霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二四章 言霊(ことたま)の徳(とく)〔五二〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第12巻 霊主体従 亥の巻 篇:第3篇 天岩戸開(三) よみ(新仮名遣い):あまのいわとびらき(三)
章:第24章 言霊の徳 よみ(新仮名遣い):ことたまのとく 通し章番号:520
口述日:1922(大正11)年03月11日(旧02月13日) 口述場所: 筆録者:岩田久太郎 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年9月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
手力男神は、館の正門に厳然として現われ、敵軍の襲来を待っている。攻め寄せる軍は、天菩比命に率いられ、血染めの刀を引っさげて館に迫り来る有様は、地獄の光景のようであった。
天菩比命は手力男神を認めると、名乗りを上げた。曰く、撞の御柱神の命によって悪逆無道の素盞嗚命を征伐にやって来たのだ、という。
手力男命はにっこりとして門を左右に開け、天菩比命の軍を招きいれた。そして食事を取って休息するようにと促し、自分たちは善言美詞によって言向け和す素盞嗚命の大御心を奉戴するものである、と宣言した。そして、疑う天菩比命らに対して、用意した酒食を毒見して見せた。
なおも罠を疑う天菩比命に対して、手力男は、七十五声の言霊、善言美詞によって天地清明、天下太平にこの世を収める言霊以外に何もないことを釈明した。
そこへ高杉別がやってきて、奥殿で大神の御神慮を伺ったところ、言霊をもって荒ぶる神を言向け和すように戒めを受けた、という。そして手力男の神の先見を称えた。
天菩比命はこの有様を見てすっかり殺伐たる心を忘れてしまい、部下たちに武具を脱いで休息するようにと命じた。数多の将卒たちは武装を解いて酒食を食らい、歓喜に踊り舞った。
このとき深雪姫は兵士たちが酒を酌み交わしている宴の場に現れて、声も涼しく宣伝歌を歌った。その歌は、素盞嗚命の真意を説き、天照大御神の誤解を解くように諭していた。
天菩比命はこの歌を聞いて懺悔の念に堪えず、涙に暮れていた。そのとき、両軍の間に巨大な火光が現れ、美しい男神となった。この神は伊弉諾命の御子・日の出神であった。正邪善悪の証明のために、天教山よりお降りになったのであった。
天菩比命の復命により、いよいよ須佐之男命の麗しき御心が判明した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ:サルヂニヤ島(サルヂニヤ、一つ島) データ凡例: データ最終更新日:2020-11-12 01:04:56 文字数:2685 OBC :rm1224
愛善世界社版:199頁 八幡書店版:第2輯 699頁 修補版: 校定版:211頁 普及版:86頁 初版: ページ備考:
001 手力男(たぢからをの)神(かみ)は正門(せいもん)に現(あらは)れ、002儼然(げんぜん)として敵軍(てきぐん)の襲来(しふらい)を心待(こころまち)に待(ま)つて居(を)る。
003 天菩比(あめのほひの)命(みこと)は数多(あまた)の軍勢(ぐんぜい)を引連(ひきつ)れ、004軍卒(ぐんそつ)は手(て)に手(て)に松明(たいまつ)を持(も)ち、005四辺(あたり)に火(ひ)をつけ焼(や)き滅(ほろ)ぼしつつ進(すす)み来(く)る。006後(あと)よりは一隊(いつたい)の軍勢(ぐんぜい)、007血刀(ちがたな)を振(ふる)つて登(のぼ)り来(く)る。008その光景(くわうけい)恰(あたか)も地獄道(ぢごくだう)の如(ごと)く思(おも)はれけり。
009 菩比(ほひの)命(みこと)は門前(もんぜん)に現(あらは)れ、010手力男(たぢからをの)神(かみ)に向(むか)ひて、
011菩比(ほひの)命(みこと)『オー、012汝(なんじ)は何神(なにがみ)なるか、013速(はや)須佐之男(すさのを)の悪逆(あくぎやく)無道(ぶだう)なる邪神(じやしん)に従(したが)ふ曲津(まがつ)神(かみ)、014我(われ)は天教山(てんけうざん)に在(ま)します撞(つき)の御柱(みはしらの)神(かみ)の神命(しんめい)を奉(ほう)じ、015汝(なんぢ)等(ら)を征伐(せいばつ)せむが為(ため)に立向(たちむか)うたり。016最早(もはや)この嶋(しま)は殆(ほとん)ど焼(や)き尽(つく)し、017汝(なんぢ)等(ら)が部下(ぶか)の将卒(しやうそつ)は、018大半(たいはん)刃(やいば)の錆(さび)と消(き)え失(う)せたれば、019最早(もはや)抵抗(ていかう)するの余力(よりよく)もなかるべし。020イザ尋常(じんじやう)に此(この)門(もん)を開(ひら)き降伏(かうふく)せよ』
021と馬上(ばじやう)に跨(またが)つた儘(まま)、022威丈高(ゐたけだか)に呼(よば)はり居(を)る。023手力男(たぢからをの)神(かみ)は莞爾(くわんじ)として、024門(もん)を左右(さいう)にサツと開(ひら)き、
025手力男神『サアサア、026門(もん)は斯(かく)の如(ごと)く開放(かいはう)致(いた)しました。027何卒(なにとぞ)御(ご)自由(じいう)に御(お)這入(はい)り下(くだ)さいませ。028数多(あまた)の軍卒(ぐんそつ)等(たち)に於(おい)ても、029嘸(さぞ)お疲(つか)れで御座(ござ)いませう。030是丈(これだけ)の嶋(しま)に火(ひ)を放(はな)つて焼(や)きなさるのも並大抵(なみたいてい)の御(ご)苦労(くらう)では御座(ござ)いますまい。031御(お)蔭(かげ)でこの嶋(しま)を荒(あら)す猛獣(まうじう)毒蛇(どくじや)も殆(ほと)ンど全滅(ぜんめつ)致(いた)しました。032お腹(なか)が空(す)いたでせう、033喉(のど)がお乾(かわ)きでせう。034此処(ここ)に沢山(たくさん)の握(にぎ)り飯(めし)、035酒(さけ)も用意(ようい)がして御座(ござ)います。036何万(なんまん)人(にん)のお方(かた)が御(お)上(あが)り下(くだ)さつても恥(はぢ)を掻(か)きませぬ。037どうぞ緩(ゆる)りと御(お)上(あが)り下(くだ)さいませ。038その様(やう)に恐(こは)い顔(かほ)をして、039肩臂(かたひぢ)怒(いか)らし、040固(かた)くなつて居(を)られては御(お)肩(かた)が凝(こ)りませう。041我々(われわれ)は善言(ぜんげん)美詞(びし)の言霊(ことたま)を以(もつ)て、042直日(なほひ)に見直(みなほ)し宣(の)り直(なほ)す、043神(かむ)須佐之男(すさのをの)大神(おほかみ)の御(ご)神慮(しんりよ)を奉戴(ほうたい)するもの、044決(けつ)して決(けつ)して酒(さけ)にも飯(めし)にも毒(どく)などは入(い)れて居(を)りませぬ、045御緩(ごゆる)りとお召(め)し上(あが)り下(くだ)さいます様(やう)に』
046菩比(ほひの)命(みこと)『ヤアー、047汝(なんぢ)は百計(ひやくけい)尽(つ)き、048毒(どく)を以(もつ)て、049我(われ)等(ら)を全滅(ぜんめつ)せむとの巧(たくみ)であらう。050その手(て)は食(く)はぬぞ』
051手力男神『是(これ)は是(これ)は、052迷惑(めいわく)千万(せんばん)。053然(しか)らば手力男(たぢからを)が御(お)毒見(どくみ)を致(いた)しませう』
054と云(い)ひ乍(なが)ら、055酒樽(さかだる)に柄杓(ひしやく)を突(つ)き込(こ)み、056掬(すく)うては二三杯(にさんばい)グツと飲(の)み、057握(にぎ)り飯(めし)を矢庭(やには)に五(いつ)つ六(むつ)つ頬張(ほほば)つて見(み)せた。
058菩比命『然(しか)らば暫(しばら)く休息(きうそく)いたす。059今(いま)の間(うち)に館内(くわんない)の者(もの)共(ども)、060城(しろ)明渡(あけわた)しの準備(じゆんび)を致(いた)せ』
061手力男神『マアマア、062さう厳(きび)しく仰(あふ)せられるに及(およ)びませぬ。063同(おな)じ天地(てんち)の神(かみ)の水火(いき)より生(うま)れた人間(にんげん)同志(どうし)、064心(こころ)一(ひと)つの持様(もちやう)で敵(てき)もなければ味方(みかた)もない、065何(いづ)れも神(かみ)の水火(いき)より生(うま)れた我々(われわれ)、066天下(てんか)の喜(よろこ)びも天下(てんか)の悲(かな)しみも皆(みな)一蓮(いちれん)托生(たくしやう)で厶(ござ)る』
067菩比命『汝(なんぢ)はこの場(ば)に望(のぞ)んで気楽(きらく)千万(せんばん)な事(こと)を申(まを)す奴(やつ)、068何(なに)か深(ふか)い秘密(ひみつ)が包(つつ)まれてあるに相違(さうゐ)なからう。069左様(さやう)な事(こと)に欺(あざむ)かるる菩火(ほひ)ではないぞ』
070手力男神『手力男(たぢからを)の秘密(ひみつ)と申(まを)せば七十五(しちじふご)声(せい)の言霊(ことたま)、071美言美詞(みやび)の神嘉言(かむよごと)の威徳(ゐとく)に依(よ)つて、072天地(てんち)清明(せいめい)国土(こくど)安穏(あんをん)、073病(やまひ)無(な)く争(あらそ)ひ無(な)く、074天下(てんか)太平(たいへい)にこの世(よ)を治(をさ)める、075言霊(ことたま)の秘密(ひみつ)より外(ほか)には何物(なにもの)も御座(ござ)いませむ』
076 高杉別(たかすぎわけ)はこの場(ば)に立現(たちあらは)れ、
077高杉別『オー、078手力男(たぢからを)殿(どの)、079唯今(ただいま)奥殿(おくでん)に進(すす)み入(い)り、080深雪姫(みゆきひめ)の御前(みまへ)に致(いた)つて、081御(ご)神慮(しんりよ)を伺(うかが)ひ奉(たてまつ)るに、082瑞(みづ)の御霊(みたま)の御(おん)仰(あふ)せ、083言霊(ことたま)を以(もつ)て荒(あら)ぶる神(かみ)を言向(ことむ)け和(やは)せとの御(お)戒(いまし)め。084イヤハヤ貴神(きしん)の遣(や)り方(かた)には高杉別(たかすぎわけ)も感服(かんぷく)致(いた)した。085大国別(ひろくにわけ)様(さま)も貴神(きしん)と同様(どうやう)の御(ご)意見(いけん)で御座(ござ)る』
086手力男神『左様(さやう)で御座(ござ)らう。087オー、088菩比(ほひの)命(みこと)様(さま)、089斯(かく)の如(ごと)く当館(たうやかた)は表(おもて)は武器(ぶき)を以(もつ)て飾(かざ)り、090勇敢(ゆうかん)決死(けつし)の武士(つはもの)も数多(あまた)養(やしな)ひ居(を)れども、091御覧(ごらん)の如(ごと)く、092貴神(きしん)が獅子(しし)奮迅(ふんじん)の勢(いきほひ)を以(もつ)て、093血染(ちぞめ)焼尽(やきつく)しの攻撃軍(こうげきぐん)に向(むか)ひ、094悠揚(いうやう)せまらず御覧(ごらん)の如(ごと)く、095剣(つるぎ)は鞘(さや)に弓(ゆみ)は袋(ふくろ)に納(をさ)まり返(かへ)つた此(この)場(ば)の光景(くわうけい)、096刃(やいば)に血(ち)塗(ぬ)らずして敵(てき)を喜(よろこ)ばせ、097敵(てき)を味方(みかた)と見做(みな)して取扱(とりあつか)ふは、098仁慈(じんじ)の神(かみ)の思召(おぼしめし)よくよく大神(おほかみ)の御(ご)誠意(せいい)を御(ご)認識(にんしき)の上(うへ)、099撞(つき)の御柱(みはしら)の大神(おほかみ)に具(つぶ)さに言上(ごんじやう)あらむ事(こと)を望(のぞ)みます』
100菩比命『案(あん)に相違(さうゐ)の貴神(きしん)らの振舞(ふるまひ)、101今(いま)まで逸(はや)り切(き)つたる勇気(ゆうき)も、102何処(どこ)やらへ消(き)え失(う)せた様(やう)な心地(ここち)で御座(ござ)る。103ヤアヤア部下(ぶか)の将卒(しやうそつ)共(ども)、104菩比(ほひの)命(みこと)が命令(めいれい)だ、105直(ただ)ちに甲冑(かつちゆう)を脱(ぬ)ぎ捨(す)て、106武器(ぶき)を放(はな)し、107この場(ば)に一同(いちどう)集(あつ)まつて休息(きうそく)を致(いた)せ』
108 此(この)一言(いちごん)に、109逸(はや)り切(き)つたる数多(あまた)の将卒(しやうそつ)は、110武装(ぶさう)を解(と)き、111この場(ば)に喜々(きき)として現(あらは)れ来(きた)り、112酒(さけ)に酔(ゑ)ひ握(にぎ)り飯(めし)に腹(はら)を膨(ふく)らせ、113歓喜(くわんき)を尽(つく)して踊(をど)り舞(ま)ひ修羅(しゆら)は忽(たちま)ち天国(てんごく)と化(くわ)したり。
114 この時(とき)深雪姫(みゆきひめの)命(みこと)は大国別(ひろくにわけ)に導(みちび)かれ、115門内(もんない)の広庭(ひろには)に、116数多(あまた)の軍卒(ぐんそつ)及(およ)び部下(ぶか)将卒(しやうそつ)の他愛(たあい)もなく酒(さけ)酌(く)み交(かは)し喜(よろこ)び戯(たはむ)るる前(まへ)に現(あらは)れ、117声(こゑ)も涼(すず)しく歌(うた)ひ始(はじ)め賜(たま)ふ。
118深雪姫『コーカス山(ざん)に現(あ)れませる
119瑞(みづ)の御霊(みたま)の御言(みこと)もて
120御山(みやま)を遠(とほ)くサルヂニヤ
121この神嶋(かみしま)に現(あらは)れて
122世(よ)の有様(ありさま)を深雪姫(みゆきひめ)
123八十(やそ)の曲津(まがつ)の猛(たけ)びをば
124鎮(しづ)めむ為(ため)に言霊(ことたま)の
125珍(うづ)の息吹(いぶき)を放(はな)てども
126曇(くも)り切(き)つたる曲津見(まがつみ)の
127服(まつ)らふ由(よし)もなきままに
128神(かみ)の御霊(みたま)の現(あ)れませる
129十握(とつか)の剣(つるぎ)を数(かず)多(おほ)く
130造(つく)りそなへて世(よ)を守(まも)る
131神(かみ)の心(こころ)は徒(いたづ)らに
132剣(つるぎ)を以(もつ)て世(よ)を治(をさ)め
133弓矢(ゆみや)を以(もつ)て曲神(まがかみ)を
134言向(ことむ)け和(やは)す為(ため)ならず
135心(こころ)の霊(たま)を固(かた)めむと
136玉(たま)の剣(つるぎ)を打(う)たせつつ
137神世(かみよ)を開(ひら)く神業(かむわざ)を
138天教山(てんけうざん)に現(あ)れませる
139撞(つき)の御柱(みはしら)大神(おほかみ)は
140いよいよ怪(あや)しと思召(おぼしめ)し
141深(ふか)くも厭(いと)はせ嫌(きら)ひまし
142菩比(ほひの)命(みこと)に言任(ことま)けて
143此処(ここ)に攻(せ)め寄(よ)せ玉(たま)ひしは
144我(われ)等(ら)が心(こころ)を白波(しらなみ)の
145瀬戸(せと)の海(うみ)よりいや深(ふか)く
146疑(うたが)ひ玉(たま)ふ験(しるし)なり
147七十五(しちじふご)声(せい)の言霊(ことたま)に
148世(よ)の悉(ことごと)は何事(なにごと)も
149直日(なほひ)に見直(みなほ)し聞直(ききなほ)し
150言向(ことむけ)和(やは)し宣(の)り直(なほ)す
151誠(まこと)一(ひと)つの一(ひと)つ島(じま)
152天(あめ)の真名井(まなゐ)にふり滌(すす)ぎ
153さ嚼(がみ)に嚼(か)みて吹(ふ)き棄(す)つる
154気吹(いぶき)の狭霧(さぎり)に生(うま)れたる
155我(われ)は多紀理(たぎり)の毘売(ひめの)神(かみ)
156心(こころ)平(たひら)に安(やす)らかに
157神(かむ)須佐之男(すさのをの)大神(おほかみ)の
158赤(あか)き心(こころ)を真具(まつぶ)さに
159天(あめ)に帰(かへ)りて大神(おほかみ)の
160命(みこと)の前(まへ)に逸早(いちはや)く
161宣(の)らせたまへや菩比(ほひ)の神(かみ)
162朝日(あさひ)は照(て)るとも曇(くも)るとも
163月(つき)は盈(み)つとも虧(か)くるとも
164君(きみ)に対(たい)して村肝(むらきも)の
165穢(きたな)き心(こころ)あるべきか
166天津(あまつ)御神(みかみ)も見(み)そなはせ
167国津(くにつ)御神(みかみ)も知(し)ろしめせ
168空(そら)に輝(かがや)く朝日子(あさひこ)の
169日(ひ)の出神(でのかみ)の一(ひと)つ火(び)に
170照(てら)して神(かみ)が真心(まごころ)を
171高天原(たかあまはら)に細(こま)やかに
172宣(の)らせ玉(たま)へよ菩比(ほひ)の神(かみ)
173善(ぜん)と悪(あく)とを立別(たてわ)ける
174神(かみ)が表(おもて)に現(あらは)れて
175疑(うたが)ひ深(ふか)き空蝉(うつせみ)の
176心(こころ)の闇(やみ)の岩屋戸(いはやど)を
177開(ひら)かせ玉(たま)へスクスクに
178唯(ただ)何事(なにごと)も人(ひと)の世(よ)は
179直日(なほひ)に見直(みなほ)し聞直(ききなほ)し
180宣(の)り直(なほ)しませ天津(あまつ)神(かみ)
181御空(みそら)も清(きよ)く天照(あまて)らす
182皇(すめ)大神(おほかみ)の御(おん)前(まへ)に
183謹(つつし)み敬(うやま)ひ畏(かし)こみて
184猛(たけ)く雄々(をを)しく現(あらは)れし
185十握(とつか)の剣(つるぎ)は姫神(ひめがみ)の
186神言(みこと)の剣(つるぎ)いと清(きよ)く
187光(ひか)り輝(かがや)く神御霊(かむみたま)
188瑞(みづ)の御霊(みたま)を大神(おほかみ)の
189御前(みまへ)に捧(ささ)げ奉(たてまつ)る』
190と歌(うた)ひ了(をは)れば、191菩比(ほひの)命(みこと)は思(おも)ひ掛(がけ)無(な)きこの場(ば)の光景(くわうけい)に力(ちから)脱(ぬ)け、192懺悔(ざんげ)の念(ねん)に堪(た)へ兼(かね)て、193さしもに猛(たけ)き勇将(ゆうしやう)も、194涙(なみだ)に暮(く)るる計(ばか)りなりける。
195 忽(たちま)ち天空(てんくう)を轟(とどろ)かし、196この場(ば)に舞(ま)ひ降(くだ)る巨大(きよだい)の火光(くわくわう)、197彼我(ひが)両軍(りやうぐん)の頭上(づじやう)を、198前後(ぜんご)左右(さいう)に音響(おんきやう)をたてて廻転(くわいてん)し始(はじ)めたり。199神々(かみがみ)は一斉(いつせい)に天(てん)を仰(あふ)ぎ、200この光景(くわうけい)を見詰(みつ)めつつあつた。201火光(くわくわう)はたちまち変(へん)じて麗(うるは)しき男神(をとこがみ)となり、202空中(くうちう)に佇立(ちよりつ)して一同(いちどう)の頭上(づじやう)を瞰下(みくだ)し玉(たま)ひつつありき。
203 この神(かみ)は伊弉諾(いざなぎの)命(みこと)の珍(うづ)の御子(みこ)日(ひ)の出神(でのかみ)であつた。204正邪(せいじや)善悪(ぜんあく)の証明(あかし)の為(ため)に天教山(てんけうざん)より神勅(しんちよく)を奉(ほう)じて、205降(くだ)り玉(たま)うたのである。
206 忽(たちま)ち白煙(はくえん)となつて中空(ちうくう)に消(き)え玉(たま)ひ、207後(あと)は嚠喨(りうりやう)たる音楽(おんがく)聞(きこ)え、208次第(しだい)々々(しだい)に音楽(おんがく)の音(ね)も遠(とほ)くなり行(ゆ)きぬ。209いよいよ菩比(ほひの)命(みこと)の降臨(かうりん)によつて、210須佐之男(すさのをの)命(みこと)の麗(うるは)しき御心(みこころ)判明(はんめい)し、211命(みこと)は直(ただち)に高天原(たかあまはら)に此(この)由(よし)を復命(ふくめい)さるる事(こと)とはなりける。
212(大正一一・三・一一 旧二・一三 岩田久太郎録)
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