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霊界物語
霊主体従(第1~12巻)
第9巻(申の巻)
序歌
凡例
総説歌
第1篇 長途の旅
第1章 都落
第2章 エデンの渡
第3章 三笠丸
第4章 大足彦
第5章 海上の神姿
第6章 刹那信心
第7章 地獄の沙汰
第2篇 一陽来復
第8章 再生の思
第9章 鴛鴦の衾
第10章 言葉の車
第11章 蓬莱山
第3篇 天涯万里
第12章 鹿島立
第13章 訣別の歌
第14章 闇の谷底
第15章 団子理屈
第16章 蛸釣られ
第17章 甦生
第4篇 千山万水
第18章 初陣
第19章 悔悟の涙
第20章 心の鏡
第21章 志芸山祇
第22章 晩夏の風
第23章 高照山
第24章 玉川の滝
第25章 窟の宿替
第26章 巴の舞
第5篇 百花爛漫
第27章 月光照梅
第28章 窟の邂逅
第29章 九人娘
第30章 救の神
第31章 七人の女
第32章 一絃琴
第33章 栗毛の駒
第34章 森林の囁
第35章 秋の月
第36章 偽神憑
第37章 凱歌
附録 第三回高熊山参拝紀行歌(二)
余白歌
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霊界物語
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霊主体従(第1~12巻)
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第9巻(申の巻)
> 第1篇 長途の旅 > 第7章 地獄の沙汰
<<< 刹那信心
(B)
(N)
再生の思 >>>
第七章
地獄
(
ぢごく
)
の
沙汰
(
さた
)
〔四〇〇〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第9巻 霊主体従 申の巻
篇:
第1篇 長途の旅
よみ(新仮名遣い):
ちょうとのたび
章:
第7章 地獄の沙汰
よみ(新仮名遣い):
じごくのさた
通し章番号:
400
口述日:
1922(大正11)年02月12日(旧01月16日)
口述場所:
筆録者:
有田九皐
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年7月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
船は港内に安着した。松代姫は智利の国に到着した嬉しさと父への恋しさを歌に歌った。
船客たちは船が安着したことでほっとして、噂話にふけっている。その中に、先日珍の国の宣伝使・桃上彦が巴留の都で、槍に刺されて沙漠に埋められてしまった、という話をする者があった。
松代姫一行はそれを聞きつけ、男から桃上彦の様子をもっと詳しく聞きだそうとした。
男は一行に情報料を要求して金をせしめると、桃上彦は巴留の国で死んでしまったよ、と言い残して姿を隠してしまった。(この男は虎公で第18章に再び登場する)
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-12-30 16:43:43
OBC :
rm0907
愛善世界社版:
51頁
八幡書店版:
第2輯 293頁
修補版:
校定版:
55頁
普及版:
21頁
初版:
ページ備考:
001
船
(
ふね
)
は
漸
(
やうや
)
くにして
黄昏時
(
たそがれどき
)
に、
002
智利
(
てる
)
の
港内
(
こうない
)
に
安着
(
あんちやく
)
せり。
003
家々
(
いへいへ
)
の
燈火
(
ともしび
)
は
水
(
みづ
)
に
映
(
えい
)
じて
柱
(
はしら
)
の
如
(
ごと
)
く
海中
(
かいちう
)
に
垂
(
た
)
れ
下
(
さが
)
り、
004
恰
(
あたか
)
も
火柱
(
くわちう
)
の
杭
(
くひ
)
を
打
(
う
)
ちたる
如
(
ごと
)
く、
005
小波
(
さざなみ
)
に
揺
(
ゆ
)
れて
炎々
(
えんえん
)
と
揺
(
うご
)
く
状
(
さま
)
は、
006
火竜
(
くわりゆう
)
の
海底
(
かいてい
)
より
幾十百
(
いくじふひやく
)
ともなく
水面
(
すゐめん
)
に
向
(
むか
)
ひ
昇
(
のぼ
)
り
来
(
きた
)
るの
光景
(
くわうけい
)
なり。
007
智利
(
てる
)
を
見
(
み
)
たさに
海原
(
うなばら
)
越
(
こ
)
せば
008
海
(
うみ
)
の
響
(
ひび
)
きか
浪
(
なみ
)
の
音
(
ね
)
か
009
と
船頭
(
せんどう
)
は
落着
(
おちつ
)
いた
声
(
こゑ
)
で
唄
(
うた
)
つてゐる。
010
松代姫
(
まつよひめ
)
は
静
(
しづか
)
に
起
(
た
)
つて
花
(
はな
)
の
唇
(
くちびる
)
を
開
(
ひら
)
き、
011
繊手
(
せんしゆ
)
を
挙
(
あ
)
げて
智利
(
てる
)
の
港
(
みなと
)
を
嬉
(
うれ
)
し
気
(
げ
)
に
打
(
う
)
ち
眺
(
なが
)
めながら、
012
松代姫
『
此処
(
ここ
)
は
名
(
な
)
に
負
(
お
)
ふ
高砂
(
たかさご
)
の
013
月日
(
つきひ
)
も
智利
(
てる
)
の
港
(
みなと
)
かや
014
御空
(
みそら
)
に
月
(
つき
)
はなけれども
015
天
(
てん
)
より
高
(
たか
)
く
咲
(
さ
)
く
花
(
はな
)
の
016
木
(
こ
)
の
花姫
(
はなひめ
)
の
御
(
おん
)
使
(
つかひ
)
017
月照彦
(
つきてるひこ
)
の
生魂
(
いくみたま
)
018
竜世
(
たつよ
)
の
姫
(
ひめ
)
の
守
(
まも
)
ります
019
名
(
な
)
も
高砂
(
たかさご
)
の
智利
(
てる
)
の
国
(
くに
)
020
嬉
(
うれ
)
しや
此処
(
ここ
)
に
天伝
(
あまつた
)
ふ
021
月
(
つき
)
雪
(
ゆき
)
花
(
はな
)
の
三人
(
みたり
)
連
(
づ
)
れ
022
心
(
こころ
)
の
色
(
いろ
)
も
照彦
(
てるひこ
)
の
023
従僕
(
しもべ
)
の
強者
(
きやうしや
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
024
恋
(
こひ
)
しき
父
(
ちち
)
の
御
(
おん
)
前
(
まへ
)
に
025
ありし
昔
(
むかし
)
の
物語
(
ものがたり
)
026
語
(
かた
)
るも
尽
(
つ
)
きぬ
故郷
(
ふるさと
)
の
027
空
(
そら
)
行
(
ゆ
)
く
雲
(
くも
)
の
定
(
さだ
)
めなき
028
現世
(
うつしよ
)
幽界
(
かくりよ
)
物語
(
ものがたり
)
029
親子
(
おやこ
)
いよいよ
相生
(
あひおひ
)
の
030
時
(
とき
)
を
松風
(
まつかぜ
)
松代姫
(
まつよひめ
)
031
心
(
こころ
)
の
竹野
(
たけの
)
隈
(
くま
)
もなく
032
起臥
(
おきふ
)
し
毎
(
ごと
)
に
語
(
かた
)
り
合
(
あ
)
ひ
033
莟
(
つぼみ
)
も
開
(
ひら
)
く
梅ケ香
(
うめがか
)
の
034
郷
(
さと
)
の
土産
(
みやげ
)
の
梅
(
うめ
)
便
(
だよ
)
り
035
涼
(
すず
)
しき
月
(
つき
)
も
照彦
(
てるひこ
)
の
036
花
(
はな
)
の
莟
(
つぼみ
)
の
開
(
ひら
)
く
時
(
とき
)
037
心
(
こころ
)
の
色
(
いろ
)
の
薫
(
かを
)
る
時
(
とき
)
038
あゝ
頼
(
たの
)
もしや
頼
(
たの
)
もしや
039
父
(
ちち
)
のまします
此
(
こ
)
の
島
(
しま
)
は
040
いと
懐
(
なつ
)
かしき
神
(
かみ
)
の
島
(
しま
)
041
如何
(
いか
)
に
嶮
(
けは
)
しき
山道
(
やまみち
)
も
042
荒風
(
あらかぜ
)
猛
(
たけ
)
る
砂原
(
すなはら
)
も
043
何
(
なん
)
の
物
(
もの
)
かは
女子
(
をみなご
)
の
044
岩
(
いは
)
をも
射貫
(
いぬ
)
く
真心
(
まごころ
)
を
045
神
(
かみ
)
も
諾
(
うべな
)
ひ
給
(
たま
)
ふらむ
046
血
(
ち
)
をはく
思
(
おも
)
ひの
郭公
(
ほととぎす
)
047
八千八
(
はつせんや
)
越
(
こえ
)
の
海原
(
うなばら
)
も
048
やうやう
茲
(
ここ
)
に
姉妹
(
おとどい
)
の
049
心
(
こころ
)
も
晴
(
は
)
れし
五月空
(
さつきぞら
)
050
只
(
ただ
)
一声
(
ひとこゑ
)
のおとづれを
051
ウヅの
都
(
みやこ
)
にましませる
052
桃上彦
(
ももがみひこ
)
の
吾
(
わが
)
父
(
ちち
)
の
053
御許
(
みもと
)
に
告
(
つ
)
げよ
夏山
(
なつやま
)
の
054
青葉
(
あをば
)
滴
(
したた
)
る
貴
(
うづ
)
の
子
(
こ
)
の
055
心
(
こころ
)
のたけを
伝
(
つた
)
へよや
056
心
(
こころ
)
のたけを
伝
(
つた
)
へよや』
057
と
淑
(
しと
)
やかに
歌
(
うた
)
ふ。
058
黄昏
(
たそがれ
)
に
漸
(
やうや
)
う
着
(
つ
)
いた
三笠丸
(
みかさまる
)
は、
059
港内
(
こうない
)
に
錨
(
いかり
)
を
下
(
おろ
)
し、
060
其
(
その
)
夜
(
よ
)
は
一同
(
いちどう
)
の
船客
(
せんきやく
)
と
共
(
とも
)
に
夜
(
よ
)
を
明
(
あ
)
かしたり。
061
船中
(
せんちう
)
には
又
(
また
)
もや
雑談
(
ざつだん
)
の
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
き
来
(
きた
)
り、
062
甲
(
かふ
)
『オイ、
063
此処
(
ここ
)
は
智利
(
てる
)
の
港
(
みなと
)
だ、
064
もう
生命
(
いのち
)
に
別条
(
べつでう
)
はない。
065
十分
(
じふぶん
)
に
大法螺
(
おほぼら
)
を
吹
(
ふ
)
いたとて
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だよ』
066
乙
(
おつ
)
『そんな
強
(
つよ
)
いことを
云
(
い
)
ふない。
067
あの
大風
(
おほかぜ
)
が
吹
(
ふ
)
いた
時
(
とき
)
、
068
船
(
ふね
)
が
暗礁
(
あんせう
)
に
乗
(
の
)
り
上
(
あ
)
げてガラガラメキメキと
中央
(
まんなか
)
から
折
(
を
)
れて、
069
沈
(
しづ
)
まむとした
時
(
とき
)
に、
070
貴様
(
きさま
)
如何
(
どう
)
だつたい。
071
俺
(
おれ
)
の
首
(
くび
)
を
捉
(
とら
)
まへて、
072
ブルブル
慄
(
ふる
)
うてゐたではないか。
073
さうさう、
074
くつついては
俺
(
おれ
)
も
困
(
こま
)
るから、
075
放
(
はな
)
せと
云
(
い
)
うたら「
俺
(
おれ
)
は
水心
(
みづごころ
)
を
知
(
し
)
らぬから、
076
俺
(
おれ
)
が
沈
(
しづ
)
んだら
貴様
(
きさま
)
の
背中
(
せなか
)
に
くつつい
て
助
(
たす
)
けて
貰
(
もら
)
ふのだ」と
弱音
(
よわね
)
を
吹
(
ふ
)
いて、
077
ベソを
掻
(
か
)
きよつた
時
(
とき
)
の
醜態
(
ざま
)
と
云
(
い
)
つたら、
078
見
(
み
)
られたものぢやなかつたよ』
079
甲
『あつた
事
(
こと
)
は
言
(
い
)
うたつて
仕様
(
しやう
)
がない、
080
黙
(
だま
)
れ
黙
(
だま
)
れ、
081
モー
此
(
この
)
島
(
しま
)
へ
着
(
つ
)
けば
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だ。
082
生命
(
いのち
)
に
別条
(
べつでう
)
はないからネー』
083
乙
『イヤ、
084
生命
(
いのち
)
ばかりは
陸
(
あげ
)
だつて
海
(
うみ
)
だつて
安心
(
あんしん
)
は
出来
(
でき
)
ないよ。
085
此
(
この
)
間
(
あひだ
)
も、
086
ウヅの
国
(
くに
)
の
桃上彦
(
ももがみひこ
)
と
云
(
い
)
ふ
立派
(
りつぱ
)
な
宣伝使
(
せんでんし
)
が、
087
恐
(
おそ
)
ろしい
大蛇
(
をろち
)
の
出
(
で
)
る
大蛇峠
(
をろちたうげ
)
や
珍山峠
(
うづやまたうげ
)
を、
088
大胆
(
だいたん
)
至極
(
しごく
)
にも
唯
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
で
越
(
こ
)
して、
089
巴留
(
はる
)
の
都
(
みやこ
)
の
鷹取別
(
たかとりわけ
)
の
城下
(
じやうか
)
で、
090
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
うて
居
(
ゐ
)
たら、
091
数百
(
すうひやく
)
人
(
にん
)
の
駱駝隊
(
らくだたい
)
が
現
(
あら
)
はれて、
092
鋭利
(
えいり
)
な
槍
(
やり
)
で
宣伝使
(
せんでんし
)
を
小芋
(
こいも
)
を
串
(
くし
)
に
刺
(
さ
)
したやうに、
093
豆腐
(
とうふ
)
の
田楽
(
でんがく
)
よろしく、
094
突
(
つ
)
いて
突
(
つ
)
いて
突
(
つ
)
き
廻
(
まは
)
し
嬲殺
(
なぶりごろ
)
しにした
揚句
(
あげく
)
、
095
砂漠
(
さばく
)
の
中
(
なか
)
に
埋
(
うづ
)
めて
了
(
しま
)
うたと
言
(
い
)
ふ
話
(
はなし
)
を、
096
巴留
(
はる
)
の
国
(
くに
)
から
出
(
で
)
て
来
(
き
)
た
人間
(
にんげん
)
に、
097
俺
(
おれ
)
は
此
(
この
)
船
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
る
時
(
とき
)
に
慥
(
たしか
)
に
聴
(
き
)
いたのだよ。
098
悪
(
わる
)
い
奴
(
やつ
)
が
沢山
(
たくさん
)
居
(
を
)
るのだから、
099
余程
(
よほど
)
心得
(
こころえ
)
ぬと
険難
(
けんのん
)
だぞ』
100
と
話
(
はな
)
して
居
(
ゐ
)
るのを、
101
松代姫
(
まつよひめ
)
の
一行
(
いつかう
)
は
耳
(
みみ
)
を
傾
(
かたむ
)
け、
102
顔
(
かほ
)
の
色
(
いろ
)
を
変
(
か
)
へて
聴
(
き
)
き
居
(
ゐ
)
たるが、
103
照彦
(
てるひこ
)
は
船
(
ふね
)
の
一隅
(
いちぐう
)
より、
104
ツト
身
(
み
)
を
起
(
おこ
)
し
此
(
この
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
前
(
まへ
)
に
坐
(
すわ
)
つて、
105
照彦
『モシモシ、
106
今
(
いま
)
承
(
うけたま
)
はれば、
107
珍
(
うづ
)
の
国
(
くに
)
の
桃上彦
(
ももがみひこの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
が、
108
巴留
(
はる
)
の
国
(
くに
)
で
殺
(
ころ
)
され
遊
(
あそ
)
ばしたやうに
承
(
うけたま
)
はりましたが、
109
それは
本当
(
ほんたう
)
でございますか。
110
吾々
(
われわれ
)
は
仔細
(
しさい
)
あつて
其
(
そ
)
の
桃上彦
(
ももがみひこの
)
命
(
みこと
)
に
御
(
お
)
目
(
め
)
にかかりたく
遥々
(
はるばる
)
参
(
まゐ
)
りました。
111
何卒
(
どうぞ
)
御
(
お
)
聞
(
きき
)
き
及
(
およ
)
びの
模様
(
もやう
)
をなるべく
詳
(
くは
)
しく
話
(
はな
)
して
下
(
くだ
)
さるまいかな』
112
丙
(
へい
)
『なんだ、
113
桃上彦
(
ももがみひこ
)
の
話
(
はなし
)
をせいと
云
(
い
)
ふのか。
114
イヤ
話
(
はな
)
さぬことはない、
115
が
其処
(
そこ
)
は、
116
それ
何
(
なん
)
とやら、
117
地獄
(
ぢごく
)
の
沙汰
(
さた
)
も
何
(
なん
)
とやら、
118
魚心
(
うをごころ
)
あれば
水心
(
みづごころ
)
あり、
119
水心
(
みづごころ
)
あれば
魚心
(
うをごころ
)
でありますからな。
120
ヘツヘツヘツ』
121
照彦
『
貴方
(
あなた
)
の
仰有
(
おつしや
)
ることは
一向
(
いつかう
)
要領
(
えうりやう
)
を
得
(
え
)
ませぬ、
122
モツト
明瞭
(
はつきり
)
と
言
(
い
)
うて
下
(
くだ
)
さい』
123
丙
『ヘイ、
124
不得
(
ふとく
)
要領
(
えうりやう
)
で
以
(
もつ
)
て
要領
(
えうりやう
)
を
得
(
え
)
たいのです。
125
それ
地獄
(
ぢごく
)
の
沙汰
(
さた
)
も
何
(
なん
)
とやら』
126
照彦
『あゝ
解
(
わか
)
つた、
127
酒代
(
さかて
)
を
与
(
く
)
れと
云
(
い
)
ふのか、
128
アヽよしよし
上
(
あ
)
げませう。
129
どうぞ
委
(
くは
)
しく
言
(
い
)
うて
下
(
くだ
)
さい』
130
丙
『ヘイ、
131
モヽヽ、
132
カヽヽ、
133
辱
(
かたじけ
)
ない。
134
ミヽヽ
耳
(
みみ
)
を
揃
(
そろ
)
へた
沢山
(
たくさん
)
なお
金
(
かね
)
、
135
ヒヽヽ
拾
(
ひろ
)
つたやうなものだな、
136
ヒツヒツ
平
(
ひら
)
に
御
(
お
)
断
(
ことわ
)
り
申上
(
まをしあ
)
ぐるは
本意
(
ほんい
)
なれど、
137
コヽヽこれも
何
(
なに
)
かの
廻
(
めぐ
)
り
合
(
あは
)
せ、
138
こんなお
方
(
かた
)
にこんな
処
(
ところ
)
で、
139
こんな
船
(
ふね
)
の
上
(
うへ
)
でお
目
(
め
)
にかかつて、
140
こんな
沢山
(
たくさん
)
のお
金
(
かね
)
を
頂
(
いただ
)
いて、
141
こんな
結構
(
けつこう
)
な
事
(
こと
)
は
今後
(
こんご
)
も
幾度
(
いくど
)
もあつてほしいものだ。
142
モヽヽ、
143
カヽヽ、
144
ミヽヽ、
145
ヒヽヽ、
146
コヽヽの
話
(
はなし
)
の
おかげ
で、
147
こんな
結構
(
けつこう
)
なお
金
(
かね
)
にありついた』
148
照彦
『オイオイ、
149
そんなことは
何
(
ど
)
うでもよいから、
150
早
(
はや
)
く
桃上彦
(
ももがみひこの
)
命
(
みこと
)
の
消息
(
せうそく
)
を
話
(
はな
)
して
下
(
くだ
)
さいよ』
151
丙
『
はな
せと
云
(
い
)
つたつて、
152
一旦
(
いつたん
)
貰
(
もら
)
うたら
此方
(
こつち
)
のものだ。
153
何
(
ど
)
うして
何
(
ど
)
うして
はな
すものか、
154
はな
して
怺
(
たま
)
るものか、
155
死
(
し
)
ぬまで
はな
しやせぬぞ』
156
照彦
『オイ、
157
そりやチト
話
(
はなし
)
が
違
(
ちが
)
ふぞ、
158
放
(
はな
)
すぢやない、
159
話
(
はな
)
せと
云
(
い
)
ふことぢや』
160
丙
『イヤ、
161
何
(
なん
)
と
仰有
(
おつしや
)
つても、
162
こんな
結構
(
けつこう
)
な
物
(
もの
)
を
放
(
はな
)
せの、
163
話
(
はな
)
しのと、
164
そりや
胴欲
(
どうよく
)
ぢや。
165
一旦
(
いつたん
)
握
(
にぎ
)
つたらモヽヽ、
166
カヽヽ、
167
ミヽヽ、
168
石
(
いし
)
に
噛
(
か
)
み
付
(
つ
)
いてもヒヽヽ、
169
コヽヽ、
170
ひこ
ずられても
放
(
はな
)
さぬ
放
(
はな
)
さぬ、
171
放
(
はな
)
してならうか、
172
生命
(
いのち
)
より
大事
(
だいじ
)
な
此
(
こ
)
のお
金
(
かね
)
……』
173
照彦
『あゝ
困
(
こま
)
つた
男
(
をとこ
)
だな、
174
桃上彦
(
ももがみひこの
)
命
(
みこと
)
は
生
(
い
)
きて
居
(
を
)
られるか、
175
死
(
し
)
んで
居
(
を
)
られるか
何方
(
どちら
)
だ。
176
聞
(
き
)
かして
呉
(
く
)
れいと
言
(
い
)
ふのだ』
177
と
声
(
こゑ
)
に
力
(
ちから
)
を
入
(
い
)
れて
問
(
と
)
ひかける。
178
丙
『それは
二
(
ふた
)
つに
一
(
ひと
)
つです。
179
死
(
し
)
んだものは
生
(
い
)
きて
居
(
を
)
らぬし、
180
生
(
い
)
きたものは
死
(
し
)
んで
居
(
を
)
らぬ。
181
桃上彦
(
ももがみひこ
)
は
死
(
し
)
んで
居
(
を
)
らぬ』
182
照彦
『
死
(
し
)
んで
居
(
を
)
らぬと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
は、
183
生
(
い
)
きて
居
(
を
)
ることか』
184
丙
『
死
(
し
)
んで
居
(
を
)
らぬ』
185
照彦
『
桃上彦
(
ももがみひこの
)
命
(
みこと
)
は
死
(
し
)
んでは
居
(
を
)
らぬ、
186
生
(
い
)
きて
居
(
を
)
るのか。
187
死
(
し
)
んで
了
(
しま
)
つて、
188
此
(
この
)
世
(
よ
)
に
居
(
を
)
らぬと
云
(
い
)
ふのか、
189
確然
(
しつかり
)
返答
(
へんたふ
)
せい』
190
と
稍
(
やや
)
もどかしげ
に
声
(
こゑ
)
を
尖
(
とが
)
らして
問
(
と
)
ひかける。
191
丙
『それは
貴方
(
あなた
)
、
192
だけ
の
事
(
こと
)
を
申上
(
まをしあ
)
げます。
193
だけ
は
だけ
だからなア、
194
地獄
(
ぢごく
)
の
沙汰
(
さた
)
も、
195
それ
何
(
なん
)
とやら』
196
照彦
『エヽ
五月蝿
(
うるさ
)
い
奴
(
やつ
)
だ。
197
金
(
かね
)
だけの
事
(
こと
)
を
云
(
い
)
うてやらう、
198
地獄
(
ぢごく
)
の
沙汰
(
さた
)
も
金
(
かね
)
次第
(
しだい
)
と
云
(
い
)
つて
居
(
を
)
るのであらう。
199
よう
金
(
かね
)
を
欲
(
ほ
)
しがる
奴
(
やつ
)
だなあ。
200
足許
(
あしもと
)
を
見
(
み
)
られて
居
(
を
)
るから
仕方
(
しかた
)
がないワ。
201
サア、
202
これだけ
貴様
(
きさま
)
に
遣
(
や
)
るから
判然
(
はつきり
)
と
云
(
い
)
へ』
203
短
(
みじか
)
き
夏
(
なつ
)
の
夜
(
よ
)
は、
204
何時
(
いつ
)
しか
明
(
あ
)
け
放
(
はな
)
れて、
205
船
(
ふね
)
は
港
(
みなと
)
に
横
(
よこ
)
づけ
となる。
206
丙
『
桃上彦
(
ももがみひこ
)
は
沙漠
(
さばく
)
の
中
(
なか
)
へ
埋
(
うづ
)
められて
死
(
し
)
んで
了
(
しま
)
つたよ。
207
死
(
し
)
んだ
奴
(
やつ
)
のあとまで
云
(
い
)
うたところで
何
(
なん
)
にもなりはしない。
208
十万
(
じふまん
)
億土
(
おくど
)
の
遠
(
とほ
)
い
遠
(
とほ
)
い
国
(
くに
)
へ
行
(
い
)
つて
了
(
しま
)
つたのだよ』
209
と
云
(
い
)
ひ
棄
(
す
)
てて
尻
(
しり
)
を
捲
(
まく
)
つて
韋駄天
(
ゐだてん
)
走
(
ばし
)
りに、
210
金子
(
かね
)
を
握
(
にぎ
)
つたまま
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
しける。
[
※
この男の名は虎公で、第18章以降で再び登場し、改心する。
]
211
アヽ
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
娘
(
むすめ
)
の
心
(
こころ
)
は?
照彦
(
てるひこ
)
の
胸
(
むね
)
の
中
(
うち
)
は
如何
(
いかが
)
ぞ。
212
(
大正一一・二・一二
旧一・一六
有田九皐
録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 刹那信心
(B)
(N)
再生の思 >>>
霊界物語
>
霊主体従(第1~12巻)
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第9巻(申の巻)
> 第1篇 長途の旅 > 第7章 地獄の沙汰
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