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聖師伝
はしがき
01 御誕生
02 穴太の里
03 祖父の話
04 祖父の性行
05 祖父の再生
06 幼少年時代
07 小学校時代
08 久兵衛池事件
09 青年時代
10 獣医学の研究
11 父の死
12 青年時代の煩悶
13 高熊山出修の動機
14 高熊山の修行
15 使命の自覚
16 幽斎の修業
17 開祖との会見
18 聖師の大本入り
19 聖師と筆先
20 聖師の苦闘
21 神苑の拡張と造営
22 神島開き
23 大本の発展
24 第一次大本事件
25 霊界物語の口述
26 エスペラントとローマ字の採用
27 世界紅卍字会との提携
28 蒙古入り
29 世界宗教連盟と人類愛善会
30 大正より昭和へ
31 明光社の設立
32 急激な発展
33 第二次大本事件
34 愛善苑の新発足
35 晩年の聖師
36 御昇天
37 御昇天後の大本
【附録】出口聖師年譜
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一一、父の死
インフォメーション
題名:
11 父の死
著者:
大本教学院・編
ページ:
目次メモ:
概要:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2021-04-20 03:21:42
OBC :
B100800c11
001
聖師の前半生において、
002
もっとも悲しむべき一つの事件は、
003
二十七歳のとき、
004
父・
吉松
(
きちまつ
)
氏が死去されたことであります。
005
吉松氏は初めブラブラ病気になり、
006
いろいろ手をつくしてみましたけれどもどうも思わしくありませんでしたので、
007
この上は信仰の力で父の病気を治したいというところから、
008
喜三郎さんは看護のかたわら付近の教会に通われました。
009
喜三郎さんは昼のうちは精乳館の仕事に忙殺されていました上に、
010
弟の
由松
(
よしまつ
)
さんがにわかに家出をされたために、
011
薪
(
たきぎ
)
一把
(
いちわ
)
山へ取りに行く者さえなくなりましたので、
012
ある日、
013
吉松氏は、
014
015
「屋敷
内
(
うち
)
の
椋
(
むく
)
の木を薪にしたいから伐ってくれ」
016
と喜三郎さんに頼まれました。
017
ところが、
018
この椋の木は丁度屋敷の
艮
(
うしとら
)
の方
[
※
東北
]
、
019
すなわち
鬼門
(
きもん
)
にあたっていたのですが、
020
喜三郎さんは長い梯子をかけて椋の木の
心
(
しん
)
を伐りはなされました。
021
その心が傍にある柿の木と
樫
(
かし
)
の木に支えられて落ちつかなかったものですから、
022
喜三郎さんはその引っかかっている椋の木の心へ飛びついて、
023
自分の体重を利用してうまくその心を地上へ落しました。
024
その時、
025
隣りの小島長太郎という人の土蔵の瓦が二・三十枚、
026
伐りおとした椋の木の枝のためにこわれましたので早速弁償されましたが、
027
この人が意地わるく、
028
いろいろな苦情を持ちこんで吉松氏を苦しめました。
029
それから、
030
由松さんが十日ばかりで帰宅しましたけれども、
031
例のバクチにふけって、
032
吉松氏や喜三郎兄さんの説諭も馬の耳に風で、
033
少しも聞き入れないばかりか、
034
乱暴まで働くので、
035
吉松氏は非常に心配されました。
036
そんなところから、
037
病勢がにわかにつのって参りまして、
038
喜三郎さんの六ヵ月にわたる手篤い看護も甲斐なく、
039
七月二十一日五十四歳で亡くなられてしまいました。
040
喜三郎さんはこの時ほど力をおとされたことはありませんでした。
041
喜三郎さんが牛を飼いながら、
042
いかに亡き父を恋い慕われたかは、
043
「狭霧」と題する詩の一節を読めば、
044
よくうかがわれるのであります。
045
父よ恋しと墓山見れば
046
山は狭霧につつまれて
047
墓標の松も雲がくれ
048
晴るるひまなき
袖
(
そで
)
の雨
049
○
050
西は
半国
(
はんごく
)
東は愛宕
051
南妙見北帝釈の
052
山の屏風を引きまわし
053
中の穴太野で牛を飼ふ
054
吉松氏の死は鬼門の木を伐った祟りだとか、
055
裏鬼門の池が祟ったのだとか、
056
親戚や朋友などの連中が口々に申しますので、
057
喜三郎さんはその問題を解決するために宮川の妙霊教会や亀岡のヒモロギ教会などへ行って質問をしましたが、
058
一こう要領を得ず、
059
この上は直接神教をうけるより外はないと決心せられて、
060
毎晩十二時から三時まで産土神社に行って神教を乞われた結果、
061
鬼門
(
きもん
)
の
金神
(
こんじん
)
と裏鬼門の金神の由来から、
062
その神聖な理由を明かにされました。
063
喜三郎さんは大いに勇気づけられ、
064
すすんで各教の教義をさぐり、
065
誤った宗教界を改善しようと考えられましたが、
066
いろいろな教会に出入している中に、
067
教会の迷信ぶり、
068
堕落ぶりに愛想をつかし、
069
それからは神だとか、
070
宗教だとか、
071
信仰だとかということは見るもイヤ、
072
聞くもイヤというようになり、
073
一時は無神論者にさえなられました。
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