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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
特別編 入蒙記
第1篇 日本より奉天まで
第1章 水火訓
第2章 神示の経綸
第3章 金剛心
第4章 微燈の影
第5章 心の奥
第6章 出征の辞
第7章 奉天の夕
第2篇 奉天より洮南へ
第8章 聖雄と英雄
第9章 司令公館
第10章 奉天出発
第11章 安宅の関
第12章 焦頭爛額
第13章 洮南旅館
第14章 洮南の雲
第3篇 洮南より索倫へ
第15章 公爺府入
第16章 蒙古の人情
第17章 明暗交々
第18章 蒙古気質
第19章 仮司令部
第20章 春軍完備
第21章 索倫本営
第4篇 神軍躍動
第22章 木局収ケ原
第23章 下木局子
第24章 木局の月
第25章 風雨叱咤
第26章 天の安河
第27章 奉天の渦
第28章 行軍開始
第29章 端午の日
第30章 岩窟の奇兆
第5篇 雨後月明
第31章 強行軍
第32章 弾丸雨飛
第33章 武装解除
第34章 竜口の難
第35章 黄泉帰
第36章 天の岩戸
第37章 大本天恩郷
第38章 世界宗教聯合会
第39章 入蒙拾遺
附 入蒙余録
大本の経綸と満蒙
世界経綸の第一歩
蒙古建国
蒙古の夢
神示の世界経綸
余白歌
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霊界物語
>
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
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特別編 入蒙記
> 第4篇 神軍躍動 > 第28章 行軍開始
<<< 奉天の渦
(B)
(N)
端午の日 >>>
第二八章
行軍
(
かうぐん
)
開始
(
かいし
)
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 特別篇 山河草木 入蒙記
篇:
第4篇 神軍躍動
よみ(新仮名遣い):
しんぐんやくどう
章:
第28章 行軍開始
よみ(新仮名遣い):
こうぐんかいし
通し章番号:
口述日:
1925(大正14)年08月
口述場所:
筆録者:
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年2月14日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
三井、佐々木からの情報によれば、洮南付近で盧占魁の名をかたる馬賊が横行しているため、張作霖は、盧占魁が東三省から立ち退かないと、討伐軍を差し向けると言っている、とのことである。
ところが、この報を聞いても盧占魁は、これはかねてから張作霖と約束した計略であり、張作霖が討伐して追いやった馬賊を自分が糾合する、という作戦なのだ、と言っていた。
しかしその後、輸送の弾薬が来ないことや、奉天から連絡がないことから、盧占魁もやや不安を感じたと見えて、六月二日、今後の動静について参謀一同、密議を凝らすことになった。
真澄別は張作霖を当てにせず、興安嶺に進出して独立を企てるべきだと主張した。これに対して盧占魁は、綏遠・チャハル地方に一度戻ってそちらの部隊に合流を促し、物資を補給してから外蒙に向かうようにしよう、と決めた。
ところがその間に、盧占魁軍に参加している蒙古馬賊の一隊と、東三省正規軍との間で戦闘が発生した。馬賊らは機動力を活かして見事に撤退して来たが、結局盧占魁は彼らの救出には動かなかった。
そして、官軍との衝突で東三省に構えているのはまずいと意を決したのか、西北に向かって進軍するように全軍に命令を出した。
全部隊は木局子を引き払って行軍を始めた。行軍中、先日東三省の官軍と一戦交えた馬賊の頭目・大英子児(タアインヅル)が日出雄を訪問してきた。彼は日出雄への敬意を表し、するめを戴いて帰ったが、その夜、盧占魁が救出に動かなかったことを不服として、部下とともにいずこかへ逐電してしまった。
果たして、今日では彼は熱河の奥地に本拠を構え、三千の軍を組織し、日出雄の弔い合戦をするのだ、と日出雄・真澄別の再渡来を待っているのだという。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
2024/2/9出口王仁三郎全集第6巻を底本として校正。
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2024-02-09 17:20:22
OBC :
rmnm28
愛善世界社版:
250頁
八幡書店版:
第14輯 639頁
修補版:
校定版:
253頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
これより
曩
(
さき
)
、
002
洮南
(
たうなん
)
より
三井
(
みつゐ
)
及
(
およ
)
び
佐々木
(
ささき
)
が
密使
(
みつし
)
を
遣
(
つか
)
はし『
洮南
(
たうなん
)
附近
(
ふきん
)
盧
(
ろ
)
の
名
(
な
)
を
騙
(
かた
)
る
小馬賊
(
せうばぞく
)
の
横行
(
わうかう
)
甚
(
はなはだ
)
しく、
003
官民
(
くわんみん
)
共
(
とも
)
に
困苦
(
こんく
)
の
結果
(
けつくわ
)
、
004
張
(
ちやう
)
作霖
(
さくりん
)
よりも
此
(
この
)
際
(
さい
)
盧
(
ろ
)
が
東三省
(
とうさんしやう
)
圏外
(
けんぐわい
)
に
出
(
い
)
でざる
限
(
かぎ
)
り、
005
大々
(
だいだい
)
的
(
てき
)
に
討伐軍
(
たうばつぐん
)
を
差向
(
さしむ
)
くべし』と
報
(
はう
)
じて
来
(
き
)
たが、
006
盧
(
ろ
)
司令
(
しれい
)
は
事
(
こと
)
もなげに、
007
盧占魁
『それは
自分
(
じぶん
)
が
予
(
かね
)
て
張
(
ちやう
)
大師
(
たいし
)
(
張
(
ちやう
)
作霖
(
さくりん
)
の
敬称
(
けいしやう
)
)と
約束
(
やくそく
)
した
計略
(
けいりやく
)
で、
008
東三省
(
とうさんしやう
)
内
(
ない
)
の
馬賊
(
ばぞく
)
を
討伐
(
たうばつ
)
の
名
(
な
)
に
於
(
おい
)
て
索倫
(
ソーロン
)
へ
向
(
む
)
け
追
(
お
)
ひ
放
(
はな
)
ち、
009
自分
(
じぶん
)
は
之
(
これ
)
を
全部
(
ぜんぶ
)
糾合
(
きうがふ
)
して
部下
(
ぶか
)
となすべき、
010
一挙
(
いつきよ
)
両得
(
りやうとく
)
の
妙案
(
めうあん
)
なのだ』
011
と
云
(
い
)
つてゐた。
012
然
(
しか
)
るに
爾後
(
じご
)
引続
(
ひきつづ
)
き
後方
(
こうはう
)
より
輸送
(
ゆそう
)
せらるべき
筈
(
はず
)
の
弾薬
(
だんやく
)
武器
(
ぶき
)
は
来
(
きた
)
らず、
013
又
(
また
)
所要
(
しよえう
)
のため
帰奉
(
きほう
)
した
佐々木
(
ささき
)
、
014
大倉
(
おほくら
)
、
015
楊
(
やう
)
崇山
(
すうざん
)
等
(
ら
)
より
何
(
なん
)
等
(
ら
)
の
消息
(
せうそく
)
も
到達
(
たうたつ
)
しないといふ
情況
(
じやうきやう
)
なので、
016
盧
(
ろ
)
も
稍
(
やや
)
不安
(
ふあん
)
を
感
(
かん
)
じたのか、
017
六
(
ろく
)
月
(
ぐわつ
)
二日
(
ふつか
)
腹心
(
ふくしん
)
の
部下
(
ぶか
)
数騎
(
すうき
)
を
率
(
ひき
)
ゐて、
018
上
(
かみ
)
木局子
(
もくきよくし
)
なる
日出雄
(
ひでを
)
の
仮殿
(
かりどの
)
を
訪
(
おと
)
づれ、
019
茲
(
ここ
)
に
密議
(
みつぎ
)
は
凝
(
こ
)
らされた。
020
秘密
(
ひみつ
)
事項
(
じかう
)
又
(
また
)
は
特
(
とく
)
に
緊要
(
きんえう
)
なる
問題
(
もんだい
)
は、
021
何時
(
いつ
)
も
日出雄
(
ひでを
)
の
意
(
い
)
を
受
(
う
)
けたる
真澄別
(
ますみわけ
)
と
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
と
筆談
(
ひつだん
)
にて
解決
(
かいけつ
)
するのが
例
(
れい
)
であつたから、
022
無論
(
むろん
)
此
(
この
)
日
(
ひ
)
も
筆談
(
ひつだん
)
に
依
(
よ
)
つて
両者
(
りやうしや
)
間
(
かん
)
に
問題
(
もんだい
)
が
議
(
ぎ
)
せられたのであるが、
023
其
(
その
)
要点
(
えうてん
)
は
凡
(
およ
)
そ
左
(
さ
)
の
如
(
ごと
)
き
問答
(
もんだふ
)
であつたと、
024
著者
(
ちよしや
)
は
推断
(
すゐだん
)
すべき
理由
(
りいう
)
を
有
(
も
)
つてゐる。
025
真澄別
(
ますみわけ
)
『
何時
(
いつ
)
迄
(
まで
)
も、
026
此処
(
ここ
)
に
駐屯
(
ちうとん
)
して
居
(
ゐ
)
た
所
(
ところ
)
で
仕方
(
しかた
)
がないぢやありませぬか。
027
張
(
ちやう
)
作霖
(
さくりん
)
は
貴方
(
あなた
)
の
思
(
おも
)
ふてる
程
(
ほど
)
、
028
貴方
(
あなた
)
を
決
(
けつ
)
して
後援
(
こうえん
)
しませぬよ。
029
それよりも
独立
(
どくりつ
)
開発
(
かいはつ
)
の
計
(
けい
)
を
立
(
た
)
て、
030
先
(
ま
)
づ
源義経
(
ジンギス
)
が
初
(
はじ
)
めて
王旗
(
わうき
)
を
飜
(
ひるがへ
)
したと
伝
(
つた
)
へられてる
興安嶺
(
こうあんれい
)
の
聖地
(
せいち
)
迄
(
まで
)
進軍
(
しんぐん
)
したら
何
(
ど
)
うですか、
031
興安嶺
(
こうあんれい
)
には
七千
(
しちせん
)
の
赤軍
(
せきぐん
)
が
居
(
ゐ
)
ると
貴方
(
あなた
)
は
謂
(
い
)
はれましたが、
032
霊眼
(
れいがん
)
で
見
(
み
)
ると、
033
乗馬
(
じやうば
)
は
四五
(
しご
)
百
(
ひやく
)
頭
(
とう
)
ある
様
(
やう
)
だけれど、
034
人
(
ひと
)
は
二百
(
にひやく
)
足
(
た
)
らずですよ。
035
通訳官
(
つうやくくわん
)
さへ
付
(
つ
)
けて
呉
(
く
)
れれば、
036
私
(
わたし
)
一人
(
ひとり
)
先発
(
せんぱつ
)
して
立派
(
りつぱ
)
に
妥協
(
だけふ
)
して
見
(
み
)
せますがなア』
037
盧
(
ろ
)
『イヤ、
038
誠
(
まこと
)
に
遅延
(
ちえん
)
して
済
(
す
)
みませぬ。
039
長銃
(
ちやうじゆう
)
が
不足
(
ふそく
)
だものですから、
040
あれでもと
思
(
おも
)
ふて
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
ましたが、
041
モウ
決心
(
けつしん
)
致
(
いた
)
します。
042
併
(
しか
)
し
興安嶺
(
こうあんれい
)
のあの
地帯
(
ちたい
)
は
食料
(
しよくれう
)
がなく、
043
これ
丈
(
だけ
)
の
人数
(
にんずう
)
が
繰込
(
くりこ
)
んでは
忽
(
たちま
)
ち
物資
(
ぶつし
)
に
困
(
こま
)
ります。
044
それよりも
先
(
ま
)
づ
綏遠
(
スヰヱン
)
、
045
察哈爾
(
チヤハル
)
地方
(
ちはう
)
より
当方
(
たうはう
)
へ
参加
(
さんか
)
する
大部隊
(
だいぶたい
)
に
早
(
はや
)
く
合
(
がつ
)
する
様
(
やう
)
、
046
其
(
その
)
方向
(
はうかう
)
に
向
(
むか
)
ひ、
047
充分
(
じゆうぶん
)
物資
(
ぶつし
)
を
豊富
(
ほうふ
)
にして、
048
それから
外蒙
(
ぐわいもう
)
へ
向
(
むか
)
ひませう。
049
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
の
内
(
うち
)
には
出発
(
しゆつぱつ
)
する
様
(
やう
)
に
取計
(
とりはか
)
らひますから……』
050
斯
(
かか
)
る
折柄
(
をりから
)
、
051
下
(
しも
)
木局子
(
もくきよくし
)
に
留守居
(
るすゐ
)
をして
居
(
ゐ
)
た
馬
(
ば
)
副官
(
ふくくわん
)
は
顔色
(
かほいろ
)
を
変
(
か
)
へ、
052
全速力
(
ぜんそくりよく
)
で
馬
(
うま
)
を
飛
(
と
)
ばしてやつて
来
(
き
)
て、
053
何事
(
なにごと
)
か
慌
(
あはただ
)
しく
報告
(
はうこく
)
した。
054
これを
聴
(
き
)
くと
盧
(
ろ
)
は
決心
(
けつしん
)
の
色
(
いろ
)
を
面
(
おもて
)
に
浮
(
うか
)
べて
立上
(
たちあが
)
り、
055
日出雄
(
ひでを
)
一行
(
いつかう
)
に
出発
(
しゆつぱつ
)
の
準備
(
じゆんび
)
を
請
(
こ
)
ひおき、
056
直
(
ただ
)
ちに
司令部
(
しれいぶ
)
指
(
さ
)
して
急
(
いそ
)
ぎ
帰
(
かへ
)
つた。
057
司令部
(
しれいぶ
)
の
東南方
(
とうなんぱう
)
約
(
やく
)
三十
(
さんじふ
)
支里
(
しり
)
の
地点
(
ちてん
)
に
殿
(
しんがり
)
として、
058
満州
(
まんしう
)
馬賊
(
ばぞく
)
の
大頭目
(
だいとうもく
)
大英子児
(
タアインヅル
)
が
手兵
(
しゆへい
)
の
一部
(
いちぶ
)
六十
(
ろくじふ
)
余
(
よ
)
騎
(
き
)
を
率
(
ひき
)
ゐて
駐屯
(
ちうとん
)
して
居
(
ゐ
)
たが、
059
此
(
この
)
日
(
ひ
)
恰
(
あだか
)
も
大英子児
(
タアインヅル
)
は
司令部
(
しれいぶ
)
へ
出頭
(
しゆつとう
)
し
不在中
(
ふざいちゆう
)
部下
(
ぶか
)
の
者
(
もの
)
共
(
ども
)
は、
060
寛
(
くつろ
)
いで
昼寝
(
ひるね
)
の
夢
(
ゆめ
)
を
貪
(
むさぼ
)
つてゐる
最中
(
さいちう
)
、
061
洮南
(
たうなん
)
の
官兵
(
くわんぺい
)
約
(
やく
)
三百
(
さんびやく
)
余
(
よ
)
騎
(
き
)
が
突然
(
とつぜん
)
襲撃
(
しふげき
)
したのである。
062
大英子児
(
タアインヅル
)
の
部下
(
ぶか
)
は
少数
(
せうすう
)
なりと
雖
(
いへど
)
も、
063
皆
(
みな
)
一騎
(
いつき
)
当千
(
たうせん
)
の
粒揃
(
つぶぞろ
)
ひの
事
(
こと
)
なれば、
064
直
(
ただ
)
ちに
裸
(
はだか
)
の
儘
(
まま
)
銃
(
じゆう
)
を
取
(
と
)
つて
応戦
(
おうせん
)
し、
065
数百
(
すうひやく
)
の
官兵
(
くわんぺい
)
を
一歩
(
いつぽ
)
も
寄
(
よ
)
せつけず、
066
一方
(
いつばう
)
急
(
きふ
)
を
司令部
(
しれいぶ
)
に
報
(
はう
)
じた。
067
司令部
(
しれいぶ
)
にては
戦
(
せん
)
非戦
(
ひせん
)
両派
(
りやうは
)
対立
(
たいりつ
)
して
議
(
はかりごと
)
容易
(
ようい
)
に
纏
(
まとま
)
らずといふ
有様
(
ありさま
)
なので、
068
大英子児
(
タアインヅル
)
は
単身
(
たんしん
)
馬
(
うま
)
を
飛
(
と
)
ばして、
069
自分
(
じぶん
)
の
屯営
(
とんえい
)
に
立帰
(
たちかへ
)
り、
070
部下
(
ぶか
)
を
引纏
(
ひきまと
)
め
悠々
(
いういう
)
として
司令部
(
しれいぶ
)
迄
(
まで
)
引揚
(
ひきあ
)
げた。
071
其
(
その
)
敏活
(
びんくわつ
)
さ、
072
豪胆
(
がうたん
)
さに
官兵
(
くわんぺい
)
は
肝
(
きも
)
を
奪
(
うば
)
はれてか、
073
敢
(
あへ
)
て
追撃
(
つゐげき
)
もしなかつたのである。
074
此
(
この
)
時
(
とき
)
司令部
(
しれいぶ
)
の
一室
(
いつしつ
)
に
控
(
ひか
)
へて
居
(
ゐ
)
た
岡崎
(
をかざき
)
将軍
(
しやうぐん
)
は
参謀
(
さんぼう
)
連
(
れん
)
の
不甲斐
(
ふがひ
)
なきを
怒
(
いか
)
り、
075
岡崎
『こんな
連中
(
れんちう
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に
居
(
ゐ
)
ては
先生
(
せんせい
)
の
御
(
お
)
身
(
み
)
が
案
(
あん
)
ぜられる』
076
とて
手近
(
てぢか
)
にあつた
兵糧
(
ひやうらう
)
を
取纏
(
とりまと
)
め、
077
牛車
(
ぎうしや
)
数台
(
すうだい
)
を
徴発
(
ちようはつ
)
して
之
(
これ
)
を
積載
(
せきさい
)
し
078
急
(
いそ
)
ぎ
上
(
かみ
)
木局子
(
もくきよくし
)
の
仮殿
(
かりどの
)
に
向
(
むか
)
つた。
079
之
(
これ
)
と
入
(
い
)
れ
違
(
ちが
)
ひに、
080
盧
(
ろ
)
司令
(
しれい
)
は
司令部
(
しれいぶ
)
に
帰
(
かへ
)
つて
来
(
き
)
たが、
081
彼
(
かれ
)
は
参謀
(
さんぼう
)
揚
(
やう
)
萃廷
(
すゐてい
)
の『
討伐隊
(
とうばつたい
)
は
大英子児
(
タアインヅル
)
を
撃
(
う
)
ちに
来
(
き
)
たものだ』との
言
(
げん
)
を
信
(
しん
)
じたものか、
082
或
(
あるひ
)
は
東三省
(
とうさんしやう
)
の
兵
(
へい
)
と
戦
(
たたか
)
ふのは
自分
(
じぶん
)
で
自分
(
じぶん
)
の
立場
(
たちば
)
を
危
(
あやふ
)
くするものと
解
(
かい
)
したか、
083
議論
(
ぎろん
)
百出
(
ひやくしゆつ
)
の
間
(
あひだ
)
に
西北
(
せいほく
)
へ
向
(
むか
)
つて
移動
(
いどう
)
の
命令
(
めいれい
)
を
下
(
くだ
)
し、
084
車輪
(
しやりん
)
不足
(
ふそく
)
の
為
(
ため
)
積載
(
せきさい
)
出来
(
でき
)
ぬ
兵糧
(
ひやうらう
)
などは、
085
黒竜江
(
こくりうこう
)
の
木局署
(
もくきよくしよ
)
へ
処分
(
しよぶん
)
を
委託
(
いたく
)
し、
086
西北
(
せいほく
)
指
(
さ
)
して
行動
(
かうどう
)
を
起
(
おこ
)
す
事
(
こと
)
とした。
087
○
088
夜
(
よる
)
の
帳
(
とばり
)
がスツポリと
卸
(
おろ
)
された
頃
(
ころ
)
、
089
上
(
かみ
)
木局子
(
もくきよくし
)
なる
日出雄
(
ひでを
)
の
仮殿
(
かりどの
)
の
周囲
(
しうゐ
)
は
090
下
(
しも
)
木局子
(
もくきよくし
)
を
徹退
(
てつたい
)
した
軍兵
(
ぐんぺい
)
を
以
(
もつ
)
て
幾重
(
いくへ
)
にも
取巻
(
とりま
)
かれ、
091
馬
(
うま
)
の
嘶
(
いななき
)
、
092
犬
(
いぬ
)
の
遠吠
(
とほぼえ
)
、
093
篝火
(
かがりび
)
の
焔
(
ほのほ
)
、
094
今迄
(
いままで
)
静寂
(
せいじやく
)
なりし
上
(
かみ
)
木局子
(
もくきよくし
)
の
天地
(
てんち
)
は
俄
(
には
)
かに
殺気
(
さつき
)
が
漲
(
みなぎ
)
つた。
095
仮殿内
(
かりどのない
)
にては
盧
(
ろ
)
以下
(
いか
)
数名
(
すうめい
)
の
幹部
(
かんぶ
)
が
日出雄
(
ひでを
)
、
096
真澄別
(
ますみわけ
)
、
097
岡崎
(
をかざき
)
に
向
(
むか
)
ひ
前途
(
ぜんと
)
に
関
(
くわん
)
する
行動
(
かうどう
)
に
就
(
つ
)
き
説明
(
せつめい
)
を
重
(
かさ
)
ねつつ
夜
(
よ
)
を
更
(
ふ
)
かしてゐたが、
098
結局
(
けつきよく
)
地理
(
ちり
)
不案内
(
ふあんない
)
なる
日本人
(
につぽんじん
)
側
(
がは
)
は
進路
(
しんろ
)
を
盧
(
ろ
)
に
一任
(
いちにん
)
する
事
(
こと
)
となつた。
099
折柄
(
をりから
)
暗
(
やみ
)
の
一遇
(
いちぐう
)
に
銃声
(
じゆうせい
)
一発
(
いつぱつ
)
と、
100
断末魔
(
だんまつま
)
の
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えた。
101
哀
(
あは
)
れなる
一兵卒
(
いつぺいそつ
)
は
上官
(
じやうくわん
)
に
反抗
(
はんかう
)
せるの
故
(
ゆゑ
)
を
以
(
もつ
)
て、
102
即座
(
そくざ
)
に
銃殺
(
じゆうさつ
)
されたのであつた。
103
兎角
(
とかく
)
する
内
(
うち
)
翌
(
よく
)
六
(
ろく
)
月
(
ぐわつ
)
三日
(
みつか
)
午前
(
ごぜん
)
三
(
さん
)
時
(
じ
)
となつた。
104
鄒
(
すう
)
団長
(
だんちやう
)
の
部隊
(
ぶたい
)
、
105
先鋒
(
せんぽう
)
となり、
106
盧
(
ろ
)
は
自
(
みづか
)
ら
日出雄
(
ひでを
)
護衛
(
ごえい
)
の
任
(
にん
)
に
当
(
あた
)
り、
107
曼陀汗
(
マンダハン
)
は
殿
(
しんが
)
り、
108
大英子児
(
タアインヅル
)
は
全隊
(
ぜんたい
)
の
見廻
(
みまは
)
り、
109
張
(
ちやう
)
彦三
(
けんさん
)
は
牛車隊
(
ぎうしやたい
)
の
監督
(
かんとく
)
など、
110
夫
(
そ
)
れ
夫
(
ぞ
)
れ
役割
(
やくわり
)
を
定
(
さだ
)
め、
111
西北
(
せいほく
)
興安嶺
(
こうあんれい
)
の
聖地
(
せいち
)
を
指
(
さ
)
して
行軍
(
かうぐん
)
を
開始
(
かいし
)
する
事
(
こと
)
となつた。
112
道路
(
だうろ
)
とて
別
(
べつ
)
に
定
(
さだ
)
まつたものはなく、
113
唯
(
ただ
)
樹木
(
じゆもく
)
点綴
(
てんてつ
)
せる
大高原
(
だいかうげん
)
を
洮児
(
トール
)
の
流
(
ながれ
)
を
標準
(
へうじゆん
)
に
縫
(
ぬ
)
うて
進
(
すす
)
むのである。
114
途中
(
とちう
)
黄楊
(
くわうやう
)
の
大木
(
たいぼく
)
があると、
115
坂本
(
さかもと
)
は
馬上
(
ばじやう
)
より
指
(
ゆびさ
)
して、
116
坂本
『
二先生
(
アルセンシヨン
)
、
117
こんな
黄楊
(
くわうやう
)
一本
(
いつぽん
)
あれば、
118
築前
(
ちくぜん
)
琵琶
(
びわ
)
が
幾
(
いく
)
つも
出来
(
でき
)
ますなア』
119
と
歎声
(
たんせい
)
を
漏
(
も
)
らす
程
(
ほど
)
のが
数知
(
かずし
)
れず
樹立
(
じゆりつ
)
してゐるのは、
120
特
(
とく
)
に
日本人
(
につぽんじん
)
連中
(
れんちう
)
には
珍
(
めづ
)
らしかつた。
121
此
(
この
)
日
(
ひ
)
暮
(
くれ
)
近
(
ちか
)
き
頃
(
ころ
)
、
122
洮児
(
トール
)
の
上流
(
じやうりう
)
、
123
河畔
(
かはん
)
の
森影
(
もりかげ
)
を
日出雄
(
ひでを
)
一行
(
いつかう
)
の
陣営
(
ぢんえい
)
と
見計
(
みはか
)
らひ、
124
露営
(
ろえい
)
の
夢
(
ゆめ
)
を
辿
(
たど
)
る
事
(
こと
)
とした。
125
曼陀汗
『モウ
上
(
かみ
)
木局子
(
もくきよくし
)
を
離
(
はな
)
れては
当分
(
たうぶん
)
人家
(
じんか
)
は
素
(
もと
)
より
家畜
(
かちく
)
も
見
(
み
)
られない』
126
と
曼陀汗
(
マンダハン
)
が
説明
(
せつめい
)
する。
127
狼
(
おほかみ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
猛獣
(
まうじう
)
の
襲来
(
しふらい
)
を
防
(
ふせ
)
ぐ
為
(
ため
)
とて、
128
所々
(
しよしよ
)
に
揚
(
あが
)
る
焚火
(
のろし
)
の
紅煙
(
こうえん
)
は
天
(
てん
)
を
焦
(
こが
)
さむ
許
(
ばか
)
り
森
(
もり
)
を
真赤
(
まつか
)
に
照
(
てら
)
して
居
(
ゐ
)
た。
129
此
(
この
)
夜半
(
やはん
)
頃
(
ころ
)
大英子児
(
タアインヅル
)
は
窃
(
ひそ
)
かに
日出雄
(
ひでを
)
を
訪問
(
はうもん
)
し、
130
岡崎
(
をかざき
)
を
介
(
かい
)
して『
私
(
わたくし
)
はどこ
迄
(
まで
)
も
貴方
(
あなた
)
方
(
がた
)
を
御
(
ご
)
保護
(
ほご
)
申上
(
まうしあげ
)
ます』と
誓
(
ちか
)
ひ、
131
日出雄
(
ひでを
)
の
手
(
て
)
づから
与
(
あた
)
ふる
鯣
(
するめ
)
を
再三
(
さいさん
)
推
(
お
)
し
戴
(
いただ
)
き『
言語
(
げんご
)
さへ
通
(
つう
)
ずれば……』てふ
物足
(
ものた
)
らぬ
心
(
こころ
)
を
面
(
おもて
)
に
現
(
あら
)
はしつつも、
132
ニコニコとして
辞
(
じ
)
し
去
(
さ
)
つたが、
133
彼
(
かれ
)
は
前日
(
ぜんじつ
)
下
(
しも
)
木局子
(
もくきよくし
)
に
於
(
お
)
ける
盧
(
ろ
)
の
所置
(
しよち
)
を
快
(
こころよ
)
しとせず、
134
窃
(
ひそ
)
かに
期
(
き
)
する
所
(
ところ
)
あつて、
135
此
(
この
)
夜
(
よ
)
脱出
(
だつしゆつ
)
し、
136
部下
(
ぶか
)
諸共
(
もろとも
)
何
(
いづ
)
れへか
姿
(
すがた
)
を
消
(
け
)
して
了
(
しま
)
つた。
137
果
(
はた
)
せる
哉
(
かな
)
彼
(
かれ
)
は
今日
(
こんにち
)
熱河
(
ねつか
)
の
奥地
(
おくち
)
に
本拠
(
ほんきよ
)
を
構
(
かま
)
へ、
138
已
(
すで
)
に
三千
(
さんぜん
)
の
精兵
(
せいへい
)
を
引具
(
ひきぐ
)
して
紅帽軍
(
こうばうぐん
)
を
組織
(
そしき
)
し、
139
日出雄
(
ひでを
)
の
弔
(
ともらひ
)
合戦
(
がつせん
)
[
※
ルビ「とむらひ」の「む」は校定版や愛世版では「も」(ともらひ)、王仁蒙古入記p306では「む」。広辞苑によると「弔」は「ともらひ」とも読むので「も」にする。
]
をするのだ……と
堂々
(
だうだう
)
の
陣
(
ぢん
)
を
張
(
は
)
り、
140
日出雄
(
ひでを
)
、
141
真澄別
(
ますみわけ
)
の
再渡来
(
さいとらい
)
を
待
(
ま
)
つてゐるさうである。
142
大英子児
(
タアインヅル
)
脱退
(
だつたい
)
と
同時
(
どうじ
)
に、
143
予
(
かね
)
て
非戦論
(
ひせんろん
)
を
潔
(
いさぎよ
)
しとせざる
勇士
(
ゆうし
)
は
続々
(
ぞくぞく
)
として
姿
(
すがた
)
を
隠
(
かく
)
して
了
(
しま
)
つたので、
144
翌朝
(
よくてう
)
出立
(
しゆつたつ
)
の
際
(
さい
)
は、
145
騎馬兵
(
きばへい
)
五百
(
ごひやく
)
騎
(
き
)
、
146
馬
(
うま
)
整
(
ととの
)
はずして
牛車
(
ぎうしや
)
に
便乗
(
びんじよう
)
せるもの
三百
(
さんびやく
)
有余
(
いうよ
)
と
算
(
さん
)
せられた。
147
(
大正一四、八
、筆録)
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