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第二章 エデンの(わたし)〔三九五〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第9巻 霊主体従 申の巻 篇:第1篇 長途の旅 よみ(新仮名遣い):ちょうとのたび
章:第2章 エデンの渡 よみ(新仮名遣い):えでんのわたし 通し章番号:395
口述日:1922(大正11)年02月12日(旧01月16日) 口述場所: 筆録者:北村隆光 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年7月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]
姫たちは渡し場で、男たちに向こう岸に渡してくれるよう交渉を始めた。しかし姫たちが桃上彦の娘と分かると、船頭たちの態度は一変した。
そして、姫たちに自分たちの妻になれ、と無理難題を言い始めた。そこへ照彦が追いついて、自ら大天狗と名乗って船頭たちを掴んでは投げ、追い散らしてしまった。
一同は危機を乗り越えたことを神に感謝した。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる] 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-06-24 11:17:42 OBC :rm0902
愛善世界社版:12頁 八幡書店版:第2輯 279頁 修補版: 校定版:14頁 普及版:4頁 初版: ページ備考:
001 (まつ)002(たけ)003(うめ)(さん)(にん)美人(びじん)はエデンの(わた)()(やうや)辿(たど)()きぬ。004松代姫(まつよひめ)()(にん)(をとこ)(むか)ひ、005(ゆたか)(ほほ)(くれなゐ)(うしほ)(みなぎ)らし、006(うるほ)ひのある(すず)しき(まなこ)(みどり)黒髪(くろかみ)(みだ)れを(つくろ)ひながら、
007松代姫『もし、008貴方(あなた)(がた)はこのお(さと)(かた)御座(ござ)いますか。009何卒(なにとぞ)(わらは)(むか)(ぎし)(わた)して(くだ)さいませぬか』
010(かふ)『ヤ、011(あま)(がは)(くだ)つて()()でなさつた棚機姫(たなばたひめ)(さま)御座(ござ)いますか。012ハイハイ(よろこ)んでお(とも)いたしませう。013(あま)(がは)のやうに(ふか)(こと)もありませぬ、014(また)(たか)いこともありませぬから、015滅多(めつた)(てん)()ちる(はず)はありませぬ、016サアサ、017(てん)棚機姫(たなばたひめ)(さま)()一同(いちどう)018(わたくし)(たく)へおいで(くだ)さいませ』
019松代姫『イヤ、020(わらは)(てん)から()たのでは御座(ござ)いませぬ。021聖地(せいち)エルサレムから一人(ひとり)(ちち)(たづ)ねて、022ウヅの(くに)(まゐ)るもので御座(ござ)います』
023(おつ)『アヽお(まへ)さまは矢張(やつぱ)りさうすると(ひと)()だなア。024あまり(うつく)しいので天女(てんによ)天降(あまくだ)りか、025棚機(たなばた)さまだらうかと、026(いま)(いま)とて()(にん)(もの)(うはさ)(いた)して()りました。027アヽ一寸(ちよつと)()れば(とし)二八(にはち)二九(にく)からぬ、028十九(つづ)二十(はたち)花盛(はなざか)り、029真実(ほんと)()しいものだね。030そして(いま)貴女(あなた)一人(ひとり)(ちち)(たづ)ねると仰有(おつしや)つたが、031(その)(とう)さまと()ふのは何方(どなた)(さま)(こと)ですかい』
032松代姫『ハイ、033(わらは)(ちち)聖地(せいち)ヱルサレムの(もと)天使長(てんしちやう)でありました桃上彦(ももがみひこの)(みこと)御座(ござ)います』
034(へい)『ヤア(なん)だい、035極悪(ごくあく)無道(ぶだう)桃上彦(ももがみひこの)(みこと)(むすめ)かい、036(なん)とまあ(からす)(つる)()んだのか、037(とび)(たか)()んだと()ふのか、038()(なか)(へん)なものだなア。039吾々(われわれ)(いもうと)桃上彦(ももがみひこの)(みこと)家来(けらい)(やつ)誘拐(かどわか)されて(いま)行衛(ゆくへ)()れず、040如何(どう)なつた(こと)かと、041毎日(まいにち)日日(ひにち)(いもうと)在処(ありか)(こころ)にかけて(わす)れた(いとま)はないのだ。042(おも)へば(かたき)(はし)だ、043ヤアもう今日(けふ)(めう)心持(こころもち)になつて()た、044何程(なにほど)綺麗(きれい)(をんな)でも(てき)(むすめ)()けば、045エー面黒(おもくろ)くもない』
046(くろ)(うで)をヌツと()し、047(にぎ)(こぶし)(さん)(にん)(むすめ)(まへ)につき()しながら、
048『ヤイ、049貴様(きさま)(かみ)(さま)だと(おも)つて、050チツトは(おい)()面喰(めんくら)つて()(ところ)だ。051それに、052そつちから(われ)(わが)()桃上彦(ももがみひこ)(むすめ)名乗(なの)つた以上(いじやう)は、053ヨモヤそれに相違(さうゐ)はあるまい。054サアかうなる以上(いじやう)()(にん)(あら)くれ(をとこ)(さん)(にん)孱弱(かよわ)(をんな)だ。055ジタバタしたつて、056もうあかぬ。057(いさぎよ)(おい)らの女房(にようばう)となるか。058(いや)ぢやなどと貴様(きさま)(しろ)(くび)(よこ)にでも()つて()よれ、059この鉄拳(てつけん)貴様(きさま)頭上(づじやう)にポカンと()見舞(みまひ)だぞ。060サア返答(へんたふ)はどうだ』
061(おつ)『ヤイヤイ、062()れば()るほど(うつく)しい、063()しいものだ。064いづれ貴様(きさま)らも一篇(いつぺん)(をつと)()たねばなるまい、065ドンナ(をとこ)()ふのも因縁(いんねん)だ。066(おい)らの女房(にようばう)になる()はないか。067ヤイ(なに)068(いや)()ふのか、069素直(すなほ)(くび)(たて)()つてアイと()はつしやい。070(ひめ)さま、071之程(これほど)(こは)()えても矢張(やつぱ)(をとこ)(をんな)だ。072(をんな)にかけたら(なみだ)(もろ)いものだよ。073一黒(いちくろ)074二赤(にあか)075三白(さんしろ)といつて、076(くろ)(やつ)(あじ)がよいものだ。077どうだ、078如何(どう)だい、079返答(へんたふ)()かう』
080松代姫『オホヽヽヽ、081(みな)さま、082こんな不束(ふつつか)(をんな)(たい)してお(なぶ)りなさるのですか。083冗談(じやうだん)()加減(かげん)にして(くだ)さいな。084(わらは)(ちち)貴方(あなた)仰有(おつしや)(とほ)(わる)(もの)御座(ござ)いましたか()りませぬが、085(わらは)には(なに)罪咎(つみとが)もない。086(さいは)(をんな)()姉妹(きやうだい)(さん)(にん)087(たび)道伴(みちづ)()(なさけ)088世界(せかい)(おに)はないと()きました。089何卒(どうぞ)(わらは)にそんな(こと)仰有(おつしや)らずにこの(かは)(わた)して(くだ)さいませ』
090(へい)何卒(どうぞ)(わらは)にソンナ(こと)仰有(おつしや)らずに(わた)して(くだ)さいませ、091ソリヤ、092(なに)(ぬか)しよるのだ。093(この)(わた)しを(わた)して(くだ)さいませ、094なんて、095此方(こちら)(いし)のやうに(かた)()れば綿(わた)のやうに(やはら)かく()よつて、096イヤモウ(やさ)しい(つら)をして()でも菎蒻(こんにやく)でもゆく(やつ)ではないワイ。097オイ(みな)のもの、098掛合(かけあ)ふも面倒(めんだう)(くさ)い。099此奴(こいつ)(さん)(にん)(やつ)をこの(ふね)()せて、100(かは)真中(まんなか)()れて退引(のつぴ)きさせぬ談判(だんぱん)をやるのだ。101()(かく)102(ふね)()せた(うへ)此方(こつち)のものだ。103(かは)真中(まんなか)(ふね)をとめてゆつくりと談判(だんぱん)をやるに(かぎ)る。104(をんな)一心(いつしん)105(いは)をも(とほ)すと()ふが、106(をとこ)一心(いつしん)一口(ひとくち)107半句(はんく)いはいでも(とほ)すのだ。108(かは)(なか)()れて()けば、109(かは)(やす)きは(をんな)(こころ)110()りかけた(ふね)だ、111アヽア仕方(しかた)がない、112それなら貴方(あなた)(がた)仰有(おつしや)(とほ)りに(いた)します。113(この)エデンの(かは)(やう)に、114(ふか)くふかくかはいがつて(くだ)さいと仰有(おつしや)るのは()のあたりだ。115淵瀬(ふちせ)(かは)(ひと)行末(ゆくすゑ)116昨日(きのふ)今日(けふ)飛鳥川(あすかがは)117明日(あす)をも()れぬ生命(いのち)だ、118一寸(いつすん)さきは(やみ)()だ。119たとへ一息(ひといき)()でもコンナ綺麗(きれい)(をんな)()(こと)出来(でき)たら一生(いつしやう)光栄(くわうえい)だ。120イヤ(さん)(にん)のお(かた)121(ふね)()つて(くだ)さい、122()せませう。123その(かは)りに、124吾々(われわれ)ものせて(もら)はなならぬからな、125(よろ)しいかな。126親切(しんせつ)(つく)して(たす)(たす)けられ、127()(なか)はまはり()ちだ。128浮世(うきよ)(ふね)(さを)さして(はげ)しき(かは)()(わた)るも(なに)かの因縁(いんねん)だらう。129此処(ここ)三途(さんづ)(かは)ぢやない、130(はな)(うるは)しく果物(くだもの)(ゆた)かな顕恩郷(けんおんきやう)だ、131イヤ貴女(あなた)(がた)顕恩郷(けんおんきやう)(はな)となつて(むつま)じく(くら)すのだよ。132さうなれば(いもうと)(あだ)(なに)(この)エデンの(かは)へサツパリ(なが)勘定(かんぢやう)だ。133(なが)(がは)(しり)(あら)つたやうにすつかり()()けて、134(きよ)(きよ)(みづ)()らさぬ顕恩郷(けんおんきやう)(めぐ)みを(たの)しむのだな。135売言葉(うりことば)()言葉(ことば)136魚心(うをごころ)あれば水心(みづごころ)あり、137()()えても真実(ほんと)(やさ)しい(をとこ)だよ。138(ひと)には()うてみい、139(うま)には(またが)つて()い、140(ふね)には()つて()いだ。141さあ(はや)()つたり()つたり』
142 竹野姫(たけのひめ)はためらいながら、
143竹野姫(ねえ)さま、144(いもうと)145如何(どう)(いた)しませう。146(わたし)(おそ)ろしいワ』
147梅ケ香姫(ねえ)さま、148やめませうか、149もう(かへ)りませう、150(うま)れてからコンナ(こは)()()つた(こと)はありませぬ。151アヽ(たれ)(たす)けに()()れるものはありますまいかね』
152梅ケ香姫(うめがかひめ)(うれ)ひを(うか)べて(なみだ)(そで)(ぬぐ)ふ。
153(かふ)『さあ(はや)()らぬかい、154(なに)愚図(ぐづ)々々(ぐづ)してるのだ。155()せて()れえと(たの)んだぢやないか。156吾々(われわれ)色々(いろいろ)評議(ひやうぎ)をして、157到頭(たうとう)(まへ)たちを()せてやることになつたのだ。158(ひと)親切(しんせつ)()にして()らぬと()ふのか。159この()になつて()るの()らぬのと、160そんな馬鹿(ばか)なことがあつたものかい、161()らぬなら()らぬで()い、162(をとこ)一心(いつしん)いはいでも(とほ)す、163フン(じば)つてでも()せてやるのだ』
164()ひながら()(にん)(をとこ)は、165(いま)(さん)(にん)美人(びじん)(むか)つて乱暴(らんばう)(およ)ばむとする。166(この)(とき)浅黄(あさぎ)被布(ひふ)(たすき)綾取(あやど)つた(をとこ)167(いき)せききつて(この)()(あら)はれ、
168男(照彦)『ヤアヤア、169()つた()つた、170()てと(まを)さば()つが()からうぞ』
171(かふ)『ナヽヽ、172ナヽヽ(なに)邪魔(じやま)をするのだ、173唐変木(たうへんぼく)()が。174九分(くぶ)九厘(くりん)()(ところ)へやつて()よつて、175()つも()たぬもあつたものかい、176邪魔(じやま)をひろぐと生命(いのち)がないぞ』
177一人(ひとり)(をとこ)はカラカラと打笑(うちわら)ひ、
178男(照彦)(われ)こそは地教(ちけう)(やま)(しづ)まる大天狗(だいてんぐ)だ。179愚図(ぐづ)々々(ぐづ)(ぬか)すと、180(かひな)むし(また)引裂(ひきさ)き、181エデンの(かは)投込(なげこ)んでやらうか』
182 一同(いちどう)は、
183一同(なに)184その広言(くわうげん)(のち)にせよ』
185と、186各自(てんで)拳骨(げんこつ)(かた)めて四方(しはう)より()つてかかるを、187一人(ひとり)(をとこ)縦横(じうわう)無尽(むじん)()(にん)(あひだ)駆廻(かけまは)り、188襟髪(えりがみ)とつてドツとばかりエデンの(なが)れに(むか)つて()げつけ、189また()(やつ)首筋(くびすぢ)(つか)んで、190以前(いぜん)(ごと)くドツとばかりに()()早業(はやわざ)191(のこ)(さん)(にん)捻鉢巻(ねぢはちまき)をしながら(また)もや武者(むしや)()りつくを、
192男(照彦)『エイ面倒(めんだう)
193(あし)をあげてポンと()途端(とたん)に、194ヨロヨロヨロとよろめ大地(だいち)(だい)()(たふ)()す。195(のこ)二人(ふたり)(くも)(かすみ)韋駄天(ゐだてん)(ばし)り……。196(まつ)197(たけ)198(うめ)(さん)(にん)地獄(ぢごく)(ほとけ)()うたる心地(ここち)して、199一人(ひとり)(をとこ)(まへ)(あら)はれ両手(りやうて)をつき、
200松代姫(まつよひめ)何処(いづこ)(かた)かは()りませぬが、201(あやふ)(ところ)をお(たす)(くだ)さいまして……』
202()はむとすれば、203(をとこ)大地(だいち)平伏(へいふく)して、
204男(照彦)『イヤ勿体(もつたい)ない、205(ひめ)(さま)206(わたくし)照彦(てるひこ)御座(ござ)います。207一足(ひとあし)(こと)大変(たいへん)御座(ござ)いました。208九分(くぶ)九厘(くりん)(かみ)(さま)がお(たす)(くだ)さつたのでせう。209(わたくし)今日(けふ)(かぎ)つて(おも)はぬ(ちから)()ました210これ(まつた)国治立(くにはるたちの)大神(おほかみ)()神徳(しんとく)(しか)らしむるところ、211此処(ここ)一同(いちどう)(そろ)うて(かみ)(さま)()(れい)(いた)しませう』
212松代姫『アヽ、213(なんぢ)照彦(てるひこ)214ようまア、215いい(ところ)()()れました。216(わらは)姉妹(きやうだい)はお(まへ)(だま)つて()()まなかつたが、217(まへ)(たび)苦労(くらう)をさすのが可愛(かあい)さうだと(おも)つて、218姉妹(しまい)(さん)(にん)(しめ)(あは)せ、219此処(ここ)まで()るは()たものの、220(とら)221(おほかみ)222獅子(しし)223大蛇(をろち)(あら)(たけ)(やま)()()()え、224(こころ)(さび)しき折柄(をりから)に、225(この)(わた)()にヤツト一息(ひといき)する()もなく、226(また)もや(あら)くれ(をとこ)無理(むり)難題(なんだい)227進退(しんたい)(きは)まつた()刹那(せつな)228(まへ)()うたのは(まつた)(かみ)(さま)のお引合(ひきあは)せ、229何卒(どうぞ)230父上(ちちうへ)(くに)まで(おく)つて(くだ)さらぬか』
231 照彦(てるひこ)は、
232照彦『ハイ』
233(こた)へて平伏(へいふく)する。234二人(ふたり)(いもうと)(うれ)しさうに、
235竹野姫、梅ケ香姫『アヽ、236照彦(てるひこ)237()()(くだ)さつた。238サアサ一同(いちどう)239祝詞(のりと)奏上()げませう』
240 (ここ)()(にん)主従(しうじう)路傍(みちばた)芝生(しばふ)端坐(たんざ)し、241拍手(かしはで)をうつて天津(あまつ)祝詞(のりと)奏上(そうじやう)し、242神恩(しんおん)感謝(かんしや)しぬ。
243大正一一・二・一二 旧一・一六 北村隆光録)
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