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霊界物語
霊主体従(第1~12巻)
第12巻(亥の巻)
序文
凡例
総説歌
第1篇 天岩戸開(一)
第1章 正神邪霊
第2章 直会宴
第3章 蚊取別
第4章 初蚊斧
第5章 初貫徹
第6章 招待
第7章 覚醒
第2篇 天岩戸開(二)
第8章 思出の歌
第9章 正夢
第10章 深夜の琴
第11章 十二支
第12章 化身
第13章 秋月滝
第14章 大蛇ケ原
第15章 宣直し
第16章 国武丸
第3篇 天岩戸開(三)
第17章 雲の戸開
第18章 水牛
第19章 呉の海原
第20章 救ひ舟
第21章 立花島
第22章 一島攻撃
第23章 短兵急
第24章 言霊の徳
第25章 琴平丸
第26章 秋月皎々
第27章 航空船
第4篇 古事記略解
第28章 三柱の貴子
第29章 子生の誓
第30章 天の岩戸
余白歌
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霊界物語
>
霊主体従(第1~12巻)
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第12巻(亥の巻)
> 第1篇 天岩戸開(一) > 第5章 初貫徹
<<< 初蚊斧
(B)
(N)
招待 >>>
第五章
初貫徹
(
はつくわんてつ
)
〔五〇一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第12巻 霊主体従 亥の巻
篇:
第1篇 天岩戸開(一)
よみ(新仮名遣い):
あまのいわとびらき(一)
章:
第5章 初貫徹
よみ(新仮名遣い):
はつかんてつ
通し章番号:
501
口述日:
1922(大正11)年03月06日(旧02月08日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年9月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
一行はイホの都の酋長・夏山彦の館にやってきた。初公は門番に到着を知らせた。早朝でなかなか門を開けようとしない門番と滑稽なやり取りをしている。
初公は門をやたらに拳で打ち始めた。もう一人の門番も起きだしてきた。初公は門を越えてひらりと中に飛びこんできた。門番は仕方なく門を開けると、そこには蚊取別ら宣伝使たちが居た。
門番は、主人の許可がなければ中へ入れられない、と言って、宣伝使たちをその場に待たせた。夏山彦は門番に伴われて門前にやってくると、蚊取別の姿を認めて、一同を丁寧に中へ迎え入れた。
門番が一同を見送ると、さっと風が吹いて雷鳴が激しく鳴り渡った。二人の門番はその場にしりもちをついて震えている。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-11-11 23:19:17
OBC :
rm1205
愛善世界社版:
39頁
八幡書店版:
第2輯 640頁
修補版:
校定版:
40頁
普及版:
16頁
初版:
ページ備考:
001
天地
(
あめつち
)
の
神
(
かみ
)
の
稜威
(
みいづ
)
も
高光彦
(
たかてるひこ
)
の
002
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
や
神直日
(
かむなほひ
)
003
玉光彦
(
たまてるひこ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
004
大海原
(
おほうなばら
)
の
国光彦
(
くにてるひこ
)
の
005
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
や
蚊取別
(
かとりわけ
)
006
初
(
はじ
)
めて
三人
(
みたり
)
、
四人
(
よつたり
)
の
007
教
(
をしへ
)
伝
(
つた
)
ふる
神司
(
かむづかさ
)
008
初公
(
はつこう
)
一人
(
ひとり
)
を
伴
(
とも
)
なひて
009
イホの
都
(
みやこ
)
と
聞
(
きこ
)
えたる
010
十握
(
とつか
)
の
剣
(
つるぎ
)
、エジプトの
011
夏山彦
(
なつやまひこ
)
の
酋長
(
しうちやう
)
が
012
館
(
やかた
)
を
指
(
さ
)
して
出
(
い
)
でて
行
(
ゆ
)
く
013
春
(
はる
)
とは
言
(
い
)
へど
天津
(
あまつ
)
日
(
ひ
)
の
014
光
(
ひかり
)
無
(
な
)
ければ
庭前
(
にはさき
)
の
015
花
(
はな
)
も
開
(
ひら
)
かず
木
(
き
)
の
緑
(
みどり
)
016
色
(
いろ
)
も
褪
(
あ
)
せたる
寂
(
さび
)
しさに
017
不安
(
ふあん
)
の
雲
(
くも
)
は
内外
(
うちそと
)
を
018
包
(
つつ
)
むが
如
(
ごと
)
く
見
(
み
)
えにけり。
019
一行
(
いつかう
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
門前
(
もんぜん
)
に
進
(
すす
)
み
来
(
き
)
たり。
020
初公
(
はつこう
)
『オイ、
021
夏山彦
(
なつやまひこ
)
の
門番
(
もんばん
)
、
022
宣伝使
(
せんでんし
)
の
御
(
お
)
出
(
い
)
でだ。
023
早
(
はや
)
く
此
(
この
)
門
(
もん
)
を
開
(
ひら
)
いて
呉
(
く
)
れ』
024
この
声
(
こゑ
)
に
門番
(
もんばん
)
は
中
(
うち
)
より、
025
門番
『
朝
(
あさ
)
早
(
はや
)
うから、
026
碌
(
ろく
)
に
夜
(
よ
)
も
明
(
あ
)
けて
居
(
を
)
らぬのに、
027
門
(
もん
)
を
開
(
ひら
)
けとは
何処
(
どこ
)
の
奴
(
やつ
)
だい。
028
規則
(
きそく
)
を
知
(
し
)
らぬか。
029
この
門
(
もん
)
は
明
(
あ
)
け
八
(
や
)
つにならぬと、
030
明
(
あ
)
けぬのだぞ』
031
初公
(
はつこう
)
『コラ、
032
寝
(
ね
)
呆
(
とぼ
)
け
奴
(
やつ
)
め、
033
明
(
あ
)
け
八
(
や
)
つと
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるか、
034
明
(
あ
)
け
六
(
む
)
つだ。
035
貴様
(
きさま
)
は
何時
(
いつ
)
も
八
(
や
)
つ
時
(
どき
)
までグウグウ
寝
(
ね
)
て
居
(
ゐ
)
るのだらう。
036
そンな
事
(
こと
)
で
門番
(
もんばん
)
が
勤
(
つと
)
まるか』
037
門番
(
もんばん
)
『
矢釜
(
やかま
)
しう
言
(
い
)
ふない。
038
俺
(
おれ
)
の
目
(
め
)
は
未
(
ま
)
だ
引
(
ひ
)
き
明
(
あ
)
けにならぬのだい』
039
初公
(
はつこう
)
『
夜
(
よ
)
が
明
(
あ
)
けて
居
(
ゐ
)
るのに、
040
グウグウ
八兵衛
(
はちべゑ
)
と
寝
(
ね
)
る
奴
(
やつ
)
があるかい』
041
門番
(
もんばん
)
『
眠
(
ねむ
)
たいから
目
(
め
)
を
明
(
あ
)
け
六
(
む
)
つかしいのだよ』
042
初公
(
はつこう
)
『
六
(
む
)
つかしい
理窟
(
りくつ
)
を
言
(
い
)
はずに
早
(
はや
)
く
開
(
あ
)
けぬかい』
043
門番
(
もんばん
)
『お
日
(
ひ
)
さまもお
上
(
あが
)
りなさらぬのに、
044
門
(
もん
)
を
開
(
あ
)
けると
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるか。
045
百
(
ひやく
)
日
(
にち
)
ばかりお
日様
(
ひさま
)
は
拝
(
をが
)
めた
事
(
こと
)
が
無
(
な
)
い。
046
日輪
(
にちりん
)
様
(
さま
)
でも
雲
(
くも
)
の
布団
(
ふとん
)
を
被
(
かぶ
)
つて
悠乎
(
ゆつくり
)
寝
(
やす
)
んで
御座
(
ござ
)
るのに、
047
人間
(
にんげん
)
がバタバタとしたつて
何
(
なん
)
になるか。
048
天地
(
てんち
)
を
以
(
もつ
)
て
教
(
をしへ
)
となし、
049
日月
(
じつげつ
)
を
以
(
もつ
)
て
経
(
きやう
)
とするのだ。
050
お
日
(
ひ
)
さまの
寝
(
やす
)
むで
御座
(
ござ
)
る
間
(
あひだ
)
は
寝
(
やす
)
むが
当然
(
あたりまへ
)
だ』
051
初公
(
はつこう
)
『エー
矢釜
(
やかま
)
しい、
052
開
(
あ
)
けぬか。
053
初
(
はつ
)
さまを
知
(
し
)
らぬか』
054
門番
(
もんばん
)
『
誰
(
たれ
)
かと
思
(
おも
)
へば
権太郎
(
ごんたらう
)
の
初公
(
はつこう
)
だな。
055
そんなら
仕方
(
しかた
)
が
無
(
な
)
い、
056
初門
(
はつもん
)
を
開
(
ひら
)
いてやらうかい』
057
初公
(
はつこう
)
『
初物
(
はつもの
)
喰
(
く
)
ふと
七十五
(
しちじふご
)
日
(
にち
)
長生
(
ながいき
)
するのだ。
058
貴様
(
きさま
)
も
果報門
(
くわはうもん
)
だ、
059
仕合
(
しあは
)
せ
門
(
もん
)
だ、
060
偉
(
えら
)
い
門
(
もん
)
だ、
061
怠
(
なま
)
けた
門
(
もん
)
だ、
062
困
(
こま
)
つた
門
(
もん
)
だ、
063
仕方
(
しかた
)
の
無
(
な
)
い
門
(
もん
)
だ、
064
土倒
(
どたふ
)
し
門
(
もん
)
だ。
065
厄介門
(
やつかいもん
)
だ』
066
門番
(
もんばん
)
『コラ
初公
(
はつこう
)
、
067
そンな
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ひよると、
068
開
(
あ
)
ける
事
(
こと
)
はやめたぞ』
069
初公
(
はつこう
)
『すつた、
070
もん
だと
小理窟
(
こりくつ
)
を
吐
(
ぬ
)
かさずに
開
(
あ
)
けれや
良
(
よ
)
し、
071
開
(
あ
)
けな
開
(
あ
)
けぬでも
良
(
よ
)
いワイ、
072
俺
(
おれ
)
が
叩
(
たた
)
き
割
(
わ
)
つて
這入
(
はい
)
つてやるわ』
073
高光彦
(
たかてるひこ
)
『コレコレ
初
(
はつ
)
さま、
074
詔
(
の
)
り
直
(
なほ
)
しだ』
075
初公
(
はつこう
)
『エー、
076
ヘー
詔
(
の
)
り
直
(
なほ
)
す
処
(
どころ
)
か、
077
グズグズ
言
(
い
)
つて
開
(
あ
)
けないなら、
078
此
(
この
)
門
(
もん
)
を
向
(
むか
)
ふへ
乗
(
の
)
り
越
(
こ
)
えて、
079
門番
(
もんばん
)
の
背中
(
せなか
)
に
馬
(
うま
)
乗
(
の
)
りとなつて、
080
ハイハイドウドウだ。
081
馬
(
うま
)
の
合
(
あ
)
うた
者
(
もの
)
同士
(
どうし
)
、
082
旅
(
たび
)
をするのは
同道
(
どうだう
)
だが、
083
馬
(
うま
)
の
合
(
あ
)
はぬ
奴
(
やつ
)
を
馬
(
うま
)
にして、
084
尻
(
しり
)
を
叩
(
たた
)
いて
堂々
(
だうだう
)
と
館
(
やかた
)
の
中
(
なか
)
へ
進入
(
しんにふ
)
するのですワ』
085
蚊取別
(
かとりわけ
)
『アハヽヽヽハア、
086
此奴
(
こいつ
)
、
087
初公
(
はつこう
)
、
088
掘出
(
ほりだ
)
し
もん
だ。
089
中々
(
なかなか
)
面白
(
おもしろ
)
い
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ひよる』
090
初公
(
はつこう
)
『
ほり
出
(
だ
)
し
もん
とは
非道
(
ひど
)
いぢやないか。
091
俺
(
おれ
)
だけ
門
(
もん
)
から
放
(
ほ
)
り
出
(
だ
)
すと
言
(
い
)
ふのか。
092
之
(
これ
)
から
初
(
はつ
)
さまが
初門
(
はつもん
)
を
開
(
ひら
)
いて
ほり
入
(
い
)
り
大根
(
だいこん
)
ぢや、
093
風呂
(
ふろ
)
吹
(
ふ
)
き
門
(
もん
)
だ』
094
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
握
(
にぎ
)
り
拳
(
こぶし
)
を
堅
(
かた
)
めて
門扉
(
もんぴ
)
を
無性
(
むしやう
)
矢鱈
(
やたら
)
に
打
(
う
)
ち
殴
(
なぐ
)
る。
095
中
(
なか
)
より
又
(
また
)
もや
一人
(
ひとり
)
の
門番
(
もんばん
)
現
(
あら
)
はれて、
096
鉄公
『オイ、
097
貫公
(
くわんこう
)
、
098
貴様
(
きさま
)
は
夜
(
よ
)
も
明
(
あ
)
けぬのに、
099
何
(
なに
)
をカンカンと
吐
(
ほざ
)
いてけつかる』
100
貫公
(
くわんこう
)
『
誰
(
たれ
)
かと
思
(
おも
)
へば
鉄
(
てつ
)
か、
101
貴様
(
きさま
)
もよう
寝
(
ね
)
る
奴
(
やつ
)
だナア。
102
然
(
しか
)
し
初公
(
はつこう
)
の
奴
(
やつ
)
めが
何
(
なん
)
だか、
103
四五
(
しご
)
人
(
にん
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
を
連
(
つ
)
れて
来
(
き
)
よつて
此
(
この
)
門
(
もん
)
を
開
(
ひら
)
けと、
104
俺
(
おれ
)
の
名
(
な
)
ぢやないが、
105
疳
声
(
かんごゑ
)
を
出
(
だ
)
しよつて、
106
門
(
もん
)
を
カンカン
叩
(
たた
)
いて
居
(
ゐ
)
よるのだ。
107
俺
(
おれ
)
は
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
つたつて
此
(
この
)
門
(
もん
)
は
開
(
あ
)
かん
開
(
あ
)
かんと
頑張
(
ぐわんば
)
つて
居
(
を
)
る
処
(
ところ
)
だ。
108
貴様
(
きさま
)
は
堅
(
かた
)
い
名
(
な
)
だから、
109
一
(
ひと
)
つ
初公
(
はつこう
)
が
門
(
もん
)
を
叩
(
たた
)
き
破
(
やぶ
)
りよつた
時
(
とき
)
には
鉄槌
(
てつつゐ
)
を
下
(
くだ
)
すか、
110
鉄拳
(
てつけん
)
を
喰
(
くら
)
はすのだよ。
111
貫
(
くわん
)
と
鉄
(
てつ
)
と
寄
(
よ
)
つて、
112
彼奴
(
あいつ
)
等
(
ら
)
の
目的
(
もくてき
)
を
貫徹
(
くわんてつ
)
ささぬ
様
(
やう
)
にするのだぞ』
113
斯
(
か
)
く
言
(
い
)
ふ
間
(
うち
)
、
114
傍
(
かたへ
)
の
塀
(
へい
)
を
乗
(
の
)
り
越
(
こ
)
えて
飛鳥
(
ひてう
)
の
如
(
ごと
)
く
初公
(
はつこう
)
は
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
むで
来
(
き
)
た。
115
初公
(
はつこう
)
『オイオイ、
116
貴様
(
きさま
)
等
(
ら
)
はよほど
意地
(
いぢ
)
の
悪
(
わる
)
い
奴
(
やつ
)
だナ、
117
何故
(
なぜ
)
開
(
あ
)
けないのか』
118
貫公
(
くわんこう
)
『ハイハイ、
119
開
(
あ
)
けます
開
(
あ
)
けます、
120
勘弁
(
かんべん
)
して
下
(
くだ
)
さい』
121
鉄公
(
てつこう
)
『
てつ
頭
(
とう
)
てつ
尾
(
び
)
誠
(
まこと
)
に
以
(
もつ
)
て
悪
(
わる
)
う
御座
(
ござ
)
いました』
122
初公
(
はつこう
)
『
早
(
はや
)
く
開
(
あ
)
けぬかい』
123
二人
(
ふたり
)
はブツブツ
小声
(
こごゑ
)
に
呟
(
つぶや
)
き
乍
(
なが
)
ら
閂
(
かんぬき
)
を
取
(
と
)
り
外
(
はづ
)
し、
124
門扉
(
もんぴ
)
を
左右
(
さいう
)
に
開
(
ひら
)
き、
125
貫公
(
くわんこう
)
『ヤ、
126
誰方
(
どなた
)
か
知
(
し
)
りませぬが、
127
門
(
もん
)
は
開
(
あ
)
けましたが
這入
(
はい
)
つて
貰
(
もら
)
ふ
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ませぬ。
128
一寸
(
ちよつと
)
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
に
伺
(
うかが
)
つて
来
(
く
)
るまで、
129
此処
(
ここ
)
に
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
て
下
(
くだ
)
さい』
130
蚊取別
(
かとりわけ
)
『
何
(
なん
)
と
念
(
ねん
)
の
入
(
い
)
つた
門番
(
もんばん
)
だナ。
131
ア、
132
仕方
(
しかた
)
がない、
133
早
(
はや
)
く
問
(
と
)
うて
来
(
き
)
てくれ。
134
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
135
而
(
しか
)
も
色
(
いろ
)
の
白
(
しろ
)
い
立派
(
りつぱ
)
な
蚊取別
(
かとりわけ
)
と
言
(
い
)
ふ
宣伝使
(
せんでんし
)
が
特
(
とく
)
に
目立
(
めだ
)
つて
御
(
ご
)
立派
(
りつぱ
)
だ、
136
面会
(
めんくわい
)
がしたいと
仰有
(
おつしや
)
るから
如何
(
どう
)
致
(
いた
)
しませうと
伺
(
うかが
)
うて
来
(
く
)
るのだぞ』
137
貫公
(
くわんこう
)
『ヨシ、
138
分
(
わか
)
つた』
139
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
尻
(
しり
)
を
振
(
ふ
)
りつつ
奥
(
おく
)
へ
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
140
貫公
(
くわんこう
)
『モシモシ
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
様
(
さま
)
、
141
ただいま
門前
(
もんぜん
)
に
宣伝使
(
せんでんし
)
が
現
(
あら
)
はれました。
142
案内教
(
あんないけう
)
だとか、
143
新内教
(
しんないけう
)
だとか、
144
金
(
かね
)
ない
教
(
けう
)
だとか、
145
穴無
(
あなな
)
い
教
(
けう
)
だとか、
146
何
(
なん
)
でもないの
付
(
つ
)
く
宣伝使
(
せんでんし
)
が、
147
しかも
四
(
し
)
人
(
にん
)
ですよ』
148
夏山彦
(
なつやまひこ
)
『
困
(
こま
)
るな、
149
死人
(
しにん
)
の
亡者
(
まうじや
)
を
俺
(
おれ
)
んとこの
門前
(
もんぜん
)
に
持
(
も
)
つて
来
(
こ
)
られては、
150
朝
(
あさ
)
つぱらから
縁起
(
えんぎ
)
が
悪
(
わる
)
い』
151
貫公
(
くわんこう
)
『
亡者
(
まうじや
)
とか
行者
(
ぎやうじや
)
とか
言
(
い
)
ふ
奴
(
やつ
)
が
門口
(
かどぐち
)
に
立
(
た
)
つて
居
(
ゐ
)
て、
152
大
(
おほ
)
きな
眼
(
め
)
を
剥
(
む
)
いた
色
(
いろ
)
の
白
(
しろ
)
い
墓取別
(
はかとりわけ
)
がやつて
来
(
き
)
ました』
153
夏山彦
(
なつやまひこ
)
『ますますもつて
怪
(
け
)
しからぬ。
154
箒
(
はうき
)
でも
持
(
も
)
つてよく
後
(
あと
)
を
清
(
きよ
)
め、
155
箱
(
はこ
)
に
入
(
い
)
れて、
156
墓
(
はか
)
へ
厚
(
あつ
)
く
葬
(
はうむ
)
つてやれ』
157
貫公
(
くわんこう
)
『それでもなかなか
強
(
つよ
)
相
(
さう
)
な
奴
(
やつ
)
で、
158
私
(
わたし
)
らの
梃子
(
てこ
)
には
合
(
あ
)
ひませぬ。
159
高張
(
たかは
)
りぢやとか、
160
火
(
ひ
)
の
玉
(
たま
)
ぢやとか、
161
国光
(
くにてる
)
ぢやとか、
162
難
(
むづ
)
かしい
名
(
な
)
のついた
亡者
(
まうじや
)
ですぜ。
163
夏山彦
(
なつやまひこ
)
に
面会
(
めんくわい
)
がしたいと、
164
ゆふ
、
165
ゆふ、
166
ゆふ
礼儀
(
れいぎ
)
知
(
し
)
らずです』
167
夏山彦
(
なつやまひこ
)
『
幽霊
(
いうれい
)
にしては
余程
(
よほど
)
しつかりした
奴
(
やつ
)
だな』
168
貫公
(
くわんこう
)
『イーエ、
169
幽霊
(
いうれい
)
どころか、
170
大変
(
たいへん
)
強
(
つよ
)
い
奴
(
やつ
)
です。
171
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
だとか
言
(
い
)
つて
門
(
もん
)
の
外
(
そと
)
に
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
様
(
さま
)
のお
許
(
ゆる
)
しを
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
るのです、
172
箒
(
はうき
)
を
持
(
も
)
つて
掃
(
は
)
き
出
(
だ
)
しませうか』
173
夏山彦
(
なつやまひこ
)
『お
前
(
まへ
)
の
言
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は、
174
何
(
なに
)
が
何
(
なん
)
だか、
175
チツトも
分
(
わか
)
らぬ。
176
鉄公
(
てつこう
)
を
呼
(
よ
)
んで
来
(
き
)
てくれ』
177
貫公
(
くわんこう
)
『
鉄
(
てつ
)
を
呼
(
よ
)
んで
来
(
く
)
れば
二人
(
ふたり
)
で
意味
(
いみ
)
が
良
(
よ
)
く
貫
(
くわん
)
てつ
致
(
いた
)
しますだらう』
178
夏山彦
(
なつやまひこ
)
『
馬鹿
(
ばか
)
』
179
貫公
(
くわんこう
)
『
何
(
なん
)
だか
手強
(
てごわ
)
い
奴
(
やつ
)
だから、
180
御
(
ご
)
主人
(
しゆじん
)
様
(
さま
)
一寸
(
ちよつと
)
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さらぬか』
181
夏山彦
『アヽ
弱
(
よわ
)
い
門番
(
もんばん
)
だ。
182
仕方
(
しかた
)
が
無
(
な
)
い、
183
行
(
い
)
つて
見
(
み
)
よう』
184
と
言
(
い
)
ひながら
衣紋
(
えもん
)
を
整
(
ととの
)
へ
悠々
(
いういう
)
として
門前
(
もんぜん
)
に
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
185
宣伝使
(
せんでんし
)
を
見
(
み
)
るより
両手
(
りやうて
)
をついて、
186
夏山彦
『ヤア、
187
貴方
(
あなた
)
は
昨夜
(
さくや
)
御
(
おん
)
目
(
め
)
に
懸
(
かか
)
つた
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
188
よう
訪
(
たづ
)
ねて
来
(
き
)
て
下
(
くだ
)
さいました。
189
貴方
(
あなた
)
のお
蔭
(
かげ
)
で
危
(
あやふ
)
い
処
(
ところ
)
を
助
(
たす
)
かりました。
190
サアどうぞ
奥
(
おく
)
へお
這入
(
はい
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
191
四
(
よ
)
人
(
にん
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は、
192
叮嚀
(
ていねい
)
に
答礼
(
たふれい
)
をしながら
夏山彦
(
なつやまひこ
)
の
案内
(
あんない
)
につれ、
193
奥深
(
おくふか
)
く
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
しける。
194
貫公
(
くわんこう
)
『
今
(
いま
)
のは
何
(
なん
)
だい。
195
内
(
うち
)
の
大将
(
たいしやう
)
奴
(
め
)
がペコペコと
恐
(
こは
)
相
(
さう
)
に
高
(
たか
)
い
頭
(
あたま
)
を
下
(
さ
)
げて
安売
(
やすうり
)
をしやがつて「サア
御
(
ご
)
案内
(
あんない
)
を
申
(
まを
)
しませう」なんて、
196
一体
(
いつたい
)
全体
(
ぜんたい
)
貫
(
くわん
)
ちやんも
勘考
(
かんかう
)
がつかなくなつて
来
(
き
)
たワイ』
197
鉄公
(
てつこう
)
『
つかん
もあるものか、
198
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
に
定
(
きま
)
つて
居
(
ゐ
)
るわ。
199
貴様
(
きさま
)
は
此処
(
ここ
)
の
主人
(
しゆじん
)
を
何
(
なん
)
と
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
る、
200
立派
(
りつぱ
)
な
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
ぢやぞ』
201
貫公
(
くわんこう
)
『
馬鹿
(
ばか
)
言
(
い
)
へ、
202
ウラル
教
(
けう
)
だよ』
203
鉄公
(
てつこう
)
『それだから
貴様
(
きさま
)
いつまでも
門番
(
もんばん
)
をさされるのだよ』
204
貫公
(
くわんこう
)
『
門番
(
もんばん
)
々々
(
もんばん
)
て
偉相
(
えらさう
)
に
言
(
い
)
ふな。
205
貴様
(
きさま
)
も
門番
(
もんばん
)
ぢやないか』
206
初公
(
はつこう
)
『アハヽヽヽヽ、
207
三五教
(
あななひけう
)
の
新
(
しん
)
宣伝使
(
せんでんし
)
、
208
初彦
(
はつひこ
)
さまとは
俺
(
おれ
)
の
事
(
こと
)
だぞ。
209
ぐづぐづ
言
(
い
)
うとウーンぢやぞ、
210
ウーンと
気張
(
きば
)
つてやらうか』
211
貫公
(
くわんこう
)
『ウーンと
気張
(
きば
)
るなンて、
212
汚
(
きたな
)
い
事
(
こと
)
を
言
(
い
)
ふな。
213
貴様
(
きさま
)
はな、
214
一
(
ひと
)
つ
奮発
(
ふんぱつ
)
せいと
言
(
い
)
へば
雪隠穴
(
せつちんあな
)
を
跨
(
また
)
げて
尻
(
しり
)
を
捲
(
まく
)
るといふ
代物
(
しろもの
)
だし、
215
ちつと
世間
(
せけん
)
を
見
(
み
)
て
来
(
こ
)
いと
言
(
い
)
へば、
216
屋根
(
やね
)
に
梯子
(
はしご
)
をさして
棟
(
むね
)
まで
上
(
あが
)
つてキリキリ
舞
(
まひ
)
をして、
217
其処
(
そこ
)
等
(
ら
)
を
口
(
くち
)
と
目
(
め
)
とを
一緒
(
いつしよ
)
に
開
(
あ
)
けて
一廉
(
いつかど
)
世間
(
せけん
)
を
見
(
み
)
た
様
(
やう
)
な
面
(
つら
)
をする
連中
(
れんちう
)
だから、
218
碌
(
ろく
)
な
事
(
こと
)
ア
言
(
い
)
やしない。
219
貴様
(
きさま
)
がウンならば
俺
(
おれ
)
はプンぢやぞ』
220
と
片足
(
かたあし
)
あげてプンとやる。
221
鉄公
(
てつこう
)
『アハヽヽヽハア、
222
「
炬燵
(
こたつ
)
から
猫
(
ねこ
)
も
呆
(
あき
)
れて
飛
(
と
)
んで
出
(
で
)
る」といふ
奴
(
やつ
)
だナ。
223
鼬
(
いたち
)
の
親方
(
おやかた
)
奴
(
め
)
が。
224
オイ、
225
サアサア、
226
するならジツとしとれ』
227
貫公
(
くわんこう
)
『
出
(
で
)
もの、
228
腫
(
は
)
れもの、
229
処
(
ところ
)
嫌
(
きら
)
はずだ。
230
平和
(
へいわ
)
文武
(
ぶんぶ
)
の
神
(
かみ
)
、
231
アー
臭
(
くさ
)
大明神
(
だいみやうじん
)
、
232
御
(
ご
)
神体
(
しんたい
)
は
風
(
かぜ
)
の
神
(
かみ
)
ぢや。
233
有難
(
ありがた
)
く
頂戴
(
ちやうだい
)
せい』
234
初公
(
はつこう
)
『ヤア、
235
貴様
(
きさま
)
の
屁放
(
へつぴ
)
り
虫
(
むし
)
にかかりあつて
居
(
ゐ
)
たので、
236
肝腎
(
かんじん
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
に
後
(
おく
)
れて
仕舞
(
しま
)
つた。
237
サア
大変
(
たいへん
)
だ』
238
と
尻
(
しり
)
ひつからげ
奥
(
おく
)
をさして
走
(
はし
)
り
行
(
ゆ
)
く。
239
二人
(
ふたり
)
の
門番
(
もんばん
)
『アヽ、
240
怪
体
(
けつたい
)
な
空
(
そら
)
ぢやないか。
241
そして
今日
(
けふ
)
はまた
怪
体
(
けつたい
)
な
日
(
ひ
)
だ。
242
日
(
ひ
)
だと
言
(
い
)
つてもお
日様
(
ひさま
)
の
姿
(
すがた
)
も
拝
(
をが
)
めないとすれば、
243
やつぱり
夜
(
よる
)
だ。
244
怪
体
(
けつたい
)
な
夜
(
よる
)
だ』
245
サツと
一陣
(
いちじん
)
の
暴風
(
ばうふう
)
吹
(
ふ
)
き
来
(
きた
)
るよと
見
(
み
)
る
間
(
ま
)
に、
246
電光
(
でんくわう
)
天
(
てん
)
に
閃
(
ひらめ
)
き、
247
雷鳴
(
らいめい
)
はげしく
轟
(
とどろ
)
き
渡
(
わた
)
り、
248
二人
(
ふたり
)
はたちまち
臍
(
へそ
)
を
押
(
おさ
)
へて
其
(
その
)
場
(
ば
)
にドツと
尻餅
(
しりもち
)
をつき、
249
ブルブル
震
(
ふる
)
え
居
(
ゐ
)
る。
250
(
大正一一・三・六
旧二・八
北村隆光
録)
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