霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二五章 言霊(ことたま)(たき)〔一八五六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第73巻 天祥地瑞 子の巻 篇:第2篇 高照神風 よみ(新仮名遣い):たかてるしんぷう
章:第25章 言霊の滝 よみ(新仮名遣い):ことたまのたき 通し章番号:1856
口述日:1933(昭和8)年10月16日(旧08月27日) 口述場所:水明閣 筆録者:谷前清子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1933(昭和8)年11月22日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
紫微天界の高照山は、仏教で言う須弥仙山であり、スメール山または気吹の山とも言う。高地秀山は、またの名を天の高日山といい、高照山に次ぐ高山である。
高照山の高さは三十三万尺、周囲は八千八百里、川の数は五千六百七十条ある。そのうち、もっとも深く広く、当方に向かって流れているのが日向河(ひむかがわ)であり、南に向かっているのが日南河(ひなたがわ)、西に向かっているのが月の河、北に向かうのがスメール河、またの名を高照河という。
一方、高地秀山の高さは三十万尺、東に東河、南に南の大河、西に西の大河、北に高地秀河が流れ、紫微天界の大洋に注いでいる。
高地秀山は、スメール山に比べて岩石が多く、険しい姿をしている。どちらも、常に七色の雲がただよい、神霊の気が山を包んでいるが、あちこちの谷間には邪気が鬱積して邪神が現われ、ついに中津滝の大蛇のような曲神が現われ出でた。
太元顕津男の神は高日の宮にとどまって如衣比女の神を弔い、大御母の神一行は大蛇を言向け和すべく、滝に向かった。
顕津男の神はまた、大御前に端座して、一行の無事と成功を祈った。
大御母の神一行は滝に着くと、滝壺の周囲に整列し、それぞれが言霊を宣りはじめた。
大物主の神の言霊により、大蛇はその苦しそうな姿を水底より現した。眼知男の神が万の神たちの力を得て言霊歌を宣ると、大蛇は滝壺を紅に染め、のたうちまわっている。
明晴の神の言霊に、大蛇は腹を翻して浮き上がり、黒い毒気を吐いた。あたりはたちまち暗夜のように暗くなってしまった。
近見男の神が邪気を払うため、言霊歌を歌い、科戸比古神に祈願すると、科戸の風が吹き荒れ、黒い毒気は跡形もなく散り失せてしまった。
大蛇は血潮にそまりつつ、滝壺の底に再び潜んでしまった。
真澄の神は、言向けの言霊歌を歌った。真澄の神は、言霊をやわめ、我が言を悟って帰順すれば命を助けよう、と歌った。
すると、大蛇は優しい姿になって水面に浮かび上がり、両眼に涙を流し何度も頭を下げ、たちまち高照山のいただきに向かって、天高く逃げていった。
神々たちは、真澄の神の言霊の愛善の徳に感じ、おのおのに真澄の神を称える歌を歌った。
中津滝の大蛇は、諸神の言霊に打たれて、よみがえりつつ天高く立ち去っていったのである。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日: OBC :rm7325
愛善世界社版: 八幡書店版:第13輯 99頁 修補版: 校定版:252頁 普及版: 初版: ページ備考:
001 抑々(そもそも)紫微(しび)天界(てんかい)高照山(たかてるやま)は、002仏書(ぶつしよ)所謂(いはゆる)須弥仙(すみせん)(ざん)にして、003スメール(ざん)()(また)004気吹(いぶき)(やま)とも()ふ。005(つぎ)高地秀(たかちほ)(やま)は、006(また)御名(みな)(あめ)高日山(たかひやま)(とな)へ、007高照山(たかてるやま)()ぐの高山(かうざん)なり。
008 高照山(たかてるやま)(たか)さ、009今日(こんにち)測量法(そくりやうはふ)によれば、010三十三万(さんじふさんまん)(じやく)にして、011(その)周囲(しうゐ)八千(はつせん)八百(はつぴやく)()にあまり、012大峡(おほがひ)小峡(をがひ)四方(しはう)(なが)るる(すう)は、013五千(ごせん)六百(ろくひやく)七十(しちじふ)(すぢ)あり。014その(うち)(もつと)(ふか)(ひろ)数多(あまた)谷水(たにみづ)(がつ)して東方(とうはう)(むか)つて(なが)るるを日向河(ひむかがは)()ひ、015(みなみ)(むか)つて(なが)るるを日南河(ひなたがは)()ひ、016西(にし)(むか)つて(なが)るるを(つき)(かは)()ひ、017(きた)(むか)つて(なが)るるをスメール(がは)018一名(いちめい)高照河(たかてるかは)()ふ。
019 (また)高地秀(たかちほ)(やま)(たか)さも(これ)(じゆん)じて三十万(さんじふまん)(じやく)020(ひがし)には東河(あづまがは)(なが)れ、021(みなみ)には(みなみ)大河(おほかは)(なが)れ、022西(にし)には西(にし)大河(おほかは)023(きた)には高地秀(たかちほ)(がは)(なが)れて、024紫微(しび)天界(てんかい)大洋(たいやう)(そそ)ぐ。025(しか)して高地秀(たかちほ)(やま)(たに)(かず)026高照山(たかてるやま)()して大差(たいさ)なかりける。
027 ただ高地秀(たかちほ)(やま)は、028スメール(ざん)()して岩石(がんせき)(おほ)く、029山姿(さんし)(けは)しく、030屹然(きつぜん)たるの差違(さゐ)あるが(ごと)し。031両山(りやうざん)(とも)(つね)七色(しちしよく)(くも)ただよひ、032神霊(しんれい)()(やま)(つつ)みて霊気(れいき)四方(よも)(はな)てども、033あちこちの谷間(たにま)には邪気(じやき)鬱結(うつけつ)して邪神(じやしん)(あらは)れ、034(つひ)には中津滝(なかつたき)大蛇(をろち)(ごと)曲神(まがかみ)(あらは)()でたるなり。
035 ここに高日(たかひ)(みや)神司(かむつかさ)()は、036如衣(ゆくえ)比女(ひめ)(みたま)(あつ)(なぐさ)(をは)りて、037中津滝(なかつたき)大蛇(をろち)言向(ことむ)けやはすべく、038大御母(おほみはは)(かみ)039大物主(おほものぬし)(かみ)040明晴(あけはる)(かみ)041眼知男(まなこしりを)(かみ)042真澄(ますみ)(かみ)(たち)その()043(もも)神々(かみがみ)(ともな)ひて、044岩石(がんせき)起伏(きふく)(たに)難路(なんろ)辿(たど)りつつ、045(いづ)言霊(ことたま)()()げて、046谷間(たにま)邪気(じやき)(はら)(なが)ら、047(いさ)(すす)んで中津滝(なかつたき)のふもとに()(たま)ひぬ。
048 太元(おほもと)顕津男(あきつを)(かみ)は、049如衣(ゆくえ)比女(ひめ)(みたま)(とむら)ふべく、050高日(たかひ)(みや)(おは)しまして、051大御母(おほみはは)(かみ)一行(いつかう)無事(ぶじ)(いの)り、052大蛇(をろち)(かみ)言向(ことむ)けやはすべく、053大御前(おほみまへ)端坐(たんざ)して、054(みづ)言霊(ことたま)()(たま)ひつつありき。
055 その言霊(ことたま)御歌(みうた)に、
056()(ぐり)中津(なかつ)滝根(たきね)()でましし
057(かみ)神言(みこと)につつがあらすな
058天界(てんかい)(くも)らせ(にご)せし(わざは)ひを
059(おこ)曲神(まがみ)(はふ)らせたまへ
060如衣(ゆくえ)比女(ひめ)犠牲(いけにえ)となりし中津滝(なかつたき)
061大蛇(をろち)言向(ことむ)けやはしませ(かみ)
062()(かみ)功績(いさをし)なくば如何(いか)にして
063この曲神(まがかみ)のまつろふべきやは
064高照(たかてる)(みね)より()つる滝津瀬(たきつせ)
065()曲神(まがかみ)(いか)しき(かみ)はも
066曲神(まがかみ)はいかに(いか)しく(つよ)(とも)
067生言霊(いくことたま)(ちから)におよばむ
068比女神(ひめがみ)大蛇(をろち)曲神(まがみ)(うら)みつつ
069(あめ)高宮(たかみや)(たす)けますらむ』
070(うた)(をは)り、071(かみ)御前(みまへ)にひれ()して、072一行(いつかう)成功(せいこう)(いの)(たま)ふ。
073 ここに大御母(おほみはは)(かみ)(たち)一行(いつかう)は、074中津滝(なかつたき)滝壺(たきつぼ)周囲(まはり)整列(せいれつ)して、075おのもおのもに生言霊(いくことたま)()(たま)ふ。
076大御母(おほみはは)(かみ)()みきらひ()みきらひたる滝壺(たきつぼ)
077かくるる曲神(まがかみ)とく()でませよ
078(われ)こそはアの御霊(みたま)より(あらは)れし
079大御(おほみ)母神(ははがみ)言霊(ことたま)()らむ
080久方(ひさかた)高日(たかひ)(みや)神柱(かむばしら)
081(そこ)曲神(まがみ)(われ)はきためむ
082言霊(ことたま)(いづ)(ちから)をおそれなば
083大蛇(をろち)(かみ)()やにまつろへ
084万丈(ばんぢやう)(たき)(そら)より(おち)たぎち
085大蛇(をろち)(あたま)()ちたたけかし
086かく(まで)()言霊(ことたま)()らずがに
087水底(みそこ)(ひそ)むあはれ大蛇(をろち)よ』
088 大御母(おほみはは)(かみ)水火(いき)()めての言霊(ことたま)(なん)(いさを)なく、089依然(いぜん)として滝壺(たきつぼ)(あを)(なみ)をたたへ、090滔々(たうたう)()つる(たき)(おと)のみ四辺(あたり)森林(しんりん)(ふる)はせにけり。
091 ここに大物主(おほものぬし)(かみ)は、092儼然(げんぜん)として言霊歌(ことたまうた)()(たま)ふ。
093大御母(おほみはは)(かみ)神言(みこと)言霊(ことたま)
094()かず(がほ)なる(しこ)大蛇(をろち)
095()(かみ)(あた)(たま)ひし言霊(ことたま)
096醜神(しこがみ)(なれ)(われ)はたむけむ
097(いさ)ぎよくまつろひ(きた)水底(みなそこ)
098(なが)くひそめる大蛇(をろち)(かみ)
099なるべくは(いづ)言霊(ことたま)()()げて
100(なれ)(たす)けむと(おも)ひつつ()
101(われ)こそは大物主(おほものぬし)神司(かむつかさ)
102高照山(たかてるやま)(たき)(わが)もの
103この(たき)()大神(おほかみ)神言(みこと)もて
104(われ)(たま)ひし言霊(ことたま)(たき)
105常磐木(ときはぎ)(まつ)(しげ)りて(てん)()
106(ひる)なほ(くら)大蛇(をろち)しのぶか
107()(かみ)生言霊(いくことたま)八千尋(やちひろ)
108水底(みなそこ)までも(てら)()かさむ』
109 ()(うた)(たま)(をり)もあれ、110八千尋(やちひろ)(そこ)より、111まばゆき(ばか)りの(ひかり)(あらは)(きた)り、112大蛇(をろち)水面(すゐめん)(うか)(あが)り、113(みぎ)(ひだり)にのた()(まは)りつつ、114(また)もや水底(すゐてい)(くぐ)()りぬ。
115 ここに眼知男(まなこしりを)(かみ)は、116(よろづ)(かみ)(たち)(ちから)()て、117言霊歌(ことたまうた)()る。
118高照(たかてる)(やま)にひそめる曲神(まがかみ)
119言向(ことむ)けやはすと()(むか)ひたり
120かくならばせむ(すべ)なけむ大蛇神(をろちがみ)
121生言霊(いくことたま)にまつろひ(まつ)れよ
122比女神(ひめがみ)()()(まへ)にて(そこな)ひし
123むくいよ大蛇(をろち)(いま)(ほろ)びむ
124(ほろ)ぼさず生言霊(いくことたま)(すく)はむと
125百神(ももがみ)(たち)()れましにける
126この御山(みやま)顕津男(あきつを)(かみ)知食(しろしめ)
127清所(すがど)なりせば(はや)()れかし
128いつまでもこの水底(みなそこ)(ひそ)むならば
129(われ)(ゆる)さじ()りてはふらむ
130()みきらふこの神国(かみくに)(おそ)れなく
131(あら)ぶる(かみ)のおろかさあはれ』
132 ()(うた)(をり)しも、133千尋(ちひろ)滝壺(たきつぼ)(あけ)()(なが)ら、134(また)もや大蛇(をろち)水面(すゐめん)(たい)(あらは)し、135前後(ぜんご)左右(さいう)にのた()(まは)(つひ)水底(すゐてい)(ふか)(しづ)みける。136ここに明晴(あけはる)(かみ)(うた)(たま)ふ。
137久方(ひさかた)(あま)高照山(たかてるやま)()
138大蛇(をろち)(かみ)()りてはふらな
139(たま)()生命(いのち)()しけく(おも)ひなば
140生言霊(いくことたま)にまつろひ(まつ)
141(われ)(いま)神国(みくに)(わざは)ひのぞかむと
142百神(ももがみ)(ともな)(のぼ)()しはや
143水底(みなそこ)大蛇(をろち)(ふか)くひそむ(とも)
144言霊(ことたま)征矢(そや)さくる(よし)なけむ
145御功績(みいさを)高日(たかひ)(みや)比女神(ひめがみ)
146()(くら)ひたる大蛇(をろち)(にく)らしも
147(なれ)(また)(かみ)より(いで)身魂(みたま)なれば
148ただに(はふ)るは()ししと(おも)
149なるべくは(わが)言霊(ことたま)(うべな)ひて
150よきに(したが)ひまつろへよかし
151八千尋(やちひろ)(ふち)(そこ)まで明晴(あけはる)
152(かみ)功績(いさを)(なれ)()らずや
153よしやよし千尋(ちひろ)(そこ)にひそむ(とも)
154生言霊(いくことたま)にやらはで()くべき
155百神(ももがみ)(いま)ここにあり如何(いか)にして
156大蛇(をろち)刃向(はむか)(ちから)あるべき』
157 この言霊(ことたま)水底(すゐてい)大蛇(をろち)は、158(くれなゐ)(はら)をひるがへし(なが)()(あが)り、159巨口(きよこう)(ひら)いて(くろ)毒気(どくき)()(こと)数百丈(すうひやくぢやう)160(たちま)四辺(あたり)暗夜(あんや)(ごと)く、161咫尺(しせき)(べん)ぜざるに(いた)れり。
162 ここに近見男(ちかみを)(かみ)は、163この邪気(じやき)(はら)はむとして、164言霊歌(ことたまうた)をよみ(たま)ふ。
165烏羽玉(うばたま)(くろ)水火(いき)はく曲神(まがかみ)
166(いま)最後(さいご)()れくるひつつ
167近見男(ちかみを)(かみ)ここに()(なが)大蛇(をろち)
168(こころ)なごめてまつろひ(きた)
169曲神(まがかみ)水火(いき)真黒(まくろ)(つつ)めども
170ふきて(はふ)らむわが言霊(ことたま)
171科戸(しなど)比古(ひこ)(かみ)(たちま)(あらは)れて
172谷間(たにま)(つつ)邪気(じやき)(はら)へかし』
173 ()(うた)(たま)ふや、174全山(ぜんざん)百樹(ももき)(こずゑ)をゆるがせて、175科戸(しなど)(かぜ)は、176(いは)()べよと()()れつつ、177大蛇(をろち)()ける真黒(まくろ)毒気(どくき)は、178(あと)かたもなく()りうせて、179万丈(ばんぢやう)(たき)(しろ)くかかり、180滝壺(たきつぼ)大蛇(をろち)血潮(ちしほ)()みて真赤(まあか)()えぬ。181(また)もや大蛇(をろち)水底(すゐてい)にしのびたりと()え、182ブクブクと水泡(みなわ)水面(すゐめん)()()ぐるのみ。
183 ここに真澄(ますみ)(かみ)は、184威儀(ゐぎ)(ただ)して、185(てん)(はい)()()して、186言霊歌(ことたまうた)()ませ(たま)ふ。
187科戸辺(しなどべ)(かみ)伊吹(いぶ)きに退(やら)はれて
188黒雲(くろくも)(たちま)()()りにけり
189言霊(ことたま)稜威(みいづ)(たふと)近見男(ちかみを)
190厳言霊(いづことたま)(かぜ)()でにける
191高照(たかてる)(やま)百樹(ももき)をそよがせて
192科戸(しなど)(かみ)()れましにけり
193神国(かみくに)(わざ)なす(たき)大蛇(をろち)さへ
194()たまりかねて(かく)ろひにけり
195いざさらば真澄(ますみ)(かみ)()(かみ)
196御水火(みいき)(いづ)言霊(ことたま)()らむ
197八千尋(やちひろ)滝壺(たきつぼ)(ふか)くしのぶなる
198大蛇(をろち)(いづ)言霊(ことたま)()らずや
199言霊(ことたま)(いづ)(つるぎ)をぬきかざし
200まつろふ(まで)()めなやまさむ
201(われ)こそは(あめ)真澄(ますみ)神言(みこと)ぞや
202(なれ)(ちから)はつきむとすらむ
203()りはふる生言霊(いくことたま)をやはめつつ
204言向(ことむ)けやはすと真心(まごころ)(われ)
205水底(みなそこ)大蛇(をろち)(わが)()言霊(ことたま)
206つぶさに(さと)(いのち)(たす)けむ』
207 ()(うた)(たま)へば、208大蛇(をろち)以前(いぜん)にかはる(やさ)しき姿(すがた)水面(すゐめん)(うか)(なが)ら、209両眼(りやうがん)(なみだ)(なが)幾度(いくたび)(かしら)()げ、210(たちま)滝水(たきみづ)(くち)にふくみ伊吹(いぶき)狭霧(さぎり)()(おこ)()(おこ)し、211(くも)()かせ、212(あめ)()らせ(なが)ら、213高照山(たかてるやま)(いただき)(たか)く、214(てん)()かつて()()きぬ。
215 ここに大御母(おほみはは)(かみ)真澄(ますみ)(かみ)言霊(ことたま)威力(ゐりよく)(かん)(たま)ひて、216御歌(みうた)よまし(たま)ふ。
217(かしこ)しや真澄(ますみ)(かみ)言霊(ことたま)
218(しこ)大蛇(をろち)(よみがへ)りたり
219愛善(あいぜん)(ひかり)ただよふ天国(てんごく)
220(すく)はれぬものはあらざりにけり
221比女神(ひめがみ)をなやまし(まつ)りし大蛇(をろち)さへ
222()言霊(ことたま)(すく)はれにけり
223愛善(あいぜん)(こころ)(てら)して(われ)(また)
224(よろづ)(かみ)(まじ)はらむかな』
225 真澄(ますみ)(かみ)(うた)(たま)ふ。
226(てん)()真澄(ますみ)にすめる神国(かみくに)
227ひとり(かがや)愛善(あいぜん)(ちから)
228村肝(むらきも)(こころ)(きたな)大蛇神(をろちがみ)
229()大神(おほかみ)御子(みこ)なりにけり
230()(かみ)御水火(みいき)のくもり(かた)まりて
231()()でにけむこれの大蛇(をろち)
232()(かみ)(みたま)()りしと(おも)(ゆゑ)
233(われ)大蛇(をろち)(たす)(にが)しつ』
234 大物主(おほものぬし)(かみ)は、235真澄(ますみ)(かみ)(きよ)(こころ)(かん)(たま)ひて、236(うた)(たま)ふ。
237(てん)()真澄(ますみ)(かみ)(やさ)しかる
238こころに(かん)じて(よみがへ)りつつ
239(たましひ)真澄(ますみ)(かみ)真心(まごころ)
240(われ)(はづ)かしくなりにけらしな
241愛善(あいぜん)(ちから)(つよ)(かがや)かば
242(しこ)曲神(まがみ)もなびき()すなり』
243 明晴(あけはる)(かみ)(うた)(たま)ふ。
244高照(たかてる)御山(みやま)邪気(じやき)明晴(あけはる)
245今日(けふ)より(きよ)月日(つきひ)()るらむ
246今日(けふ)よりは高照山(たかてるやま)(やす)らかに
247神業(みわざ)(つか)へむ(もも)(かみ)たち』
248 かくして中津滝(なかつたき)大蛇(をろち)は、249百神(ももがみ)生言霊(いくことたま)にうたれ、250(よみがへ)りつつ(てん)(たか)()()りにける。
251昭和八・一〇・一六 旧八・二七 於水明閣 谷前清子謹録)
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