霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第七章 地獄(ぢごく)の沙汰(さた)〔四〇〇〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第9巻 霊主体従 申の巻 篇:第1篇 長途の旅 よみ(新仮名遣い):ちょうとのたび
章:第7章 地獄の沙汰 よみ(新仮名遣い):じごくのさた 通し章番号:400
口述日:1922(大正11)年02月12日(旧01月16日) 口述場所: 筆録者:有田九皐 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年7月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
船は港内に安着した。松代姫は智利の国に到着した嬉しさと父への恋しさを歌に歌った。
船客たちは船が安着したことでほっとして、噂話にふけっている。その中に、先日珍の国の宣伝使・桃上彦が巴留の都で、槍に刺されて沙漠に埋められてしまった、という話をする者があった。
松代姫一行はそれを聞きつけ、男から桃上彦の様子をもっと詳しく聞きだそうとした。
男は一行に情報料を要求して金をせしめると、桃上彦は巴留の国で死んでしまったよ、と言い残して姿を隠してしまった。(この男は虎公で第18章に再び登場する)
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-12-30 16:43:43 文字数:2553 OBC :rm0907
愛善世界社版:51頁 八幡書店版:第2輯 293頁 修補版: 校定版:55頁 普及版:21頁 初版: ページ備考:
001 船(ふね)は漸(やうや)くにして黄昏時(たそがれどき)に、002智利(てる)の港内(こうない)に安着(あんちやく)せり。003家々(いへいへ)の燈火(ともしび)は水(みづ)に映(えい)じて柱(はしら)の如(ごと)く海中(かいちう)に垂(た)れ下(さが)り、004恰(あたか)も火柱(くわちう)の杭(くひ)を打(う)ちたる如(ごと)く、005小波(さざなみ)に揺(ゆ)れて炎々(えんえん)と揺(うご)く状(さま)は、006火竜(くわりゆう)の海底(かいてい)より幾十百(いくじふひやく)ともなく水面(すゐめん)に向(むか)ひ昇(のぼ)り来(きた)るの光景(くわうけい)なり。
007智利(てる)を見(み)たさに海原(うなばら)越(こ)せば
008海(うみ)の響(ひび)きか浪(なみ)の音(ね)か
009と船頭(せんどう)は落着(おちつ)いた声(こゑ)で唄(うた)つてゐる。
010 松代姫(まつよひめ)は静(しづか)に起(た)つて花(はな)の唇(くちびる)を開(ひら)き、011繊手(せんしゆ)を挙(あ)げて智利(てる)の港(みなと)を嬉(うれ)し気(げ)に打(う)ち眺(なが)めながら、
012松代姫『此処(ここ)は名(な)に負(お)ふ高砂(たかさご)の
013月日(つきひ)も智利(てる)の港(みなと)かや
014御空(みそら)に月(つき)はなけれども
015天(てん)より高(たか)く咲(さ)く花(はな)の
016木(こ)の花姫(はなひめ)の御(おん)使(つかひ)
017月照彦(つきてるひこ)の生魂(いくみたま)
018竜世(たつよ)の姫(ひめ)の守(まも)ります
019名(な)も高砂(たかさご)の智利(てる)の国(くに)
020嬉(うれ)しや此処(ここ)に天伝(あまつた)ふ
021月(つき)雪(ゆき)花(はな)の三人(みたり)連(づ)れ
022心(こころ)の色(いろ)も照彦(てるひこ)の
023従僕(しもべ)の強者(きやうしや)と諸共(もろとも)に
024恋(こひ)しき父(ちち)の御(おん)前(まへ)に
025ありし昔(むかし)の物語(ものがたり)
026語(かた)るも尽(つ)きぬ故郷(ふるさと)の
027空(そら)行(ゆ)く雲(くも)の定(さだ)めなき
028現世(うつしよ)幽界(かくりよ)物語(ものがたり)
029親子(おやこ)いよいよ相生(あひおひ)の
030時(とき)を松風(まつかぜ)松代姫(まつよひめ)
031心(こころ)の竹野(たけの)隈(くま)もなく
032起臥(おきふ)し毎(ごと)に語(かた)り合(あ)ひ
033莟(つぼみ)も開(ひら)く梅ケ香(うめがか)の
034郷(さと)の土産(みやげ)の梅(うめ)便(だよ)り
035涼(すず)しき月(つき)も照彦(てるひこ)の
036花(はな)の莟(つぼみ)の開(ひら)く時(とき)
037心(こころ)の色(いろ)の薫(かを)る時(とき)
038あゝ頼(たの)もしや頼(たの)もしや
039父(ちち)のまします此(こ)の島(しま)は
040いと懐(なつ)かしき神(かみ)の島(しま)
041如何(いか)に嶮(けは)しき山道(やまみち)も
042荒風(あらかぜ)猛(たけ)る砂原(すなはら)も
043何(なん)の物(もの)かは女子(をみなご)の
044岩(いは)をも射貫(いぬ)く真心(まごころ)を
045神(かみ)も諾(うべな)ひ給(たま)ふらむ
046血(ち)をはく思(おも)ひの郭公(ほととぎす)
047八千八(はつせんや)越(こえ)の海原(うなばら)も
048やうやう茲(ここ)に姉妹(おとどい)の
049心(こころ)も晴(は)れし五月空(さつきぞら)
050只(ただ)一声(ひとこゑ)のおとづれを
051ウヅの都(みやこ)にましませる
052桃上彦(ももがみひこ)の吾(わが)父(ちち)の
053御許(みもと)に告(つ)げよ夏山(なつやま)の
054青葉(あをば)滴(したた)る貴(うづ)の子(こ)の
055心(こころ)のたけを伝(つた)へよや
056心(こころ)のたけを伝(つた)へよや』
057と淑(しと)やかに歌(うた)ふ。058黄昏(たそがれ)に漸(やうや)う着(つ)いた三笠丸(みかさまる)は、059港内(こうない)に錨(いかり)を下(おろ)し、060其(その)夜(よ)は一同(いちどう)の船客(せんきやく)と共(とも)に夜(よ)を明(あ)かしたり。061船中(せんちう)には又(また)もや雑談(ざつだん)の花(はな)咲(さ)き来(きた)り、
062甲(かふ)『オイ、063此処(ここ)は智利(てる)の港(みなと)だ、064もう生命(いのち)に別条(べつでう)はない。065十分(じふぶん)に大法螺(おほぼら)を吹(ふ)いたとて大丈夫(だいぢやうぶ)だよ』
066乙(おつ)『そんな強(つよ)いことを云(い)ふない。067あの大風(おほかぜ)が吹(ふ)いた時(とき)、068船(ふね)が暗礁(あんせう)に乗(の)り上(あ)げてガラガラメキメキと中央(まんなか)から折(を)れて、069沈(しづ)まむとした時(とき)に、070貴様(きさま)如何(どう)だつたい。071俺(おれ)の首(くび)を捉(とら)まへて、072ブルブル慄(ふる)うてゐたではないか。073さうさう、074くつついては俺(おれ)も困(こま)るから、075放(はな)せと云(い)うたら「俺(おれ)は水心(みづごころ)を知(し)らぬから、076俺(おれ)が沈(しづ)んだら貴様(きさま)の背中(せなか)にくつついて助(たす)けて貰(もら)ふのだ」と弱音(よわね)を吹(ふ)いて、077ベソを掻(か)きよつた時(とき)の醜態(ざま)と云(い)つたら、078見(み)られたものぢやなかつたよ』
079甲『あつた事(こと)は言(い)うたつて仕様(しやう)がない、080黙(だま)れ黙(だま)れ、081モー此(この)島(しま)へ着(つ)けば大丈夫(だいぢやうぶ)だ。082生命(いのち)に別条(べつでう)はないからネー』
083乙『イヤ、084生命(いのち)ばかりは陸(あげ)だつて海(うみ)だつて安心(あんしん)は出来(でき)ないよ。085此(この)間(あひだ)も、086ウヅの国(くに)の桃上彦(ももがみひこ)と云(い)ふ立派(りつぱ)な宣伝使(せんでんし)が、087恐(おそ)ろしい大蛇(をろち)の出(で)る大蛇峠(をろちたうげ)や珍山峠(うづやまたうげ)を、088大胆(だいたん)至極(しごく)にも唯(ただ)一人(ひとり)で越(こ)して、089巴留(はる)の都(みやこ)の鷹取別(たかとりわけ)の城下(じやうか)で、090三五教(あななひけう)の宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)うて居(ゐ)たら、091数百(すうひやく)人(にん)の駱駝隊(らくだたい)が現(あら)はれて、092鋭利(えいり)な槍(やり)で宣伝使(せんでんし)を小芋(こいも)を串(くし)に刺(さ)したやうに、093豆腐(とうふ)の田楽(でんがく)よろしく、094突(つ)いて突(つ)いて突(つ)き廻(まは)し嬲殺(なぶりごろ)しにした揚句(あげく)、095砂漠(さばく)の中(なか)に埋(うづ)めて了(しま)うたと言(い)ふ話(はなし)を、096巴留(はる)の国(くに)から出(で)て来(き)た人間(にんげん)に、097俺(おれ)は此(この)船(ふね)に乗(の)る時(とき)に慥(たしか)に聴(き)いたのだよ。098悪(わる)い奴(やつ)が沢山(たくさん)居(を)るのだから、099余程(よほど)心得(こころえ)ぬと険難(けんのん)だぞ』
100と話(はな)して居(ゐ)るのを、101松代姫(まつよひめ)の一行(いつかう)は耳(みみ)を傾(かたむ)け、102顔(かほ)の色(いろ)を変(か)へて聴(き)き居(ゐ)たるが、103照彦(てるひこ)は船(ふね)の一隅(いちぐう)より、104ツト身(み)を起(おこ)し此(この)三(さん)人(にん)の前(まへ)に坐(すわ)つて、
105照彦『モシモシ、106今(いま)承(うけたま)はれば、107珍(うづ)の国(くに)の桃上彦(ももがみひこの)命(みこと)様(さま)が、108巴留(はる)の国(くに)で殺(ころ)され遊(あそ)ばしたやうに承(うけたま)はりましたが、109それは本当(ほんたう)でございますか。110吾々(われわれ)は仔細(しさい)あつて其(そ)の桃上彦(ももがみひこの)命(みこと)に御(お)目(め)にかかりたく遥々(はるばる)参(まゐ)りました。111何卒(どうぞ)御(お)聞(きき)き及(およ)びの模様(もやう)をなるべく詳(くは)しく話(はな)して下(くだ)さるまいかな』
112丙(へい)『なんだ、113桃上彦(ももがみひこ)の話(はなし)をせいと云(い)ふのか。114イヤ話(はな)さぬことはない、115が其処(そこ)は、116それ何(なん)とやら、117地獄(ぢごく)の沙汰(さた)も何(なん)とやら、118魚心(うをごころ)あれば水心(みづごころ)あり、119水心(みづごころ)あれば魚心(うをごころ)でありますからな。120ヘツヘツヘツ』
121照彦『貴方(あなた)の仰有(おつしや)ることは一向(いつかう)要領(えうりやう)を得(え)ませぬ、122モツト明瞭(はつきり)と言(い)うて下(くだ)さい』
123丙『ヘイ、124不得(ふとく)要領(えうりやう)で以(もつ)て要領(えうりやう)を得(え)たいのです。125それ地獄(ぢごく)の沙汰(さた)も何(なん)とやら』
126照彦『あゝ解(わか)つた、127酒代(さかて)を与(く)れと云(い)ふのか、128アヽよしよし上(あ)げませう。129どうぞ委(くは)しく言(い)うて下(くだ)さい』
130丙『ヘイ、131モヽヽ、132カヽヽ、133辱(かたじけ)ない。134ミヽヽ耳(みみ)を揃(そろ)へた沢山(たくさん)なお金(かね)、135ヒヽヽ拾(ひろ)つたやうなものだな、136ヒツヒツ平(ひら)に御(お)断(ことわ)り申上(まをしあ)ぐるは本意(ほんい)なれど、137コヽヽこれも何(なに)かの廻(めぐ)り合(あは)せ、138こんなお方(かた)にこんな処(ところ)で、139こんな船(ふね)の上(うへ)でお目(め)にかかつて、140こんな沢山(たくさん)のお金(かね)を頂(いただ)いて、141こんな結構(けつこう)な事(こと)は今後(こんご)も幾度(いくど)もあつてほしいものだ。142モヽヽ、143カヽヽ、144ミヽヽ、145ヒヽヽ、146コヽヽの話(はなし)のおかげで、147こんな結構(けつこう)なお金(かね)にありついた』
148照彦『オイオイ、149そんなことは何(ど)うでもよいから、150早(はや)く桃上彦(ももがみひこの)命(みこと)の消息(せうそく)を話(はな)して下(くだ)さいよ』
151丙『はなせと云(い)つたつて、152一旦(いつたん)貰(もら)うたら此方(こつち)のものだ。153何(ど)うして何(ど)うしてはなすものか、154はなして怺(たま)るものか、155死(し)ぬまではなしやせぬぞ』
156照彦『オイ、157そりやチト話(はなし)が違(ちが)ふぞ、158放(はな)すぢやない、159話(はな)せと云(い)ふことぢや』
160丙『イヤ、161何(なん)と仰有(おつしや)つても、162こんな結構(けつこう)な物(もの)を放(はな)せの、163話(はな)しのと、164そりや胴欲(どうよく)ぢや。165一旦(いつたん)握(にぎ)つたらモヽヽ、166カヽヽ、167ミヽヽ、168石(いし)に噛(か)み付(つ)いてもヒヽヽ、169コヽヽ、170ひこずられても放(はな)さぬ放(はな)さぬ、171放(はな)してならうか、172生命(いのち)より大事(だいじ)な此(こ)のお金(かね)……』
173照彦『あゝ困(こま)つた男(をとこ)だな、174桃上彦(ももがみひこの)命(みこと)は生(い)きて居(を)られるか、175死(し)んで居(を)られるか何方(どちら)だ。176聞(き)かして呉(く)れいと言(い)ふのだ』
177と声(こゑ)に力(ちから)を入(い)れて問(と)ひかける。
178丙『それは二(ふた)つに一(ひと)つです。179死(し)んだものは生(い)きて居(を)らぬし、180生(い)きたものは死(し)んで居(を)らぬ。181桃上彦(ももがみひこ)は死(し)んで居(を)らぬ』
182照彦『死(し)んで居(を)らぬと云(い)ふ事(こと)は、183生(い)きて居(を)ることか』
184丙『死(し)んで居(を)らぬ』
185照彦『桃上彦(ももがみひこの)命(みこと)は死(し)んでは居(を)らぬ、186生(い)きて居(を)るのか。187死(し)んで了(しま)つて、188此(この)世(よ)に居(を)らぬと云(い)ふのか、189確然(しつかり)返答(へんたふ)せい』
190と稍(やや)もどかしげに声(こゑ)を尖(とが)らして問(と)ひかける。
191丙『それは貴方(あなた)、192だけの事(こと)を申上(まをしあ)げます。193だけはだけだからなア、194地獄(ぢごく)の沙汰(さた)も、195それ何(なん)とやら』
196照彦『エヽ五月蝿(うるさ)い奴(やつ)だ。197金(かね)だけの事(こと)を云(い)うてやらう、198地獄(ぢごく)の沙汰(さた)も金(かね)次第(しだい)と云(い)つて居(を)るのであらう。199よう金(かね)を欲(ほ)しがる奴(やつ)だなあ。200足許(あしもと)を見(み)られて居(を)るから仕方(しかた)がないワ。201サア、202これだけ貴様(きさま)に遣(や)るから判然(はつきり)と云(い)へ』
203 短(みじか)き夏(なつ)の夜(よ)は、204何時(いつ)しか明(あ)け放(はな)れて、205船(ふね)は港(みなと)に横(よこ)づけとなる。
206丙『桃上彦(ももがみひこ)は沙漠(さばく)の中(なか)へ埋(うづ)められて死(し)んで了(しま)つたよ。207死(し)んだ奴(やつ)のあとまで云(い)うたところで何(なん)にもなりはしない。208十万(じふまん)億土(おくど)の遠(とほ)い遠(とほ)い国(くに)へ行(い)つて了(しま)つたのだよ』
209と云(い)ひ棄(す)てて尻(しり)を捲(まく)つて韋駄天(ゐだてん)走(ばし)りに、210金子(かね)を握(にぎ)つたまま姿(すがた)を隠(かく)しける。[※この男の名は虎公で、第18章以降で再び登場し、改心する。]
211 アヽ三(さん)人(にん)の娘(むすめ)の心(こころ)は? 照彦(てるひこ)の胸(むね)の中(うち)は如何(いかが)ぞ。
212(大正一一・二・一二 旧一・一六 有田九皐録)
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