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霊界物語
天祥地瑞(第73~81巻)
第73巻(子の巻)
序文
総説
第1篇 紫微天界
第1章 天之峯火夫の神
第2章 高天原
第3章 天之高火男の神
第4章 ⦿の神声
第5章 言幸比古の神
第6章 言幸比女の神
第7章 太祓
第8章 国生み神生みの段
第9章 香具の木の実
第10章 婚ぎの御歌
第11章 紫微の宮司
第12章 水火の活動
第13章 神の述懐歌(一)
第14章 神の述懐歌(二)
第2篇 高照神風
第15章 国生みの旅
第16章 八洲の河
第17章 駒の嘶き
第18章 佐田の辻
第19章 高日の宮
第20章 廻り逢ひ
第21章 禊の段
第22章 御子生みの段
第23章 中の高滝
第24章 天国の旅
第25章 言霊の滝
第3篇 東雲神国
第26章 主神の降臨
第27章 神秘の扉
第28章 心内大蛇
第29章 無花果
第30章 日向の河波
第31章 夕暮の館
第32章 玉泉の月
第33章 四馬の遠乗
第34章 国魂の発生
第35章 四鳥の別れ
第36章 荒野の駿馬
第37章 玉手の清宮
余白歌
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<<< 玉泉の月
(B)
(N)
国魂の発生 >>>
第三三章
四馬
(
しば
)
の
遠乗
(
とほのり
)
〔一八六四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第73巻 天祥地瑞 子の巻
篇:
第3篇 東雲神国
よみ(新仮名遣い):
しののめしんこく
章:
第33章 四馬の遠乗
よみ(新仮名遣い):
しばのとおのり
通し章番号:
1864
口述日:
1933(昭和8)年10月18日(旧08月29日)
口述場所:
水明閣
筆録者:
森良仁
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1933(昭和8)年11月22日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
顕津男の神にしたがってきた五柱の神々は、それぞれ、顕津男の神の言葉(神言=みこと)によって、東雲の国での役割を与えられる。
大物主神は館に留まって顕津男の神を補佐する。
明晴の神は東、照男の神は西、真澄の神は北、近見男の神は南を廻って国を治めるよう、任命される。
神々はそれぞれ、顕津男の神の意に応えようと、旅立ちの前に決意の歌を歌う。そして、館に残る顕津男の神、世司比女の神、大物主の神、河守比女の神が見送りの歌を歌う。
四柱の神々は白馬にまたがり、勇ましく四方に旅立っていく。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
rm7333
愛善世界社版:
八幡書店版:
第13輯 132頁
修補版:
校定版:
369頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
茲
(
ここ
)
に
大物主
(
おほものぬし
)
の
神
(
かみ
)
は
顕津男
(
あきつを
)
の
神
(
かみ
)
の
御側
(
みそば
)
近
(
ちか
)
く
仕
(
つか
)
へ、
002
玉泉郷
(
ぎよくせんきやう
)
に
留
(
とどま
)
り
給
(
たま
)
ひ、
003
近見男
(
ちかみを
)
の
神
(
かみ
)
、
004
真澄
(
ますみ
)
の
神
(
かみ
)
、
005
照男
(
てるを
)
の
神
(
かみ
)
、
006
明晴
(
あけはる
)
の
神
(
かみ
)
は
各
(
おの
)
も
各
(
おの
)
も
東雲国
(
しののめこく
)
の
東西
(
とうざい
)
南北
(
なんぼく
)
を
受持
(
うけも
)
ち、
007
国造
(
くにつく
)
りの
神業
(
みわざ
)
に
仕
(
つか
)
へ
給
(
たま
)
ひぬ。
008
顕津男
(
あきつを
)
の
神
(
かみ
)
は
五柱
(
いつはしら
)
の
神
(
かみ
)
を
御側
(
みそば
)
近
(
ちか
)
く
招
(
まね
)
きて
依
(
よ
)
さし
給
(
たま
)
はく、
009
『
大物主
(
おほものぬし
)
神
(
かみ
)
は
館
(
やかた
)
に
留
(
とどま
)
りて
010
わが
神業
(
かむわざ
)
を
補
(
おぎな
)
ひ
奉
(
まつ
)
らへ
011
明晴
(
あけはる
)
の
神
(
かみ
)
は
東
(
ひがし
)
に
出
(
い
)
でまして
012
神
(
かみ
)
の
御子
(
みこ
)
等
(
ら
)
を
導
(
みちび
)
き
給
(
たま
)
へ
013
照男
(
てるを
)
の
神
(
かみ
)
は
西
(
にし
)
の
国
(
くに
)
をば
経廻
(
へめぐ
)
りて
014
神
(
かみ
)
を
生
(
い
)
かせよ
国
(
くに
)
を
照
(
てら
)
せよ
015
北
(
きた
)
の
国
(
くに
)
を
拓
(
ひら
)
かせ
給
(
たま
)
へ
天
(
あめ
)
も
地
(
つち
)
も
016
真澄
(
ますみ
)
の
神
(
かみ
)
の
貴
(
うづ
)
の
功績
(
いさを
)
に
017
高照
(
たかてる
)
の
山
(
やま
)
の
姿
(
すがた
)
も
明
(
あき
)
らけく
018
近見男
(
ちかみを
)
の
神
(
かみ
)
は
南方
(
みなみ
)
を
守
(
まも
)
らへ』
019
茲
(
ここ
)
に
顕津男
(
あきつを
)
の
神
(
かみ
)
の
神言
(
みこと
)
畏
(
かしこ
)
みて、
020
五柱
(
いつはしら
)
の
神
(
かみ
)
は
各々
(
おのおの
)
依
(
よ
)
さしの
方
(
かた
)
に
向
(
むか
)
はむとして
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
み
給
(
たま
)
ふ。
021
『
大物主
(
おほものぬし
)
神
(
かみ
)
の
神言
(
みこと
)
は
比古神
(
ひこがみ
)
の
022
神言
(
みこと
)
かしこみ
近
(
ちか
)
く
仕
(
つか
)
へむ
023
美
(
うま
)
し
御子
(
みこ
)
生
(
あ
)
れます
迄
(
まで
)
は
動
(
うご
)
かじと
024
こころ
定
(
さだ
)
めし
大物主
(
おほものぬし
)
よ
025
瑞御霊
(
みづみたま
)
月
(
つき
)
の
満干
(
みちひ
)
はありとても
026
吾
(
われ
)
は
変
(
かは
)
らじ
道
(
みち
)
に
仕
(
つか
)
へて
027
東雲
(
しののめ
)
の
国
(
くに
)
は
爽
(
さや
)
けし
吹
(
ふ
)
く
風
(
かぜ
)
も
028
やはく
清
(
すが
)
しく
木
(
こ
)
の
実
(
み
)
はみのる
029
国原
(
くにはら
)
に
生
(
お
)
ひ
立
(
た
)
つ
大物主
(
おほものぬし
)
の
神
(
かみ
)
030
栄
(
さか
)
え
守
(
まも
)
らむ
幾世
(
いくよ
)
の
末
(
すゑ
)
まで』
031
と
大物主
(
おほものぬし
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
もて
答
(
いら
)
へ
給
(
たま
)
ひぬ。
032
茲
(
ここ
)
に
明晴
(
あけはる
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
まし
給
(
たま
)
ふ。
033
『
東
(
ひむがし
)
の
御空
(
みそら
)
はここに
明晴
(
あけはる
)
の
034
神
(
かみ
)
は
進
(
すす
)
みて
国造
(
くにつく
)
りせむ
035
東雲
(
しののめ
)
の
神
(
かみ
)
の
御国
(
みくに
)
の
東
(
ひむがし
)
を
036
拓
(
ひら
)
けと
宣
(
の
)
りし
畏
(
かしこ
)
き
神
(
かみ
)
はや
037
いざさらば
東
(
ひがし
)
をさして
上
(
のぼ
)
るべし
038
吾
(
わが
)
行
(
ゆ
)
く
旅
(
たび
)
に
神
(
かみ
)
の
幸
(
さち
)
あれ
039
比古神
(
ひこがみ
)
の
依
(
よ
)
さしに
報
(
むく
)
い
奉
(
まつ
)
らむと
040
われは
朝夕
(
あさゆふ
)
こころ
尽
(
つく
)
さむ
041
玉泉
(
たまいづみ
)
これの
館
(
やかた
)
にかがやける
042
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
よ
安
(
やす
)
くましませ
043
高照
(
たかてる
)
の
山
(
やま
)
は
雲井
(
くもゐ
)
に
隠
(
かく
)
るべし
044
遠
(
とほ
)
く
東
(
ひがし
)
の
国
(
くに
)
に
向
(
むか
)
へば
045
日向河
(
ひむかがは
)
清
(
きよ
)
き
流
(
ながれ
)
を
伝
(
つた
)
ひつつ
046
吾
(
われ
)
は
進
(
すす
)
まむ
東
(
ひがし
)
の
国
(
くに
)
へ
047
河守
(
かはもり
)
比女
(
ひめ
)
賜
(
たま
)
ひし
白
(
しろ
)
き
駿馬
(
はやこま
)
に
048
跨
(
またが
)
り
行
(
ゆ
)
かむ
旅路
(
たびぢ
)
はるけく』
049
顕津男
(
あきつを
)
の
神
(
かみ
)
は
謡
(
うた
)
ひ
給
(
たま
)
ふ。
050
『
明晴
(
あけはる
)
の
神
(
かみ
)
の
雄々
(
をを
)
しき
言
(
こと
)
の
葉
(
は
)
よ
051
主
(
ス
)
の
大神
(
おほかみ
)
も
勇
(
いさ
)
み
給
(
たま
)
はむ
052
駿馬
(
はやこま
)
の
背
(
せな
)
に
跨
(
またが
)
り
出
(
い
)
で
立
(
た
)
たす
053
明晴
(
あけはる
)
の
神
(
かみ
)
の
姿
(
すがた
)
雄々
(
をを
)
しも』
054
世司
(
よつかさ
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
謡
(
うた
)
ひ
給
(
たま
)
ふ。
055
『
玉泉
(
たまいづみ
)
館
(
やかた
)
を
後
(
あと
)
に
駒
(
こま
)
の
背
(
せ
)
に
056
鞭
(
むちう
)
ち
給
(
たま
)
ふ
神
(
かみ
)
ぞ
雄々
(
をを
)
しき
057
明晴
(
あけはる
)
の
神
(
かみ
)
はいそいそ
駿馬
(
はやこま
)
に
058
跨
(
またが
)
り
荒野
(
あらの
)
を
鞭
(
むちう
)
たすらむ』
059
大物主
(
おほものぬし
)
の
神
(
かみ
)
は、
060
明晴
(
あけはる
)
の
神
(
かみ
)
の
出立
(
いでた
)
ち
給
(
たま
)
ふ
御姿
(
みすがた
)
を
遥
(
はるか
)
に
打眺
(
うちなが
)
めつつ
謡
(
うた
)
ひ
給
(
たま
)
ふ。
061
『
駿馬
(
はやこま
)
の
足並
(
あしなみ
)
速
(
はや
)
し
明晴
(
あけはる
)
の
062
神
(
かみ
)
の
御姿
(
みすがた
)
野辺
(
のべ
)
に
霞
(
かす
)
みつ
063
駿馬
(
はやこま
)
に
鞭
(
むちう
)
たしつつ
出
(
い
)
でましぬ
064
すがた
勇
(
いさま
)
し
明晴
(
あけはる
)
の
神
(
かみ
)
065
明晴
(
あけはる
)
の
神
(
かみ
)
の
東
(
ひがし
)
に
廻
(
まは
)
りませば
066
天地
(
あめつち
)
ますます
晴
(
は
)
れ
渡
(
わた
)
るべし
067
比古神
(
ひこがみ
)
の
神言
(
みこと
)
畏
(
かしこ
)
み
出
(
い
)
で
立
(
た
)
たす
068
神
(
かみ
)
の
心
(
こころ
)
に
吾
(
わが
)
涙
(
なみだ
)
湧
(
わ
)
きぬ
069
勇
(
いさま
)
しく
出
(
い
)
で
立
(
た
)
ち
給
(
たま
)
ふ
御姿
(
みすがた
)
に
070
称
(
たた
)
への
言葉
(
ことば
)
吾
(
われ
)
無
(
な
)
かりける』
071
近見男
(
ちかみを
)
の
神
(
かみ
)
は
依
(
よ
)
さしの
儘
(
まま
)
に
南
(
みなみ
)
の
国
(
くに
)
を
拓
(
ひら
)
かむとして、
072
白馬
(
はくば
)
に
跨
(
またが
)
り
声
(
こゑ
)
勇
(
いさま
)
しく
謡
(
うた
)
ひ
給
(
たま
)
ふ。
073
『
顕津男
(
あきつを
)
の
神
(
かみ
)
比女神
(
ひめがみ
)
よいざさらば
074
吾
(
われ
)
は
南
(
みなみ
)
に
鹿島立
(
かしまた
)
ちせむ
075
比古神
(
ひこがみ
)
の
依
(
よ
)
さしの
言葉
(
ことば
)
片時
(
かたとき
)
も
076
吾
(
われ
)
は
忘
(
わす
)
れず
国
(
くに
)
を
拓
(
ひら
)
かむ
077
春風
(
はるかぜ
)
に
送
(
おく
)
られながら
南
(
みんなみ
)
の
078
国
(
くに
)
に
向
(
むか
)
はむ
吾
(
われ
)
ぞ
勇
(
いさま
)
し
079
玉泉
(
たまいづみ
)
写
(
うつ
)
らす
月
(
つき
)
も
今日
(
けふ
)
よりは
080
拝
(
をろが
)
むよしなし
名残
(
なごり
)
惜
(
を
)
しくも
081
月
(
つき
)
と
月
(
つき
)
見逢
(
みあ
)
ひて
御子
(
みこ
)
を
孕
(
はら
)
ませる
082
これの
館
(
やかた
)
を
吾
(
われ
)
は
去
(
さ
)
り
行
(
ゆ
)
く
083
二柱
(
ふたはしら
)
初
(
はじ
)
め
大物主
(
おほものぬし
)
の
神
(
かみ
)
084
河守
(
かはもり
)
比女
(
ひめ
)
よ
健
(
すこや
)
かに
坐
(
ま
)
せ
085
南
(
みんなみ
)
の
国原
(
くにはら
)
遠
(
とほ
)
くさかるとも
086
岐美
(
きみ
)
は
忘
(
わす
)
れじ
束
(
つか
)
の
間
(
ま
)
さへも
087
いざさらば
大物主
(
おほものぬし
)
よ
朝夕
(
あさゆふ
)
を
088
仕
(
つか
)
へて
御子
(
みこ
)
を
育
(
はぐく
)
み
給
(
たま
)
へ
089
河守
(
かはもり
)
比女
(
ひめ
)
神
(
かみ
)
の
神言
(
みこと
)
よ
世司
(
よつかさ
)
の
090
比女神
(
ひめがみ
)
近
(
ちか
)
く
守
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
へ』
091
と
御謡
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ましつつ
白馬
(
はくば
)
の
背
(
せ
)
にひらりと
飛
(
と
)
び
乗
(
の
)
り、
092
蹄
(
ひづめ
)
の
音
(
おと
)
もカツカツと
鬣
(
たてがみ
)
を
春風
(
はるかぜ
)
に
靡
(
なび
)
かせ
給
(
たま
)
ふ。
093
其
(
その
)
雄々
(
をを
)
しき
御姿
(
みすがた
)
を
見送
(
みおく
)
り
見送
(
みおく
)
りつつ、
094
顕津男
(
あきつを
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
ませ
給
(
たま
)
ふ。
095
『
勇
(
いさま
)
しき
出立
(
いでた
)
ちなるかも
近見男
(
ちかみを
)
の
096
駒
(
こま
)
にむちうち
立
(
た
)
たす
国原
(
くにはら
)
097
南
(
みんなみ
)
の
国
(
くに
)
に
渡
(
わた
)
らひ
神々
(
かみがみ
)
を
098
導
(
みちび
)
き
給
(
たま
)
ふ
神業
(
みわざ
)
偲
(
しの
)
ばゆ
099
近見男
(
ちかみを
)
の
貴
(
うづ
)
の
言霊
(
ことたま
)
鳴
(
な
)
り
鳴
(
な
)
りて
100
総
(
すべ
)
てのものは
甦
(
よみがへ
)
るらむ』
101
大物主
(
おほものぬし
)
の
神
(
かみ
)
も
謡
(
うた
)
ひ
給
(
たま
)
ふ。
102
『
近見男
(
ちかみを
)
の
神
(
かみ
)
は
南
(
みなみ
)
に
出
(
い
)
でましぬ
103
白銀
(
しろがね
)
の
駒
(
こま
)
に
鞭
(
むちう
)
たせつつ
104
白梅
(
しらうめ
)
の
非時
(
ときじく
)
香
(
かほ
)
る
大野原
(
おほのはら
)
105
鞭
(
むちう
)
たすかも
近見男
(
ちかみを
)
の
神
(
かみ
)
は』
106
世司
(
よつかさ
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
謡
(
うた
)
ひ
給
(
たま
)
ふ。
107
『
勇
(
いさま
)
しき
近見男
(
ちかみを
)
の
神
(
かみ
)
の
姿
(
すがた
)
かな
108
駿馬
(
はやこま
)
のかげ
見
(
み
)
えなくなりぬ
109
大野原
(
おほのはら
)
紫
(
むらさき
)
にかすみ
白梅
(
しらうめ
)
は
110
四方
(
よも
)
に
香
(
かほ
)
りて
迎
(
むか
)
へ
奉
(
まつ
)
らむ
111
勇
(
いさま
)
しく
雄々
(
をを
)
しくませる
近見男
(
ちかみを
)
の
112
神
(
かみ
)
の
功績
(
いさを
)
を
今
(
いま
)
よりぞ
知
(
し
)
る
113
この
館
(
たち
)
に
比古遅
(
ひこぢ
)
の
神
(
かみ
)
と
籠
(
こも
)
り
居
(
ゐ
)
て
114
神業
(
みわざ
)
のなるを
祈
(
いの
)
り
奉
(
まつ
)
らむ』
115
河守
(
かはもり
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
謡
(
うた
)
ひ
給
(
たま
)
ふ。
116
『
日向河
(
ひむかがは
)
限
(
かぎ
)
りに
此
(
これ
)
の
国原
(
くにはら
)
を
117
今日
(
けふ
)
まで
吾
(
われ
)
は
守
(
まも
)
りこしはや
118
近見男
(
ちかみを
)
の
神
(
かみ
)
は
南
(
みなみ
)
を
拓
(
ひら
)
かすと
119
聞
(
き
)
けば
嬉
(
うれ
)
しも
吾
(
わが
)
魂
(
たま
)
安
(
やす
)
し
120
西
(
にし
)
東
(
ひがし
)
南
(
みなみ
)
北
(
きた
)
なる
国原
(
くにはら
)
も
121
安
(
やす
)
く
拓
(
ひら
)
けむ
四柱
(
よはしら
)
の
神
(
かみ
)
に
122
今日
(
けふ
)
よりは
四柱
(
よはしら
)
の
神
(
かみ
)
を
力
(
ちから
)
とし
123
心
(
こころ
)
安
(
やす
)
けく
館
(
たち
)
に
仕
(
つか
)
へむ』
124
茲
(
ここ
)
に
照男
(
てるを
)
の
神
(
かみ
)
は
依
(
よ
)
さしの
儘
(
まま
)
に
出
(
い
)
で
立
(
た
)
たむとして
白馬
(
はくば
)
に
跨
(
またが
)
り、
125
庭上
(
ていじやう
)
に
立
(
た
)
ちて
別
(
わか
)
れの
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
まし
給
(
たま
)
ふ。
126
『
月読
(
つきよみ
)
の
御霊
(
みたま
)
と
生
(
あ
)
れます
比古遅
(
ひこぢ
)
神
(
がみ
)
に
127
いざや
別
(
わか
)
れむ
安
(
やす
)
くましませ
128
高照
(
たかてる
)
の
山
(
やま
)
の
麓
(
ふもと
)
の
国々
(
くにぐに
)
を
129
拓
(
ひら
)
かむとして
吾
(
われ
)
は
行
(
ゆ
)
くなり
130
玉泉
(
たまいづみ
)
いや
永久
(
とこしへ
)
に
清
(
きよ
)
らけく
131
澄
(
す
)
みてましませ
二柱
(
ふたはしら
)
の
神
(
かみ
)
132
大物主
(
おほものぬし
)
神
(
かみ
)
の
神言
(
みこと
)
よいざさらば
133
幸
(
さき
)
くあれませ
館
(
やかた
)
に
仕
(
つか
)
へて
134
世司
(
よつかさ
)
の
比女神
(
ひめがみ
)
心
(
こころ
)
安
(
やす
)
らけく
135
御子
(
みこ
)
生
(
う
)
みまして
弥栄
(
いやさか
)
えませ
136
河守
(
かはもり
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
の
賜
(
たま
)
ひし
駿馬
(
はやこま
)
に
137
われ
跨
(
またが
)
りて
西
(
にし
)
に
向
(
むか
)
はむ
138
月
(
つき
)
も
日
(
ひ
)
も
朝夕
(
あさゆふ
)
浮
(
うか
)
ぶ
玉泉
(
たまいづみ
)
139
今日
(
けふ
)
を
名残
(
なごり
)
と
吾
(
われ
)
は
行
(
ゆ
)
くなり』
140
斯
(
か
)
く
謡
(
うた
)
ひ
終
(
をは
)
るや、
141
ひらりと
馬背
(
ばはい
)
に
跨
(
またが
)
り
二
(
ふた
)
つ
三
(
み
)
つ
鞭
(
むち
)
を
加
(
くは
)
へて、
142
トウトウと
高照山
(
たかてるやま
)
の
方向
(
はうかう
)
さして
駆
(
か
)
け
出
(
だ
)
し
給
(
たま
)
ふ。
143
顕津男
(
あきつを
)
の
神
(
かみ
)
は、
144
照男
(
てるを
)
の
神
(
かみ
)
の
勇
(
いさ
)
ましき
姿
(
すがた
)
を
遥
(
はるか
)
に
見送
(
みおく
)
りながら、
145
『
駿馬
(
はやこま
)
の
足
(
あし
)
はやみかも
大野原
(
おほのはら
)
146
靄
(
もや
)
にかくれし
照男
(
てるを
)
の
神
(
かみ
)
はも
147
高照
(
たかてる
)
の
山
(
やま
)
の
麓
(
ふもと
)
の
神々
(
かみがみ
)
も
148
安
(
やす
)
く
栄
(
さか
)
えむ
此
(
こ
)
の
神
(
かみ
)
いまさば』
149
世司
(
よつかさ
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
謡
(
うた
)
ひ
給
(
たま
)
ふ。
150
『
勇
(
いさ
)
ましき
神
(
かみ
)
の
姿
(
すがた
)
よ
駿馬
(
はやこま
)
の
151
早
(
はや
)
くも
見
(
み
)
えずなりにけらしな
152
目路
(
めぢ
)
の
限
(
かぎ
)
り
霞
(
かす
)
む
大野
(
おほの
)
を
駆
(
か
)
けて
行
(
ゆ
)
く
153
駒
(
こま
)
の
蹄
(
ひづめ
)
の
音
(
おと
)
ひびくなり
154
高照
(
たかてる
)
の
山
(
やま
)
は
白雲
(
しらくも
)
帯
(
おび
)
にして
155
白馬
(
はくば
)
の
神
(
かみ
)
を
迎
(
むか
)
へ
奉
(
まつ
)
らむ』
156
大物主
(
おほものぬし
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
謡
(
うた
)
ひ
給
(
たま
)
ふ。
157
『
駿馬
(
はやこま
)
の
早御姿
(
はやみすがた
)
は
隠
(
かく
)
ろひぬ
158
照男
(
てるを
)
の
神
(
かみ
)
の
勇
(
いさ
)
ましき
旅
(
たび
)
159
千万
(
ちよろづ
)
の
名残
(
なごり
)
を
後
(
あと
)
に
勇
(
いさ
)
ましく
160
照男
(
てるを
)
の
神
(
かみ
)
は
出
(
い
)
で
立
(
た
)
ちにけり
161
高照
(
たかてる
)
の
山
(
やま
)
も
照男
(
てるを
)
の
神
(
かみ
)
まさば
162
醜
(
しこ
)
の
大蛇
(
をろち
)
も
籠
(
こも
)
り
得
(
え
)
ざらむ』
163
河守
(
かはもり
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
謡
(
うた
)
ひ
給
(
たま
)
ふ。
164
『
月
(
つき
)
も
日
(
ひ
)
も
清
(
きよ
)
く
照男
(
てるを
)
の
神司
(
かむつかさ
)
165
西
(
にし
)
の
御国
(
みくに
)
に
出
(
い
)
でましにけり
166
吾
(
わが
)
魂
(
たま
)
と
贈
(
おく
)
りし
駒
(
こま
)
に
跨
(
またが
)
りて
167
出
(
い
)
でます
姿
(
すがた
)
雄々
(
をを
)
しかりける
168
吾
(
わが
)
魂
(
たま
)
は
駒
(
こま
)
にいつきて
西
(
にし
)
の
国
(
くに
)
を
169
安
(
やす
)
く
守
(
まも
)
らむ
神司
(
みつかさ
)
と
共
(
とも
)
に』
170
真澄
(
ますみ
)
の
神
(
かみ
)
は
北
(
きた
)
の
国
(
くに
)
を
拓
(
ひら
)
き
給
(
たま
)
はむと、
171
諸神
(
しよしん
)
に
暇
(
いとま
)
をつげ
立出
(
たちいで
)
むとして
駒
(
こま
)
の
背
(
せ
)
に
跨
(
またが
)
りながら、
172
左手
(
ゆんで
)
を
頭上
(
づじやう
)
に
翳
(
かざ
)
しつつ
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
まし
給
(
たま
)
ふ。
173
『かかる
世
(
よ
)
に
太元
(
おほもと
)
顕津男
(
あきつを
)
の
神
(
かみ
)
よ
174
いざいざ
立
(
た
)
たむ
真澄神
(
ますみがみ
)
吾
(
われ
)
175
御子生
(
みこう
)
みの
神業
(
みわざ
)
を
確
(
たし
)
に
終
(
を
)
へ
給
(
たま
)
ふ
176
神
(
かみ
)
の
功績
(
いさを
)
ぞ
尊
(
たふと
)
かりける
177
貴
(
うづ
)
の
御子
(
みこ
)
宿
(
やど
)
らせ
給
(
たま
)
ふと
村肝
(
むらきも
)
の
178
心
(
こころ
)
安
(
やす
)
らぎ
吾
(
われ
)
は
出
(
い
)
で
行
(
ゆ
)
く
179
世司
(
よつかさ
)
の
神
(
かみ
)
よ
朝夕
(
あさゆふ
)
心
(
こころ
)
して
180
御腹
(
みはら
)
の
御子
(
みこ
)
を
守
(
まも
)
らせ
給
(
たま
)
へ
181
大物主
(
おほものぬし
)
神
(
かみ
)
の
神言
(
みこと
)
よ
二柱
(
ふたはしら
)
の
182
神
(
かみ
)
を
守
(
まも
)
りてまさきくありませ
183
河守
(
かはもり
)
の
比女
(
ひめ
)
の
真言
(
まこと
)
に
貴
(
うづ
)
の
御子
(
みこ
)
184
生
(
あ
)
れます
神世
(
みよ
)
となりにけらしな
185
日向河
(
ひむかがは
)
中
(
なか
)
に
拓
(
ひら
)
かむ
北
(
きた
)
の
国
(
くに
)
186
天地
(
てんち
)
真澄
(
ますみ
)
の
清所
(
すがど
)
となさばや
187
いざさらば
館
(
やかた
)
を
守
(
まも
)
る
神々
(
かみがみ
)
よ
188
吾
(
われ
)
は
進
(
すす
)
まむ
北方
(
ほくぱう
)
の
国
(
くに
)
へ』
189
と
謡
(
うた
)
ひ
終
(
をは
)
り
駒
(
こま
)
の
頭
(
かしら
)
を
立
(
た
)
て
直
(
なほ
)
し
一鞭
(
ひとむち
)
あてて
鈴
(
すず
)
の
音
(
ね
)
も
勇
(
いさ
)
ましくシヤンコシヤンコと
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
で
給
(
たま
)
ふ。
190
顕津男
(
あきつを
)
の
神
(
かみ
)
は
別
(
わか
)
れを
惜
(
を
)
しみて
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
まし
給
(
たま
)
ふ。
191
『
勇
(
いさ
)
ましく
真澄
(
ますみ
)
の
神
(
かみ
)
は
出
(
い
)
でましぬ
192
館
(
やかた
)
の
神
(
かみ
)
に
心
(
こころ
)
のこしつ
193
朝夕
(
あさゆふ
)
に
我
(
われ
)
を
守
(
まも
)
りし
神々
(
かみがみ
)
の
194
其
(
その
)
大方
(
おほかた
)
は
出
(
い
)
で
立
(
た
)
ちましぬる
195
四柱
(
よはしら
)
の
神
(
かみ
)
は
遥
(
はる
)
けく
出
(
い
)
でまして
196
何
(
なに
)
か
淋
(
さび
)
しき
此
(
こ
)
の
館
(
やかた
)
かも
197
北
(
きた
)
の
国
(
くに
)
に
真澄
(
ますみ
)
の
神
(
かみ
)
の
出
(
い
)
でまさば
198
頓
(
とみ
)
に
栄
(
さか
)
えむ
山
(
やま
)
も
大野
(
おほの
)
も
199
駿馬
(
はやこま
)
に
鞭
(
むちう
)
ち
立
(
た
)
たす
御姿
(
みすがた
)
は
200
日向
(
ひむか
)
の
河
(
かは
)
の
早瀬
(
はやせ
)
に
似
(
に
)
たるも
201
我
(
わが
)
言葉
(
ことば
)
反
(
そむ
)
き
給
(
たま
)
はず
四柱
(
よはしら
)
は
202
先
(
さき
)
を
争
(
あらそ
)
ひ
出
(
い
)
でましにける』
203
世司
(
よつかさ
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
よ
)
まし
給
(
たま
)
ふ。
204
『
四柱
(
よはしら
)
の
神
(
かみ
)
の
立
(
た
)
たせし
此
(
この
)
館
(
たち
)
は
205
うら
淋
(
さび
)
しもよ
風
(
かぜ
)
もしづみて
206
やがて
今
(
いま
)
美
(
うま
)
しき
国
(
くに
)
を
造
(
つく
)
り
終
(
を
)
へ
207
かがやき
給
(
たま
)
はむ
日
(
ひ
)
こそ
待
(
ま
)
たるる』
208
大物主
(
おほものぬし
)
の
神
(
かみ
)
は
御歌
(
みうた
)
詠
(
うた
)
ひ
給
(
たま
)
ふ。
209
『
比古神
(
ひこがみ
)
に
従
(
したが
)
ひてこし
五柱
(
いつはしら
)
の
210
神
(
かみ
)
四柱
(
よはしら
)
は
出
(
い
)
でましにけり
211
四柱
(
よはしら
)
の
神
(
かみ
)
に
別
(
わか
)
れて
吾
(
われ
)
は
今
(
いま
)
212
近
(
ちか
)
く
仕
(
つか
)
へむ
二柱
(
ふたはしら
)
の
神
(
かみ
)
に
213
東雲
(
しののめ
)
の
国
(
くに
)
は
今日
(
けふ
)
より
弥栄
(
いやさか
)
に
214
拓
(
ひら
)
け
栄
(
さか
)
えて
果
(
はて
)
しなからむ』
215
河守
(
かはもり
)
比女
(
ひめ
)
の
神
(
かみ
)
は
又
(
また
)
謡
(
うた
)
ひ
給
(
たま
)
ふ。
216
『
四柱
(
よはしら
)
の
神
(
かみ
)
勇
(
いさ
)
ましく
出
(
い
)
でましぬ
217
此
(
こ
)
の
国原
(
くにはら
)
を
拓
(
ひら
)
かむとして
218
此
(
この
)
館
(
たち
)
に
豊
(
ゆた
)
に
太豊
(
たゆた
)
に
鎮
(
しづ
)
まりて
219
国
(
くに
)
造
(
つく
)
りませ
瑞
(
みづ
)
の
御霊
(
みたま
)
よ』
220
(
昭和八・一〇・一八
旧八・二九
於水明閣
森良仁
謹録)
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