霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第五章 初貫徹(はつくわんてつ)〔五〇一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第12巻 霊主体従 亥の巻 篇:第1篇 天岩戸開(一) よみ(新仮名遣い):あまのいわとびらき(一)
章:第5章 初貫徹 よみ(新仮名遣い):はつかんてつ 通し章番号:501
口述日:1922(大正11)年03月06日(旧02月08日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年9月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
一行はイホの都の酋長・夏山彦の館にやってきた。初公は門番に到着を知らせた。早朝でなかなか門を開けようとしない門番と滑稽なやり取りをしている。
初公は門をやたらに拳で打ち始めた。もう一人の門番も起きだしてきた。初公は門を越えてひらりと中に飛びこんできた。門番は仕方なく門を開けると、そこには蚊取別ら宣伝使たちが居た。
門番は、主人の許可がなければ中へ入れられない、と言って、宣伝使たちをその場に待たせた。夏山彦は門番に伴われて門前にやってくると、蚊取別の姿を認めて、一同を丁寧に中へ迎え入れた。
門番が一同を見送ると、さっと風が吹いて雷鳴が激しく鳴り渡った。二人の門番はその場にしりもちをついて震えている。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2026-09-19 06:45:03 文字数:3126 OBC :rm1205
愛善世界社版:39頁 八幡書店版:第2輯 640頁 修補版: 校定版:40頁 普及版:16頁 初版: ページ備考:
001天地(あめつち)の神(かみ)の稜威(みいづ)も高光彦(たかてるひこ)の
002神(かみ)の命(みこと)や神直日(かむなほひ)
003玉光彦(たまてるひこ)の宣伝使(せんでんし)
004大海原(おほうなばら)の国光彦(くにてるひこ)の
005神(かみ)の命(みこと)や蚊取別(かとりわけ)
006初(はじ)めて三人(みたり)、四人(よつたり)の
007教(をしへ)伝(つた)ふる神司(かむづかさ)
008初公(はつこう)一人(ひとり)を伴(とも)なひて
009イホの都(みやこ)と聞(きこ)えたる
010十握(とつか)の剣(つるぎ)、エジプトの
011夏山彦(なつやまひこ)の酋長(しうちやう)が
012館(やかた)を指(さ)して出(い)でて行(ゆ)く
013春(はる)とは言(い)へど天津(あまつ)日(ひ)の
014光(ひかり)無(な)ければ庭前(にはさき)の
015花(はな)も開(ひら)かず木(き)の緑(みどり)
016色(いろ)も褪(あ)せたる寂(さび)しさに
017不安(ふあん)の雲(くも)は内外(うちそと)を
018包(つつ)むが如(ごと)く見(み)えにけり。
019 一行(いつかう)五(ご)人(にん)は宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひ乍(なが)ら門前(もんぜん)に進(すす)み来(き)たり。
020初公(はつこう)『オイ、021夏山彦(なつやまひこ)の門番(もんばん)、022宣伝使(せんでんし)の御(お)出(い)でだ。023早(はや)く此(この)門(もん)を開(ひら)いて呉(く)れ』
024 この声(こゑ)に門番(もんばん)は中(うち)より、
025門番(貫公)『朝(あさ)早(はや)うから、026碌(ろく)に夜(よ)も明(あ)けて居(を)らぬのに、027門(もん)を開(ひら)けとは何処(どこ)の奴(やつ)だい。028規則(きそく)を知(し)らぬか。029この門(もん)は明(あ)け八(や)つにならぬと、030明(あ)けぬのだぞ』
031初公(はつこう)『コラ、032寝(ね)呆(とぼ)け奴(やつ)め、033明(あ)け八(や)つと言(い)ふ事(こと)があるか、034明(あ)け六(む)つだ。035貴様(きさま)は何時(いつ)も八(や)つ時(どき)までグウグウ寝(ね)て居(ゐ)るのだらう。036そンな事(こと)で門番(もんばん)が勤(つと)まるか』
037門番(もんばん)(貫公)『矢釜(やかま)しう言(い)ふない。038俺(おれ)の目(め)は未(ま)だ引(ひ)き明(あ)けにならぬのだい』
039初公(はつこう)『夜(よ)が明(あ)けて居(ゐ)るのに、040グウグウ八兵衛(はちべゑ)と寝(ね)る奴(やつ)があるかい』
041門番(もんばん)(貫公)『眠(ねむ)たいから目(め)を明(あ)け六(む)つかしいのだよ』
042初公(はつこう)『六(む)つかしい理窟(りくつ)を言(い)はずに早(はや)く開(あ)けぬかい』
043門番(もんばん)(貫公)『お日(ひ)さまもお上(あが)りなさらぬのに、044門(もん)を開(あ)けると言(い)ふ事(こと)があるか。045百(ひやく)日(にち)ばかりお日様(ひさま)は拝(をが)めた事(こと)が無(な)い。046日輪(にちりん)様(さま)でも雲(くも)の布団(ふとん)を被(かぶ)つて悠乎(ゆつくり)寝(やす)んで御座(ござ)るのに、047人間(にんげん)がバタバタとしたつて何(なん)になるか。048天地(てんち)を以(もつ)て教(をしへ)となし、049日月(じつげつ)を以(もつ)て経(きやう)とするのだ。050お日(ひ)さまの寝(やす)むで御座(ござ)る間(あひだ)は寝(やす)むが当然(あたりまへ)だ』
051初公(はつこう)『エー矢釜(やかま)しい、052開(あ)けぬか。053初(はつ)さまを知(し)らぬか』
054門番(もんばん)(貫公)『誰(たれ)かと思(おも)へば権太郎(ごんたらう)の初公(はつこう)だな。055そんなら仕方(しかた)が無(な)い、056初門(はつもん)を開(ひら)いてやらうかい』
057初公(はつこう)『初物(はつもの)喰(く)ふと七十五(しちじふご)日(にち)長生(ながいき)するのだ。058貴様(きさま)も果報門(くわはうもん)だ、059仕合(しあは)せ門(もん)だ、060偉(えら)い門(もん)だ、061怠(なま)けた門(もん)だ、062困(こま)つた門(もん)だ、063仕方(しかた)の無(な)い門(もん)だ、064土倒(どたふ)し門(もん)だ。065厄介門(やつかいもん)だ』
066門番(もんばん)(貫公)『コラ初公(はつこう)、067そンな事(こと)を言(い)ひよると、068開(あ)ける事(こと)はやめたぞ』
069初公(はつこう)『すつた、070もんだと小理窟(こりくつ)を吐(ぬ)かさずに開(あ)けれや良(よ)し、071開(あ)けな開(あ)けぬでも良(よ)いワイ、072俺(おれ)が叩(たた)き割(わ)つて這入(はい)つてやるわ』
073高光彦(たかてるひこ)『コレコレ初(はつ)さま、074詔(の)り直(なほ)しだ』
075初公(はつこう)『エー、076ヘー詔(の)り直(なほ)す処(どころ)か、077グズグズ言(い)つて開(あ)けないなら、078此(この)門(もん)を向(むか)ふへ乗(の)り越(こ)えて、079門番(もんばん)の背中(せなか)に馬(うま)乗(の)りとなつて、080ハイハイドウドウだ。081馬(うま)の合(あ)うた者(もの)同士(どうし)、082旅(たび)をするのは同道(どうだう)だが、083馬(うま)の合(あ)はぬ奴(やつ)を馬(うま)にして、084尻(しり)を叩(たた)いて堂々(だうだう)と館(やかた)の中(なか)へ進入(しんにふ)するのですワ』
085蚊取別(かとりわけ)『アハヽヽヽハア、086此奴(こいつ)、087初公(はつこう)、088掘出(ほりだ)しもんだ。089中々(なかなか)面白(おもしろ)い事(こと)を言(い)ひよる』
090初公(はつこう)『ほり出(だ)しもんとは非道(ひど)いぢやないか。091俺(おれ)だけ門(もん)から放(ほ)り出(だ)すと言(い)ふのか。092之(これ)から初(はつ)さまが初門(はつもん)を開(ひら)いてほり入(い)り大根(だいこん)ぢや、093風呂(ふろ)吹(ふ)き門(もん)だ』
094と言(い)ひ乍(なが)ら握(にぎ)り拳(こぶし)を堅(かた)めて門扉(もんぴ)を無性(むしやう)矢鱈(やたら)に打(う)ち殴(なぐ)る。095中(なか)より又(また)もや一人(ひとり)の門番(もんばん)現(あら)はれて、
096鉄公『オイ、097貫公(くわんこう)、098貴様(きさま)は夜(よ)も明(あ)けぬのに、099何(なに)をカンカンと吐(ほざ)いてけつかる』
100貫公(くわんこう)『誰(たれ)かと思(おも)へば鉄(てつ)か、101貴様(きさま)もよう寝(ね)る奴(やつ)だナア。102然(しか)し初公(はつこう)の奴(やつ)めが何(なん)だか、103四五(しご)人(にん)の宣伝使(せんでんし)を連(つ)れて来(き)よつて此(この)門(もん)を開(ひら)けと、104俺(おれ)の名(な)ぢやないが、105疳声(かんごゑ)を出(だ)しよつて、106門(もん)をカンカン叩(たた)いて居(ゐ)よるのだ。107俺(おれ)は何(なん)と言(い)つたつて此(この)門(もん)は開(あ)かん開(あ)かんと頑張(ぐわんば)つて居(を)る処(ところ)だ。108貴様(きさま)は堅(かた)い名(な)だから、109一(ひと)つ初公(はつこう)が門(もん)を叩(たた)き破(やぶ)りよつた時(とき)には鉄槌(てつつゐ)を下(くだ)すか、110鉄拳(てつけん)を喰(くら)はすのだよ。111貫(くわん)と鉄(てつ)と寄(よ)つて、112彼奴(あいつ)等(ら)の目的(もくてき)を貫徹(くわんてつ)ささぬ様(やう)にするのだぞ』
113 斯(か)く言(い)ふ間(うち)、114傍(かたへ)の塀(へい)を乗(の)り越(こ)えて飛鳥(ひてう)の如(ごと)く初公(はつこう)は飛(と)び込(こ)むで来(き)た。
115初公(はつこう)『オイオイ、116貴様(きさま)等(ら)はよほど意地(いぢ)の悪(わる)い奴(やつ)だナ、117何故(なぜ)開(あ)けないのか』
118貫公(くわんこう)『ハイハイ、119開(あ)けます開(あ)けます、120勘弁(かんべん)して下(くだ)さい』
121鉄公(てつこう)『てつ頭(とう)てつ尾(び)誠(まこと)に以(もつ)て悪(わる)う御座(ござ)いました』
122初公(はつこう)『早(はや)く開(あ)けぬかい』
123 二人(ふたり)はブツブツ小声(こごゑ)に呟(つぶや)き乍(なが)ら閂(かんぬき)を取(と)り外(はづ)し、124門扉(もんぴ)を左右(さいう)に開(ひら)き、
125貫公(くわんこう)『ヤ、126誰方(どなた)か知(し)りませぬが、127門(もん)は開(あ)けましたが這入(はい)つて貰(もら)ふ事(こと)は出来(でき)ませぬ。128一寸(ちよつと)御(ご)主人(しゆじん)に伺(うかが)つて来(く)るまで、129此処(ここ)に待(ま)つて居(ゐ)て下(くだ)さい』
130蚊取別(かとりわけ)『何(なん)と念(ねん)の入(い)つた門番(もんばん)だナ。131ア、132仕方(しかた)がない、133早(はや)く問(と)うて来(き)てくれ。134三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)、135而(しか)も色(いろ)の白(しろ)い立派(りつぱ)な蚊取別(かとりわけ)と言(い)ふ宣伝使(せんでんし)が特(とく)に目立(めだ)つて御(ご)立派(りつぱ)だ、136面会(めんくわい)がしたいと仰有(おつしや)るから如何(どう)致(いた)しませうと伺(うかが)うて来(く)るのだぞ』
137貫公(くわんこう)『ヨシ、138分(わか)つた』
139と言(い)ひ乍(なが)ら尻(しり)を振(ふ)りつつ奥(おく)へ進(すす)み入(い)る。
140貫公(くわんこう)『モシモシ御(ご)主人(しゆじん)様(さま)、141ただいま門前(もんぜん)に宣伝使(せんでんし)が現(あら)はれました。142案内教(あんないけう)だとか、143新内教(しんないけう)だとか、144金(かね)ない教(けう)だとか、145穴無(あなな)い教(けう)だとか、146何(なん)でもないの付(つ)く宣伝使(せんでんし)が、147しかも四(し)人(にん)ですよ』
148夏山彦(なつやまひこ)『困(こま)るな、149死人(しにん)の亡者(まうじや)を俺(おれ)んとこの門前(もんぜん)に持(も)つて来(こ)られては、150朝(あさ)つぱらから縁起(えんぎ)が悪(わる)い』
151貫公(くわんこう)『亡者(まうじや)とか行者(ぎやうじや)とか言(い)ふ奴(やつ)が門口(かどぐち)に立(た)つて居(ゐ)て、152大(おほ)きな眼(め)を剥(む)いた色(いろ)の白(しろ)い墓取別(はかとりわけ)がやつて来(き)ました』
153夏山彦(なつやまひこ)『ますますもつて怪(け)しからぬ。154箒(はうき)でも持(も)つてよく後(あと)を清(きよ)め、155箱(はこ)に入(い)れて、156墓(はか)へ厚(あつ)く葬(はうむ)つてやれ』
157貫公(くわんこう)『それでもなかなか強(つよ)相(さう)な奴(やつ)で、158私(わたし)らの梃子(てこ)には合(あ)ひませぬ。159高張(たかは)りぢやとか、160火(ひ)の玉(たま)ぢやとか、161国光(くにてる)ぢやとか、162難(むづ)かしい名(な)のついた亡者(まうじや)ですぜ。163夏山彦(なつやまひこ)に面会(めんくわい)がしたいと、164ゆふ、165ゆふ、166ゆふ礼儀(れいぎ)知(し)らずです』
167夏山彦(なつやまひこ)『幽霊(いうれい)にしては余程(よほど)しつかりした奴(やつ)だな』
168貫公(くわんこう)『イーエ、169幽霊(いうれい)どころか、170大変(たいへん)強(つよ)い奴(やつ)です。171三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)だとか言(い)つて門(もん)の外(そと)に御(ご)主人(しゆじん)様(さま)のお許(ゆる)しを待(ま)つて居(ゐ)るのです、172箒(はうき)を持(も)つて掃(は)き出(だ)しませうか』
173夏山彦(なつやまひこ)『お前(まへ)の言(い)ふ事(こと)は、174何(なに)が何(なん)だか、175チツトも分(わか)らぬ。176鉄公(てつこう)を呼(よ)んで来(き)てくれ』
177貫公(くわんこう)『鉄(てつ)を呼(よ)んで来(く)れば二人(ふたり)で意味(いみ)が良(よ)く貫(くわん)てつ致(いた)しますだらう』
178夏山彦(なつやまひこ)『馬鹿(ばか)』
179貫公(くわんこう)『何(なん)だか手強(てごわ)い奴(やつ)だから、180御(ご)主人(しゆじん)様(さま)一寸(ちよつと)来(き)て下(くだ)さらぬか』
181夏山彦『アヽ弱(よわ)い門番(もんばん)だ。182仕方(しかた)が無(な)い、183行(い)つて見(み)よう』
184と言(い)ひながら衣紋(えもん)を整(ととの)へ悠々(いういう)として門前(もんぜん)に現(あら)はれ来(きた)り、185宣伝使(せんでんし)を見(み)るより両手(りやうて)をついて、
186夏山彦『ヤア、187貴方(あなた)は昨夜(さくや)御(おん)目(め)に懸(かか)つた宣伝使(せんでんし)様(さま)、188よう訪(たづ)ねて来(き)て下(くだ)さいました。189貴方(あなた)のお蔭(かげ)で危(あやふ)い処(ところ)を助(たす)かりました。190サアどうぞ奥(おく)へお這入(はい)り下(くだ)さいませ』
191 四(よ)人(にん)の宣伝使(せんでんし)は、192叮嚀(ていねい)に答礼(たふれい)をしながら夏山彦(なつやまひこ)の案内(あんない)につれ、193奥深(おくふか)く姿(すがた)を隠(かく)しける。
194貫公(くわんこう)『今(いま)のは何(なん)だい。195内(うち)の大将(たいしやう)奴(め)がペコペコと恐(こは)相(さう)に高(たか)い頭(あたま)を下(さ)げて安売(やすうり)をしやがつて「サア御(ご)案内(あんない)を申(まを)しませう」なんて、196一体(いつたい)全体(ぜんたい)貫(くわん)ちやんも勘考(かんかう)がつかなくなつて来(き)たワイ』
197鉄公(てつこう)『つかんもあるものか、198三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)に定(きま)つて居(ゐ)るわ。199貴様(きさま)は此処(ここ)の主人(しゆじん)を何(なん)と思(おも)つて居(ゐ)る、200立派(りつぱ)な三五教(あななひけう)の信者(しんじや)ぢやぞ』
201貫公(くわんこう)『馬鹿(ばか)言(い)へ、202ウラル教(けう)だよ』
203鉄公(てつこう)『それだから貴様(きさま)いつまでも門番(もんばん)をさされるのだよ』
204貫公(くわんこう)『門番(もんばん)々々(もんばん)て偉相(えらさう)に言(い)ふな。205貴様(きさま)も門番(もんばん)ぢやないか』
206初公(はつこう)『アハヽヽヽヽ、207三五教(あななひけう)の新(しん)宣伝使(せんでんし)、208初彦(はつひこ)さまとは俺(おれ)の事(こと)だぞ。209ぐづぐづ言(い)うとウーンぢやぞ、210ウーンと気張(きば)つてやらうか』
211貫公(くわんこう)『ウーンと気張(きば)るなンて、212汚(きたな)い事(こと)を言(い)ふな。213貴様(きさま)はな、214一(ひと)つ奮発(ふんぱつ)せいと言(い)へば雪隠穴(せつちんあな)を跨(また)げて尻(しり)を捲(まく)るといふ代物(しろもの)だし、215ちつと世間(せけん)を見(み)て来(こ)いと言(い)へば、216屋根(やね)に梯子(はしご)をさして棟(むね)まで上(あが)つてキリキリ舞(まひ)をして、217其処(そこ)等(ら)を口(くち)と目(め)とを一緒(いつしよ)に開(あ)けて一廉(いつかど)世間(せけん)を見(み)た様(やう)な面(つら)をする連中(れんちう)だから、218碌(ろく)な事(こと)ア言(い)やしない。219貴様(きさま)がウンならば俺(おれ)はプンぢやぞ』
220と片足(かたあし)あげてプンとやる。
221鉄公(てつこう)『アハヽヽヽハア、222「炬燵(こたつ)から猫(ねこ)も呆(あき)れて飛(と)んで出(で)る」といふ奴(やつ)だナ。223鼬(いたち)の親方(おやかた)奴(め)が。224オイ、225サアサア、226するならジツとしとれ』
227貫公(くわんこう)『出(で)もの、228腫(は)れもの、229処(ところ)嫌(きら)はずだ。230平和(へいわ)文武(ぶんぶ)の神(かみ)、231アー臭(くさ)大明神(だいみやうじん)、232御(ご)神体(しんたい)は風(かぜ)の神(かみ)ぢや。233有難(ありがた)く頂戴(ちやうだい)せい』
234初公(はつこう)『ヤア、235貴様(きさま)の屁放(へつぴ)り虫(むし)にかかりあつて居(ゐ)たので、236肝腎(かんじん)の宣伝使(せんでんし)に後(おく)れて仕舞(しま)つた。237サア大変(たいへん)だ』
238と尻(しり)ひつからげ奥(おく)をさして走(はし)り行(ゆ)く。
239二人(ふたり)の門番(もんばん)『アヽ、240怪体(けつたい)な空(そら)ぢやないか。241そして今日(けふ)はまた怪体(けつたい)な日(ひ)だ。242日(ひ)だと言(い)つてもお日様(ひさま)の姿(すがた)も拝(をが)めないとすれば、243やつぱり夜(よる)だ。244怪体(けつたい)な夜(よる)だ』
245 サツと一陣(いちじん)の暴風(ばうふう)吹(ふ)き来(きた)るよと見(み)る間(ま)に、246電光(でんくわう)天(てん)に閃(ひらめ)き、247雷鳴(らいめい)はげしく轟(とどろ)き渡(わた)り、248二人(ふたり)はたちまち臍(へそ)を押(おさ)へて其(その)場(ば)にドツと尻餅(しりもち)をつき、249ブルブル震(ふる)え居(ゐ)る。
250(大正一一・三・六 旧二・八 北村隆光録)
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