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霊界物語
舎身活躍(第37~48巻)
第38巻(丑の巻)
序歌
総説
第1篇 千万無量
第1章 道すがら
第2章 吉崎仙人
第3章 帰郷
第4章 誤親切
第5章 三人組
第6章 曲の猛
第7章 火事蚊
第2篇 光風霽月
第8章 三ツ巴
第9章 稍安定
第10章 思ひ出(一)
第11章 思ひ出(二)
第12章 思ひ出(三)
第3篇 冒険神験
第13章 冠島
第14章 沓島
第15章 怒濤
第16章 禁猟区
第17章 旅装
第4篇 霊火山妖
第18章 鞍馬山(一)
第19章 鞍馬山(二)
第20章 元伊勢
第5篇 正信妄信
第21章 凄い権幕
第22章 難症
第23章 狐狸狐狸
第24章 呪の釘
第25章 雑草
第26章 日の出
第27章 仇箒
第28章 金明水
余白歌
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第38巻(丑の巻)
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<<< 難症
(B)
(N)
呪の釘 >>>
第二三章
狐狸
(
こり
)
々々
(
こり
)
〔一〇六〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第38巻 舎身活躍 丑の巻
篇:
第5篇 正信妄信
よみ(新仮名遣い):
せいしんぼうしん
章:
第23章 狐狸狐狸
よみ(新仮名遣い):
こりこり
通し章番号:
1060
口述日:
1922(大正11)年10月18日(旧08月28日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1924(大正13)年4月3日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
明治三八年の夏、西田元教は宇治で数十人の信者をこしらえて布教していたが、あまりの多忙に自分に応援を頼んできた。そこで綾部を未明に飛び出して来た。
宇治にきてみると、家の内にも外にも参詣者がいっぱい詰まっている。海潮が来たというので、たくさんの信者が涙を流して喜んでいた。またいろいろの病人がご神徳をいただいて帰るので、宇治の町は坊主と医者以外は全部信者になってしまった。
小西の広間が心配になったので、西田と才幸太郎を視察に遣わした。小西の広間は繁盛していたが、神がかりがおかしいので、西田が調べると、押戸に手のとれた古い仏像が五六個並んでいる。
西田は、これは狸が守護しているから川に捨てろと小西に勧めてまた喧嘩になり、西田は宇治に戻ってきた。すると西田が瘧で苦しみだした。海潮が審神すると西田は口を切り、自分は仏像を守護していた狸で、西田が仏像を川へ流せというから命を取るのだ、と意地を張る。
そこで西田の頭にすり鉢を載せて灸をすえると、落ちてしまった。また三日目になると猛烈に襲ってきた。鎮魂してまた退散させる。二三度繰り返すととうとう退散してしまい、西田は元通り元気になった。
そうこうするうちに、三牧次三郎という中村派の男が内へやってきて、役員にいろいろ海潮や西田の悪口を言い、自分と西田を放り出してしまった。
西田は中村派の計略にかかって荷物一切を取られて放り出されたので、夫婦で伏見に行った。妻のお雪は撚糸工場で働き、西田は按摩を稽古して商売がてら伏見地方を布教していた。
明治四十二年に海潮が綾部に帰って大広前を建てたりお宮を建てるようになってから、綾部に戻って宣伝をするようになったのであった。
三牧ら中村派は、狸の憑霊を利用したりして迷信家の信用を得て、自分たちを放り出すことに成功したのであった。それから自分も病人の鎮魂がさっぱり嫌になり、神懸の修業も断念してしまった。
大正五年に横須賀の浅野さんの宅に行ったとき、参考のために幽斎の修業をして見せたのが元になって、浅野さんが熱心に霊学を研究し始めることになったのである。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2022-11-11 09:41:37
OBC :
rm3823
愛善世界社版:
242頁
八幡書店版:
第7輯 250頁
修補版:
校定版:
247頁
普及版:
129頁
初版:
ページ備考:
001
明治
(
めいぢ
)
卅八
(
さんじふはち
)
年
(
ねん
)
の
八
(
はち
)
月
(
ぐわつ
)
、
002
西田
(
にしだ
)
元教
(
げんけう
)
は
種々
(
いろいろ
)
と
艱難
(
かんなん
)
辛苦
(
しんく
)
して
山城
(
やましろ
)
の
宇治
(
うぢ
)
で
数十
(
すうじふ
)
人
(
にん
)
の
信徒
(
しんと
)
をこしらへ、
003
茨木
(
いばらき
)
清次郎
(
せいじらう
)
と
云
(
い
)
ふ
人
(
ひと
)
の
座敷
(
ざしき
)
を
借
(
か
)
つて
盛
(
さか
)
んに
布教
(
ふけう
)
をやつて
居
(
ゐ
)
たが、
004
あまりの
多忙
(
たばう
)
に
一度
(
いちど
)
応援
(
おうゑん
)
に
来
(
き
)
て
呉
(
く
)
れと
云
(
い
)
ふ
端書
(
はがき
)
を
寄越
(
よこ
)
したので、
005
自分
(
じぶん
)
はソツと
綾部
(
あやべ
)
を
未明
(
みめい
)
に
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
し、
006
鞄
(
かばん
)
をさげて
須知山
(
しゆちやま
)
峠
(
たうげ
)
を
登
(
のぼ
)
つた
頃
(
ころ
)
、
007
太陽
(
たいやう
)
が
昇
(
のぼ
)
られた。
008
それから
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
榎木峠
(
えのきたうげ
)
、
009
観音峠
(
くわんおんたうげ
)
を
越
(
こ
)
え、
010
園部
(
そのべ
)
の
支部
(
しぶ
)
へ
一寸
(
ちよつと
)
立
(
た
)
ち
寄
(
よ
)
り
才
(
さい
)
幸太郎
(
かうたらう
)
と
云
(
い
)
ふ
信者
(
しんじや
)
を
荷持
(
にも
)
ちとし、
011
徒歩
(
とほ
)
にて
亀岡
(
かめをか
)
、
012
王子
(
わうじ
)
を
越
(
こ
)
え
沓掛
(
くつかけ
)
から
道
(
みち
)
を
右
(
みぎ
)
にとつて
伏見
(
ふしみ
)
に
着
(
つ
)
いた
時
(
とき
)
は、
013
已
(
すで
)
に
太陽
(
たいやう
)
は
西
(
にし
)
の
山
(
やま
)
の
上
(
うへ
)
一二間
(
いちにけん
)
ばかりの
処
(
ところ
)
にあつた。
014
伏見
(
ふしみ
)
の
安田
(
やすだ
)
庄太郎
(
しやうたらう
)
と
云
(
い
)
ふ
信者
(
しんじや
)
の
家
(
うち
)
に
立寄
(
たちよ
)
つて
見
(
み
)
た
処
(
ところ
)
、
015
瓦屋
(
かはらや
)
で
今
(
いま
)
竈
(
かま
)
へ
火
(
ひ
)
を
入
(
い
)
れて
居
(
を
)
る
最中
(
さいちう
)
、
016
ユツクリ
話
(
はなし
)
も
出来
(
でき
)
ずして
居
(
ゐ
)
ると、
017
中村
(
なかむら
)
の
股肱
(
ここう
)
となつてゐる
男
(
をとこ
)
の
事
(
こと
)
とて、
018
安田
(
やすだ
)
『
海潮
(
かいてう
)
ハン、
019
何
(
なん
)
で
綾部
(
あやべ
)
に
居
(
を
)
りなさらぬ。
020
又
(
また
)
しても
病気
(
びやうき
)
が
起
(
おこ
)
りましたか。
021
海潮
(
かいてう
)
のする
事
(
こと
)
は
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
後戻
(
あともど
)
りばかりぢやと
教祖
(
けうそ
)
さまは
仰有
(
おつしや
)
るのに
又
(
また
)
行
(
ゆ
)
くのですか。
022
さあ
帰
(
かへ
)
りなされ、
023
それとも
今
(
いま
)
竈
(
かま
)
へ
火
(
ひ
)
を
入
(
い
)
れて
居
(
ゐ
)
る
最中
(
さいちう
)
ですから
話
(
はな
)
しも
出来
(
でき
)
ませぬ、
024
今夜
(
こんや
)
泊
(
とま
)
つて
下
(
くだ
)
さい。
025
又
(
また
)
後
(
あと
)
で
話
(
はなし
)
をしますから………』
026
と
云
(
い
)
ふ。
027
『これはまだ
目
(
め
)
が
醒
(
さ
)
めぬのか、
028
愚図
(
ぐづ
)
々々
(
ぐづ
)
しては
大変
(
たいへん
)
………』
029
と
幸太郎
(
かうたろう
)
を
促
(
うなが
)
して
早々
(
さうさう
)
に
立別
(
たちわか
)
れ、
030
伏見
(
ふしみ
)
の
豊後橋
(
ぶんごばし
)
を
渡
(
わた
)
つて
宇治川
(
うぢがは
)
の
長
(
なが
)
い
土手
(
どて
)
を
遡
(
さかのぼ
)
り、
031
綾部
(
あやべ
)
から
二十四五
(
にじふしご
)
里
(
り
)
の
道
(
みち
)
を
漸
(
やうや
)
く
夜
(
よる
)
の
八
(
はち
)
時
(
じ
)
頃
(
ごろ
)
茨木
(
いばらき
)
の
宅
(
たく
)
へついた。
032
行
(
い
)
つて
見
(
み
)
れば
人
(
ひと
)
が
一杯
(
いつぱい
)
詰
(
つま
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
033
南郷
(
なんがう
)
国松
(
くにまつ
)
、
034
茨木
(
いばらき
)
清次郎
(
せいじらう
)
、
035
岡田
(
をかだ
)
熊次郎
(
くまじらう
)
、
036
長谷川
(
はせがは
)
仙吉
(
せんきち
)
、
037
其
(
その
)
外
(
ほか
)
七八
(
しちはち
)
人
(
にん
)
の
世話方
(
せわかた
)
が
出来
(
でき
)
て
大変
(
たいへん
)
な
勢
(
いきほひ
)
で
月例祭
(
つきなみさい
)
をやつてる
処
(
ところ
)
だつた。
038
家
(
いへ
)
の
内
(
うち
)
にも
外
(
そと
)
にも
参詣者
(
さんけいしや
)
が
一杯
(
いつぱい
)
詰
(
つま
)
つてゐる。
039
海潮
(
かいてう
)
が
見
(
み
)
えたと
云
(
い
)
ふので
沢山
(
たくさん
)
の
信者
(
しんじや
)
が
涙
(
なみだ
)
を
流
(
なが
)
して
喜
(
よろこ
)
んでゐた。
040
それから
自分
(
じぶん
)
は
綾部
(
あやべ
)
の
者
(
もの
)
には
少
(
すこ
)
しも
知
(
し
)
らさず、
041
清次郎
(
せいじろう
)
の
家
(
うち
)
で
布教
(
ふけう
)
宣伝
(
せんでん
)
をやつて
居
(
ゐ
)
ると、
042
毎日
(
まいにち
)
五六十
(
ごろくじふ
)
人
(
にん
)
から
百
(
ひやく
)
人
(
にん
)
位
(
くらゐ
)
の
参詣者
(
さんけいしや
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
て、
043
いろいろの
病人
(
びやうにん
)
がお
神徳
(
かげ
)
を
頂
(
いただ
)
いて
帰
(
かへ
)
るので
宇治
(
うぢ
)
の
町
(
まち
)
は
坊主
(
ばうず
)
と
医者
(
いしや
)
を
除
(
のぞ
)
く
外
(
ほか
)
、
044
全部
(
ぜんぶ
)
信者
(
しんじや
)
になつて
了
(
しま
)
つた。
045
そして
近村
(
きんそん
)
からも
三四
(
さんよ
)
里
(
り
)
の
処
(
ところ
)
から
日々
(
にちにち
)
参拝
(
さんぱい
)
する
非常
(
ひじやう
)
な
盛況
(
せいきやう
)
である。
046
宇津
(
うつ
)
の
小西
(
こにし
)
松元
(
しようげん
)
の
広間
(
ひろま
)
が
気
(
き
)
にかかつて
居
(
ゐ
)
るので、
047
一生
(
いつしやう
)
小西
(
こにし
)
の
処
(
ところ
)
へ
行
(
ゆ
)
かぬと
云
(
い
)
ふた
西田
(
にしだ
)
元教
(
げんけう
)
を
無理
(
むり
)
に
勧
(
すす
)
めて、
048
視察
(
しさつ
)
の
為
(
た
)
めに
才
(
さい
)
幸太郎
(
かうたろう
)
と
共
(
とも
)
に
使
(
つかひ
)
にやつた。
049
さうすると
松元
(
しようげん
)
は
自分
(
じぶん
)
の
宅
(
たく
)
が
狭
(
せま
)
いので
産土
(
うぶすな
)
の
八幡
(
はちまん
)
神社
(
じんじや
)
の
広
(
ひろ
)
い
社務所
(
しやむしよ
)
を
借
(
か
)
つて、
050
そこで
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
祭
(
まつ
)
り
大変
(
たいへん
)
な
勢
(
いきほひ
)
で
布教
(
ふけう
)
宣伝
(
せんでん
)
をやつて
居
(
を
)
つた。
051
さうして
西田
(
にしだ
)
が
来
(
き
)
たのを
見
(
み
)
て
小西
(
こにし
)
は、
052
小西
(
こにし
)
『よう
珍
(
めづら
)
しい、
053
能
(
よ
)
う
忘
(
わす
)
れずに
来
(
こ
)
られましたな』
054
と
横柄
(
わうへい
)
に
云
(
い
)
ふて
居
(
ゐ
)
る。
055
さうした
処
(
ところ
)
が
小西
(
こにし
)
の
神懸
(
かむがかり
)
[
※
初版・愛世版では「神懸」、校定版では「神がかり」。
]
の
様子
(
やうす
)
が
大変
(
たいへん
)
に
怪
(
あや
)
しいので
一寸
(
ちよつと
)
影
(
かげ
)
から
審神者
(
さには
)
をして
見
(
み
)
ると、
056
何
(
なん
)
でも
狸
(
たぬき
)
が
憑依
(
ひようい
)
してる
様
(
やう
)
なので
押戸
(
おしど
)
を
開
(
あ
)
けて
見
(
み
)
ると、
057
手
(
て
)
のとれた
古
(
ふる
)
い
仏
(
ほとけ
)
さまが
五
(
いつ
)
つ
六
(
む
)
つ
無雑作
(
むざふさ
)
に
突
(
つ
)
つ
込
(
こ
)
んである。
058
そこで
西田
(
にしだ
)
が、
059
西田
(
にしだ
)
『
小西
(
こにし
)
サン、
060
こんな
虫
(
むし
)
の
喰
(
く
)
た
仏像
(
ぶつざう
)
は
川
(
かは
)
へ
流
(
なが
)
したら
如何
(
どう
)
だ。
061
此奴
(
こいつ
)
あ
屹度
(
きつと
)
狸
(
たぬき
)
が
守護
(
しゆご
)
してゐるから、
062
其奴
(
そいつ
)
がお
前
(
まへ
)
に
憑
(
うつ
)
つて
居
(
ゐ
)
るのでお
前
(
まへ
)
の
神懸
(
かむがかり
)
[
※
初版・愛世版では「神懸」、校定版では「神がかり」。
]
が
可笑
(
おか
)
しうなつて、
063
一寸
(
ちよつと
)
もあはぬ
様
(
やう
)
になつたのだ』
064
と
云
(
い
)
ふと、
065
小西
(
こにし
)
が
大変
(
たいへん
)
に
怒
(
おこ
)
つて、
066
小西
(
こにし
)
『
馬鹿
(
ばか
)
の
事
(
こと
)
云
(
い
)
ふな。
067
お
前
(
まへ
)
は
海潮
(
かいてう
)
の
狐
(
きつね
)
の
尾先
(
をさき
)
に
使
(
つか
)
はれて
来
(
き
)
たのだらう』
068
と
悪口
(
あくこう
)
をつき、
069
大勢
(
おほぜい
)
の
信者
(
しんじや
)
の
前
(
まへ
)
で
散々
(
さんざん
)
に
罵倒
(
ばたう
)
するので
西田
(
にしだ
)
は
立腹
(
りつぷく
)
し、
070
そこを
立出
(
たちい
)
で
宮村
(
みやむら
)
へまはり、
071
芹生峠
(
せりふたうげ
)
を
越
(
こ
)
えて
貴船
(
きぶね
)
神社
(
じんじや
)
を
右
(
みぎ
)
に
見
(
み
)
乍
(
なが
)
ら、
072
京都
(
きやうと
)
を
横断
(
わうだん
)
して
漸
(
やうや
)
く
宇治
(
うぢ
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
てブツブツ
小言
(
こごと
)
を
云
(
い
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
073
さうすると
翌日
(
よくじつ
)
になると、
074
西田
(
にしだ
)
が
真青
(
まつさを
)
な
顔
(
かほ
)
になりブルブル
慄
(
ふる
)
ひ
出
(
だ
)
した。
075
よくよく
調
(
しら
)
べて
見
(
み
)
ると
瘧
(
おこり
)
を
起
(
おこ
)
して
居
(
ゐ
)
るのである。
076
そこで
海潮
(
かいてう
)
が
審神
(
さには
)
すると、
077
西田
(
にしだ
)
が
口
(
くち
)
を
切
(
き
)
つて、
078
『
俺
(
おれ
)
は
宇津
(
うつ
)
の
八幡
(
はちまん
)
様
(
さま
)
の
社務所
(
ながとこ
)
に
居
(
ゐ
)
る
仏像
(
ぶつざう
)
を
守護
(
しゆご
)
して
居
(
ゐ
)
る
狸
(
たぬき
)
だ。
079
俺
(
おれ
)
の
大切
(
たいせつ
)
な
御
(
ご
)
本尊
(
ほんぞん
)
を
川
(
かは
)
へ
流
(
なが
)
せと
吐
(
ぬか
)
しやがつたから、
080
此奴
(
こやつ
)
の
生命
(
いのち
)
を
取
(
と
)
らにやおかぬ』
081
と
意地
(
いぢ
)
張
(
ば
)
つて
益々
(
ますます
)
身体
(
からだ
)
を
苦
(
くるし
)
めるので、
082
摺鉢
(
すりばち
)
を
西田
(
にしだ
)
の
頭
(
あたま
)
に
着
(
き
)
せ、
083
其
(
その
)
上
(
うへ
)
に
艾
(
もぐさ
)
を
一掴
(
ひとつか
)
み
乗
(
の
)
せて
灸
(
やいと
)
を
据
(
す
)
えると『
熱
(
あつ
)
い、
084
苦
(
くるし
)
い』と
云
(
い
)
ひ
出
(
だ
)
し
到頭
(
たうとう
)
落
(
お
)
ちて
了
(
しま
)
つた。
085
それから
其
(
その
)
翌日
(
よくじつ
)
は
何
(
なん
)
ともなかつたが、
086
三日目
(
みつかめ
)
の
同
(
おな
)
じ
時刻
(
じこく
)
になると
西田
(
にしだ
)
が、
087
西田
(
にしだ
)
『
又
(
また
)
来
(
き
)
やがつた。
088
何
(
なに
)
糞
(
くそ
)
ツ』
089
と
気張
(
きば
)
つてゐる。
090
されど
狸
(
たぬき
)
の
憑霊
(
ひようれい
)
は
猛烈
(
まうれつ
)
な
勢
(
いきほひ
)
で
襲
(
おそ
)
ひ
来
(
きた
)
り、
091
又
(
また
)
瘧
(
おこり
)
を
慄
(
ふる
)
はせて
苦
(
くるし
)
めて
居
(
ゐ
)
る。
092
自分
(
じぶん
)
は
今度
(
こんど
)
は
西田
(
にしだ
)
の
頭
(
あたま
)
に
濡
(
ぬ
)
れた
手拭
(
てぬぐひ
)
を
着
(
き
)
せ
其
(
その
)
上
(
うへ
)
に
摺鉢
(
すりばち
)
を
乗
(
の
)
せて、
093
百匁
(
ひやくめ
)
ばかりの
艾
(
もぐさ
)
をつけて
扇
(
あふぎ
)
で
煽
(
あふ
)
ぎ
乍
(
なが
)
ら
鎮魂
(
ちんこん
)
して
居
(
ゐ
)
ると、
094
ヤツとの
事
(
こと
)
で
落
(
お
)
ちた。
095
それから
二三遍
(
にさんぺん
)
チヨコチヨコやつて
来
(
き
)
たが
到頭
(
たうとう
)
退散
(
たいさん
)
して
了
(
しま
)
ひ、
096
西田
(
にしだ
)
は
元
(
もと
)
の
通
(
とほ
)
り
元気
(
げんき
)
になつて
布教
(
ふけう
)
に
従事
(
じうじ
)
して
居
(
ゐ
)
た。
097
話
(
はなし
)
は
後
(
あと
)
へ
戻
(
もど
)
るが、
098
西田
(
にしだ
)
の
手紙
(
てがみ
)
を
見
(
み
)
て
綾部
(
あやべ
)
を
立
(
た
)
つて
園部
(
そのべ
)
の
支部
(
しぶ
)
へ
立寄
(
たちよ
)
り、
099
それから
小山
(
こやま
)
の
田井
(
たゐ
)
儀兵
(
ぎへい
)
の
宅
(
うち
)
に
一寸
(
ちよつと
)
一服
(
いつぷく
)
してゐると、
100
東
(
ひがし
)
から
園部
(
そのべ
)
へ
這入
(
はい
)
つて
来
(
き
)
た
汽車
(
きしや
)
の
汽笛
(
きてき
)
の
声
(
こゑ
)
が、
101
何
(
なん
)
とはなしに
驚
(
おどろ
)
きと
悲
(
かな
)
しみとを
含
(
ふく
)
んでをるので、
102
海潮
(
かいてう
)
は
田井
(
たゐ
)
儀兵
(
ぎへい
)
に
向
(
むか
)
つて、
103
海潮
(
かいてう
)
『あの
汽笛
(
きてき
)
の
声
(
こゑ
)
は
誰
(
たれ
)
か
轢死
(
れきし
)
したに
違
(
ちがひ
)
ない』
104
といふと、
105
田井
(
たゐ
)
『
如何
(
いか
)
にも
何時
(
いつ
)
もとは
違
(
ちが
)
ふ、
106
烈
(
はげ
)
しい
声
(
こゑ
)
ですな』
107
と
外
(
そと
)
を
覗
(
のぞ
)
くと
野良
(
のら
)
に
居
(
ゐ
)
た
沢山
(
たくさん
)
の
人
(
ひと
)
が
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
鉄道
(
てつだう
)
へ
駆
(
か
)
けつける。
108
自分
(
じぶん
)
も
宇治
(
うぢ
)
へ
行
(
ゆ
)
く
道
(
みち
)
だから、
109
此処
(
ここ
)
でユツクリして
居
(
を
)
れぬと
鉄道
(
てつだう
)
の
側
(
そば
)
へ
行
(
い
)
つて
見
(
み
)
ると、
110
小
(
ちひ
)
さい
青
(
あを
)
い
顔
(
かほ
)
した
男
(
をとこ
)
が
胴
(
どう
)
から
二
(
ふた
)
つになつて
五六間
(
ごろくけん
)
ばかり
引
(
ひ
)
きずられて
真青
(
まつさを
)
な
顔
(
かほ
)
して
死
(
し
)
んで
居
(
ゐ
)
る。
111
西田
(
にしだ
)
が
自分
(
じぶん
)
を
迎
(
むか
)
へに
来
(
き
)
て
轢
(
し
)
かれて
死
(
し
)
んだのではないかと
思
(
おも
)
ふ
位
(
くらゐ
)
、
112
其
(
その
)
顔
(
かほ
)
がよく
似
(
に
)
て
居
(
ゐ
)
たので
側
(
そば
)
へ
寄
(
よ
)
り、
113
よくよく
見
(
み
)
れば、
114
さうではなかつた。
115
其
(
その
)
間
(
あひだ
)
に
巡査
(
じゆんさ
)
が
来
(
き
)
たりいろいろして
調
(
しら
)
べて
居
(
ゐ
)
た。
116
轢
(
し
)
かれた
処
(
ところ
)
の
砂
(
すな
)
の
上
(
うへ
)
に
新庄村
(
しんしやうむら
)
の
何某
(
なにぼう
)
と
木
(
き
)
の
先
(
さき
)
で
土
(
つち
)
に
書
(
か
)
いてあつた。
117
後
(
あと
)
にて
聞
(
き
)
けば
此
(
この
)
男
(
をとこ
)
は
僅
(
たつ
)
た
一
(
いち
)
円
(
ゑん
)
五十銭
(
ごじつせん
)
の
主人
(
しゆじん
)
の
金
(
かね
)
を
使
(
つか
)
ひ
過
(
す
)
ごし、
118
それを
園部
(
そのべ
)
の
親類
(
しんるゐ
)
へ
借
(
か
)
りに
来
(
き
)
て
拒絶
(
きよぜつ
)
せられ
轢死
(
れきし
)
したと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
新聞
(
しんぶん
)
で
知
(
し
)
つた。
119
さて
才
(
さい
)
幸太郎
(
かうたろう
)
の
顔
(
かほ
)
が
俄
(
にはか
)
に
其
(
その
)
轢死
(
れきし
)
した
男
(
をとこ
)
に
見
(
み
)
え
出
(
だ
)
し
気分
(
きぶん
)
が
悪
(
わる
)
くて
仕方
(
しかた
)
がないのを
無理
(
むり
)
に
宇治
(
うぢ
)
迄
(
まで
)
荷
(
に
)
を
持
(
も
)
たして
居
(
ゐ
)
たのである。
120
才
(
さい
)
幸太郎
(
かうたろう
)
は
時々
(
ときどき
)
瘧
(
おこり
)
を
又
(
また
)
慄
(
ふる
)
ひ
出
(
だ
)
し、
121
審神
(
さには
)
して
見
(
み
)
ると、
122
才
(
さい
)
『
俺
(
おれ
)
は
小山
(
こやま
)
の
軋道
(
レール
)
の
上
(
うへ
)
で
轢死
(
れきし
)
した
男
(
をとこ
)
だ。
123
一番先
(
いちばんさき
)
にお
前
(
まへ
)
が
俺
(
おれ
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
たので
憑
(
つ
)
いたのだ』
124
と
云
(
い
)
ふ。
125
それから
又
(
また
)
摺鉢
(
すりばち
)
の
灸
(
やいと
)
で、
126
やつとの
事
(
こと
)
で
全快
(
ぜんくわい
)
させ
園部
(
そのべ
)
へ
帰
(
かへ
)
した。
127
さうこうして
居
(
ゐ
)
ると、
128
伏見
(
ふしみ
)
の
安田
(
やすだ
)
から
聞
(
き
)
いたと
見
(
み
)
えて
三牧
(
みまき
)
次三郎
(
じさぶらう
)
と
云
(
い
)
ふ
中村
(
なかむら
)
の
乾児
(
こぶん
)
が
宇治
(
うぢ
)
へやつて
来
(
き
)
て、
129
南郷
(
なんがう
)
国松
(
くにまつ
)
や
長谷川
(
はせがは
)
仙吉
(
せんきち
)
其
(
その
)
外
(
ほか
)
の
役員
(
やくゐん
)
に
種々
(
いろいろ
)
雑多
(
ざつた
)
の
海潮
(
かいてう
)
や
西田
(
にしだ
)
の
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
ひ、
130
三牧
(
みまき
)
『
艮
(
うしとら
)
の
金神
(
こんじん
)
様
(
さま
)
に
敵
(
てき
)
とうて
来
(
き
)
た
奴
(
やつ
)
だから
相手
(
あひて
)
になるな』
131
と
云
(
い
)
ひ
出
(
だ
)
し、
132
到頭
(
たうとう
)
卅九
(
さんじふく
)
年
(
ねん
)
の
一
(
いち
)
月
(
ぐわつ
)
元日
(
ぐわんじつ
)
の
朝
(
あさ
)
大勢
(
おほぜい
)
寄
(
よ
)
つて
自分
(
じぶん
)
を
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
して
了
(
しま
)
つた。
133
自分
(
じぶん
)
は
一文
(
いちもん
)
も
旅費
(
りよひ
)
なしに
小山
(
こやま
)
の
田井
(
たゐ
)
氏
(
し
)
の
宅
(
うち
)
迄
(
まで
)
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
ると
沢山
(
たくさん
)
の
信者
(
しんじや
)
がよつて
来
(
き
)
て
泣
(
な
)
いて
喜
(
よろこ
)
び
四五
(
しご
)
円
(
ゑん
)
ばかりの
小遣
(
こづか
)
ひを
呉
(
く
)
れた。
134
それを
以
(
もつ
)
て
久
(
ひさ
)
し
振
(
ぶ
)
りに
綾部
(
あやべ
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た。
135
それから
西田
(
にしだ
)
は
其
(
その
)
月
(
つき
)
の
十五
(
じふご
)
日
(
にち
)
に
三牧
(
みまき
)
次三郎
(
じさぶらう
)
や
南郷
(
なんがう
)
其
(
そ
)
の
他
(
た
)
の
者
(
もの
)
の
計略
(
けいりやく
)
にかかつて
荷物
(
にもつ
)
一切
(
いつさい
)
を
取
(
と
)
られた
上
(
うへ
)
、
136
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
されてお
雪
(
ゆき
)
と
夫婦
(
ふうふ
)
連
(
づ
)
れ
伏見
(
ふしみ
)
へ
行
(
ゆ
)
き、
137
お
雪
(
ゆき
)
は
或
(
ある
)
撚糸
(
ねんし
)
の
工場
(
こうば
)
へ
女工
(
ぢよこう
)
になつて
這入
(
はい
)
り、
138
西田
(
にしだ
)
は
按摩
(
あんま
)
を
稽古
(
けいこ
)
して、
139
商売
(
しやうばい
)
片手
(
かたて
)
に
伏見
(
ふしみ
)
地方
(
ちはう
)
に
布教
(
ふけう
)
して
居
(
ゐ
)
たが、
140
四十二
(
しじふに
)
年
(
ねん
)
に
自分
(
じぶん
)
が
綾部
(
あやべ
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
大広前
(
おほひろまへ
)
を
建
(
た
)
てたりお
宮
(
みや
)
を
建
(
た
)
てる
様
(
やう
)
になつてから、
141
ソロソロ
綾部
(
あやべ
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
て、
142
頻
(
しき
)
りに
宣伝
(
せんでん
)
する
事
(
こと
)
となつたのである。
143
これより
先
(
さき
)
、
144
西田
(
にしだ
)
と
三牧
(
みまき
)
は
宇治
(
うぢ
)
の
橋熊
(
はしぐま
)
と
云
(
い
)
ふ
顔役
(
かほやく
)
に
頼
(
たの
)
まれて
其
(
その
)
乾児
(
こぶん
)
等
(
ら
)
の
家
(
うち
)
の
祖霊祭
(
みたままつり
)
を
夜
(
よる
)
になると
頻
(
しき
)
りにやつてゐた。
145
さうした
処
(
ところ
)
が
其
(
その
)
祖霊箱
(
みたまばこ
)
が
時々
(
ときどき
)
躍
(
をど
)
り
出
(
だ
)
し、
146
お
供物
(
そなへもの
)
をすると
魚
(
さかな
)
のお
供
(
そなへ
)
の
方
(
はう
)
へカタツと
音
(
おと
)
をさしては
向
(
む
)
き
直
(
なほ
)
つたり、
147
階段
(
かいだん
)
を
下
(
お
)
りたりするので、
148
霊
(
れい
)
と
云
(
い
)
ふものは
偉
(
えら
)
いものだ。
149
本当
(
ほんたう
)
に
西田
(
にしだ
)
サンや
三牧
(
みまき
)
サンは
偉
(
えら
)
いと
云
(
い
)
ふ
評判
(
へうばん
)
になり、
150
何処
(
どこ
)
もかも
競
(
きそ
)
ふて
祖霊祭
(
みたままつり
)
を
頼
(
たの
)
んでゐた。
151
橋熊
(
はしぐま
)
は
親分
(
おやぶん
)
の
事
(
こと
)
とて
自分
(
じぶん
)
の
宅
(
うち
)
だけは
海潮
(
かいてう
)
にして
貰
(
もら
)
ひ
度
(
た
)
いと
云
(
い
)
つて
特別
(
とくべつ
)
に
頼
(
たの
)
みに
来
(
き
)
たので、
152
自分
(
じぶん
)
が
行
(
い
)
つて
祖霊祭
(
みたままつり
)
をすませ、
153
一服
(
いつぷく
)
をして
居
(
ゐ
)
ると
橋熊
(
はしぐま
)
が
妙
(
めう
)
な
顔
(
かほ
)
をして、
154
橋熊
(
はしぐま
)
『もし
先生
(
せんせい
)
、
155
宅
(
うち
)
の
祖霊
(
みたま
)
さまはまだ
納
(
をさ
)
まらぬのですか、
156
他家
(
よそ
)
の
祖霊
(
みたま
)
さまは
皆
(
みな
)
動
(
うご
)
くのに、
157
何故
(
なぜ
)
宅
(
うち
)
丈
(
だけ
)
は
動
(
うご
)
きませぬ。
158
貴方
(
あなた
)
は
先生
(
せんせい
)
であり
乍
(
なが
)
ら
霊
(
れい
)
が
利
(
き
)
かぬのですか』
159
と
不足
(
ふそく
)
相
(
さう
)
に
云
(
い
)
ふので、
160
狸
(
たぬき
)
が
這入
(
はい
)
つて
動
(
うご
)
くのだと
明
(
あ
)
かす
訳
(
わけ
)
にも
行
(
ゆ
)
かず、
161
喜楽
(
きらく
)
『
私
(
わたし
)
は
祖霊祭
(
みたままつり
)
は
今日
(
けふ
)
が
初
(
はじ
)
めてだから
勝手
(
かつて
)
を
知
(
し
)
りませぬ、
162
三牧
(
みまき
)
さんが
上手
(
じやうづ
)
ですからして
貰
(
もら
)
ひなさい』
163
と
体
(
てい
)
よく
云
(
い
)
ふた。
164
さうすると
今度
(
こんど
)
は、
165
三牧
(
みまき
)
を
頼
(
たの
)
んで
祖霊祭
(
みたままつり
)
を
改
(
あらた
)
めてやつた
所
(
ところ
)
が、
166
大変
(
たいへん
)
に
箱
(
はこ
)
が
動
(
うご
)
き
出
(
だ
)
したので、
167
三牧
(
みまき
)
の
信用
(
しんよう
)
が
高
(
たか
)
まり、
168
西田
(
にしだ
)
がやつても
自分
(
じぶん
)
がやつてもチツとも
動
(
うご
)
かぬので
到頭
(
たうとう
)
迷信家
(
めいしんか
)
の
信用
(
しんよう
)
を
失
(
うしな
)
ひ、
169
自分
(
じぶん
)
は
真先
(
まつさき
)
に
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
され、
170
西田
(
にしだ
)
も
次
(
つい
)
で
追
(
お
)
ひ
払
(
はら
)
はれて
了
(
しま
)
ふたのである。
171
綴喜郡
(
つづきぐん
)
の
郷
(
がう
)
の
口
(
くち
)
の
浅田
(
あさだ
)
安治
(
やすぢ
)
といふ
酒造屋
(
しゆざうや
)
の
妹
(
いもうと
)
に、
172
お
鶴
(
つる
)
と
云
(
い
)
ふ
癲疳
(
てんかん
)
病者
(
やみ
)
があつた。
173
其
(
その
)
女
(
をんな
)
の
病気
(
びやうき
)
を
癒
(
なほ
)
して
呉
(
く
)
れと
云
(
い
)
つて
頼
(
たの
)
みに
来
(
き
)
たので、
174
遥々
(
はるばる
)
と
郷
(
ごう
)
の
口
(
くち
)
へ
行
(
い
)
つて
鎮魂
(
ちんこん
)
した
処
(
ところ
)
、
175
一月
(
ひとつき
)
ばかり
癲疳
(
てんかん
)
は
止
(
と
)
まつて
居
(
ゐ
)
た。
176
さうした
処
(
ところ
)
酒倉
(
さかぐら
)
の
中
(
なか
)
で
又
(
また
)
もや
癲疳
(
てんかん
)
が
起
(
おこ
)
つたのでソロソロ
海潮
(
かいてう
)
の
信用
(
しんよう
)
が
薄
(
うす
)
くなつた
処
(
ところ
)
へ、
177
其
(
その
)
村
(
むら
)
で
廿才
(
はたち
)
位
(
くらゐ
)
の
娘
(
むすめ
)
で
永
(
なが
)
らく
足
(
あし
)
の
起
(
た
)
たぬ
病人
(
びやうにん
)
があつた。
178
自分
(
じぶん
)
は
再
(
ふたた
)
び
宇治
(
うぢ
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
南郷
(
なんがう
)
の
宅
(
たく
)
に
居
(
ゐ
)
て
布教
(
ふけう
)
してゐると、
179
又
(
また
)
頼
(
たの
)
みに
来
(
き
)
たので
今度
(
こんど
)
は
三牧
(
みまき
)
と
小竹
(
こたけ
)
が
鎮魂
(
ちんこん
)
に
行
(
い
)
つた。
180
さうすると
其
(
その
)
娘
(
むすめ
)
が、
181
『
俺
(
おれ
)
は
三年前
(
さんねんまへ
)
に
死
(
し
)
んだ
此処
(
ここ
)
の
婆
(
ばば
)
アぢやが
村中
(
むらぢう
)
の
誰
(
たれ
)
彼
(
かれ
)
に
内所
(
ないしよ
)
で
金
(
かね
)
を
何程
(
なんぼ
)
何程
(
なんぼ
)
貸
(
か
)
した』
182
と
誠
(
まこと
)
しやかに
喋
(
しやべ
)
り
立
(
た
)
てるので、
183
合
(
あは
)
して
見
(
み
)
ると
千
(
せん
)
円
(
ゑん
)
ばかりの
金
(
かね
)
だから、
184
病人
(
びやうにん
)
の
兄
(
あに
)
が、
185
『
家
(
うち
)
の
婆
(
ば
)
アサンの
霊
(
れい
)
がお
前
(
まへ
)
の
処
(
ところ
)
へ
金
(
かね
)
を
貸
(
か
)
したと
云
(
い
)
ふが
返
(
かへ
)
して
呉
(
く
)
れ』
186
と
其処
(
そこ
)
ら
中
(
ぢう
)
へ
歩
(
ある
)
いたので、
187
村中
(
むらぢう
)
の
大騒動
(
だいさうどう
)
となり、
188
『
一体
(
いつたい
)
誰
(
たれ
)
がそんな
事
(
こと
)
云
(
い
)
ふたか』
189
と
調
(
しら
)
べて
見
(
み
)
ると、
190
三牧
(
みまき
)
が
鎮魂
(
ちんこん
)
して
其
(
その
)
娘
(
むすめ
)
が
喋
(
しやべ
)
り
出
(
だ
)
し、
191
小竹
(
こたけ
)
と
云
(
い
)
ふ
男
(
をとこ
)
と
二人
(
ふたり
)
がついて
居
(
ゐ
)
ると
云
(
い
)
ふので、
192
巡査
(
じゆんさ
)
がやつて
来
(
き
)
たり
色々
(
いろいろ
)
と
悶錯
(
もんさく
)
が
初
(
はじ
)
まつた。
193
そこで
郷
(
がう
)
の
口
(
くち
)
から
自分
(
じぶん
)
を
呼
(
よ
)
びに
来
(
き
)
たので
行
(
い
)
つて
見
(
み
)
ると、
194
其
(
その
)
娘
(
むすめ
)
は
頻
(
しき
)
りに
婆
(
ば
)
アサンの
声色
(
こわいろ
)
を
使
(
つか
)
ふて、
195
『
如何
(
どう
)
しても
金
(
かね
)
を
貸
(
か
)
した』と
意地張
(
いぢば
)
つてゐる。
196
それから
三牧
(
みまき
)
と
小竹
(
こたけ
)
を
宇治
(
うぢ
)
へ
帰
(
かへ
)
し、
197
自分
(
じぶん
)
が
一晩
(
ひとばん
)
泊
(
とま
)
つて
様子
(
やうす
)
を
考
(
かんが
)
へた
処
(
ところ
)
が、
198
非常
(
ひじやう
)
に
怪
(
あや
)
しいので
刀
(
かたな
)
を
一本
(
いつぽん
)
主人
(
しゆじん
)
から
貸
(
か
)
して
貰
(
もら
)
ふて
祝詞
(
のりと
)
をあげ
乍
(
なが
)
ら
空
(
くう
)
を
切
(
き
)
つて
見
(
み
)
ると
箪笥
(
たんす
)
の
横
(
よこ
)
から
昼
(
ひる
)
の
真中
(
まなか
)
に
七匹
(
しちひき
)
の
豆狸
(
まめだぬき
)
が
飛
(
と
)
び
出
(
だ
)
した。
199
それと
共
(
とも
)
に
其
(
その
)
娘
(
むすめ
)
は
病気
(
びやうき
)
が
癒
(
なほ
)
つて
了
(
しま
)
つた。
200
さうすると
海潮
(
かいてう
)
にお
礼
(
れい
)
を
云
(
い
)
ふ
所
(
どころ
)
か、
201
『お
前
(
まへ
)
サンは
三牧
(
みまき
)
の
様
(
やう
)
な
弟子
(
でし
)
を
使
(
つか
)
ふて
宅
(
うち
)
の
娘
(
むすめ
)
に
狸
(
たぬき
)
を
憑
(
つ
)
けて、
202
こんな
村中
(
むらぢう
)
の
騒動
(
さうだう
)
をさしたのだらう』
203
と
反対
(
はんたい
)
に
理屈
(
りくつ
)
を
云
(
い
)
ひ、
204
『ど
狸
(
たぬき
)
奴
(
め
)
が、
205
早
(
はや
)
うかへれ』
206
と
呶鳴
(
どな
)
りつけられるので
到頭
(
たうとう
)
狸憑
(
たぬきつ
)
けにしられて
了
(
しま
)
ひ
怨
(
うら
)
みを
呑
(
の
)
んで
宇治
(
うぢ
)
まで
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
た。
207
さうすると、
208
南郷
(
なんがう
)
や
長谷川
(
はせがは
)
が
三牧
(
みまき
)
と
一
(
ひと
)
つになつて、
209
三十九
(
さんじふく
)
年
(
ねん
)
の
正
(
しやう
)
月
(
ぐわつ
)
元日
(
ぐわんじつ
)
に
朝
(
あさ
)
つぱらから
自分
(
じぶん
)
を
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
す
事
(
こと
)
となつたのである。
210
霊界
(
れいかい
)
の
事
(
こと
)
の
分
(
わか
)
らぬ
連中
(
れんちう
)
になると
困
(
こま
)
つたもので、
211
訳
(
わけ
)
を
云
(
い
)
へば
云
(
い
)
ふ
程
(
ほど
)
益々
(
ますます
)
疑
(
うたが
)
ふて
始末
(
しまつ
)
におへぬものである。
212
それから
自分
(
じぶん
)
も
病人
(
びやうにん
)
の
鎮魂
(
ちんこん
)
がサツパリ
嫌
(
いや
)
になり、
213
神懸
(
かむがかり
)
の
修行
(
しうぎやう
)
も
断念
(
だんねん
)
して
了
(
しま
)
ふた。
214
が
大正
(
たいしやう
)
五
(
ご
)
年
(
ねん
)
に
横須賀
(
よこすか
)
の
浅野
(
あさの
)
サンの
宅
(
たく
)
へ
行
(
い
)
つた
時
(
とき
)
、
215
参考
(
さんかう
)
のために
又
(
また
)
もや
幽斎
(
いうさい
)
の
修行
(
しうぎやう
)
をして
見
(
み
)
せたのが
元
(
もと
)
となつて
浅野
(
あさの
)
サンが
霊学
(
れいがく
)
を
熱心
(
ねつしん
)
に
研究
(
けんきう
)
し
始
(
はじ
)
める
事
(
こと
)
となつたのである。
216
(
大正一一・一〇・一八
旧八・二八
北村隆光
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 難症
(B)
(N)
呪の釘 >>>
霊界物語
>
舎身活躍(第37~48巻)
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第38巻(丑の巻)
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【第23章 狐狸狐狸|第38巻|舎身活躍|霊界物語|/rm3823】
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