後におりょうさんのお
婿
(
むこ
)
さんになり、
112
出口姓を名乗りました。
113
一方
新宮
(
しんぐう
)
の金光教の大広間は、
114
信者が寄らなくなり、
115
とうとう一人もなくなって、
116
足立さんは暮らしにも困りだし、
117
弱々しげにときどき教祖さまのところに無心に来ていました。
118
そのたびに教祖さまは
快
(
こころ
)
よくお米とか小遣いをあげておられたものでした。
119
神様のお気に入らず別れられた人でありますが、
120
教祖さまが世話をしてあげられねば、
121
誰もしてくれる人とてなかったものですから、
122
可哀想に思われたのであります。
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