霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
×
設定
URL:
印刷用画面を開く [?]プリント専用のシンプルな画面が開きます。文章の途中から印刷したい場合は、文頭にしたい位置のアンカーをクリックしてから開いて下さい。[×閉じる]
話者名の追加表示 [?]セリフの前に話者名が記していない場合、誰がしゃべっているセリフなのか分からなくなってしまう場合があります。底本にはありませんが、話者名を追加して表示します。[×閉じる]
表示できる章
テキストのタイプ [?]ルビを表示させたまま文字列を選択してコピー&ペーストすると、ブラウザによってはルビも一緒にコピーされてしまい、ブログ等に引用するのに手間がかかります。そんな時には「コピー用のテキスト」に変更して下さい。ルビも脚注もない、ベタなテキストが表示され、きれいにコピーできます。[×閉じる]

文字サイズ
行間
ルビの表示


アンカーの表示 [?]本文中に挿入している3~4桁の数字がアンカーです。原則として句読点ごとに付けており、標準設定では本文の左端に表示させています。クリックするとその位置から表示されます(URLの#の後ろに付ける場合は数字の頭に「a」を付けて下さい)。長いテキストをスクロールさせながら読んでいると、どこまで読んだのか分からなくなってしまう時がありますが、読んでいる位置を知るための目安にして下さい。目障りな場合は「表示しない」設定にして下さい。[×閉じる]


宣伝歌 [?]宣伝歌など七五調の歌は、底本ではたいてい二段組でレイアウトされています。しかしブラウザで読む場合には、二段組だと読みづらいので、標準設定では一段組に変更して(ただし二段目は分かるように一文字下げて)表示しています。お好みよって二段組に変更して下さい。[×閉じる]
脚注[※]用語解説 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

脚注[*]編集用 [?][※]、[*]、[#]で括られている文字は当サイトで独自に付けた脚注です。[※]は主に用語説明、[*]は編集用の脚注で、表示させたり消したりできます。[#]は重要な注記なので表示を消すことは出来ません。[×閉じる]

外字の外周色 [?]一般のフォントに存在しない文字は専用の外字フォントを使用しています。目立つようにその文字の外周の色を変えます。[×閉じる]
現在のページには外字は使われていません

表示がおかしくなったらリロードしたり、クッキーを削除してみて下さい。

第四章 初蚊斧(はつかふ)〔五〇〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第12巻 霊主体従 亥の巻 篇:第1篇 天岩戸開(一) よみ(新仮名遣い):あまのいわとびらき(一)
章:第4章 初蚊斧 よみ(新仮名遣い):はつこう 通し章番号:500
口述日:1922(大正11)年03月06日(旧02月08日) 口述場所: 筆録者:松村真澄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年9月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
三宣伝使は蚊取別に自己紹介し、挨拶を交わした。三兄弟の宣伝使は、豊の国の白瀬川の滝に潜む魔神を言向け和すために旅をしている、と蚊取別に旅の目的を告げた。
偶然にも、蚊取別も白瀬川の大瀑布の魔神を退治にやってきたことを知った。
蚊取別は、霊縛をかけた群集たちに宣伝しようと、固まっている初公に、宣伝歌を歌わせる。初公は、かつての大自在天の部下であった。そのため蚊取別の昔の悪行を覚えていて、それを宣伝歌に歌いこんだ。
初公は、町の者がかわいそうだから、悪の仮面をかぶって酋長や春公に強談判をしただけなのだ、と言い訳をする。そして、蚊取別の改心を信用せず、三五教の仮面をかぶって悪いことをしているのだろう、と逆に問いかける。
蚊取別は、初公が霊縛をかけられながらも歯に衣を着せぬ物言いをするので、逆に感心して霊縛を解く。
初公は、他の者の霊縛も解くように懇願する。蚊取別は、神様の力で鎮魂ができるのだと諭し、初公に神様の機械になってやってみろ、と促す。
初公は不安の念にかられながらも、惟神霊幸倍坐世を二回唱えて人々に鎮魂術をかけると、一同は元の姿に戻った。人々は涙を流して宣伝使一同に感謝を現した。
初公は、酋長が自分を逮捕しに来ることを心配している。蚊取別は初公に、酋長や春公を言向け和しておいて、白瀬川の魔神退治に一緒に出かけよう、と誘う。
蚊取別はその場の村人一同に教えを諭し、四人の宣伝使は初公を伴って、酋長の館を指して進んでいった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-11-11 23:17:17 文字数:3539 OBC :rm1204
愛善世界社版:29頁 八幡書店版:第2輯 636頁 修補版: 校定版:30頁 普及版:11頁 初版: ページ備考:
001 三柱(みはしら)の宣伝使(せんでんし)は蚊取別(かとりわけ)の立(た)てる前(まへ)に現(あらは)れ、
002高光彦(たかてるひこ)『ヤ、003これはこれは三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)蚊取別(かとりわけ)様(さま)とやら、004初(はじ)めてお目(め)にかかります。005御(ご)高名(かうめい)は父(ちち)から承(うけたま)はりました。006神(かみ)様(さま)の御(お)引合(ひきあは)せ、007思(おも)はぬ所(ところ)でお目(め)にかかりました』
008蚊取別(かとりわけ)『ヤア、009貴神(あなた)等(がた)が万寿山(まんじゆざん)の磐樟彦(いはくすひこの)命(みこと)の御(お)子(こ)達(たち)ですか。010神国(しんこく)の為(ため)に御(ご)苦労(くらう)で御座(ござ)います。011あなた方(がた)は是(これ)から何(いづ)れの方面(はうめん)にお越(こ)しのお考(かんが)へですか』
012高光彦『ハイ我々(われわれ)はイホの都(みやこ)を越(こ)えて、013筑紫島(つくしじま)、014豊(とよ)の国(くに)の白瀬川(しらせがは)の滝(たき)に魔神(まがみ)が潜(ひそ)むで災害(わざはひ)をなすと聞(き)き、015言向和(ことむけやは)す為(ため)に参(まゐ)る途中(とちう)で御座(ござ)います』
016蚊取別(かとりわけ)『それは結構(けつこう)ですナ。017白瀬川(しらせがは)には六箇(ろくこ)の大瀑布(だいばくふ)があつて、018そこには悪竜(あくりう)悪蛇(あくだ)が棲処(すみか)を構(かま)へ、019八頭(やつがしら)八尾(やつを)の大蛇(をろち)と気脈(きみやく)を通(つう)じて、020此(この)通(とほ)り天(てん)を曇(くも)らせ、021地(ち)を汚(けが)して居(を)るといふ事(こと)、022私(わたし)も一旦(いつたん)黄金山(わうごんざん)に帰(かへ)り、023附近(ふきん)の地(ち)を宣伝(せんでん)して居(ゐ)ましたが、024今度(こんど)は長駆(ちやうく)して白瀬川(しらせがは)の魔神(まがみ)を退治(たいぢ)る積(つも)りで、025此処(ここ)迄(まで)やつて来(き)た途中(とちう)、026見(み)れば、027前方(ぜんぱう)に炬火(たいまつ)の光(ひかり)、028人(ひと)の叫(さけ)び声(ごゑ)、029合点(がつてん)行(ゆ)かずと宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひながら走(はし)つて来(き)て見(み)れば、030豈(あに)図(はか)らむや、031御覧(ごらん)の通(とほ)り立派(りつぱ)な人形(にんぎやう)の陳列会(ちんれつくわい)、032何処(どこ)の技師(ぎし)が作(つく)つたものか知(し)りませぬが、033よくも出来(でき)たものです。034おまけに此(この)人形(にんぎやう)は別(べつ)に仕掛(しかけ)はない様(やう)ですが、035目(め)の玉(たま)を動(うご)かし、036涙(なみだ)をこぼし、037つひ最前(さいぜん)までは、038酒(さけ)を喰(く)ふ法螺(ほら)をふく、039歌(うた)を唄(うた)ふといふ妙(めう)な人形(にんぎやう)です』
040三(さん)人(にん)『アハヽヽヽ』
041蚊取別(かとりわけ)『皆(みな)さまどうでせう。042一々(いちいち)この人形(にんぎやう)に魂(たましひ)を入(い)れて、043ものを言(い)はせ、044立派(りつぱ)に立働(たちはたら)く様(やう)にやつて見(み)ませうか。045きつと三五教(あななひけう)の教(をしへ)に帰順(きじゆん)する様(やう)になるでせう』
046高光彦(たかてるひこ)『我々(われわれ)は万寿山(まんじゆざん)を立出(たちいで)てより、047まだ一回(いつくわい)も宣伝(せんでん)を試(こころ)みた事(こと)はありませぬ。048何分(なにぶん)にも沙漠(さばく)や野原(のはら)ばかりを渡(わた)つて来(き)たものですから………』
049蚊取別(かとりわけ)『私(わたし)が一寸(ちよつと)手本(てほん)を出(だ)しますから手伝(てつだ)つて下(くだ)さい』
050といひ乍(なが)ら、051化石(くわせき)の様(やう)になつた人々(ひとびと)の前(まへ)に坐(すわ)り込(こ)み、
052蚊取別『サアサア人形(にんぎやう)さま、053お前(まへ)は目(め)ばかり動(うご)かして居(を)るが、054今(いま)口(くち)を動(うご)く様(やう)にしてやる。055私(わし)の言(い)ふ通(とほ)りに云(い)ふのだよ……ウンよしよし、056承知(しようち)か、057頷(うなづ)いて居(を)るナ……神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて』
058 初(はつ)、059口(くち)をモジヤモジヤさせ乍(なが)ら、
060初公(はつこう)『カメカオモテテニアラワワレテ』
061蚊取別(かとりわけ)『モツト確乎(しつかり)言(い)はぬか。062サアも一遍(いつぺん)言(い)うた』
063初公(はつこう)『カ……カ……敵(かな)わぬ、064カニして下(くだ)さい。065必(かなら)ず必(かなら)ず心(こころ)を直(なほ)します』
066蚊取別(かとりわけ)『ヨシ、067それは分(わか)つたが、068神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれてを歌(うた)へ』
069 初(はつ)は、
070初公『神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて
071善(ぜん)と悪(あく)とを立別(たてわけ)る
072此(この)世(よ)を造(つく)りし神直日(かむなほひ)
073心(こころ)も広(ひろ)き大直日(おほなほひ)
074ただ何事(なにごと)も人(ひと)の世(よ)は
075直日(なほひ)に見直(みなほ)せ聞直(ききなほ)せ
076身(み)の過(あやま)ちは宣(の)り直(なほ)せ
077蚊取(かとり)の別(わけ)の神(かみ)さまよ
078聞(き)けばお前(まへ)も其(その)昔(むかし)
079良(よ)くもない事(こと)沢山(やつと)して
080悪神(あくがみ)さまと歌(うた)はれて
081今(いま)は偉(えら)そに其処(そこ)ら中(ぢう)
082牛(うし)から馬(うま)に乗(の)り替(か)へて
083善(ぜん)ぢや悪(あく)ぢやと言(い)ひ歩(ある)く
084ホンに世界(せかい)は広(ひろ)いもの
085わしも昔(むかし)は自在天(じざいてん)
086神(かみ)に仕(つか)へた悪神(あくがみ)ぢや
087其(その)時(とき)お前(まへ)は猩々(しやうじやう)の
088様(やう)にガブガブ酒(さけ)喰(くら)ひ
089人(ひと)を泣(な)かした奴(やつ)なれど
090どうした風(かぜ)の吹(ふ)き廻(まは)し
091今(いま)は立派(りつぱ)な宣伝使(せんでんし)
092心(こころ)の色(いろ)は変(かは)れども
093やつぱり変(かは)らぬ其(その)姿(すがた)
094茹蛸(ゆでだこ)みた様(よ)な姿(すがた)して
095人(ひと)を教(をし)へて歩(ある)くとは
096それやマア何(なん)とした事(こと)か
097ホンに世界(せかい)は広(ひろ)いもの』
098蚊取別(かとりわけ)『コラコラ何(なに)を言(い)ふのだ。099昔(むかし)は昔(むかし)、100改心(かいしん)すれば其(その)日(ひ)から善(ぜん)の神(かみ)だ。101口(くち)だけ自由(じいう)にして遣(や)れば、102直(すぐ)にそれだから………貴様(きさま)も容易(ようい)に改心(かいしん)は出来相(でけさう)にもない。103マア改心(かいしん)の出来(でけ)るまで、104百(ひやく)年(ねん)でも千(せん)年(ねん)でも固(かた)くなつて鯱(しやち)こばつて居(を)るが宜(い)いワイ』
105初公(はつこう)『お前(まへ)も昔(むかし)馴染(なじみ)だ。106つひ心安(こころやす)いものだから言(い)つたのだ。107そんな意地(いぢ)の悪(わる)い事(こと)言(い)はずに、108身体(からだ)を旧(もと)の通(とほ)りにせむかい蚊取別(かとりわけ)』
109蚊取別『アハヽ、110どこまでも負惜(まけをし)みの強(つよ)い奴(やつ)だナア』
111初公(はつこう)『弱(よわ)くて此(この)世(よ)が渡(わた)れるか。112負惜(まけをし)みなつと強(つよ)くなければ、113優勝(いうしよう)劣敗(れつぱい)弱肉(じやくにく)強食(きやうしよく)の此(この)世(よ)の中(なか)が渡(わた)れるものか。114善(ぜん)ぢや善(ぜん)ぢや世(よ)の為(ため)だ、115国(くに)の為(ため)ぢや、116人(ひと)の為(ため)には身命(しんめい)を賭(と)してナンて吐(ぬ)かす奴(やつ)は、117みんな偽善者(ぎぜんしや)だ。118俺(おれ)は斯(こ)う見(み)えても、119悪(あく)にも強(つよ)ければ善(ぜん)にも強(つよ)いのだ。120併(しか)し乍(なが)らどうしたものか、121悪(あく)は行(や)りたくない。122町(まち)の奴(やつ)が可愛相(かあいさう)だから、123厭(いや)でも応(おう)でも悪(あく)の仮面(かめん)を被(かぶ)つて憎(にく)まれ者(もの)になつて、124酋長(しうちやう)や物持(ものもち)の春公(はるこう)に掛合(かけあ)つて見(み)たのだ。125世間(せけん)の奴(やつ)は善(ぜん)に見(み)せて悪(あく)を行(や)る、126俺(おれ)は悪(あく)に見(み)せて善(ぜん)を行(おこな)ふのだ。127蚊取別(かとりわけ)、128お前(まへ)も取分(とりわ)けて抜目(ぬけめ)のない男(をとこ)だつた。129常世(とこよ)会議(くわいぎ)では一寸(ちよつと)失敗(しくじ)りよつたが、130しかし宣伝使(せんでんし)の仮面(かめん)を被(かぶ)つて相(あひ)変(かは)らず悪(わる)い事(こと)を行(や)つとるのだらう。131顔(かほ)も知(し)らぬ宣伝使(せんでんし)なら、132叮寧(ていねい)に頼(たの)みもし、133謝罪(あやまり)もするが、134何分(なにぶん)お前(まへ)の素性(すじやう)を百(ひやく)も承知(しようち)、135万(まん)も合点(がつてん)して居(を)る俺(おれ)としては、136チヤンチヤラ可笑(おか)しいて、137真面目(まじめ)に改心(かいしん)するなぞと言(い)はれたものかい。138そんな悪戯(いたづら)をせずに早(はや)く霊縛(れいばく)を解(と)け』
139蚊取別(かとりわけ)『解(と)いてやるが、140解(と)いたらモウ喋(しやべ)らぬか。141三(さん)人(にん)の若(わか)い宣伝使(せんでんし)の前(まへ)で、142昔(むかし)の棚卸(たなおろ)しをやられると面目玉(めんぼくだま)を潰(つぶ)して了(しま)ふ。143どうだ、144何(なに)も言(い)はぬと誓(ちか)ふか』
145初公(はつこう)『チガフかチガハヌか、146そら知(し)らぬが、147記憶(きおく)にある事(こと)は、148俺(おれ)が言(い)ふまいと思(おも)つても、149腹(はら)の中(なか)から言(い)うて来(く)るのだから仕方(しかた)がないワ。150一寸先(いつすんさき)の事(こと)は分(わか)らぬから、151堅(かた)い約束(やくそく)は出来(でけ)ぬワイ。152俺(おれ)の身体(からだ)が自由(じいう)になつたら、153虫(むし)の居所(ゐどころ)に依(よ)つては、154お前(まへ)の薬鑵頭(やくわんあたま)をブン擲(なぐ)るかも知(し)れぬ、155其(その)時(とき)は其(その)時(とき)の事(こと)だ』
156蚊取別(かとりわけ)『イヤア面白(おもしろ)い。157貴様(きさま)見(み)かけに寄(よ)らぬ正直(しやうぢき)な奴(やつ)だ。158中々(なかなか)よく身魂(みたま)が研(みが)けて居(を)るワイ』
159初公(はつこう)『ハヽヽヽヽ、160さうだらう。161大勢(おほぜい)の代(かは)りになつて、162名誉(めいよ)も、163生命(いのち)も、164何(なに)も投出(なげだ)して、165此(この)イホの都(みやこ)でも威勢(ゐせい)の高(たか)い酋長(しうちやう)や、166物持(ものもち)の春公(はるこう)に掛合(かけあ)うて居(を)る位(くらゐ)だから、167何(いづ)れ明日(あす)位(くらゐ)には酋長(しうちやう)の奴(やつ)、168沢山(たくさん)な家来(けらい)を連(つ)れて俺(おれ)を召捕(めしと)りに来(く)るのは、169印判(はんこ)で押(お)した様(やう)なものだよ』
170 蚊取別(かとりわけ)は、
171蚊取別『サア、172これから霊縛(れいばく)を解(と)いてやる』
173といひ乍(なが)ら、
174蚊取別『ウン』
175と一声(ひとこゑ)。176初公(はつこう)は旧(もと)の身体(からだ)に復(ふく)し、
177初公『ヤア、178有難(ありがた)う。179蚊取別(かとりわけ)大明神(だいみやうじん)、180よつぽどお前(まへ)は御(ご)神徳(しんとく)を貰(もら)うたなア。181私(わし)もこれ丈(だけ)の神力(しんりき)があれば、182酋長(しうちやう)の三(さん)人(にん)や五(ご)人(にん)位(ぐらゐ)ウーンと霊(れい)をかけて、183対方(むかふ)をウンと堅(たて)に首(くび)を振(ふ)らしてやるのだけれどナア』
184蚊取別(かとりわけ)『そンな事(こと)は何(なん)でもないワ、185俺(おれ)がするのぢやない。186神(かみ)様(さま)のお力(ちから)だ。187俺(おれ)の背後(うしろ)には結構(けつこう)な神(かみ)様(さま)が守護(しゆご)して御座(ござ)るのだ』
188初公(はつこう)『アヽさうか、189偉(えら)いものだナア。190併(しか)し俺(おれ)だけ自由(じいう)になつたが、191他(ほか)の者(もの)は気(き)の毒(どく)だ。192一(ひと)つ皆(みな)にそのウンを行(や)つて呉(く)れぬか』
193蚊取別(かとりわけ)『お前(まへ)が俺(おれ)の行(や)つた様(やう)に手(て)を組(く)んで、194皆(みんな)の者(もの)にウンと一声(ひとこゑ)かけて見(み)よ。195忽(たちま)ち旧(もと)の通(とほ)りになるのは請合(うけあひ)だ。196併(しか)し神力(しんりき)が現(あら)はれても、197お前(まへ)の力(ちから)だと思(おも)つたら違(ちが)ふぞ。198九分(くぶ)九厘(くりん)まで神(かみ)様(さま)のお力(ちから)だから、199さう心得(こころえ)ろ』
200初公(はつこう)『行(や)つても可(よ)からうかな。201私(わし)の様(よ)な素人(しろうと)がウンを行(や)つても利(き)くだらうか』
202蚊取別(かとりわけ)『それが悪(わる)いのだ。203自分(じぶん)が行(や)ると思(おも)ふから間違(まちが)ふのだ。204お前(まへ)は唯(ただ)神(かみ)様(さま)の機械(からくり)になる丈(だけ)だ。205サア手(て)を組(く)むで一同(いちどう)に向(む)かつてウンと行(や)つて試(み)い』
206 初公(はつこう)は不安(ふあん)の念(ねん)に駆(か)られ乍(なが)ら、207惟神(かむながら)霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)を二回(にくわい)心細(こころぼそ)げに唱(とな)へて、208大勢(おほぜい)に向(むか)ひ、209ウンと鎮魂術(ちんこんじゆつ)を行(おこな)ふ。210不思議(ふしぎ)にも一同(いちどう)は旧(もと)の姿(すがた)に立復(たちかへ)り四(よ)人(にん)の宣伝使(せんでんし)の前(まへ)に走(はし)り来(きた)り、211跪(ひざまづ)いて涙(なみだ)を流(なが)し合掌(がつしやう)し居(ゐ)たりけり。
212初公『ヤア皆(みな)さま、213安心(あんしん)なされ、214この初公(はつこう)が御(ご)神力(しんりき)を頂(いただ)いたらこんなものだ。215モウモウ明日(あした)の事(こと)は心配(しんぱい)するに及(およ)ばぬ。216今日(けふ)の事(こと)は今日(けふ)一生(いつしやう)懸命(けんめい)に働(はたら)いて、217取越(とりこし)苦労(くらう)をせぬ様(やう)にするのだ。218マアマア揃(そろ)うて神(かみ)様(さま)にお礼(れい)を申上(まをしあ)げようかい。219酋長(しうちやう)や春公(はるこう)は逃(に)げて了(しま)つたが、220何(いづ)れ捕手(とりて)が来(く)るだろう。221来(き)たつて構(かま)はぬ。222この初公(はつこう)が一寸(ちよつと)手(て)を組(く)んでただ一声(ひとこゑ)、223ウンとやれば、224何(なん)の事(こと)はない。225ウンもスンも言(い)はずに往生(わうじやう)するのだ。226ナンと神(かみ)様(さま)は偉(えら)いものだらう』
227高光彦(たかてるひこ)『ヤア何事(なにごと)も神(かみ)様(さま)のお蔭(かげ)です。228どうだ初(はつ)さま、229是(これ)から酋長(しうちやう)や春(はる)さまを言向和(ことむけや)はしておいて、230白瀬川(しらせがは)の悪魔(あくま)退治(たいぢ)と出(で)かけたらどうだ。231お前(まへ)のウンの試(ため)し時(どき)だ』
232初公(はつこう)『イヤ有難(ありがた)う、233私(わたし)は神力(しんりき)はないが神(かみ)様(さま)の神力(しんりき)で天晴(あつぱ)れ悪神(あくがみ)を言向(ことむ)けて見(み)ませう』
234 群集(ぐんしふ)の中(なか)より現(あら)はれたる斧公(をのこう)は顔(かほ)をあげて、
235斧公『ヤア初(はつ)さまよ、236お前(まへ)は本当(ほんたう)に偉(えら)い奴(やつ)だ、237よう変(かは)つたものだナ。238昔(むかし)は悪(わる)い男(をとこ)だつたが、239義侠心(ぎけふしん)に富(と)んだ人(ひと)だと町中(まちぢう)の評判(ひやうばん)だよ。240どうぞ俺(おれ)にも其(その)ウンを教(をし)へて貰(もら)うて呉(く)れぬか。241お前(まへ)が宣伝使(せんでんし)のお伴(とも)をして此(この)町(まち)を立退(たちの)くとなると、242後(あと)が寂(さび)しいからのう』
243初公(はつこう)『それもそうだ…………モシモシ、244蚊取別(かとりわけ)の宣伝使(せんでんし)様(さま)、245此(この)斧公(おのこう)にも許(ゆる)してやつて下(くだ)さいナ』
246蚊取別(かとりわけ)『私(わたし)が許(ゆる)すのぢやない。247三五教(あななひけう)の教(をしへ)が有難(ありがた)いといふ事(こと)が分(わか)れば、248神(かみ)様(さま)が直接(ちよくせつ)に御(ご)神徳(しんとく)を授(さづ)けて下(くだ)さるのだ。249モシモシ斧(をの)さまとやら、250神(かみ)様(さま)はおのぞみ次第(しだい)、251おのおの身魂(みたま)相応(さうおう)の御用(ごよう)を仰付(おほせつ)けられるのだから、252十分(じふぶん)に魂(たま)を研(みが)きなさい。253初(はつ)さまが此(この)町(まち)に居(を)るとお前(まへ)達(たち)は気(き)を許(ゆる)してもたれる気(き)になるから可(い)かない。254初(はつ)さまが此(この)町(まち)を立去(たちさ)つたが最後(さいご)、255皆(みんな)の心(こころ)が引締(ひきしま)り、256人(ひと)を杖(つゑ)に突(つ)くといふ依頼心(いらいしん)がなくなつて了(しま)ふ。257さうすれば力(ちから)と頼(たの)むのは神(かみ)様(さま)ばかりだ。258そこにならぬと御(ご)神力(しんりき)は与(あた)へて下(くだ)さらぬ。259マア安心(あんしん)して大神(おほかみ)様(さま)を信仰(しんかう)しなさい。260天下(てんか)の宣伝使(せんでんし)は決(けつ)して嘘(うそ)や掛値(かけね)は言(い)はぬ。261お前(まへ)さまは初公(はつこう)さまの代(かは)りになつて、262町(まち)の者(もの)等(ら)を守(まも)つてやつて下(くだ)さい』
263斧公(おのこう)『有難(ありがた)う御座(ござ)います。264何分(なにぶん)宜(よろ)しく……』
265と頭(かしら)を地(ち)に着(つ)け涕泣(ていきふ)し居(ゐ)る。266いよいよ四(よ)人(にん)の宣伝使(せんでんし)は初公(はつこう)を伴(ともな)ひ、267酋長(しうちやう)の館(やかた)を指(さ)して進(すす)み行(ゆ)く。
268(大正一一・三・六 旧二・八 松村真澄録)
このページに誤字・脱字や表示乱れなどを見つけたら教えて下さい。
返信が必要な場合はメールでお送り下さい。【メールアドレス】
合言葉「みろく」を入力して下さい→