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聖師伝
はしがき
01 御誕生
02 穴太の里
03 祖父の話
04 祖父の性行
05 祖父の再生
06 幼少年時代
07 小学校時代
08 久兵衛池事件
09 青年時代
10 獣医学の研究
11 父の死
12 青年時代の煩悶
13 高熊山出修の動機
14 高熊山の修行
15 使命の自覚
16 幽斎の修業
17 開祖との会見
18 聖師の大本入り
19 聖師と筆先
20 聖師の苦闘
21 神苑の拡張と造営
22 神島開き
23 大本の発展
24 第一次大本事件
25 霊界物語の口述
26 エスペラントとローマ字の採用
27 世界紅卍字会との提携
28 蒙古入り
29 世界宗教連盟と人類愛善会
30 大正より昭和へ
31 明光社の設立
32 急激な発展
33 第二次大本事件
34 愛善苑の新発足
35 晩年の聖師
36 御昇天
37 御昇天後の大本
【附録】出口聖師年譜
(メニューの右肩に*1が付いているものは、本文がまだテキスト化されていないもの。*2は内容がほぼ同じ他のテキストがあるもの。)
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九、青年時代
インフォメーション
題名:
9 青年時代
著者:
大本教学院・編
ページ:
目次メモ:
概要:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
OBC :
B100800c09
001
喜三郎さんは山で
薪
(
たきぎ
)
を刈り、
002
それを京都市まで荷車ではこび、
003
わずかの賃金を得て、
004
家の生計を助けられました。
005
穴太の田舎から六、
006
七里もある京都へ出られるのですから、
007
その苦労は思いやられます。
008
喜三郎さんは真夜中の道を車を引いて帰られました。
009
雨や雪の降る日は、
010
ことさらに苦しい思いをされました。
011
何故
(
なにゆえ
)
にわれかくのごとく不遇なる
012
家に
生
(
あ
)
れしかとかこちてもみし
013
これは聖師が当時を想起して詠まれた歌であります。
014
喜三郎さんは近所の夜学にかよって漢籍や経文を習われたり、
015
また「日本書紀」「日本外史」のような国学を勉強されたりしました。
016
十八歳の春から喜三郎さんは村で発行された「あほら誌」という雑誌に、
017
狂歌、
018
狂句、
019
都々逸
(
どどいつ
)
、
020
戯文などを作って投書し、
021
それが発表されるのを唯一の慰安とされました。
022
冠句の宗匠について冠句を学び、
023
天才的ひらめきを示して人々を驚かしたというのも、
024
この頃のことであります。
025
喜三郎さんは少年の頃から敬神の念があつく、
026
二十二・三歳のとき、
027
毎夜産土神社に参詣して迷信家だとわらわれましたので、
028
ひと眼をしのんで毎夜参詣されました。
029
ある夜、
030
喜三郎さんは「われを世に立たせ給え」と祈願をこらし、
031
神前にたたずんでおられますと、
032
駒のひづめの音が聞えて来て、
033
闇の中に白馬にまたがった異様の神人が近づいて来るのが拝されました。
034
明治の新時代になったとはいえ、
035
封建時代の因習の深く根ざしている田舎では、
036
小作人の生活は今日からみれば比較にならない程のみじめなものでありました。
037
そうした小作のせがれとして生まれ、
038
貧苦の中に生長した喜三郎さんが青年時代に青年特有の覇気をもたれたであろうことは、
039
むしろ当然であったでありましょう。
040
喜三郎さんが幼少年の時代から青年時代になっても、
041
常にあこがれの的となっていたのは、
042
むかし明智
光秀
(
みつひで
)
の居城であった亀山の城趾でありました。
043
いとけなき頃は雲間に天守閣
044
白壁映えしをなつかしみけり
045
旧城趾落ちたる瓦の
片
(
きれ
)
あつめ
046
城のかたちを造りて遊びぬ
047
(歌集「故山の夢」より)
048
旧城趾にそびえ立つ
銀杏樹
(
いちょう
)
の下にたたずまれて喜三郎さんは幾度か心を動かされたことでありましょう。
049
亀岡
古世
(
こせ
)
町
(
まち
)
の伯母の家を訪れた時は、
050
喜三郎さんはよく帰りに城趾に立ち寄られました。
051
城趾が年々に荒廃してゆくのを見て喜三郎さんは涙を流されたこともありました。
052
栄枯盛衰は世の習いとはいえ、
053
英雄の心事を想って深き思いに沈まれたこともありました。
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