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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第38巻(丑の巻)
序歌
総説
第1篇 千万無量
第1章 道すがら
第2章 吉崎仙人
第3章 帰郷
第4章 誤親切
第5章 三人組
第6章 曲の猛
第7章 火事蚊
第2篇 光風霽月
第8章 三ツ巴
第9章 稍安定
第10章 思ひ出(一)
第11章 思ひ出(二)
第12章 思ひ出(三)
第3篇 冒険神験
第13章 冠島
第14章 沓島
第15章 怒濤
第16章 禁猟区
第17章 旅装
第4篇 霊火山妖
第18章 鞍馬山(一)
第19章 鞍馬山(二)
第20章 元伊勢
第5篇 正信妄信
第21章 凄い権幕
第22章 難症
第23章 狐狸狐狸
第24章 呪の釘
第25章 雑草
第26章 日の出
第27章 仇箒
第28章 金明水
余白歌
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霊界物語
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舎身活躍(第37~48巻)
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第38巻(丑の巻)
> 第2篇 光風霽月 > 第10章 思ひ出(一)
<<< 稍安定
(B)
(N)
思ひ出(二) >>>
第一〇章
思
(
おも
)
ひ
出
(
で
)
(一)〔一〇四七〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第38巻 舎身活躍 丑の巻
篇:
第2篇 光風霽月
よみ(新仮名遣い):
こうふうせいげつ
章:
第10章 思ひ出(一)
よみ(新仮名遣い):
おもいで
通し章番号:
1047
口述日:
1922(大正11)年10月16日(旧08月26日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年4月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
明治三十四年の十月ごろの話である。警察署から毎日のように、宗教として認可を得なければ布教を許さないと言ってきた。明治二十二年の憲法発布で信教の自由が許されて以来、そんなことはない、と反論しても承知しない。
しまいには入り口に巡査を張り番させるようになり、信者が来なくなってしまった。教祖様は神様に伺って、警察の言うことは取り合わないように、と申し渡したが、警察の干渉はますます激しくなるので、教祖様へは内密にして静岡の稲荷講社の長沢翁に相談に行った。
教祖様はこれを聞いて怒り、弥仙山の中腹の社にお隠れになってしまった。自分は何も知らずに、長沢翁と相談したとおり京都で宗教法人の手続きをしようとしたが、印形がひとつ足りない。
そこで連れの者を綾部に使いに出し、自分は京都に残って布教をしていた。しかし使いの者は一向に戻ってこず、綾部から五人の信者がやってきて、京都でしばらく稲荷縛りをしようという。
そこで稲荷下げを縛って歩いていたが、あるところでインチキ託宣の化けの皮をはいだところ、そこの稲荷の信者と喧嘩になり、向こうはゴロツキも呼んできて大騒ぎになった。すると五人の信者はいつのまにか向こうについてしまった。
しかし、なぜか稲荷下げの陣営は、味方のゴロツキと喜楽を取り違え、金明会の五人と味方のはずのゴロツキを打ちすえてしまった。喜楽は駐在所に逃げ込んでかくまってもらい、そこを出るときに正体がばれそうになったが、京都の侠客に送ってもらい、無事に綾部に着いた。
帰ってみると、中村や四方春蔵が自分の荷物をひっくくって片づけてしまっている。そして教祖様は弥仙山の社に勝手にこもったということで、駐在所に引っ張られていた。
喜楽が駐在所に駆け付けて、代わりに尋問を受けた。信教の自由を盾に尋問に答えて、その場は帰してもらうことになった。実際には、教祖様は社の神主に許可を取って籠ったのであって、勝手に社に入ったわけではなかったのであった。
弥仙山籠りの件はこれで方が付いたが、幹部連中が上田は悪神だと言ってやってきてしきりに喜楽を困らせた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-11-03 14:57:59
OBC :
rm3810
愛善世界社版:
104頁
八幡書店版:
第7輯 196頁
修補版:
校定版:
104頁
普及版:
52頁
初版:
ページ備考:
001
明治
(
めいぢ
)
三十四
(
さんじふよ
)
年
(
ねん
)
十
(
じふ
)
月
(
ぐわつ
)
、
002
大本
(
おほもと
)
の
祭壇
(
さいだん
)
が、
003
旧広前
(
きうひろまへ
)
の
二階
(
にかい
)
にあつた
頃
(
ころ
)
の
話
(
はなし
)
である。
004
警察署
(
けいさつしよ
)
から
毎日
(
まいにち
)
の
様
(
やう
)
にやつて
来
(
き
)
て、
005
宗教
(
しうけう
)
として
認可
(
にんか
)
を
受
(
う
)
けなければ
布教
(
ふけう
)
を
許
(
ゆる
)
さないと
云
(
い
)
つて
頑張
(
ぐわんば
)
るのである。
006
明治
(
めいぢ
)
二十二
(
にじふに
)
年
(
ねん
)
憲法
(
けんぱふ
)
の
発布
(
はつぷ
)
によつて
信教
(
しんけう
)
の
自由
(
じいう
)
が
許
(
ゆる
)
されてから、
007
そんな
筈
(
はず
)
はないと
理窟
(
りくつ
)
を
言
(
い
)
つて
見
(
み
)
ても
堂
(
どう
)
しても
承知
(
しようち
)
しない。
008
仕舞
(
しまひ
)
には
巡査
(
じゆんさ
)
を
前
(
まへ
)
に
張番
(
はりばん
)
させると
云
(
い
)
つた
様
(
やう
)
な
訳
(
わけ
)
で、
009
信者
(
しんじや
)
までが
嫌
(
きら
)
つて
遣
(
や
)
つて
来
(
こ
)
ない
様
(
やう
)
な
始末
(
しまつ
)
だ。
010
是
(
これ
)
では
困
(
こま
)
るから
思
(
おも
)
いきつて
皇道会
(
くわうだうくわい
)
といふ
法人
(
ほうじん
)
組織
(
そしき
)
に
改
(
あらた
)
めやうとして、
011
静岡
(
しづをか
)
の
長沢
(
ながさは
)
雄楯
(
かつたて
)
と
云
(
い
)
ふ
人
(
ひと
)
の
処
(
ところ
)
へ
相談
(
さうだん
)
に
行
(
ゆ
)
かうと
考
(
かんが
)
へたところが、
012
教祖
(
けうそ
)
様
(
さま
)
は
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
伺
(
うかが
)
はれて、
013
仮令
(
たとへ
)
警察
(
けいさつ
)
から
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つて
来
(
こ
)
ようと
構
(
かま
)
はぬから、
014
其
(
その
)
儘
(
まま
)
に
打捨
(
うちす
)
てて
置
(
お
)
けと
云
(
い
)
ふお
話
(
はなし
)
であるが、
015
警察
(
けいさつ
)
の
干渉
(
かんせう
)
は
益々
(
ますます
)
激
(
はげ
)
しくなる
一方
(
いつぱう
)
なので、
016
如何
(
どう
)
しても
打捨
(
うちす
)
てて
置
(
お
)
くといふ
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
かなくなつて
来
(
き
)
た。
017
そこで
教祖
(
けうそ
)
様
(
さま
)
へは
内密
(
ないみつ
)
にして、
018
木下
(
きのした
)
(
出口
(
でぐち
)
)
慶太郎
(
けいたらう
)
を
連
(
つ
)
れて
静岡
(
しづをか
)
へ
出掛
(
でか
)
けたのである。
019
留守中
(
るすちう
)
に
教祖
(
けうそ
)
様
(
さま
)
は
此
(
この
)
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
かれて、
020
上田
(
うへだ
)
喜三郎
(
きさぶらう
)
(
瑞月
(
ずゐげつ
)
旧名
(
きうめい
)
)の
所業
(
しよげふ
)
は
神勅
(
しんちよく
)
に
反
(
そむ
)
く
怪
(
け
)
しからぬ
所業
(
しよげふ
)
だ、
021
神代
(
かみよ
)
の
須佐之男
(
すさのをの
)
尊
(
みこと
)
の
御
(
おん
)
行跡
(
ぎやうせき
)
と
等
(
ひと
)
しきものだと
云
(
い
)
つて、
022
弥仙
(
みせん
)
の
中腹
(
ちうふく
)
にある
彦
(
ひこ
)
火々出見
(
ほほでみの
)
命
(
みこと
)
のお
社
(
やしろ
)
の
内
(
うち
)
へ
岩戸隠
(
いはとがく
)
れをされて
仕舞
(
しま
)
つた。
023
そんな
事
(
こと
)
とは
夢
(
ゆめ
)
にも
知
(
し
)
らぬ
両人
(
りやうにん
)
は、
024
静岡
(
しづをか
)
で
相談
(
さうだん
)
をして
帰
(
かへ
)
り、
025
京都府
(
きやうとふ
)
へよつて
手続
(
てつづき
)
をしようとしたのであつたが、
026
印形
(
いんぎやう
)
が
一
(
ひと
)
つ
足
(
た
)
らぬので
手続
(
てつづき
)
が
出来
(
でき
)
なくなり、
027
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず
木下
(
きのした
)
に
命
(
めい
)
じて
印形
(
いんぎやう
)
を
取
(
と
)
りに
綾部
(
あやべ
)
へ
返
(
かへ
)
し、
028
自分
(
じぶん
)
は
京都
(
きやうと
)
に
滞在
(
たいざい
)
して
布教
(
ふけう
)
に
従事
(
じうじ
)
して
居
(
ゐ
)
た。
029
其
(
その
)
頃
(
ころ
)
の
大本
(
おほもと
)
の
幹部
(
かんぶ
)
は
実
(
じつ
)
に
混沌
(
こんとん
)
たるものであつて、
030
愚直
(
ぐちよく
)
な
連中
(
れんちう
)
は
迷信
(
めいしん
)
に
陥
(
おちい
)
つて
仕舞
(
しま
)
ひ、
031
野心家
(
やしんか
)
はそれを
利用
(
りよう
)
して、
032
隙
(
すき
)
があつたら
自分
(
じぶん
)
を
排斥
(
はいせき
)
しやうといふ
考
(
かんが
)
へであつた。
033
そして
其
(
その
)
野心家
(
やしんか
)
の
間
(
あひだ
)
にも
亦
(
また
)
絶
(
た
)
えず
暗闘
(
あんとう
)
があつたのである。
034
印形
(
いんぎやう
)
を
取
(
と
)
りに
帰
(
かへ
)
つた
木下
(
きのした
)
は
梨
(
なし
)
の
礫
(
つぶて
)
で
一向
(
いつかう
)
消息
(
せうそく
)
がない。
035
そして
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
ない
信者
(
しんじや
)
の
連中
(
れんちう
)
がやつて
来
(
き
)
て、
036
京都
(
きやうと
)
に
沢山
(
たくさん
)
ある
稲荷下
(
いなりさ
)
げの
様
(
やう
)
な
交霊術
(
かうれいじゆつ
)
者
(
しや
)
を
一々
(
いちいち
)
訪問
(
はうもん
)
して、
037
霊力
(
れいりよく
)
を
試
(
ため
)
して
見
(
み
)
やうと
云
(
い
)
ひ
出
(
だ
)
した。
038
仕方
(
しかた
)
がないから
片端
(
かたはし
)
から
廻
(
まは
)
つてあるいて、
039
沢山
(
たくさん
)
な
稲荷下
(
いなりさ
)
げを
縛
(
しば
)
つて
歩
(
ある
)
いた。
040
伏見
(
ふしみ
)
の
横内
(
よこうち
)
に
青柴
(
あをしば
)
つゆといふ
稲荷下
(
いなりさ
)
げがゐて、
041
伏見
(
ふしみ
)
の
人
(
ひと
)
から
崇拝
(
すうはい
)
されて
居
(
ゐ
)
るといふ
噂
(
うはさ
)
を
聞
(
き
)
いてやつて
行
(
い
)
つた。
042
とても
堂々
(
だうだう
)
とやつて
行
(
い
)
つては
断
(
ことわ
)
られるに
極
(
きま
)
つて
居
(
ゐ
)
ると
考
(
かんが
)
へたから、
043
百姓
(
ひやくしやう
)
の
様
(
やう
)
にして
化込
(
ばけこ
)
んだ。
044
同行者
(
どうげうしや
)
は
松井
(
まつゐ
)
、
045
松浦
(
まつうら
)
、
046
田中
(
たなか
)
徳
(
とく
)
、
047
時田
(
ときだ
)
、
048
三牧
(
みまき
)
などと
云
(
い
)
ふ
連中
(
れんちう
)
であつた。
049
上田
(
うへだ
)
喜三郎
(
きさぶろう
)
といふ
者
(
もの
)
が
家出
(
いへで
)
をして
行衛
(
ゆくゑ
)
が
分
(
わか
)
らぬから、
050
何処
(
どこ
)
に
居
(
ゐ
)
るか、
051
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
伺
(
うかが
)
つて
戴
(
いただ
)
きたいと
云
(
い
)
ふと、
052
勿体
(
もつたい
)
らしく
咳払
(
せきばら
)
ひなどして、
053
其
(
その
)
人
(
ひと
)
は
百
(
ひやく
)
両
(
りやう
)
の
金子
(
きんす
)
を
持出
(
もちだ
)
して
逐電
(
ちくでん
)
したのであつて、
054
巽
(
たつみ
)
の
方角
(
はうがく
)
に
行
(
い
)
つたといふ。
055
それなら
一
(
ひと
)
つ
金縛
(
かなしば
)
りにして
戴
(
いただ
)
きたいと
云
(
い
)
ふと、
056
縛
(
しば
)
るには
七
(
しち
)
両
(
りやう
)
金
(
きん
)
が
要
(
い
)
ると
云
(
い
)
ふ。
057
それから
自分
(
じぶん
)
が
進
(
すす
)
み
出
(
い
)
で、
058
実
(
じつ
)
は
病気
(
びやうき
)
で
困
(
こま
)
つて
居
(
ゐ
)
るのであるが、
059
何
(
なん
)
の
病気
(
びやうき
)
であるか
伺
(
うかが
)
つて
頂
(
いただ
)
きたいといふと、
060
短
(
みじか
)
い
御幣
(
ごへい
)
をトントンと
叩
(
たた
)
いて、
061
是
(
これ
)
は
腹中
(
ふくちう
)
に
大蛇
(
をろち
)
がゐる、
062
住宅
(
ぢうたく
)
の
乾
(
いぬゐ
)
の
方角
(
はうがく
)
に
当
(
あた
)
る
倉
(
くら
)
の
処
(
ところ
)
にゐた
大蛇
(
をろち
)
が
腹中
(
ふくちう
)
に
這入
(
はい
)
つたのだといふ。
063
住宅
(
ぢうたく
)
の
乾
(
いぬゐ
)
には
池
(
いけ
)
はあるが
倉
(
くら
)
はありませぬがといふと
神
(
かみ
)
に
向
(
むか
)
つて
無礼
(
ぶれい
)
な
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ふなと、
064
とても
御
(
お
)
話
(
はなし
)
にならぬ
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ひ
出
(
だ
)
すから、
065
時田
(
ときだ
)
が
化
(
ばけ
)
の
皮
(
かは
)
を
現
(
あら
)
はして、
066
馬鹿
(
ばか
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
へ、
067
此
(
この
)
人
(
ひと
)
が
上田
(
うへだ
)
喜三郎
(
きさぶろう
)
の
本人
(
ほんにん
)
だ、
068
病気
(
びやうき
)
も
何
(
なに
)
もしてゐない。
069
吾々
(
われわれ
)
は
新聞
(
しんぶん
)
の
種
(
たね
)
をとりに
来
(
き
)
たのであるから、
070
今日
(
けふ
)
の
出来事
(
できごと
)
を
書面
(
しよめん
)
にして
事実
(
じじつ
)
通
(
どほ
)
り
証明
(
しようめい
)
せよといつて
苛
(
いぢ
)
め
出
(
だ
)
した。
071
横内
(
よこうち
)
の
氏神
(
うぢがみ
)
の
祭礼
(
さいれい
)
が
十
(
じふ
)
月
(
ぐわつ
)
の
九日
(
ここのか
)
で、
072
祭礼
(
さいれい
)
の
翌日
(
よくじつ
)
であつたものだから、
073
御
(
お
)
祭
(
まつ
)
りの
後
(
あと
)
の
持越
(
もちこ
)
しか
何
(
なに
)
かで、
074
村
(
むら
)
の
若者
(
わかもの
)
がゴロゴロ
集
(
あつ
)
まつて
居
(
を
)
つた。
075
それが
聞付
(
ききつ
)
けたからたまらない、
076
お
台様
(
だいさま
)
の
処
(
ところ
)
へ
他国
(
たこく
)
の
奴
(
やつ
)
がグズリに
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
る、
077
やつ
付
(
つ
)
けて
了
(
しま
)
へ、
078
淀川
(
よどがは
)
の
水
(
みづ
)
を
飲
(
の
)
ませてやれ……などと
云
(
い
)
つて、
079
岡田
(
をかだ
)
良仙
(
りやうせん
)
といふ
坊主
(
ばうず
)
上
(
あが
)
りのゴロツキを
呼
(
よ
)
んで
来
(
く
)
るやら、
080
巡査
(
じゆんさ
)
が
駆付
(
かけつ
)
けるやら、
081
大騒
(
おほさわ
)
ぎになつた。
082
連
(
つ
)
れの
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
斯
(
か
)
うなつて
見
(
み
)
ると、
083
生命
(
いのち
)
が
惜
(
を
)
しいと
見
(
み
)
えて、
084
敵方
(
てきがた
)
へ
付
(
つ
)
いて
了
(
しま
)
つて
小
(
ちい
)
さくなつてゐる。
085
今
(
いま
)
から
考
(
かんが
)
へると、
086
同伴
(
どうはん
)
の
五
(
ご
)
人
(
にん
)
が
敵方
(
てきがた
)
へ
従
(
つ
)
いたのが
仕合
(
しあは
)
せだつたので、
087
群集
(
ぐんしふ
)
は
自分
(
じぶん
)
と
岡田
(
をかだ
)
良仙
(
りやうせん
)
とをスツカリ
取
(
と
)
り
違
(
ちが
)
へて
了
(
しま
)
つて
同伴
(
つれ
)
の
五
(
ご
)
人
(
にん
)
と
良仙
(
りやうせん
)
とを
滅茶
(
めつちや
)
々々
(
めつちや
)
に
殴
(
なぐ
)
り
付
(
つ
)
けて、
088
自分
(
じぶん
)
を
良仙
(
りやうせん
)
だと
思
(
おも
)
うてどうか
此方
(
こちら
)
へ
御
(
お
)
出
(
い
)
で
下
(
くだ
)
さいと
云
(
い
)
つて
家
(
いへ
)
の
中
(
なか
)
へ
連
(
つ
)
れて
行
(
い
)
つて
了
(
しま
)
つた。
089
自分
(
じぶん
)
は
何時
(
いつ
)
露顕
(
ろけん
)
するか
分
(
わか
)
らず
気持
(
きもち
)
が
悪
(
わる
)
いから、
090
コツソリ
逃
(
に
)
げ
出
(
だ
)
して
巡査
(
じゆんさ
)
駐在所
(
ちうざいしよ
)
へ
囲
(
かこ
)
まつて
貰
(
もら
)
つたのであつた。
091
後
(
あと
)
になつて
聞
(
き
)
くと、
092
此
(
この
)
時
(
とき
)
大本
(
おほもと
)
では
神前
(
しんぜん
)
の
大
(
おほ
)
きな
水壺
(
みづつぼ
)
や
土器
(
かわらけ
)
が
突然
(
とつぜん
)
破
(
わ
)
れたり
神酒
(
みき
)
徳利
(
どくり
)
が
引繰
(
ひつくり
)
返
(
かへ
)
つたり、
093
京都
(
きやうと
)
の
信者
(
しんじや
)
の
家
(
うち
)
でも
神棚
(
かみだな
)
の
上
(
うへ
)
の
物
(
もの
)
が
落
(
お
)
ちたり
割
(
わ
)
れたりして、
094
何事
(
なにごと
)
だらうと
騒
(
さわ
)
いだそうである。
095
実母
(
じつぼ
)
は
天眼通
(
てんがんつう
)
で
多人数
(
たにんずう
)
で
取巻
(
とりま
)
かれ、
096
真
(
ま
)
ん
中
(
なか
)
に
泰然
(
たいぜん
)
と
坐
(
すわ
)
つて
居
(
ゐ
)
る
喜楽
(
じぶん
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
たから、
097
安心
(
あんしん
)
をして
居
(
を
)
つたそうだ。
098
巡査
(
じゆんさ
)
駐在所
(
ちうざいしよ
)
を
出
(
で
)
る
時
(
とき
)
人違
(
ひとちがひ
)
の
事
(
こと
)
が
解
(
わか
)
つて、
099
又
(
また
)
騒
(
さわ
)
ぎ
出
(
だ
)
したが、
100
巡査
(
じゆんさ
)
が
伏見
(
ふしみ
)
迄
(
まで
)
送
(
おく
)
つてくれるし、
101
京都
(
きやうと
)
の
信者
(
しんじや
)
は
心配
(
しんぱい
)
をして、
102
伏見
(
ふしみ
)
迄
(
まで
)
迎
(
むか
)
へに
来
(
き
)
てくれるし、
103
無事
(
ぶじ
)
に
京都
(
きやうと
)
へ
着
(
つ
)
いて
西洞院
(
にしのとうゐん
)
西村
(
にしむら
)
栄次郎
(
ゑいじらう
)
の
家
(
うち
)
へ
落付
(
おちつ
)
いた。
104
是
(
これ
)
で
安心
(
あんしん
)
と
思
(
おも
)
ふと、
105
今度
(
こんど
)
は
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
連中
(
れんちう
)
が
承知
(
しようち
)
しない。
106
自分
(
じぶん
)
等
(
ら
)
が
敵方
(
てきがた
)
へ
従
(
つ
)
いた
事
(
こと
)
は
棚
(
たな
)
へ
上
(
あ
)
げて、
107
散々
(
さんざん
)
殴打
(
おうだ
)
せられた
恨
(
うらみ
)
を
並
(
なら
)
べて、
108
霊力
(
れいりよく
)
があるなら
何故
(
なぜ
)
数百
(
すうひやく
)
人
(
にん
)
の
暴行
(
ばうかう
)
を
差止
(
さしと
)
めなかつたか、
109
反対
(
はんたい
)
に
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
者
(
もの
)
をなぐらせたのは
四
(
よ
)
つ
足
(
あし
)
の
悪
(
あく
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
に
相違
(
さうゐ
)
ない、
110
早
(
はや
)
く
化
(
ばけ
)
の
皮
(
かは
)
を
現
(
あら
)
はせ、
111
なぐられた
痛
(
いた
)
い
所
(
ところ
)
を
治
(
なほ
)
せ、
112
癒
(
なほ
)
されねば
切腹
(
せつぷく
)
をしろ……と
云
(
い
)
つて
逼
(
せま
)
る。
113
国家
(
こくか
)
の
為
(
ため
)
とあれば
何時
(
いつ
)
でも
切腹
(
せつぷく
)
するがここで
切腹
(
せつぷく
)
をする
様
(
やう
)
な
安
(
やす
)
い
生命
(
いのち
)
ぢやないと
云
(
い
)
ふと、
114
腰抜
(
こしぬけ
)
め、
115
貴様
(
きさま
)
の
行
(
おこな
)
ひが
悪
(
わる
)
いから、
116
教祖
(
けうそ
)
様
(
さま
)
が
岩戸隠
(
いはとがく
)
れをされて
了
(
しま
)
つた。
117
モウ
大本
(
おほもと
)
へ
行
(
ゆ
)
く
必要
(
ひつえう
)
がないから、
118
何処
(
どこ
)
へでも
行
(
ゆ
)
け……と
云
(
い
)
ふ。
119
それなら
仕方
(
しかた
)
がないから
他所
(
よそ
)
へ
行
(
ゆ
)
かうと
云
(
い
)
へば、
120
他所
(
よそ
)
へ
行
(
ゆ
)
くなら
謝罪
(
しやざい
)
せよ、
121
三遍
(
さんぺん
)
廻
(
まは
)
つてワンと
云
(
い
)
へ……などと
理不尽
(
りふじん
)
な
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ひ
募
(
つの
)
る。
122
ここは
一
(
ひと
)
つ
辛抱
(
しんばう
)
をする
所
(
ところ
)
だと、
123
韓信股
(
かんしんまた
)
くぐりの
故事
(
こじ
)
を
想
(
おも
)
つて
辛抱
(
しんばう
)
した。
124
そして
済
(
す
)
まぬ
事
(
こと
)
をした、
125
堪
(
こら
)
へて
呉
(
く
)
れと
云
(
い
)
つて
謝罪
(
あや
)
まつてやつた。
126
丁度
(
ちやうど
)
其
(
その
)
時
(
とき
)
京都
(
きやうと
)
の
侠客
(
けふかく
)
いろは
幸太郎
(
かうたらう
)
と
云
(
い
)
ふのが
来合
(
きあは
)
せて、
127
乾児
(
こぶん
)
の
山田
(
やまだ
)
重太郎
(
ぢうたらう
)
を
付
(
つ
)
けて
送
(
おく
)
らせて
呉
(
く
)
れたので、
128
無事
(
ぶじ
)
に
綾部
(
あやべ
)
へ
帰
(
かへ
)
る
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
た。
129
帰
(
かへ
)
つて
見
(
み
)
ると、
130
荷物
(
にもつ
)
は
引括
(
ひつくく
)
つて
片付
(
かたづ
)
けて
了
(
しま
)
つてあつて、
131
中村
(
なかむら
)
竹造
(
たけざう
)
や
四方
(
しかた
)
平蔵
(
へいざう
)
が、
132
……
此
(
この
)
通
(
とほ
)
り
世
(
よ
)
を
紊
(
みだ
)
す
四
(
よ
)
つ
足
(
あし
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
は
居
(
を
)
る
事
(
こと
)
はならぬ、
133
出
(
で
)
て
行
(
ゆ
)
け……と
云
(
い
)
つて
又
(
また
)
苛
(
いぢ
)
める。
134
さう
斯
(
か
)
うして
居
(
ゐ
)
ると
今度
(
こんど
)
は
警察署
(
けいさつしよ
)
から
教祖
(
けうそ
)
様
(
さま
)
に
呼出
(
よびだ
)
しが
来
(
き
)
た、
135
何事
(
なにごと
)
だらうと
聞
(
き
)
いて
見
(
み
)
ると、
136
教祖
(
けうそ
)
様
(
さま
)
が
弥仙山
(
みせんざん
)
の
神社
(
じんじや
)
の
錠前
(
ぢやうまへ
)
をちぎつて
籠
(
こも
)
られたのは
規則
(
きそく
)
違反
(
ゐはん
)
だ、
137
罰金
(
ばつきん
)
を
出
(
だ
)
せといふのであつた。
138
教祖
(
けうそ
)
様
(
さま
)
は
弥仙山
(
みせんざん
)
の
社
(
やしろ
)
に
籠
(
こも
)
つて、
139
静
(
しづか
)
にお
筆先
(
ふでさき
)
を
書
(
か
)
いてお
出
(
い
)
でになつたのであるが、
140
村
(
むら
)
の
者
(
もの
)
が
社前
(
しやぜん
)
へ
来
(
き
)
た
物音
(
ものおと
)
を
聞
(
き
)
いてヒヨイと
顔
(
かほ
)
を
出
(
だ
)
して
見
(
み
)
られたのである。
141
思
(
おも
)
ひがけぬ
処
(
ところ
)
から
白髪
(
はくはつ
)
の
老婆
(
らうば
)
が
突然
(
とつぜん
)
顔
(
かほ
)
を
出
(
だ
)
したのであるから、
142
村人
(
むらびと
)
の
驚
(
おどろ
)
いたのは
無理
(
むり
)
もない
事
(
こと
)
であつて、
143
弥仙山
(
みせんざん
)
の
社内
(
しやない
)
には
狒々猿
(
ひひざる
)
が
居
(
を
)
ると
云
(
い
)
ひふらして
評判
(
へうばん
)
になつた。
144
今
(
いま
)
でこそ
樹木
(
じゆもく
)
を
伐
(
き
)
つて
明
(
あか
)
るくなつて
居
(
ゐ
)
るものの、
145
当時
(
たうじ
)
の
弥仙山
(
みせんざん
)
は
老樹
(
らうじゆ
)
鬱蒼
(
うつさう
)
として
昼
(
ひる
)
尚
(
なほ
)
暗
(
くら
)
き
霊山
(
れいざん
)
であつた。
146
狒々猿
(
ひひざる
)
が
居
(
を
)
るといふ
評判
(
へうばん
)
が
高
(
たか
)
くなつて、
147
仕舞
(
しまひ
)
には
村中
(
むらぢう
)
挙
(
こぞ
)
つて
狒々
(
ひひ
)
退治
(
たいぢ
)
をしやうといふ
事
(
こと
)
になつた。
148
竹槍
(
たけやり
)
を
担
(
かつ
)
ぎ
出
(
だ
)
すやら、
149
巡査
(
じゆんさ
)
が
加
(
くは
)
はるやら、
150
神主
(
かむぬし
)
が
来
(
く
)
るやら
大騒
(
おほさわ
)
ぎになつた。
151
一同
(
いちどう
)
弥仙山
(
みせんざん
)
へ
押寄
(
おしよ
)
せて
見
(
み
)
ると、
152
丁度
(
ちやうど
)
教祖
(
けうそ
)
様
(
さま
)
の
処
(
ところ
)
へ
弁当
(
べんたう
)
を
持
(
も
)
つて
行
(
ゆ
)
く
後野
(
ごの
)
市太郎
(
いちたらう
)
が
居合
(
ゐあは
)
せたので、
153
狒々猿
(
ひひざる
)
ではないと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
つた。
154
皆
(
みな
)
が
教祖
(
けうそ
)
様
(
さま
)
を
取囲
(
とりかこ
)
んで……なぜこんな
処
(
ところ
)
へ
来
(
き
)
て
居
(
を
)
るか……と
云
(
い
)
つて
問
(
と
)
ふと、
155
教祖
(
けうそ
)
様
(
さま
)
は
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
が
暗
(
くら
)
がりだから
隠
(
かく
)
れたのだ……と
云
(
い
)
つて
平然
(
へいぜん
)
として
居
(
を
)
られる。
156
皆
(
みな
)
が
口
(
くち
)
を
揃
(
そろ
)
へて、
157
綾部
(
あやべ
)
の
天理教
(
てんりけう
)
の
馬鹿
(
ばか
)
か、
158
早
(
はや
)
く
出
(
で
)
て
行
(
ゆ
)
けといふと、
159
教祖
(
けうそ
)
様
(
さま
)
は
今日
(
けふ
)
はお
籠
(
こ
)
もりしてから
一週間
(
いつしうかん
)
目
(
め
)
であるから、
160
皆
(
みな
)
が
出
(
で
)
るなと
云
(
い
)
つたつて
出
(
で
)
る
日
(
ひ
)
ぢや、
161
序
(
ついで
)
に
上杉
(
うへすぎ
)
迄
(
まで
)
送
(
おく
)
つてくれ……と
云
(
い
)
つて
済
(
す
)
まし
込
(
こ
)
んで
居
(
ゐ
)
られる。
162
自分
(
じぶん
)
が
上杉
(
うへすぎ
)
へ
行
(
い
)
つて、
163
駐在所
(
ちうざいしよ
)
に
行
(
ゆ
)
くと、
164
教祖
(
けうそ
)
様
(
さま
)
を
訊問所
(
じんもんしよ
)
へ
入
(
い
)
れやうとして
居
(
ゐ
)
る
所
(
ところ
)
であつた。
165
訊問所
(
じんもんしよ
)
へは
自分
(
じぶん
)
が
這入
(
はい
)
るから、
166
教祖
(
けうそ
)
様
(
さま
)
は
御
(
お
)
入
(
い
)
れしないで
置
(
お
)
いてくれと
云
(
い
)
つて、
167
それから
訊問
(
じんもん
)
を
受
(
う
)
けた。
168
何故
(
なにゆゑ
)
女人
(
によにん
)
禁制
(
きんせい
)
の
場所
(
ばしよ
)
へ
女人
(
によにん
)
が
這入
(
はい
)
つたか……と
問
(
と
)
ふから、
169
明治
(
めいぢ
)
四
(
よ
)
年
(
ねん
)
の
布達
(
ふたつ
)
によつて
結界
(
けつかい
)
は
解
(
と
)
けて
居
(
ゐ
)
るのに、
170
女人
(
によにん
)
禁制
(
きんせい
)
とは
何事
(
なにごと
)
かと
反対
(
はんたい
)
に
突込
(
つつこ
)
んでやつたので、
171
一言
(
いちごん
)
も
出
(
で
)
ない、
172
さうすると
今度
(
こんど
)
は
他人
(
たにん
)
が
管理
(
くわんり
)
して
居
(
ゐ
)
る
建造物
(
けんざうぶつ
)
内
(
ない
)
に
錠
(
ぢやう
)
を
破
(
やぶ
)
つて
這入
(
はい
)
るのは
違法
(
ゐはふ
)
だと
思
(
おも
)
はぬか……といふ
問
(
とひ
)
で、
173
是
(
これ
)
には
一寸
(
ちよつと
)
困
(
こま
)
つたが、
174
神社
(
じんじや
)
法令
(
はふれい
)
の
中
(
うち
)
に
信仰
(
しんかう
)
により
立入
(
たちい
)
るものは
此
(
この
)
限
(
かぎ
)
りにあらずとあるから、
175
差支
(
さしつかへ
)
ない
筈
(
はず
)
だと
出鱈目
(
でたらめ
)
を
云
(
い
)
つた。
176
手許
(
てもと
)
には
神社
(
じんじや
)
法令
(
はふれい
)
がないから
調
(
しら
)
べる
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ぬので、
177
無事
(
ぶじ
)
に
帰
(
かへ
)
らしてくれた。
178
併
(
しか
)
し
教祖
(
けうそ
)
は
前
(
まへ
)
以
(
もつ
)
て
神主
(
かむぬし
)
に
頼
(
たの
)
み、
179
神主
(
かむぬし
)
は
内々
(
ないない
)
で
此処
(
ここ
)
に
籠
(
こも
)
らしてゐたのであつた。
180
教祖
(
けうそ
)
様
(
さま
)
の
弥仙山
(
みせんざん
)
籠
(
ごも
)
りの
騒
(
さわ
)
ぎはこれで
無事
(
ぶじ
)
に
済
(
す
)
んだのであるが、
181
済
(
す
)
まぬのは
幹部
(
かんぶ
)
連中
(
れんちう
)
の
腹
(
はら
)
の
中
(
なか
)
だ。
182
自分
(
じぶん
)
の
所業
(
しよげふ
)
は
一々
(
いちいち
)
腑
(
ふ
)
に
落
(
おち
)
かねる
所
(
ところ
)
から、
183
是
(
これ
)
は
小松林
(
こまつばやし
)
といふ
四足
(
よつあし
)
の
悪
(
あく
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
の
所業
(
しよげふ
)
だといつて、
184
頻
(
しき
)
りにその
悪
(
あく
)
の
守護神
(
しゆごじん
)
を
罵
(
ののし
)
るのである。
185
それなら
一層
(
いつそう
)
喜楽
(
きらく
)
を
追
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
してくれればよいのであるが、
186
喜楽
(
きらく
)
の
肉体
(
にくたい
)
は
教祖
(
けうそ
)
様
(
さま
)
のお
筆先
(
ふでさき
)
に
依
(
よ
)
つて、
187
神業
(
しんげふ
)
の
為
(
ため
)
居
(
を
)
らねばならぬ
肉体
(
にくたい
)
になつて
居
(
ゐ
)
るので
追
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
す
事
(
こと
)
も
出来
(
でき
)
ず、
188
自分
(
じぶん
)
の
一
(
ひと
)
つの
身体
(
からだ
)
を
二様
(
にやう
)
に
見
(
み
)
て
居
(
ゐ
)
るのであるから、
189
たまつたものでない。
190
とうとう
六畳敷
(
ろくでふじき
)
の
一室
(
いつしつ
)
に
入
(
い
)
れられて、
191
一挙
(
いつきよ
)
一動
(
いちどう
)
を
監視
(
かんし
)
される
様
(
やう
)
になつた。
192
自分
(
じぶん
)
の
傍
(
かたはら
)
へ
来
(
く
)
る
時
(
とき
)
は
塩
(
しほ
)
をふつてやつて
来
(
く
)
るから、
193
お
前
(
まへ
)
等
(
ら
)
の
肉体
(
にくたい
)
が
汚
(
けが
)
れて
居
(
ゐ
)
るから
塩
(
しほ
)
をふつて
清
(
きよ
)
めて
近
(
ちか
)
づくのかなどと
云
(
い
)
つて
戯談
(
じやうだん
)
を
云
(
い
)
つてやると
真赤
(
まつか
)
になつて
怒
(
おこ
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
194
福島
(
ふくしま
)
久子
(
ひさこ
)
サンなどは、
195
久子
(
ひさこ
)
『
先生
(
せんせい
)
如何
(
どう
)
して
改心
(
かいしん
)
が
出来
(
でき
)
ませぬか、
196
さういふ
御
(
お
)
心得
(
こころえ
)
だから、
197
教祖
(
けうそ
)
様
(
さま
)
が
岩戸隠
(
いはとがく
)
れなどをされるのだ。
198
早
(
はや
)
く
改心
(
かいしん
)
をして
下
(
くだ
)
さい……』
199
などと
熱心
(
ねつしん
)
に
云
(
い
)
つて
来
(
く
)
る。
200
教祖
(
けうそ
)
様
(
さま
)
の
岩戸隠
(
いはとがく
)
れなども、
201
年寄
(
としより
)
の
吾儘
(
わがまま
)
だから
仕方
(
しかた
)
がない……と
答
(
こた
)
へて、
202
何
(
なん
)
の
斯
(
か
)
のと
面倒
(
めんだう
)
だから、
203
腹
(
はら
)
が
痛
(
いた
)
いと
云
(
い
)
ふと……それ
見
(
み
)
なさい、
204
改心
(
かいしん
)
をしないから、
205
腹
(
はら
)
が
痛
(
いた
)
むのだといふ。
206
喜楽
(
きらく
)
『よし
腹
(
はら
)
の
痛
(
いた
)
いのは
改心
(
かいしん
)
をしない
証拠
(
しようこ
)
か、
207
それなら
証拠
(
しようこ
)
を
見
(
み
)
せてやる』
208
と
云
(
い
)
つて
鎮魂
(
ちんこん
)
をすると、
209
久子
(
ひさこ
)
サンが
俄
(
には
)
かに
腹痛
(
ふくつう
)
を
起
(
おこ
)
して、
210
痛
(
いた
)
い
痛
(
いた
)
いといつて
大苦
(
おほくる
)
しみに
苦
(
くる
)
しむで、
211
五日間
(
いつかかん
)
も
呻吟
(
しんぎん
)
した。
212
教祖
(
けうそ
)
さまが『
早
(
はや
)
く
先生
(
せんせい
)
に
謝罪
(
しやざい
)
せよ』と
云
(
い
)
はれたものだから、
213
四方
(
しかた
)
平蔵
(
へいざう
)
が
謝罪
(
しやざい
)
に
来
(
き
)
た。
214
喜楽
(
きらく
)
『いや
代人
(
だいにん
)
では
無効
(
むかう
)
だから
本人
(
ほんにん
)
をよこせ』
215
と
云
(
い
)
つてやつたので、
216
とうとう
久子
(
ひさこ
)
サンが
謝罪
(
しやざい
)
に
来
(
き
)
た
事
(
こと
)
もあつた。
217
さうすると
幹部
(
かんぶ
)
の
連中
(
れんちう
)
が
又
(
また
)
やつて
来
(
き
)
て、
218
『
先生
(
せんせい
)
は
何
(
なん
)
といふ
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
をする
人
(
ひと
)
であるか、
219
是
(
これ
)
は
如何
(
どう
)
しても
悪魔
(
あくま
)
だ、
220
術
(
じゆつ
)
を
見
(
み
)
せろ、
221
裸
(
はだか
)
になつて
見
(
み
)
せろ』
222
と
云
(
い
)
ふ。
223
五月蠅
(
うるさ
)
いから
近寄
(
ちかよ
)
つて
来
(
く
)
る
中村
(
なかむら
)
竹造
(
たけざう
)
をウンと
睨
(
にら
)
んでやると、
224
又
(
また
)
腹痛
(
ふくつう
)
を
起
(
おこ
)
して……
痛
(
いた
)
い
痛
(
いた
)
いと
云
(
い
)
つて
苦
(
くるし
)
み
出
(
だ
)
した。
225
斯
(
こ
)
う
云
(
い
)
つた
様
(
やう
)
な
次第
(
しだい
)
で、
226
……
会長
(
くわいちやう
)
(
瑞月
(
ずゐげつ
)
)は
悪魔
(
あくま
)
だ、
227
会長
(
くわいちやう
)
のいふ
事
(
こと
)
を
聞
(
き
)
くな……と
云
(
い
)
つて、
228
幹部
(
かんぶ
)
の
連中
(
れんちう
)
が
切
(
しき
)
りに
方々
(
はうばう
)
へ
云
(
い
)
ひふらして
歩行
(
ある
)
いたものである。
229
(
大正一一・一〇・一六
旧八・二六
松村真澄
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 稍安定
(B)
(N)
思ひ出(二) >>>
霊界物語
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舎身活躍(第37~48巻)
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第38巻(丑の巻)
> 第2篇 光風霽月 > 第10章 思ひ出(一)
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【第10章 思ひ出|第38巻|舎身活躍|霊界物語|/rm3810】
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