千歳経し聖の壷も地震の荒びに逢はばもろく破れむ〈七章(初版)〉
つがの木の弥つぎつぎに伝はりて宝の壷もひびぞ入りぬる〈七章(初版)〉
曲神は天と地とにみちとせの夢は破れむ夢の世の中〈七章(初版)〉
唐大和天竺の空も開けゆくわが三五の神のみいづに〈九章(初版)〉
奥山にやつれて暮らす杣人も花の色香はうるはしと見る〈九章(初版)〉
春の花秋の楓も月影も忘れて神の道芝を踏む〈九章(初版)〉
面白き世なりと夢を辿りつつ夢の中なる夢を見るかな〈十一章(初版)〉
秋の夜のいと静かなるうたげにもゑらぎの声の面白きかな〈十一章(初版)〉
神のため君の御為国のため汚さじものと心配りつ〈十一章(初版)〉
高砂の千歳の松に月影の照り映ふ姿常夜にもがも〈十三章(初版)〉
長月の錦の野辺にぬえ鳥の音をのみぞ啼く野分淋しも〈士二章(初版)〉
吹き払ふ稲葉の山の紅葉も照り映ふ頃は静かなるらむ〈十三章(初版)〉
古郷の月の浜辺に吾妹子は嘸なげくらむ淋しき留守を〈十五章(初版)〉
ふるさとの人魚が泣くといふ浜に二世を誓ひし人の偲ばゆ〈十五章(初版)〉
東雲の空明け渡るほの見えて百鳥千鳥啼き叫ぶなり〈十六章(初版)〉
艶やかに笑める林檎の頬の色夜の明け方の空の様なり〈十六章(初版)〉
黎明の光の空に浮彫りのやうな雲片二ツ三ツ見ゆ〈十八章(初版)〉
琴平の山の腹より照り出づる白金光のまばゆくもあるかな〈十八章(初版)〉
清澄な黄金の空に禽鳥のいとも妙なる琴囀の声〈十九章(初版)〉
天も地も人も怒りて常暗の空晴らさむと風雨雷鳴〈十九章(初版)〉
ひむがしの山をかすめて襲ひ来る飛行機あはれもろくも墜落〈二十章(初版)〉
遠雷の声聞くさへも爆弾か地震の音かと胸轟かす〈二十章(初版)〉
ドンと云ふ声聞き付けて爆弾よそれ地震よと戦く江戸ツ子〈二十章(初版)〉
午砲の音庫の戸音もドンドンと胸ををどらす今の世の中〈二十章(初版)〉
彗星の我が地に近づき来たるころ暗深からむ遠く慮れよ〈二十二章(初版)〉
星一つ光も強くてら山の尾の上に浮ぶ冬の夕暮〈二十四章(初版)〉
清澄な夕べの空に星一つ蒼空占むる影の偉大さ〈二十四章(初版)〉
浪波津に救ひの御舟浮べつつおぼれし魂を渡す瑞霊〈二十六章(初版)〉
甲子の春を迎へて殊更に静心なく淋しくなりぬ〈二十七章(初版)〉
瑞御魂水の都に下りなば御代を清めの浪の花咲かむ〈二十八章(初版)〉
大正の秋も十余り二ツの年
神の便りを菊月の
下の三日に月の露
三十三相の玉の肌
天津空より降り来る
清く涼しき玉の糸
結ぶの神の御恵み
世は高砂の神の島
千代に栄ゆる一つ松緑の梢ぞ久しけれ〈二十八章(初版)〉
[この余白歌は八幡書店版霊界物語収録の余白歌を参考に他の資料と付き合わせて作成しました]