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第69巻（申の巻）
第70巻（酉の巻）
第71巻（戌の巻）
第72巻（亥の巻）
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天祥地瑞
第73巻（子の巻）
第74巻（丑の巻）
第75巻（寅の巻）
第76巻（卯の巻）
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第73巻（子の巻）
序文
総説
第1篇 紫微天界
01 天之峯火夫の神
〔1832〕
02 高天原
〔1833〕
03 天之高火男の神
〔1834〕
04 ⦿の神声
〔1835〕
05 言幸比古の神
〔1836〕
06 言幸比女の神
〔1837〕
07 太祓
〔1838〕
08 国生み神生みの段
〔1839〕
09 香具の木の実
〔1840〕
10 婚ぎの御歌
〔1841〕
11 紫微の宮司
〔1842〕
12 水火の活動
〔1843〕
13 神の述懐歌（一）
〔1844〕
14 神の述懐歌（二）
〔1845〕
第2篇 高照神風
15 国生みの旅
〔1846〕
16 八洲の河
〔1847〕
17 駒の嘶き
〔1848〕
18 佐田の辻
〔1849〕
19 高日の宮
〔1850〕
20 廻り逢ひ
〔1851〕
21 禊の段
〔1852〕
22 御子生みの段
〔1853〕
23 中の高滝
〔1854〕
24 天国の旅
〔1855〕
25 言霊の滝
〔1856〕
第3篇 東雲神国
26 主神の降臨
〔1857〕
27 神秘の扉
〔1858〕
28 心内大蛇
〔1859〕
29 無花果
〔1860〕
30 日向の河波
〔1861〕
31 夕暮の館
〔1862〕
32 玉泉の月
〔1863〕
33 四馬の遠乗
〔1864〕
34 国魂の発生
〔1865〕
35 四鳥の別れ
〔1866〕
36 荒野の駿馬
〔1867〕
37 玉手の清宮
〔1868〕
余白歌
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第73巻
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第二九章
無花果
(
いちじゆく
)
〔一八六〇〕
インフォメーション
著者：
出口王仁三郎
巻：
霊界物語 第73巻 天祥地瑞 子の巻
篇：
第3篇 東雲神国
よみ（新仮名遣い）：
しののめしんこく
章：
第29章 無花果
よみ（新仮名遣い）：
いちじく
通し章番号：
1860
口述日：
1933（昭和8）年10月17日（旧08月28日）
口述場所：
水明閣
筆録者：
内崎照代
校正日：
校正場所：
初版発行日：
1933（昭和8）年11月22日
概要：
舞台：
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です（一部加筆訂正してあります）。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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：
顕津男の神は、大御母の神、眼知男の神、味豊の神、輝夫の神を高日の宮の神司と定めた。
一方、大物主の神、近見男の神、真澄の神、照男の神を伴って（次の章では明晴の神も加えて五柱になっている）、天の白駒にまたがって旅立った。
大御母の神は、美玉姫の命を主の大神の御霊と崇め奉り、その成人を待っていた。大御母の神は、眼知男の神、味豊の神を伴い、花の咲きにおう野原に美玉姫の命と野辺遊びをはじめた。
味豊の神は、無花果の実を腕いっぱいにもいで、美玉姫の命の前に捧げ置いた。姫はその中の一つをとって口に入れると、たちまち背は高く伸び上がり、成人してしまった。
大御母の神、味豊の神は感嘆のあまり、喜びの歌を詠った。
美玉姫の命は詠った：自分は月の世界より生まれたので、成長が早いのだ。また、月の露を浴びて育った無花果が自分の体を生かす食べ物である。これより、高日の宮の司となろう、と。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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：
備考：
タグ：
データ凡例：
データ最終更新日：
OBC ：
rm7329
愛善世界社版：
八幡書店版：
第13輯 113頁
修補版：
校定版：
300頁
普及版：
初版：
ページ備考：
001
茲
(
ここ
)
に
高日
(
たかひ
)
の
宮
(
みや
)
の
神司
(
かむづかさ
)
太元
(
おほもと
)
顕津男
(
あきつを
)
の
神
(
かみ
)
は、
002
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
厳
(
いづ
)
の
言霊
(
ことたま
)
かかぶりて
猛
(
たけ
)
き
心
(
こころ
)
の
駒
(
こま
)
立
(
た
)
て
直
(
なほ
)
し、
003
大御母
(
おほみはは
)
の
神
(
かみ
)
、
004
眼知男
(
まなこしりを
)
の
神
(
かみ
)
、
005
味豊
(
あぢとよ
)
の
神
(
かみ
)
、
006
輝夫
(
てるを
)
の
神
(
かみ
)
を
高照山
(
たかてるやま
)
の
麓
(
ふもと
)
、
007
高日
(
たかひ
)
の
宮
(
みや
)
の
神司
(
かむつかさ
)
と
定
(
さだ
)
め
置
(
お
)
きて、
008
大物主
(
おほものぬし
)
の
神
(
かみ
)
、
009
近見男
(
ちかみを
)
の
神
(
かみ
)
、
010
真澄
(
ますみ
)
の
神
(
かみ
)
、
011
照男
(
てるを
)
の
神
(
かみ
)
を
伴
(
ともな
)
ひ、
012
天
(
あめ
)
の
白駒
(
しろこま
)
に
跨
(
また
)
がり、
013
国魂神
(
くにたまがみ
)
を
生
(
う
)
まばやと、
014
心
(
こころ
)
いそいそ
出
(
い
)
で
給
(
たま
)
ふ。
015
茲
(
ここ
)
に
大御母
(
おほみはは
)
の
神
(
かみ
)
は
美玉姫
(
みたまひめ
)
の
命
(
みこと
)
を、
016
主
(
ス
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
御霊
(
みたま
)
と
崇
(
あが
)
め
奉
(
まつ
)
り、
017
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なに
心
(
こころ
)
をこめて
育
(
そだ
)
てはぐくみ
仕
(
つか
)
へ
奉
(
まつ
)
り、
018
其
(
そ
)
の
成人
(
せいじん
)
を
待
(
ま
)
ち
給
(
たま
)
ひける。
019
大御母
(
おほみはは
)
の
神
(
かみ
)
は
大御前
(
おほみまへ
)
に
畏
(
かしこ
)
まり
貴
(
うづ
)
の
言霊
(
ことたま
)
唱
(
とな
)
へ
給
(
たま
)
ひて、
020
八尋殿
(
やひろどの
)
の
清庭
(
すがには
)
に
降
(
お
)
り、
021
玉
(
たま
)
の
御池
(
みいけ
)
に
禊
(
みそぎ
)
を
修
(
しう
)
し
給
(
たま
)
ひ、
022
心
(
こころ
)
も
清
(
きよ
)
く
朗
(
ほがら
)
かに
謡
(
うた
)
ひ
給
(
たま
)
ふ。
023
その
御歌
(
みうた
)
、
024
『
久方
(
ひさかた
)
の
空
(
そら
)
を
仰
(
あふ
)
げばかぎりなく
025
高
(
たか
)
し
広
(
ひろ
)
しも
神
(
かみ
)
のまにまに
026
限
(
かぎ
)
りなき
広
(
ひろ
)
き
天地
(
てんち
)
に
神
(
かみ
)
と
生
(
な
)
りて
027
われは
小
(
ちひ
)
さき
事
(
こと
)
をおもはめ
028
高照
(
たかてる
)
の
山
(
やま
)
はいかほど
高
(
たか
)
くとも
029
天
(
てん
)
の
高
(
たか
)
さに
及
(
およ
)
ばざるべし
030
高照
(
たかてる
)
の
山
(
やま
)
は
非時
(
ときじく
)
雲
(
くも
)
湧
(
わ
)
きて
031
水火
(
すゐくわ
)
の
呼吸
(
いき
)
の
風
(
かぜ
)
光
(
ひか
)
るなり
032
ときじくに
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
き
実
(
みの
)
る
高照
(
たかてる
)
の
033
山
(
やま
)
の
姿
(
すがた
)
の
雄々
(
をを
)
しきろかも
034
屹然
(
きつぜん
)
と
天
(
てん
)
に
聳
(
そび
)
ゆる
高照
(
たかてる
)
の
035
山
(
やま
)
のいかしき
心
(
こころ
)
もたばや
036
瑞御霊
(
みづみたま
)
これの
聖地
(
せいち
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
でで
037
いづれの
国
(
くに
)
に
神
(
かみ
)
生
(
う
)
ますらむ
038
謹
(
つつし
)
みて
美玉姫
(
みたまひめ
)
の
命
(
みこと
)
を
育
(
そだ
)
てむと
039
朝
(
あさ
)
な
夕
(
ゆふ
)
なをおもへば
楽
(
たの
)
しき
040
瑞御霊
(
みづみたま
)
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
をあとにして
041
旅
(
たび
)
にたたせるその
雄々
(
をを
)
しさよ
042
瑞御霊
(
みづみたま
)
いまさぬこれの
大宮
(
おほみや
)
を
043
われは
代
(
かは
)
りて
朝夕
(
あさゆふ
)
守
(
まも
)
らむ
044
駒
(
こま
)
並
(
な
)
めて
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
は
出
(
い
)
でましぬ
045
み
空
(
そら
)
の
月
(
つき
)
の
冴
(
さ
)
え
渡
(
わた
)
る
夜
(
よ
)
を
046
大前
(
おほまへ
)
に
祝詞
(
のりと
)
白
(
まを
)
せば
清
(
すが
)
しけれ
047
主
(
ス
)
の
大神
(
おほかみ
)
にまみゆる
心地
(
ここち
)
す
048
国
(
くに
)
を
生
(
う
)
み
神
(
かみ
)
を
生
(
う
)
ませる
神業
(
かむわざ
)
の
049
貴
(
うづ
)
のはたらきおもへば
畏
(
かしこ
)
し
050
われは
今
(
いま
)
心
(
こころ
)
の
駒
(
こま
)
を
立
(
た
)
て
直
(
なほ
)
し
051
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
神
(
かみ
)
をうべなふ』
052
眼知男
(
まなこしりを
)
の
神
(
かみ
)
は
清庭
(
すがには
)
に
立
(
た
)
ち、
053
禊
(
みそ
)
ぎ
終
(
をは
)
りて
謡
(
うた
)
ひ
給
(
たま
)
ふ。
054
『
玉池
(
たまいけ
)
の
清
(
きよ
)
き
鏡
(
かがみ
)
に
写
(
うつ
)
りたる
055
月
(
つき
)
をし
見
(
み
)
れば
岐美
(
きみ
)
の
偲
(
しの
)
ばゆ
056
天
(
あま
)
わたる
月
(
つき
)
を
写
(
うつ
)
せし
玉
(
たま
)
の
池
(
いけ
)
は
057
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
の
鏡
(
かがみ
)
なるらむ
058
朝夕
(
あさゆふ
)
を
仕
(
つか
)
へ
奉
(
まつ
)
りし
瑞御霊
(
みづみたま
)
059
今
(
いま
)
はいづくの
果
(
はて
)
にますらむ
060
大御母
(
おほみはは
)
神
(
かみ
)
の
功
(
いさを
)
を
今
(
いま
)
ぞしる
061
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
を
育
(
はぐく
)
みましつつ
062
みいさをも
高日
(
たかひ
)
の
宮
(
みや
)
の
神司
(
かむつかさ
)
063
大御母
(
おほみはは
)
の
神
(
かみ
)
に
仕
(
つか
)
へまつらむ
064
大御母
(
おほみはは
)
神
(
かみ
)
は
高日
(
たかひ
)
の
大宮
(
おほみや
)
の
065
貴
(
うづ
)
の
三柱
(
みはしら
)
けがさじとおもふ
066
厳御霊
(
いづみたま
)
いづの
教
(
をしへ
)
にかたよりて
067
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
を
無視
(
なみ
)
せしを
悔
(
く
)
ゆ
068
今日
(
けふ
)
よりは
心
(
こころ
)
のくもり
吹
(
ふ
)
き
祓
(
はら
)
ひ
069
あしたゆふべを
神言
(
かみごと
)
宣
(
の
)
らむ
070
言霊
(
ことたま
)
の
幸
(
さちは
)
ふ
神
(
かみ
)
の
国
(
くに
)
なれば
071
われ
一日
(
ひとひ
)
だも
怠
(
おこた
)
るべけむや
072
月
(
つき
)
も
日
(
ひ
)
も
高照山
(
たかてるやま
)
の
神奈備
(
かむなび
)
に
073
仕
(
つか
)
へて
心
(
こころ
)
くもらふべきやは
074
高照
(
たかてる
)
の
山
(
やま
)
に
湧
(
わ
)
き
立
(
た
)
つ
紫
(
むらさき
)
の
075
雲
(
くも
)
こそ
神
(
かみ
)
の
心
(
こころ
)
なるらむ
076
朝夕
(
あさゆふ
)
に
月日
(
つきひ
)
の
光
(
ひかり
)
あび
乍
(
なが
)
ら
077
高照山
(
たかてるやま
)
は
紫雲
(
しうん
)
たち
立
(
た
)
つ』
078
輝夫
(
てるを
)
の
神
(
かみ
)
は
謡
(
うた
)
ひ
給
(
たま
)
ふ。
079
『
朝夕
(
あさゆふ
)
をみたま
輝夫
(
てるを
)
の
神
(
かみ
)
ながら
080
いつか
心
(
こころ
)
のくもらひを
恥
(
は
)
づ
081
瑞御霊
(
みづみたま
)
いまさぬ
今日
(
けふ
)
を
謹
(
つつし
)
みて
082
この
大宮
(
おほみや
)
に
仕
(
つか
)
へ
奉
(
まつ
)
らむ
083
清
(
きよ
)
きあかき
真
(
まこと
)
の
心
(
こころ
)
をみがきつつ
084
仕
(
つか
)
へ
奉
(
まつ
)
らむ
神
(
かみ
)
のみ
前
(
まへ
)
に
085
一日
(
ひとひ
)
だに
厳言霊
(
いづことたま
)
をおこたらば
086
この
国原
(
くにはら
)
はくもらひ
乱
(
みだ
)
れむ
087
言霊
(
ことたま
)
の
力
(
ちから
)
によりて
生
(
あ
)
れし
国
(
くに
)
よ
088
朝
(
あした
)
夕
(
ゆふ
)
べの
祈
(
いの
)
りわすれじ』
089
味豊
(
あぢとよ
)
の
神
(
かみ
)
はまた
謡
(
うた
)
ひ
給
(
たま
)
ふ。
090
『
足曳
(
あしびき
)
の
山野
(
やまぬ
)
の
木
(
こ
)
の
実
(
み
)
も
味豊
(
あぢとよ
)
の
091
神
(
かみ
)
のみ
代
(
よ
)
こそめでたかりける
092
言霊
(
ことたま
)
の
光
(
ひかり
)
によりて
生
(
あ
)
れませる
093
天津国
(
あまつくに
)
なり
天津
(
あまつ
)
神
(
かみ
)
なり
094
吾
(
われ
)
もまた
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
うしはぐ
高天
(
たかあま
)
の
095
アの
言霊
(
ことたま
)
ゆ
生
(
あ
)
れし
神
(
かみ
)
なり
096
天界
(
てんかい
)
に
初
(
はじ
)
めて
命
(
みこと
)
生
(
あ
)
れましぬ
097
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
と
比女神
(
ひめがみ
)
のなかに
098
美玉姫
(
みたまひめ
)
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
はめづらしも
099
この
天界
(
てんかい
)
に
身体
(
からたま
)
もたせば
100
想念
(
さうねん
)
の
世界
(
せかい
)
もつぎつぎ
物質
(
ぶつしつ
)
と
101
化
(
くわ
)
して
栄
(
さか
)
えむ
言霊
(
ことたま
)
の
幸
(
さち
)
に』
102
天界
(
てんかい
)
の
現象
(
げんしやう
)
は
意志
(
いし
)
想念
(
さうねん
)
の
世界
(
せかい
)
にして、
103
愛
(
あい
)
の
情動
(
じやうどう
)
に
満
(
み
)
ちたれば、
104
普
(
あまね
)
く
国土
(
こくど
)
は
清
(
きよ
)
くすがしく
美
(
うるは
)
しく、
105
七色
(
しちしよく
)
の
光彩
(
くわうさい
)
四方
(
よも
)
に
満
(
み
)
ち、
106
山
(
やま
)
は
青
(
あを
)
く
野
(
の
)
は
平
(
たひ
)
らかに、
107
所々
(
しよしよ
)
に
花
(
はな
)
爛漫
(
らんまん
)
と
咲
(
さ
)
き
匂
(
にほ
)
ふ
小山
(
こやま
)
散在
(
さんざい
)
し、
108
吹
(
ふ
)
き
来
(
く
)
る
風
(
かぜ
)
も
清
(
きよ
)
く、
109
やはらかく、
110
実
(
げ
)
に
住
(
す
)
みやすき
境界
(
きやうかい
)
なり。
111
大御母
(
おほみはは
)
の
神
(
かみ
)
は、
112
眼知男
(
まなこしりを
)
の
神
(
かみ
)
、
113
味豊
(
あぢとよ
)
の
神
(
かみ
)
を
伴
(
ともな
)
ひて、
114
百花
(
ももばな
)
匂
(
にほ
)
ふ
野辺
(
のべ
)
の
遊
(
あそ
)
びを
始
(
はじ
)
め
給
(
たま
)
ひ、
115
美玉姫
(
みたまひめ
)
の
命
(
みこと
)
を
楽
(
たの
)
しく
遊
(
あそ
)
ばせ
給
(
たま
)
ひぬ。
116
美玉姫
(
みたまひめ
)
の
命
(
みこと
)
は
其
(
そ
)
の
性質
(
せいしつ
)
怜悧
(
れいり
)
温厚
(
をんこう
)
にして、
117
艶
(
つや
)
美
(
うるは
)
しく
肌
(
はだ
)
細
(
こま
)
やかに、
118
あだかも
鳥
(
とり
)
の
玉子
(
たまご
)
の
如
(
ごと
)
し。
119
百神
(
ももがみ
)
達
(
たち
)
はこの
姫
(
ひめ
)
命
(
みこと
)
を
此
(
こ
)
の
上
(
うへ
)
なく
慈
(
いつく
)
しみ
且
(
か
)
つ
敬
(
うやま
)
ひ
奉
(
まつ
)
りて、
120
種々
(
いろいろ
)
の
花
(
はな
)
など
取
(
と
)
り
御手
(
みて
)
に
握
(
にぎ
)
らせ
奉
(
まつ
)
り、
121
姫
(
ひめ
)
命
(
みこと
)
の
喜
(
よろこ
)
び
給
(
たま
)
ふ
笑顔
(
ゐがほ
)
を
見
(
み
)
て
楽
(
たの
)
しみ
居
(
を
)
りき。
122
味豊
(
あぢとよ
)
の
神
(
かみ
)
は、
123
野辺
(
のべ
)
に
実
(
みの
)
れる
無花果
(
いちじゆく
)
の
実
(
み
)
を、
124
腕
(
うで
)
もたわわに
毟
(
むし
)
り
来
(
きた
)
りて、
125
姫
(
ひめ
)
命
(
みこと
)
の
御前
(
みまへ
)
に
横山
(
よこやま
)
の
如
(
ごと
)
く
置
(
お
)
き
足
(
たら
)
はし、
126
捧
(
ささ
)
げ
奉
(
まつ
)
れば、
127
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
は
細
(
ほそ
)
き
白
(
しろ
)
き
御手
(
みて
)
を
伸
(
の
)
ばさせ
給
(
たま
)
ひ、
128
その
中
(
なか
)
の
一
(
ひと
)
つを
掴
(
つか
)
みて
忽
(
たちま
)
ち
口
(
くち
)
に
入
(
い
)
れ
給
(
たま
)
ひしに、
129
見
(
み
)
る
見
(
み
)
る
御
(
おん
)
背
(
せ
)
は
長
(
なが
)
く
伸
(
の
)
びあがり、
130
御
(
おん
)
身体
(
からたま
)
は
弥太
(
いやふと
)
りに
太
(
ふと
)
り、
131
今
(
いま
)
までの
幼
(
をさな
)
かりし
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
は
俄
(
にはか
)
に
成人
(
せいじん
)
してその
言霊
(
ことたま
)
さへも
大人
(
おとな
)
びつつ、
132
側
(
かたはら
)
にある
三柱
(
みはしら
)
の
神
(
かみ
)
達
(
たち
)
を
驚
(
おどろ
)
かせ
給
(
たま
)
ひしぞ
不思議
(
ふしぎ
)
なれ。
133
茲
(
ここ
)
に
大御母
(
おほみはは
)
の
神
(
かみ
)
は、
134
美玉姫
(
みたまひめ
)
の
命
(
みこと
)
の、
135
見
(
み
)
る
見
(
み
)
る
成人
(
せいじん
)
し
給
(
たま
)
ひし
御姿
(
みすがた
)
に
驚
(
おどろ
)
き
給
(
たま
)
ひて、
136
感嘆
(
かんたん
)
のあまり
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
まし
給
(
たま
)
はく、
137
『
天晴
(
あはれ
)
々々
(
あはれ
)
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
は
無花果
(
いちじゆく
)
の
138
味
(
あぢ
)
豊
(
ゆた
)
かさに
大
(
いか
)
くなりましぬ
139
味豊
(
あぢとよ
)
の
神
(
かみ
)
のいさをに
無花果
(
いちじゆく
)
の
140
木
(
こ
)
の
実
(
み
)
は
清
(
きよ
)
く
生
(
あ
)
れ
出
(
い
)
でにけり
141
斯
(
か
)
くならば
高日
(
たかひ
)
の
宮
(
みや
)
の
神司
(
かむつかさ
)
142
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
よわれはゆづらむ
143
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
み
著
(
しる
)
けし
目
(
ま
)
のあたり
144
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
は
生
(
お
)
ひ
立
(
た
)
ちませり
145
喜
(
よろこ
)
びのかぎりなるかも
美玉姫
(
みたまひめ
)
の
146
命
(
みこと
)
の
斯
(
か
)
くまで
生
(
お
)
ひたたすとは』
147
味豊
(
あぢとよ
)
の
神
(
かみ
)
は
喜
(
よろこ
)
びのあまり
手
(
て
)
を
拍
(
う
)
ち、
148
足拍子
(
あしびやうし
)
をとり、
149
花野
(
はなの
)
の
中
(
なか
)
に
踊
(
をど
)
り
狂
(
くる
)
ひつつ
謡
(
うた
)
ひ
給
(
たま
)
ふ。
150
『
天晴
(
あはれ
)
々々
(
あはれ
)
151
主
(
ス
)
の
言霊
(
ことたま
)
ゆ
生
(
あ
)
れませる
152
美玉
(
みたま
)
の
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
はや
153
高日
(
たかひ
)
の
宮
(
みや
)
は
今日
(
けふ
)
の
日
(
ひ
)
を
154
はじめとなして
弥栄
(
いやさか
)
に
155
栄
(
さか
)
え
奉
(
まつ
)
らむ
嬉
(
うれ
)
しさに
156
手
(
て
)
の
舞
(
ま
)
ひ
足
(
あし
)
の
踏
(
ふ
)
みどさへ
157
知
(
し
)
らずに
吾
(
われ
)
は
踊
(
をど
)
るなり
158
この
神国
(
かみくに
)
にただ
一人
(
ひとり
)
159
からたま
持
(
も
)
たす
姫
(
ひめ
)
命
(
みこと
)
の
160
天降
(
あも
)
りまししは
言霊
(
ことたま
)
の
161
厳
(
いづ
)
の
力
(
ちから
)
を
物質
(
もの
)
と
化
(
くわ
)
し
162
広
(
ひろ
)
き
世界
(
せかい
)
の
神々
(
かみがみ
)
を
163
安
(
やす
)
く
住
(
すま
)
はせ
給
(
たま
)
はむと
164
主
(
ス
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
神言
(
みこと
)
もて
165
生
(
あ
)
れ
出
(
い
)
で
給
(
たま
)
ひし
嬉
(
うれ
)
しさよ
166
吾
(
われ
)
は
味豊
(
あぢとよ
)
神
(
かみ
)
にして
167
百
(
もも
)
の
果物
(
くだもの
)
五穀
(
たなつもの
)
168
甘
(
あま
)
き
味
(
あぢ
)
はひもたさむと
169
朝夕
(
あしたゆふべ
)
のけぢめなく
170
貴
(
うづ
)
の
忌鋤
(
いむすき
)
忌鍬
(
いむくは
)
に
171
この
天界
(
てんかい
)
をひらきつつ
172
貴
(
うづ
)
の
木
(
こ
)
の
実
(
み
)
はややややに
173
実
(
みの
)
らひ
満
(
み
)
ちて
果
(
はて
)
もなく
174
百
(
もも
)
の
神
(
かみ
)
達
(
たち
)
朝夕
(
あさゆふ
)
の
175
御饌
(
みけ
)
たてまつる
嬉
(
うれ
)
しさよ
176
とりわけ
今日
(
けふ
)
は
姫
(
ひめ
)
命
(
みこと
)
177
わが
生
(
な
)
り
出
(
い
)
でし
無花果
(
いちじゆく
)
の
178
木
(
こ
)
の
実
(
み
)
をとらせ
給
(
たま
)
ひてゆ
179
にはかに
身丈
(
みたけ
)
伸
(
の
)
び
給
(
たま
)
ひ
180
その
顔
(
かんばせ
)
も
大人
(
おとな
)
びて
181
いよいよ
宮
(
みや
)
の
神柱
(
みはしら
)
と
182
たたせ
給
(
たま
)
はむ
目出度
(
めでた
)
さよ
183
得耐
(
えた
)
へぬ
儘
(
まま
)
に
手
(
て
)
を
拍
(
う
)
ちて
184
吾
(
われ
)
は
狂
(
くる
)
ひつ
踊
(
をど
)
るなり
185
嗚呼
(
ああ
)
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
186
恩頼
(
みたまのふゆ
)
の
幸
(
さちは
)
ひし
187
今日
(
けふ
)
の
花野
(
はなの
)
の
嬉
(
うれ
)
しさよ
188
天
(
あめ
)
の
御空
(
みそら
)
ゆ
降
(
くだ
)
ります
189
主
(
ス
)
の
言霊
(
ことたま
)
に
生
(
な
)
り
出
(
い
)
でし
190
美玉
(
みたま
)
の
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
こそ
191
これの
神国
(
みくに
)
の
柱
(
はしら
)
なれ
192
嗚呼
(
ああ
)
惟神
(
かむながら
)
々々
(
かむながら
)
193
御霊
(
みたま
)
幸
(
さちは
)
ひましませよ』
194
眼知男
(
まなこしりを
)
の
神
(
かみ
)
、
195
御歌
(
みうた
)
うたはせ
給
(
たま
)
ふ。
196
『おもひきや
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
は
忽
(
たちま
)
ちに
197
無花果
(
いちじゆく
)
召
(
め
)
して
伸
(
の
)
び
立
(
た
)
ち
給
(
たま
)
へり
198
無花果
(
いちじゆく
)
の
香具
(
かぐ
)
の
木
(
こ
)
の
実
(
み
)
のいさをしを
199
われ
今更
(
いまさら
)
にさとりけるかも
200
主
(
ス
)
の
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
みの
露
(
つゆ
)
のかたまりか
201
この
無花果
(
いちじゆく
)
に
太
(
ふと
)
り
給
(
たま
)
ひぬ
202
天
(
てん
)
高
(
たか
)
く
野辺
(
のべ
)
また
広
(
ひろ
)
し
花
(
はな
)
の
中
(
なか
)
に
203
遊
(
あそ
)
ばす
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
美
(
うるは
)
し』
204
茲
(
ここ
)
に
美玉姫
(
みたまひめ
)
の
命
(
みこと
)
は
異様
(
いやう
)
の
光
(
ひかり
)
を
放
(
はな
)
ちながら、
205
花野
(
はなの
)
の
中
(
なか
)
に
儼然
(
げんぜん
)
として
立
(
た
)
ち
上
(
あが
)
り
給
(
たま
)
ひ、
206
御歌
(
みうた
)
宣
(
の
)
らせ
給
(
たま
)
はく、
207
『
吾
(
われ
)
はしも
月
(
つき
)
の
世界
(
せかい
)
ゆ
生
(
あ
)
れましし
208
神霊
(
みたま
)
なりせば
生
(
お
)
ひたち
早
(
はや
)
しも
209
月
(
つき
)
の
露
(
つゆ
)
あみて
太
(
ふと
)
りし
無花果
(
いちじゆく
)
は
210
わが
身体
(
からたま
)
を
生
(
い
)
かす
御饌
(
みけ
)
なり
211
今
(
いま
)
よりは
高日
(
たかひ
)
の
宮
(
みや
)
に
司
(
つかさ
)
とし
212
天津
(
あまつ
)
神国
(
みくに
)
を
安
(
やす
)
く
守
(
まも
)
らむ
213
大御母
(
おほみはは
)
神
(
かみ
)
のいさをは
天渡
(
あまわた
)
る
214
月
(
つき
)
の
稜威
(
みいづ
)
に
等
(
ひと
)
しかるべし
215
味豊
(
あぢとよ
)
の
神
(
かみ
)
のいさをぞ
畏
(
かしこ
)
けれ
216
わがからたまを
育
(
はぐく
)
み
給
(
たま
)
へば
217
あら
尊
(
たふ
)
と
眼知男
(
まなこしりを
)
の
神
(
かみ
)
なれば
218
これの
清庭
(
すがには
)
を
見立
(
みた
)
て
給
(
たま
)
ひし』
219
大御母
(
おほみはは
)
の
神
(
かみ
)
は
再
(
ふたた
)
び
謡
(
うた
)
ひ
給
(
たま
)
ふ。
220
『
姫
(
ひめ
)
命
(
みこと
)
宣
(
の
)
らす
言葉
(
ことば
)
のかしこさに
221
嬉
(
うれ
)
しき
涙
(
なみだ
)
止
(
とど
)
めあへぬも
222
嬉
(
うれ
)
しさに
口
(
くち
)
ごもりつつ
言
(
こと
)
の
葉
(
は
)
も
223
出
(
い
)
でざるままに
黙
(
もだ
)
し
居
(
ゐ
)
につつ』
224
味豊
(
あぢとよ
)
の
神
(
かみ
)
はまた
謡
(
うた
)
ひ
給
(
たま
)
ふ。
225
『
今日
(
けふ
)
よりは
此
(
これ
)
の
神国
(
みくに
)
も
安
(
やす
)
らけく
226
ひらけゆかなむ
命
(
みこと
)
の
稜威
(
いづ
)
に』
227
眼知男
(
まなこしりを
)
の
神
(
かみ
)
は
謡
(
うた
)
ひ
給
(
たま
)
ふ。
228
『あら
尊
(
たふ
)
と
眼知男
(
まなこしりを
)
の
神
(
かみ
)
吾
(
われ
)
は
229
答
(
いら
)
への
言葉
(
ことば
)
も
出
(
い
)
でざりにけり
230
いざさらば
高日
(
たかひ
)
の
宮
(
みや
)
に
帰
(
かへ
)
らむと
231
前
(
さき
)
に
立
(
た
)
たせる
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
よ』
232
（
昭和八・一〇・一七
旧八・二八
於水明閣
内崎照代
謹録）
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