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霊界物語
霊主体従(第1~12巻)
第12巻(亥の巻)
序文
凡例
総説歌
第1篇 天岩戸開(一)
第1章 正神邪霊
第2章 直会宴
第3章 蚊取別
第4章 初蚊斧
第5章 初貫徹
第6章 招待
第7章 覚醒
第2篇 天岩戸開(二)
第8章 思出の歌
第9章 正夢
第10章 深夜の琴
第11章 十二支
第12章 化身
第13章 秋月滝
第14章 大蛇ケ原
第15章 宣直し
第16章 国武丸
第3篇 天岩戸開(三)
第17章 雲の戸開
第18章 水牛
第19章 呉の海原
第20章 救ひ舟
第21章 立花島
第22章 一島攻撃
第23章 短兵急
第24章 言霊の徳
第25章 琴平丸
第26章 秋月皎々
第27章 航空船
第4篇 古事記略解
第28章 三柱の貴子
第29章 子生の誓
第30章 天の岩戸
余白歌
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霊界物語
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第12巻(亥の巻)
> 第2篇 天岩戸開(二) > 第9章 正夢
<<< 思出の歌
(B)
(N)
深夜の琴 >>>
第九章
正夢
(
まさゆめ
)
〔五〇五〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第12巻 霊主体従 亥の巻
篇:
第2篇 天岩戸開(二)
よみ(新仮名遣い):
あまのいわとびらき(二)
章:
第9章 正夢
よみ(新仮名遣い):
まさゆめ
通し章番号:
505
口述日:
1922(大正11)年03月09日(旧02月11日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年9月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
高光彦、玉光彦、国光彦の三兄弟は、イホの都にほどちかい森の祠で、三五教の酋長の夏山彦や春彦と、人民たちの争いを目にした。
そこに現れた蚊取別が、暴れる初公を帰順させ、一行は大蛇の滝へと進むうち、睡魔に襲われて寝込んでしまっていたのであった。
蚊取別は起き上がり、日の出神の諭しを受けて、大蛇の背から振り落とされそうになった恐ろしい夢を語り、自らの慢心を戒めた。不思議にも、三兄弟や初公も同じ夢を見ていた。
そこへ酋長の夏山彦の一隊がやってきて、宣伝使たちを認めると、丁重に館に迎え入れた。
初公は、自分の全身は聖地エルサレムの行成彦の従神・行平別命であると明かして、大音声で酋長の館に進み入る。
宣伝使一行も館に迎え入れられるが、そこへ一弦琴の音が響いてくる。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
徹公(鉄公)
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-11-12 00:33:45
OBC :
rm1209
愛善世界社版:
73頁
八幡書店版:
第2輯 652頁
修補版:
校定版:
76頁
普及版:
31頁
初版:
ページ備考:
001
常夜
(
とこよ
)
ゆく
暗
(
やみ
)
を
晴
(
は
)
らして
皇神
(
すめかみ
)
の
002
珍
(
うづ
)
の
御子
(
みこ
)
たち
助
(
たす
)
けむと
003
稜威
(
みいづ
)
も
高
(
たか
)
き
高光彦
(
たかてるひこ
)
や
004
神
(
かみ
)
より
受
(
う
)
けし
伊都能売
(
いづのめ
)
の
005
玉光彦
(
たまてるひこ
)
の
玉
(
たま
)
も
照
(
て
)
り
006
大海原
(
おほうなばら
)
に
漂
(
ただよ
)
ひて
007
海月
(
くらげ
)
なす
国光彦
(
くにてるひこ
)
の
008
みづの
身魂
(
みたま
)
の
三柱
(
みはしら
)
は
009
イホの
都
(
みやこ
)
の
町
(
まち
)
はづれ
010
老樹
(
らうじゆ
)
茂
(
しげ
)
れる
森
(
もり
)
の
下
(
した
)
011
露
(
つゆ
)
を
厭
(
いと
)
ひて
仮枕
(
かりまくら
)
012
国魂神
(
くにたまがみ
)
を
祀
(
まつ
)
りたる
013
祠
(
ほこら
)
の
後
(
うしろ
)
に
身
(
み
)
を
隠
(
かく
)
し
014
まどろむ
折
(
をり
)
しも
何処
(
どこ
)
よりか
015
集
(
あつ
)
まり
来
(
きた
)
る
人
(
ひと
)
の
影
(
かげ
)
016
神灯
(
みあかし
)
神酒
(
みき
)
を
奉
(
たてまつ
)
り
017
常夜
(
とこよ
)
の
様
(
さま
)
を
歎
(
なげ
)
きたる
018
イホの
都
(
みやこ
)
の
酋長
(
しうちやう
)
が
019
世人
(
よびと
)
助
(
たす
)
くる
手段
(
てだて
)
さへ
020
夏山彦
(
なつやまひこ
)
の
神司
(
かむづかさ
)
021
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
太祝詞
(
ふとのりと
)
022
唱
(
とな
)
ふる
声
(
こゑ
)
もいと
清
(
きよ
)
く
023
心
(
こころ
)
の
闇
(
やみ
)
も
春公
(
はるこう
)
の
024
倉
(
くら
)
あけ
渡
(
わた
)
し
食物
(
おしもの
)
を
025
神
(
かみ
)
に
誓
(
ちか
)
ひて
夫
(
そ
)
れぞれに
026
配
(
まくば
)
り
与
(
あた
)
へ
饑渇
(
うゑかわ
)
き
027
救
(
すく
)
ふはいとど
易
(
やす
)
けれど
028
霊
(
みたま
)
の
餌
(
ゑば
)
と
充
(
あ
)
つるべき
029
教
(
をしへ
)
の
餌
(
ゑば
)
に
苦
(
くるし
)
みつ
030
神
(
かみ
)
の
御前
(
みまへ
)
に
諸人
(
もろびと
)
を
031
集
(
あつ
)
めて
諭
(
さと
)
す
神
(
かみ
)
の
教
(
のり
)
032
食物
(
をしもの
)
着物
(
きもの
)
住
(
す
)
む
家
(
いへ
)
と
033
酒
(
さけ
)
より
外
(
ほか
)
に
心
(
こころ
)
なき
034
醜
(
しこ
)
の
身魂
(
みたま
)
を
如何
(
いか
)
にして
035
神
(
かみ
)
を
敬
(
うやま
)
ひ
長上
(
ちやうじやう
)
に
036
尊
(
たふと
)
び
仕
(
つか
)
へ
真心
(
まごころ
)
の
037
本霊
(
もとつみたま
)
にことごとく
038
立直
(
たてなほ
)
さしめ
天地
(
あめつち
)
の
039
神
(
かみ
)
の
御子
(
みこ
)
たる
務
(
つとめ
)
をば
040
各
(
おの
)
も
各
(
おの
)
もに
尽
(
つく
)
させて
041
神
(
かみ
)
の
怒
(
いかり
)
も
淡雪
(
あはゆき
)
の
042
溶
(
と
)
けて
嬉
(
うれ
)
しき
春
(
はる
)
の
日
(
ひ
)
の
043
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
き
匂
(
にほ
)
ひ
百鳥
(
ももどり
)
の
044
歌
(
うた
)
ふ
嬉
(
うれ
)
しき
神
(
かみ
)
の
代
(
よ
)
の
045
日月
(
じつげつ
)
空
(
そら
)
に
輝
(
かがや
)
きて
046
鬼
(
おに
)
も
探女
(
さぐめ
)
もナイル
河
(
がは
)
047
滝
(
たき
)
に
洗
(
あら
)
ひしその
如
(
ごと
)
く
048
清
(
きよ
)
めむものと
酋長
(
しうちやう
)
が
049
心筑紫
(
こころつくし
)
の
白瀬川
(
しらせがは
)
050
世人
(
よびと
)
を
思
(
おも
)
ふ
真心
(
まごころ
)
の
051
涙
(
なみだ
)
は
滝
(
たき
)
の
如
(
ごと
)
くなり
052
夢
(
ゆめ
)
か
現
(
うつつ
)
蚊取別
(
かとりわ
)
けて
053
言霊
(
ことたま
)
清
(
きよ
)
き
宣伝歌
(
せんでんか
)
054
暗
(
やみ
)
を
透
(
すか
)
して
鳴
(
な
)
り
渡
(
わた
)
る
055
時
(
とき
)
しもあれや
初公
(
はつこう
)
が
056
醜
(
しこ
)
の
雄健
(
をたけ
)
び
踏
(
ふみ
)
たけび
057
狂
(
くる
)
ふ
折
(
をり
)
しも
宣伝使
(
せんでんし
)
058
双手
(
もろて
)
を
組
(
く
)
みし
言霊
(
ことたま
)
の
059
其
(
その
)
一声
(
ひとこゑ
)
に
肝
(
きも
)
打
(
う
)
たれ
060
魂
(
たま
)
研
(
みが
)
かれて
各
(
おのおの
)
が
061
恵
(
めぐ
)
みも
深
(
ふか
)
き
皇神
(
すめかみ
)
の
062
心
(
こころ
)
を
悟
(
さと
)
り
服従
(
まつろ
)
ひし
063
その
嬉
(
うれ
)
しさに
胸
(
むね
)
躍
(
をど
)
り
064
心
(
こころ
)
勇
(
いさ
)
みて
四柱
(
よはしら
)
の
065
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
066
初
(
はじ
)
めて
会
(
あ
)
ひし
初公
(
はつこう
)
を
067
伴
(
ともな
)
ひ
進
(
すす
)
む
闇
(
やみ
)
の
路
(
みち
)
068
四方
(
よも
)
に
塞
(
ふさ
)
がる
村雲
(
むらくも
)
の
069
空
(
そら
)
も
愈
(
いよいよ
)
春公
(
はるこう
)
や
070
青葉
(
あをば
)
も
茂
(
しげ
)
る
夏山彦
(
なつやまひこ
)
の
071
館
(
やかた
)
を
指
(
さ
)
して
出
(
いで
)
て
行
(
ゆ
)
く
072
途中
(
とちう
)
睡気
(
ねむけ
)
を
催
(
もよほ
)
して
073
ここに
五
(
ご
)
人
(
にん
)
の
一行
(
いつかう
)
は
074
露
(
つゆ
)
をも
置
(
お
)
かぬ
草
(
くさ
)
の
上
(
うへ
)
075
腰
(
こし
)
打掛
(
うちか
)
けて
憩
(
いこ
)
ふうち
076
何時
(
いつ
)
か
睡魔
(
すゐま
)
に
襲
(
おそ
)
はれて
077
脆
(
もろ
)
くも
此処
(
ここ
)
に
横
(
よこた
)
はり
078
夜
(
よ
)
の
更
(
ふ
)
け
行
(
ゆ
)
くも
白瀬川
(
しらせがは
)
079
ナイルの
滝
(
たき
)
の
森林
(
しんりん
)
に
080
黎明
(
よあけ
)
を
待
(
ま
)
ちて
秋月
(
あきづき
)
の
081
滝
(
たき
)
の
魔神
(
まがみ
)
を
一々
(
いちいち
)
に
082
六
(
む
)
つの
滝
(
たき
)
まで
清
(
きよ
)
めむと
083
暗
(
やみ
)
の
木下
(
こした
)
に
憩
(
いこ
)
ふ
折
(
をり
)
084
一
(
ひと
)
つ
火
(
び
)
忽
(
たちま
)
ち
現
(
あら
)
はれて
085
一行
(
いつかう
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
が
心
(
こころ
)
をば
086
照
(
てら
)
させ
給
(
たま
)
ふ
夢
(
ゆめ
)
の
跡
(
あと
)
087
大蛇
(
をろち
)
の
背
(
せな
)
より
飛下
(
とびお
)
りて
088
腰
(
こし
)
を
抜
(
ぬ
)
かせし
束
(
つか
)
の
間
(
ま
)
に
089
つかつか
来
(
きた
)
る
夏山彦
(
なつやまひこ
)
が
090
率
(
ひき
)
ゆる
人数
(
にんず
)
の
足音
(
あしおと
)
は
091
いと
高々
(
たかだか
)
と
聞
(
きこ
)
え
来
(
く
)
る。
092
蚊取別
(
かとりわけ
)
『ヤア、
093
エライ
恐
(
おそ
)
ろしい
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
たものだナア。
094
余
(
あんま
)
り
知
(
し
)
らず
識
(
し
)
らずの
間
(
あひだ
)
に
慢心
(
まんしん
)
して、
095
大蛇
(
をろち
)
の
背中
(
せなか
)
に
乗
(
の
)
せられ、
096
雲
(
くも
)
の
上
(
うへ
)
まで
引張
(
ひつぱ
)
り
上
(
あ
)
げられて
了
(
しま
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
097
盲
(
めくら
)
蛇
(
へび
)
に
怖
(
を
)
ぢずと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
があるが、
098
本当
(
ほんたう
)
に
目明
(
めあき
)
の
積
(
つも
)
りで、
099
我
(
われ
)
こそは
天下
(
てんか
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
100
世界
(
せかい
)
の
盲
(
めくら
)
聾
(
つんぼ
)
の
目
(
め
)
をあけてやらうナンテ
偉
(
えら
)
さうに
言
(
い
)
つて
歩
(
ある
)
いて
居
(
を
)
つたが、
101
エライ
怖
(
こは
)
い
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
たものだ。
102
コリヤきつと
霊夢
(
れいむ
)
であらう、
103
アーア
慢心
(
まんしん
)
はし
易
(
やす
)
いものだナア。
104
慢心
(
まんしん
)
は
大怪我
(
おほけが
)
の
本
(
もと
)
だと、
105
何時
(
いつ
)
も
口癖
(
くちぐせ
)
の
様
(
やう
)
に
云
(
い
)
ひながら、
106
箕売
(
みう
)
り
笠
(
かさ
)
でひると
云
(
い
)
うたとへは
自分
(
じぶん
)
等
(
ら
)
の
事
(
こと
)
だ。
107
人
(
ひと
)
が
悪
(
わる
)
いとか
馬鹿
(
ばか
)
だとか
思
(
おも
)
うてゐると
皆
(
みんな
)
自分
(
じぶん
)
のことだ、
108
これから
一
(
ひと
)
つ
魂
(
たましひ
)
の
焼直
(
やきなほ
)
しをして
掛
(
かか
)
らねばならぬワイ。
109
吁
(
あゝ
)
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
有難
(
ありがた
)
う
御座
(
ござ
)
います。
110
能
(
よ
)
く
気
(
き
)
をつけて
下
(
くだ
)
さいました』
111
高光彦
(
たかてるひこ
)
『
蚊取別
(
かとりわけ
)
さま、
112
どんな
夢
(
ゆめ
)
を
御覧
(
ごらん
)
になりました。
113
我々
(
われわれ
)
も
恐
(
おそ
)
ろしい
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
ました。
114
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
真暗
(
まつくら
)
がりで、
115
秋月
(
あきづき
)
の
滝
(
たき
)
の
前
(
まへ
)
だと
思
(
おも
)
へば、
116
大蛇
(
をろち
)
の
背
(
せ
)
に
乗
(
の
)
せられて、
117
エライ
所
(
とこ
)
へ
鰻上
(
うなぎのぼ
)
りではなうて
蛇上
(
へびのぼ
)
りに
上
(
のぼ
)
つて
きつい
戒
(
いまし
)
めに
遭
(
あ
)
ひ、
118
中天
(
ちうてん
)
から
飛
(
と
)
びおりて、
119
腰
(
こし
)
をぬかし
本当
(
ほんたう
)
に
妙
(
めう
)
な
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
ましたよ』
120
蚊取別
(
かとりわけ
)
『ハア、
121
我々
(
われわれ
)
の
夢
(
ゆめ
)
と
同一
(
どういつ
)
ですワ』
122
と
声
(
こゑ
)
をかすませ、
123
首
(
くび
)
を
捻
(
ひね
)
る。
124
玉光彦
(
たまてるひこ
)
、
125
国光彦
(
くにてるひこ
)
、
126
初公
(
はつこう
)
も
異口
(
いく
)
同音
(
どうおん
)
に、
127
玉光彦、国光彦、初公
『
私
(
わたし
)
も
其
(
その
)
通
(
とほ
)
りそのとおり』
128
と
胸
(
むね
)
を
轟
(
とどろ
)
かせ
乍
(
なが
)
ら、
129
小声
(
こごゑ
)
になつて
首
(
くび
)
を
頻
(
しき
)
りに
傾
(
かたむ
)
けて
居
(
を
)
る。
130
折柄
(
をりから
)
の
物音
(
ものおと
)
に
前方
(
ぜんぱう
)
を
見
(
み
)
れば、
131
提灯
(
ちやうちん
)
の
光
(
ひかり
)
瞬
(
またた
)
き、
132
数十
(
すうじふ
)
人
(
にん
)
の
人声
(
ひとごゑ
)
此方
(
こなた
)
に
向
(
むか
)
つて
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
る。
133
初公
(
はつこう
)
『あの
提灯
(
ちやうちん
)
の
印
(
しるし
)
は
丸
(
まる
)
に
十
(
じふ
)
、
134
たしかに
夏山彦
(
なつやまひこ
)
の
酋長
(
しうちやう
)
が
手下
(
てした
)
の
者共
(
ものども
)
、
135
愈
(
いよいよ
)
初公
(
はつこう
)
さまを
召捕
(
めしとり
)
に
来
(
き
)
よつたな。
136
ヨーシ、
137
今迄
(
いままで
)
の
初公
(
はつこう
)
さまと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
るか、
138
あまり
我
(
われ
)
は、
139
偉
(
えら
)
い
偉
(
えら
)
いと
思
(
おも
)
うて
居
(
を
)
るとスコタン
喰
(
く
)
うぞよ。
140
足許
(
あしもと
)
は
真暗
(
まつくら
)
がり、
141
闇
(
やみ
)
に
烏
(
からす
)
のまつ
黒々助
(
くろくろすけ
)
、
142
夏山彦
(
なつやまひこ
)
の
家来
(
けらい
)
の
奴
(
やつ
)
共
(
ども
)
、
143
片
(
かた
)
つ
端
(
ぱし
)
から「ウウーン、
144
ウーン」と
阿吽
(
あうん
)
の
言霊
(
ことたま
)
、
145
開
(
ひら
)
くや
否
(
いな
)
や
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
に、
146
蜘蛛
(
くも
)
の
子
(
こ
)
を
散
(
ち
)
らすが
如
(
ごと
)
く、
147
チリチリバツト、
148
花
(
はな
)
に
嵐
(
あらし
)
の
其
(
その
)
如
(
ごと
)
く、
149
皆
(
みな
)
散
(
ち
)
り
散
(
ち
)
りに
逃
(
に
)
げて
行
(
ゆ
)
く………』
150
蚊取別
(
かとりわけ
)
『コラコラ、
151
何
(
なに
)
寝
(
ね
)
呆
(
とぼ
)
けてるのだ。
152
あまりウーンに
慢心
(
まんしん
)
をすると、
153
今
(
いま
)
の
様
(
やう
)
な
怖
(
こは
)
い
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
せられて、
154
お
警告
(
いましめ
)
を
受
(
う
)
けるのだぞ。
155
ウーンも
好
(
よ
)
い
加減
(
かげん
)
に
使
(
つか
)
つて………
乱用
(
らんよう
)
するとまた
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
せられるぞ』
156
初公
『モシ
蚊取別
(
かとりわけ
)
さま、
157
あれは
夢
(
ゆめ
)
だが、
158
今
(
いま
)
そこへ
来
(
く
)
るのは
現実
(
げんじつ
)
ですよ』
159
蚊取別
(
かとりわけ
)
『
幻術
(
げんじゆつ
)
でも、
160
妖術
(
えうじゆつ
)
でも、
161
神術
(
しんじゆつ
)
でも
無暗
(
むやみ
)
に
使
(
つか
)
ふものぢやないよ』
162
初公
(
はつこう
)
『それでも、
163
短兵
(
たんぺい
)
急
(
きふ
)
に
押
(
お
)
しよせて
来
(
き
)
た、
164
この
敵
(
てき
)
にムザムザと
虜
(
とりこ
)
にしられようものなら、
165
それこそ
最早
(
もはや
)
ウーンの
尽
(
つき
)
だ。
166
運
(
うん
)
の
尽
(
つ
)
きる
迄
(
まで
)
一
(
ひと
)
つ、
167
ウンウンを
行
(
や
)
つて
行
(
や
)
つて
行
(
や
)
り
倒
(
たふ
)
し、
168
運
(
うん
)
を
一
(
いち
)
時
(
じ
)
に
決
(
けつ
)
せむだ。
169
サア
来
(
こ
)
い
勝負
(
しようぶ
)
………』
170
高光彦
(
たかてるひこ
)
『アハヽヽヽ』
171
初公
(
はつこう
)
『
笑
(
わら
)
う
所
(
どころ
)
か
大変
(
たいへん
)
ですぜ。
172
あの
提灯
(
ちやうちん
)
を
御覧
(
ごらん
)
、
173
丸
(
まる
)
に
十
(
じふ
)
だ』
174
高光彦
(
たかてるひこ
)
『
丸
(
まる
)
に
十
(
じふ
)
なら
結構
(
けつこう
)
ぢやありませぬか、
175
三五教
(
あななひけう
)
の
裏紋
(
うらもん
)
だからな』
176
初公
(
はつこう
)
『
裏紋教
(
うらもんけう
)
でも、
177
表教
(
おもてけう
)
でも、
178
大本
(
おほもと
)
でも、
179
かうなつては
最早
(
もはや
)
百年目
(
ひやくねんめ
)
、
180
自由
(
じいう
)
行動
(
かうどう
)
と
出
(
で
)
ますから、
181
あなた
方
(
がた
)
四
(
し
)
人
(
にん
)
の
御
(
お
)
方
(
かた
)
はジツトして、
182
この
初公
(
はつこう
)
のハツ
人芸
(
にんげい
)
を
御覧
(
ごらん
)
なさい。
183
一人
(
ひとり
)
でハツ
人
(
にん
)
ぢや、
184
初夢
(
はつゆめ
)
の
初功名
(
はつこうみやう
)
、
185
神力
(
しんりき
)
ハツ
展
(
てん
)
の
初舞台
(
はつぶたい
)
だ』
186
蚊取別
(
かとりわけ
)
『コラコラ、
187
さうハツやぐものぢや
無
(
な
)
い、
188
ハツかしい
事
(
こと
)
が
後
(
あと
)
になりて
出
(
で
)
て
来
(
く
)
るぞよ。
189
神
(
かみ
)
の
申
(
まを
)
す
間
(
うち
)
に
聞
(
き
)
かぬと、
190
我
(
が
)
で
致
(
いた
)
したら
失敗
(
しくじ
)
るぞよ』
191
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ
早
(
はや
)
くも
夏山彦
(
なつやまひこ
)
の
一隊
(
いつたい
)
は
徐々
(
しづしづ
)
と
現
(
あら
)
はれ
来
(
き
)
たる。
192
初公
(
はつこう
)
『ヤア、
193
寄
(
よ
)
せたり
寄
(
よ
)
せやがつたりな。
194
我
(
わ
)
れこそはイホの
都
(
みやこ
)
に
隠
(
かく
)
れなき
初公
(
はつこう
)
さまだ。
195
召捕
(
めしと
)
るなら
美事
(
みごと
)
召捕
(
めしと
)
つて
見
(
み
)
よ。
196
小癪
(
こしやく
)
に
構
(
かま
)
ふ
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
が
振舞
(
ふるまひ
)
、
197
儘
(
まま
)
になるなら、
198
麦飯
(
むぎめし
)
、
199
稗飯
(
ひえめし
)
、
200
粟飯
(
あはめし
)
、
201
五
(
ご
)
もく
飯
(
めし
)
、
202
米
(
こめ
)
の
飯
(
めし
)
、
203
サア
勝手
(
かつて
)
にメシ
取
(
と
)
つて
見
(
み
)
よ』
204
蚊取別
(
かとりわけ
)
『アハヽヽヽ』
205
三
(
さん
)
人
(
にん
)
『ワツハヽヽヽ』
206
群衆中
(
ぐんしうちう
)
より
立派
(
りつぱ
)
な
姿
(
すがた
)
をした
二人
(
ふたり
)
の
男
(
をとこ
)
、
207
蚊取別
(
かとりわけ
)
の
前
(
まへ
)
に
悠々
(
いういう
)
と
現
(
あら
)
はれ、
208
夏山彦、春彦
『ヤ、
209
あなたは
蚊取別
(
かとりわけ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
210
………
御
(
ご
)
一同
(
いちどう
)
様
(
さま
)
、
211
私
(
わたし
)
等
(
ら
)
は
夏山彦
(
なつやまひこ
)
、
212
春彦
(
はるひこ
)
でございます。
213
どうか
此
(
この
)
駕籠
(
かご
)
に
御
(
お
)
召
(
め
)
し
下
(
くだ
)
さいまして
我々
(
われわれ
)
が
矮屋
(
わいをく
)
に
一夜
(
いちや
)
御
(
ご
)
逗留
(
とうりう
)
を
御
(
お
)
願
(
ねがひ
)
申
(
まを
)
したく、
214
態々
(
わざわざ
)
御
(
お
)
迎
(
むか
)
へに
参
(
まゐ
)
りました』
215
初公
(
はつこう
)
『ヤア、
216
ナーンだ、
217
天
(
てん
)
が
地
(
ち
)
となり、
218
地
(
ち
)
が
天
(
てん
)
となる、
219
変
(
かは
)
れば
変
(
かは
)
る
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ。
220
オイオイ
其
(
その
)
駕籠
(
かご
)
は
大蛇
(
をろち
)
の
背中
(
せなか
)
とは
違
(
ちが
)
ふか』
221
夏山彦
(
なつやまひこ
)
『ヤア、
222
お
前
(
まへ
)
は
初公
(
はつこう
)
か、
223
我々
(
われわれ
)
は
蚊取別
(
かとりわけ
)
その
他
(
た
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
に
御
(
ご
)
挨拶
(
あいさつ
)
申上
(
まをしあ
)
げて
居
(
ゐ
)
るのだ。
224
横間
(
よこあひ
)
から
喧
(
やかま
)
しう
申
(
まを
)
さずに、
225
暫
(
しばら
)
く
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
て
呉
(
く
)
れ』
226
初公
(
はつこう
)
『ヨーシ
承知
(
しようち
)
した。
227
併
(
しか
)
し
駕籠
(
かご
)
は
四台
(
よんだい
)
よりないぢやないか、
228
初公
(
はつこう
)
さまの
駕籠
(
かご
)
は
後
(
あと
)
から
来
(
く
)
るのかい』
229
春彦
(
はるひこ
)
『
生憎
(
あひにく
)
四台
(
しだい
)
よりありませぬので
一台
(
いちだい
)
………』
230
初公
(
はつこう
)
『オイオイ、
231
四台
(
しだい
)
よりない?………
何
(
なん
)
と
情
(
なさけ
)
なきシダイなりけりだ。
232
一
(
いち
)
だい
のテレ
臭
(
くさ
)
い
恥
(
はぢ
)
曝
(
さら
)
しだワイウフヽヽヽ』
233
蚊取別
(
かとりわけ
)
『
折角
(
せつかく
)
の
思召
(
おぼしめし
)
無
(
む
)
にするも
何
(
なん
)
となく
心許
(
こころもと
)
なく
思
(
おも
)
ひますが、
234
我々
(
われわれ
)
はさ
様
(
やう
)
な
贅沢
(
ぜいたく
)
な
駕籠
(
かご
)
などに
乗
(
の
)
ることは
出来
(
でき
)
ませぬ』
235
初公
(
はつこう
)
『ヤア
今
(
いま
)
あまり
調子
(
てうし
)
に
乗
(
の
)
つて、
236
ウンウン
気張
(
きば
)
ると
云
(
い
)
つて、
237
ウンが
増長
(
ぞうちよう
)
して
高
(
たか
)
い
高
(
たか
)
いコクウンの
中
(
なか
)
までおつぽり
上
(
あ
)
げられ、
238
スツテンドウと
地上
(
ちじやう
)
に
真逆
(
まつさか
)
様
(
さま
)
に
墜
(
お
)
ちて、
239
腰
(
こし
)
を
折
(
を
)
つた
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
よつたものだから………そんな
俄
(
にはか
)
に
殊勝
(
しゆしよう
)
らしい
事
(
こと
)
を
仰
(
あふ
)
せられるのだ。
240
恰度
(
ちやうど
)
それならそれで
都合
(
つがふ
)
が
良
(
よ
)
いわ。
241
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
と
此
(
この
)
初公
(
はつこう
)
さまと
四人
(
よつたり
)
乗
(
の
)
せて
貰
(
もら
)
はう』
242
玉光彦
(
たまてるひこ
)
『
私
(
わたし
)
は
駕籠
(
かご
)
は
平
(
ひら
)
に
御免
(
ごめん
)
蒙
(
かうむ
)
ります』
243
国光彦
(
くにてるひこ
)
『
我々
(
われわれ
)
もその
通
(
とほ
)
り』
244
初公
(
はつこう
)
『
拙者
(
せつしや
)
も
同様
(
どうやう
)
、
245
駕籠
(
かご
)
は
平
(
ひら
)
にお
断
(
ことわ
)
り
申
(
まを
)
す』
246
群衆
(
ぐんしう
)
の
中
(
なか
)
より、
247
群衆の一人
『コラ
初公
(
はつこう
)
、
248
貴様
(
きさま
)
がお
断
(
ことわ
)
り
所
(
どころ
)
か、
249
頼
(
たの
)
んだつてコチラからお
断
(
ことわ
)
りだよ』
250
夏山彦
(
なつやまひこ
)
『
折角
(
せつかく
)
の
志
(
こころざし
)
、
251
どうぞお
召
(
め
)
し
下
(
くだ
)
さいませ』
252
蚊取別
(
かとりわけ
)
『イヤ
又
(
また
)
尾
(
を
)
の
先
(
さき
)
から
振落
(
ふりお
)
ちねばならぬと
困
(
こま
)
るから、
253
乗物
(
のりもの
)
は
平
(
ひら
)
にお
断
(
ことわ
)
り
申
(
まを
)
します』
254
初公
(
はつこう
)
『モシモシ
蚊取別
(
かとりわけ
)
さま、
255
どうやら
此処
(
ここ
)
も
大蛇
(
をろち
)
の
背
(
せな
)
ぢやあるまいか、
256
足許
(
あしもと
)
がツルツルするぢやないか。
257
夏山彦
(
なつやまひこ
)
の
宅
(
うち
)
で
御
(
ご
)
馳走
(
ちそう
)
を
戴
(
いただ
)
いたと
思
(
おも
)
へば、
258
牛糞
(
うしぐそ
)
か
馬糞
(
うまぐそ
)
か、
259
訳
(
わけ
)
の
分
(
わか
)
らぬ
物
(
もの
)
を
食
(
く
)
はされて、
260
舌鼓
(
したづつみ
)
を
打
(
う
)
つた
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
た
連中
(
れんちう
)
だから、
261
この
夏山彦
(
なつやまひこ
)
も
夢
(
ゆめ
)
の
中
(
なか
)
ぢやあるまいかナア』
262
蚊取別
(
かとりわけ
)
『
夢
(
ゆめ
)
でも
何
(
なん
)
でもよいぢやないか。
263
天
(
てん
)
は
暗
(
くら
)
く
月
(
つき
)
の
光
(
ひかり
)
は
無
(
な
)
く、
264
何
(
いづ
)
れ
悪魔
(
あくま
)
の
跋扈
(
ばつこ
)
跳梁
(
てうりやう
)
する
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
だ。
265
斯
(
こ
)
う
暗黒
(
くらがり
)
になつて
来
(
く
)
ると、
266
誠
(
まこと
)
の
物
(
もの
)
は
一
(
ひと
)
つもないと
思
(
おも
)
つたら
落度
(
おちど
)
はない。
267
マア
夢
(
ゆめ
)
でも
化物
(
ばけもの
)
でも
何
(
なん
)
でも
構
(
かま
)
はぬ。
268
刹那心
(
せつなしん
)
だ、
269
行
(
ゆ
)
く
所
(
とこ
)
迄
(
まで
)
行
(
ゆ
)
かうかい』
270
と
一行
(
いつかう
)
五
(
ご
)
人
(
にん
)
は
夏山彦
(
なつやまひこ
)
以下
(
いか
)
群衆
(
ぐんしう
)
に
迎
(
むか
)
へられて、
271
今度
(
こんど
)
は
愈
(
いよいよ
)
夢
(
ゆめ
)
でもない、
272
幻
(
まぼろし
)
でもない、
273
曲神
(
まがかみ
)
の
館
(
やかた
)
でもない、
274
正真
(
しやうしん
)
正銘
(
しやうめい
)
の
夏山彦
(
なつやまひこ
)
の
館
(
やかた
)
へ
着
(
つ
)
いたのである。
275
正門
(
せいもん
)
は
左右
(
さいう
)
に
開放
(
あけはな
)
され、
276
門内
(
もんない
)
は
薄暗
(
うすぐら
)
けれど、
277
塵
(
ちり
)
一本
(
いつぽん
)
なき
迄
(
まで
)
に
清
(
きよ
)
く
箒目
(
はうきめ
)
正
(
ただ
)
しく、
278
掃除
(
さうぢ
)
が
行届
(
ゆきとど
)
いて
居
(
ゐ
)
る
様子
(
やうす
)
である。
279
表門
(
おもてもん
)
の
入口
(
いりぐち
)
より
一間巾
(
いつけんはば
)
程
(
ほど
)
の
麗
(
うるは
)
しき
真砂
(
まさご
)
は
敷詰
(
しきつ
)
められ、
280
一行
(
いつかう
)
を
歓迎
(
くわんげい
)
した
酋長
(
しうちやう
)
の
真心
(
まごころ
)
は
此
(
この
)
砂路
(
すなみち
)
にも
現
(
あら
)
はれ
居
(
ゐ
)
たりける。
281
初公
(
はつこう
)
『ヤア
是
(
これ
)
は
一遍
(
いつぺん
)
通
(
とほ
)
つた。
282
門
(
もん
)
と
云
(
い
)
ひ
門番
(
もんばん
)
の
貫公
(
くわんこう
)
、
283
徹公
(
てつこう
)
[
※
第5章では「鉄公」
]
の
朧
(
おぼろ
)
ながらも
顔
(
かほ
)
と
言
(
い
)
ひ、
284
玄関
(
げんくわん
)
の
様子
(
やうす
)
、
285
一分
(
いちぶ
)
一厘
(
いちりん
)
間違
(
まちが
)
ひのない
仕組
(
しぐみ
)
だ。
286
コラ
又
(
また
)
夢
(
ゆめ
)
だらう、
287
………オイオイ
蚊取別
(
かとりわけ
)
さま、
288
一寸
(
ちよつと
)
私
(
わし
)
の
頬
(
ほほ
)
べた
捻
(
ひね
)
つて
見
(
み
)
て
呉
(
く
)
れぬか、
289
自分
(
じぶん
)
がひねつたのでは、
290
夢
(
ゆめ
)
か
夢
(
ゆめ
)
ぢやないか
明瞭
(
はつきり
)
せない………アイタヽヽヽあまり
酷
(
ひど
)
い
事
(
こと
)
すな、
291
鼻
(
はな
)
を
捻上
(
ねぢあ
)
げよつて………』
292
蚊取別
(
かとりわけ
)
『
捻
(
ひね
)
つて
呉
(
く
)
れと
云
(
い
)
ふから、
293
註文
(
ちゆうもん
)
通
(
どほ
)
り
捻
(
ひね
)
つてやつたのだ。
294
貴様
(
きさま
)
の
鼻
(
はな
)
はあまり
低
(
ひく
)
いのと
横
(
よこ
)
つチヨに
着
(
つ
)
いとるものだから、
295
頬辺
(
ほほべた
)
だと
思
(
おも
)
つて
捻
(
ひね
)
つたのだ。
296
はな
はなもつて
見当
(
けんたう
)
の
取
(
と
)
れぬ
面付
(
つらつき
)
だなア』
297
初公
(
はつこう
)
『
本当
(
ほんたう
)
にさうだ、
298
ケントウがとれぬワイ。
299
提灯
(
ちやうちん
)
は
取
(
と
)
れても、
300
軒灯
(
けんとう
)
は
高
(
たか
)
い
所
(
とこ
)
に
吊
(
つ
)
つてあるから、
301
俺
(
おれ
)
の
様
(
やう
)
な
背
(
せい
)
の
低
(
ひく
)
い
者
(
もの
)
では、
302
一寸
(
ちよつと
)
取
(
と
)
り
難
(
にく
)
いなア』
303
蚊取別
(
かとりわけ
)
『
今度
(
こんど
)
は
夢
(
ゆめ
)
ぢやない、
304
本当
(
ほんたう
)
だ』
305
初公
(
はつこう
)
『
本当
(
ほんたう
)
か
嘘
(
うそ
)
か、
306
蚊取別
(
かとりわけ
)
さまのお
言葉
(
ことば
)
もあまり
当
(
あて
)
にはなりませぬワイ。
307
一
(
ひと
)
つ
此処
(
ここ
)
で
一
(
いち
)
か
八
(
ばち
)
かぢや、
308
真偽
(
しんぎ
)
を
確
(
たしか
)
めて
見
(
み
)
よう』
309
と
言
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
310
初公
(
はつこう
)
は
腕
(
うで
)
を
振
(
ふ
)
り、
311
ドシドシと
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
り、
312
初公
『ヤア、
313
拙者
(
それがし
)
は
今日
(
こんにち
)
迄
(
まで
)
イホ
村
(
むら
)
の
侠客
(
けふかく
)
権太郎
(
ごんたらう
)
の
初公
(
はつこう
)
と
云
(
い
)
つたは
世
(
よ
)
を
忍
(
しの
)
ぶ
仮
(
かり
)
の
名
(
な
)
、
314
元
(
もと
)
を
糺
(
ただ
)
せば
聖地
(
せいち
)
エルサレムに
於
(
おい
)
て、
315
行成彦
(
ゆきなりひこ
)
の
従神
(
じうしん
)
たりし
行平別
(
ゆきひらわけの
)
命
(
みこと
)
、
316
汝
(
なんぢ
)
夏山彦
(
なつやまひこ
)
八岐
(
やまた
)
の
大蛇
(
をろち
)
の
片腕
(
かたうで
)
となり、
317
白瀬川
(
しらせがは
)
の
大蛇
(
をろち
)
となり、
318
此
(
この
)
イホの
都
(
みやこ
)
に
尻尾
(
しつぽ
)
を
現
(
あら
)
はし、
319
我々
(
われわれ
)
に
立派
(
りつぱ
)
な
館
(
やかた
)
と
見
(
み
)
せかけ、
320
牛糞
(
うしぐそ
)
馬糞
(
うまぐそ
)
を
馳走
(
ちそう
)
と
見
(
み
)
せかけて
食
(
く
)
はさうと
致
(
いた
)
す
其
(
その
)
計略
(
けいりやく
)
は、
321
前
(
まへ
)
以
(
もつ
)
て
承知
(
しようち
)
の
拙者
(
それがし
)
、
322
サア
尋常
(
じんじやう
)
に
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
せばよし、
323
白状
(
はくじやう
)
致
(
いた
)
さぬに
於
(
おい
)
ては、
324
十握
(
とつか
)
の
宝剣
(
ほうけん
)
を
以
(
もつ
)
て
寸断
(
すんだん
)
にするぞ』
325
と
大音声
(
だいおんじやう
)
に
呼
(
よば
)
はつて
居
(
を
)
る。
326
夏山彦
(
なつやまひこ
)
は
此
(
この
)
声
(
こゑ
)
に
驚
(
おどろ
)
きて
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
走
(
はし
)
り
来
(
きた
)
り、
327
夏山彦
『ヤア、
328
誰
(
たれ
)
かと
思
(
おも
)
へば
初公
(
はつこう
)
ぢやないか、
329
何
(
なん
)
だ
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
を
出
(
だ
)
して………』
330
初公
(
はつこう
)
『
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
は
俺
(
おれ
)
の
地声
(
ぢごゑ
)
だ。
331
大蛇
(
をろち
)
の
化物
(
ばけもの
)
ツ』
332
夏山彦
(
なつやまひこ
)
『モシモシ
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
333
この
男
(
をとこ
)
はどうかして
居
(
を
)
るのでせうな』
334
蚊取別
(
かとりわけ
)
『イヤどうもして
居
(
を
)
りませぬ。
335
一寸
(
ちよつと
)
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
が
乗
(
の
)
り
憑
(
うつ
)
つて、
336
訳
(
わけ
)
もない
事
(
こと
)
を
吐
(
ほ
)
ざくのですよ』
337
初公
(
はつこう
)
『ナニ、
338
副
(
ふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
だ!
馬鹿
(
ばか
)
にするない。
339
フクはフクだが
世界
(
せかい
)
の
福
(
ふく
)
を
守護
(
しゆご
)
する
七福
(
しちふく
)
守護神
(
しゆごじん
)
だぞ』
340
蚊取別
(
かとりわけ
)
『
雑巾
(
ざふきん
)
持
(
も
)
たしたらそこらをフク
守護神
(
しゆごじん
)
、
341
雪隠
(
せんち
)
へ
行
(
ゆ
)
つても、
342
碌
(
ろく
)
に
尻
(
しり
)
丈
(
だけ
)
は
拭
(
ふ
)
かぬ
守護神
(
しゆごじん
)
、
343
法螺
(
ほら
)
ばつかり
吹
(
ふ
)
く
守護神
(
しゆごじん
)
だ。
344
蟹
(
かに
)
の
様
(
やう
)
に
泡
(
あわ
)
を
吹
(
ふ
)
く
守護神
(
しゆごじん
)
、
345
熱
(
ねつ
)
も
吹
(
ふ
)
く
守護神
(
しゆごじん
)
だ。
346
アハヽヽ』
347
夏山彦
(
なつやまひこ
)
『
御
(
ご
)
一同
(
いちどう
)
様
(
さま
)
、
348
お
疲労
(
くたびれ
)
で
御座
(
ござ
)
いませう。
349
どうぞ
緩
(
ゆつく
)
り、
350
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
の
頃
(
ころ
)
まで
未
(
ま
)
だ
夜
(
よ
)
が
御座
(
ござ
)
います。
351
此
(
この
)
頃
(
ごろ
)
は
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
と
言
(
い
)
つても、
352
日輪
(
にちりん
)
様
(
さま
)
のお
姿
(
すがた
)
は
雲
(
くも
)
に
包
(
つつ
)
まれて
拝
(
をが
)
めませぬが、
353
ここに
一
(
ひと
)
つ
灯
(
ひ
)
を
点
(
とも
)
して
置
(
お
)
きますから、
354
ゆつくり
御飯
(
ごはん
)
でも
召上
(
めしあが
)
つて、
355
今晩
(
こんばん
)
はお
休
(
やす
)
み
下
(
くだ
)
さいませ。
356
明日
(
あす
)
ゆつくりお
目
(
め
)
にかかりませう』
357
初公
(
はつこう
)
『それ
見
(
み
)
よ
蚊取別
(
かとりわけ
)
さま、
358
初公
(
はつこう
)
の
目
(
め
)
は
黒
(
くろ
)
いものだ、
359
やつぱり
大蛇
(
をろち
)
の
背
(
せなか
)
だ。
360
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
だとか
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
だとか、
361
一
(
ひと
)
つ
火
(
び
)
とか
言
(
い
)
うたぢやないか』
362
蚊取別
(
かとりわけ
)
『
此奴
(
こいつ
)
まだ
夢
(
ゆめ
)
見
(
み
)
てゐる、
363
困
(
こま
)
つた
奴
(
やつ
)
だナア』
364
とまた
鼻
(
はな
)
を
力
(
ちから
)
限
(
かぎ
)
りに
捻
(
ね
)
ぢ
上
(
あ
)
げる。
365
初公
(
はつこう
)
『イヽヽヽイツタイ、
366
蚊取別
(
かとりわけ
)
、
367
フニヤ フニヤ フニヤ、
368
ヘタイ ヘタイ ヘタイ ヘタイ、
369
ハヤセ ハヤセ ハヤセ ハヤセ』
370
蚊取別
(
かとりわけ
)
『アハヽヽヽ』
371
初公
(
はつこう
)
『あまり
人
(
ひと
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にすな。
372
此
(
この
)
好
(
い
)
い
男
(
をとこ
)
つ
振
(
ぷり
)
を
鼻
(
はな
)
を
引延
(
ひきの
)
ばしよつて……
天狗
(
てんぐ
)
の
様
(
やう
)
になつたぢやないか』
373
蚊取別
(
かとりわけ
)
『ヤ、
374
是
(
これ
)
で
へつこむだ
鼻
(
はな
)
が
延
(
の
)
びて
調和
(
てうわ
)
が
取
(
と
)
れた。
375
ハナの
都
(
みやこ
)
の
初花姫
(
はつはなひめ
)
の
様
(
やう
)
な、
376
立派
(
りつぱ
)
な
顔
(
かほ
)
になつたよ』
377
この
時
(
とき
)
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
より、
378
嚠喨
(
りうりやう
)
たる
一絃琴
(
いちげんきん
)
の
音
(
おと
)
幽
(
かす
)
かに
聞
(
きこ
)
え、
379
女神
(
めがみ
)
の
歌
(
うた
)
ふ
声
(
こゑ
)
、
380
蚊取別
(
かとりわけ
)
の
耳
(
みみ
)
に
特
(
とく
)
に
浸
(
し
)
み
込
(
こ
)
む
様
(
やう
)
であつた。
381
蚊取別
(
かとりわけ
)
は
首
(
くび
)
を
傾
(
かたむ
)
け
乍
(
なが
)
ら
手
(
て
)
を
組
(
く
)
み、
382
蚊取別
(
かとりわけ
)
『ハテなア』
383
(
大正一一・三・九
旧二・一一
松村真澄
録)
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