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霊界物語
霊主体従(第1~12巻)
第9巻(申の巻)
序歌
凡例
総説歌
第1篇 長途の旅
第1章 都落
第2章 エデンの渡
第3章 三笠丸
第4章 大足彦
第5章 海上の神姿
第6章 刹那信心
第7章 地獄の沙汰
第2篇 一陽来復
第8章 再生の思
第9章 鴛鴦の衾
第10章 言葉の車
第11章 蓬莱山
第3篇 天涯万里
第12章 鹿島立
第13章 訣別の歌
第14章 闇の谷底
第15章 団子理屈
第16章 蛸釣られ
第17章 甦生
第4篇 千山万水
第18章 初陣
第19章 悔悟の涙
第20章 心の鏡
第21章 志芸山祇
第22章 晩夏の風
第23章 高照山
第24章 玉川の滝
第25章 窟の宿替
第26章 巴の舞
第5篇 百花爛漫
第27章 月光照梅
第28章 窟の邂逅
第29章 九人娘
第30章 救の神
第31章 七人の女
第32章 一絃琴
第33章 栗毛の駒
第34章 森林の囁
第35章 秋の月
第36章 偽神憑
第37章 凱歌
附録 第三回高熊山参拝紀行歌(二)
余白歌
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<<< 月光照梅
(B)
(N)
九人娘 >>>
第二八章
窟
(
いはや
)
の
邂逅
(
かいこう
)
〔四二一〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第9巻 霊主体従 申の巻
篇:
第5篇 百花爛漫
よみ(新仮名遣い):
ひゃっからんまん
章:
第28章 窟の邂逅
よみ(新仮名遣い):
いわやのかいこう
通し章番号:
421
口述日:
1922(大正11)年02月16日(旧01月20日)
口述場所:
筆録者:
森良仁
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年7月5日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
梅ケ香姫に宿を申し出た男は、春山彦と名乗った。春山彦の妻・夏姫と、三人の娘たちが梅ケ香姫を出迎えて食事を供した。
夏姫は、後ろの山に密かに石室を築いて大神様を祭っているという。梅ケ香姫に、宣伝歌と神言の奏上を依頼した。案内されて行くと、石室の中からしとやかな宣伝歌が聞こえる。梅ケ香姫は宣伝歌に聞き入っていた。
そこにいたのは二人の姉・松代姫と竹野姫であった。三人が再開に嬉し涙を流す間に、表からは騒々しい物音が聞こえてきた。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-06-23 23:19:10
OBC :
rm0928
愛善世界社版:
220頁
八幡書店版:
第2輯 353頁
修補版:
校定版:
228頁
普及版:
93頁
初版:
ページ備考:
001
冷
(
ひ
)
えたる
月
(
つき
)
は
天空
(
てんくう
)
に
光
(
ひかり
)
輝
(
かがや
)
き、
002
木枯
(
こがらし
)
の
風
(
かぜ
)
は
肌
(
はだへ
)
に
沁
(
し
)
み
渡
(
わた
)
り、
003
骨
(
ほね
)
も
徹
(
とほ
)
さむばかりなる
寒
(
さむ
)
けき
夜
(
よ
)
の
細道
(
ほそみち
)
を
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
に
伴
(
ともな
)
はれ、
004
年
(
とし
)
は
二八
(
にはち
)
か
二九
(
にく
)
からぬ、
005
花
(
はな
)
の
蕾
(
つぼみ
)
の
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
は、
006
疲
(
つか
)
れし
足
(
あし
)
もたよたよと、
007
とある
山蔭
(
やまかげ
)
の
瀟洒
(
せうしや
)
たる
一
(
ひと
)
つ
家
(
や
)
に
伴
(
ともな
)
はれ
行
(
ゆ
)
く。
008
一人
(
ひとり
)
の
男
(
をとこ
)
は、
009
男(春山彦)
『
私
(
わたくし
)
は
今
(
いま
)
まで
途中
(
とちう
)
の
事
(
こと
)
と
言
(
い
)
ひ、
010
名前
(
なまへ
)
も
申上
(
まをしあ
)
げませんでしたが、
011
春山彦
(
はるやまひこ
)
と
申
(
まを
)
す
者
(
もの
)
で
御座
(
ござ
)
います。
012
実
(
じつ
)
に
見窄
(
みすぼら
)
しき
荒屋
(
あばらや
)
なれど、
013
どうかゆるゆる
御
(
ご
)
休息
(
きうそく
)
の
上
(
うへ
)
、
014
尊
(
たふと
)
きお
話
(
はなし
)
を
聴
(
き
)
かせて
下
(
くだ
)
さいませ』
015
と
挨拶
(
あいさつ
)
しながら、
016
密
(
ひそ
)
かに
門
(
もん
)
の
戸
(
と
)
を
開
(
ひら
)
いて
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
を
迎
(
むか
)
へ
入
(
い
)
れたり。
017
春
(
はる
)
山彦
(
やまひこ
)
は
手軽
(
てがる
)
なる
夕餉
(
ゆふげ
)
を
出
(
だ
)
し、
018
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
食膳
(
しよくぜん
)
の
箸
(
はし
)
を
採
(
と
)
り、
019
茶漬
(
ちやづけ
)
さらさらと
茲
(
ここ
)
に
夕餉
(
ゆふげ
)
を
済
(
す
)
ませたり。
020
春山彦
(
はるやまひこ
)
の
娘
(
むすめ
)
と
見
(
み
)
えて、
021
花
(
はな
)
を
欺
(
あざむ
)
く
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
娘
(
むすめ
)
は、
022
叮嚀
(
ていねい
)
に
会釈
(
ゑしやく
)
しながら
膳部
(
ぜんぶ
)
を
片
(
かた
)
づける。
023
春山彦
(
はるやまひこ
)
の
妻
(
つま
)
夏姫
(
なつひめ
)
はこの
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれ、
024
叮嚀
(
ていねい
)
に
挨拶
(
あいさつ
)
をしながら、
025
夏姫
『モシ
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
026
お
年
(
とし
)
にも
似合
(
にあ
)
はぬ、
027
お
道
(
みち
)
のために
世界
(
せかい
)
をお
廻
(
まは
)
り
遊
(
あそ
)
ばすとは、
028
真
(
まこと
)
に
感心
(
かんしん
)
いたします。
029
妾
(
わらは
)
も
御覧
(
ごらん
)
の
通
(
とほ
)
り
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
娘
(
むすめ
)
を
持
(
も
)
つて
居
(
を
)
りますが、
030
何
(
ど
)
れも
此
(
こ
)
れも
嬢
(
ぢやう
)
さま
育
(
そだ
)
ちで、
031
門
(
もん
)
へ
一
(
ひと
)
つ
出
(
で
)
るのにも、
032
風
(
かぜ
)
が
当
(
あた
)
るの、
033
風
(
かぜ
)
をひくの、
034
恥
(
はづ
)
かしいのと
申
(
まを
)
して、
035
親
(
おや
)
の
懐
(
ふところ
)
ばかりに
甘
(
あま
)
えて
居
(
を
)
りますにも
拘
(
かかは
)
らず、
036
貴女
(
あなた
)
様
(
さま
)
の
雄々
(
をを
)
しき
御
(
おん
)
志
(
こころざし
)
、
037
真
(
まこと
)
に
感
(
かん
)
じ
入
(
い
)
りました。
038
私
(
わたくし
)
も
今年
(
ことし
)
の
夏
(
なつ
)
の
初
(
はじ
)
め
頃
(
ごろ
)
より、
039
三五教
(
あななひけう
)
の
信者
(
しんじや
)
となり、
040
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
を
祀
(
まつ
)
つて
信仰
(
しんかう
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
りますが、
041
何分
(
なにぶん
)
にも
此処
(
ここ
)
は
高砂
(
たかさご
)
の
島
(
しま
)
から
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
へ
渡
(
わた
)
る
喉首
(
のどくび
)
、
042
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
の
宰相司
(
さいしやうがみ
)
鷹取別
(
たかとりわけ
)
の
権力
(
けんりよく
)
強
(
つよ
)
く、
043
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
がここを
通
(
とほ
)
つたならば、
044
一人
(
ひとり
)
も
残
(
のこ
)
らず
縛
(
しば
)
り
上
(
あ
)
げて、
045
常世城
(
とこよじやう
)
へ
連
(
つ
)
れ
参
(
まゐ
)
れとの
厳
(
きび
)
しき
布令
(
ふれ
)
が
廻
(
まは
)
りまして、
046
誰
(
たれ
)
も
彼
(
かれ
)
もこの
国人
(
くにびと
)
は
欲
(
よく
)
に
迷
(
まよ
)
ひ
褒美
(
ほうび
)
に
与
(
あづか
)
らうとして、
047
昼
(
ひる
)
も
夜
(
よ
)
も
宣伝使
(
せんでんし
)
の
通行
(
つうかう
)
を
探
(
さが
)
して
居
(
ゐ
)
るやうな
次第
(
しだい
)
でございます。
048
夫
(
をつと
)
春山彦
(
はるやまひこ
)
は
信仰
(
しんかう
)
の
強
(
つよ
)
い
者
(
もの
)
でありまして、
049
夏
(
なつ
)
の
初
(
はじ
)
め
智利
(
てる
)
の
国
(
くに
)
から
此方
(
こちら
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
る
際
(
さい
)
、
050
アタル
丸
(
まる
)
の
船中
(
せんちう
)
において
美
(
うつく
)
しい
姉妹
(
おとどい
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
の
歌
(
うた
)
を
聞
(
き
)
いて、
051
今
(
いま
)
まで
奉
(
ほう
)
じてゐたウラル
教
(
けう
)
をスツカリ
止
(
や
)
め、
052
三五教
(
あななひけう
)
に
転
(
てん
)
じましたのでございます。
053
然
(
しか
)
るに
表向
(
おもてむ
)
き
三五教
(
あななひけう
)
を
信
(
しん
)
ずれば、
054
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
気勘
(
きかん
)
に
叶
(
かな
)
はぬので、
055
何
(
ど
)
んな
責苦
(
せめく
)
に
遇
(
あ
)
はされやうも
知
(
し
)
れませぬ
故
(
ゆゑ
)
、
056
密
(
ひそ
)
かに
後
(
うしろ
)
の
山
(
やま
)
に
岩屋戸
(
いはやど
)
を
築
(
きづ
)
き、
057
石室
(
いしむろ
)
の
中
(
なか
)
に
祀
(
まつ
)
つて
居
(
を
)
ります。
058
可
(
か
)
なり
広
(
ひろ
)
い
座敷
(
ざしき
)
でございますれば、
059
何卒
(
どうぞ
)
一度
(
いちど
)
、
060
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
宣伝歌
(
せんでんか
)
と
神言
(
かみごと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
して
下
(
くだ
)
さいませぬか』
061
梅ケ香姫
『
有難
(
ありがた
)
うございます。
062
危
(
あやふ
)
ふき
処
(
ところ
)
を
助
(
たす
)
けられ
御恩
(
ごおん
)
の
返
(
かへ
)
しやうも
御座
(
ござ
)
いませぬ。
063
左様
(
さやう
)
ならば
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
に
神言
(
かみごと
)
を
奏上
(
あげ
)
さして
戴
(
いただ
)
きませう』
064
夏姫
(
なつひめ
)
は、
065
夏姫
『
妾
(
わらは
)
が
案内
(
あんない
)
いたしませう』
066
と
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つて
裏庭
(
うらには
)
を
越
(
こ
)
え、
067
広
(
ひろ
)
き
巌窟
(
がんくつ
)
の
傍
(
かたはら
)
に
伴
(
ともな
)
ひ
行
(
ゆ
)
く。
068
石室
(
いしむろ
)
の
中
(
なか
)
には、
069
淑
(
しと
)
やかなる
女
(
をんな
)
の
声
(
こゑ
)
にて
宣伝歌
(
せんでんか
)
が
聞
(
きこ
)
えて
居
(
を
)
る。
070
夏姫
(
なつひめ
)
は
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
に
向
(
むか
)
ひ、
071
夏姫
『サア、
072
どうぞ
此
(
この
)
戸
(
と
)
を
向
(
むか
)
ふへ
押
(
お
)
して
下
(
くだ
)
さいますれば、
073
可
(
か
)
なり
広
(
ひろ
)
い
間
(
ま
)
がございまして、
074
大神
(
おほかみ
)
様
(
さま
)
が
祀
(
まつ
)
つてございます。
075
どうぞ
神言
(
かみごと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
して
下
(
くだ
)
さいまして、
076
悠
(
ゆる
)
りと
御
(
ご
)
休息
(
きうそく
)
なさいませ。
077
表
(
おもて
)
に
少
(
すこ
)
しく
用
(
よう
)
がございますから、
078
妾
(
わらは
)
は
是
(
これ
)
にて
失礼
(
しつれい
)
いたします』
079
と
本宅
(
ほんたく
)
の
方
(
はう
)
へ
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
したり。
080
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
は
戸口
(
とぐち
)
に
立
(
た
)
つて、
081
室内
(
しつない
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
床
(
ゆか
)
しげに
聞
(
き
)
いてゐる。
082
声(松代姫、竹野姫)
『
天地
(
てんち
)
の
神
(
かみ
)
の
守
(
まも
)
ります
083
美
(
うま
)
しの
御国
(
みくに
)
に
生
(
うま
)
れたる
084
青人草
(
あをひとぐさ
)
のここかしこ
085
茂
(
しげ
)
り
栄
(
さか
)
ゆるその
中
(
なか
)
に
086
この
世
(
よ
)
の
花
(
はな
)
と
謳
(
うた
)
はれし
087
高天原
(
たかあまはら
)
の
貴
(
うづ
)
の
宮
(
みや
)
088
神
(
かみ
)
の
長
(
をさ
)
なる
桃上彦
(
ももがみひこ
)
の
089
父
(
ちち
)
の
命
(
みこと
)
の
御跡辺
(
みあとべ
)
を
090
日
(
ひ
)
に
夜
(
よ
)
に
恋
(
こ
)
ひつ
慕
(
した
)
ひつつ
091
雨
(
あめ
)
の
夕
(
ゆふべ
)
や
風
(
かぜ
)
の
朝
(
あさ
)
092
心
(
こころ
)
をいため
暮
(
くら
)
したる
093
松竹梅
(
まつたけうめ
)
の
姉妹
(
おとどい
)
が
094
心
(
こころ
)
の
暗
(
やみ
)
を
晴
(
は
)
らさむと
095
花
(
はな
)
咲
(
さ
)
く
春
(
はる
)
の
上三日
(
かみみつか
)
096
花
(
はな
)
の
都
(
みやこ
)
を
立
(
た
)
ち
出
(
い
)
でて
097
山川
(
やまかは
)
渡
(
わた
)
り
海原
(
うなばら
)
の
098
浪
(
なみ
)
おし
分
(
わ
)
けてやうやうに
099
智利
(
てる
)
の
港
(
みなと
)
に
着
(
つ
)
きにけり
100
朝日
(
あさひ
)
も
てる
の
港
(
みなと
)
より
101
大蛇
(
をろち
)
の
船
(
ふね
)
に
乗
(
の
)
せられて
102
空
(
そら
)
鳴
(
な
)
き
渡
(
わた
)
る
杜鵑
(
ほととぎす
)
103
悲
(
かな
)
しき
三人
(
みたり
)
の
姉妹
(
おとどい
)
が
104
心
(
こころ
)
も
清
(
きよ
)
き
照彦
(
てるひこ
)
の
105
御供
(
みとも
)
の
神
(
かみ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
106
菖蒲
(
あやめ
)
も
匂
(
にほ
)
ふ
五月空
(
さつきぞら
)
107
五日
(
いつか
)
の
宵
(
よひ
)
に
嬉
(
うれ
)
しくも
108
珍
(
うづ
)
の
館
(
やかた
)
のわが
父
(
ちち
)
に
109
父子
(
ふし
)
の
縁
(
えにし
)
の
浅
(
あさ
)
からず
110
神
(
かみ
)
の
恵
(
めぐ
)
みに
助
(
たす
)
けられ
111
会
(
あ
)
うて
嬉
(
うれ
)
しき
相生
(
あひおひ
)
の
112
祝
(
いは
)
ひの
宴席
(
むしろ
)
とこしへに
113
喜
(
よろこ
)
ぶ
間
(
ま
)
もなく
惟神
(
かむながら
)
114
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
を
開
(
ひら
)
かむと
115
四男
(
よなん
)
三女
(
さんによ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
116
父
(
ちち
)
の
館
(
やかた
)
を
後
(
あと
)
にして
117
智利山
(
てるやま
)
峠
(
たうげ
)
の
頂
(
いただ
)
きに
118
立
(
た
)
ちて
都
(
みやこ
)
を
振返
(
ふりかへ
)
り
119
父母
(
ふぼ
)
に
名残
(
なごり
)
を
惜
(
を
)
しみつつ
120
ハルの
港
(
みなと
)
[
※
他の箇所では「ハラの港」と呼ばれている
]
を
船出
(
ふなで
)
して
121
秘露
(
ひる
)
とカルとの
国境
(
くにざかひ
)
122
アタルの
港
(
みなと
)
を
後
(
あと
)
になし
123
神
(
かみ
)
の
御稜威
(
みいづ
)
も
高照
(
たかてる
)
の
124
御山
(
みやま
)
を
越
(
こ
)
えて
進
(
すす
)
み
来
(
く
)
る
125
歩
(
あゆ
)
みも
軽
(
かる
)
きカルの
国
(
くに
)
126
ここに
三人
(
みたり
)
の
姉妹
(
おとどい
)
は
127
袂
(
たもと
)
を
分
(
わか
)
ちめいめいに
128
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝歌
(
せんでんか
)
129
歌
(
うた
)
ひて
進
(
すす
)
む
折柄
(
をりから
)
に
130
間
(
はざま
)
の
国
(
くに
)
に
差掛
(
さしかか
)
る
131
頃
(
ころ
)
しも
秋
(
あき
)
の
末
(
すゑ
)
つ
方
(
かた
)
132
冬
(
ふゆ
)
の
境
(
さかひ
)
の
木枯
(
こがらし
)
に
133
吹
(
ふ
)
かれて
艱
(
なや
)
む
旅
(
たび
)
の
空
(
そら
)
134
鷹取別
(
たかとりわけ
)
の
目付
(
めつけ
)
らに
135
虐
(
しひた
)
げられて
玉
(
たま
)
の
緒
(
を
)
の
136
息
(
いき
)
も
絶
(
た
)
えなむその
時
(
とき
)
に
137
花
(
はな
)
も
実
(
み
)
もある
春山彦
(
はるやまひこ
)
の
138
神
(
かみ
)
の
命
(
みこと
)
に
助
(
たす
)
けられ
139
この
世
(
よ
)
を
忍
(
しの
)
ぶ
松代姫
(
まつよひめ
)
140
竹野
(
たけの
)
の
姫
(
ひめ
)
は
今
(
いま
)
ここに
141
美
(
うつ
)
しき
顔
(
かほ
)
を
見合
(
みあ
)
はせて
142
神
(
かみ
)
の
御言
(
みこと
)
を
宣
(
の
)
りつれど
143
心
(
こころ
)
にかかるは
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
144
わが
妹
(
いもうと
)
の
一人旅
(
ひとりたび
)
145
いづくの
果
(
はて
)
に
漂浪
(
さすらひ
)
の
146
旅
(
たび
)
に
足
(
あし
)
をや
痛
(
いた
)
むらむ
147
あゝ
懐
(
なつ
)
かしき
妹
(
いもうと
)
よ
148
あゝうつくしき
梅ケ香
(
うめがか
)
の
149
姫
(
ひめ
)
の
命
(
みこと
)
よ
松竹
(
まつたけ
)
の
150
姉
(
あね
)
の
心
(
こころ
)
も
白浪
(
しらなみ
)
の
151
大海原
(
おほうなばら
)
に
漂
(
ただよ
)
ふか
152
荒野
(
あらの
)
の
果
(
はて
)
にさまよふか
153
心
(
こころ
)
慢
(
おご
)
れる
鷹取別
(
たかとりわけ
)
の
154
曲
(
まが
)
の
手下
(
てした
)
の
曲神
(
まがかみ
)
に
155
虐
(
しひた
)
げられて
千万
(
ちよろづ
)
の
156
責苦
(
せめく
)
に
遇
(
あ
)
うて
苦
(
くる
)
しむか
157
聞
(
き
)
かまほしきは
妹
(
いもうと
)
の
158
便
(
たよ
)
りなりけりいたはしや
159
会
(
あ
)
ひたさ
見
(
み
)
たさ
懐
(
なつか
)
しと
160
思
(
おも
)
へば
心
(
こころ
)
もかき
曇
(
くも
)
る
161
この
世
(
よ
)
を
造
(
つく
)
りし
神直日
(
かむなほひ
)
162
心
(
こころ
)
も
広
(
ひろ
)
き
大直日
(
おほなほひ
)
163
唯
(
ただ
)
何事
(
なにごと
)
も
人
(
ひと
)
の
世
(
よ
)
は
164
直日
(
なほひ
)
に
見直
(
みなほ
)
し
聞
(
き
)
き
直
(
なほ
)
し
165
三五教
(
あななひけう
)
の
御教
(
みをしへ
)
を
166
思
(
おも
)
ひ
廻
(
まは
)
せば
廻
(
まは
)
す
程
(
ほど
)
167
妹
(
いもと
)
の
行方
(
ゆくへ
)
偲
(
しの
)
ばれて
168
涙
(
なみだ
)
のかわく
暇
(
ひま
)
もなし
169
あゝわが
涙
(
なみだ
)
この
涙
(
なみだ
)
170
天
(
てん
)
に
昇
(
のぼ
)
りて
雨
(
あめ
)
となり
171
雪
(
ゆき
)
ともなりて
世
(
よ
)
の
人
(
ひと
)
の
172
心
(
こころ
)
の
玉
(
たま
)
を
洗
(
あら
)
へかし
173
力
(
ちから
)
に
思
(
おも
)
ふ
照彦
(
てるひこ
)
の
174
下僕
(
しもべ
)
の
神
(
かみ
)
は
今
(
いま
)
何処
(
いづこ
)
175
曲神
(
まがみ
)
の
猛
(
たけ
)
ぶ
黄泉島
(
よもつじま
)
176
黄泉
(
よもつ
)
の
国
(
くに
)
に
渡
(
わた
)
れるか
177
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
にさまよふか
178
せめては
空
(
そら
)
行
(
ゆ
)
く
雁
(
かりがね
)
の
179
便
(
たよ
)
りもがもと
思
(
おも
)
へども
180
この
世
(
よ
)
を
忍
(
しの
)
ぶ
今
(
いま
)
の
身
(
み
)
の
181
何
(
なん
)
と
詮方
(
せんかた
)
なくばかり
182
誠
(
まこと
)
の
神
(
かみ
)
よ
皇神
(
すめかみ
)
よ
183
わが
妹
(
いもうと
)
や
照彦
(
てるひこ
)
に
184
一日
(
ひとひ
)
も
早
(
はや
)
く
会
(
あ
)
はしませ
185
一日
(
ひとひ
)
も
早
(
はや
)
く
会
(
あ
)
はせまし
186
あゝ
梅ケ香
(
うめがか
)
よ
妹
(
いもうと
)
よ
187
あゝ
妹
(
いもうと
)
よ
照彦
(
てるひこ
)
よ』
188
と
歌
(
うた
)
つてゐる。
189
梅ケ香姫
(
うめがかひめ
)
はこの
声
(
こゑ
)
を
聞
(
き
)
いて、
190
かつ
驚
(
おどろ
)
きかつ
悦
(
よろこ
)
び、
191
静
(
しづ
)
かに
戸
(
と
)
を
開
(
あ
)
けて
一室
(
ひとま
)
の
内
(
うち
)
にまろび
込
(
こ
)
み、
192
梅ケ香姫
『あゝ
恋
(
こひ
)
しき
姉上
(
あねうへ
)
様
(
さま
)
』
193
と
言
(
い
)
つたきり、
194
嬉
(
うれ
)
しさに
言葉
(
ことば
)
詰
(
つま
)
つて
泣
(
な
)
くばかりなり。
195
松代姫
(
まつよひめ
)
、
196
竹野姫
(
たけのひめ
)
は
思
(
おも
)
はぬ
姉妹
(
きやうだい
)
の
対面
(
たいめん
)
に、
197
狂喜
(
きやうき
)
の
涙
(
なみだ
)
堰
(
せ
)
きあへず、
198
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
無言
(
むごん
)
のまま
嬉
(
うれ
)
し
涙
(
なみだ
)
に
咽
(
むせ
)
ぶのみなり。
199
折
(
をり
)
しも
表
(
おもて
)
に
当
(
あた
)
つて
騒々
(
さうざう
)
しき
物音
(
ものおと
)
聞
(
きこ
)
え
来
(
きた
)
る。
200
アヽこの
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
娘
(
むすめ
)
の
運命
(
うんめい
)
は
如何
(
いか
)
になるべきか、
201
心許
(
こころもと
)
なき
次第
(
しだい
)
なり。
202
(
大正一一・二・一六
旧一・二〇
森良仁
録)
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