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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第38巻(丑の巻)
序歌
総説
第1篇 千万無量
第1章 道すがら
第2章 吉崎仙人
第3章 帰郷
第4章 誤親切
第5章 三人組
第6章 曲の猛
第7章 火事蚊
第2篇 光風霽月
第8章 三ツ巴
第9章 稍安定
第10章 思ひ出(一)
第11章 思ひ出(二)
第12章 思ひ出(三)
第3篇 冒険神験
第13章 冠島
第14章 沓島
第15章 怒濤
第16章 禁猟区
第17章 旅装
第4篇 霊火山妖
第18章 鞍馬山(一)
第19章 鞍馬山(二)
第20章 元伊勢
第5篇 正信妄信
第21章 凄い権幕
第22章 難症
第23章 狐狸狐狸
第24章 呪の釘
第25章 雑草
第26章 日の出
第27章 仇箒
第28章 金明水
余白歌
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(B)
(N)
鞍馬山(二) >>>
第一八章
鞍馬山
(
くらまやま
)
(一)〔一〇五五〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第38巻 舎身活躍 丑の巻
篇:
第4篇 霊火山妖
よみ(新仮名遣い):
れいかさんよう
章:
第18章 鞍馬山(一)
よみ(新仮名遣い):
くらまやま
通し章番号:
1055
口述日:
1922(大正11)年10月18日(旧08月28日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年4月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
明治三十三年八月八日の午前一時、広前の門口を立ち出た。信者たちはお見送りを申し出たが、教祖は神様の御命令を畏んでそれを許されなかった。
途中、福林安之助が山道で随行を申し出た。教祖は固辞されたが、福林は嘆願し容易に初心を変えようとしなかった。海潮はその心を汲んで、荷物持ちとして連れて行くよう教祖に頼んだ。
教祖もその誠意に感じられ、ようやく随行が許された。途中、木崎にて信者の宅に一泊した。そこでは教祖派と四方春蔵派の信者たちが、教祖の目の前で言い争い、争論を繰り広げていた。
教祖は庭前に四頭の犬が遊んでいるところに、一片の食物を投げ与えた。すると犬たちはたちまち争奪をはじめた。教祖は微笑みながら、人心の奥底はたいていかくの如しと言ってこの家を立ち出でようとされた。
家の主人・上村氏はこの教訓に恐縮したが、上村氏に反対の一派の者たちはますます暴言をたくましくし、教祖の前で黒白をつけようと強請やまなかった。これには海潮もほとほと持て余した。
反対派は席を蹴立てて帰り、四方春蔵と福林氏も彼らに付いて出て行った。福林氏は反対派の中田氏宅に着くと、疲れた風を装って四方春蔵らと彼らの密議を残らず聞いてしまった。
戻ってきた四方春蔵は、今日は反対派の中田氏宅にもう一泊しましょうと申し出てきた。教祖は少しく怒って、たとえ野宿をしても彼らの家には泊まりたくないとご機嫌が悪かった。
一行は夜道を歩いてようやく、夜更けに八木の会合所である福島氏方に着いた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-11-08 17:27:04
OBC :
rm3818
愛善世界社版:
191頁
八幡書店版:
第7輯 230頁
修補版:
校定版:
195頁
普及版:
102頁
初版:
ページ備考:
001
世
(
よ
)
は
浮薄
(
ふはく
)
に
流
(
なが
)
れ、
002
人
(
ひと
)
は
狡猾
(
かうくわつ
)
に
陥
(
おちい
)
り
剛毅
(
がうき
)
昂直
(
かうちよく
)
の
気
(
き
)
淪滅
(
りんめつ
)
し、
003
勇壮
(
ゆうさう
)
快濶
(
くわいくわつ
)
の
風
(
ふう
)
軟化
(
なんくわ
)
して
因循
(
いんじゆん
)
姑息
(
こそく
)
となり、
004
野鄙
(
やひ
)
惰弱
(
だじやく
)
と
変
(
へん
)
じ、
005
虚誕
(
きよたん
)
百出
(
ひやくしゆつ
)
詐偽
(
さぎ
)
自在
(
じざい
)
に
行
(
おこな
)
はれ、
006
或
(
あるひ
)
は
囁嚅
(
せつじゆ
)
笑談
(
せうだん
)
他
(
た
)
の
意
(
い
)
に
投合
(
とうがふ
)
するを
勉
(
つと
)
め、
007
巧言
(
こうげん
)
令色
(
れいしよく
)
頭
(
かうべ
)
を
垂
(
た
)
れ
腰
(
こし
)
を
曲
(
ま
)
げ、
008
以
(
もつ
)
て
其
(
その
)
欲
(
よく
)
を
満
(
み
)
たさむとするの
卑劣
(
ひれつ
)
と
無節操
(
むせつさう
)
は、
009
社会
(
しやくわい
)
の
全体
(
ぜんたい
)
に
瀰漫
(
びまん
)
し、
010
我
(
わが
)
神洲
(
しんしう
)
神民
(
しんみん
)
たるの
高尚
(
かうしやう
)
優美
(
いうび
)
の
気骨
(
きこつ
)
雅量
(
がりやう
)
を
存
(
そん
)
せず、
011
国民
(
こくみん
)
の
基礎
(
きそ
)
たるべき
青年
(
せいねん
)
は
概
(
おほむ
)
ね
糸竹
(
しちく
)
管絃
(
くわんげん
)
の
響
(
ひび
)
きに
心耳
(
しんじ
)
を
蕩
(
とろ
)
かし、
012
婀娜
(
あだ
)
嬋妍
(
せんけん
)
たる
花顔
(
くわがん
)
柳腰
(
りうやう
)
に
眩惑
(
げんわく
)
せられ、
013
奢侈
(
しやし
)
淫逸
(
いんいつ
)
の
欲
(
よく
)
を
逞
(
たくまし
)
ふして
空
(
むな
)
しく
有為
(
いうゐ
)
の
歳月
(
さいげつ
)
を
経過
(
けいくわ
)
する
者
(
もの
)
のみ。
014
国家
(
こくか
)
の
前途
(
ぜんと
)
如何
(
いかん
)
を
思
(
おも
)
ふの
志士
(
しし
)
仁人
(
じんじん
)
無
(
な
)
く、
015
世
(
よ
)
は
将
(
まさ
)
に
常暗
(
とこやみ
)
ならむとするを
深
(
ふか
)
く
憂慮
(
いうりよ
)
し、
016
神示
(
しんじ
)
のまにまに
大本
(
おほもと
)
の
教祖
(
けうそ
)
は
抜山
(
ばつざん
)
蓋世
(
がいせい
)
の
勇
(
いう
)
を
振
(
ふる
)
ひ、
017
百折
(
ひやくせつ
)
不撓
(
ふたう
)
の
胆
(
たん
)
を
発揮
(
はつき
)
し、
018
世道
(
せだう
)
人心
(
じんしん
)
を
振起
(
しんき
)
せむと、
019
上田
(
うへだ
)
海潮
(
かいてう
)
、
020
出口
(
でぐち
)
澄子
(
すみこ
)
、
021
四方
(
しかた
)
春三
(
はるざう
)
の
三
(
さん
)
名
(
めい
)
を
従
(
したが
)
へ
菅
(
すげ
)
の
小笠
(
をがさ
)
に
茣蓙
(
ござ
)
蓑
(
みの
)
、
022
手
(
て
)
には
芳
(
かんば
)
しき
白梅
(
しらうめ
)
の
枝
(
えだ
)
にて
作
(
つく
)
りたる
杖
(
つゑ
)
をつき
草鞋
(
わらぢ
)
脚絆
(
きやはん
)
に
身
(
み
)
を
固
(
かた
)
め、
023
明治
(
めいじ
)
卅三
(
さんじふさん
)
年
(
ねん
)
閏
(
うるふ
)
八
(
はち
)
月
(
ぐわつ
)
八日
(
やうか
)
の
午前
(
ごぜん
)
の
一
(
いち
)
時
(
じ
)
、
024
正
(
まさ
)
に
広前
(
ひろまへ
)
の
門口
(
もんぐち
)
を
立出
(
たちい
)
でむとする
時
(
とき
)
、
025
前夜
(
ぜんや
)
より
集
(
あつ
)
まり
来
(
きた
)
りし
数多
(
あまた
)
の
役員
(
やくゐん
)
信者
(
しんじや
)
等
(
ら
)
は
各
(
おのおの
)
教祖
(
けうそ
)
の
袖
(
そで
)
に
縋
(
すが
)
り
異口
(
いく
)
同音
(
どうおん
)
に『
何卒
(
どうぞ
)
途中
(
とちう
)
までなりと
見送
(
みおく
)
らせ
下
(
くだ
)
さい』と
泣
(
な
)
きつつ
頼
(
たの
)
む
者
(
もの
)
ばかりであつた。
026
教祖
(
けうそ
)
も
役員
(
やくゐん
)
等
(
ら
)
が、
027
しほらしき
真心
(
まごころ
)
はよく
推知
(
すゐち
)
し
居
(
を
)
られたけれど、
028
只管
(
ひたすら
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
命令
(
めいれい
)
を
畏
(
かしこ
)
みて
一人
(
ひとり
)
も
許
(
ゆる
)
されなかつた。
029
生別
(
せいべつ
)
離苦
(
りく
)
の
悲
(
かな
)
しさに
何
(
いづ
)
れも
袖
(
そで
)
を
絞
(
しぼ
)
りつつ、
030
教祖
(
けうそ
)
が
平素
(
へいそ
)
に
於
(
お
)
ける
温言
(
をんげん
)
厚諭
(
こうゆ
)
の
情
(
なさけ
)
は、
031
人
(
ひと
)
を
動
(
うご
)
かし、
032
人
(
ひと
)
を
感
(
かん
)
ぜしめたのである。
033
別
(
わか
)
れに
臨
(
のぞ
)
んで、
034
今更
(
いまさら
)
の
如
(
ごと
)
く
其
(
その
)
温容
(
おんよう
)
を
慕
(
した
)
ひ
和気
(
わき
)
に
懐
(
なつ
)
き
恰
(
あたか
)
も
小児
(
せうに
)
の
慈母
(
じぼ
)
に
別
(
わか
)
るる
如
(
ごと
)
く
焦
(
こが
)
れ
慕
(
した
)
ふたのである。
035
さて
教祖
(
けうそ
)
は
梅
(
うめ
)
の
杖
(
つゑ
)
、
036
海潮
(
かいてう
)
は
雄松
(
をまつ
)
、
037
澄子
(
すみこ
)
は
雌松
(
めまつ
)
、
038
春三
(
はるざう
)
は
青竹
(
あをたけ
)
の
杖
(
つゑ
)
をつき
乍
(
なが
)
ら、
039
何処
(
いづこ
)
を
当
(
あて
)
ともなく
従
(
したが
)
ひ
行
(
ゆ
)
く。
040
秋
(
あき
)
すでに
深
(
ふか
)
く
木葉
(
このは
)
は
色
(
いろ
)
を
変
(
へん
)
じて
四尾
(
よつを
)
の
神山
(
しんざん
)
は
漸
(
やうや
)
く
紅
(
くれない
)
に
黄雲
(
くわううん
)
十里
(
じふり
)
粛然
(
しゆくぜん
)
たるさまである。
041
和知
(
わち
)
の
清流
(
せいりう
)
は
淙々
(
そうそう
)
として
脚下
(
きやくか
)
に
白布
(
はくふ
)
を
曝
(
さら
)
し
一行
(
いつかう
)
の
前途
(
ぜんと
)
を
清
(
きよ
)
むる
如
(
ごと
)
くに
思
(
おも
)
はれた。
042
須知山
(
すちやま
)
峠
(
たうげ
)
の
峻坂
(
しゆんぱん
)
を
苦
(
く
)
もなく
登
(
のぼ
)
り、
043
狭
(
せま
)
き
山道
(
やまみち
)
を
辿
(
たど
)
りつつ
行
(
ゆ
)
けば
川合
(
かはひ
)
の
大原
(
おほはら
)
神社
(
じんじや
)
、
044
一行
(
いつかう
)
恭
(
うやうや
)
しく
社前
(
しやぜん
)
に
跪坐
(
きざ
)
し、
045
前途
(
ぜんと
)
の
幸運
(
かううん
)
を
祈願
(
きぐわん
)
しつつ、
046
枯木峠
(
かれきたうげ
)
も
漸
(
やうや
)
く
踏
(
ふ
)
み
越
(
こ
)
えて、
047
今
(
いま
)
や
榎木峠
(
えのきたうげ
)
の
絶頂
(
ぜつちやう
)
に
差
(
さ
)
しかからむとする
時
(
とき
)
、
048
前途
(
ぜんと
)
にあたつて
怪
(
あや
)
しき
火光
(
くわくわう
)
のチラチラと
燃
(
も
)
ゆるを
見
(
み
)
とめた。
049
海潮
(
かいてう
)
は
盗賊
(
たうぞく
)
どもの
焚火
(
たきび
)
をなして
旅客
(
りよきやく
)
の
荷物
(
にもつ
)
を
掠
(
かす
)
めむとして
待
(
ま
)
ち
構
(
かま
)
へ
居
(
ゐ
)
るには
非
(
あら
)
ずやと
心
(
こころ
)
も
心
(
こころ
)
ならず、
050
不安
(
ふあん
)
の
念
(
ねん
)
に
包
(
つつ
)
まれ
乍
(
なが
)
ら
近
(
ちか
)
づき
見
(
み
)
れば、
051
豈
(
あに
)
図
(
はか
)
らむや、
052
会員
(
くわいいん
)
の
一
(
いち
)
人
(
にん
)
なる
福林
(
ふくばやし
)
安之助
(
やすのすけ
)
が
数多
(
あまた
)
の
役員
(
やくゐん
)
信者
(
しんじや
)
を
出
(
だ
)
し
抜
(
ぬ
)
いてソツと
旅装
(
りよさう
)
を
整
(
ととの
)
へ、
053
梅
(
うめ
)
の
杖
(
つゑ
)
まで
用意
(
ようい
)
して
先
(
さき
)
へ
廻
(
まは
)
つて
待
(
ま
)
つてゐたのである。
054
教祖
(
けうそ
)
一行
(
いつかう
)
の
姿
(
すがた
)
を
見
(
み
)
るや
忽
(
たちま
)
ち
大地
(
だいち
)
に
慴伏
(
ひれふ
)
し、
055
福林
(
ふくばやし
)
『
何卒
(
なにとぞ
)
今度
(
こんど
)
のお
伴
(
とも
)
をさして
下
(
くだ
)
さい。
056
私
(
わたし
)
は
猿田彦
(
さるたひこ
)
となつて
此処
(
ここ
)
にお
待
(
まち
)
申
(
まを
)
して
居
(
を
)
りました。
057
願
(
ねが
)
はくば
異例
(
いれい
)
なれども
猿田彦
(
さるたひこ
)
と
思召
(
おぼしめし
)
、
058
特別
(
とくべつ
)
を
以
(
もつ
)
てお
伴
(
とも
)
をお
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さい』
059
と
頻
(
しき
)
りに
懇願
(
こんぐわん
)
して
居
(
ゐ
)
る。
060
教祖
(
けうそ
)
は、
061
教祖
(
けうそ
)
『
何事
(
なにごと
)
も
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
なれば
此
(
この
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
外
(
ほか
)
には
如何
(
いか
)
なる
事情
(
じじやう
)
があるとも
随行
(
ずゐかう
)
して
貰
(
もら
)
ふ
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
きませぬ』
062
と
固辞
(
こじ
)
して
動
(
うご
)
き
玉
(
たま
)
ふ
気色
(
けしき
)
だになかつた。
063
福林
(
ふくばやし
)
は
詮方
(
せんかた
)
なくなく
腹
(
はら
)
の
底
(
そこ
)
から
湧
(
わ
)
き
出
(
だ
)
す
涙
(
なみだ
)
と
共
(
とも
)
に
嘆願
(
たんぐわん
)
し、
064
福林
(
ふくばやし
)
『
今
(
いま
)
此処
(
ここ
)
で
仮令
(
たとへ
)
死
(
し
)
ぬとも
此
(
この
)
まま
家
(
うち
)
へは
帰
(
かへ
)
らぬ』
065
と
容易
(
ようい
)
に
初心
(
しよしん
)
を
変
(
へん
)
ずべくも
見
(
み
)
えなかつた。
066
海潮
(
かいてう
)
は
其
(
その
)
真心
(
まごころ
)
を
推
(
お
)
し
量
(
はか
)
りて
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
に
堪
(
た
)
へ
兼
(
か
)
ね、
067
教祖
(
けうそ
)
にいろいろと
頼
(
たの
)
んだ
上
(
うへ
)
、
068
海潮
(
かいてう
)
『
今度
(
こんど
)
に
限
(
かぎ
)
つて
破格
(
はかく
)
を
以
(
もつ
)
て
随行
(
ずゐかう
)
と
云
(
い
)
はず
荷物
(
にもつ
)
持
(
も
)
ち
人足
(
にんそく
)
として
連
(
つ
)
れて
行
(
い
)
つて
上
(
あ
)
げたら
如何
(
どう
)
でせうか』
069
と
頼
(
たの
)
んで
見
(
み
)
た。
070
教祖
(
けうそ
)
も
其
(
そ
)
の
誠意
(
せいい
)
と
熱心
(
ねつしん
)
に
感
(
かん
)
じられ
漸
(
やうや
)
く
随行
(
ずゐかう
)
を
許
(
ゆる
)
された。
071
福林
(
ふくばやし
)
は
天
(
てん
)
にも
登
(
のぼ
)
るが
如
(
ごと
)
く
喜
(
よろこ
)
び
勇
(
いさ
)
み、
072
雀躍
(
こをどり
)
し
乍
(
なが
)
ら
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
荷物
(
にもつ
)
を
棒
(
ぼう
)
もて
肩
(
かた
)
に
担
(
かつ
)
ぎ、
073
一行
(
いつかう
)
の
後
(
あと
)
に
跟
(
つ
)
いて
行
(
ゆ
)
く
事
(
こと
)
となつた。
074
老
(
おい
)
の
御足
(
みあし
)
も
健
(
すこや
)
かに
早
(
はや
)
くも、
075
質志
(
しづし
)
、
076
三
(
さん
)
の
宮
(
みや
)
に
到
(
いた
)
れば
東天
(
とうてん
)
明
(
あか
)
く
旭日
(
きよくじつ
)
燦々
(
さんさん
)
たる
処
(
ところ
)
なれども、
077
音
(
おと
)
に
名高
(
なだか
)
き
丹波
(
たんば
)
船井
(
ふなゐ
)
の
霧
(
きり
)
の
海
(
うみ
)
に
天地
(
てんち
)
万有
(
ばんいう
)
包
(
つつ
)
まれて、
078
天
(
あま
)
の
原
(
はら
)
射照
(
いて
)
り
透
(
とう
)
らす
日
(
ひ
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
御影
(
みかげ
)
を
拝
(
はい
)
する
能
(
あた
)
はず、
079
前途
(
ぜんと
)
朦々
(
もうもう
)
として
何
(
なん
)
と
無
(
な
)
く
物
(
もの
)
悲
(
かな
)
しき
心地
(
ここち
)
がした。
080
行程
(
かうてい
)
六
(
ろく
)
里
(
り
)
、
081
檜山
(
ひのきやま
)
に
達
(
たつ
)
し
会員
(
くわいゐん
)
坂原
(
さかはら
)
氏
(
し
)
宅
(
たく
)
に
暫時
(
ざんじ
)
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
め、
082
須知
(
すち
)
、
083
蒲生野
(
がまふの
)
や
水戸峠
(
みとたうげ
)
を
上
(
のぼ
)
りつ
下
(
くだ
)
りつ、
084
観音坂
(
くわんおんざか
)
の
頂上
(
ちやうじやう
)
に
辿
(
たど
)
り
着
(
つ
)
き
見
(
み
)
れば、
085
丹波
(
たんば
)
名物
(
めいぶつ
)
の
霧
(
きり
)
の
海原
(
うなばら
)
何時
(
いつ
)
しか
拭
(
ぬぐ
)
ふが
如
(
ごと
)
く
晴
(
は
)
れ
渡
(
わた
)
り、
086
船井郡
(
ふなゐぐん
)
の
一都会
(
いちとくわい
)
、
087
花
(
はな
)
の
園部
(
そのべ
)
や
小向山
(
をむかやま
)
、
088
天神山
(
てんじんやま
)
は
一眸
(
いちぼう
)
の
下
(
もと
)
に
横
(
よこ
)
たはり、
089
佐保姫
(
さほひめ
)
の
錦
(
にしき
)
織
(
お
)
りなす
麗
(
うるは
)
しさは、
090
筆舌
(
ひつぜつ
)
の
克
(
よ
)
く
尽
(
つく
)
す
所
(
ところ
)
にあらず、
091
上村
(
うへむら
)
、
092
浅田
(
あさだ
)
氏
(
し
)
等
(
ら
)
の
同居
(
どうきよ
)
する
木崎
(
きざき
)
の
川原町
(
かははらまち
)
に
達
(
たつ
)
した。
093
偶
(
たまたま
)
一行
(
いつかう
)
の
出修
(
しゆつしう
)
を
知
(
し
)
りて
急
(
いそ
)
ぎ
出迎
(
でむか
)
へ
是非
(
ぜひ
)
一夜
(
いちや
)
泊
(
とま
)
りて
旅
(
たび
)
の
御
(
ご
)
疲労
(
ひらう
)
を
休
(
やす
)
められよと
請
(
こ
)
ふ
事
(
こと
)
最
(
い
)
と
懇
(
ねんごろ
)
なりし
為
(
た
)
め
彼
(
かれ
)
の
家
(
いへ
)
に
入
(
い
)
る。
094
間
(
ま
)
もなく
中田
(
なかだ
)
、
095
辻村
(
つじむら
)
の
両会員
(
りやうくわいゐん
)
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
096
教祖
(
けうそ
)
の
居
(
を
)
らるる
前
(
まへ
)
をも
憚
(
はばか
)
らず、
097
何
(
なん
)
の
挨拶
(
あいさつ
)
も
会釈
(
ゑしやく
)
も
碌々
(
ろくろく
)
せず、
098
開口
(
かいこう
)
一番
(
いちばん
)
上村
(
うへむら
)
氏
(
し
)
が
平生
(
へいぜい
)
の
処置
(
しよち
)
甚
(
はなは
)
だ
不公平
(
ふこうへい
)
なり、
099
依
(
よ
)
つて
吾々
(
われわれ
)
は
退会
(
たいくわい
)
せむなどと
不平
(
ふへい
)
を
訴
(
うつた
)
ふるので、
100
座上
(
ざじやう
)
の
上村
(
うへむら
)
氏
(
し
)
は
大
(
おほい
)
に
怒
(
いか
)
り、
101
これ
又
(
また
)
口
(
くち
)
を
極
(
きは
)
めて
彼
(
かれ
)
が
不謹慎
(
ふきんしん
)
にして
予
(
かね
)
てより
深
(
ふか
)
き
野心
(
やしん
)
を
蔵
(
ざう
)
し、
102
現在
(
げんざい
)
今
(
いま
)
お
供
(
とも
)
の
列
(
れつ
)
に
加
(
くは
)
はる
四方
(
しかた
)
春三
(
はるざう
)
等
(
ら
)
と
気脈
(
きみやく
)
を
通
(
つう
)
じ、
103
本会
(
ほんくわい
)
の
瓦解
(
ぐわかい
)
を
企
(
くはだ
)
てつつありなど、
104
双方
(
さうはう
)
意外
(
いぐわい
)
の
事
(
こと
)
のみ
言
(
い
)
ひ
争
(
あらそ
)
ひ、
105
はては
四方
(
しかた
)
、
106
中田
(
なかだ
)
を
速
(
すみや
)
かに
除名
(
ぢよめい
)
せられ
度
(
た
)
し、
107
然
(
しか
)
らざれば
小子
(
せうし
)
より
退会
(
たいくわい
)
すべし
等
(
など
)
、
108
得手
(
えて
)
勝手
(
かつて
)
の
難問題
(
なんもんだい
)
を
提出
(
ていしゆつ
)
する。
109
中田
(
なかだ
)
、
110
辻村
(
つじむら
)
の
両人
(
りやうにん
)
は
一層
(
いつそう
)
憤激
(
ふんげき
)
し、
111
『
否
(
いや
)
、
112
上村
(
うへむら
)
こそ
今回
(
こんくわい
)
の
瓦解
(
ぐわかい
)
の
謀主
(
ぼうしゆ
)
にして、
113
生
(
せい
)
等
(
ら
)
は
只
(
ただ
)
相談
(
さうだん
)
を
受
(
う
)
けたる
迄
(
まで
)
にて
始
(
はじ
)
めより
斯
(
かか
)
る
反逆
(
はんぎやく
)
には
賛成
(
さんせい
)
し
難
(
がた
)
し、
114
と
一言
(
いちごん
)
の
許
(
もと
)
に
跳
(
はね
)
つけた。
115
それ
故
(
ゆゑ
)
今日
(
こんにち
)
其
(
その
)
真相
(
しんさう
)
の
暴露
(
ばくろ
)
せむ
事
(
こと
)
を
怖
(
おそ
)
れ、
116
先
(
さき
)
んずれば
克
(
よ
)
く
人
(
ひと
)
を
制
(
せい
)
すとの
兵法
(
へいはふ
)
を
以
(
もつ
)
て、
117
反対
(
はんたい
)
に
彼
(
かれ
)
より
生
(
せい
)
等
(
ら
)
を
誣告
(
ぶこく
)
するのである』
118
と
逆捻
(
さかねぢ
)
に
一本
(
いつぽん
)
参
(
まゐ
)
る。
119
互
(
たがひ
)
に
負
(
まけ
)
ず
劣
(
おと
)
らず、
120
争論
(
そうろん
)
の
何時
(
いつ
)
果
(
は
)
つべしとも
見
(
み
)
えざれば、
121
海潮
(
かいてう
)
は
苦々
(
にがにが
)
しき
事
(
こと
)
に
思
(
おも
)
ひ、
122
種々
(
しゆじゆ
)
と
理非
(
りひ
)
を
噛分
(
かみわ
)
けて
諭
(
さと
)
せども、
123
固
(
もと
)
より
敬神
(
けいしん
)
愛民
(
あいみん
)
の
思想
(
しさう
)
を
有
(
いう
)
せざる
頑迷
(
ぐわんめい
)
不霊
(
ふれい
)
の
製糞器
(
せいふんき
)
、
124
只
(
ただ
)
神
(
かみ
)
を
估
(
う
)
りて
糊口
(
ここう
)
の
資
(
し
)
に
供
(
きよう
)
するより
外
(
ほか
)
、
125
他
(
た
)
に
一片
(
いつぺん
)
の
希望
(
きばう
)
なきもの
共
(
ども
)
なれば、
126
済度
(
さいど
)
するには
此
(
この
)
上
(
うへ
)
なく
骨
(
ほね
)
を
折
(
お
)
らざるべからざる、
127
最
(
いと
)
も
困
(
こま
)
つた
厄介
(
やくかい
)
極
(
きは
)
まる
代物
(
しろもの
)
であつた。
128
折柄
(
をりから
)
庭前
(
ていぜん
)
に
嬉々
(
きき
)
として
四頭
(
しとう
)
の
犬
(
いぬ
)
遊
(
あそ
)
び、
129
其
(
その
)
状
(
さま
)
誠
(
まこと
)
に
親睦
(
しんぼく
)
にして
羨
(
うらや
)
ましい
程
(
ほど
)
である。
130
何
(
なん
)
と
思
(
おも
)
はれしか
教祖
(
けうそ
)
は
懐中
(
くわいちゆう
)
より
一片
(
いつぺん
)
の
食物
(
しよくもつ
)
を
取出
(
とりだ
)
し、
131
犬
(
いぬ
)
に
投
(
な
)
げ
与
(
あた
)
へられしに、
132
犬
(
いぬ
)
は
忽
(
たちま
)
ち
争奪
(
そうだつ
)
搏噬
(
はくぜい
)
を
初
(
はじ
)
め、
133
恰
(
あたか
)
も
不倶
(
ふぐ
)
戴天
(
たいてん
)
の
親
(
おや
)
の
仇
(
かたき
)
に
出会
(
でくは
)
せしが
如
(
ごと
)
くである。
134
教祖
(
けうそ
)
はこれを
見
(
み
)
て、
135
人心
(
じんしん
)
の
奥底
(
おくそこ
)
は
大抵
(
たいてい
)
斯
(
か
)
くの
如
(
ごと
)
しと
微笑
(
ほほゑ
)
みし
乍
(
なが
)
ら、
136
匆々
(
さうさう
)
に
此
(
この
)
家
(
や
)
を
立出
(
たちい
)
でむとせらるる
時
(
とき
)
、
137
上村
(
うへむら
)
は
大
(
おほい
)
に
恐縮
(
きようしゆく
)
して
曰
(
いは
)
く、
138
生
(
せい
)
等
(
ら
)
の
心
(
こころ
)
は
実
(
じつ
)
に
此
(
この
)
犬
(
いぬ
)
のやうだと
稍
(
やや
)
反省
(
はんせい
)
の
意
(
い
)
を
表
(
あら
)
はしたが
中田
(
なかだ
)
、
139
辻村
(
つじむら
)
は
却々
(
なかなか
)
承知
(
しようち
)
せず、
140
益々
(
ますます
)
暴言
(
ばうげん
)
を
逞
(
たくま
)
しふし、
141
是非
(
ぜひ
)
々々
(
ぜひ
)
教祖
(
けうそ
)
の
御
(
お
)
入来
(
いで
)
を
幸
(
さいは
)
ひ、
142
正邪
(
せいじや
)
黒白
(
こくびやく
)
を
判別
(
はんべつ
)
されむ
事
(
こと
)
を
強請
(
がうせい
)
して
止
(
や
)
まなかつた。
143
これには
海潮
(
かいてう
)
もほとほと
持
(
も
)
て
余
(
あま
)
し、
144
本会
(
ほんくわい
)
の
主義
(
しゆぎ
)
精神
(
せいしん
)
は
一身
(
いつしん
)
一家
(
いつか
)
の
栄達
(
えいたつ
)
名聞
(
めいぶん
)
を
企図
(
きと
)
するに
止
(
とど
)
まらず、
145
国家
(
こくか
)
的
(
てき
)
観念
(
かんねん
)
を
養
(
やしな
)
ふにあるのに、
146
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
会員
(
くわいいん
)
たるの
本旨
(
ほんし
)
を
忘
(
わす
)
れ、
147
教祖
(
けうそ
)
折角
(
せつかく
)
の
苦行
(
くぎやう
)
の
首途
(
かどで
)
を
擁
(
よう
)
して、
148
非違
(
ひゐ
)
の
裁断
(
さいだん
)
を
請
(
こ
)
はむとするは、
149
実
(
じつ
)
に
時
(
とき
)
を
誤
(
あやま
)
りたる
非礼
(
ひれい
)
の
行為
(
かうゐ
)
なり、
150
教祖
(
けうそ
)
多年
(
たねん
)
の
艱苦
(
かんく
)
は
実
(
じつ
)
に
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
の
如
(
ごと
)
き
会員
(
くわいいん
)
を
覚醒
(
かくせい
)
し
正道
(
せいだう
)
に
導
(
みちび
)
かむが
為
(
た
)
めのみ、
151
今
(
いま
)
又
(
また
)
六十
(
ろくじふ
)
有五
(
いうご
)
歳
(
さい
)
の
教祖
(
けうそ
)
が
梅ケ枝
(
うめがえ
)
の
一杖
(
いちぢやう
)
に
身
(
み
)
を
托
(
たく
)
し、
152
凛烈
(
りんれつ
)
肌
(
はだ
)
を
劈
(
つんざ
)
かむとする
寒天
(
かんてん
)
をめがけ
何地
(
いづこ
)
を
当
(
あて
)
ともなく
神命
(
しんめい
)
の
随々
(
まにまに
)
、
153
孤雁
(
こがん
)
声
(
こゑ
)
悲
(
かな
)
しく、
154
暮雲
(
ぼうん
)
に
彷徨
(
はうくわう
)
するが
如
(
ごと
)
く
将
(
まさ
)
に
遠
(
とほ
)
く
出修
(
しゆつしう
)
されむとす、
155
宜
(
よろ
)
しく
本然
(
ほんぜん
)
の
私
(
わたくし
)
に
還
(
かへ
)
り
教祖
(
けうそ
)
のお
心
(
こころ
)
を
推察
(
すいさつ
)
せば、
156
斯
(
か
)
くの
如
(
ごと
)
く
見苦
(
みぐる
)
しき
事
(
こと
)
をお
耳
(
みみ
)
に
入
(
い
)
れ
申
(
まを
)
すべき
場合
(
ばあひ
)
に
非
(
あら
)
ざるべし、
157
と
事
(
こと
)
を
釈
(
わ
)
け、
158
理
(
り
)
を
解
(
と
)
きて
諭
(
さと
)
せども、
159
元来
(
ぐわんらい
)
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
は
金光教
(
こんくわうけう
)
の
教師
(
けうし
)
にして、
160
自
(
みづか
)
ら
企
(
くはだ
)
て
自
(
みづか
)
ら
為
(
な
)
すの
勇
(
ゆう
)
なく、
161
徒
(
いたづら
)
に
他
(
た
)
の
覆轍
(
ふくてつ
)
に
做
(
なら
)
ひ、
162
其
(
その
)
糟粕
(
さうはく
)
を
舐
(
ねぶ
)
りて
以
(
もつ
)
て
得
(
え
)
たりと
為
(
な
)
し、
163
信者
(
しんじや
)
の
争奪
(
そうだつ
)
にのみ
余念
(
よねん
)
なかりし
癖
(
へき
)
は
容易
(
ようい
)
に
改
(
あらた
)
まらず
教祖
(
けうそ
)
の
諭示
(
ゆじ
)
も
海潮
(
かいてう
)
の
説得
(
せつとく
)
も
寸効
(
すんかう
)
なく、
164
中田
(
なかだ
)
、
165
辻村
(
つじむら
)
の
両人
(
りやうにん
)
は
梟
(
ふくろどり
)
の
夜食
(
やしよく
)
を
取
(
と
)
り
外
(
はづ
)
せし
如
(
ごと
)
く
頬
(
ほほ
)
を
膨
(
ふく
)
らせ
席
(
せき
)
を
蹴立
(
けた
)
てて
帰
(
かへ
)
り、
166
四方
(
しかた
)
、
167
福林
(
ふくばやし
)
もこれに
従
(
つ
)
いて
行
(
い
)
つた。
168
教祖
(
けうそ
)
は
上村
(
うへむら
)
氏
(
し
)
等
(
ら
)
に
慇懃
(
いんぎん
)
なる
謝詞
(
しやし
)
を
述
(
の
)
べ、
169
海潮
(
かいてう
)
、
170
澄子
(
すみこ
)
を
具
(
ぐ
)
して
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
でられし
故
(
ゆゑ
)
、
171
上村
(
うへむら
)
氏
(
し
)
も
大橋
(
おほはし
)
までお
見送
(
みおく
)
りの
為
(
た
)
めとて
従
(
したが
)
ひ
来
(
きた
)
つた。
172
さて
四方
(
しかた
)
春三
(
はるざう
)
は
中田
(
なかだ
)
方
(
かた
)
に
至
(
いた
)
り
頻
(
しき
)
りに
何事
(
なにごと
)
か
善
(
よ
)
からぬ
事
(
こと
)
のみ
囁
(
ささや
)
きつつ
不興
(
ふきよう
)
の
顔色
(
かほいろ
)
物凄
(
ものすご
)
く、
173
口
(
くち
)
を
極
(
きは
)
めて
海潮
(
かいてう
)
を
罵
(
ののし
)
り
是非
(
ぜひ
)
排斥
(
はいせき
)
せずむば
止
(
や
)
まずと
息
(
いき
)
捲
(
ま
)
く。
174
福林
(
ふくばやし
)
氏
(
し
)
は
草臥
(
くたびれ
)
たりとて
中田
(
なかだ
)
が
家
(
いへ
)
に
入
(
い
)
るや、
175
直
(
ただち
)
に
昇
(
あが
)
り
口
(
くち
)
に
打倒
(
うちたふ
)
れ、
176
熟睡
(
じゆくすゐ
)
を
装
(
よそほ
)
ひつつ
狸
(
たぬき
)
の
空寝入
(
そらねい
)
り、
177
素知
(
そし
)
らぬ
振
(
ふり
)
にて
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
の
密談
(
みつだん
)
を
残
(
のこ
)
らず
聞
(
き
)
き
取
(
と
)
つた。
178
少時
(
しばらく
)
ありて
欠伸
(
あくび
)
と
共
(
とも
)
に
起
(
お
)
き
上
(
あが
)
り、
179
態
(
わざ
)
と
空惚
(
そらとぼ
)
けたる
面
(
おもて
)
を
擦
(
さす
)
り
乍
(
なが
)
ら
教祖
(
けうそ
)
は
何処
(
いづこ
)
にありやと
問
(
と
)
へば、
180
中田
(
なかだ
)
『あの
気違
(
きちが
)
ひ
婆
(
ばば
)
か、
181
否
(
いな
)
狂長殿
(
きやうちやうどの
)
か、
182
只今
(
ただいま
)
然
(
しか
)
も
偉相
(
えらさう
)
に
上村
(
うへむら
)
氏
(
し
)
を
随行
(
ずいかう
)
させて
出
(
で
)
て
行
(
い
)
つたから
大方
(
おほかた
)
大橋
(
おほはし
)
の
詰
(
つめ
)
辺
(
あた
)
りに
今頃
(
いまごろ
)
は
迂路
(
うろ
)
ついて
御座
(
ござ
)
らう』
183
と
会員
(
くわいいん
)
にあるまじき
言葉
(
ことば
)
を
弄
(
ろう
)
するも、
184
一味
(
いちみ
)
の
四方
(
しかた
)
は
咎
(
とが
)
めもせず
厭
(
いや
)
さうに
福林
(
ふくばやし
)
を
伴
(
ともな
)
ひて
教祖
(
けうそ
)
の
跡
(
あと
)
を
追
(
お
)
つかけた。
185
夕陽
(
ゆふひ
)
は
已
(
すで
)
に
西山
(
せいざん
)
に
没
(
ぼつ
)
し、
186
黄昏
(
たそがれ
)
の
霧
(
きり
)
は
一行
(
いつかう
)
を
包
(
つつ
)
まむとする。
187
四方
(
しかた
)
春三
(
はるざう
)
は、
188
四方
(
しかた
)
『
夜
(
よる
)
の
旅
(
たび
)
は
危険
(
きけん
)
ですし、
189
さりとて
旅費
(
りよひ
)
も
豊
(
ゆたか
)
ならず、
190
むしろ
中田
(
なかだ
)
氏
(
し
)
に
一泊
(
いつぱく
)
しませう』
191
と
云
(
い
)
へば
教祖
(
けうそ
)
は
少
(
すこ
)
しく
怒
(
いか
)
つて、
192
教祖
(
けうそ
)
『
仮令
(
たとへ
)
野宿
(
のじゆく
)
をしても
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
の
家
(
いへ
)
に
泊
(
とま
)
るのは
厭
(
いや
)
ぢや』
193
とて
気色
(
けしき
)
悪
(
あし
)
ければ、
194
一行
(
いつかう
)
は
不承
(
ふしよう
)
々々
(
ぶしよう
)
に
従
(
したが
)
ひ
行
(
ゆ
)
く。
195
小山
(
こやま
)
、
196
松原
(
まつばら
)
乗
(
の
)
り
越
(
こ
)
えて
一里半
(
いちりはん
)
行
(
ゆ
)
けば
鳥羽
(
とば
)
の
里
(
さと
)
、
197
広瀬
(
ひろせ
)
も
後
(
あと
)
に
八木
(
やぎ
)
の
町
(
まち
)
、
198
月
(
つき
)
は
照
(
て
)
れども
深更
(
しんかう
)
に
入
(
い
)
りて
漸
(
やうや
)
く
八木
(
やぎ
)
の
会合所
(
くわいがふしよ
)
福島
(
ふくしま
)
氏
(
し
)
方
(
かた
)
へ
着
(
つ
)
いた。
199
(
大正一一・一〇・一八
旧八・二八
北村隆光
録)
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