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幼ながたり
まえがき
幼ながたり
01 父のこと
02 母の生いたち
03 因果応報ばなし
04 石臼と粉引きの意味
05 父の死
06 わたしのこと
07 奉公
08 幼なき姉妹
09 母は栗柄へ
10 母の背
11 屑紙集めと紙漉きのこと
12 清吉兄さん
13 蘿竜の話
14 およね姉さん
15 ひさ子姉さん
16 不思議な道づれ
17 仕組まれている
18 おこと姉さんの幼時
19 王子のくらし
20 ご開祖の帰神
21 霊夢
22 教祖と大槻鹿造
23 牛飼い
24 ねぐら
25 不思議な人
思い出の記
1 料亭づとめ
2 神火
3 天眼通
4 直日のこと
5 夫婦らしい暮しの日
6 尉と姥
獄中記
監房へ
一ぱいの水
青い囚人服
一本の桐の木と蝉
風の中の雀
ぼっかぶりの夫婦
オツルさん
孫の絵便り
獄中の歌
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幼ながたり
> 14 およね姉さん
<<< 13 蘿竜の話
(B)
(N)
15 ひさ子姉さん >>>
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一四 およね姉さん
インフォメーション
題名:
14 およね姉さん
著者:
出口澄子
ページ:
目次メモ:
概要:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
B124900c16
001
およね姉さんは教祖さまの長女として生まれました。
002
生まれてから死ぬるまで、
003
この姉も一生涯ひどい
行
(
ぎょう
)
がつづきました。
004
およね姉さんは七つのころから
餅
(
もち
)
まぜをしていたそうです。
005
これは貧しかった私の家では手伝いのため餅まぜをして働いたのです。
006
私の七つのときには、
007
もう
餅饅頭
(
もちまんじゅう
)
作りはやめていましたので、
008
私は餅まぜをしたおぼえはないのですが、
009
およね姉さんは七つになると餅まぜをしていて、
010
そのころ綾部の人びとは「
新宮
(
しんぐう
)
の
饅頭屋
(
まんじゅうや
)
では七つの子が餅まぜしてる」と言うて評判にしたそうです。
011
およね姉さんは小さい時からよく働いた人で、
012
気立ても優しい人でした。
013
十八のころ姉さんは
角力士
(
すもうとり
)
で“
宮絹
(
みやぎぬ
)
”という人に思いをかけられました。
014
教祖さまも「
宮絹
(
みやぎぬ
)
ならおよねを嫁にやってもよい」と言ってられたくらいで、
015
大
(
おお
)
うち
屋
(
や
)
という店に務めて真面目に働いていましたが、
016
もう一人
横恋慕
(
よこれんぼ
)
をしている者がありました。
017
それは
侠客
(
きょうかく
)
の大槻鹿造でした。
018
この男がまたおよね姉さんに横恋慕して、
019
宮絹との縁談のぶちこわしにかかりました。
020
鹿造は大へんな親不孝者で、
021
母親は鹿造のならずものを苦にして自殺したそうですが、
022
十四のころ伏見の辺りで茶もみ奉公をしているうち、
023
そこで
やくざ
になり、
024
背中一面に弁財天女の入れ墨をして綾部にかえった者です。
025
およね姉さんも
宮絹
(
みやぎぬ
)
が好きになっていましたが、
026
鹿造がうるさいので、
027
綾部の
広小路
(
ひろこうじ
)
の
与喜
(
よき
)
さんというところへ嫁入りしました。
028
これはお父さんの弟で
捨薮
(
すてやぶ
)
に居られた叔父さんの仲人でした。
029
およね姉さんが広小路に嫁入りをしたことを知った鹿造は、
030
力づくでおよね姉さんを連れだし、
031
どこかにかくしてしまいました。
032
世間の評判も七十五日で、
033
ほとぼりもさめた一年後、
034
鹿造はおよね姉さんを自分のものにして、
035
西町
(
にしまち
)
で
今盛屋
(
いいもりや
)
という屋号を上げたのです。
036
明治の初めころは、
037
綾部でも男女の間のこういうことが、
038
当たり前のことのように思われていましたが、
039
教祖さまは
頑
(
がん
)
として、
040
これをお許しになりませんでした。
041
そしておよね姉さんの気の弱いところをなげかれていました。
042
そのころは父も生きており、
043
父は父で「鹿造のような
博奕打
(
ばくちうち
)
と一緒になって俺んとこの
暖簾
(
のれん
)
に
疵
(
きず
)
をつけた」と言って大そう機嫌を悪くしてしまいました。
044
およね姉さんは、
045
教祖さまや父が、
046
自分のことをどう思っているかということは感じていたので、
047
三年ほどは出口家によりつかず、
048
内心何となく心落付かず淋しく気にしていたようです。
049
私やおりょうさんと街ででも逢うと
飴玉
(
あめだま
)
や
煎餅
(
せんべい
)
を
掌
(
て
)
の上にのせてくれ、
050
「父さん母さん、
051
どうしてる」と言って家のことをくわしく聞きました。
052
私はそのたんび、
053
子供心におよね姉さんを気の毒に思いました。
054
三年たったある秋の朝、
055
およね姉さんは裏口からしのびよるように家にかえってきました。
056
障子がたててある縁先に坐ったまま部屋の中にはよう
入
(
はい
)
りもせず、
057
しばらくいましたそうです。
058
お父さんが仕事にゆく前の
朝餉
(
あさげ
)
をとっているのを聞きながら、
059
お父さんが表に立つのを待って、
060
そっと障子を細目にあけ、
061
持ってきた土産の饅頭をさし入れると、
062
畳のところに上がりもせず小声で「お母さん!これ食べて下さい」と言ったまま黙っていましたが、
063
教祖さまが気づかずにおられますと、
064
しばらくしてまた障子をもとのようにたてて帰ってゆきました。
065
後でおよね姉さんがきたことが分かったとき、
066
父が「なにっ、
067
よねがきた」いきまくのを、
068
教祖さまは
哀
(
かな
)
しそうな顔をして
面
(
おもて
)
をくもらせておられました。
069
そうしてハラハラしながら、
070
「お父さん、
071
よねのことは私のしつけが悪いのですから、
072
よねはかわいそうな子やと思うてやって下さい」と申しておられました。
073
出口の家が貧しくなるにつれて、
074
およね姉さんの家は「
今日
(
こんにち
)
で綾部一の金持ちは西町の
今盛屋
(
いいもりや
)
じゃろ」と町の人々に言われるくらいになっていましたが、
075
およね姉さんは教祖さまがその日の暮しにも困っていられるのをみることなく、
076
因縁ごとと言うものは不思議なことであります。
077
およね姉さんの肉体に、
078
竜宮の乙姫とも言われている神さまの、
079
いちばんみぐるしいメグリの深いときのミタマがかかり、
080
それに、
081
この世をみだした神が大勢の
眷族
(
けんぞく
)
(狐)をつれて
這入
(
はい
)
ってきたのであります。
082
およね姉さんはそれからも時どき家に帰ってきましたが、
083
教祖さまにつらく当たるようになり、
084
教祖さまの
難渋
(
なんじゅう
)
をよそに、
085
目ぼしいものがあると
提
(
さ
)
げて帰り、
086
見廻して何もないときは教祖さまの作られた饅頭をつぶして帰るということがありまして、
087
だんだんと
憑霊
(
みたま
)
の性来がはっきりとでてきました。
088
教祖さまは、
089
「およねもうちに居たころは穏やかなよい子であったが、
090
鹿造のところにいってから手荒い子になってしもうた」といって歎かれました。
091
およね姉さんは姿よしの美人で、
092
ことわけて後ろ姿の立ち姿がきれいで、
093
侠客などが見ると、
094
ぞっとするように引きつけられたと言うことです。
095
宮絹
(
みやぎぬ
)
はどうしてもおよね姉さんを思い切ることができず、
096
鹿造の留守に、
097
およね姉さんを誘い出しました。
098
およね姉さんも
宮絹
(
みやぎぬ
)
は初恋の人でもあり、
099
会ってみると心を動かされたのでしょう、
100
今盛屋
(
いいもりや
)
をぬけだし、
101
宮絹
(
みやぎぬ
)
といっしょに京に
上
(
のぼ
)
る決心をしました。
102
二人は三ノ宮までゆき、
103
そこの宿で休んでいると、
104
鹿造の子分が追いかけてきて、
105
およね姉さんはまた西町につれもどされました。
106
宮絹という男は、
107
体は大きかったが度胸のない男だったのでしょう。
108
それだけ姉さんが好きなのに体をはってまでおよね姉さんを自分の女房にすることができなかったのです。
109
それから福知山の自分の家にすごすごと帰ったそうですが、
110
およね姉さんのことを思い思い、
111
とうとう病の床にねつきました。
112
宮絹
(
みやぎぬ
)
の病いがだんだんに重くなり、
113
もういよいよ
危
(
あやふ
)
いという日、
114
宮絹の弟子がこっそり西町の
小料亭
(
こりょうてい
)
にきて、
115
およね姉さんに耳うちして、
116
宮絹
(
みやぎぬ
)
に今一度だけ会ってやってもらえんかとたのみました。
117
およね姉さんは鹿造にかくれて福知山の
宮絹
(
みやぎぬ
)
を見舞いにゆきました。
118
宮絹
(
みやぎぬ
)
の家にゆき障子を明けて、
119
宮絹
(
みやぎぬ
)
の
臥
(
ね
)
ているそばによられると、
120
宮絹
(
みやぎぬ
)
はうれしげにニッコリと笑い、
121
そのまま他界したということです。
122
宮絹
(
みやぎぬ
)
が死んでから、
123
宮絹
(
みやぎぬ
)
の霊がおよね姉さんの体に
這入
(
はい
)
りこみ、
124
およね姉さんが死ぬまで離れなかったと聞いています。
125
私が子供のころ、
126
およね姉さんのところへ遊びにゆきますと、
127
およね姉さんが「おすみちゃんや、
128
これ見い」と言うて、
129
自分の
腕
(
かいな
)
を出して、
130
見せてくれました。
131
腕
(
かいな
)
の中に玉ころのようなものがごろごろしていました。
132
私が見るとその玉ころのようなものが、
133
アッチャ、
134
コッチャへ走り廻っていました。
135
およね姉さんはその玉ころにむかって「わしの体においてやるから遠慮するな」と言いきかせていました。
136
そうして私に「これが
宮絹
(
みやぎぬ
)
の霊やで」と言っていましたが、
137
子供ごころにも気味悪いものでした。
138
そうこうしているうちに、
139
およね姉さんは
神憑
(
かんがか
)
りになりました。
140
およね姉さんの
神憑
(
かんがか
)
りはおよね姉さんの三十七才の時、
141
明治二十四年でありました。
142
この明治二十四年に
何鹿郡
(
いかるがぐん
)
だけで二十七、
143
八人の気狂いができたと言うことです。
144
その中でも西町のおよね姉さんの
神憑
(
かんがか
)
りが一番はげしかったのです。
145
明治二十四年十二月二十八日、
146
大槻鹿造の家では暮の
餅搗
(
もちつ
)
きをしていました。
147
鹿造はその日、
148
四斗
(
よんと
)
五升
(
ごしょう
)
の餅を
搗
(
つ
)
いて、
149
その水取りをおよね姉さんがしたそうです。
150
その時から気が逆上し初め、
151
鹿造に時々おかしなことを言って驚かしたと言います。
152
その日からだんだん気が荒々しくなり、
153
店の
間
(
ま
)
の大火鉢は引っくりかえす、
154
料理業の道具類は手当たり次第に投げちらかす、
155
そのたんびに大声でわめくので、
156
綾部中の評判になり、
157
「西町の
今盛屋
(
いいもりや
)
の
妻君
(
さいくん
)
は、
158
綾部一の金持ちになったと思うたら、
159
気狂いになった」とおよね姉さんの狂乱ぶりを見にくる人で、
160
一時は押すな押すなと西町の鹿造の家の廻りは混みあったほどです。
161
鹿造の子分が大勢かかっておよね姉さんの乱暴をとり鎮めようと
腕
(
うで
)
を握り、
162
足にすがりましても
神憑
(
かんがか
)
りのおよね姉さんの力に
撥
(
は
)
ねつけられ、
163
転んだり、
164
倒されたりして手に合いませんでした。
165
とうとう業を煮やした鹿造は「こいつは始末が悪い、
166
白木綿
(
しろもめん
)
を
二反
(
にたん
)
買
(
こ
)
うて来い」と若い子分に言いつけ、
167
白木綿
(
しろもめん
)
で遠巻きにおよね姉さんをグルグルと巻きつけてしまいました。
168
こんな騒動のため鹿造は商売も続けることができず、
169
およね姉さんをつれ妙見さんやお稲荷さんへ
加持
(
かじ
)
祈祷
(
きとう
)
をしてもらいに行ったり、
170
一しょに篭ったりしましたが、
171
効目
(
ききめ
)
がなく、
172
さしもに繁盛した
今盛屋
(
いいもりや
)
も傾いてゆきました。
173
お筆先にもありますように、
174
およね姉さんの
神憑
(
かんがか
)
りもすべて神様がなさっていたことで、
175
これは大槻鹿造の
霊
(
みたま
)
を改心さすためになされたのであります。
176
この大槻鹿造は地球上の一つの精神の型であり、
177
ある
大国
(
たいこく
)
の型であり、
178
悪のミタマがうつっていたのであります。
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(B)
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幼ながたり
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『
王仁文庫 第六篇 たまの礎(裏の神諭)
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飯塚弘明著『
PTC2 出口王仁三郎の霊界物語で透見する世界現象 T之巻
』発刊!
5/8
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霊界物語ネットに出口王仁三郎の
第六歌集『霧の海』
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