霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第一六章 蛸(たこ)釣(つ)られ〔四〇九〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第9巻 霊主体従 申の巻 篇:第3篇 天涯万里 よみ(新仮名遣い):てんがいばんり
章:第16章 蛸釣られ よみ(新仮名遣い):たこつられ 通し章番号:409
口述日:1922(大正11)年02月14日(旧01月18日) 口述場所: 筆録者:河津雄 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年7月5日
概要: 舞台: あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「王仁DB」にあります。[×閉じる]:
駒山彦は淤縢山津見をしきりに呼び止めていたが、体が動かない。ふと見ると、月光に照らされた照彦は、珍山彦の姿に変わっていた。照彦の神は引き続き、駒山彦への説教を続ける。
そして最後に、ここで駒山彦に修行するように、と言い渡すと、照彦は宣伝歌を歌いながら去ってしまった。
駒山彦はこの谷間に百日百夜座らされて断食の行を積んだ。日夜神の教訓を受けて、立派な宣伝使となった。そして名を羽山津見司を改めて、黄泉比良坂の神業に参加することになる。
実は照彦は、ある尊い神の分霊であった。後に戸山津見司となる。
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-06-23 22:27:12 文字数:2670 OBC :rm0916
愛善世界社版:133頁 八幡書店版:第2輯 322頁 修補版: 校定版:139頁 普及版:55頁 初版: ページ備考:
001 神(かみ)の恵(めぐみ)の弥(いや)深(ふか)き、002この谷底(たにぞこ)に残(のこ)されし、003駒山彦(こまやまひこ)は淤縢山津見(おどやまづみ)の帰(かへ)りゆく姿(すがた)を眺(なが)めて、
004駒山彦『オーイ、005オーイ』
006と呼(よ)び止(と)めるを、007淤縢山津見(おどやまづみ)はこの声(こゑ)を木耳(きくらげ)の、008耳(みみ)を塞(ふさ)いて悠々(いういう)と、009宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひながら下(くだ)り行(ゆ)く。010月(つき)は漸々(やうやう)にして、011山(やま)の端(は)を出(い)で、012皎々(かうかう)と輝(かがや)き渡(わた)り、013二人(ふたり)の面(かほ)はここに判然(はんぜん)せり。014見(み)れば、015照彦(てるひこ)は、016俄(にはか)に容貌(ようばう)変(かは)り、017珍山彦(うづやまひこ)の姿(すがた)に変化(へんげ)し居(ゐ)たるなり。
018駒山彦(こまやまひこ)『ヤア、019貴様(きさま)は照彦(てるひこ)と思(おも)つてゐたら、020何(なん)だ、021蚊々虎(かがとら)の珍山彦(うづやまひこ)か、022あまり馬鹿(ばか)にするな、023洒落(しやれ)るにも程(ほど)があるぞ』
024照彦(てるひこ)『スヽヽスツカリ腰(こし)を抜(ぬ)かした駒山彦(こまやまひこ)の宣伝使(せんでんし)。025そんな腰抜(こしぬけ)の分際(ぶんざい)で、026どうして道(みち)が広(ひろ)まるか。027どうして大道(だいだう)が進(すす)めるか。028雀(すずめ)や燕(つばめ)の親方(おやかた)のやうに口(くち)ばかり達者(たつしや)でも……』
029駒山彦(こまやまひこ)『スヽヽスリヤ何(なに)を言(い)ふのだ。030貴様(きさま)も何時(いつ)までも、031そんな悪(わる)い悪戯(いたづら)をせずに、032俺(おれ)に鎮魂(ちんこん)をして、033脚(あし)を起(た)たしてくれたら如何(どう)だ』
034照彦『スヽヽスワ一大事(いちだいじ)と言(い)ふやうにならねば、035貴様(きさま)の腰(こし)は起(た)たぬ。036酸(す)いも甘(あま)いも皆(みな)知(し)りぬいた蚊々虎(かがとら)を、037その方(はう)は今(いま)まで何(なん)と心得(こころえ)て居(ゐ)たか。038稲(いね)を作(つく)つて、039米(こめ)を搗(つ)いて、040飯(めし)を炊(た)いて、041サアお食(あが)りといふ様(やう)に、042据(す)ゑ膳(ぜん)を食(く)つた苦労(くらう)の足(た)らぬ宣伝使(せんでんし)。043スツカリ曲津(まがつ)に欺(だま)されて、044隙(すき)だらけの汝(なんぢ)の身魂(みたま)、045汝(なんぢ)のやうな、046馬鹿(ばか)な身魂(みたま)は尠(すくな)からう。047少彦名(すくなひこなの)神(かみ)の在(おは)します常世(とこよ)の国(くに)へ、048直(すぐ)に行(ゆ)かうとはチト慢心(まんしん)が過(す)ぎる。049この細谷川(ほそたにがは)の山奥(やまおく)で難行(なんぎやう)苦行(くぎやう)の功(こう)を積(つ)み、050神(かみ)の助(たす)けを蒙(かうむ)つて身魂(みたま)を洗(あら)ひ浄(きよ)め、051少(すこ)しも疵(きず)のない、052日月(じつげつ)のやうな心(こころ)に研(みが)き上(あ)げ、053素盞嗚(すさのをの)尊(みこと)の雄々(をを)しき生(うま)れ変(かは)り、054頭(あたま)の上(うへ)から身体(からだ)の裾(すそ)まで、055気(き)をつけて、056スタスタと山路(やまみち)を進(すす)んで行(ゆ)くのが汝(なんぢ)の天職(てんしよく)。057素直(すなほ)な心(こころ)を以(もつ)て、058末(すゑ)永(なが)く神(かみ)に仕(つか)へよ。059スマから隅(すま)まで、060澄(す)みきる今宵(こよひ)の月(つき)の顔(かほ)、061これを心(こころ)の鏡(かがみ)とし、062皇(すめ)大神(おほかみ)に仕(つか)へ奉(たてまつ)れ。063誠(まこと)の道(みち)をスラスラと脚(あし)も達者(たつしや)に起(た)ち上(あが)れ』
064駒山彦『セヽヽセングリセングリ、065イヤモウ、066おむつかしい御(ご)意見(いけん)を承(うけたま)はつて、067ウンザリした。068世界(せかい)は広(ひろ)しと雖(いへど)も、069心(こころ)は急(せ)き立(た)てども、070急(せ)けば急(せ)くほど足腰(あしこし)は起(た)たず、071世間(せけん)の奴(やつ)にこんな所(ところ)を見(み)られたら、072愛想(あいさう)をつかされ、073捨(す)てられて、074宣伝使(せんでんし)の面目玉(めんぼくだま)は丸潰(まるつぶ)れだ』
075照彦『ソヽヽさうだらうさうだらう、076ソワソワしいその態(ざま)は何(なん)だ。077そこらに人(ひと)はないと申(まを)すが、078これだけ沢山(たくさん)の神々(かみがみ)が眼(め)につかぬか。079それほど外(そと)の聞(きこ)えが気(き)にかかるなら、080そなたの心(こころ)を取(と)り直(なほ)し、081心(こころ)の底(そこ)からその慢心(まんしん)を祓(はら)ひ出(だ)せ。082空(そら)行(ゆ)く雲(くも)も自由(じいう)自在(じざい)に走(はし)るでないか。083其方(そなた)の脚(あし)はそりや何(なん)の醜態(ざま)、084それでもまだ気(き)が付(つ)かぬか。085もうそろそろと我(が)を折(を)つたらどうだ』
086駒山彦『モウ、087ソロソロと脚(あし)を起(た)たして呉(く)れてもよかりさうなものだな』
088照彦『タヽヽヽタヽさぬ起(た)たさぬ。089他愛(たあい)もないこと、090大変(たいへん)に饒舌(しやべく)る宣伝使(せんでんし)。091息(いき)も絶(た)え絶(だ)えになるとこまで、092イヤサ、093この場(ば)で倒(たふ)れるとこまで戒(いまし)めて、094高(たか)い鼻(はな)を叩(たた)き折(を)つて、095煮(た)いて喰(く)てやらうか。096野山(のやま)の猛(たけ)き獣(けだもの)の餌食(ゑじき)になるか、097蛸(たこ)のやうな骨(ほね)も何(なん)にもないたわけ者(もの)、098たたきにしようか、099それが嫌(いや)なら直(ただち)に改心(かいしん)するか。100改心(かいしん)出来(でき)たら足(あし)は起(た)つぞよ。101腹(はら)をたてな、102腹(はら)を立(た)てると足(あし)は立(た)つまいぞよ。103譬(たと)へて言(い)へば高峰(たかね)の花(はな)、104大空(おほぞら)の月(つき)、105神(かみ)の誠(まこと)の奥(おく)は、106よほど改心(かいしん)を致(いた)さねば、107掴(つか)むことは出来(でき)ぬぞよ。108何(なに)ほど言(い)うても、109訳(わけ)の解(わか)らぬ情(なさけ)ない、110なまくら身魂(みたま)の鉛(なまり)のやうな両刃(もろは)の剣(つるぎ)で何(なに)が出来(でき)るか。111泣(な)いて暮(くら)すも一生(いつしやう)なら、112笑(わら)つて暮(くら)すも一生(いつしやう)だ。113ない袖(そで)は振(ふ)れぬ、114ない智慧(ちゑ)はしぼれまい。115ホロが萎(な)えたか、116直霊(なほひ)のみたまに詔(の)り直(なほ)せ。117中々(なかなか)難(むつ)かしい神(かみ)の道(みち)、118気楽(きらく)に思(おも)うて居(ゐ)ると、119泣(な)き面(づら)かわくやうなことが度々(たびたび)あるぞよ。120罪(つみ)もなく、121穢(けがれ)もなく、122心(こころ)の玉(たま)に曇(くも)りなければ、123どんな事(こと)でも為(な)し遂(と)げらる。124誠(まこと)の固(かた)まつたのは長(なが)う栄(さか)えるぞよ。125名(な)さへ目出度(めでた)き高砂(たかさご)の、126この神島(かみじま)に渡(わた)りながら、127汝(なんぢ)のなしたる修業(しうげふ)は蚊々虎(かがとら)の蚊(か)の涙(なみだ)にも及(およ)ばぬ、128何(なに)を致(いた)すも耐(こら)へ忍(しの)びが肝腎(かんじん)だ。129鈍刀(なまくらがたな)で悪魔(あくま)は斬(き)れぬぞ。130心(こころ)の波(なみ)を静(しづ)かにをさめ、131艱難(かんなん)辛苦(しんく)を嘗(な)め、132奈落(ならく)の底(そこ)も恐(おそ)れぬ魂(たましひ)にならねば、133何事(なにごと)も成(な)り遂(と)げぬぞよ。134ものの成(な)るは、135成(な)るの日(ひ)に成(な)るにあらずして、136成(な)らぬ日(ひ)に成(な)るのである。137早(はや)く神心(かみごころ)に成(な)れ成(な)れ駒山彦(こまやまひこ)。138惟神(かむながら)の道(みち)に倣(なら)うて此(この)世(よ)を渡(わた)れ。139チヽヽ知慧(ちゑ)や学(がく)を頼(たよ)りに致(いた)すな。140近欲(ちかよく)に迷(まよ)ふな。141直取(ぢきとり)をすな。142ヂグヂグと考(かんが)へて進(すす)め。143道(みち)に違(ちが)うた事(こと)は遣(や)り直(なほ)せ。144小(ちひ)さい心(こころ)で知識(ちしき)を鼻(はな)にかけ、145天狗面(てんぐづら)して笑(わら)はれな。146チツトは物事(ものごと)を考(かんが)へて地(ち)に落(お)ちた人間(にんげん)を助(たす)け、147千早振(ちはやふ)る神(かみ)の教(をしへ)を世(よ)にかがやかせ。148凡(すべ)ての事(こと)に心(こころ)を散(ち)らさず、149心(こころ)の塵(ちり)を吹(ふ)き払(はら)ひ、150誠(まこと)の知慧(ちゑ)を働(はたら)かせ。151ツヽヽ月(つき)は山(やま)の端(は)に隠(かく)れむとしてゐる。152ヤア、153照彦(てるひこ)の奴(やつこ)さまも此(この)場(ば)を去(さ)らねばなるまい。154駒山彦(こまやまひこ)ツ、155これからトツクリと御(ご)修業(しうげふ)なさるがよからう。156左様(さやう)なら』
157と言(い)ひつつ照彦(てるひこ)はツと起(た)ち上(あが)り、158悠々(いういう)としてこの場(ば)を去(さ)らむとする。
159駒山彦(こまやまひこ)『マヽヽ待(ま)つて下(くだ)さい。160折角(せつかく)月(つき)が出(で)たと思(おも)へばこの細(ほそ)い谷間(たにま)、161また月(つき)が隠(かく)れて真闇(まつくら)がりになつてしまふ。162こんな所(ところ)に一人(ひとり)放置(ほつと)かれては耐(たま)つたものではない。163ヤア照彦(てるひこ)、164お前(まへ)の神懸(かむがかり)も、165どうやら鎮(をさ)まつたと見(み)える。166俺(わし)を伴(つ)れて帰(かへ)つてくれないか』
167照彦(てるひこ)『神(かみ)の言葉(ことば)に二言(にごん)はない。168左様(さやう)なら』
169と、170またもや宣伝歌(せんでんか)を歌(うた)ひ、171闇(やみ)にまぎれて何処(どこ)ともなく立去(たちさ)りにける。
172駒山彦(こまやまひこ)『アヽ、173つまらぬ目(め)に遇(あ)はしよつた。174まるで狐(きつね)に抓(つま)まれたやうな目(め)に遇(あ)はしよつて、175二人(ふたり)の奴(やつ)、176俺(ひと)を置去(おきざ)りにして行(ゆ)くとは、177アヽ人間(にんげん)も当(あて)にならぬものだ。178まさかの時(とき)に自分(じぶん)の杖(つゑ)となり力(ちから)となり、179何処(どこ)までも随(つ)いて来(く)るものは自分(じぶん)の影法師(かげぼうし)ばつかりだ。180その影法師(かげぼうし)さへも、181闇(やみ)の夜(よ)には随(つ)いて来(き)てくれぬ。182斯(か)うなつて来(く)ると人間(にんげん)も詰(つ)まらぬものだ。183神(かみ)の教(をしへ)の司(つかさ)と言(い)ひながら、184こんな拙(つた)ない、185辛(つら)い事(こと)が世(よ)にあらうか。186頼(たの)みの綱(つな)も断(き)れ果(は)てて、187終(つひ)に会(あ)うた事(こと)もない、188月(つき)さへ見(み)えぬ谷底(たにぞこ)に突(つ)き落(おと)され、189地(つち)の上(うへ)に坐(すわ)らされて、190罪滅(つみほろぼ)しか何(なに)か知(し)らぬが、191蛸(たこ)を釣(つ)られて居(ゐ)る苦(くる)しさ。192ツクヅク思(おも)ひ廻(めぐ)らせば、193日(ひ)に夜(よ)に積(つ)んだ罪(つみ)の酬(むく)いか。194露(つゆ)の命(いのち)を存(なが)らへて、195杖(つゑ)も、196力(ちから)も、197伝手(つて)も、198泣(な)く泣(な)く苦(くる)しみ悶(もだ)える浅間(あさま)しさ。199信心(しんじん)は常(つね)にせよと、200毎日(まいにち)日日(ひにち)、201詰(つ)めかけるやうに教(をし)へられて、202漸(やうや)く宣伝使(せんでんし)になるは成(な)つたものの、203実(じつ)につれない浮世(うきよ)だナア。204強(つよ)いことを言(い)つて居(を)つても、205斯(か)う辛(つら)うては到底(たうてい)忍耐(こば)れたものぢやない。206アヽ、207行(ゆ)きつきばつたりに宣伝使(せんでんし)になつたのが、208吾(わが)身(み)の病(や)み月(つき)で運(うん)の月(つき)かい。209つくづく思案(しあん)をして見(み)れば、210月(つき)に村雲(むらくも)花(はな)に風(かぜ)、211尽(つ)きぬ思(おも)ひの此(この)谷底(たにぞこ)で、212虎(とら)狼(おほかみ)の餌食(ゑじき)になるのであらうか、213アーアー』
214と独言(ひとりごと)を言(い)つてほざいてゐる。
215 この時(とき)闇中(あんちう)よりまたもや大声(おほごゑ)が何処(どこ)ともなく響(ひび)き来(きた)る。
216 駒山彦(こまやまひこ)は、217この谷間(たにま)に百(ひやく)日(にち)百夜(ひやくや)、218跪坐(すわ)らされ、219断食(だんじき)の行(ぎやう)を積(つ)み、220日夜(にちや)神(かみ)の教訓(けうくん)を受(う)け、221いよいよ立派(りつぱ)な宣伝使(せんでんし)となつて、222名(な)を羽山津見(はやまづみの)神(かみ)と改(あらた)め、223黄泉(よもつ)比良坂(ひらさか)の神業(しんげふ)に参加(さんか)したり。224而(しか)して彼(かれ)照彦(てるひこ)は、225或(あ)る尊(たふと)き神(かみ)の分霊(ぶんれい)にして、226後(のち)には戸山津見(とやまづみの)神(かみ)となりたり。
227(大正一一・二・一四 旧一・一八 河津雄録)
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