霊界物語.ネット
~出口王仁三郎 大図書館~
設定
|
ヘルプ
ホーム
霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第38巻(丑の巻)
序歌
総説
第1篇 千万無量
第1章 道すがら
第2章 吉崎仙人
第3章 帰郷
第4章 誤親切
第5章 三人組
第6章 曲の猛
第7章 火事蚊
第2篇 光風霽月
第8章 三ツ巴
第9章 稍安定
第10章 思ひ出(一)
第11章 思ひ出(二)
第12章 思ひ出(三)
第3篇 冒険神験
第13章 冠島
第14章 沓島
第15章 怒濤
第16章 禁猟区
第17章 旅装
第4篇 霊火山妖
第18章 鞍馬山(一)
第19章 鞍馬山(二)
第20章 元伊勢
第5篇 正信妄信
第21章 凄い権幕
第22章 難症
第23章 狐狸狐狸
第24章 呪の釘
第25章 雑草
第26章 日の出
第27章 仇箒
第28章 金明水
余白歌
×
設定
この文献を王仁DBで開く
印刷用画面を開く
[?]
プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。
[×閉じる]
話者名の追加表示
[?]
セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。
[×閉じる]
追加表示する
追加表示しない
【標準】
表示できる章
テキストのタイプ
[?]
ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。
[×閉じる]
通常のテキスト
【標準】
コピー用のテキスト
文字サイズ
S
【標準】
M
L
ルビの表示
通常表示
【標準】
括弧の中に表示
表示しない
アンカーの表示
[?]
本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。
[×閉じる]
左側だけに表示する
【標準】
表示しない
全てのアンカーを表示
宣伝歌
[?]
宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。
[×閉じる]
一段組
【標準】
二段組
脚注[※]用語解説
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
【標準】
脚注マークを表示しない
脚注[*]編集用
[?]
[※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。
[×閉じる]
脚注マークを表示する
脚注マークを表示しない
【標準】
外字の外周色
[?]
一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。
[×閉じる]
無色
【標準】
赤色
現在のページには外字は使われていません
表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。
【新着情報】
サイトをリニューアルしました。不具合がある場合は
従来バージョン
をお使い下さい|
サブスク
のお知らせ
霊界物語
>
舎身活躍(第37~48巻)
>
第38巻(丑の巻)
> 第3篇 冒険神験 > 第14章 沓島
<<< 冠島
(B)
(N)
怒濤 >>>
第一四章
沓島
(
めしま
)
〔一〇五一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第38巻 舎身活躍 丑の巻
篇:
第3篇 冒険神験
よみ(新仮名遣い):
ぼうけんしんけん
章:
第14章 沓島
よみ(新仮名遣い):
めしま
通し章番号:
1051
口述日:
1922(大正11)年10月17日(旧08月27日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年4月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
[×閉じる]
:
教祖の一行は明治三十三年旧六月八日に冠島の参拝を無事に終えた。次いで、生き神艮の金神を奉祀して天下泰平と皇軍の勝利を祈願しようと、古来人跡なき沓島に渡ることになった。
一行九人は前回同様、舞鶴の大丹生屋に宿泊して舟を雇い、穏やかな海面を沓島に向かって滑り出した。舟人の話によれば、ここ五年ほどでこれほど静穏な海上はないとのことである。
途中すれ違った釣り舟から鯖を二十尾ほど買い上げて、お供え物とした。まずは冠島に上陸し、祝詞を奏上して木下慶太郎、福林安之助、四方祐助、中村竹蔵の四名を島に残し、社殿の清掃を命じた。
その他の教祖、自分、出口澄子、四方平蔵、福島寅之助の五名は沓島に向かった。沓島への途上の巨浪に福島氏は肝をつぶし、船底にしがみついて発動気味になっていた。それ以降、福島氏は二度と沓島には参らないと懲りていた。
冠島で清掃にあたっていた中村竹蔵は激しい腹痛に襲われ、神明に罪を謝したところ激痛が止んだ。頑固な中村も、その神徳に感激した様子であった。
沓島は冠島と違って、人が渡らない島だけに岩に囲まれて適当な上陸地点が見当たらない。教祖はぜひに釣鐘岩につけよ、と言った。自分は縄を持って岸壁に飛びつき、船頭と共に舟を縄で固定した。
少しばかり平面のある場所を頼りに岩場を登って行き、百尺ほど高所の二畳敷きほどの平面の場所に、綾部から持ってきた神祠を設置し艮の大金神国常立尊、竜宮の乙姫、豊玉姫神、玉依姫神をはじめ天神地祇を奉祭し、祈願の祝詞を奏上した。
文禄年間に海賊がこの冠島・沓島を一時ねぐらにしたことがあった以外には、誰も沓島に来たことがないというところへ、百難を排して教祖が渡り、天下無事の祈祷をされたということで、東京の富士新聞や福知山の三丹新聞など諸新聞に掲載された。
沓島参拝を終えた後、冠島に戻り神前に礼拝し、供物を献じて島を一周した。冠島は世界のあらゆる草木の種が集まっていると言われている。世の俗塵を一切払ったような観念が湧いてくる島であり、信徒たる者ぜひ一度参詣すべき場所である。
九日の夕方、無事に舞鶴に到着し、翌日記念撮影をなして、めでたく本宮に帰ることとなった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-11-05 17:14:41
OBC :
rm3814
愛善世界社版:
144頁
八幡書店版:
第7輯 211頁
修補版:
校定版:
147頁
普及版:
74頁
初版:
ページ備考:
001
丹後
(
たんご
)
の
舞鶴
(
まひづる
)
からも
若狭
(
わかさ
)
の
小浜
(
をばま
)
からも、
002
縞
(
しま
)
の
財布
(
さいふ
)
が
空
(
から
)
になると
云
(
い
)
ふ
宮津
(
みやづ
)
からも、
003
丁度
(
ちやうど
)
十
(
じふ
)
里
(
り
)
あると
云
(
い
)
ふ
沖中
(
おきなか
)
の
一
(
ひと
)
つ
島
(
じま
)
で、
004
昔
(
むかし
)
から『
男
(
をとこ
)
は
一生
(
いつしやう
)
に
必
(
かなら
)
ず
一度
(
いちど
)
は
参
(
まゐ
)
れ、
005
二度
(
にど
)
は
参
(
まゐ
)
るな、
006
女
(
をんな
)
は
絶対
(
ぜつたい
)
に
禁制
(
きんせい
)
万一
(
まんいち
)
女
(
をんな
)
が
参拝
(
さんぱい
)
しやうものなら、
007
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
さまの
怒
(
いか
)
りに
触
(
ふ
)
れて
海上
(
かいじやう
)
が
荒
(
あ
)
れ
出
(
だ
)
し、
008
いろいろの
妖怪
(
えうくわい
)
が
出
(
で
)
たり
大蛇
(
をろち
)
が
沢山
(
たくさん
)
現
(
あら
)
はれて
女
(
をんな
)
を
丸呑
(
まるの
)
みにする、
009
さうして
子孫
(
しそん
)
の
代
(
だい
)
迄
(
まで
)
神罰
(
しんばつ
)
を
蒙
(
かうむ
)
る』と
云
(
い
)
ふ
古来
(
こらい
)
の
伝説
(
でんせつ
)
と
迷信
(
めいしん
)
とを
打破
(
だは
)
して、
010
教祖
(
けうそ
)
の
一行
(
いつかう
)
は
恙
(
つつが
)
なく
明治
(
めいじ
)
三十三
(
さんじふさん
)
年
(
ねん
)
旧
(
きう
)
六
(
ろく
)
月
(
ぐわつ
)
八日
(
やうか
)
冠島
(
をしま
)
参拝
(
さんぱい
)
を
遂
(
と
)
げ、
011
今度
(
こんど
)
更
(
さら
)
に
古来
(
こらい
)
人跡
(
じんせき
)
なき
神聖
(
しんせい
)
なる
沓島
(
めしま
)
へ
渡
(
わた
)
つて、
012
天神
(
てんしん
)
地祇
(
ちぎ
)
を
初
(
はじ
)
め
奉
(
たてまつ
)
り、
013
生神
(
いきがみ
)
艮
(
うしとら
)
の
鬼門
(
きもん
)
大金神
(
だいこんじん
)
を
奉祀
(
ほうし
)
して
天下
(
てんか
)
の
泰平
(
たいへい
)
や
皇軍
(
くわうぐん
)
の
大勝利
(
だいしようり
)
を
祈願
(
きぐわん
)
せむと、
014
陰暦
(
いんれき
)
七
(
しち
)
月
(
ぐわつ
)
八日
(
やうか
)
再
(
ふたた
)
び
本宮
(
ほんぐう
)
を
出立
(
しゆつたつ
)
、
015
一行
(
いつかう
)
九
(
く
)
人
(
にん
)
は
前回
(
ぜんくわい
)
同様
(
どうやう
)
大丹生
(
おほにふ
)
屋
(
や
)
で
船
(
ふね
)
を
雇
(
やと
)
ひ、
016
穏
(
おだや
)
かな
海面
(
かいめん
)
を
辷
(
すべ
)
り
乍
(
なが
)
ら
沓島
(
めしま
)
に
向
(
むか
)
つて
漕
(
こ
)
ぎ
出
(
だ
)
した。
017
埠頭
(
ふとう
)
の
万灯
(
まんとう
)
は
海水
(
かいすゐ
)
に
映
(
えい
)
じて
其
(
その
)
色
(
いろ
)
赤
(
あか
)
く
麗
(
うるは
)
しく、
018
港門
(
みなと
)
の
潮水
(
しほみづ
)
は
緑色
(
みどりいろ
)
をなし、
019
海湾
(
かいわん
)
浪
(
なみ
)
静
(
しづか
)
にして
磨
(
みが
)
ける
鏡
(
かがみ
)
の
如
(
ごと
)
く、
020
百鳥
(
ももとり
)
群
(
むら
)
がり
飛
(
と
)
んで
磯端
(
いそばた
)
静
(
しづか
)
に、
021
青松
(
せいしよう
)
浜頭
(
ひんとう
)
に
列
(
つら
)
なり
梢
(
こずゑ
)
を
垂
(
た
)
れ
得
(
え
)
も
言
(
い
)
はれぬ
月夜
(
つきよ
)
の
景色
(
けしき
)
を
眺
(
なが
)
めつつ、
022
午後
(
ごご
)
八
(
はち
)
時
(
じ
)
半
(
はん
)
二隻
(
にせき
)
の
小舟
(
こぶね
)
に
乗
(
の
)
り、
023
舟人
(
ふなびと
)
は
前回
(
ぜんくわい
)
の
如
(
ごと
)
く
橋本
(
はしもと
)
六蔵
(
ろくざう
)
、
024
田中
(
たなか
)
岩吉
(
いはきち
)
の
二
(
に
)
名
(
めい
)
これに
当
(
あた
)
り
声
(
こゑ
)
も
涼
(
すず
)
しく
船唄
(
ふなうた
)
を
唄
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
悠々
(
いういう
)
として
漕
(
こ
)
ぎ
出
(
だ
)
した。
025
満天
(
まんてん
)
梨地色
(
なしぢいろ
)
に
星
(
ほし
)
輝
(
かがや
)
き、
026
波
(
なみ
)
至
(
いた
)
つて
平穏
(
へいおん
)
に、
027
恰
(
あたか
)
も
海面
(
かいめん
)
は
油
(
あぶら
)
を
流
(
なが
)
した
如
(
ごと
)
く、
028
星
(
ほし
)
が
映
(
うつ
)
つてキラキラと
光
(
ひか
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
029
海月
(
くらげ
)
が
浮
(
う
)
いて
行
(
ゆ
)
くの
迄
(
まで
)
が
判然
(
はんぜん
)
と
見
(
み
)
える。
030
銀砂
(
ぎんしや
)
を
敷
(
し
)
いた
上
(
うへ
)
に
居
(
を
)
る
様
(
やう
)
な
心持
(
こころもち
)
がして
極
(
きは
)
めて
安全
(
あんぜん
)
な
航海
(
かうかい
)
である。
031
博奕
(
ばくち
)
ケ
岬
(
さき
)
迄
(
まで
)
行
(
い
)
つた
頃
(
ころ
)
は、
032
八日
(
やうか
)
の
半絃
(
はんげん
)
の
月
(
つき
)
は
海
(
うみ
)
の
彼方
(
かなた
)
に
西渡
(
かたむ
)
き
経
(
きやう
)
ケ
岬
(
みさき
)
の
灯台
(
とうだい
)
は
明々
(
めいめい
)
滅々
(
めつめつ
)
浪
(
なみ
)
のまにまに
漂
(
ただよ
)
ふて
見
(
み
)
える。
033
頭
(
あたま
)
の
上
(
うへ
)
にも
足
(
あし
)
の
下
(
した
)
にも、
034
銀河
(
ぎんが
)
が
横
(
よこたは
)
つて
其
(
その
)
真中
(
まんなか
)
を
敏鎌
(
とがま
)
の
様
(
やう
)
に
冴
(
さ
)
えた
月
(
つき
)
が
静
(
しづ
)
かに
流
(
なが
)
れて、
035
海
(
うみ
)
の
果
(
はて
)
で
合
(
がつ
)
するかと
疑
(
うたが
)
はれるばかりであつた。
036
舟人
(
ふなびと
)
の
話
(
はなし
)
によれば、
037
『
茲
(
ここ
)
三
(
さん
)
年
(
ねん
)
や
五
(
ご
)
年
(
ねん
)
に
今夜
(
こんや
)
位
(
くらゐ
)
静穏
(
せいをん
)
な
海上
(
かいじやう
)
はない。
038
大方
(
おほかた
)
冠島
(
をしま
)
沓島
(
めしま
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
守護
(
しゆご
)
でありませう。
039
ほんに
有
(
あ
)
り
難
(
がた
)
い、
040
勿体
(
もつたい
)
ない』
041
と
喜
(
よろこ
)
び
勇
(
いさ
)
み
乍
(
なが
)
ら、
042
赤
(
あか
)
い
褌
(
ふんどし
)
を
締
(
し
)
め
真裸
(
まつぱだか
)
となつて
節
(
ふし
)
面白
(
おもしろ
)
く
船唄
(
ふなうた
)
を
唄
(
うた
)
ひ
出
(
だ
)
した。
043
万波
(
ばんぱ
)
洋々
(
やうやう
)
たる
海
(
うみ
)
の
彼方
(
かなた
)
には、
044
幾百
(
いくひやく
)
の
漁火
(
いさりび
)
が
波上
(
はじやう
)
に
浮
(
うか
)
み、
045
甲艇
(
かふてい
)
乙舸
(
おつか
)
競
(
きそ
)
ふて
海魚
(
かいぎよ
)
を
漁
(
すなど
)
りする
壮丁
(
さうてい
)
の
声
(
こゑ
)
は
波
(
なみ
)
の
音
(
おと
)
を
掠
(
かす
)
めて
高
(
たか
)
く
聞
(
きこ
)
えて
来
(
く
)
る。
046
此
(
この
)
漁火
(
いさりび
)
を
打見
(
うちみ
)
やれば、
047
恰
(
あたか
)
も
海上
(
かいじやう
)
のイルミネーシヨンを
見
(
み
)
る
様
(
やう
)
である。
048
舟
(
ふね
)
は
容赦
(
ようしや
)
なく
東北
(
とうほく
)
さして
漕
(
こ
)
ぎ
出
(
だ
)
された。
049
二三
(
にさん
)
の
釣舟
(
つりぶね
)
が
二三丁
(
にさんちやう
)
ばかり
傍
(
かたはら
)
に
通
(
とほ
)
りかかるのを、
050
二人
(
ふたり
)
の
船頭
(
せんどう
)
は
大声
(
おほごゑ
)
で
呼
(
よ
)
びとめる。
051
船頭
(
せんどう
)
同志
(
どうし
)
は
互
(
たがひ
)
に
分
(
わ
)
け
隔
(
へだ
)
てなき
間柄
(
あひだがら
)
とて、
052
極
(
きは
)
めて
乱雑
(
らんざつ
)
な
挨拶
(
あいさつ
)
振
(
ぶ
)
り、
053
初
(
はじ
)
めて
聞
(
き
)
いたものは
喧嘩
(
けんくわ
)
ではないかと
疑
(
うたが
)
ふばかりである。
054
此
(
この
)
釣舟
(
つりぶね
)
で
一
(
いつ
)
尺
(
しやく
)
二三寸
(
にさんずん
)
ばかりの
鯖
(
さば
)
を
二十尾
(
にじふび
)
ばかり
買
(
か
)
ひ
求
(
もと
)
めて、
055
冠島
(
をしま
)
沓島
(
めしま
)
への
供
(
そな
)
へ
物
(
もの
)
とした。
056
東
(
ひがし
)
の
空
(
そら
)
はソロソロと
明
(
あか
)
くなり
出
(
だ
)
した。
057
舟人
(
ふなびと
)
は
褌
(
まはし
)
一
(
ひと
)
つになつて、
058
汗
(
あせ
)
をタラタラ
流
(
なが
)
しつつ
力
(
ちから
)
の
極
(
きは
)
み、
059
根限
(
こんかぎ
)
り
漕
(
こ
)
ぎつける。
060
午前
(
ごぜん
)
八
(
はち
)
時
(
じ
)
半
(
はん
)
無事
(
ぶじ
)
に
冠島
(
をしま
)
の
磯際
(
いそぎは
)
についた。
061
『まあ
一安心
(
ひとあんしん
)
だ』と
上陸
(
じやうりく
)
し、
062
神前
(
しんぜん
)
に
向
(
むか
)
つて
教祖
(
けうそ
)
以下
(
いか
)
八
(
はち
)
人
(
にん
)
は
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
終
(
をは
)
つて、
063
木下
(
きのした
)
慶太郎
(
けいたらう
)
、
064
福林
(
ふくばやし
)
安之助
(
やすのすけ
)
、
065
四方
(
しかた
)
祐助
(
いうすけ
)
、
066
中村
(
なかむら
)
竹造
(
たけざう
)
の
四
(
よ
)
名
(
めい
)
を
冠島
(
をしま
)
に
残
(
のこ
)
しおき、
067
神社
(
じんじや
)
境内
(
けいだい
)
の
掃除
(
さうぢ
)
を
命
(
めい
)
じおき、
068
帰途
(
かへりみち
)
に
改
(
あらた
)
めて
参拝
(
さんぱい
)
する
事
(
こと
)
とし
教祖
(
けうそ
)
を
始
(
はじ
)
め
出口
(
でぐち
)
海潮
(
かいてう
)
、
069
出口
(
でぐち
)
澄子
(
すみこ
)
、
070
四方
(
しかた
)
平蔵
(
へいざう
)
、
071
福島
(
ふくしま
)
寅之助
(
とらのすけ
)
の
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
直
(
ただち
)
に
沓島
(
めしま
)
に
向
(
むか
)
つて
出発
(
しゆつぱつ
)
する。
072
福島
(
ふくしま
)
寅之助
(
とらのすけ
)
は
冠島
(
をしま
)
から
沓島
(
めしま
)
へ
行
(
ゆ
)
く
間
(
あひだ
)
の
巨浪
(
きよらう
)
に
肝
(
きも
)
を
潰
(
つぶ
)
し、
073
舟底
(
ふなぞこ
)
に
喰
(
くら
)
ひつき
時々
(
ときどき
)
発動
(
はつどう
)
気味
(
ぎみ
)
になつて
唸
(
うな
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
074
それきり
同人
(
どうにん
)
はコリコリしたと
見
(
み
)
え
沓島
(
めしま
)
へは
再
(
ふたた
)
び
参
(
まゐ
)
らないと
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
075
さて
冠島
(
をしま
)
に
残
(
のこ
)
された
連中
(
れんちう
)
が
一
(
いつ
)
尺
(
しやく
)
以上
(
いじやう
)
も
堆高
(
うづたか
)
く
積
(
つも
)
つて
居
(
ゐ
)
る
庭
(
には
)
一面
(
いちめん
)
の
鳥糞
(
てうふん
)
を
掻
(
か
)
き
浚
(
さら
)
へ、
076
お
庭
(
には
)
を
清
(
きよ
)
める、
077
枯木
(
かれき
)
や
朽葉
(
くちば
)
を
集
(
あつ
)
めて
社
(
やしろ
)
の
傍
(
かたはら
)
の
林
(
はやし
)
の
中
(
なか
)
に
掃
(
は
)
き
寄
(
よ
)
せる
等
(
など
)
、
078
大活動
(
だいくわつどう
)
をやつて
居
(
ゐ
)
た。
079
忽
(
たちま
)
ち
中村
(
なかむら
)
竹造
(
たけざう
)
が
激烈
(
げきれつ
)
な
腹痛
(
ふくつう
)
を
起
(
おこ
)
し
七顛
(
しちてん
)
八倒
(
ばつたう
)
する。
080
全
(
まつた
)
く
神罰
(
しんばつ
)
が
当
(
あた
)
つたのだと
一同
(
いちどう
)
は
恐
(
おそ
)
れ
入
(
い
)
つて
謝罪
(
しやざい
)
をなし、
081
塵
(
ちり
)
芥
(
あくた
)
を
一層
(
いつそう
)
遠
(
とほ
)
き
林
(
はやし
)
の
中
(
なか
)
へ
持
(
も
)
ち
運
(
はこ
)
んだ。
082
神明
(
しんめい
)
聴許
(
ちやうきよ
)
遊
(
あそ
)
ばしたか、
083
俄
(
にはか
)
に
痛
(
いた
)
みも
止
(
と
)
まつたので
頑固
(
ぐわんこ
)
一辺
(
いつぺん
)
の
中村
(
なかむら
)
も、
084
其
(
その
)
神徳
(
しんとく
)
に
感激
(
かんげき
)
した
様
(
やう
)
であつた。
085
教祖
(
けうそ
)
の
一行
(
いつかう
)
は
漸
(
やうや
)
くにして
沓島
(
めしま
)
に
漕
(
こ
)
ぎついた。
086
流石
(
さすが
)
に
昔
(
むかし
)
から
人
(
ひと
)
の
恐
(
おそ
)
れて
近
(
ちか
)
づき
得
(
え
)
ない
神島
(
かみしま
)
だけありて、
087
冠島
(
をしま
)
とは
大変
(
たいへん
)
に
趣
(
おもむき
)
が
違
(
ちが
)
ふてゐる。
088
今日
(
けふ
)
は
格別
(
かくべつ
)
穏
(
おだや
)
かな
海
(
うみ
)
だと
云
(
い
)
ふに
拘
(
かか
)
はらず、
089
山
(
やま
)
の
如
(
ごと
)
きウネリが
頻
(
しき
)
りに
打
(
う
)
ち
寄
(
よ
)
せて
来
(
く
)
る。
090
鴎
(
かもめ
)
や
信天翁
(
あはうどり
)
、
091
鵜
(
う
)
などが
岩
(
いは
)
一面
(
いちめん
)
に
胡麻
(
ごま
)
を
振
(
ふ
)
りかけた
様
(
やう
)
に
止
(
と
)
まつて、
092
不思議
(
ふしぎ
)
相
(
さう
)
に
一行
(
いつかう
)
を
見下
(
みお
)
ろして
居
(
ゐ
)
る。
093
波
(
なみ
)
の
上
(
うへ
)
には
数万
(
すうまん
)
の
海鳥
(
かいてう
)
が
浮
(
う
)
きつ
沈
(
しづ
)
みつ、
094
悠々
(
いういう
)
と
遊
(
あそ
)
んでゐる。
095
音
(
おと
)
に
名高
(
なだか
)
き
断岩
(
だんがん
)
絶壁
(
ぜつぺき
)
、
096
小舟
(
こぶね
)
を
漕
(
こ
)
ぎ
寄
(
よ
)
せる
場所
(
ばしよ
)
が
見
(
み
)
つからぬ。
097
兎
(
と
)
も
角
(
かく
)
も
此
(
この
)
島
(
しま
)
を
一周
(
いつしう
)
して
適当
(
てきたう
)
な
上陸点
(
じやうりくてん
)
を
探
(
さぐ
)
らうと
評定
(
へうぢやう
)
して
居
(
ゐ
)
ると、
098
教祖
(
けうそ
)
が
是非
(
ぜひ
)
に
釣鐘岩
(
つりがねいは
)
へ
舟
(
ふね
)
を
着
(
つ
)
けよと
云
(
い
)
はれる。
099
命
(
めい
)
のまにまに
釣鐘岩
(
つりがねいは
)
の
直下
(
ちよつか
)
へ
漕
(
こ
)
ぎつけて
見
(
み
)
ると、
100
恰
(
あたか
)
も
人
(
ひと
)
の
背中
(
せなか
)
の
如
(
ごと
)
く
険峻
(
けんしゆん
)
な
断岩
(
だんがん
)
で
如何
(
どう
)
しても
掻
(
か
)
きつく
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ない。
101
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
してゐると、
102
激浪
(
げきらう
)
のために
舟
(
ふね
)
を
岩
(
いは
)
に
衝突
(
しようとつ
)
させ、
103
破壊
(
はくわい
)
して
了
(
しま
)
ふ
虞
(
おそれ
)
があるから、
104
瞬時
(
しゆんじ
)
も
躊躇
(
ちうちよ
)
してをる
場合
(
ばあひ
)
でない。
105
海潮
(
かいてう
)
は『
地獄
(
ぢごく
)
の
上
(
うへ
)
の
一足飛
(
いつそくと
)
び』と
云
(
い
)
ふ
様
(
やう
)
な
肝
(
きも
)
を
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
して
腰
(
こし
)
に
八尋縄
(
やひろなは
)
を
結
(
むす
)
びつけたまま、
106
舟
(
ふね
)
が
波
(
なみ
)
にうたれて
岩
(
いは
)
に
近
(
ちか
)
づいた
一刹那
(
いちせつな
)
を
睨
(
ねら
)
ひすまして、
107
岩壁
(
がんぺき
)
目蒐
(
めが
)
けて
飛
(
と
)
びついた。
108
幸
(
さいはひ
)
にも
粗質
(
そしつ
)
な
岩
(
いは
)
で
手足
(
てあし
)
が
滑
(
すべ
)
らぬ、
109
一丈
(
いちぢやう
)
四五
(
しご
)
尺
(
しやく
)
程
(
ほど
)
の
上
(
うへ
)
の
方
(
はう
)
に
少
(
すこ
)
しばかりの
平面
(
へいめん
)
な
処
(
ところ
)
がある。
110
そこから
舟
(
ふね
)
を
目蒐
(
めが
)
けて
縄
(
なは
)
の
片端
(
かたはし
)
を
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
めば、
111
舟人
(
ふなびと
)
が
手早
(
てばや
)
く
拾
(
ひろ
)
ふて
舟
(
ふね
)
に
結
(
むす
)
びつける。
112
最早
(
もはや
)
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だと
岩上
(
がんじやう
)
からは
上田
(
うへだ
)
の
海潮
(
かいてう
)
が
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
縄
(
なは
)
を
手繰
(
たぐ
)
り
寄
(
よ
)
せる。
113
下
(
した
)
からは
真正
(
しんせい
)
の
海潮
(
かいてう
)
が
教祖
(
けうそ
)
を
乗
(
の
)
せた
舟
(
ふね
)
を
目
(
め
)
がけて
押
(
お
)
し
寄
(
よ
)
せ、
114
来
(
く
)
るや
来
(
く
)
るや
母曾呂
(
もそろ
)
々々々
(
もそろ
)
に
持
(
も
)
ち
渡
(
わた
)
す。
115
教祖
(
けうそ
)
は
手早
(
てばや
)
く
縄
(
なは
)
に
縋
(
すが
)
り
乍
(
なが
)
ら
漸
(
やうや
)
く
上陸
(
じやうりく
)
された。
116
続
(
つづ
)
いて
三
(
さん
)
人
(
にん
)
も
登
(
のぼ
)
つて
来
(
き
)
た。
117
綾部
(
あやべ
)
で
組
(
く
)
み
立
(
た
)
てて
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
た
神祠
(
ほこら
)
をといて、
118
柱
(
はしら
)
一本
(
いつぽん
)
づつ
舟人
(
ふなびと
)
が
縄
(
なは
)
で
縛
(
しば
)
る、
119
四方
(
しかた
)
と
福島
(
ふくしま
)
がひきあげる。
120
漸
(
やうや
)
く
百
(
ひやく
)
尺
(
しやく
)
ばかりもある
高所
(
かうしよ
)
の
二畳敷
(
にでふじき
)
ほどの
平面
(
へいめん
)
の
岩
(
いは
)
の
上
(
うへ
)
を
鎮祭所
(
ちんさいじよ
)
となし、
121
一
(
いち
)
時間
(
じかん
)
あまりもかかつて
漸
(
やうや
)
く
神祠
(
ほこら
)
を
建
(
た
)
て
上
(
あ
)
げ、
122
艮
(
うしとら
)
の
大金神
(
だいこんじん
)
国常立
(
くにとこたちの
)
尊
(
みこと
)
、
123
竜宮
(
りうぐう
)
の
乙姫
(
おとひめ
)
、
124
豊玉姫
(
とよたまひめの
)
神
(
かみ
)
、
125
玉依姫
(
たまよりひめの
)
神
(
かみ
)
を
始
(
はじ
)
め、
126
天地
(
てんち
)
八百万
(
やほよろづ
)
の
神
(
かみ
)
等
(
たち
)
を
奉斎
(
ほうさい
)
し、
127
山野
(
さんや
)
河海
(
かかい
)
の
珍物
(
うましもの
)
を
供
(
そな
)
へ
終
(
をは
)
り、
128
教祖
(
けうそ
)
は
恭
(
うやうや
)
しく
祠前
(
しぜん
)
に
静座
(
せいざ
)
して
声音
(
せいおん
)
朗
(
ほがら
)
かに
天下
(
てんか
)
泰平
(
たいへい
)
神軍
(
しんぐん
)
大勝利
(
だいしようり
)
の
祈願
(
きぐわん
)
の
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
される。
129
話
(
はなし
)
は
一寸
(
ちよつと
)
後前
(
あとさき
)
になつたが、
130
第一着
(
だいいちちやく
)
に
海潮
(
かいてう
)
が
遷座式
(
せんざしき
)
の
祝詞
(
のりと
)
を
恐
(
かしこ
)
み
恐
(
かしこ
)
み
白
(
まを
)
し
上
(
あ
)
げ、
131
最後
(
さいご
)
に
一同
(
いちどう
)
打揃
(
うちそろ
)
ふて
大祓
(
おほはらひ
)
の
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
した。
132
島
(
しま
)
の
群鳥
(
むらどり
)
は
祝詞
(
のりと
)
を
拝聴
(
はいちやう
)
するものの
如
(
ごと
)
くである。
133
何分
(
なにぶん
)
北
(
きた
)
は
露西亜
(
ロシア
)
の
浦塩斯徳
(
ウラジオストツク
)
港
(
かう
)
迄
(
まで
)
つつ
放
(
ぱな
)
しの
島
(
しま
)
であるから、
134
日本海
(
にほんかい
)
の
激浪
(
げきらう
)
怒濤
(
どたう
)
は
皆
(
みな
)
此
(
この
)
沓島
(
めしま
)
の
釣鐘岩
(
つりがねいは
)
に
打
(
ぶつ
)
かるので
一面
(
いちめん
)
に
洗
(
あら
)
ひ
去
(
さ
)
られて、
135
此
(
この
)
方面
(
はうめん
)
は
岩
(
いは
)
ばかりで
土
(
つち
)
の
気
(
け
)
は
見
(
み
)
たいと
思
(
おも
)
ふても
見当
(
みあた
)
らなかつた。
136
沖
(
おき
)
の
方
(
はう
)
から
時々
(
ときどき
)
寄
(
よ
)
せ
来
(
く
)
る
山
(
やま
)
の
様
(
やう
)
に
大
(
おほ
)
きな
浪
(
なみ
)
が
此
(
この
)
釣鐘岩
(
つりがねいは
)
に
衝突
(
しようとつ
)
して、
137
百雷
(
ひやくらい
)
の
一
(
いち
)
時
(
じ
)
に
鳴
(
な
)
り
響
(
ひび
)
く
様
(
やう
)
に、
138
ゴンゴン ドドンドドンと
烈
(
はげ
)
しき
音
(
おと
)
が
耳
(
みみ
)
を
刺戟
(
しげき
)
する。
139
舟人
(
ふなびと
)
は
今日
(
けふ
)
は
数年来
(
すうねんらい
)
に
見
(
み
)
た
事
(
こと
)
のない
穏
(
おだや
)
かの
波
(
なみ
)
だと
云
(
い
)
つた
浪
(
なみ
)
でさへも、
140
これ
位
(
くらゐ
)
の
音
(
おと
)
がするのだもの、
141
海
(
うみ
)
の
荒
(
あ
)
れた
日
(
ひ
)
にはどんなに
烈
(
はげ
)
しからうと
思
(
おも
)
へば、
142
凄
(
すご
)
い
様
(
やう
)
な
心持
(
こころもち
)
がして
来
(
き
)
た。
143
船人
(
ふなびと
)
の
語
(
かた
)
る
所
(
ところ
)
によれば
此
(
この
)
釣鐘岩
(
つりがねいは
)
には、
144
文禄
(
ぶんろく
)
年間
(
ねんかん
)
に
三種
(
みくさ
)
四郎
(
しらう
)
左衛門
(
ざゑもん
)
と
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
、
145
数百
(
すうひやく
)
人
(
にん
)
の
部下
(
ぶか
)
を
引率
(
ひきつ
)
れ
冠島
(
をしま
)
を
策源地
(
さくげんち
)
として
陣屋
(
ぢんや
)
を
構
(
かま
)
へ、
146
時
(
とき
)
の
天下
(
てんか
)
を
横領
(
わうりやう
)
せむと
軍資金
(
ぐんしきん
)
を
集
(
あつ
)
むるために
海上
(
かいじやう
)
往来
(
わうらい
)
の
船舶
(
せんぱく
)
を
掠
(
かす
)
め
海賊
(
かいぞく
)
を
稼
(
かせ
)
いで、
147
此
(
この
)
岩
(
いは
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
に
半鐘
(
はんしよう
)
を
釣
(
つ
)
り
斥候
(
せきこう
)
の
合図
(
あひづ
)
をし
冠島
(
をしま
)
との
連絡
(
れんらく
)
をとつて
居
(
ゐ
)
たので、
148
被害者
(
ひがいしや
)
は
数
(
かず
)
ふるに
暇
(
ひま
)
なき
迄
(
まで
)
続出
(
ぞくしゆつ
)
したので、
149
武勇
(
ぶゆう
)
の
誉
(
ほまれ
)
高
(
たか
)
き
豪傑
(
がうけつ
)
岩見
(
いはみ
)
重太郎
(
ぢうたらう
)
がこれを
聞
(
き
)
いて
捨
(
す
)
ておけぬと
計略
(
けいりやく
)
を
以
(
もつ
)
て
呉服屋
(
ごふくや
)
に
化
(
ば
)
け、
150
一人
(
ひとり
)
一人
(
ひとり
)
舞鶴
(
まひづる
)
へ
引寄
(
ひきよ
)
せ
牢獄
(
らうごく
)
に
打
(
う
)
ち
込
(
こ
)
み、
151
悉皆
(
しつかい
)
退治
(
たいぢ
)
したと
伝
(
つた
)
ふる
有名
(
いうめい
)
な
島
(
しま
)
で、
152
其
(
その
)
後
(
ご
)
は
釣鐘島
(
つりがねしま
)
、
153
鬼門島
(
きもんじま
)
と
称
(
しよう
)
し、
154
誰
(
たれ
)
も
此
(
この
)
沓島
(
めしま
)
へは
来
(
き
)
たものはないと
云
(
い
)
つてゐた。
155
然
(
しか
)
るに
今回
(
こんくわい
)
初
(
はじ
)
めて
教祖
(
けうそ
)
が
世界
(
せかい
)
万民
(
ばんみん
)
のために、
156
百難
(
ひやくなん
)
を
排
(
はい
)
して
渡
(
わた
)
り
来
(
こ
)
られ、
157
神々
(
かみがみ
)
様
(
さま
)
を
奉祀
(
ほうし
)
し、
158
天下
(
てんか
)
無事
(
ぶじ
)
の
祈祷
(
きたう
)
をされたのは
実
(
じつ
)
に
前代
(
ぜんだい
)
未聞
(
みもん
)
の
壮挙
(
さうきよ
)
であると
云
(
い
)
ふので、
159
東京
(
とうきやう
)
の
富士
(
ふじ
)
新聞
(
しんぶん
)
や
福知山
(
ふくちやま
)
の
三丹
(
さんたん
)
新聞
(
しんぶん
)
を
始
(
はじ
)
め
其
(
その
)
他
(
た
)
の
諸新聞
(
しよしんぶん
)
に
連載
(
れんさい
)
された
事
(
こと
)
がある。
160
さて
此
(
この
)
島
(
しま
)
を
一周
(
ひとめぐ
)
りして、
161
奇岩
(
きがん
)
絶壁
(
ぜつぺき
)
を
嘆賞
(
たんしやう
)
しつつ
冠島
(
をしま
)
へ
再
(
ふたた
)
び
舟
(
ふね
)
を
漕
(
こ
)
ぎ
寄
(
よ
)
せ、
162
一行
(
いつかう
)
九
(
く
)
人
(
にん
)
打揃
(
うちそろ
)
ふて
神前
(
しんぜん
)
に
拝礼
(
はいれい
)
し、
163
供物
(
くぶつ
)
を
献
(
けん
)
じ
終
(
をは
)
つて
又
(
また
)
此
(
この
)
冠島
(
をしま
)
も
一周
(
いつしう
)
する
事
(
こと
)
となつた。
164
周囲
(
しうゐ
)
四十
(
しじふ
)
有余
(
いうよ
)
丁
(
ちやう
)
あり、
165
世界
(
せかい
)
の
所在
(
あらゆる
)
草木
(
さうもく
)
の
種子
(
たね
)
は
皆
(
みな
)
此
(
この
)
島
(
しま
)
に
集
(
あつ
)
まつてあると
云
(
い
)
はれてある。
166
昔
(
むかし
)
は
陸稲
(
をかぼ
)
も
自然
(
しぜん
)
に
出来
(
でき
)
てゐたのを、
167
大浦村
(
おほうらむら
)
の
百姓
(
ひやくしやう
)
が
肥料
(
こやし
)
を
施
(
ほどこ
)
して
汚
(
けが
)
したので、
168
其
(
その
)
後
(
ご
)
は
稲
(
いね
)
は
一株
(
ひとかぶ
)
も
出来
(
でき
)
なくなり、
169
雑草
(
ざつさう
)
が
密生
(
みつせい
)
する
様
(
やう
)
になつたのだと
二人
(
ふたり
)
が
話
(
はな
)
しつつ
覗
(
のぞ
)
き
岩
(
いは
)
迄
(
まで
)
漕
(
こ
)
ぎつけて
見
(
み
)
れば、
170
数十丈
(
すうじふぢやう
)
の
岩石
(
がんせき
)
に
自然
(
しぜん
)
の
隧道
(
トンネル
)
が
穿
(
うが
)
たれてある。
171
屏風
(
びやうぶ
)
を
立
(
た
)
てた
様
(
やう
)
な
岩
(
いは
)
や
書籍
(
しよせき
)
を
積
(
つ
)
み
重
(
かさ
)
ねた
様
(
やう
)
な
岩
(
いは
)
立
(
た
)
ち
並
(
なら
)
び、
172
竜
(
りう
)
飛
(
と
)
び
虎
(
とら
)
馳
(
はし
)
る
如
(
ごと
)
き
不思議
(
ふしぎ
)
の
岩
(
いは
)
が
海中
(
かいちう
)
に
立
(
た
)
つてゐる。
173
少
(
すこ
)
しく
舟
(
ふね
)
を
西北
(
せいほく
)
へ
進
(
すす
)
めると、
174
一望
(
いちばう
)
肝
(
きも
)
を
消
(
け
)
すの
断巌
(
だんがん
)
、
175
一瞻
(
いつせん
)
胸
(
むね
)
を
轟
(
とどろ
)
かすの
碧潮
(
へきてう
)
に
鯛魚
(
たひぎよ
)
の
群
(
むれ
)
をなして
縦
(
たて
)
に
泳
(
およ
)
ぎ、
176
緯
(
よこ
)
に
潜
(
ひそ
)
み、
177
翠紅
(
すゐこう
)
、
178
色
(
いろ
)
交々
(
こもごも
)
乱
(
みだ
)
れて
恰
(
あたか
)
も
錦綾
(
きんれう
)
の
如
(
ごと
)
く、
179
感賞
(
かんしやう
)
久
(
ひさ
)
しうして
帰
(
かへ
)
る
事
(
こと
)
を
忘
(
わす
)
れるに
至
(
いた
)
る。
180
此処
(
ここ
)
に
暫
(
しばら
)
く
遊
(
あそ
)
んでゐると、
181
十
(
じふ
)
年
(
ねん
)
も
寿命
(
じゆみやう
)
がのびる
様
(
やう
)
である。
182
世
(
よ
)
の
俗塵
(
ぞくぢん
)
一切
(
いつさい
)
を
払拭
(
ふつしき
)
し
去
(
さ
)
つた
様
(
やう
)
な
観念
(
くわんねん
)
が
胸
(
むね
)
に
湧
(
わ
)
いて
来
(
く
)
る。
183
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
男女
(
だんぢよ
)
を
問
(
と
)
はず
信徒
(
しんと
)
たるものは
一度
(
いちど
)
は
是非
(
ぜひ
)
参詣
(
さんけい
)
すべき
処
(
ところ
)
である。
184
九日
(
ここのか
)
の
夕方
(
ゆふがた
)
、
185
恙
(
つつが
)
なく
舞鶴
(
まひづる
)
へ
帰着
(
きちやく
)
し
翌
(
よく
)
十日
(
とをか
)
舞鶴
(
まひづる
)
京口町
(
きやうぐちまち
)
で
一行
(
いつかう
)
記念
(
きねん
)
の
撮影
(
さつえい
)
をなし、
186
目出度
(
めでたく
)
本宮
(
ほんぐう
)
へ
帰
(
かへ
)
る
事
(
こと
)
となつた。
187
(
大正一一・一〇・一七
旧八・二七
北村隆光
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 冠島
(B)
(N)
怒濤 >>>
霊界物語
>
舎身活躍(第37~48巻)
>
第38巻(丑の巻)
> 第3篇 冒険神験 > 第14章 沓島
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【
メールアドレス
】
【第14章 沓島|第38巻|舎身活躍|霊界物語|/rm3814】
合言葉「みろく」を入力して下さい→