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聖師伝
はしがき
01 御誕生
02 穴太の里
03 祖父の話
04 祖父の性行
05 祖父の再生
06 幼少年時代
07 小学校時代
08 久兵衛池事件
09 青年時代
10 獣医学の研究
11 父の死
12 青年時代の煩悶
13 高熊山出修の動機
14 高熊山の修行
15 使命の自覚
16 幽斎の修業
17 開祖との会見
18 聖師の大本入り
19 聖師と筆先
20 聖師の苦闘
21 神苑の拡張と造営
22 神島開き
23 大本の発展
24 第一次大本事件
25 霊界物語の口述
26 エスペラントとローマ字の採用
27 世界紅卍字会との提携
28 蒙古入り
29 世界宗教連盟と人類愛善会
30 大正より昭和へ
31 明光社の設立
32 急激な発展
33 第二次大本事件
34 愛善苑の新発足
35 晩年の聖師
36 御昇天
37 御昇天後の大本
【附録】出口聖師年譜
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八、久兵衛池事件
インフォメーション
題名:
8 久兵衛池事件
著者:
大本教学院・編
ページ:
目次メモ:
概要:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
B100800c08
001
喜三郎さんは小学校の代用教員を一年ばかり勤めていましたが、
002
仏教の僧侶出の教員と、
003
神道のことについて衝突したのが原因で辞職されました。
004
明治十八年、
005
十五歳の秋から隣家の斎藤源治という豪農の家に奉公をされましたが、
006
翌年一つの事件が起りました。
007
上田家の屋敷の裏鬼門にあたるところに、
008
俗称
久兵衛
(
きゅうべえ
)
池
(
いけ
)
という池がありました。
009
この池は祟り池といわれたくらいで、
010
上田家の人がこれまで七人もこの池で溺死しました。
011
喜三郎さんも七歳のとき誤って落ちこまれ、
012
危いところを祖母の
宇能子
(
うのこ
)
さんに助けられたことがあり、
013
弟の幸吉さんも溺死しようとしたので、
014
吉松
(
きちまつ
)
さんは思いきって池を埋めてしまおうと決心しました。
015
そのために上田家と村人との間に大問題が起ったのであります。
016
この池は灌漑用の池なので、
017
村人は埋めることに反対したのですが、
018
吉松さんは、
019
020
「自分の所有地にある池を、
021
自分が埋めようがどうしようが勝手である」
022
というので、
023
村人との間に争いとなりました。
024
地主や村会議員など村内の有力者たちは、
025
斎藤家にあつまって吉松さんをイヂめる相談をしました。
026
「吉松が池を埋めるというならば、
027
こちらにも彼を困らせる手段がいくらでもある。
028
元来、
029
吉松という奴は愚直な上に
文盲
(
もんもう
)
で、
030
貧乏の子沢山で年寄りまでいるのだから、
031
地主同盟の上、
032
彼の小作の田地を皆とり上げてしまえば、
033
明日から食うに困って、
034
乞食でもするより外はないだろう。
035
上田の所有地を実測してみると、
036
二十坪ばかり余計になるから、
037
あの池は村の物だといって、
038
取り上げようではないか。
039
よもやあの貧乏人が、
040
裁判所へ訴えるようなことはようせぬだろう。
041
その上、
042
吉松は貧乏なので、
043
村中調べたら方々に金や米の借りがあるだろうから、
044
少しでも貸しのある者は皆こぞって催促して、
045
一泡吹かすのも面白かろう」
046
喜三郎さんは村人の相談を、
047
別の間で無念をこらえて聞いておられました。
048
喜三郎さんは村人たちが酔っぱらって引きあげるのを待って、
049
主人の斎藤源治氏に
暇
(
いとま
)
を乞い、
050
家へ帰ろうとされますと、
051
主人が喜三郎さんを自分の部屋へ通して、
052
053
「お前はさっきから村の人の話を聞いたであろう。
054
それがためお前はいま非常に激昂しているようだが、
055
心をしずめて私のいうことを聞いてくれ。
056
村の人はあんな風に申し合っているから、
057
万一お前のお父さんがガンばって抵抗するようなことでは、
058
この先きどんなことになるかも知れぬ。
059
そうなっては私もみる目がつらいから、
060
家へ帰って両親に得心するように、
061
懇々と話してやってくれ」
062
ということでありました。
063
喜三郎少年は一言も発せず、
064
一心に瞑目されながら神さまにむかって、
065
066
「何とぞ今回のことについては、
067
理非曲直を明かにさせて父母の苦衷をお救い下さい」
068
と祈りおわって決心の色を面にあらわし、
069
070
「こういう悪人どもの跋扈する村内には住みたくないから、
071
よし一家そろって乞食になり餓死しても、
072
かまって下さらないで下さい。
073
私たち親子はあくまでも正義のために死ぬ覚悟であります」
074
といい放って、
075
断然暇をとって家へ帰られました。
076
家へ帰ってみると、
077
両親は非常に心配しておられましたが、
078
079
「御心配なさいますな、
080
今に神様のお助けを仰いで、
081
正邪を明かにして御安心させますから」
082
と、
083
やさしく父母をなぐさめ、
084
ただちに亀岡の伯母の家へ行って、
085
一部始終を話されますと、
086
伯父伯母も非常に怒って、
087
088
「よし、
089
そういう次第ならあくまでも正々堂々と戦え、
090
万一の場合には自分らが引きうけてやる」
091
といってくれましたので、
092
百万の援軍を得たように喜びいさんで帰宅されました。
093
翌日金剛寺という寺の広間で村の総寄合が開かれましたので、
094
喜三郎さんは父の代理として出席し、
095
堂々と戦いましたところ、
096
村人も正義には適し難く「それでは年々報酬を出すことにして借りるわけにはゆくまいか」と弱音を吐き出しました。
097
結局、
098
村から毎年玄米一斗五升出して借りることとして契約書をとりかわし、
099
久兵衛池事件は落着を告げました。
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