霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一一章 思(おも)ひ出(で)(二)〔一〇四八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第38巻 舎身活躍 丑の巻 篇:第2篇 光風霽月 よみ(新仮名遣い):こうふうせいげつ
章:第11章 思ひ出(二) よみ(新仮名遣い):おもいで 通し章番号:1048
口述日:1922(大正11)年10月16日(旧08月26日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1924(大正13)年4月3日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
自分を排斥しようという反対者たちの活動は、次第に露骨になってきた。大原というところに泊まった帰り、地獄谷というところにさしかかると、羽織の紐がほどけて脱げようとする。
不思議に思って鎮魂していると、十人ほどの暗殺隊が待ち伏せしていることが霊眼に見えた。四方春蔵が自分に同行していたが、四方も共謀者だったのである。
そこで、四方春蔵に先に行くようにと命じると、四方は計画に気づかれたことに驚いて逃げてしまった。少し先に行くと、暗殺隊は計画が漏れたことを知って、辺りからごそごそと出てきてお迎えに上がったのだ、などと出まかせを言う。
喜楽は彼らに先に歩くように言い、自分は一番後からついていった。一人逃げ二人逃げ、とうとう残りは五人になってしまった。
そうして帰ってくると、教祖様は家の前の岩に赤い真綿と白い真綿を重ねて、喜楽の無事を祈願してくれていた。逃げ帰った連中は教祖様に叱られて、お互いに罪をなすりあっていたが、喜楽は済んだこととして許した。
幹部たちは、喜楽の言動は悪の小松林だから改心させなければならないが、肉体は神様の御用でお使いになるのだから綾部に居なくてはならぬ、と無茶と言ってさんざん自分を苦しめた。
神様からは早く布教の活動をしろと言われ、往生した。また別の機会に京都へ来ないかと言われて出立したが、これは自分を途中で待ち受けて殺そうとするたくらみであった。向こうが短刀を抜いたので、こちらも短刀を抜いて覚悟を示したところ、怖気がついたようで、とうとう勝負はせずに連れだって綾部に帰ったこともあった。
また苦心して大阪に出て、内藤氏の家に落ち着いていた。すると偶然、中村、竹原、四方らが家の前を通った。声をかけると、自分の留守中に喜楽が書いた書物を五百冊ほど焼いてしまったという。
あわてて園部までもどったが、四方平蔵氏がまた小松林の四足の守護神、とやりだす。癪に障ったから、揚げ豆腐と牛肉を牛乳で煮させて、洋服を着て四つん這いになって食べて見せてやった。
園部の信者たちは、そんなことをするとますます誤解されるからやめてくれ、と泣いて頼み込んできた。
四方氏らは小松林が喜楽の肉体から抜け出るよう証文を書け、と言ってきた。彼らが字が読める者がないのを幸い、漢字で出鱈目な証文を書いてやったが、後でまた、喜楽が幹部をだました、やはり悪の御魂だと言って責められた。
帰ってみると、喜楽が書いたものはすべて焼かれてしまっていた。自分の言うことはまったく聞いてくれないので、久しぶりに教祖様に面会したところ、もうよそへは行かないように、とのお言葉であった。
喜楽は幹部連中が書物を焼いたことを報告したので、教祖様は幹部たちをお叱りになった。それでこの件は決着がついた。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ:焚書 データ凡例: データ最終更新日:2022-11-04 13:35:45 文字数:3170 OBC :rm3811
愛善世界社版:114頁 八幡書店版:第7輯 200頁 修補版: 校定版:114頁 普及版:58頁 初版: ページ備考:
001 自分(じぶん)を排斥(はいせき)しやうと云(い)ふ、002幹部(かんぶ)の中(うち)の野心家(やしんか)連中(れんちう)の活動(くわつどう)が段々(だんだん)露骨(ろこつ)になつて来(き)た。003川合(かはい)の大原(おほはら)に泊(とま)つた時(とき)、004十(じふ)人(にん)ばかりの暗殺隊(あんさつたい)がやつて来(き)た。005自分(じぶん)の霊眼(れいがん)には誰(たれ)と誰(たれ)とが来(き)て居(ゐ)ると云(い)ふ事(こと)がすつかり分(わか)つて居(ゐ)る。006翌日(よくじつ)大原(おほはら)を出発(しゆつぱつ)して上谷(うへだに)と西原(にしばら)との間(あひだ)の、007俗(ぞく)に地獄谷(ぢごくだに)と云(い)つて居(ゐ)る処(ところ)へさしかかると、008如何(どう)したものか、009自分(じぶん)の羽織(はおり)の紐(ひも)がほどけて羽織(はおり)が脱(ぬ)げやうとする。010不思議(ふしぎ)だと思(おも)つて鎮魂(ちんこん)をして見(み)ると、011暗殺隊(あんさつたい)の待(ま)ち伏(ぶ)せである事(こと)が分(わか)つた。012四方(しかた)春三(はるざう)が供(とも)をして居(ゐ)たが、013是(これ)も一(ひと)つ穴(あな)の貉(むじな)だから、014自分(じぶん)は捩鉢巻(ねぢはちまき)腕(うで)まくりをして居(ゐ)たが、
015喜楽(きらく)『大(おほ)きな割木(わりき)を握(にぎ)つて後(うしろ)に目(め)が無(な)い。016どんな事(こと)をするか知(し)れたものでないから先(さき)へ行(ゆ)け』
017と云(い)ひつけると四方(しかた)は吃驚(びつくり)して逃(に)げ出(だ)した。018少(すこ)し行(ゆ)くと、019彼方(あちら)からも此方(こちら)からもガサガサと出(で)て来(き)たが機先(きせん)を制(せい)せられて張(は)り合(あ)ひ抜(ぬ)けがしたと見(み)えて、
020『先生(せんせい)、021お迎(むか)へに参(まゐ)りました』
022などと云(い)つて居(ゐ)る。
023喜楽(きらく)『馬鹿(ばか)を云(い)へ、024こんな怪(け)しからぬお迎(むか)へが何処(どこ)にあるか、025後(うしろ)に目(め)が無(な)い、026先(さき)へ行(ゆ)け』
027と云(い)つて喜楽(きらく)は一番(いちばん)後(あと)から跟(つ)いて行(い)つた。028手持(てもち)無沙汰(ぶさた)になつたものだから、029一人(ひとり)逃(に)げ二人(ふたり)逃(に)げ、030到頭(たうとう)四方(しかた)権太郎(ごんたらう)、031王原(わうはら)常太郎(つねたらう)、032村上(むらかみ)春之助(はるのすけ)、033谷口(たにぐち)熊吉(くまきち)、034それに喜楽(きらく)と五(ご)人(にん)になつて了(しま)つた。035一人(ひとり)が股(また)を広(ひろ)げて放屁(はうひ)をやると又(また)一人(ひとり)が放屁(はうひ)をやる、036自分(じぶん)も負(ま)けぬ気(き)になつて復讐(ふくしう)的(てき)に又(また)放屁(はうひ)する。037誰(たれ)も彼(かれ)も、038やるともやるとも能(よ)くも出(で)たものだと思(おも)ふ位(くらゐ)盛(さかん)に連発(れんぱつ)して、039西原(にしばら)から綾部(あやべ)の大橋(おほはし)迄(まで)一(いち)里(り)の間(あひだ)放(ひ)りづめであつた。040帰(かへ)つて来(く)ると、041教祖(けうそ)様(さま)が家(いへ)の前(まへ)にある岩(いは)に赤(あか)い真綿(まわた)と白(しろ)い真綿(まわた)とを重(かさ)ねかけて、042縮緬(ちりめん)の紐(ひも)で縛(しば)つて自分(じぶん)の無事(ぶじ)な様(やう)にお呪(まじな)ひして居(を)られた。043赤白(あかしろ)の真綿(まわた)は、044艮(うしとら)と坤(ひつじさる)の金神(こんじん)様(さま)、045紐(ひも)は竜宮(りうぐう)様(さま)だ。046逃(に)げて帰(かへ)つた連中(れんちう)は、047教祖(けうそ)様(さま)から叱(しか)られてお互(たがひ)に罪(つみ)のなすり合(あ)ひを始(はじ)めた。048喜楽(きらく)は済(す)んだ事(こと)だから構(かま)はぬ構(かま)はぬと云(い)つて、049一場(いちぢやう)の夢(ゆめ)と観(くわん)じて無事(ぶじ)に済(す)ませた。
050 無事(ぶじ)に済(す)む事(こと)は済(す)んだが、051其(その)後(ご)も喜楽(きらく)の云(い)ふ事(こと)は用(もち)ひて呉(く)れない。
052『教祖(けうそ)様(さま)は経(たて)を説(と)かれる、053会長(くわいちやう)は教祖(けうそ)様(さま)のお話(はなし)の分(わか)る様(やう)に緯(よこ)を説(と)くのである』
054と説明(せつめい)しても如何(どう)しても信用(しんよう)せない。055そして自分(じぶん)の肉体(にくたい)は教祖(けうそ)様(さま)のお筆先(ふでさき)にある通(とほ)り、056神業(しんげふ)のために居(ゐ)なくてはならぬ肉体(にくたい)であるが守護神(しゆごじん)が小松林(こまつばやし)と云(い)ふ四(よ)つ足(あし)の悪(あく)の守護神(しゆごじん)だから、057如何(どう)しても其(その)化(ば)けの皮(かは)を剥(む)かさねばならぬと考(かんが)へて居(を)るのである。058こんな風(ふう)で喜楽(きらく)の云(い)ふ事(こと)は一向(いつかう)聞(き)かぬから、059いつそ飛(と)び出(だ)さうとすると、060四方(しかた)平蔵(へいざう)氏(し)が仲裁(ちうさい)して、
061四方(しかた)『百(ひやく)のものなら、062教祖(けうそ)様(さま)のお話(はなし)を九十九(きうじふきう)聞(き)いて、063先生(せんせい)の話(はなし)を一(ひと)つだけ聞(き)かう』
064と云(い)ひ出(だ)した。065すると中村(なかむら)竹造(たけざう)が、
066中村(なかむら)『それも可(い)かぬ』
067と云(い)ふ。068喜楽(きらく)は、
069喜楽(きらく)『君(きみ)等(ら)は教祖(けうそ)様(さま)の御(ご)馳走(ちそう)される糞尿(ふんねう)と、070喜楽(きらく)が御(ご)馳走(ちそう)する飯(めし)と鯛(たひ)と何(ど)ちらを取(と)るか』
071と聞(き)いて見(み)ると、
072中村(なかむら)『教祖(けうそ)様(さま)の糞尿(ふんねう)なら有(あ)りがたく頂戴(ちやうだい)する』
073と云(い)ふ。074これでは到底(たうてい)駄目(だめ)と考(かんが)へたから、075大阪(おほさか)の内藤(ないとう)七郎(しちらう)氏(し)の処(ところ)へ行(い)つて了(しま)つた。
076 其(その)後(ご)用(よう)が出来(でき)たので、077一度(いちど)洋服(やうふく)を着(き)て綾部(あやべ)へ帰(かへ)つて来(き)た事(こと)がある。078すると自分(じぶん)の行衛(ゆくゑ)を探(さが)して居(を)つたと見(み)えて、079喜楽(きらく)が帰(かへ)つたのは喜(よろこ)んだが、080又(また)小松林(こまつばやし)の四(よ)ツ足(あし)の悪(あく)の守護神(しゆごじん)呼(よ)ばはりを始(はじ)め出(だ)した。081洋服(やうふく)は引(ひ)き剥(む)いて雪隠(せつちん)へ投(ほ)り込(こ)む。082誰(たれ)かの着物(きもの)を着(き)せて、083鞄(かばん)は何処(どこ)へか片付(かたづ)けて了(しま)ふ。084そして張番(はりばん)をして何処(どこ)へ行(ゆ)くにも附(つ)いて来(く)る。085不自由(ふじゆう)千万(せんばん)な事(こと)、086お話(はなし)にならない。087とても辛抱(しんばう)しきれぬから、088出(で)て行(ゆ)かうとするけれども如何(どう)しても出(だ)しては呉(く)れぬ。089強(しひ)て出(で)やうとすると『これでも行(ゆ)くか』と云(い)つて木下(きのした)慶太郎(けいたらう)、090後野(ごの)市太郎(いちたらう)、091村上(むらかみ)房之助(ふさのすけ)、092竹原(たけはら)房太郎(ふさたらう)等(ら)が出刃(でば)庖丁(ぼうちやう)を持(も)つて来(き)て切腹(せつぷく)しやうとする。093嚇(おど)かしではなくて本気(ほんき)なんだから耐(たま)らない。094仕方(しかた)なしに往生(わうじやう)して一(いつ)ケ年(ねん)ばかり、095又(また)腰(こし)を据(す)ゑる事(こと)に決心(けつしん)した。
096 自分(じぶん)の身体(からだ)は自分(じぶん)の自由(じいう)にならず、097幹部(かんぶ)は依然(いぜん)として云(い)ふ事(こと)を聞(き)かず、098と云(い)つて一方(いつぱう)では神(かみ)様(さま)が憑(うつ)られて切(しき)りに活動(くわつどう)せよ活動(くわつどう)せよと責(せ)められる。099自分(じぶん)としても為(な)す事(こと)もなく、100斯(こ)う云(い)ふ風(ふう)にボンヤリして居(ゐ)る訳(わけ)には往(ゆ)かぬから、101分(わか)るやうに平(ひら)たく説明(せつめい)したものを書(か)いて西田(にしだ)元吉(もときち)に渡(わた)して、102布教(ふけう)のため活動(くわつどう)の余地(よち)を作(つく)らうと努力(どりよく)した。103すると京都(きやうと)から杉浦(すぎうら)万吉(まんきち)がやつて来(き)て、104喜楽(きらく)に、
105杉浦(すぎうら)『西田(にしだ)と相談(さうだん)して京都(きやうと)へ来(こ)い』
106と勧(すす)めてくれた。107自分(じぶん)も其(その)気(き)になつて、108或(ある)夜(よ)用意(ようい)のためにお守刀(まもりがたな)を一本(いつぽん)携(たづさ)へて飛(と)び出(だ)した。109綾部(あやべ)から二(に)里(り)八町(はつちやう)向(むか)ふの山路(やまみち)の大原(おほはら)の新屋(あたらしや)といふ宿屋(やどや)の便所(べんじよ)へ這入(はい)ると、110便所(べんじよ)の脇(わき)でヒソヒソ話(ばなし)の声(こゑ)がして居(ゐ)る。111聞(き)くともなしに聞(き)くと『来(き)たか来(き)たか』と云(い)つて居(ゐ)る。112段々(だんだん)聞(き)くと、113杉浦(すぎうら)が例(れい)の野心家(やしんか)連中(れんちう)と喋(しめ)し合(あは)せて、114先廻(さきまは)りをして待(ま)ち伏(ぶ)せして居(ゐ)たので、115目的(もくてき)は自分(じぶん)を殺(ころ)さうと云(い)ふのである事(こと)が分(わか)つた。116便所(べんじよ)の壺(つぼ)をくぐつて出(で)ると其処(そこ)に川(かは)がある、117川(かは)を渡(わた)つて藪(やぶ)の中(なか)へ這(は)ひ込(こ)んで一晩(ひとばん)震(ふる)へて居(ゐ)た。118其(その)内(うち)夜(よ)が明(あ)けたから、119台頭(だいとう)と云(い)ふ処(ところ)へ行(ゆ)くと、120暗殺隊(あんさつたい)の連中(れんちう)が自分(じぶん)の行(ゆ)くのを待(ま)ち受(う)けて居(ゐ)た。121そして短刀(たんたう)を出(だ)して決心(けつしん)を示(しめ)したから、122喜楽(きらく)も短刀(たんたう)を出(だ)して見(み)せて勝負(しようぶ)しやうと云(い)つてやつた。123自分(じぶん)の決死(けつし)の意(い)を見(み)て取(と)つて少(すこ)しく恐気(おぢけ)がついたものか、124到頭(たうとう)勝負(しようぶ)はせずに連(つ)れだつて綾部(あやべ)へ帰(かへ)つた事(こと)があつた。
125 こんな風(ふう)で、126自分(じぶん)の体(からだ)は何時(いつ)何(ど)んな目(め)に遭(あ)はされるか分(わか)らず、127活動(くわつどう)は依然(いぜん)として出来(でき)ぬ不自由(ふじゆう)さに耐(た)へず、128其(その)後(ご)又(また)大阪(おほさか)へ高飛(たかと)びして、129内藤(ないとう)氏(し)の家(うち)へ落(お)ち付(つ)いた。130大阪(おほさか)に居(ゐ)て稲荷下(いなりさ)げを縛(しば)つて歩(ある)いたり、131四千(よんせん)円(ゑん)ばかりの金(かね)を出(だ)し合(あ)つて人造(じんざう)精乳(せいにう)会社(くわいしや)を起(おこ)して、132京都(きやうと)に店(みせ)を出(だ)したりした。
133 さうして居(ゐ)る内(うち)、134或(あ)る日(ひ)四方(しかた)、135中村(なかむら)、136竹原(たけはら)等(ら)が偶然(ぐうぜん)家(いへ)の前(まへ)を通(とほ)つた。137長髪(ちやうはつ)の妙(めう)な男(をとこ)が揃(そろ)つて通(とほ)るので犬(いぬ)が盛(さか)んに吠(ほ)へつく。138ヒヨイと見(み)ると四方(しかた)等(ら)であるから、139声(こゑ)をかけてやると吃驚(びつくり)した。140家(うち)へ這入(はい)られると煩(うる)さいから、141近松(ちかまつ)の処(ところ)へ同行(どうかう)すると、
142『お蔭(かげ)で六(ろく)ケ月(げつ)かかつて漸(やうや)う立替(たてかへ)の御用(ごよう)をさせて頂(いただ)いたから誠(まこと)に結構(けつこう)だ』
143と妙(めう)な事(こと)を云(い)ふ。144何(なん)の事(こと)かと聞(き)いて見(み)ると、145自分(じぶん)の書(か)いた本(ほん)をスツカリ集(あつ)めて五百冊(ごひやくさつ)ばかりも留守中(るすちう)に焼(や)いて了(しま)つたのださうだ。
146 一緒(いつしよ)に園部(そのべ)の奥村(おくむら)の内(うち)まで行(い)つた。147さうすると四方(しかた)平蔵(へいざう)が又(また)、
148四方(しかた)『小松林(こまつばやし)の四(よ)つ足(あし)の守護神(しゆごじん)』
149とやり出(だ)す。150癪(しやく)に触(さは)つて耐(たま)らぬから、151一(ひと)つ、152四(よ)つ足(あし)の真似(まね)をしてやれと思(おも)つて赤小豆(あづき)の飯(めし)を焚(た)かせ、153揚豆腐(あげとうふ)と牛乳(ぎうにう)と牛肉(ぎうにく)とを煮(に)させて洋服(やうふく)を着(き)たまま、154四(よ)つ這(ばひ)になつて口(くち)をつけてムシヤムシヤと食(く)つた。155さうすると、
156『あゝお筆先(ふでさき)は争(あらそ)はれぬ、157四(よ)つ足(あし)の本性(ほんしやう)が露(あら)はれた。158有難(ありがた)い有難(ありがた)い』
159と云(い)つて無暗(むやみ)に有(あ)り難(がた)がつてゐる。160園部(そのべ)の信者(しんじや)は、
161『そんな真似(まね)をなさると益々(ますます)誤解(ごかい)をさせる基(もと)だから……』
162と云(い)つて泣(な)いて止(と)める。163煙草(たばこ)がのみ度(た)いと云(い)ふと、164すぐ傍(そば)に火鉢(ひばち)があるにも拘(かか)はらず、165火打石(ひうちいし)で火(ひ)を打(う)つて煙草(たばこ)の火(ひ)を呉(く)れる。166そして、
167『小松林(こまつばやし)の四(よ)つ足(あし)の守護神(しゆごじん)は、168もう憑(うつ)らぬ。169上田(うへだ)喜三郎(きさぶらう)の肉体(にくたい)は返上(へんじやう)すると云(い)ふ証文(しようもん)を書(か)け』
170と云(い)ふ。171仕方(しかた)が無(な)いから漢字(かんじ)で以(もつ)て出鱈目(でたらめ)の証文(しようもん)を書(か)いてやる。172字(じ)の読(よ)める者(もの)が一人(ひとり)も無(な)いのであるから、173後生(ごしやう)大事(だいじ)と喜(よろこ)んで受取(うけと)つたが綾部(あやべ)へ帰(かへ)つて、174それが出鱈目(でたらめ)だと云(い)ふ事(こと)が分(わか)つたので、175又(また)四(よ)つ足(あし)の悪(あく)の守護神(しゆごじん)が役員(やくゐん)までも騙(だま)したと云(い)つて怒(おこ)り出(だ)した。
176 綾部(あやべ)へ帰(かへ)つて見(み)ると、177自分(じぶん)の苦心(くしん)して書(か)いた本(ほん)は悉(ことごと)く焼(や)かれて了(しま)つて居(を)る。178神(かみ)と云(い)ふ字(じ)は勿体(もつたい)ないと云(い)つて御(ご)苦労(くらう)千万(せんばん)にも一々(いちいち)調(しら)べて神(かみ)の字(じ)だけを切(き)り抜(ぬ)いて焼(や)いて了(しま)つたのだ。179其(その)切(き)り抜(ぬ)いた神(かみ)の字(じ)だけが蜜柑箱(みかんばこ)に数杯(すうはい)あつたが、180その一杯(いつぱい)丈(だけ)は今(いま)も保存(ほぞん)してある。181八木(やぎ)清太郎(せいたらう)と云(い)ふ男(をとこ)は喜楽(きらく)の書(か)いたもので、182方々(はうばう)へ散(ち)つて居(ゐ)るのを軒別(けんべつ)に廻(まは)つて集(あつ)めて歩(ある)いて、183それを表具屋(へうぐや)へ売(う)つて酒(さけ)を飲(の)んで、184虎列剌(コレラ)に罹(かか)つて死(し)んで了(しま)つた。185こんな風(ふう)で喜楽(きらく)の云(い)ふ事(こと)は、186依然(いぜん)として聞(き)きいれて呉(く)れぬから、187今度(こんど)は教祖(けうそ)様(さま)に会(あ)はして呉(く)れと云(い)つて久(ひさ)し振(ぶ)りでお目(め)にかかつた。188教祖(けうそ)様(さま)は喜(よろこ)ばれて、
189教祖(けうそ)『能(よ)う帰(かへ)つて来(き)て呉(く)れた。190もう何処(どこ)へも行(ゆ)かんといてくれ』
191と云(い)ふお言葉(ことば)であつたから、192これまでの逐一(ちくいち)を悉(ことごと)くお話(はな)ししたら、193幹部(かんぶ)の連中(れんちう)を呼(よ)び出(だ)されてお叱(しか)りになり、194幹部(かんぶ)の連中(れんちう)が一同(いちどう)で謝罪(しやざい)して、195これで又(また)一段落(いちだんらく)がついた。
196(大正一一・一〇・一六 旧八・二六 北村隆光録)
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