霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第三〇章 天(あま)の岩戸(いはと)〔五二六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第12巻 霊主体従 亥の巻 篇:第4篇 古事記略解 よみ(新仮名遣い):こじきりゃっかい
章:第30章 天の岩戸 よみ(新仮名遣い):あまのいわと 通し章番号:526
口述日: 口述場所: 筆録者:松村真澄、谷村真友[#講演筆録] 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年9月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
天照大御神はあまりのことに、天の岩戸に籠もってしまったが、これは現代で言えば、主宰の地位を辞職された、ということである。
世の中の統治が崩れて混乱した。そこで貴賎の別なくすべての人々が国家を憂い、集まって議論をした。
そして思兼の神の発案によって、天から下った教えを取り、世を治めるために必要な武具を作り、霊能の反映であり言霊である鏡を作ったのである。
そうして、神占を行って神勅を乞うたのである。その結果、祭典を行って天神地祇を祀らねばならぬ、という結論に決まった。神楽の準備をなされた。
今日の世の中は、ちょうど神楽の獅子舞のように混乱紛糾の極みにいたっていると見ることができる。
天の宇受女命とは、難局に当たって活躍する男勝りの女である。それが飛んだり跳ねたり、国家的大活動をなした、ということである。そこで八百万の神々らは元気付いて、どっと笑った。
信仰ができて神の御心がわかったならば、国家的な大難にも、談笑遊楽のうちに対処することができるようになるのである。
天照大御神の姿が鏡に映ったというのは、鏡は言霊であるから、八百万の神々が言霊によって岩戸を開いた、ということを意味しているのである。一つの大きな言霊を為して、天照大御神をお寄せになった、ということである。
さて、岩戸が開いた後、岩戸を閉めた者を罰しなければならない。しかし岩戸が閉まった原因を作ったのは、本来はほとんど世界中の八百万の神々の責任である。しかし全員を罰するわけにはいかないので、贖い主を立てる必要がある。
罪ある神々は自分を省みず、もったいなくも須佐之男命御一柱に罪を負わせて、根の堅洲国に追放されたのであった。
変性男子の役目は統治であるが、変性女子の役目は、この世が続く限り、罪人のためにどこまでも犠牲になる、ということなのである。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ:御統麻琉(美須麻琉) データ凡例: データ最終更新日:2021-06-12 12:28:55 文字数:6957 OBC :rm1230
愛善世界社版:273頁 八幡書店版:第2輯 728頁 修補版: 校定版:289頁 普及版:121頁 初版: ページ備考:
初出[?]この文献の初出または底本となったと思われる文献です。[×閉じる]:神霊界 > 大正9年11月11日号(第131号) > 天の岩戸開〔古事記の真解〕
001 今迄(いままで)耐(こら)へに耐(こら)へておいでになつた天照(あまてらす)大御神(おほみかみ)は、002余(あま)りの事(こと)に驚(おどろ)き且(かつ)お怒(いか)り遊(あそ)ばして是(これ)ではもう堪(たま)らぬといふので、003天(あま)の岩屋戸(いはやど)を建(た)てて直様(すぐさま)その中(なか)にお入(はい)りになり、004戸(と)を堅(かた)く閉(とざ)してお籠(こも)りになつて了(しま)つた。005是(これ)も亦(また)形容(けいよう)でありまして、006小(ちひ)さく譬(たとへ)て見(み)ますれば、007この東京市(とうきやうし)は市長(しちやう)が治(をさ)めて居(を)る。008然(しか)るに到底(たうてい)私(わたくし)の力(ちから)では東京(とうきやう)は治(をさ)まらない、009仕方(しかた)がないと言(い)つて辞職(じしよく)して了(しま)ふ。010市役所(しやくしよ)に出(で)て来(こ)ない様(やう)になる。011一国(いつこく)に就(つい)て言(い)へば総理(そうり)大臣(だいじん)が私(わたくし)の力(ちから)でこの国(くに)は治(をさ)まらないからと言(い)つて辞職(じしよく)して了(しま)ふ。012一国(いつこく)にしても一市(いちし)にしても、013主宰者(しゆさいしや)が居(を)らぬでは外(ほか)の者(もの)にはどうする事(こと)も出来(でき)ないと云(い)ふ其(その)人(ひと)に辞職(じしよく)されて了(しま)うたなら其(その)国(くに)なり其(その)市(し)なりはどうでせう。014詰(つま)り此(この)只今(ただいま)でいふ辞職(じしよく)といふのが、015天(あま)の岩屋戸(いはやど)へ天照(あまてらす)大御神(おほみかみ)がお籠(こも)りになつたと同(おな)じ様(やう)なことであります。
016 『即(すなは)ち高天原(たかあまはら)皆(みな)暗(くら)く葦原(あしはら)の中津国(なかつくに)悉(ことごと)に闇(くら)し』
017 真暗闇(まつくらやみ)では何(ど)うしようにも方針(はうしん)がつかない、018葦原(あしはら)の中津国(なかつくに)の大政府(だいせいふ)が仆(たほ)れた為(ため)に其(その)所在地(しよざいち)たる高天原(たかあまはら)を初(はじ)め全国(ぜんこく)が火(ひ)の消(き)えたる如(ごと)くになつて了(しま)つた。019下(しも)の方(はう)の者(もの)では施政(しせい)の方針(はうしん)は分(わか)らない。020どうもかうも手(て)のつけ様(やう)がない。
021 『茲(ここ)に万(よろづ)の神(かみ)のおとなひは、022五月蠅(さばへ)なす皆(みな)湧(わ)き、023万(よろづ)の妖(わざはひ)悉(ことごと)に発(おこ)りき』
024 今度(こんど)はもう昼(ひる)も夜(よる)もない真暗(まつくら)がりぢや。025斯(か)うなつて来(く)ると世(よ)の中(なか)はどうなり行(ゆ)くか、026丁度(ちやうど)今日(こんにち)に就(つい)て考(かんが)へて見(み)ると面白(おもしろ)い。027政治(せいぢ)は勿論(もちろん)教育(けういく)も経済(けいざい)も、028内治(ないぢ)も外交(ぐわいかう)も滅茶(めつちや)苦茶(くちや)である。029一切(いつさい)万事(ばんじ)真暗(まつくら)がりの世(よ)になつてゐる。030どこにどうしようにも見当(けんたう)がつかない。031斯(か)うなつて来(く)ると、032此(これ)に発(はつ)して来(く)るのは各(かく)階級(かいきふ)の風俗(ふうぞく)の紊乱(びんらん)であります。033不良(ふりやう)人民(じんみん)が殖(ふ)ゑ窃盗(せつたう)が横行(わうかう)し、034強盗(がうたう)が顔(かほ)を出(だ)す、035神代(かみよ)に於(おい)ても、036万(よろづ)の妖(わざはひ)が総(すべ)ての事(こと)に、037彼方(あちら)にも此方(こちら)にも五(ご)月(ぐわつ)の蠅(はい)の如(ごと)くに発生(はつせい)して来(き)たのである。038之(これ)を天(あま)の岩屋戸(いはやど)隠(がく)れと申(まを)すのでありますけれども、039今日(こんにち)の世態(せたい)を考(かんが)へますと、040恰(あたか)も神代(かみよ)に於(お)ける岩屋戸(いはやど)の閉(た)てられた時(とき)と同(おな)じやうに思(おも)はれます。
041 『是(これ)を以(もつ)て八百万(やほよろづ)の神(かみ)』
042はどうする事(こと)も出来(でき)ないから、
043 『天(あめ)の安河原(やすかはら)に神集(かむつど)ひに集(つど)ひて』
044相談(さうだん)をなされた。045之(これ)を高天原(たかあまはら)即(すなは)ち天上(てんじやう)の議場(ぎぢやう)に集(あつ)まつたのだと云(い)ふ人(ひと)もあります。046平等(びやうどう)なる神々(かみがみ)様(さま)が、047物(もの)を洗(あら)ふ、048流(なが)すと云(い)ふ意味(いみ)の公平(こうへい)無私(むし)なる土地(とち)に集(あつ)まつたのであります。049安(やす)ということは安全(あんぜん)と云(い)ふことで、050この安(やす)らかなる地点(ちてん)即(すなは)ち風水火(ふうすゐくわ)なり饑病戦(きびやうせん)なりその他(た)総(すべ)ての禍災(くわさい)を防(ふせ)ぐことの出来(でき)る、051然(しか)も何(なん)等(ら)圧迫(あつぱく)を被(かうむ)ることのない場所(ばしよ)であります。052さうしてこの清(きよ)らかな場所(ばしよ)へは、053上下(じやうげ)貴賤(きせん)の区別(くべつ)なく総(すべ)ての人々(ひとびと)が、054国(くに)を憂(うれ)ひ、055国家(こくか)を救(すく)はなくてはならぬと云(い)ふ、056潔(きよ)らかな精神(せいしん)を以(もつ)て集(あつ)まつて来(き)たのであります。
057 『高御(たかみ)産巣日(むすび)の神(かみ)の御子(みこ)、058思兼(おもひかね)の神(かみ)に思(おも)はしめて』
059 この思兼(おもひかね)の神(かみ)は今日(こんにち)でいうと枢密院(すうみつゐん)の議長(ぎちやう)といふ様(やう)な役目(やくめ)であります。060一番(いちばん)思慮(しりよ)の深(ふか)い人(ひと)、061さうして神(かみ)の教(をしへ)を受(う)けた人(ひと)、062この人(ひと)に天(あま)の岩屋戸(いはやど)を開(ひら)き天下(てんか)を救(すく)ふべき方法(はうはふ)を尋(たづ)ねまして、063その結果(けつくわ)、
064 『常夜(とこよ)の長鳴鳥(ながなきどり)を集(つど)へて鳴(な)かしめて』
065 常夜(とこよ)といふのは常闇(とこやみ)の世(よ)の事(こと)であります。066即(すなは)ち永遠(ゑいゑん)無窮(むきう)に日月(じつげつ)と共(とも)に、067国事(こくじ)に就(つい)て憂(うれ)ひ活動(くわつどう)をして居(を)る神(かみ)、068此(これ)等(ら)の神(かみ)等(たち)を集(あつ)めて泣(な)かせるといふのは各自(めいめい)に意見(いけん)を吐(は)かせると云(い)ふ事(こと)である。069その結果(けつくわ)、
070 『天(あめ)の安(やす)の河(かは)の河上(かはかみ)の天(あま)の堅石(かたいは)を取(と)り、071天(あま)の金山(かなやま)の鉄(かね)を取(と)りて、072鍛人(かぬち)、073天津(あまつ)麻羅(まら)を求(ま)ぎて、074伊斯許理度売(いしこりどめ)の命(みこと)に科(おほ)せて鏡(かがみ)を作(つく)らしめ』
075 この堅(かた)い石(いは)を取(と)るといふことは、076皇化(くわうくわ)万世(ばんせい)動(うご)かぬ岩(いは)に松(まつ)といふ、077天(てん)から下(くだ)つた所(ところ)の教(をしへ)を取(と)るといふことである。078天(あま)の金山(かなやま)の鉄(かね)を取(と)るといふことはどちらもカネである。079鍛人(かぬち)、080これは鍛冶屋(かぢや)といふ意味(いみ)でありますけれども、081総(すべ)て世(よ)を治(をさ)めるに必要(ひつえう)なる道具(だうぐ)、082一切(いつさい)の武器(ぶき)などを拵(こしら)へたのであります。083次(つぎ)に鏡(かがみ)を造(つく)らしめる。084鏡(かがみ)は人物(じんぶつ)の反映(はんえい)である。085霊能(れいのう)の反映(はんえい)である。086故(ゆゑ)に歴代(れきだい)の天皇(てんのう)は之(これ)を御(お)祀(まつ)りになつて居(を)る。087鏡(かがみ)は皇室(くわうしつ)の宝物(ほうもつ)になつて居(を)るのであります。088鏡(かがみ)は神(かみ)であります。089さうして言霊(ことたま)であります。090言霊(ことたま)七十五(しちじふご)音(おん)を真澄(ますみ)の鏡(かがみ)と申(まを)します。091三種(さんしゆ)の神器(しんき)の一(ひとつ)を八咫(やあた)の鏡(かがみ)と申(まを)すのは即(すなは)ち七十五(しちじふご)声(せい)の言霊(ことたま)であります。092それから言霊(ことたま)が日本人(にほんじん)のは非常(ひじやう)に円満(ゑんまん)清朗(せいろう)であるといふのは、093是(これ)は日本(にほん)の国(くに)に金(きん)の徳(とく)があるからであります。094地(ち)の中(なか)に金(きん)といふものが多(おほ)い、095外国(ぐわいこく)と違(ちが)うて黄金(わうごん)の精(せい)が多(おほ)い。096故(ゆゑ)に日本人(にほんじん)の音声(おんせい)は清(きよ)いのであります。097鳴物(なりもの)でも金(きん)が入(はい)つて居(ゐ)ると善(よ)い音(ね)が出(で)ます。098金(きん)の多(おほ)いと云(い)ふ事(こと)の為(ため)に天(あま)の金山(かなやま)の鉄(かね)を取(と)りてと出(で)て居(を)るのであります。099それから伊斯許理度売(いしこりどめの)命(みこと)に鏡(かがみ)を作(つく)らしめるとは、100伊斯許理度売(いしこりどめの)命(みこと)の伊(い)は発音(はつおん)であつて、101斯許理(しこり)といふのは熱中(ねつちゆう)することで、102一生(いつしやう)懸命(けんめい)に国(くに)の為(ため)に奔走(ほんそう)する神(かみ)、103さういふ神(かみ)を寄(よ)せて言霊(ことたま)の鏡(かがみ)を作(つく)らせたのであります。104次(つぎ)に、
105 『珠(たま)を作(つく)らしめ』
106又(また)
107 『天(あま)の香山(かぐやま)の真男鹿(さをしか)』
108の角(つの)を取(と)つて占(うら)なはしめることになつた。109天(あま)の香山(かぐやま)といふのは鼻成山(はななすやま)と云(い)ふ意義(いぎ)で、110神人(しんじん)を生(い)かす山(やま)の事(こと)であります。111此(この)
112 『天(あま)の香山(かぐやま)の真男鹿(さをしか)の肩(かた)を打抜(うちぬ)きに抜(ぬ)きて』
113 さうして何(ど)ういふことをしたらよいか神勅(しんちよく)を乞(こ)はれたのであります。114今(いま)の神占(おみくじ)は殆(ほとん)どそんなことはありませぬが、115昔(むかし)は鹿(しか)の骨(ほね)を火(ひ)に焼(や)いて、116その割目(われめ)で吉凶(きちきよう)を占(うらな)うた。117実際(じつさい)八百万(やほよろづ)の神(かみ)が集(あつ)まつて、118種々(しゆじゆ)雑多(ざつた)なことをして国(くに)の為(た)めにどうしたらよいかと考(かんが)へた。119其(その)中(うち)には易(えき)を見(み)る神(かみ)もあつたので御座(ござ)います。120易(えき)を見(み)て方針(はうしん)を決(き)めたり、121其(その)他(た)いろいろに考(かんが)へ、122四方(しはう)八方(はつぱう)から考(かんが)へて行(い)つた結果(けつくわ)、123そこで初(はじ)めて、124岩屋戸(いはやど)を開(ひら)くに就(つい)ては祭典(さいてん)をして天神(てんしん)地祇(ちぎ)を祭(まつ)らなくてはいかぬといふことに決(きま)つた。125先(ま)づ、
126 『真賢木(まさかき)を、127根抜(ねこぢ)に掘(こじ)て、128上枝(ほつえ)に八咫(やさか)の勾珠(まがたま)の、129五百津(いほつ)の御統麻琉(みすまる)の玉(たま)を取(と)り著(つ)け、130中枝(なかつえ)には、131八咫鏡(やあたかがみ)を取(と)りかけ、132下枝(しづえ)に、133白(しろ)丹寸手(にぎて)、134青丹寸手(あをにぎて)を取(と)り垂(し)でて』
135 つまりこれは今日(こんにち)で言(い)ふ神楽(かぐら)であります。136伊勢(いせ)神宮(じんぐう)では昔(むかし)から十二組(じふにくみ)の大神楽(だいかぐら)がありますが、137これは岩屋戸(いはやど)開(びら)きの事(こと)をお示(しめ)しになつて居(を)るのであります。
138 前(まへ)にも申上(まをしあ)げましたやうに現代(げんだい)の世態(せたい)を考(かんが)へますると今日(こんにち)は所謂(いはゆる)世界(せかい)の大神楽(だいかぐら)を奏(そう)しなくてはならぬときであります。139あのお神楽(かぐら)のときに出(で)て参(まゐ)りまする翁獅子(おきなじし)、140あれは既(すで)に大(おほ)きなおそろしい面(つら)をした獅子(しし)を被(かぶ)つて、141刀(かたな)を口(くち)にくはへ毛(け)を下(た)らして居(を)る。142この形(かたち)は何(なん)であるか。143眼(め)は金(きん)、144鼻(はな)の孔(あな)も金(きん)、145歯(は)も金(きん)、146而(しか)も其(その)口(くち)を動(うご)かして、147本当(ほんたう)に恐(おそ)ろしいやうであるけれど、148真中(まんなか)には人(ひと)が入(はい)つて操(あやつ)つて居(を)るばかりか、149頭(あたま)の方(はう)こそ立派(りつぱ)だが後(うしろ)の方(はう)には尾(を)も何(なに)もない。150だんだらの条(すぢ)のやうなものが入(はい)つてゐる布(ぬの)に過(す)ぎない。151そこにも人(ひと)が隠(かく)れて居(ゐ)て前(まへ)の者(もの)と調子(てうし)を合(あは)せて操(あやつ)つて居(ゐ)る。152これが獅子舞(ししまひ)の真相(しんさう)であります。153所(ところ)で今日(こんにち)の世界(せかい)の外交術(ぐわいかうじゆつ)は皆(みな)この獅子舞(ししまひ)であります。154表面(へうめん)は非常(ひじやう)に大(おほ)きないはゆる獅子口(ししぐち)を開(あ)けて、155今(いま)にも噛(か)みつきさうにして、156怖(おそ)ろしいやうであるが、157中(なか)に入(はい)つて見(み)ると、158人(ひと)が獅子(しし)の口(くち)を開(あ)けて舞(ま)うてゐるのである。159ちやうど今日(こんにち)は神楽(かぐら)をあげてゐるのである。160それから大神楽(だいかぐら)のときに芸人(げいにん)が鞠(まり)を上(あ)げたり、161下(おろ)したりする。162これは霊(みたま)の上(あが)り下(さが)りを示(しめ)して居(を)るのである。163また一(いつ)尺(しやく)位(ぐらゐ)の両端(りやうたん)に布切(ぬのぎ)れの付(つ)いた妙(めう)な棒(ぼう)のやうなものを上(あ)げたり下(おろ)したりする。164これは世(よ)の中(なか)の柱(はしら)が、165上(うへ)のものは下敷(したじき)となり下(した)のものは上(うへ)になりて行(ゆ)く、166即(すなは)ち立替(たてかへ)をするといふことを示(しめ)してあるのである。167それから盆(ぼん)の上(うへ)や傘(かさ)の背(せ)に一文銭(いちもんせん)を転(ころ)がせて一生(いつしやう)懸命(けんめい)きりきり廻(まは)して居(を)る。168これは何(なに)をして居(を)るのであるかといふと、169今日(こんにち)の世(よ)の中(なか)は金融(きんゆう)が逼迫(ひつぱく)して、170一文(いちもん)の金(かね)も一生(いつしやう)懸命(けんめい)に走(はし)り廻(まは)つてゐる。171千(せん)円(ゑん)の財産(ざいさん)でもつて一万(いちまん)円(ゑん)も二万(にまん)円(ゑん)もの仕事(しごと)をしてゐる。172だから一朝(いつてう)経済界(けいざいかい)の変調(へんてう)が起(おこ)るとポツツリ運転(うんてん)が止(とま)つて了(しま)ふ。173そう云(い)ふ工合(ぐあひ)に金融(きんゆう)が切迫(せつぱく)してゐると云(い)ふ事(こと)を表(あらは)してゐる。174次(つぎ)に剣(つるぎ)の舞(まひ)をやつて居(を)る。175頭(あたま)を地(ち)につけて反(そ)り身(み)になつて一生(いつしやう)懸命(けんめい)にやつてゐる。176これはいはゆる危険(きけん)な相互(さうご)傷(きずつ)き倒(たふ)れると云(い)ふ戦争(せんそう)をして居(を)る意味(いみ)である。177それから茶碗(ちやわん)に水(みづ)をつぎ込(こ)み長(なが)い細(ほそ)い竹(たけ)の先(さき)にのせて、178下(した)から芸人(げいにん)がキリキリ廻(まは)して居(を)る。179あの通(とほ)り危(あやふ)い。180茶碗(ちやわん)が落(お)ちたらポカンと割(わ)れる。181無論(むろん)水(みづ)はこぼれる。182所(ところ)が落(お)ちないのはこのキリキリ廻(まは)して居(を)る竹(たけ)の所(ところ)が要(かなめ)であるからで、183すなはち要(かなめ)を握(にぎ)つて居(を)るからであります。184要(かなめ)と云(い)ふものは中心(ちうしん)である。185いはゆる神(かみ)であるからして引(ひ)つくり覆(かへ)らぬ。186又(また)おやまの道中(だうちう)と云(い)ふ事(こと)をやりますが神楽(かぐら)が出来(でき)て、187獅子舞(ししまひ)姿(すがた)でおやまの道中(だうちう)をして居(を)る真似(まね)をする。188ちやうど今日(こんにち)の世(よ)の中(なか)の様(やう)に男(をとこ)の頭(あたま)の上(うへ)に女(をんな)が上(あが)つて居(を)るやうな工合(ぐあひ)になつて居(を)る。189それから獅子(しし)の後持(あともち)といふのがある。190さうしておやまの道中(だうちう)には傘(がさ)をさして妙(めう)な獅子舞(ししまひ)を致(いた)しますが、191今日(こんにち)の世(よ)の中(なか)に於(お)きましても男(をとこ)が下(した)になり女(をんな)が上(うへ)になつて之(これ)を使(つか)つてるのと同(おな)じ事(こと)でありますが、192またこの獅子舞(ししまひ)は達磨(だるま)大師(だいし)の真似(まね)をして見(み)せる。193足(あし)を下(した)にして大(だい)の字(じ)になつたり、194逆様(さかさま)にひつくり返(かへ)つたりして見(み)せる。195上(うへ)になつたり下(した)になつたりキリキリ舞(まひ)をしてゐる。196後持(あともち)が大(だい)の字(じ)になつて見(み)せたり逆様(さかさま)になつて見(み)せたりする。197上(うへ)のも大(だい)の字(じ)、198中(なか)のも大(だい)の字(じ)、199あとのも大(だい)の字(じ)逆様(さかさま)ぢやと申(まを)して一生(いつしやう)懸命(けんめい)やつてゐる。200一方(いつぱう)では大神楽(だいかぐら)の親父(おやぢ)と云(い)ふのがあつて、201片方(かたはう)で芸人(げいにん)の真似(まね)をしては邪魔(じやま)をしたり、202いらぬ口(くち)を叩(たた)いたりして、203頭(あたま)をポンと敲(たた)かれたり、204突(つ)かれたりしてお客(きやく)さまを笑(わら)はせる。205笑(わら)はせる丈(だけ)ならよいが大変(たいへん)な邪魔(じやま)をする。206この親父(おやぢ)は唖(おし)や聾(つんぼ)の真似(まね)をして舞(まひ)もせずに邪魔(じやま)をする。207今日(こんにち)の世(よ)の中(なか)にもかう云(い)ふ獅子舞(ししまひ)の親父(おやぢ)がゐる。208元老(げんらう)とか何(なん)とか言(い)うて、209若(わか)い屈強(くつきやう)盛(ざか)りの者(もの)が一生(いつしやう)懸命(けんめい)に芸当(げいたう)をやつてゐる所(ところ)へ口嘴(くちばし)を出(だ)したり、210邪魔(じやま)をしたりする、211時(とき)には頭(あたま)をポンとやられる。212さうして一番(いちばん)しまひに弐(に)円(ゑん)なり五(ご)円(ゑん)なりの金(かね)をせしめる、213芸(げい)をすませて、214親父(おやぢ)はアバババと言(い)うて帰(かへ)つてしまふ。215このアバババは言霊(ことたま)から申(まを)しますと、216総(すべ)ての物(もの)の終(をは)り、217大船(おほふね)が海上(かいじやう)で沈没(ちんぼつ)をした時(とき)や、218開(あ)いた口(くち)が閉(ふさ)がらぬ様(やう)な困(こま)つて失望(しつばう)したとき、219どうもこうも出来(でき)ぬやうな苦境(くきやう)に陥(おちい)つてしまつたと云(い)ふ時(とき)の表示(へうじ)であります。220兎(と)に角(かく)、221今日(こんにち)の世(よ)の中(なか)は大神楽(だいかぐら)を廻(まは)して居(を)る時(とき)であります。222神代(かみよ)の岩戸(いはと)開(びら)きの神楽(かぐら)と、223今日(こんにち)の世(よ)の神楽(かぐら)とは余程(よほど)変(かは)つて居(を)りますけれども、224その大精神(だいせいしん)に於(おい)ては同一(どういつ)であります。
225 神楽舞(かぐらまひ)の時(とき)に囃子(はやし)が太鼓(たいこ)を打(う)つのは大砲(たいはう)や小銃弾(せうじうだん)や爆裂弾(ばくれつだん)の響(ひび)き渡(わた)る形容(けいよう)であり笛(ふえ)を吹(ふ)くのはラツパを吹(ふ)き立(た)てる形容(けいよう)であり、226銅鉢(どうばち)を左右(さいう)の手(て)に持(も)つてチヤンチヤン鳴(な)らし立(た)てるのは、227世界(せかい)が両方(りやうはう)に別(わか)れて互(たがひ)に打合(うちあ)ふといふ事(こと)の暗示(あんじ)であります。
228 そこで、
229 『天(あめ)の宇受売(うづめの)命(みこと)、230天(あま)の香山(かぐやま)の天(あま)の蘿(ひかげ)を、231手次(たすき)に繋(か)けて、232天(あめ)の真析(まさき)を鬘(かづら)として、233天(あま)の香山(かぐやま)の小竹葉(ささば)を手草(たぐさ)に結(ゆ)ひて、234天(あま)の岩屋戸(いはやど)に空槽伏(うけふ)せて』
235 いろいろの葉(は)を頭(あたま)につけたり、236葛(かづら)を襷(たすき)にかけたりして、237岩屋戸(いはやど)の前(まへ)へ行(い)つて、238起(お)きたり逆様(さかさま)になつたり、239足拍子(あしびやうし)を取(と)つてどんどんどんどんやつた。
240 『踏(ふ)み動響(とどろか)し、241神懸(かむがかり)して、242胸乳(むなちち)を掻(か)き出(い)で、243裳紐(もひも)を陰上(ほと)に押(お)し垂(た)れき』
244 岩屋戸(いはやど)を開(ひら)く為(ため)に、245宇受売(うづめ)の命(みこと)が起(お)きたり、246逆様(さかさま)になつたり、247一生(いつしやう)懸命(けんめい)に神懸(かむがか)りをやつた。248神懸(かむがか)りに就(つ)いてはここには省略(しやうりやく)する。249これはその人(ひと)一人(ひとり)の事(こと)ではありませぬ。250宇受売(うづめ)と云(い)ふのは、251女(をんな)の事(こと)を申(まを)しますが、252俗(ぞく)に男女(をとこをんな)と言(い)はれる女(をんな)であつて、253男(をとこ)のやうな強(つよ)い人(ひと)をオスメまたはオスシと言(い)ひます。254これは宇受売(うづめ)から初(はじ)まつたのである。255女(をんな)は女(をんな)らしくしなければならないので御座(ござ)いますけれども、256然(しか)し乍(なが)ら、257天(あま)の岩屋戸(いはやど)の閉(しま)つたと言(い)ふ様(やう)な国(くに)の大事(だいじ)の際(さい)には、258女(をんな)だとて女(をんな)らしくして居(ゐ)られない場合(ばあひ)があります。259男(をとこ)も女(をんな)も神(かみ)様(さま)がなされました様(やう)に一生(いつしやう)懸命(けんめい)になつて国事(こくじ)に奔走(ほんそう)せなければならぬ。260総(すべ)て女(をんな)と云(い)ふ者(もの)は人(ひと)の心(こころ)を柔(やはら)げる所(ところ)の天職(てんしよく)を有(も)つて居(を)ります。261今(いま)誰(たれ)も彼(かれ)も、262皆(みな)の者(もの)が岩戸(いはと)開(びら)きの為(ため)に心配(しんぱい)をしてゐる。263顔(かほ)をしかめて考(かんが)へ込(こ)んでゐるその際(さい)に、264宇受売(うづめの)命(みこと)、265すなはち男勝(をとこまさ)りの女(をんな)が出(で)て来(き)て、266とんだり、267跳(は)ねたり、268腹匐(はらば)うたり、269面白(おもしろ)い事(こと)をして見(み)せたり、270いはゆる国家(こくか)的(てき)大活動(だいくわつどう)をした為(ため)に、
271 『かれ高天原(たかあまはら)、272動(ゆす)りて八百万(やほよろづ)の神(かみ)、273共(とも)に咲(わら)ひき』
274 一度(いちど)にどつと笑(わら)つた。275非常(ひじやう)に元気(げんき)づいて国家(こくか)の一大(いちだい)難局(なんきよく)を談笑(だんせう)快楽(くわいらく)の中(うち)に治(をさ)めて了(しま)つたのであります。276現代(げんだい)に於(おい)ても女(をんな)の方(かた)も活動(くわつどう)して下(くだ)されまして岩屋戸(いはやど)の開(ひら)く様(やう)にせなければならぬと存(ぞん)じます。277昔(むかし)もさうでありました。
278 『ここに、279天照(あまてらす)大御神(おほみかみ)、280怪(あや)しと思(おも)ほして、281天(あま)の岩屋戸(いはやど)を細目(ほそめ)に開(ひら)きて、282内(うち)より告(の)り給(たま)へるは』
283 岩屋戸(いはやど)に隠(かく)れてゐられました大神(おほかみ)様(さま)は、284今(いま)私(わたくし)は岩屋戸(いはやど)に隠(かく)れて了(しま)つた以上(いじやう)は、285葦原(あしはら)の中(なか)つ国(くに)も、286天地(てんち)も共(とも)に真闇(まつくら)になつて、287さぞ神々(かみがみ)は困(こま)つてゐるであらう、288と思(おも)ふに何故(なにゆゑ)か岩屋戸(いはやど)の外(そと)で、289太鼓(たいこ)を打(う)つ、290鐘(かね)を叩(たた)く、291笛(ふえ)を吹(ふ)く、292どんどん足拍子(あしびやうし)がする、293宇受売(うづめ)の命(みこと)が嬉(うれ)しさうに噪(さわ)ぐ、294八百万(やほよろづ)の神(かみ)たちが一緒(いつしよ)になつてどつと笑(わら)ひ楽(あそ)ぶ。295余(あま)り不思議(ふしぎ)に思(おも)はれて中(なか)から仰(あふ)せになつた。
296 『吾(あ)が隠(かく)れますに因(よ)りて、297天(あま)の原(はら)自(おのづか)ら闇(くら)く、298葦原(あしはら)の中津国(なかつくに)も皆(みな)闇(くら)けむと思(おも)ふを、299何故(などて)天(あめの)宇受売(うづめ)は楽(あそ)びし、300亦(また)八百万(やほよろづ)の神(かみ)、301諸々(もろもろ)笑(わら)ふぞ』
302 何故(なにゆゑ)そんなにをかしいか。303すると天(あめの)宇受売(うづめの)命(みこと)が、
304 『汝(な)が命(みこと)に益(まさ)りて、305貴(たつと)き神(かみ)坐(いま)すが故(ゆゑ)に、306歓咲(ゑら)ぎ楽(あそ)ぶと申(まを)しき』
307 何(なん)でもその国(くに)に大国難(だいこくなん)が出来(でき)たときは皆(み)なの顔色(がんしよく)は変(かは)るものである。308お筆先(ふでさき)にも『信仰(しんかう)がないと正勝(まさか)のときには大方(おほかた)顔色(かほいろ)が土(つち)のやうになるぞよ』とあります。309信仰(しんかう)が出来(でき)て神諭(しんゆ)の精神(せいしん)が解(わか)り神(かみ)の御心(みこころ)に叶(かな)へばやれ来(き)たそれ来(き)たと、310勇(いさ)むで大国難(だいこくなん)を談笑(だんせう)遊楽(いうらく)の間(あひだ)に処理(しより)する事(こと)が出来(でき)るのである。311私(わたくし)は永年間(ながねんかん)御(ご)神諭(しんゆ)を拝(はい)し、312かつ御(ご)神意(しんい)を少(すこ)し許(ばか)り了解(れうかい)さして頂(いただ)いただけでも、313心中(しんちう)平素(へいそ)に安(やす)く楽(たの)しき思(おも)ひに充(み)ち、314如何(いか)なる難事(なんじ)に出会(しゆつくわい)しても左迄(さまで)難事(なんじ)とも思(おも)はず、315何事(なにごと)も神(かみ)の思召(おぼしめし)と信(しん)じて、316人力(じんりよく)のあらむ限(かぎ)りを安々(やすやす)と尽(つく)さして頂(いただ)いて居(を)ります。317凡(すべ)て事業(じげふ)は大事業(だいじげふ)だとか、318大難事(だいなんじ)だとか思(おも)ふやうでは、319回天(くわいてん)の神業(しんげふ)は勤(つと)まらない。320三千(さんぜん)世界(せかい)の立替(たてかへ)立直(たてなほ)しに対(たい)しても夫(そ)れが完成(くわんせい)は浄瑠璃(じやうるり)一切(ひとき)り稽古(けいこ)する位(くらゐ)により思(おも)つて居(を)らないのですから、321実(じつ)に平気(へいき)の平左(へいざ)で日夜(にちや)神業(しんげふ)に面白(おもしろ)く楽(たの)しく奉仕(ほうし)して居(を)ります。322然(さ)う云(い)ふ工合(ぐあひ)に、323総(すべ)ての神(かみ)様(さま)が信仰(しんかう)の下(もと)に、324喜(よろこ)び勇(いさ)んで元気(げんき)よく活動(くわつどう)されたのであります。325それで何故(なにゆゑ)、326諸々(もろもろ)笑(わら)ふぞとお尋(たづ)ねになつた。327そこで、328あなたに優(まさ)つた偉(えら)い神(かみ)様(さま)がおいでになつたから喜(よろこ)び勇(いさ)んで居(を)りますと答(こた)へられた。
329 すでにその前(まへ)に天(あめ)の児屋根(こやねの)命(みこと)、330これは祭祀(さいし)のことを掌(つかさど)つた神(かみ)様(さま)、331後(のち)には中臣(なかとみ)となつて国政(こくせい)を料理(れうり)した藤原家(ふぢはらけ)の先祖(せんぞ)であります。332この神(かみ)様(さま)がその時(とき)天神(てんしん)地祇(ちぎ)にお供(そな)へをしたり、333太玉(ふとたまの)命(みこと)が太玉串(ふとたまぐし)を奉(たてまつ)つて神勅(しんちよく)を受(う)け、334一方(いつぱう)占(うらなひ)の道(みち)によつて、335万事(ばんじ)万端(ばんたん)、336ちやんと手筈(てはづ)が整(ととの)つてあつたので御座(ござ)います。337所(ところ)へ案(あん)の如(ごと)く天照(あまてらす)大御神(おほみかみ)様(さま)は、
338 『愈(いよいよ)奇(あや)しと思(おも)ほして』
339 そつと細目(ほそめ)に戸(と)をお開(あ)けになつた。340するとそれがパツと鏡(かがみ)に映(うつ)つたので、
341 『天(あめ)の手力男(たぢからをの)神(かみ)、342其(その)手(て)を取(と)りて引(ひ)き出(だ)しまつりき』
343 其(その)間(あひだ)に布刀玉(ふとたまの)命(みこと)が注連縄(しめなは)をその後(あと)に引(ひ)き渡(わた)して、344此処(ここ)より中(うち)にはもうお入(はい)り下(くだ)さいますなと申(まを)した。345これで天地(てんち)は照明(せうめい)になつた。346この鏡(かがみ)に天照(あまてらす)大御神(おほみかみ)の御姿(みすがた)が映(うつ)つたとありますのは、347つまりは言霊(げんれい)で御座(ござ)います。348八咫(やあた)の鏡(かがみ)は今(いま)は器物(きぶつ)にして祀(まつ)られて天照(あまてらす)大御神(おほみかみ)の御(ご)神体(しんたい)でありますが、349太古(たいこ)は七十五(しちじふご)声(せい)の言霊(ことたま)であります。350各々(めいめい)に七十五(しちじふご)声(せい)を揃(そろ)へて来(き)た。351すなはち八百万(やほよろづ)の誠(まこと)の神(かみ)たちがよつて来(き)て言霊(ことたま)を上(あ)げたから岩屋戸(いはやど)が開(あ)いたのであります。352天津(あまつ)神(かみ)の霊(れい)をこめたる言霊(ことたま)によつて再(ふたた)び天上(てんじやう)天下(てんか)が明(あきら)かになつたのであります。353決(けつ)して鏡(かがみ)に映(うつ)つたから自分(じぶん)でのこのこ御(お)出(で)ましになつたと言(い)ふやうな訳(わけ)ではありませぬ。354つまり献饌(けんせん)し祝詞(のりと)を上(あ)げて鎮魂(ちんこん)帰神(きしん)の霊法(れいはふ)に合致(がつち)して、355一(ひと)つの大(おほ)きな言霊(ことたま)と為(な)して天照(あまてらす)大御神(おほみかみ)を、356見事(みごと)言霊(ことたま)にお寄(よ)せになつたのであります。357それから注連縄(しめなは)、358これは七五三(しめなは)と書(か)きます。359その通(とほ)り、360この言霊(ことたま)と云(い)ふものは総(すべ)て七五三(しちごさん)の波(なみ)を打(う)つて行(ゆ)くものであります。361さうして注連縄(しめなは)を引(ひ)き渡(わた)してもう一辺(いつぺん)岩屋戸(いはやど)が開(ひら)いた以上(いじやう)は、362再(ふたた)び此(これ)が閉(ふさ)がらぬやうにと申上(まをしあ)げた。
363 『かれ、364天照(あまてらす)大御神(おほみかみ)、365出(い)で坐(ま)せる時(とき)に、366高天原(たかあまはら)も葦原(あしはら)の中津国(なかつくに)も自(おのづか)ら照(て)り明(あか)りき』
367 言霊(ことたま)の鏡(かがみ)に天照(あまてらす)大御神(おほみかみ)の御(お)姿(すがた)が映(うつ)つて、368総(すべ)ての災禍(さいくわ)はなくなり、369愈(いよいよ)本当(ほんたう)のみろくの世(よ)に岩屋戸(いはやど)が開(あ)いたのであります。370そこで岩屋戸(いはやど)開(びら)きが立派(りつぱ)に終(をは)つて、371天地(てんち)照明(せうめい)、372万神(ばんしん)自(おのづか)ら楽(たの)しむやうになつたけれども、373今度(こんど)は岩屋戸(いはやど)を閉(し)めさせた発頭人(ほつとうにん)をどうかしなければならぬ。374天(てん)は賞罰(しやうばつ)を明(あきら)かにすとは此処(ここ)で御座(ござ)います。375が岩屋戸(いはやど)を閉(し)めたものは三(さん)人(にん)や五(ご)人(にん)ではない、376殆(ほとん)ど世界(せかい)全体(ぜんたい)の神々(かみがみ)が閉(し)めるやうにしたのである。377で岩屋戸(いはやど)が開(ひら)いたときに、378之(これ)を罰(ばつ)しないでは神(かみ)の法(ほふ)に逆(さか)らふのである。379併(しか)し罪(つみ)するとすれば総(すべ)ての者(もの)を罪(つみ)しなければならぬ。380総(すべ)てのものを罰(ばつ)するとすれば、381世界(せかい)は潰(つぶ)れて了(しま)ふ。382そこで一(ひと)つの贖罪者(とくざいしや)を立(た)てねばならぬ。383総(すべ)てのものの発頭人(ほつとうにん)である、384贖主(あがなひぬし)である。385仏教(ぶつけう)でも基督教(キリストけう)でも斯(か)う云(い)ふので御座(ござ)いますが、386とにかく他(た)の総(すべ)ての罪(つみ)ある神(かみ)は自分(じぶん)等(ら)の不善(ふぜん)なりし行動(かうどう)を顧(かへり)みず、387勿体(もつたい)なくも大神(おほかみ)の珍(うづ)の御子(みこ)なる建速(たけはや)須佐之男(すさのをの)命(みこと)御(お)一柱(ひとはしら)に罪(つみ)を負(お)はして、388鬚(ひげ)を斬(き)り、389手足(てあし)の爪(つめ)をも抜(ぬ)き取(と)りて根(ね)の堅洲国(かたすのくに)へ追(お)ひ退(の)けたのであります。390要(えう)するに大本(おほもと)の教(をしへ)は変性(へんじやう)男子(なんし)と変性(へんじやう)女子(によし)との徳(とく)を説(と)くのであります。391変性(へんじやう)男子(なんし)の役目(やくめ)と云(い)ふものは総(すべ)て世(よ)の中(なか)が治(をさ)まつたならば余(あま)り六ケ敷(むつかし)い用(よう)は無(な)い、392統治(とうぢ)さへ遊(あそ)ばしたら良(よ)いのであります。393之(これ)に反(はん)して変性(へんじやう)女子(によし)の役(やく)はこの世(よ)の続(つづ)く限(かぎ)り罪人(ざいにん)の為(た)めに何処(どこ)までも犠牲(ぎせい)になる所(ところ)の役(やく)をせねばならぬので御座(ござ)います。394岩屋戸(いはやど)開(びら)きに就(つい)てはこれからさきに申(まを)し上(あ)げますと尚(なほ)いろいろのことがありますけれども、395今日(けふ)はまづ岩屋戸(いはやど)が開(ひら)いて結末(けつまつ)がついた所(ところ)まで申上(まをしあ)げておきます。
396(大正九・一〇・一五 講演筆録)
397(大正一一・三・七 旧二・九再録 高熊山御入山二十五年記念日 松村真澄 谷村真友録)
398(昭和九・一二・九 王仁校正)
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