霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第二五章 窟(いはや)の宿替(やどがへ)〔四一八〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第9巻 霊主体従 申の巻 篇:第4篇 千山万水 よみ(新仮名遣い):せんざんばんすい
章:第25章 窟の宿替 よみ(新仮名遣い):いわやのやどがえ 通し章番号:418
口述日:1922(大正11)年02月16日(旧01月20日) 口述場所: 筆録者:加藤明子 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年7月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
岩窟の前で祈念していた志芸山津見は、大蛇彦と何かを申し合わせると、谷川を渡って反対側の西の岩窟の中に入っていった。
熊公が追って行こうとすると、岩窟から大蛇彦の声が出て熊公を霊縛してその場にとどめた。そして、志芸山津見を頼らずに自力で宣伝するように、と諭した。
そこへ鹿公がやってきて熊公に声をかけた。大蛇彦は、熊公の霊縛を解いた。そして、これから西の岩窟に宿替えするから、鹿公と供に谷川を渡って西の岩窟の前に行くように、と命じた。
西の岩窟の前に着くと、岩窟から声が聞こえてきて、鹿公の悪事を責め、改心を迫る説教を始めた。鹿公は大蛇彦の声ではないと疑って岩窟の中に入ろうとしたが、大音響が響いてきて驚き、その場に平伏してしまった。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2026-09-08 23:21:27 文字数:2869 OBC :rm0925
愛善世界社版:193頁 八幡書店版:第2輯 344頁 修補版: 校定版:200頁 普及版:82頁 初版: ページ備考:
001神(かみ)の御稜威(みいづ)も高照(たかてる)の
002山(やま)より落(お)つる琴滝(ことだき)の
003響(ひびき)に飛(と)び散(ち)る玉川(たまがは)や
004水音(みなおと)清(きよ)き渓流(けいりう)の
005右(みぎ)と左(ひだり)に千引岩(ちびきいは)
006堅磐(かきは)常磐(ときは)の巌窟(いはあな)に
007千代(ちよ)の言霊(ことたま)宣(の)り伝(つた)ふ
008神(かみ)の恵(めぐみ)も大蛇彦(をろちひこ)
009教(をしへ)は深(ふか)き穴(あな)の奥(おく)
010浅(あさ)き賤(いや)しき人(ひと)の身(み)の
011如何(いか)でか知(し)らむ志芸山祇(しぎやまづみ)の
012神(かみ)の命(みこと)や肝(きも)向(むか)ふ
013心(こころ)も迷(まよ)ふ熊公(くまこう)が
014問(と)ひつ答(こた)へつ烏羽玉(うばたま)の
015暗夜(やみよ)をここに明(あか)しける
016暗夜(やみよ)をここに明(あか)しける
017 七十五(しちじふご)声(せい)の音調(おんてう)に天地(てんち)神人(しんじん)を清(きよ)むる言霊(ことたま)の滝(たき)は、018水晶(すゐしやう)の飛沫(ひまつ)の玉(たま)を遺憾(ゐかん)なく飛散(ひさん)し、019水煙(すゐえん)濛々(もうもう)と立(た)ち昇(のぼ)つて深(ふか)き谷間(たにま)を包(つつ)んでゐる。
020 志芸山津見(しぎやまづみ)、021熊公(くまこう)の二人(ふたり)は、022この巌窟(いはあな)の前(まへ)に端坐(たんざ)し、023言霊(ことたま)の問答(もんだふ)に胸(むね)の帳(とばり)は開(ひら)かれて、024天津(あまつ)日(ひ)の影(かげ)、025空(そら)を茜(あかね)に染(そ)めなしつ、026豊栄(とよさか)昇(のぼ)りに輝(かがや)き初(そ)めり。027志芸山津見(しぎやまづみ)は何(なに)か口(くち)の中(なか)にて巌窟(いはや)の神(かみ)に向(むか)ひ問答(もんだふ)を始(はじ)めてゐる。028その声(こゑ)極(きは)めて微(かすか)にして、029傍(かたはら)にある熊公(くまこう)の耳(みみ)にさへも入(はい)らぬ程度(ていど)である。
030 志芸山津見(しぎやまづみ)はつと巌窟(いはあな)の前(まへ)に立(た)つて、031立(た)ち昇(のぼ)る狭霧(さぎり)の中(なか)に姿(すがた)をかくし、032ひそかに谷川(たにがは)を渡(わた)りて西(にし)の巌窟(いはあな)の奥(おく)ふかく姿(すがた)を隠(かく)し、033滝壺(たきつぼ)の傍(かたはら)にある鉢(はち)と竹筒(たけづつ)を左右(さいう)の手(て)に提(さ)げ、034水鉢(みづばち)に水(みづ)を盛(も)つて巌窟(いはあな)の奥深(おくふか)く身(み)を潜(ひそ)めたるを見(み)て、035熊公(くまこう)は、
036熊公『オイ、037志芸山津見(しぎやまづみ)、038何処(どこ)へ行(ゆ)くのだ。039先(ま)づ待(ま)て、040俺(おれ)も一緒(いつしよ)に行(ゆ)かう』
041 この時(とき)巌窟(いはあな)は又(また)もや、
042声(大蛇彦)『ウー、043オー』
044と山(やま)も崩(くづ)るるばかりの大音響(だいおんきやう)を発(はつ)したるが、045暫時(しばらく)にしてその音響(おんきやう)止(と)まると共(とも)に巌窟(いはや)の中(なか)より、
046声『熊公(くまこう)々々(くまこう)、047その方(はう)は暫(しばら)くこの場(ば)を動(うご)く事(こと)はならぬ。048志芸山津見(しぎやまづみ)を杖(つゑ)につき力(ちから)と頼(たの)むやうな事(こと)で、049どうして宣伝(せんでん)が出来(でき)やうか。050汝(なんぢ)の身体(からだ)には、051志芸山津見(しぎやまづみ)に百千倍(ひやくせんばい)の神力(しんりき)を持(も)つた神(かみ)が守護(しゆご)をいたして居(を)るぞ』
052熊公『ソソそれは、053誠(まこと)に結構(けつこう)ですが、054一体(いつたい)彼(かれ)は何処(どこ)へ参(まゐ)つたのでせうか』
055 巌窟(いはや)の中(なか)より大蛇彦(をろちひこ)は、
056大蛇彦『それを訊(たづ)ねて何(なん)とする。057汝(なんぢ)が心(こころ)の神(かみ)に訊(たづ)ねるがよい』
058 かかる所(ところ)へ、059昨日(きのふ)山口(やまぐち)の芝生(しばふ)で会(あ)つた鹿公(しかこう)は、060数多(あまた)の村人(むらびと)と共(とも)にこの巌窟(いはあな)の前(まへ)に現(あら)はれ来(きた)り、061叩頭(こうとう)拍手(はくしゆ)し熊公(くまこう)の姿(すがた)を見(み)て、
062鹿公『オヤ、063お前(まへ)は昨日(きのふ)会(あ)つた熊公(くまこう)ぢやないか、064どうだつた。065随分(ずゐぶん)叱(しか)られただらう。066さうして虎公(とらこう)はどうしたのだ』
067熊公『オー、068鹿公(しかこう)か、069虎(とら)の奴(やつ)、070友達(ともだち)甲斐(かひ)もない、071俺(おれ)をこんなとこへ置(お)き去(ざ)りにして何処(どこ)か勝手(かつて)に行(い)つて仕舞(しま)つたのだ。072俺(おれ)も後(あと)を追(お)つて行(ゆ)かうかと思(おも)つたが、073何(なん)だか知(し)らぬが、074俄(にはか)に胴(どう)が据(すわ)つて動(うご)けぬのだ』
075鹿公『そりや貴様(きさま)、076腰(こし)を抜(ぬ)かしよつたのだらう、077弱(よわ)い奴(やつ)だなア。078モシモシ、079巌窟(いはあな)の中(なか)の神(かみ)様(さま)、080今日(けふ)は沢山(たくさん)の村人(むらびと)を連(つ)れて参(まゐ)りました。081どうぞ村(むら)の者(もの)に結構(けつこう)な教(をしへ)を聞(き)かしてやつて下(くだ)さいませ』
082大蛇彦(をろちひこ)『ヤア鹿公(しかこう)か、083よくも出(で)て来(き)た。084この巌窟(いはあな)は昨日(きのふ)虎公(とらこう)がやつて来(き)て汚(けが)しよつたによつて、085唯今(ただいま)より西(にし)の巌窟(いはあな)に宿替(やどがへ)を致(いた)す。086熊公(くまこう)は霊縛(れいばく)を許(ゆる)したれば、087足腰(あしこし)は自由(じいう)に立(た)つであらう。088サア熊公(くまこう)に随(つ)いて、089鹿(しか)その他(た)の者共(ものども)はこの谷川(たにがは)を越(こ)えて、090西(にし)の巌窟(いはあな)の前(まへ)に行(ゆ)け。091誠(まこと)の事(こと)を聞(き)かしてやらう。092ウー、093オー』
094と又(また)もや大音響(だいおんきやう)を発(はつ)し、095巌窟(いはあな)も破裂(はれつ)せむかと思(おも)ふばかりなり。
096 熊公(くまこう)を先頭(せんとう)に一同(いちどう)は滝(たき)の下(した)の谷川(たにがは)を飛(と)び越(こ)えて、097西(にし)の巌窟(いはあな)の前(まへ)に辿(たど)り着(つ)き頭(かしら)を下(さ)げて、
098熊公(くまこう)『ヨー今日(けふ)は大蛇彦(をろちひこ)様(さま)の新(あたら)しき御殿(ごてん)、099ではない暗(くら)い巌窟(いはあな)のお座敷(ざしき)に御(ご)転宅(てんたく)遊(あそ)ばされまして、100誠(まこと)にお目出度(めでた)う存(ぞん)じます。101お取込(とりこみ)の際(さい)とて、102嘸(さぞ)お忙(いそが)しい事(こと)でございませう。103私(わたくし)でお間(ま)に合(あ)ふ事(こと)ならば、104どうぞ手伝(てつだ)はせて下(くだ)さいませ』
105 巌窟(いはあな)の中(なか)より、
106大蛇彦『ブー、107ブー、108ブル、109ブル、110ブル、111ブル』
112熊公(くまこう)『大蛇彦(をろちひこ)の神(かみ)さまとやら、113私(わたくし)がこれ程(ほど)叮嚀(ていねい)に頭(あたま)を下(さ)げて御(ご)挨拶(あいさつ)を申上(まをしあ)げて居(ゐ)るのに、114只(ただ)一言(ひとこと)のお答(こたへ)もなく、115ブー、116ブー、117ブル、118ブル、119ブル、120ブルとは、121何程(なんぼ)神(かみ)様(さま)でも些(ちつ)と失敬(しつけい)ぢやありませぬか。122水桶(みづをけ)に尻(しり)を捲(まく)つて、123揚(あ)げたり浸(つ)けたりしながら、124屁(へ)を放(ひ)つてお尻(しり)で返事(へんじ)をなさるとは、125それは本気(ほんき)でなさるのか、126吾々(われわれ)を侮辱(ぶじよく)するのか』
127鹿公(しかこう)『オイオイ、128熊公(くまこう)、129本気(ほんき)も何(なに)もあつたものかい、130神(かみ)様(さま)は平気(へいき)なものだよ。131貴様(きさま)のやうな奴(やつ)はこれで結構(けつこう)だ。132水(みづ)の中(なか)で屁(へ)をこいたやうな三五教(あななひけう)とやらに恍(とぼ)けて居(を)るから、133神(かみ)様(さま)が阿呆(あはう)らしいと云(い)つて、134屁(へ)を御(お)かまし遊(あそ)ばしたのだ』
135 この時(とき)巌窟(いはあな)の中(なか)より、136竹筒(たけづつ)を吹(ふ)くやうな声(こゑ)が聞(きこ)え来(きた)る。
137大蛇彦『ブウー、138ブウー、139ブル、140ブル、141ブル、142ブル、143ブル』
144熊公(くまこう)『なんだ、145阿呆(あほ)くさい、146また屁(へ)だ、147屁(へ)の神(かみ)様(さま)だ』
148 巌窟(いはあな)の中(なか)から、
149大蛇彦『アヽヽヽ悪(あく)に強(つよ)い鹿公(しかこう)の奴(やつ)、150朝(あさ)から晩(ばん)まで、151神(かみ)の使(つか)はしめの当山(たうざん)の猪(しし)を狩立(かりた)て、152兎(うさぎ)を獲(と)り、153威張(ゐば)り散(ち)らして、154玉山(ぎよくざん)の麓(ふもと)の玉芝(たましば)の上(うへ)で、155虎(とら)、156熊(くま)の二人(ふたり)に向(むか)つてほざいた事(こと)覚(おぼ)えて居(ゐ)るか。157イヽヽヽ否応(いやおう)なしに改心(かいしん)いたせばよし、158違背(ゐはい)に及(およ)べば、159今(いま)この場(ば)において白羽(しらは)の矢(や)を持(も)つて射殺(いころ)して仕舞(しま)はうか』
160鹿公(しかこう)『モヽヽもし、161神(かみ)様(さま)、162それは、163あまりぢやありませぬか。164貴神(あなた)様(さま)は、165悪(あく)に強(つよ)い者(もの)は善(ぜん)にも強(つよ)い、166悪(あく)をようせぬやうな者(もの)は、167人間(にんげん)ぢやない、168この神(かみ)の氏子(うぢこ)ぢやない、169力(ちから)一杯(いつぱい)山河(やまかは)を駆(か)けまはつて、170イヽヽ生物(いきもの)の命(いのち)を取(と)つて、171人(ひと)の生血(いきち)をしぼつて威勢(ゐせい)よく暮(くら)せ、172と仰有(おつしや)つたぢやないか。173それに今日(けふ)は全然(まるで)掌(てのひら)をかへしたやうに妙(めう)な事(こと)を仰有(おつしや)います。174大方(おほかた)貴神(あなた)は悪魔(あくま)でせう。175東(ひがし)の穴(あな)の神(かみ)さまとは違(ちが)ふのだらう[※この西の巌窟の声の正体は大蛇彦ではなく志芸山津見(虎公)のようである。次章参照。]』
176熊公(くまこう)『オイ鹿公(しかこう)、177それでも貴様(きさま)、178これから西(にし)の巌窟(いはあな)へ宿替(やどが)へすると仰有(おつしや)つたぢやないか』
179鹿公『ウン、180それも、181さうぢやつたなあ』
182熊公『貴様(きさま)は、183今日(けふ)は叱(しか)られる番(ばん)だ、184確(しか)と耳(みみ)を掃除(さうぢ)して聞(き)くがよからう。185神(かみ)に叱(しか)られ気(き)は紅葉(もみぢ)、186踏(ふ)み迷(まよ)ひ鳴(な)く鹿(しか)の、187声(こゑ)聞(き)く時(とき)は気(き)の毒(どく)なりける次第(しだい)なりけりだ』
188鹿公『馬鹿(ばか)にするない』
189 巌窟(いはあな)の中(なか)から、
190大蛇彦『ウー、191ウー疑(うたが)ふか、192鹿(しか)の奴(やつ)、193疑(うたが)へばその方(はう)の素性(すじやう)を大勢(おほぜい)の前(まへ)で素破(すつぱ)抜(ぬ)かうか。194朝(あさ)から晩(ばん)まで、195猪(しし)や兎(うさぎ)の尻(しり)を追(お)ひまくるのはまだしも、196東(ひがし)の後家(ごけ)や西(にし)の後家(ごけ)、197五十(ごじふ)の尻(しり)を作(つく)つて、198若(わか)い娘(むすめ)の後(あと)を追(お)ひ廻(まは)し、199肘弓(ひぢゆみ)に弾(はじ)かれて、200腹立(はらだち)紛(まぎ)れに酒(さけ)を喰(くら)ひ、201家(うち)へ帰(かへ)つて女房(にようばう)に面当(つらあて)、202その態(ざま)は何(なん)の事(こと)だ』
203鹿公『アヽもしもし、204岩(いは)の神(かみ)様(さま)、205それはあまりです。206どうぞ、207そればかしは言(い)はぬやうにして下(くだ)さい。208あまり気(き)のよいものでは御座(ござ)いませぬ』
209 巌窟(いはあな)の中(なか)より、
210大蛇彦『エヘヽヽえらう困(こま)つたさうなその顔(かほ)は、211人(ひと)を酷(えら)い目(め)に遇(あ)はした報(むく)いで、212今日(けふ)はえらい恥(はぢ)を曝(さら)されるのも身(み)から出(で)た錆(さび)、213まだ、214まだ、215まだ、216まだあるぞ』
217熊公(くまこう)『エヽヽ好(え)い加減(かげん)に往生(わうじやう)せぬか、218鹿(しか)の野郎(やらう)』
219鹿公『何(なに)を貴様(きさま)まで、220エヽヽなんて真似(まね)をしよつて、221何(なに)をほざきよるのだ』
222 巌窟(いはあな)の中(なか)より、
223大蛇彦『オヽヽ大蛇彦(をろちひこ)の眼(まなこ)は、224隅(すみ)から隅(すみ)まで透(す)き通(とほ)る、225鬼(おに)の眼(め)に見落(みおと)しはなし。226大盗賊(おほどろぼう)の張本人(ちやうほんにん)、227大悪魔(おほあくま)の容器(いれもの)、228大(おほ)馬鹿者(ばかもの)の鹿(しか)の奴(やつ)、229この大穴(おほあな)の前(まへ)で、230大恥(おほはじ)かいて大味噌(おほみそ)つけて、231怖(お)ぢ怖(お)ぢと尾(を)を捲(ま)く可笑(をか)しさ、232アハヽヽ』
233鹿公『ヤア此奴(こいつ)、234些(ちつ)とをかしいぞ。235東(ひがし)の巌窟(いはあな)の声(こゑ)とは余程(よほど)変(へん)だ。236竹筒(たけづつ)を吹(ふ)いて、237物(もの)を言(い)ふやうな事(こと)を言(い)ひよる。238大方(おほかた)虎公(とらこう)の奴(やつ)、239俺(おれ)を一杯(いつぱい)かけやうと思(おも)つて、240熊公(くまこう)と申合(まをしあは)せて芝居(しばゐ)を仕組(しぐ)みよつたのだらう。241よし、242よし、243よし、244これから、245この鹿公(しかこう)が、246虎穴(こけつ)に入(い)らずむば虎児(こじ)を得(え)ずだ。247一(ひと)つ命(いのち)を的(まと)に穴(あな)の中(なか)に探険(たんけん)と出(で)かけやうカイ』
248と云(い)ひながら、249むつくと立(た)ち上(あが)り、250鹿公(しかこう)が今(いま)や巌窟(いはあな)に立(た)ち入(い)らむとする時(とき)、251天地(てんち)も破(やぶ)るるばかりの大音響(だいおんきやう)、
252大蛇彦『ウー、253オー』
254 鹿公(しかこう)は、
255鹿公『イヨー此奴(こいつ)は矢張(やは)り本物(ほんもの)だ。256どうぞお赦(ゆる)し下(くだ)さいませ』
257と拍子(ひやうし)抜(ぬ)けしたやうな声(こゑ)で、258又(また)もや巌窟(いはあな)の前(まへ)に平伏(へいふく)する。
259 折(をり)から吹(ふ)き来(く)る烈風(れつぷう)の梢(こずゑ)を渡(わた)る音(おと)、260滝(たき)の響(ひび)きと相和(あひわ)して心(しん)砕(くだ)け、261魂(こん)消(き)ゆる如(ごと)き騒然(さうぜん)たる光景(くわうけい)を現出(げんしゆつ)したり。
262(大正一一・二・一六 旧一・二〇 加藤明子録)
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