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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第38巻(丑の巻)
序歌
総説
第1篇 千万無量
第1章 道すがら
第2章 吉崎仙人
第3章 帰郷
第4章 誤親切
第5章 三人組
第6章 曲の猛
第7章 火事蚊
第2篇 光風霽月
第8章 三ツ巴
第9章 稍安定
第10章 思ひ出(一)
第11章 思ひ出(二)
第12章 思ひ出(三)
第3篇 冒険神験
第13章 冠島
第14章 沓島
第15章 怒濤
第16章 禁猟区
第17章 旅装
第4篇 霊火山妖
第18章 鞍馬山(一)
第19章 鞍馬山(二)
第20章 元伊勢
第5篇 正信妄信
第21章 凄い権幕
第22章 難症
第23章 狐狸狐狸
第24章 呪の釘
第25章 雑草
第26章 日の出
第27章 仇箒
第28章 金明水
余白歌
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霊界物語
>
舎身活躍(第37~48巻)
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第38巻(丑の巻)
> 第1篇 千万無量 > 第7章 火事蚊
<<< 曲の猛
(B)
(N)
三ツ巴 >>>
第七章
火事蚊
(
くわじか
)
〔一〇四四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第38巻 舎身活躍 丑の巻
篇:
第1篇 千万無量
よみ(新仮名遣い):
せんまんむりょう
章:
第7章 火事蚊
よみ(新仮名遣い):
かじか
通し章番号:
1044
口述日:
1922(大正11)年10月15日(旧08月25日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年4月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
このころの大本初期の神がかりは実に乱雑極まるものであった。その上邪神のたくらみで、審神者もしばしば危険に陥ることがあり、到底筆舌に尽くせる状況ではなかったが、今日の研究者のために書き表しておくものとする。
福島寅之助らの邪神の神がかりは激しく、教祖様や喜楽を忌避して奥の間にこもり、別派のごとき様相を呈していた。あまりの狂態に、忍耐強い教祖様もついに箒で福島を掃きだし、叱りつけるほどであった。
しかし福島は大音声で教祖様や自分を怒鳴り散らす有様であった。福島の邪神の言を信じきった大勢の信者たちは、福島の後を追って上谷の修行場に行ってしまった。
後には大広間に、教祖様と自分と出口澄子が残された。自分は教祖様の命によって上谷に福島たち一行を追いかけて行った。すると、一行は福島について不動山に登って行ったという。後に残っていた黒田清子に狐がついて妄言を吐いていたので、審神するとコンコンと鳴きながら不動山に行ってしまった。
自分は不動山に登って一同の様子を陰に隠れて見ていた。神がかりになった四方春蔵や黒田清子が教祖様や自分の悪口を言い、早く改心させねば、と言っている。そして夕暮れの瓦屋の竈の煙を指して、神罰のために綾部の大広間を焼いた、上田はやけどをしながら火消しにかかっている、などと出鱈目を言う。
信者たちは、神がかりの福島に赦しを乞うている。そこで喜楽は、藪の中から怒鳴りつけ、福島たちの言動がまったくの偽りであることを説諭した。一同は綾部にいると思っていた自分が突然現れたので驚き混乱し、ほうほうの体で山を下りてきた。
喜楽は福島たちの神がかりがまったくの虚言であったことを暴き立てたので、信者たちも目を覚ますであろうと一人綾部に帰ってきた。しかし相変わらず邪神の言に惑わされて、足立氏、四方春蔵氏、中村竹蔵氏の三人を、喜楽追放の全権大使として綾部に送り込んできたのであった。
審神者は骨が折れるもので、正神界の神からはたいへんに愛されるが、これに反して邪神界の神からは忌み嫌われ、陰に陽に排斥されるものである。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-11-02 13:40:25
OBC :
rm3807
愛善世界社版:
65頁
八幡書店版:
第7輯 181頁
修補版:
校定版:
65頁
普及版:
32頁
初版:
ページ備考:
001
人
(
ひと
)
盛
(
さかん
)
なれば
天
(
てん
)
に
勝
(
か
)
ち、
002
天
(
てん
)
定
(
さだ
)
まつて
人
(
ひと
)
を
制
(
せい
)
すとかや、
003
喜楽
(
きらく
)
は
一身
(
いつしん
)
一家
(
いつか
)
を
抛
(
なげう
)
つて、
004
審神者
(
さには
)
の
奉仕
(
ほうし
)
に
全力
(
ぜんりよく
)
を
尽
(
つく
)
すと
雖
(
いへど
)
も、
005
何
(
なに
)
を
云
(
い
)
つても
廿余
(
にじふよ
)
名
(
めい
)
の、
006
元
(
もと
)
より
常識
(
じやうしき
)
の
欠
(
か
)
けた
人物
(
じんぶつ
)
の
修行者
(
しうぎやうしや
)
が
発動
(
はつどう
)
したこととて、
007
どうにも
斯
(
か
)
うにも
鎮定
(
ちんてい
)
の
方法
(
はうはふ
)
がつかない。
008
正邪
(
せいじや
)
理非
(
りひ
)
の
分別
(
ふんべつ
)
もなく、
009
金光
(
こんくわう
)
教会
(
けうくわい
)
の
旧信者
(
きうしんじや
)
計
(
ばか
)
りで、
010
迷信
(
めいしん
)
と
盲信
(
まうしん
)
との
凝結
(
ぎようけつ
)
であるから、
011
到底
(
たうてい
)
審神者
(
さには
)
の
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は
聞入
(
ききい
)
れないのである。
012
又
(
また
)
神懸
(
かむがかり
)
といふ
者
(
もの
)
は
妙
(
めう
)
なもので、
013
金光教
(
こんくわうけう
)
の
信者
(
しんじや
)
が
修行
(
しうぎやう
)
すれば
金光教
(
こんくわうけう
)
の
神
(
かみ
)
が
憑
(
うつ
)
つて
来
(
く
)
る。
014
どれもこれも
皆
(
みな
)
金神
(
こんじん
)
と
称
(
とな
)
へる。
015
天理教
(
てんりけう
)
の
信者
(
しんじや
)
が
修行
(
しうぎやう
)
すれば、
016
十柱
(
とはしら
)
の
神
(
かみ
)
の
名
(
な
)
を
名告
(
なの
)
つて
現
(
あら
)
はれる。
017
妙霊
(
めうれい
)
教会
(
けうくわい
)
の
信者
(
しんじや
)
が
修行
(
しうぎやう
)
すれば、
018
又
(
また
)
妙霊
(
めうれい
)
教会
(
けうくわい
)
の
奉斎神
(
ほうさいしん
)
の
名
(
な
)
を
名告
(
なの
)
つて
現
(
あら
)
はれて
来
(
く
)
る。
019
其
(
その
)
外
(
ほか
)
宗旨
(
しうし
)
々々
(
しうし
)
で
奉斎
(
ほうさい
)
主神
(
しゆしん
)
の
神
(
かみ
)
や
仏
(
ぶつ
)
の
名
(
な
)
を
名告
(
なの
)
つて、
020
いろいろの
霊
(
れい
)
が
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
るものである。
021
上谷
(
うへだに
)
の
修行場
(
しうぎやうば
)
では
金光教
(
こんくわうけう
)
の
信者
(
しんじや
)
計
(
ばか
)
りであつたから、
022
牛人
(
うしうど
)
の
金神
(
こんじん
)
だとか、
023
巽
(
たつみ
)
の
金神
(
こんじん
)
、
024
天地
(
てんち
)
の
金神
(
こんじん
)
、
025
土戸
(
つちど
)
の
金神
(
こんじん
)
、
026
射析
(
いさく
)
の
金神
(
こんじん
)
などと、
027
何
(
いづ
)
れも
金神
(
こんじん
)
の
名
(
な
)
を
名告
(
なの
)
るのであつた。
028
又
(
また
)
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
だとか、
029
其
(
その
)
他
(
た
)
の
竜神
(
りうじん
)
の
名
(
な
)
を
以
(
もつ
)
て
現
(
あら
)
はれる
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
も
沢山
(
たくさん
)
なものであつた。
030
今日
(
こんにち
)
の
大本
(
おほもと
)
へ
修行
(
しうぎやう
)
に
来
(
く
)
る
人間
(
にんげん
)
は、
031
大部分
(
だいぶぶん
)
中等
(
ちうとう
)
や
高等
(
かうとう
)
の
教育
(
けういく
)
を
受
(
う
)
けた
人
(
ひと
)
が
多
(
おほ
)
いから、
032
此
(
この
)
時
(
とき
)
のやうな
余
(
あま
)
り
脱線
(
だつせん
)
的
(
てき
)
低級
(
ていきふ
)
な
霊
(
れい
)
は
憑
(
かか
)
つて
来
(
こ
)
ない。
033
が
大本
(
おほもと
)
の
最初
(
さいしよ
)
、
034
即
(
すなは
)
ち
明治
(
めいぢ
)
卅二
(
さんじふに
)
年
(
ねん
)
頃
(
ごろ
)
の
神懸
(
かむがかり
)
といつたら、
035
実
(
じつ
)
に
乱雑
(
らんざつ
)
極
(
きは
)
まつたもので、
036
丸
(
まる
)
で
癲狂院
(
てんきやうゐん
)
其
(
その
)
儘
(
まま
)
の
状態
(
じやうたい
)
であつた。
037
其
(
その
)
上
(
うへ
)
邪神
(
じやしん
)
の
奸計
(
たくみ
)
で、
038
審神者
(
さには
)
たる
者
(
もの
)
は
屡
(
しばしば
)
危険
(
きけん
)
の
地位
(
ちゐ
)
に
陥
(
おちい
)
る
事
(
こと
)
があつて、
039
到底
(
たうてい
)
筆
(
ふで
)
や
口
(
くち
)
で
尽
(
つく
)
せるやうな
事
(
こと
)
ではなかつた。
040
幽界
(
いうかい
)
の
事情
(
じじやう
)
を
少
(
すこ
)
しも
知
(
し
)
らない
人々
(
ひとびと
)
が
此
(
この
)
物語
(
ものがたり
)
を
読
(
よ
)
んでも、
041
到底
(
たうてい
)
信
(
しん
)
じられない
様
(
やう
)
な
事
(
こと
)
許
(
ばか
)
りであるが、
042
それでも
事実
(
じじつ
)
は
事実
(
じじつ
)
として
現
(
あら
)
はして
置
(
お
)
かねば、
043
今後
(
こんご
)
の
斯道
(
しだう
)
研究者
(
けんきうしや
)
の
参考
(
さんかう
)
にならぬから、
044
有
(
あ
)
りし
儘
(
まま
)
を
包
(
つつ
)
まず
隠
(
かく
)
さず、
045
何人
(
なんぴと
)
にも
遠慮
(
ゑんりよ
)
会釈
(
ゑしやく
)
なく、
046
口述
(
こうじゆつ
)
する
事
(
こと
)
にしました。
047
頃
(
ころ
)
は
明治
(
めいぢ
)
卅二
(
さんじふに
)
年
(
ねん
)
、
048
秋色
(
しうしよく
)
漸
(
やうや
)
く
濃
(
こま
)
やかな
時
(
とき
)
、
049
金明会
(
きんめいくわい
)
の
広間
(
ひろま
)
では、
050
例
(
れい
)
の
福島
(
ふくしま
)
、
051
村上
(
むらかみ
)
、
052
四方
(
しかた
)
春三
(
はるざう
)
、
053
塩見
(
しほみ
)
、
054
黒田
(
くろだ
)
を
先頭
(
せんとう
)
に、
055
日夜
(
にちや
)
間断
(
かんだん
)
なき
邪神界
(
じやしんかい
)
の
襲来
(
しふらい
)
で、
056
教祖
(
けうそ
)
のいろいろの
御
(
お
)
諭
(
さと
)
しも、
057
喜楽
(
きらく
)
の
審神者
(
さには
)
も
少
(
すこ
)
しも
聞
(
き
)
き
入
(
い
)
れぬのみか、
058
却
(
かへつ
)
て
教祖
(
けうそ
)
や
喜楽
(
きらく
)
を
忌避
(
きひ
)
して、
059
福島
(
ふくしま
)
氏
(
し
)
の
如
(
ごと
)
きは
別派
(
べつぱ
)
となり、
060
広前
(
ひろまへ
)
の
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
を
占領
(
せんりやう
)
し、
061
四方
(
しかた
)
、
062
塩見
(
しほみ
)
、
063
黒田
(
くろだ
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
修行者
(
しうぎやうしや
)
と
共
(
とも
)
に、
064
奇妙
(
きめう
)
な
神懸
(
かむがかり
)
を
続行
(
ぞくかう
)
して
居
(
ゐ
)
る。
065
『お
父
(
とう
)
サン、
066
久
(
ひさ
)
しぶりでお
目
(
め
)
にかかりました』
067
『ヤア
吾
(
わが
)
子
(
こ
)
であつたか、
068
会
(
あ
)
いたかつた……
見
(
み
)
たかつた……ヤア
其方
(
そなた
)
は
吾
(
わが
)
妻
(
つま
)
か……』
069
『
吾
(
わが
)
夫
(
をつと
)
で
御座
(
ござ
)
んすか、
070
艮
(
うしとら
)
の
金神
(
こんじん
)
さまが
世
(
よ
)
にお
落
(
お
)
ち
遊
(
あそ
)
ばした
時
(
とき
)
に、
071
私
(
わたし
)
も
一所
(
いつしよ
)
に
落
(
おと
)
されて、
072
親子
(
おやこ
)
兄弟
(
きやうだい
)
がチリヂリバラバラ、
073
時節
(
じせつ
)
参
(
まゐ
)
りて、
074
艮
(
うしとら
)
の
金神
(
こんじん
)
さまのおかげで、
075
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りで
夫婦
(
ふうふ
)
親子
(
おやこ
)
兄弟
(
きやうだい
)
の
対面
(
たいめん
)
を
許
(
ゆる
)
して
貰
(
もら
)
ひました。
076
あゝ
有難
(
ありがた
)
い
勿体
(
もつたい
)
ない、
077
オーイオーイオーイアンアンアン』
078
と
愁歎場
(
しうたんば
)
を
演出
(
えんしゆつ
)
してゐる。
079
余
(
あま
)
りの
狂態
(
きやうたい
)
に、
080
平素
(
へいそ
)
から
忍耐
(
にんたい
)
の
強
(
つよ
)
い
教祖
(
けうそ
)
も、
081
已
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず
箒
(
はうき
)
を
以
(
もつ
)
て、
082
福島
(
ふくしま
)
の
神懸
(
かむがかり
)
を
掃出
(
はきだ
)
し、
083
教祖
(
けうそ
)
『お
前
(
まへ
)
は
金光教
(
こんくわうけう
)
を
守護
(
しゆご
)
する
霊
(
れい
)
であらう。
084
此
(
この
)
大本
(
おほもと
)
をかき
紊
(
みだ
)
す
為
(
ため
)
に、
085
福島
(
ふくしま
)
の
肉体
(
にくたい
)
を
借
(
か
)
つて
居
(
ゐ
)
る
事
(
こと
)
は、
086
初発
(
しよつぱつ
)
から
能
(
よ
)
う
知
(
し
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
087
モウ
斯
(
か
)
うなつては
許
(
ゆる
)
す
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ぬから、
088
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
退散
(
たいさん
)
せい』
089
と
厳
(
きび
)
しく
叱
(
しか
)
りつけられ、
090
半分
(
はんぶん
)
肉体
(
にくたい
)
の
交
(
まじ
)
つた
神懸
(
かむがかり
)
の
福島
(
ふくしま
)
は、
091
大
(
おほ
)
いに
立腹
(
りつぷく
)
し、
092
福島
(
ふくしま
)
『
此
(
この
)
誠
(
まこと
)
の
艮
(
うしとら
)
の
大金神
(
だいこんじん
)
さまのお
憑
(
うつ
)
り
遊
(
あそ
)
ばした
福島
(
ふくしま
)
寅之助
(
とらのすけ
)
を、
093
能
(
よ
)
う
見分
(
みわ
)
けぬやうな
教祖
(
けうそ
)
が
何
(
なん
)
になる。
094
勿体
(
もつたい
)
なくも
艮
(
うしとら
)
の
金神
(
こんじん
)
の
生宮
(
いきみや
)
を、
095
箒
(
はうき
)
で
掃出
(
はきだ
)
したぞよ。
096
又
(
また
)
上田
(
うへだ
)
も
小松林
(
こまつばやし
)
のやうなガラクタ
神
(
かみ
)
が
憑
(
うつ
)
つてゐるから、
097
此
(
この
)
結構
(
けつこう
)
な
大神
(
おほかみ
)
を
能
(
よ
)
う
見分
(
みわ
)
けぬとは
困
(
こま
)
つたものであるぞよ。
098
何
(
なん
)
の
為
(
ため
)
の
審神者
(
さには
)
ぢや、
099
分
(
わか
)
らぬといふても
程
(
ほど
)
があるぞよ。
100
サアサア
皆
(
みな
)
の
神懸
(
かむがかり
)
共
(
ども
)
、
101
これから
丑
(
うし
)
の
年
(
とし
)
に
生
(
うま
)
れた
寅之助
(
とらのすけ
)
の、
102
艮
(
うしとら
)
大金神
(
だいこんじん
)
が
神力
(
しんりき
)
が
強
(
つよ
)
いか、
103
出口
(
でぐち
)
と
上田
(
うへだ
)
の
神力
(
しんりき
)
が
強
(
つよ
)
いか、
104
白
(
しろ
)
い
黒
(
くろ
)
いを
分
(
わ
)
けて
見
(
み
)
せてやるぞよ。
105
此
(
この
)
方
(
はう
)
の
御
(
お
)
伴
(
とも
)
致
(
いた
)
して
上谷
(
うへだに
)
へ
来
(
こ
)
いよ。
106
もし
寅之助
(
とらのすけ
)
が
負
(
まけ
)
たら
従
(
したが
)
うてやるが、
107
此
(
この
)
方
(
はう
)
が
勝
(
か
)
ちたら
出口
(
でぐち
)
直
(
なほ
)
も
上田
(
うへだ
)
も、
108
誠
(
まこと
)
の
艮
(
うしとら
)
の
金神
(
こんじん
)
に
従
(
したが
)
はして、
109
家来
(
けらい
)
に
使
(
つか
)
うてやるぞよ。
110
今日
(
けふ
)
が
天晴
(
あつぱ
)
れ
勝負
(
しようぶ
)
の
瀬戸際
(
せとぎは
)
であるぞよ。
111
皆
(
みな
)
の
神懸
(
かむがかり
)
よ、
112
一時
(
いつとき
)
も
早
(
はや
)
く
上谷
(
うへだに
)
へ
行
(
ゆ
)
けよ。
113
出口
(
でぐち
)
と
上田
(
うへだ
)
の
改心
(
かいしん
)
が
出来
(
でき
)
ぬから、
114
今
(
いま
)
目
(
め
)
をさまし
改心
(
かいしん
)
の
為
(
ため
)
に、
115
神
(
かみ
)
が
出口
(
でぐち
)
の
家
(
いへ
)
を
灰
(
はい
)
にして
了
(
しま
)
うぞよ。
116
それから
町中
(
まちぢう
)
も
其
(
その
)
通
(
とほ
)
りぢやぞよ。
117
噫
(
あゝ
)
誠
(
まこと
)
に
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
なものぢやぞよ。
118
人民
(
じんみん
)
が
家
(
いへ
)
一軒
(
いつけん
)
建
(
た
)
てるのにも、
119
中々
(
なかなか
)
並大抵
(
なみたいてい
)
の
事
(
こと
)
ではないが、
120
神
(
かみ
)
も
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
でたまらぬぞよ。
121
これも
出口
(
でぐち
)
直
(
なほ
)
が
我
(
が
)
が
強
(
つよ
)
うて、
122
上田
(
うへだ
)
の
改心
(
かいしん
)
が
出来
(
でき
)
ぬからぢやぞよ』
123
と
四辺
(
しへん
)
に
響
(
ひび
)
く
大音声
(
だいおんじやう
)
にて
呶鳴
(
どな
)
り
散
(
ち
)
らす。
124
喜楽
(
きらく
)
は
何程
(
なにほど
)
福島
(
ふくしま
)
に
神懸
(
かむがかり
)
の
正邪
(
せいじや
)
を
説明
(
せつめい
)
しても、
125
聞
(
き
)
かばこそ……、
126
自分
(
じぶん
)
は
誠
(
まこと
)
の
艮
(
うしとら
)
の
金神
(
こんじん
)
ぢや、
127
上田
(
うへだ
)
の
審神者
(
さには
)
が
何
(
なに
)
を
知
(
し
)
るものか……と、
128
肩
(
かた
)
を
怒
(
いか
)
らし、
129
肘
(
ひぢ
)
をはり、
130
威丈高
(
ゐたけだか
)
になつて、
131
神懸
(
かむがかり
)
や
役員
(
やくゐん
)
一統
(
いつとう
)
を
引連
(
ひきつ
)
れ、
132
韋駄天
(
ゐだてん
)
走
(
ばし
)
りに
一
(
いち
)
里
(
り
)
余
(
あま
)
りの
道
(
みち
)
を、
133
上谷
(
うへだに
)
の
修行場
(
しうぎやうば
)
さして
行
(
い
)
つて
了
(
しま
)
つた。
134
出口
(
でぐち
)
教祖
(
けうそ
)
と
喜楽
(
きらく
)
と
澄子
(
すみこ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
広前
(
ひろまへ
)
に
残
(
のこ
)
して、
135
役員
(
やくゐん
)
も
神懸
(
かむがかり
)
も
悉皆
(
すつかり
)
、
136
福島
(
ふくしま
)
にうつつた
邪神
(
じやしん
)
の
妄言
(
ばうげん
)
を
固
(
かた
)
く
信
(
しん
)
じて、
137
上谷
(
うへだに
)
へ
行
(
い
)
つて
了
(
しま
)
つた。
138
喜楽
(
きらく
)
は
教祖
(
けうそ
)
の
命
(
めい
)
に
依
(
よ
)
りて、
139
二三
(
にさん
)
時間
(
じかん
)
程
(
ほど
)
経
(
た
)
つてから、
140
中村
(
なかむら
)
竹造
(
たけざう
)
[
※
霊界物語における中村竹造の名前に「竹造」と表記している場合と「竹蔵」と表記している場合があるが、霊界物語ネットでは「竹造」に統一した。詳しくはオニペディアの「霊界物語第38巻の諸本相違点」を見よ
]
の
妻
(
つま
)
の
中村
(
なかむら
)
菊子
(
きくこ
)
と
只
(
ただ
)
二人
(
ふたり
)
で、
141
上谷
(
うへだに
)
の
四方
(
しかた
)
伊左衛門
(
いざゑもん
)
といふ
人
(
ひと
)
の
家
(
いへ
)
の
修行場
(
しうぎやうば
)
へ
出張
(
しゆつちやう
)
して
見
(
み
)
ると、
142
役員
(
やくゐん
)
も
神懸
(
かむがかり
)
も
村
(
むら
)
の
人
(
ひと
)
達
(
たち
)
も、
143
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
の
分
(
わか
)
ちなく、
144
悉皆
(
しつかい
)
福島
(
ふくしま
)
について、
145
高
(
たか
)
い
不動山
(
ふどうやま
)
の
上
(
うへ
)
へ
上
(
あが
)
つて
了
(
しま
)
ひ、
146
あとには
黒田
(
くろだ
)
清子
(
きよこ
)
と
野崎
(
のざき
)
篤三郎
(
とくさぶらう
)
とが
修行場
(
しうぎやうば
)
の
留守
(
るす
)
をしてゐた。
147
そして
黒田
(
くろだ
)
には
悪狐
(
あくこ
)
の
霊
(
れい
)
が
憑
(
うつ
)
つて、
148
喜楽
(
きらく
)
の
行
(
い
)
つたのも
知
(
し
)
らずに、
149
何事
(
なにごと
)
か
一人
(
ひとり
)
でベラベラと
喋
(
しやべ
)
り
立
(
た
)
てつつあつた。
150
野崎
(
のざき
)
は
其
(
その
)
傍
(
そば
)
に
両手
(
りやうて
)
をついて、
151
おとなしく
高麗狗
(
こまいぬ
)
然
(
ぜん
)
として
畏
(
かしこ
)
まつてゐた。
152
喜楽
(
きらく
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
るなり、
153
野崎
(
のざき
)
は
驚
(
おどろ
)
いて、
154
黒田
(
くろだ
)
清子
(
きよこ
)
に
耳打
(
みみうち
)
をすると、
155
黒田
(
くろだ
)
は
忽
(
たちま
)
ちに
仰向
(
あふむ
)
けになつて、
156
黒田
(
くろだ
)
『
上田
(
うへだ
)
来
(
き
)
たか、
157
よく
聞
(
き
)
けよ。
158
此
(
この
)
方
(
はう
)
は
勿体
(
もつたい
)
なくも
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
であるぞよ。
159
お
前
(
まへ
)
が
改心
(
かいしん
)
出来
(
でき
)
ぬ
為
(
た
)
めに、
160
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
乍
(
なが
)
ら
綾部
(
あやべ
)
の
金明会
(
きんめいくわい
)
は
灰
(
はい
)
にして
了
(
しま
)
うぞよ。
161
お
前
(
まへ
)
は
何
(
なに
)
しに
来
(
き
)
たのぢや、
162
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
う
綾部
(
あやべ
)
へ
帰
(
かへ
)
つて、
163
火事
(
くわじ
)
の
消防
(
せうばう
)
にかからぬか。
164
グヅグヅして
居
(
ゐ
)
る
時
(
とき
)
ではないぞよ、
165
千騎
(
せんき
)
一騎
(
いつき
)
の
此
(
この
)
場合
(
ばあひ
)
でないか』
166
とベラベラと
際限
(
さいげん
)
もなく
喋
(
しやべ
)
り
立
(
た
)
てる。
167
喜楽
(
きらく
)
はいきなり、
168
喜楽
(
きらく
)
『コラ
野狐
(
のぎつね
)
、
169
何
(
なに
)
を
吐
(
ぬか
)
すか。
170
そんな
事
(
こと
)
があつてたまらうか。
171
コリヤ
野狐
(
のぎつね
)
、
172
正体
(
しやうたい
)
をあらはせ!』
173
と
後
(
うしろ
)
から
手
(
て
)
を
組
(
く
)
んで『ウン』と
霊
(
れい
)
をかけると、
174
清子
(
きよこ
)
は
忽
(
たちま
)
ち
四
(
よ
)
つ
這
(
ばい
)
になつて、
175
『コーンコン』
176
と
鳴
(
な
)
き
乍
(
なが
)
ら、
177
家
(
いへ
)
の
裏山
(
うらやま
)
へ
一目散
(
いちもくさん
)
に
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
した。
178
野崎
(
のざき
)
はビツクリして、
179
後
(
あと
)
追
(
お
)
つかけ、
180
漸
(
やうや
)
く
三町
(
さんちやう
)
許
(
ばか
)
りの
谷間
(
たにま
)
で
引捉
(
ひつとら
)
へ
連
(
つ
)
れて
帰
(
かへ
)
つて
見
(
み
)
ると、
181
清子
(
きよこ
)
は
正気
(
しやうき
)
になつたやうに
見
(
み
)
せて、
182
黒田
(
くろだ
)
『あゝ
上田
(
うへだ
)
先生
(
せんせい
)
、
183
誠
(
まこと
)
にすまぬ
事
(
こと
)
を
致
(
いた
)
しました。
184
モウこれからは、
185
福島
(
ふくしま
)
大先生
(
だいせんせい
)
の
事
(
こと
)
は
聞
(
き
)
きませぬ。
186
私
(
わたし
)
は
余
(
あま
)
り
慢心
(
まんしん
)
をしてゐましたので、
187
不動山
(
ふどうやま
)
の
狐
(
きつね
)
がついてゐました。
188
あゝ
恥
(
はづ
)
かしい
残念
(
ざんねん
)
な』
189
と
顔
(
かほ
)
を
袂
(
たもと
)
で
押
(
お
)
しかくす。
190
喜楽
(
きらく
)
は、
191
喜楽
(
きらく
)
『そんな
事
(
こと
)
にたばかられるものか、
192
詐
(
いつは
)
りを
云
(
い
)
ふな、
193
其
(
その
)
場
(
ば
)
逃
(
のが
)
れの
言
(
い
)
ひ
訳
(
わけ
)
だ。
194
審神者
(
さには
)
の
眼
(
め
)
で
睨
(
にら
)
んだら
間違
(
まちが
)
ひはあるまい。
195
四
(
よ
)
つ
堂
(
だう
)
の
古狐
(
ふるぎつね
)
奴
(
め
)
!』
196
とにらみつくれば、
197
又
(
また
)
もや、
198
『コンコン』
199
と
鳴
(
な
)
き
乍
(
なが
)
ら、
200
一目散
(
いちもくさん
)
に
不動山
(
ふどうやま
)
を
指
(
さ
)
して
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く。
201
暫
(
しばら
)
くすると、
202
例
(
れい
)
の
祐助
(
いうすけ
)
爺
(
ぢ
)
イサンが、
203
喜楽
(
きらく
)
の
前
(
まへ
)
に
走
(
は
)
せ
来
(
きた
)
り、
204
祐助
(
いうすけ
)
『
上田
(
うへだ
)
先生
(
せんせい
)
、
205
あんたは
又
(
また
)
しても
神懸
(
かむがかり
)
サンを
叱
(
しか
)
りなさつたさうだ。
206
今
(
いま
)
黒田
(
くろだ
)
サンに
素盞嗚
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
さまがおうつりになつて、
207
山
(
やま
)
へ
登
(
のぼ
)
つて
来
(
き
)
て
大変
(
たいへん
)
に
怒
(
おこ
)
つてゐやはりますで。
208
大広前
(
おほひろまへ
)
が
御
(
ご
)
神罰
(
しんばつ
)
で
焼
(
や
)
けるのも、
209
つまり
先生
(
せんせい
)
の
我
(
が
)
が
強
(
つよ
)
いからで
御座
(
ござ
)
います。
210
爺
(
ぢ
)
イも
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
になつて、
211
大難
(
だいなん
)
を
小難
(
せうなん
)
にまつり
代
(
か
)
へて
下
(
くだ
)
さいと、
212
お
詫
(
わび
)
を
致
(
いた
)
して、
213
艮
(
うしとら
)
の
金神
(
こんじん
)
さまや
神懸
(
かむがかり
)
さまに
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
申
(
まを
)
して
居
(
を
)
りますのに、
214
先生
(
せんせい
)
とした
事
(
こと
)
が、
215
お
三体
(
さんたい
)
の
大神
(
おほかみ
)
さまのお
懸
(
かか
)
り
遊
(
あそ
)
ばした
結構
(
けつこう
)
な
神懸
(
かむがかり
)
サンを、
216
野狐
(
のぎつね
)
だなんて
仰有
(
おつしや
)
るから、
217
大神
(
おほかみ
)
さまが
以
(
もつ
)
ての
外
(
ほか
)
の
御
(
ご
)
立腹
(
りつぷく
)
、
218
どうしても
今度
(
こんど
)
は
許
(
ゆる
)
しは
致
(
いた
)
さぬと
仰有
(
おつしや
)
ります。
219
先生
(
せんせい
)
、
220
爺
(
ぢ
)
イが
一生
(
いつしやう
)
の
頼
(
たの
)
みで
御座
(
ござ
)
りますから、
221
黒田
(
くろだ
)
サンの
神
(
かみ
)
さまにお
詫
(
わび
)
を、
222
今
(
いま
)
直
(
すぐ
)
にして
下
(
くだ
)
さりませ。
223
綾部
(
あやべ
)
の
御
(
お
)
広前
(
ひろまへ
)
や
町中
(
まちぢう
)
の
大難
(
だいなん
)
になつてはたまりませぬから……』
224
とブルブル
震
(
ふる
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
225
泣
(
な
)
き
声
(
ごゑ
)
で
拝
(
をが
)
んで
居
(
ゐ
)
る。
226
喜楽
(
きらく
)
は、
227
喜楽
(
きらく
)
『
祐助
(
いうすけ
)
サン、
228
心配
(
しんぱい
)
するな、
229
決
(
けつ
)
してそんな
馬鹿
(
ばか
)
な
事
(
こと
)
があるものか。
230
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
さまなら、
231
そんな
無茶
(
むちや
)
な
事
(
こと
)
はなさる
筈
(
はず
)
がない。
232
皆
(
みな
)
曲津
(
まがつ
)
神
(
かみ
)
が
出鱈目
(
でたらめ
)
を
言
(
い
)
ふて
居
(
ゐ
)
るのだ。
233
万一
(
まんいち
)
綾部
(
あやべ
)
にそんな
大変事
(
だいへんじ
)
があるものなら、
234
自分
(
じぶん
)
が
上谷
(
うへだに
)
へ
来
(
く
)
る
筈
(
はず
)
がないぢやないか。
235
ジツクリと
物
(
もの
)
を
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
よ』
236
と
諭
(
さと
)
せば、
237
爺
(
ぢ
)
イサンは
少
(
すこ
)
しは
安心
(
あんしん
)
したと
見
(
み
)
え、
238
始
(
はじ
)
めて
笑顔
(
ゑがほ
)
を
見
(
み
)
せた。
239
喜楽
(
きらく
)
は
直
(
ただち
)
に
不動山
(
ふどうやま
)
へ
登
(
のぼ
)
り、
240
数多
(
あまた
)
の
神懸
(
かむがかり
)
の
狂態
(
きやうたい
)
を
演
(
えん
)
じて
居
(
ゐ
)
るのを
鎮定
(
ちんてい
)
せむと、
241
修行場
(
しうぎやうば
)
を
立出
(
たちい
)
でた。
242
爺
(
ぢ
)
イサン
驚
(
おどろ
)
いて、
243
喜楽
(
きらく
)
の
袖
(
そで
)
を
控
(
ひか
)
え、
244
祐助
(
いうすけ
)
『
先生
(
せんせい
)
、
245
どうぞ
山
(
やま
)
へ
行
(
ゆ
)
くのはやめにして、
246
これから
直
(
すぐ
)
綾部
(
あやべ
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
下
(
くだ
)
さい、
247
案
(
あん
)
じられてなりませぬ。
248
今
(
いま
)
先生
(
せんせい
)
が
山
(
やま
)
へ
登
(
のぼ
)
られたら、
249
又々
(
またまた
)
福島
(
ふくしま
)
の
神
(
かみ
)
さまが、
250
御
(
ご
)
立腹
(
りつぷく
)
なさると
大変
(
たいへん
)
で
厶
(
ござ
)
ります』
251
と
無理
(
むり
)
に
引止
(
ひきと
)
めようとする。
252
喜楽
(
きらく
)
は
懇々
(
こんこん
)
と
祐助
(
いうすけ
)
をさとし、
253
漸
(
やうや
)
くの
事
(
こと
)
で
納得
(
なつとく
)
させ、
254
中村
(
なかむら
)
菊子
(
きくこ
)
と
同道
(
どうだう
)
にて、
255
綾部
(
あやべ
)
へ
立帰
(
たちかへ
)
らしめ、
256
喜楽
(
きらく
)
は
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
雑木
(
ざふき
)
茂
(
しげ
)
る
叢
(
くさむら
)
をかきわけて
不動山
(
ふどうやま
)
に
登
(
のぼ
)
り、
257
松
(
まつ
)
の
木蔭
(
こかげ
)
に
隠
(
かく
)
れて、
258
神懸
(
かむがかり
)
[
※
初版・愛世版では「神懸」、校定版では「神憑り」。
]
連中
(
れんちう
)
の
様子
(
やうす
)
を
覗
(
うかが
)
つてゐた。
259
福島
(
ふくしま
)
寅之助
(
とらのすけ
)
、
260
四方
(
しかた
)
平蔵
(
へいざう
)
、
261
足立
(
あだち
)
正信
(
まさのぶ
)
、
262
其
(
その
)
外
(
ほか
)
一統
(
いつとう
)
の
連中
(
れんちう
)
は、
263
喜楽
(
きらく
)
の
間近
(
まぢか
)
に
来
(
き
)
てゐる
事
(
こと
)
は
夢
(
ゆめ
)
にも
知
(
し
)
らず、
264
一心
(
いつしん
)
不乱
(
ふらん
)
になつて、
265
『
福島
(
ふくしま
)
大先生
(
だいせんせい
)
さま、
266
艮
(
うしとら
)
の
大金神
(
だいこんじん
)
さま、
267
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
教祖
(
けうそ
)
さまの
我
(
が
)
が
折
(
お
)
れまして、
268
上田
(
うへだ
)
が
往生
(
わうじやう
)
致
(
いた
)
しまして……
綾部
(
あやべ
)
の
戒
(
いまし
)
めをお
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ、
269
仮令
(
たとへ
)
私
(
わたし
)
の
命
(
いのち
)
はなくなりましても、
270
教祖
(
けうそ
)
さまが
助
(
たす
)
かりなさりますように』
271
と
一同
(
いちどう
)
が
涙交
(
なみだまじ
)
りに
頼
(
たの
)
んでゐる。
272
四方
(
しかた
)
春三
(
はるざう
)
の
声
(
こゑ
)
で、
273
春三
(
はるざう
)
『
皆
(
みな
)
の
者
(
もの
)
よ、
274
よく
聞
(
き
)
け。
275
出口
(
でぐち
)
直
(
なほ
)
は
金光
(
こんくわう
)
大神
(
だいじん
)
の
反対役
(
はんたいやく
)
であるぞよ。
276
上田
(
うへだ
)
のやうな
悪
(
わる
)
い
奴
(
やつ
)
を
引張
(
ひつぱ
)
り
込
(
こ
)
んで、
277
金光
(
こんくわう
)
教会
(
けうくわい
)
を
潰
(
つぶ
)
したぞよ。
278
あの
御
(
お
)
広間
(
ひろま
)
は
元
(
もと
)
は
金光
(
こんくわう
)
の
広間
(
ひろま
)
ぢやぞよ。
279
それに
出口
(
でぐち
)
と
上田
(
うへだ
)
とがワヤに
致
(
いた
)
したぞよ。
280
誠
(
まこと
)
の
艮
(
うしとら
)
の
金神
(
こんじん
)
が、
281
今度
(
こんど
)
は
勘忍袋
(
かんにんぶくろ
)
の
緒
(
を
)
が
切
(
き
)
れたから、
282
上田
(
うへだ
)
の
審神者
(
さには
)
を
放
(
はう
)
り
出
(
だ
)
さねば、
283
何遍
(
なんべん
)
でも
大広間
(
おほひろま
)
は
焼
(
や
)
いて
了
(
しま
)
ふぞよ。
284
四方
(
しかた
)
平蔵
(
へいざう
)
も
又
(
また
)
同類
(
どうるゐ
)
ぢや、
285
出口
(
でぐち
)
直
(
なほ
)
と
相談
(
さうだん
)
を
致
(
いた
)
して、
286
上田
(
うへだ
)
をかくれて
迎
(
むか
)
へに
行
(
ゆ
)
きよつたぞよ。
287
出口
(
でぐち
)
と
上田
(
うへだ
)
と
平蔵
(
へいざう
)
と
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
心
(
こころ
)
を
合
(
あは
)
して、
288
金光
(
こんくわう
)
の
広間
(
ひろま
)
をつぶしたぞよ。
289
今度
(
こんど
)
は
改心
(
かいしん
)
して、
290
上田
(
うへだ
)
を
穴太
(
あなを
)
へ
追
(
お
)
ひかへせばよし、
291
何時
(
いつ
)
までも
其
(
その
)
儘
(
まま
)
に
致
(
いた
)
してをるやうな
事
(
こと
)
なら、
292
此
(
この
)
神
(
かみ
)
が
許
(
ゆる
)
さぬぞよ』
293
などと、
294
もと
金光教
(
こんくわうけう
)
の
信者
(
しんじや
)
計
(
ばか
)
りが
集
(
あつ
)
まつて、
295
神懸
(
かむがかり
)
[
※
初版・愛世版では「神懸」、校定版では「神憑」。
]
の
口
(
くち
)
で
攻撃
(
こうげき
)
をやる。
296
黒田
(
くろだ
)
きよ
子
(
こ
)
が
又
(
また
)
口
(
くち
)
を
切
(
き
)
つて、
297
黒田
(
くろだ
)
『
足立
(
あだち
)
正信
(
まさのぶ
)
どの、
298
其方
(
そなた
)
は
何
(
なん
)
と
心得
(
こころえ
)
て
居
(
を
)
るのぞえ。
299
金光
(
こんくわう
)
教会
(
けうくわい
)
の
取次
(
とりつぎ
)
ではないか、
300
今
(
いま
)
まで
出口
(
でぐち
)
の
神
(
かみ
)
の
側
(
そば
)
に
二三
(
にさん
)
年
(
ねん
)
もついて
居
(
を
)
り
乍
(
なが
)
ら、
301
上田
(
うへだ
)
のやうなガラクタ
審神者
(
さには
)
に、
302
広間
(
ひろま
)
を
占領
(
せんりやう
)
しられて、
303
金光
(
こんくわう
)
どのへ
何
(
なん
)
と
申訳
(
まをしわけ
)
致
(
いた
)
すのか。
304
上田
(
うへだ
)
の
行状
(
ぎやうじやう
)
を
見
(
み
)
たかい。
305
彼奴
(
あいつ
)
は、
306
毎日
(
まいにち
)
々々
(
まいにち
)
朝寝
(
あさね
)
は
致
(
いた
)
す、
307
昼前
(
ひるまへ
)
に
起
(
おき
)
て
来
(
き
)
て、
308
手水
(
てうず
)
もつかはぬ、
309
猫
(
ねこ
)
より
劣
(
おと
)
つた
奴
(
やつ
)
ぢやぞよ。
310
寝所
(
ねどこ
)
の
中
(
なか
)
から
首
(
くび
)
丈
(
だけ
)
出
(
だ
)
して
飯
(
めし
)
を
食
(
くら
)
つたり、
311
茶
(
ちや
)
を
呑
(
の
)
んだり、
312
風呂
(
ふろ
)
へ
這入
(
はい
)
つても
顔
(
かほ
)
一
(
ひと
)
つ
洗
(
あら
)
ふ
事
(
こと
)
も
知
(
し
)
らず、
313
あんな
道楽
(
だうらく
)
な
奴
(
やつ
)
を、
314
因縁
(
いんねん
)
の
身魂
(
みたま
)
ぢやから
大切
(
たいせつ
)
にしてやれ、
315
と
教祖
(
けうそ
)
が
申
(
まを
)
すのは、
316
チツと
物
(
もの
)
が
分
(
わか
)
らぬぞよ。
317
教祖
(
けうそ
)
の
目
(
め
)
をさますのは、
318
一番
(
いちばん
)
に
上田
(
うへだ
)
を
放
(
はう
)
り
出
(
だ
)
すに
限
(
かぎ
)
るぞよ。
319
あとは
金光教
(
こんくわうけう
)
で
足立
(
あだち
)
正信
(
まさのぶ
)
殿
(
どの
)
が
御用
(
ごよう
)
致
(
いた
)
せば
立派
(
りつぱ
)
に
教
(
をしへ
)
が
立
(
た
)
つぞよ。
320
あれあれ
見
(
み
)
やれよ、
321
今
(
いま
)
綾部
(
あやべ
)
の
金明会
(
きんめいくわい
)
が
焼
(
や
)
けるぞよ。
322
皆
(
みな
)
の
者
(
もの
)
よ、
323
あれを
見
(
み
)
やいのう』
324
と
邪神
(
じやしん
)
が
憑
(
うつ
)
つて
妄言
(
ばうげん
)
を
吐
(
は
)
いてゐる。
325
一同
(
いちどう
)
は
目
(
め
)
を
遠
(
とほ
)
く
見
(
み
)
はつて、
326
綾部
(
あやべ
)
の
方
(
はう
)
を
覗
(
のぞ
)
く
可笑
(
おか
)
しさ。
327
折
(
をり
)
ふし
綾部
(
あやべ
)
の
上野
(
うへの
)
に
瓦屋
(
かはらや
)
があつて、
328
窯
(
かま
)
に
火
(
ひ
)
を
入
(
い
)
れて
居
(
ゐ
)
るのが、
329
夕
(
ゆふ
)
ぐれの
暗
(
やみ
)
を
照
(
てら
)
して、
330
チヨロチヨロと
見
(
み
)
え
出
(
だ
)
した。
331
さうすると、
332
黒田
(
くろだ
)
『サア
大変
(
たいへん
)
ぢや
大変
(
たいへん
)
ぢや、
333
出口
(
でぐち
)
の
神
(
かみ
)
さまは
誠
(
まこと
)
に
以
(
もつ
)
てお
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
ぢやぞよ。
334
御
(
ご
)
心配
(
しんぱい
)
をして
御座
(
ござ
)
るぞよ。
335
今頃
(
いまごろ
)
は
上田
(
うへだ
)
の
審神者
(
さには
)
が
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
になつて
火傷
(
やけど
)
をし
乍
(
なが
)
ら
火
(
ひ
)
を
消
(
け
)
しにかかつて
居
(
ゐ
)
るぞよ。
336
大分
(
だいぶ
)
にエライ
火傷
(
やけど
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
ゐ
)
るから、
337
今度
(
こんど
)
こそは
神罰
(
しんばつ
)
で
命
(
いのち
)
を
取
(
と
)
られるぞよ。
338
今
(
いま
)
出口
(
でぐち
)
の
神
(
かみ
)
が
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
祈
(
いの
)
つてゐるぞよ、
339
ぢやと
申
(
まを
)
して
此
(
この
)
火
(
ひ
)
は
中々
(
なかなか
)
消
(
き
)
えは
致
(
いた
)
さぬぞよ。
340
綾部
(
あやべ
)
の
大火事
(
おほくわじ
)
となるぞよ。
341
神
(
かみ
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
は
一分
(
いちぶ
)
一厘
(
いちりん
)
違
(
ちがひ
)
は
致
(
いた
)
さぬぞよ。
342
これが
違
(
ちが
)
うたら
神
(
かみ
)
は
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
居
(
を
)
らぬぞよ。
343
慢心
(
まんしん
)
は
大怪我
(
おほけが
)
の
元
(
もと
)
だぞよ。
344
慢心
(
まんしん
)
致
(
いた
)
すと
足許
(
あしもと
)
へ
火
(
ひ
)
がもえて
来
(
き
)
て……
熱
(
あつ
)
うなるまで
気
(
き
)
がつかぬぞよ。
345
行
(
ゆ
)
けば
行
(
ゆ
)
く
程
(
ほど
)
茨
(
いばら
)
むろ、
346
行
(
ゆ
)
きも
戻
(
もど
)
りもならぬよになるぞよ。
347
それそれあの
火
(
ひ
)
を
見
(
み
)
やいのう』
348
と
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
神懸
(
かむがかり
)
[
※
校定版では「神がかり」
]
が
口
(
くち
)
を
切
(
き
)
る。
349
数多
(
あまた
)
の
村人
(
むらびと
)
も
神懸
(
かむがかり
)
[
※
初版・愛世版では「神懸」、校定版では「神憑」。
]
も
泣
(
な
)
き
声
(
ごゑ
)
になり、
350
『
福島
(
ふくしま
)
大先生
(
だいせんせい
)
様
(
さま
)
、
351
中村
(
なかむら
)
大先生
(
だいせんせい
)
様
(
さま
)
、
352
四方
(
しかた
)
大先生
(
だいせんせい
)
さま、
353
足立
(
あだち
)
大先生
(
だいせんせい
)
さま、
354
どうぞお
詫
(
わび
)
をして
下
(
くだ
)
さいませ』
355
と
手
(
て
)
を
合
(
あは
)
して
拝
(
をが
)
んでゐる。
356
時
(
とき
)
正
(
まさ
)
に
一
(
いち
)
の
暗
(
くら
)
み、
357
瓦屋
(
かはらや
)
の
火
(
ひ
)
も
見
(
み
)
えなくなつた。
358
四方平蔵
『
火事
(
くわじ
)
にしては
火
(
ひ
)
が
小
(
ちひ
)
さ
過
(
すぎ
)
る。
359
余
(
あま
)
り
消
(
き
)
えるのが
早
(
はや
)
かつた。
360
これは
福島
(
ふくしま
)
大先生
(
だいせんせい
)
さま、
361
どういふ
訳
(
わけ
)
で
御座
(
ござ
)
いませうか……』
362
と
尋
(
たづ
)
ねて
居
(
ゐ
)
るのは
四方
(
しかた
)
平蔵
(
へいざう
)
氏
(
し
)
であつた。
363
福島
(
ふくしま
)
は
横柄
(
わうへい
)
にかまへ
乍
(
なが
)
ら、
364
福島
(
ふくしま
)
『ウン、
365
神
(
かみ
)
の
御
(
お
)
仕組
(
しぐみ
)
で
広前
(
ひろまへ
)
を
一軒
(
いつけん
)
丈
(
だけ
)
犠牲
(
いけにえ
)
に
焼
(
や
)
いたぞよ。
366
皆
(
みな
)
の
者
(
もの
)
よ
綾部
(
あやべ
)
へ
帰
(
かへ
)
つて、
367
出口
(
でぐち
)
の
我
(
が
)
を
折
(
を
)
らして、
368
上田
(
うへだ
)
を
放
(
はう
)
り
出
(
だ
)
して
了
(
しま
)
へよ。
369
其
(
その
)
後
(
あと
)
へ
誠
(
まこと
)
生粋
(
きつすゐ
)
の
艮
(
うしとら
)
の
金神
(
こんじん
)
が、
370
福島
(
ふくしま
)
寅之助
(
とらのすけ
)
大明神
(
だいみやうじん
)
と
現
(
あら
)
はれて、
371
三千
(
さんぜん
)
世界
(
せかい
)
の
立替
(
たてかへ
)
を
致
(
いた
)
すから、
372
天下
(
てんか
)
太平
(
たいへい
)
に
世
(
よ
)
が
治
(
をさ
)
まりて、
373
大難
(
だいなん
)
を
小難
(
せうなん
)
にまつり
代
(
か
)
へて
許
(
ゆる
)
してやるぞよ。
374
何程
(
なにほど
)
人民
(
じんみん
)
がエライと
申
(
まを
)
しても
神
(
かみ
)
には
勝
(
か
)
てぬぞよ。
375
疑
(
うたがひ
)
を
晴
(
は
)
らせよ。
376
誠
(
まこと
)
の
丑寅
(
うしとら
)
の
金神
(
こんじん
)
の
申
(
まを
)
す
事
(
こと
)
は、
377
毛筋
(
けすぢ
)
の
横巾
(
よこはば
)
程
(
ほど
)
も
間違
(
まちが
)
ひはないぞよ。
378
改心
(
かいしん
)
致
(
いた
)
さぬと
足許
(
あしもと
)
から
鳥
(
とり
)
が
立
(
た
)
ちて、
379
ビツクリ
致
(
いた
)
して
目
(
め
)
まひがくるぞよ。
380
改心
(
かいしん
)
するのは
今
(
いま
)
ぢやぞよ』
381
と
呶鳴
(
どな
)
り
散
(
ち
)
らしてゐる。
382
暗
(
やみ
)
の
帳
(
とばり
)
はますます
深
(
ふか
)
く
下
(
お
)
りて
来
(
き
)
た。
383
鼻
(
はな
)
をつままれても
分
(
わか
)
らぬやうに
暗
(
くら
)
い。
384
提灯
(
ちやうちん
)
もなければ、
385
上谷
(
うへだに
)
まで
帰
(
かへ
)
る
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ぬ
真
(
しん
)
の
暗
(
やみ
)
になつた。
386
村中
(
むらぢう
)
の
者
(
もの
)
が
家
(
いへ
)
を
空
(
から
)
にして、
387
残
(
のこ
)
らず
此処
(
ここ
)
へ
登
(
のぼ
)
つて
了
(
しま
)
つて
居
(
を
)
つたが、
388
山
(
やま
)
を
下
(
お
)
りるにも
下
(
お
)
りられず、
389
途方
(
とはう
)
に
暮
(
く
)
れて『
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
』と
合掌
(
がつしやう
)
してゐる。
390
其処
(
そこ
)
へ
暗
(
くら
)
がりの
中
(
なか
)
から、
391
喜楽
(
きらく
)
の
声
(
こゑ
)
として、
392
喜楽
(
きらく
)
『
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
一統
(
いつとう
)
の
者
(
もの
)
、
393
余
(
あま
)
り
慢心
(
まんしん
)
強
(
つよ
)
き
故
(
ゆゑ
)
に
邪神
(
じやしん
)
にたぶらかされ、
394
上田
(
うへだ
)
の
審神者
(
さには
)
の
言
(
げん
)
も
用
(
もち
)
ひず、
395
極力
(
きよくりよく
)
反対
(
はんたい
)
せし
結果
(
けつくわ
)
は、
396
今
(
いま
)
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
の
云
(
い
)
ふ
如
(
ごと
)
く、
397
足許
(
あしもと
)
から
鳥
(
とり
)
が
立
(
た
)
つても
分
(
わか
)
るまい。
398
喜楽
(
きらく
)
は
数時間
(
すうじかん
)
以前
(
いぜん
)
から、
399
此
(
この
)
松
(
まつ
)
の
木蔭
(
こかげ
)
に
休息
(
きうそく
)
して、
400
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
の
暴言
(
ばうげん
)
暴動
(
ばうどう
)
を
残
(
のこ
)
らず
目撃
(
もくげき
)
してゐた。
401
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
に
憑
(
うつ
)
つた
邪神
(
じやしん
)
は、
402
現在
(
げんざい
)
此処
(
ここ
)
に
居
(
ゐ
)
る
喜楽
(
きらく
)
を
見
(
み
)
とめる
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ない
盲神
(
めくらがみ
)
だ。
403
又
(
また
)
綾部
(
あやべ
)
の
広前
(
ひろまへ
)
は
決
(
けつ
)
して
焼
(
や
)
けてはゐないぞ。
404
最前
(
さいぜん
)
見
(
み
)
えた
火
(
ひ
)
の
光
(
ひかり
)
は、
405
稍
(
やや
)
大
(
だい
)
にして
火事
(
くわじ
)
の
卵
(
たまご
)
に
似
(
に
)
たれども、
406
あれは
火事
(
くわじ
)
ではない、
407
上野
(
うへの
)
の
瓦屋
(
かはらや
)
が
窯
(
かま
)
に
火
(
ひ
)
を
入
(
い
)
れたのだ。
408
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
は
今
(
いま
)
此処
(
ここ
)
で
目
(
め
)
を
醒
(
さ
)
まし、
409
悔
(
く
)
ゐ
改
(
あらた
)
めねば、
410
神罰
(
しんばつ
)
忽
(
たちま
)
ち
下
(
くだ
)
るであらう。
411
現
(
げん
)
に
此
(
この
)
山上
(
さんじやう
)
にさまようて、
412
帰路
(
きろ
)
暗黒
(
あんこく
)
、
413
一寸
(
ちよつと
)
も
進
(
すす
)
む
能
(
あた
)
はざるは
神
(
かみ
)
の
懲戒
(
ちようかい
)
である。
414
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
一同
(
いちどう
)
の
者
(
もの
)
、
415
よく
冷静
(
れいせい
)
に
考
(
かんが
)
へ
見
(
み
)
よ。
416
万一
(
まんいち
)
広前
(
ひろまへ
)
が
焼
(
や
)
けるものと
思
(
おも
)
へば、
417
何故
(
なにゆゑ
)
大神
(
おほかみ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
鎮座
(
ちんざ
)
ある、
418
広前
(
ひろまへ
)
につめきつて
保護
(
ほご
)
せないのか。
419
なぜ
面白
(
おもしろ
)
さうに
火事
(
くわじ
)
見物
(
けんぶつ
)
をし、
420
村中
(
むらぢう
)
が
弁当
(
べんたう
)
や
茶
(
ちや
)
などを
携帯
(
けいたい
)
して、
421
安閑
(
あんかん
)
と
見下
(
みお
)
ろそうとしてゐるその
有様
(
ありさま
)
は
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
か、
422
これでも
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
の
行
(
おこな
)
ひか、
423
チツとは
胸
(
むね
)
に
手
(
て
)
を
当
(
あて
)
て
考
(
かんが
)
へてみよ』
424
と
呶鳴
(
どな
)
りつけた。
425
サアさうすると……
上田
(
うへだ
)
は
綾部
(
あやべ
)
に
居
(
を
)
ると
固
(
かた
)
く
信
(
しん
)
じてゐた
一同
(
いちどう
)
の
者
(
もの
)
は、
426
藪
(
やぶ
)
から
棒
(
ぼう
)
をつき
出
(
だ
)
したやうに、
427
喜楽
(
きらく
)
が
現
(
あら
)
はれたのと、
428
其
(
その
)
説諭
(
せつゆ
)
に
面食
(
めんくら
)
つて、
429
泣
(
な
)
く
者
(
もの
)
、
430
詫
(
わ
)
びる
者
(
もの
)
、
431
頼
(
たの
)
む
者
(
もの
)
が
出来
(
でき
)
て
来
(
き
)
た。
432
暗
(
くら
)
き
山路
(
やまぢ
)
を
下
(
くだ
)
りつつ、
433
躓
(
つまづ
)
き
倒
(
たふ
)
れてカスリ
傷
(
きず
)
をするやら、
434
茨
(
いばら
)
に
引
(
ひ
)
つかかつて
泣
(
な
)
き
叫
(
さけ
)
ぶやら、
435
ヤツとの
事
(
こと
)
で
不動山
(
ふどうやま
)
から、
436
命
(
いのち
)
カラガラ
上谷
(
うへだに
)
の
伊左衛門
(
いざゑもん
)
方
(
かた
)
の
修行場
(
しうぎやうば
)
へ
帰
(
かへ
)
つたのはその
夜
(
よ
)
の
十二
(
じふに
)
時
(
じ
)
前
(
まへ
)
であつた。
437
何
(
いづ
)
れの
人
(
ひと
)
を
見
(
み
)
ても、
438
顔
(
かほ
)
や
手足
(
てあし
)
に
茨
(
いばら
)
がきの
負傷
(
ふしやう
)
せぬ
者
(
もの
)
は
一人
(
ひとり
)
もなかつた。
439
四方
(
しかた
)
平蔵
(
へいざう
)
は、
440
喜楽
(
きらく
)
に
手
(
て
)
を
引
(
ひ
)
かれて
下山
(
げざん
)
したので、
441
目
(
め
)
の
悪
(
わる
)
いにも
拘
(
かか
)
はらず、
442
かき
傷
(
きず
)
一
(
ひと
)
つして
居
(
ゐ
)
なかつた。
443
喜楽
(
きらく
)
は
一同
(
いちどう
)
の
者
(
もの
)
が
邪神
(
じやしん
)
の
神告
(
しんこく
)
の
全然
(
ぜんぜん
)
虚言
(
きよげん
)
であつたので、
444
各自
(
かくじ
)
に
迷
(
まよ
)
ふてゐた
事
(
こと
)
を
悟
(
さと
)
つたであらうと
思
(
おも
)
ひ、
445
急
(
いそ
)
ぎ
綾部
(
あやべ
)
へ
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た。
446
其
(
その
)
あとで
又々
(
またまた
)
相変
(
あひかは
)
らず
邪神
(
じやしん
)
の
神懸
(
かむがかり
)
[
※
初版・愛世版では「神懸」、校定版では「神憑」。
]
を
続行
(
ぞくかう
)
し、
447
其
(
その
)
結果
(
けつくわ
)
一同
(
いちどう
)
鳩首
(
きうしゆ
)
会議
(
くわいぎ
)
を
開
(
ひら
)
き、
448
其
(
その
)
全権
(
ぜんけん
)
大使
(
たいし
)
として
足立
(
あだち
)
氏
(
し
)
と
四方
(
しかた
)
春三
(
はるざう
)
、
449
中村
(
なかむら
)
竹造
(
たけざう
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
が
選
(
えら
)
まれた
訳
(
わけ
)
である。
450
要
(
えう
)
するに
甘
(
うま
)
く
喜楽
(
きらく
)
を
追放
(
つゐはう
)
するといふが
大問題
(
だいもんだい
)
であつた。
451
審神者
(
さには
)
の
役
(
やく
)
といふものは
仲々
(
なかなか
)
骨
(
ほね
)
の
折
(
を
)
れるもので、
452
正神界
(
せいしんかい
)
の
神
(
かみ
)
は
大変
(
たいへん
)
に
審神者
(
さには
)
を
愛
(
あい
)
されるが、
453
之
(
これ
)
に
反
(
はん
)
して
邪神界
(
じやしんかい
)
の
神
(
かみ
)
は
恐
(
おそ
)
れて
非常
(
ひじやう
)
に
忌
(
い
)
み
嫌
(
きら
)
ひ、
454
陰
(
いん
)
に
陽
(
やう
)
に
審神者
(
さには
)
を
排斥
(
はいせき
)
するものである。
455
あゝ
惟神
(
かむながら
)
霊
(
たま
)
幸倍
(
ちはへ
)
坐世
(
ませ
)
。
456
(
大正一一・一〇・一五
旧八・二五
松村真澄
録)
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