霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一五章 宣直(のりなほ)し〔五一一〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第12巻 霊主体従 亥の巻 篇:第2篇 天岩戸開(二) よみ(新仮名遣い):あまのいわとびらき(二)
章:第15章 宣直し よみ(新仮名遣い):のりなおし 通し章番号:511
口述日:1922(大正11)年03月10日(旧02月12日) 口述場所: 筆録者:松村仙造 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年9月30日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
一行は、次に深雪の滝を言向け和そうと進んで行くが、その途上、蚊取別は祝姫に、引き返して今後は夏山彦を補佐するように、と諭した。
祝姫は宣伝の旅に執着を示すが、蚊取別の説得を最後に承諾すると、どこからともなく大火光が現れて、蚊取別・祝姫の姿は消えてしまった。
夫婦、親子、主従となるべき身魂は、もとは一定不変である。しかし世の中の事情で、不相応の身魂同士の婚姻や主従関係ができることがある。それはうまくいかないものである。
蚊取別は、祝姫がそういう間違った相手との婚姻を成さないように、仮の夫婦になって守っていたのであった。
身魂不相応により、最初の相手と死別や離別しなければならなくなったとき、二回目の相手と結婚することができる。しかし、三度目はもうしてはならないのが、神界の不文律である。
残された一同は、蚊取別の神慮・神力に感嘆し、これから大蛇の滝を征服しようとする自分たちの使命の重みに、自らの身を振り返った。そして、実は悪魔は自分の心に潜んでいるのであり、これを追い出してこそ悪魔の征服ができるのだと悟るに到った。
一同は端座して天津祝詞を唱え、宣伝歌を高唱した。言霊の剣を穏やかに使い、心の中の醜の霊を追い出すように、と歌った。
すると暗黒に閉ざされていた天地は夜が明けたように日が輝き、騒然たる瀑布の音は止み、猛獣の叫び声も止まった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-11-12 00:45:01 文字数:3968 OBC :rm1215
愛善世界社版:124頁 八幡書店版:第2輯 671頁 修補版: 校定版:130頁 普及版:53頁 初版: ページ備考:
001峰(みね)の嵐(あらし)や松風(まつかぜ)の音(おと)
002高熊山(たかくまやま)の岩(いは)の前(まへ)
003霊(れい)より覚(さ)めし瑞月(ずゐげつ)は
004神(かみ)の使(つかひ)に十四夜(いざよひ)の
005御空(みそら)を仰(あふ)ぎ眺(なが)むれば
006星(ほし)の瞬(またた)きやうやうに
007霞(かす)みて月(つき)も弥仙山(みせんざん)
008峰(みね)の後(うしろ)にかくろひて
009鶏鳴(けいめい)間(ま)もなき朝嵐(あさあらし)
010冷(つめ)たき風(かぜ)に吹(ふ)かれつつ
011又(また)もや霊(みたま)は悠々(いういう)と
012果(はて)しもあらぬ神界(しんかい)の
013方(かた)へと息(いき)せき進(すす)み行(ゆ)く
014水音(みなおと)高(たか)きナイル河(がは)
015春(はる)の初(はじめ)と言(い)ひ乍(なが)ら
016名(な)は秋月(あきづき)の大瀑布(だいばくふ)
017八岐(やまた)大蛇(をろち)の片割(かたわれ)なる
018醜(しこ)の大蛇(をろち)を言向(ことむ)けて
019此(この)世(よ)の曲(まが)を祝姫(はふりひめ)
020蚊取(かとり)の別(わけ)や三光(さんくわう)の
021神(かみ)の使(つか)ひの宣伝使(せんでんし)
022高熊(たかくま)ならぬ高光彦(たかてるひこ)
023神(かみ)の霊(みたま)の玉光彦(たまてるひこ)
024御稜威(みいづ)も高(たか)き国光彦(くにてるひこ)
025風(かぜ)にちらつく行平別(ゆきひらわけ)の
026茲(ここ)に六人(むたり)の神司(かむづかさ)
027深雪(みゆき)の滝(たき)の曲神(まがかみ)を
028善言(みやび)美詞(ことば)の神言(かみごと)に
029吹(ふ)き払(はら)はむと進(すす)み行(ゆ)く
030夢(ゆめ)の中(なか)なる物語(ものがたり)。
031行平別(ゆきひらわけ)『サア今度(こんど)は深雪(みゆき)の滝(たき)だ。032皆(みな)さま一緒(いつしよ)に前後(ぜんご)左右(さいう)より言霊(ことたま)を以(もつ)て攻(せ)め掛(かけ)ませうか、033また秋月(あきづき)の滝(たき)の様(やう)に私(わたし)一(いち)人(にん)に一任(いちにん)されては困(こま)りますよ』
034蚊取別(かとりわけ)『イヤ、035深雪(みゆき)の滝(たき)は一人(ひとり)で結構(けつこう)だ。036行平別(ゆきひらわけ)の宣伝使(せんでんし)に頼(たの)むでおかう。037祝姫(はふりひめ)さま、038あなたの弔(とむら)ひ合戦(がつせん)も是(これ)で帳消(ちやうけし)だ。039今後(こんご)は夏山彦(なつやまひこ)の奥(おく)さまだから、040今迄(いままで)の様(やう)に天下(てんか)を自由(じいう)自在(じざい)に濶歩(くわつぽ)する事(こと)は出来(でき)ない。041夫唱(ふしやう)婦随(ふずゐ)の天則(てんそく)に従(したが)つて家庭(かてい)を守(まも)らねばならぬ。042人(ひと)は一代(いちだい)名(な)は末代(まつだい)、043夏山彦(なつやまひこ)の奥(おく)さまは、044秋月(あきづき)の滝(たき)の悪魔(あくま)を退治(たいぢ)に往(い)つて悪神(あくがみ)の為(ため)に苦(くるし)められ、045大失敗(だいしつぱい)を演(えん)じ、046夏山彦(なつやまひこ)に助(たす)けられ、047その情(なさけ)に絆(ほだ)されて夫婦(ふうふ)になつた、048宣伝使(せんでんし)を失敗(しくじ)つた、049有終(いうしう)の美(び)を全(まつた)うする事(こと)が出来(でき)なかつたと、050末代(まつだい)の語草(かたりぐさ)になつては詰(つま)らないから結婚(けつこん)をされた後(あと)ではあれども、051宣伝使(せんでんし)の務(つと)めを全(まつた)うさせたい為(ため)に、052秋月(あきづき)の滝(たき)にあなたを連(つ)れて来(き)たのだ。053最早(もはや)秋月(あきづき)の滝(たき)の征服(せいふく)も無事(ぶじ)に片付(かたづ)いた以上(いじやう)は、054宣伝使(せんでんし)としての責任(せきにん)も、055完全(くわんぜん)に果(はた)されたと云(い)ふものだ。056サア是(これ)から夏山彦(なつやまひこ)の館(やかた)に帰(かへ)り、057賢妻(けんさい)良母(りやうぼ)となつて、058イホの都(みやこ)に善政(ぜんせい)を布(し)く夫(をつと)の神業(しんげふ)を内助(ないじよ)するのだ。059最早(もはや)宣伝使(せんでんし)の役(やく)も神界(しんかい)より免除(めんぢよ)された。060サアサア早(はや)く還(かへ)りませう』
061祝姫(はふりひめ)『折角(せつかく)秋月(あきづき)の滝(たき)迄(まで)来(き)たのですから、062モウ私(わたくし)も宣伝使(せんでんし)の年(ねん)の明(あき)、063花々(はなばな)しく残(のこ)りの滝(たき)の魔神(まがみ)を征伐(せいばつ)する迄(まで)待(ま)つて下(くだ)さいますまいか』
064蚊取別(かとりわけ)『それはいけませぬ、065何事(なにごと)も八分(はちぶ)といふ所(ところ)が良(よ)いのだ。066十分(じふぶん)手柄(てがら)をしてやらうと思(おも)へば、067却(かへつ)て失敗(しつぱい)の基(もと)となる。068たとへ失敗(しつぱい)せずとも、069白瀬川(しらせがは)の悪魔(あくま)は全部(ぜんぶ)我々(われわれ)が征服(せいふく)したのだと云(い)ふ慢心(まんしん)が起(おこ)るから其(その)慢心(まんしん)が貴女(あなた)の婦徳(ふとく)を傷(きず)つける基(もと)となるから、070これで打切(うちきり)にするが宜(よろ)しい』
071行平別(ゆきひらわけ)『さうだなア、072蚊取別(かとりわけ)の仰有(おつしや)る通(とほ)りだ。073祝姫(はふりひめ)さま、074此(この)方(かた)は斯(こ)う見(み)えても、075普通(あたりまへ)の宣伝使(せんでんし)ではない、076天教山(てんけうざん)より現(あら)はれたる尊(たふと)い天使(てんし)に間違(まちがひ)ない、077天使(てんし)の命令(めいれい)だ。078素直(すなほ)にお聞(きき)なさるが良(よ)からう』
079祝姫(はふりひめ)『アヽ仕方(しかた)がありませぬ、080今迄(いままで)は山野(さんや)河海(かかい)を跋渉(ばつせふ)し、081種々(いろいろ)の苦心(くしん)惨怛(さんたん)たる辛(つら)い目(め)も味(あぢ)はひ、082また愉快(ゆくわい)な事(こと)にも会(あ)つて来(き)ましたが、083今日(けふ)から最早(もはや)宣伝使(せんでんし)が出来(でき)ないかと思(おも)へば何(なん)だか心残(こころのこ)りがある様(やう)です。084矢張(やつぱ)り妾(わたし)は温(あたたか)き家庭(かてい)に蟄居(ちつきよ)して安楽(あんらく)に暮(くら)すよりも、085貴神(あなた)方(がた)と共(とも)に命懸(いのちがけ)の苦労(くらう)をする方(はう)が、086何程(なにほど)愉快(ゆくわい)だか分(わか)りませぬ。087アヽどうして男(をとこ)に生(うま)れて来(こ)なかつただらう』
088蚊取別(かとりわけ)『執着心(しふちやくしん)をサラリと抛(ほ)つて、089夏山彦(なつやまひこ)の奥様(おくさま)となり、090三五教(あななひけう)の神(かみ)を尊敬(そんけい)し、091且(かつ)その教(をしへ)を管轄下(くわんかつか)の人民(じんみん)に懇切(こんせつ)に説(と)き諭(さと)して神業(しんげふ)を助(たす)けなさい。092サア私(わたくし)が送(おく)つて上(あ)げませう。093目(め)を塞(ふさ)ぎなさい、094途中(とちう)に目(め)を開(あ)けると大変(たいへん)ですから、095蚊取別(かとりわけ)がサア目(め)を開(あ)けなさいと云(い)ふ迄(まで)開(あ)けてはなりませぬよ』
096祝姫(はふりひめ)『ハイ』
097と答(こた)へて従順(すなを)に瞑目(めいもく)する。098この時(とき)何処(どこ)ともなく四辺(あたり)を照(てら)す大火光(だいくわくわう)が現(あら)はれ来(き)たり、099一行(いつかう)の頭上(づじやう)を四五回(しごくわい)ブウブウと音(おと)を立(た)てて循環(じゆんかん)し、100轟然(がうぜん)たる大音響(だいおんきやう)と共(とも)に、101白煙(はくえん)となつて消(き)え失(う)せた。102見(み)れば蚊取別(かとりわけ)、103祝姫(はふりひめ)の姿(すがた)は最早(もはや)この場(ば)に見(み)えずなりにける。
 
104附言(ふげん)
105 夫婦(ふうふ)となるべき霊(みたま)、106親子(おやこ)となるべき霊魂(みたま)、107主従(しうじう)師弟(してい)となるべき身魂(みたま)は、108固(もと)より一定(いつてい)不変(ふへん)のものである。109併(しか)し乍(なが)ら世(よ)の中(なか)の義理(ぎり)とか、110何(なん)とか種々(いろいろ)の事情(じじやう)の為(ため)に已(や)むを得(え)ず、111不相応(ふさうおう)の身魂(みたま)と結婚(けつこん)をしたり、112師弟(してい)の約(やく)を結(むす)んだりする事(こと)がある。113但(ただ)し霊(みたま)と霊(みたま)との因縁(いんねん)なき時(とき)は、114中途(ちうと)にして破(やぶ)れるものである。115蚊取別(かとりわけ)の天使(てんし)は、116祝姫(はふりひめ)の霊(みたま)の夫婦(ふうふ)に巡(めぐ)り会(あ)ふまで、117他(た)の異(ことな)りたる霊(みたま)と結婚(けつこん)をなし、118天分(てんぶん)使命(しめい)を中途(ちうと)にして過(あやま)たむ事(こと)を恐(おそ)れ、119種々(いろいろ)と工夫(くふう)を凝(こ)らし、120一旦(いつたん)自分(じぶん)の妻神(つまがみ)と名付(なづ)け、121時機(じき)の来(く)るのを待(ま)たせつつあつたのは、122神(かみ)の大慈(だいじ)大悲(だいひ)の御(ご)守護(しゆご)であつた。123故(ゆゑ)に人(ひと)は結婚(けつこん)に先立(さきだ)ち、124産土(うぶすな)の神(かみ)の認許(にんきよ)を受(う)け神示(しんじ)を蒙(かうむ)つた上(うへ)にて結婚(けつこん)せざれば、125地位(ちゐ)財産(ざいさん)名望(めいばう)義理(ぎり)人情(にんじやう)恋愛(れんあい)等(とう)の体主(たいしゆ)霊従(れいじう)的(てき)境遇(きやうぐう)に支配(しはい)されて、126一生(いつしやう)不愉快(ふゆくわい)なる夫婦(ふうふ)の生涯(しやうがい)を送(おく)る様(やう)な事(こと)が出来(でき)てはならぬから、127人倫(じんりん)の大本(たいほん)たる夫婦(ふうふ)の道(みち)は、128神(かみ)の許(ゆる)しを受(う)け、129妄(みだ)りに軽々(かるがる)しく結婚(けつこん)してはならないものである。130中(なか)には二度目(にどめ)の妻(つま)、131所謂(いはゆる)二世(にせい)の妻(つま)を持(も)たねばならぬ様(やう)な場合(ばあひ)があるが、132これは第一世(だいいつせい)の妻(つま)と霊(れい)が合(あ)はなかつたり、133或(あるひ)は合(あ)つてゐても肉体(にくたい)が霊(れい)に添(そ)はずして、134夭死(えうし)したりするものである。135併(しか)し乍(なが)ら愛情(あいじやう)と言(い)ひ、136家庭(かてい)の切廻(きりまは)しと云(い)ひ、137どうしても第一世(だいいつせい)の妻(つま)に比(くら)ぶれば、138第二世(だいにせい)の妻(つま)は劣(おと)つて居(ゐ)るものである。139要(えう)するに、140二世(にせい)の妻(つま)は、141妻(つま)といふ名(な)はあつても、142大抵(たいてい)は一世(いつせい)の妻(つま)の代理(だいり)たるべき者(もの)であるからである。143また中(なか)には第一世(だいいつせい)の妻(つま)より二世(にせい)の妻(つま)の方(はう)が、144何(なに)かに付(つ)けて優(まさ)つたのもある。145それは第一世(だいいつせい)の妻(つま)は夫婦(ふうふ)の霊(れい)が合(あ)うて居(ゐ)なかつたので、146第二世(だいにせい)の妻(つま)が本当(ほんたう)の霊(れい)の合(あ)うた夫婦(ふうふ)の場合(ばあひ)である。147二回(にくわい)とも霊(れい)の合(あ)はぬ夫婦(ふうふ)となり、148中途(ちうと)にしてどちらかが欠(か)げ、149第三回(だいさんくわい)目(め)に霊(れい)の合(あ)うた者(もの)が発見(はつけん)されても、150最早(もはや)三世(さんせい)の妻(つま)は持(も)つ事(こと)が出来(でき)ないのが、151神界(しんかい)の不文律(ふぶんりつ)である。
152 祝姫(はふりひめ)も斯(かか)る過失(あやまち)に陥(おちい)らざる様(やう)と蚊取別(かとりわけ)の天使(てんし)は、153今日(こんにち)まで姫(ひめ)の身辺(しんぺん)を保護(ほご)すべく夫婦(ふうふ)の名(な)を附(ふ)して居(ゐ)たのである。
 
154 蚊取別(かとりわけ)祝姫(はふりひめ)は、155白煙(はくえん)となつて此(この)場(ば)に姿(すがた)を隠(かく)した跡(あと)に四(よ)人(にん)は茫然(ばうぜん)として白煙(はくえん)立上(たちあが)る雲(くも)の彼方(あなた)を見(み)て、156感歎(かんたん)稍(やや)久(ひさ)しうし、
157高光彦(たかてるひこ)『ヤア今(いま)まで蚊取別(かとりわけ)の宣伝使(せんでんし)は変(かは)つた人(ひと)だと思(おも)つて居(ゐ)たが、158神(かみ)様(さま)と云(い)ふものは実(じつ)に何処(どこ)までも行届(ゆきとど)いたものだナア。159唯(ただ)一人(ひとり)の祝姫(はふりひめ)の一生(いつしやう)を守(まも)るべく、160種々(いろいろ)の手段(しゆだん)を以(もつ)て操縦(さうじう)された其(その)御(ご)神業(しんげふ)、161小(ちひ)さい事(こと)にも大(おほ)きい事(こと)にも気(き)のつくものだ。162我々(われわれ)も細心(さいしん)の注意(ちうい)を払(はら)つて世(よ)の中(なか)に立(た)たねばならぬ。163况(ま)して今日(こんにち)の如(ごと)き常暗(とこやみ)の世(よ)の中(なか)に、164蚊取別(かとりわけ)の様(やう)な人(ひと)は目薬(めぐすり)にしたいと思(おも)つてもあるものでない。165サア之(これ)から我々(われわれ)も知(し)らず知(し)らずの慢心(まんしん)を省(かへり)みて本当(ほんたう)の神心(かみごころ)にならねば、166五(いつ)つの滝(たき)の曲神(まがかみ)を征服(せいふく)どころか却(かへつ)て征服(せいふく)されて了(しま)はねばならぬ。167アー何(なん)だか蚊取別(かとりわけ)さまの帰(かへ)られた後(あと)は、168鳥(とり)も通(かよ)はぬ離島(はなれじま)に唯(ただ)一人(ひとり)棄(す)てられた様(やう)な心持(こころもち)になつて来(き)た』
169玉光彦(たまてるひこ)『さうですナ、170各自(めいめい)に腹帯(はらおび)を締(し)めて掛(かか)らねばなりませぬ。171人(ひと)は背水(はいすゐ)の陣(ぢん)を張(は)らねば何事(なにごと)も成功(せいこう)しませぬ。172勇断(ゆうだん)果決(くわけつ)、173獅子(しし)奮迅(ふんじん)の勢(いきほひ)を以(もつ)て、174先(ま)づ自分(じぶん)の霊(れい)に憑依(ひようい)せる悪魔(あくま)を追出(おひだ)し、175清浄(せいじやう)潔白(けつぱく)の霊(れい)になつた上(うへ)悪魔(あくま)を征服(せいふく)する資格(しかく)が初(はじめ)て出来(でき)るのだ。176大瀑布(だいばくふ)に悪魔(あくま)が居(ゐ)ると思(おも)へば、177豈(あに)図(はか)らむや、178自分(じぶん)の心(こころ)の奥(おく)に白瀬川(しらせがは)の大瀑布(だいばくふ)が懸(かか)り、179そこに大蛇(をろち)の悪魔(あくま)が巣(す)ぐうて居(を)るのだ。180身外(しんぐわい)の敵(てき)は容易(ようい)に征服(せいふく)出来(でき)るが心内(しんない)の敵(てき)は退治(たいぢ)が出来(でき)難(にく)い。181先(ま)づ深雪(みゆき)の滝(たき)の悪魔(あくま)に突撃(とつげき)するまでに、182各自(めいめい)の悪魔(あくま)を征服(せいふく)し、183或(あるひ)は帰順(きじゆん)せしめて後(のち)に掛(かか)りませうか』
184高光彦(たかてるひこ)『アーさうだ。185悪魔(あくま)に対(むか)ふのは、186恰度(ちやうど)的(まと)に向(むか)つて弓(ゆみ)を射(い)る様(やう)なものだ。187弓(ゆみ)を射(い)る者(もの)は其(その)身(み)を正(ただ)しうして、188一分(いちぶ)一厘(いちりん)の隙間(すきま)もなく、189阿吽(あうん)の呼吸(いき)の合(あ)つた時(とき)始(はじ)めて、190弓(ゆみ)を満月(まんげつ)の如(ごと)くに引絞(ひきしぼ)り、191私(わたくし)の心(こころ)を加(くは)へず秋(あき)の木(こ)の葉(は)の風(かぜ)もなきに、192自然(しぜん)に落(お)つるが如(ごと)き無我(むが)無心(むしん)の境(きやう)に入(い)りて、193自然(しぜん)に矢(や)が弦(つる)を離(はな)れる。194さすれば其(その)矢(や)は的(まと)の中心(ちうしん)に当(あた)る様(やう)なものだ。195先(ま)づ己(おのれ)の霊(れい)を正(ただ)しうするのが肝腎(かんじん)だ』
196国光彦(くにてるひこ)『敵(てき)は本能寺(ほんのうじ)にあり、197我(わが)身(み)の敵(てき)は我(わが)心(こころ)に潜(ひそ)む。198心(こころ)の敵(てき)を滅(ほろぼ)せば、199如何(いか)に常暗(とこやみ)の世(よ)の中(なか)とは云(い)へ、200我(われ)に取(と)りては悪魔(あくま)も大蛇(をろち)もナイル河(がは)、201尊(たふと)き神代(かみよ)を深雪(みゆき)の滝(たき)、202速河(はやかは)の瀬(せ)に失(さすら)ひ流(なが)す、203神司(かむつかさ)麻柱(あななひ)の宣伝使(せんでんし)、204深雪(みゆき)の滝(たき)に向(むか)ふに先立(さきだ)ちて先(ま)づ自己(じこ)の霊(れい)の洗濯(せんたく)にかかりませう』
205行平別(ゆきひらわけ)『アヽ、206万寿山(まんじゆざん)の御(ご)兄弟(きやうだい)の深刻(しんこく)なるお話(はなし)に依(よ)りて、207私(わたくし)の心(こころ)の岩戸(いはと)も、208サラリと開(ひら)けました。209アレ御覧(ごらん)なさいませ、210天津(あまつ)御空(みそら)には喜悦(よろこび)の太陽(たいやう)晃々(くわうくわう)として輝(かがや)き始(はじ)めました。211これ果(はた)して何(なん)の祥瑞(しやうずゐ)でせうか』
212高光彦(たかてるひこ)『世(よ)の中(なか)に鬼(おに)も大蛇(をろち)も悪魔(あくま)も有(あ)るものでない、213ある様(やう)に見(み)えるのだ。214各自(めいめい)の心(こころ)に誠(まこと)の日月(じつげつ)が照(て)り輝(かがや)き、215神(かみ)の慈愛(じあい)の心(こころ)の鏡(かがみ)に映(うつ)つたならば、216天地(てんち)清明(せいめい)安養(あんやう)浄土(じやうど)、217サアサア皆(みな)さま、218打揃(うちそろ)うて天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)致(いた)しませう』
219 四(よ)人(にん)は茲(ここ)に端坐(たんざ)し、220天津(あまつ)祝詞(のりと)を奏上(そうじやう)し終(をは)つて宣伝歌(せんでんか)を高唱(かうしやう)する。
221三光、行平別『神(かみ)が表(おもて)に現(あら)はれて
222善(ぜん)と悪(あく)とを立別(たてわ)ける
223善悪(ぜんあく)不二(ふじ)の神(かみ)の道(みち)
224善(ぜん)を思(おも)へば善(ぜん)となり
225悪(あく)を思(おも)へば悪(あく)となる
226舌(した)の剣(つるぎ)の切先(きつさき)に
227鬼(おに)も悪魔(あくま)も曲霊(まがつひ)も
228先(さき)を争(あらそ)ひ出(い)で来(きた)る
229この世(よ)曇(くも)るも舌(した)の為(ため)
230争(あらそ)ひ起(おこ)るも舌(した)のため
231敵(てき)に悩(なや)むも舌(した)のため
232この世(よ)を照(てら)すも舌(した)の為(ため)
233人(ひと)を救(すく)ふも舌(した)のため
234天国(てんごく)浄土(じやうど)も舌(した)の為(ため)
235地獄(ぢごく)極楽(ごくらく)舌(した)のため
236世(よ)のことごとは押並(おしな)べて
237舌(した)の毒(どく)より湧(わ)き出(い)づる
238舌(した)の奥(おく)には心(こころ)あり
239鬼(おに)が出(い)づるも心(こころ)から
240大蛇(をろち)探女(さぐめ)も心(こころ)から
241神(かみ)も仏(ほとけ)も心(こころ)から
242心(こころ)の持様(もちやう)唯(ただ)一(ひと)つ
243心(こころ)に花(はな)の開(ひら)くとき
244天地(あめつち)四方(よも)に花(はな)開(ひら)く
245心(こころ)に凩(こがらし)荒(すさ)ぶとき
246世界(せかい)に凩(こがらし)吹(ふ)きまくる
247人(ひと)を殺(ころ)すも村肝(むらきも)の
248心(こころ)の呼吸(いき)の舌(した)の先(さき)
249人(ひと)を救(すく)ふも舌(した)の先(さき)
250神(かみ)となるのも舌(した)の先(さき)
251鬼(おに)となるのも舌(した)の先(さき)
252人(ひと)は第一(だいいち)言霊(ことたま)の
253天(あま)の瓊矛(ぬぼこ)と称(たた)へたる
254舌(した)の剣(つるぎ)を慎(つつし)みて
255慈愛(じあい)の鞘(さや)によく納(をさ)め
256妄(みだ)りに抜(ぬ)くな放(はな)つなよ
257善言(ぜんげん)美詞(びし)の神嘉言(かむよごと)
258使(つか)ふは舌(した)の役目(やくめ)ぞや
259善言(ぜんげん)美詞(びし)は天地(あめつち)の
260醜(しこ)の悪魔(あくま)を吹(ふ)き払(はら)ふ
261生言霊(いくことたま)の剣(つるぎ)ぞや
262アヽ惟神(かむながら)々々(かむながら)
263霊(たま)幸倍(ちはへ)坐世(ませ)言霊(ことたま)の
264舌(した)の剣(つるぎ)を穏(おだや)かに
265使(つか)はせ給(たま)へ天津(あまつ)神(かみ)
266国津(くにつ)神(かみ)たち百(もも)の神(かみ)
267神代(かみよ)を開(ひら)く言霊(ことたま)の
268清(きよ)き御水火(みいき)に曲津見(まがつみ)の
269醜(しこ)の霊(みたま)は消(き)え失(う)せむ
270此(この)世(よ)を造(つく)りし神直日(かむなほひ)
271心(こころ)も広(ひろ)き大直日(おほなほひ)
272唯(ただ)何事(なにごと)も人(ひと)の世(よ)は
273直日(なほひ)に見直(みなほ)せ聞直(ききなほ)せ
274身(み)の過(あやま)ちは詔(の)り直(なほ)せ』
275と歌(うた)ひ終(をは)るや、276百(ひやく)日(にち)百夜(ひやくや)暗黒(あんこく)に鎖(とざ)されたる天地(てんち)は、277茲(ここ)に豁然(かつぜん)として夜(よ)の明(あ)けたる如(ごと)く、278日(ひ)は晃々(くわうくわう)として天(てん)に輝(かがや)き、279今迄(いままで)騒然(さうぜん)たる瀑布(ばくふ)の響(ひびき)はピタリと止(と)まり、280虎(とら)狼(おほかみ)獅子(しし)大蛇(をろち)鬼(おに)の叫(さけ)びも瞬(またた)く間(うち)、281若葉(わかば)を渡(わた)る春風(しゆんぷう)の響(ひびき)とこそはなりにける。
282(大正一一・三・一〇 旧二・一二 松村真澄録)
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