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聖師伝
はしがき
01 御誕生
02 穴太の里
03 祖父の話
04 祖父の性行
05 祖父の再生
06 幼少年時代
07 小学校時代
08 久兵衛池事件
09 青年時代
10 獣医学の研究
11 父の死
12 青年時代の煩悶
13 高熊山出修の動機
14 高熊山の修行
15 使命の自覚
16 幽斎の修業
17 開祖との会見
18 聖師の大本入り
19 聖師と筆先
20 聖師の苦闘
21 神苑の拡張と造営
22 神島開き
23 大本の発展
24 第一次大本事件
25 霊界物語の口述
26 エスペラントとローマ字の採用
27 世界紅卍字会との提携
28 蒙古入り
29 世界宗教連盟と人類愛善会
30 大正より昭和へ
31 明光社の設立
32 急激な発展
33 第二次大本事件
34 愛善苑の新発足
35 晩年の聖師
36 御昇天
37 御昇天後の大本
【附録】出口聖師年譜
(メニューの右肩に*1が付いているものは、本文がまだテキスト化されていないもの。*2は内容がほぼ同じ他のテキストがあるもの。)
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一二、青年時代の煩悶
インフォメーション
題名:
12 青年時代の煩悶
著者:
大本教学院・編
ページ:
目次メモ:
概要:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2017-09-25 20:05:11
OBC :
B100800c12
001
喜三郎さんは青年時代には誰にもあり勝ちな思想動揺期における煩悶を経験されました。
002
十三歳ぐらいの時に、
003
この世の中は、
004
何とかして救われなければならぬと、
005
おぼろげながら考えられたことがありますが、
006
青年時代になって、
007
真剣にこの問題にとりくまれました。
008
富者を見ても、
009
貧者を見ても、
010
当時の喜三郎さんの胸には常に一つの疑問が去来しました。
011
一体、
012
土地といい、
013
資本といい、
014
一さいの生産機関なるものは、
015
人類全体を幸福に生活させるために、
016
天から与えられたものではあるまいか。
017
それを地主や資本家なるものが、
018
その利益を自由に
壟断
(
ろうだん
)
[
※
ひとりじめすること
]
しているのであるが、
019
何の理由があり、
020
何の徳があり、
021
何の権利があって、
022
そうしているのであろうか。
023
宗教は慈悲博愛を鼓吹するとも、
024
いまだ現世を救うにいたらず、
025
ただ死後の楽園を想像せしめて、
026
われわれの心中にわずかに慰めを与えるに過ぎない。
027
教育は、
028
多大の知識を与えるけれども、
029
半日の衣食をも産出するものではない。
030
また道徳の最低限度を標準として作られた法律は、
031
よく人の行為を責罰するとも、
032
人類を天国の人たらしめる道具ではない。
033
海陸の軍備は充実するとも、
034
国防の上には役立つが、
035
多数の苦しんでいる人類を幸福に生活せしめる利器ではない。
036
どうしたらこの矛盾せる社会を一掃して天国化することができるであろうか。
037
世界の現状を見れば、
038
人類の苦悩と
飢凍
(
きとう
)
とは日一日と迫って来る。
039
これを黙視していいもであろうか。
040
これが真理、
041
正義、
042
人道なのであろうか。
043
──こうした疑問が絶えず喜三郎青年の胸中に去来していたのでありました。
044
しかし、
045
この疑問に対して、
046
根本的の解決を与えてくれるものは何もなかったのであります。
047
今日であったら、
048
喜三郎さんは左翼の運動にでも走りかねまじき疑惑にぶつかられたのであります。
049
よく世間にはインチキな侠客があって、
050
弱いものイジメをしたり、
051
酒をのんでは暴行をはたらいたり、
052
バクチをしては村の風紀を乱したりすることがあります。
053
喜三郎さんは父吉松氏の死後一ヵ年
[
※
7月21日から翌年2月末までなので約7ヶ月。一年もない、約半年
]
の間に、
054
そうした無頼漢を向うへまわしてよく喧嘩をされたり、
055
喧嘩の仲裁をされたりしました。
056
喜三郎さんの度胸がいいのをみて、
057
ある侠客は自分の家の養子にしようとしたくらいでありました。
058
喧嘩の仲裁がウマく行くと、
059
たちまち評判が高くなって、
060
喧嘩の仲裁は
喜三
(
きさ
)
やんに限るというふうに村の者におだてられ、
061
しまいにはどこかに喧嘩がないかと探すようになりました。
062
そうなって参りますと、
063
久兵衛池事件以来、
064
弱者に対する同情と強者に対する反抗とが一つになって、
065
いっそのこと弱い者を助け、
066
強い者をくじく侠客──明治の
播髄院
(
ばんずいいん
)
長兵衛
[
※
江戸初期の有名な侠客
]
になってやろうかと考えられるようになり、
067
わずか一年足らずの間に前後九回も大きな衝突をされ、
068
無頼漢から恨みを買われたのであります。
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