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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
特別編 入蒙記
第1篇 日本より奉天まで
第1章 水火訓
第2章 神示の経綸
第3章 金剛心
第4章 微燈の影
第5章 心の奥
第6章 出征の辞
第7章 奉天の夕
第2篇 奉天より洮南へ
第8章 聖雄と英雄
第9章 司令公館
第10章 奉天出発
第11章 安宅の関
第12章 焦頭爛額
第13章 洮南旅館
第14章 洮南の雲
第3篇 洮南より索倫へ
第15章 公爺府入
第16章 蒙古の人情
第17章 明暗交々
第18章 蒙古気質
第19章 仮司令部
第20章 春軍完備
第21章 索倫本営
第4篇 神軍躍動
第22章 木局収ケ原
第23章 下木局子
第24章 木局の月
第25章 風雨叱咤
第26章 天の安河
第27章 奉天の渦
第28章 行軍開始
第29章 端午の日
第30章 岩窟の奇兆
第5篇 雨後月明
第31章 強行軍
第32章 弾丸雨飛
第33章 武装解除
第34章 竜口の難
第35章 黄泉帰
第36章 天の岩戸
第37章 大本天恩郷
第38章 世界宗教聯合会
第39章 入蒙拾遺
附 入蒙余録
大本の経綸と満蒙
世界経綸の第一歩
蒙古建国
蒙古の夢
神示の世界経綸
余白歌
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<<< 焦頭爛額
(B)
(N)
洮南の雲 >>>
第一三章
洮南
(
たうなん
)
旅館
(
りよくわん
)
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 特別篇 山河草木 入蒙記
篇:
第2篇 奉天より洮南へ
よみ(新仮名遣い):
ほうてんよりとうなんへ
章:
第13章 洮南旅館
よみ(新仮名遣い):
とうなんりょかん
通し章番号:
口述日:
1925(大正14)年08月
口述場所:
筆録者:
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年2月14日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
日出雄一行は三月八日の午後九時三十分にようやく洮南駅に到着した。そして洮南旅館で真澄別一行と合流した。洮南府は日本官憲の勢力がない場所であった。現在は特殊の関係のある者のみが二十五名逗留しているだけの地である。
ここは鄭家屯の北から鉄道で百四十マイル、東蒙古における唯一の大市街である。支那人が蒙古に発展する拠点となった街である。四方を城壁で囲み、門は官兵や巡警が控えていて護証の検査をなし、また税金を取り立てている。
蒙古の地にあって、その勢力も政治も支那の主権に属し、奉天省が管轄している。そして日本人排斥の思想が濃く、鄭家屯の日本領事館員でさえ、なかなか市内に入ることができない。
こういう場所に潜んで、一同は種々の計画を練っていたのである。その間に、満鉄の三井貫之助氏が訪ねてきたが、岡崎、大倉の両人が接見した。また、佐々木の手紙が届き、帰化城方面の支那人哥老会の揚成業氏が、一万の兵を率いて参加するという知らせがあった。
また、関東庁の陸軍三等主計正の日本人某が視察にやって来ていて、一泊した上で翌朝の汽車で帰って行った。また、有名な評論家・横山健道が日出雄と入れ違いにこのホテルを出て行ったという。横山が揮毫したという立派な書を、ホテルの支配人から見せてもらった。日出雄も請われて、日本人に書画を書き与えた。
またある日、鄭家屯の日本領事館書記生某氏が、視察のために洮南に来て、満鉄の三井氏が調査した書類を書き写し、四五日滞在して帰って行ったりした。日本官吏による調査は、すべてこのように行われていたのである。
この日、城内の猪野氏・平間氏宅に、日本人全員が移転することになった。名田彦があまり自分が選ばれた大本信者であると回りに吹聴し、計画を漏らすようなことを言うので、岡崎の機嫌は非常に悪くなった。日出雄がたしなめると、名田彦は黙り込んでしまった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
2024/1/13出口王仁三郎全集第6巻を底本として校正。
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2024-01-13 18:36:20
OBC :
rmnm13
愛善世界社版:
113頁
八幡書店版:
第14輯 589頁
修補版:
校定版:
114頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
日出雄
(
ひでを
)
はやうやくにして
三
(
さん
)
月
(
ぐわつ
)
八日
(
やうか
)
(
陰暦
(
いんれき
)
二
(
に
)
月
(
ぐわつ
)
三日
(
みつか
)
)
午後
(
ごご
)
九
(
く
)
時
(
じ
)
三十
(
さんじつ
)
分
(
ぷん
)
、
002
洮南
(
たうなん
)
駅
(
えき
)
に
無事
(
ぶじ
)
安着
(
あんちやく
)
し、
003
乞食
(
こじき
)
のやうな
支那兵
(
しなへい
)
に
送
(
おく
)
られ、
004
ガタ
馬車
(
ばしや
)
二台
(
にだい
)
に
分乗
(
ぶんじやう
)
して
洮南
(
たうなん
)
旅館
(
りよくわん
)
に
入
(
い
)
る。
005
真澄別
(
ますみわけ
)
、
006
大倉
(
おほくら
)
、
007
名田彦
(
なだひこ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
鶴首
(
かくしゆ
)
して
待
(
ま
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
008
さうして
洮南
(
たうなん
)
府
(
ふ
)
は
日本
(
につぽん
)
官憲
(
くわんけん
)
の
勢力
(
せいりよく
)
なく、
009
領事館
(
りやうじくわん
)
員
(
ゐん
)
と
雖
(
いへど
)
も
護照
(
ごせう
)
が
無
(
な
)
ければ
入洮
(
にふたう
)
を
許
(
ゆる
)
さないので、
010
日本人
(
につぽんじん
)
が
停車場
(
ていしやぢやう
)
に
迎
(
むか
)
へに
出
(
で
)
るのは
最
(
もつと
)
も
危険
(
きけん
)
だから
失礼
(
しつれい
)
をしましたと、
011
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
弁解
(
べんかい
)
して
居
(
ゐ
)
た。
012
王
(
わう
)
元祺
(
げんき
)
の
睾丸炎
(
かうぐわんえん
)
は
益々
(
ますます
)
激痛
(
げきつう
)
を
感
(
かん
)
じ、
013
病床
(
びやうしやう
)
に
入
(
はひ
)
つたまま
起
(
お
)
きず、
014
飯
(
めし
)
も
食
(
く
)
はず
弱
(
よわ
)
りきつて
居
(
ゐ
)
る。
015
明
(
あ
)
くれば
三
(
さん
)
月
(
ぐわつ
)
九日
(
ここのか
)
、
016
奉天
(
ほうてん
)
の
同志
(
どうし
)
へ
安着
(
あんちやく
)
の
電報
(
でんぱう
)
を
発
(
はつ
)
した。
017
此
(
この
)
洮南
(
たうなん
)
旅館
(
りよくわん
)
は
満鉄
(
まんてつ
)
の
御用
(
ごよう
)
旅館
(
りよくわん
)
と
云
(
い
)
ふ
名義
(
めいぎ
)
で、
018
辛
(
から
)
うじて
支那
(
しな
)
官憲
(
くわんけん
)
の
許可
(
きよか
)
を
受
(
う
)
けて
居
(
ゐ
)
るのである。
019
一時
(
いちじ
)
は
洮南
(
たうなん
)
府内
(
ふない
)
に
百
(
ひやく
)
七八十
(
しちはちじふ
)
人
(
にん
)
の
日本人
(
につぽんじん
)
が
滞留
(
たいりう
)
して
居
(
ゐ
)
たが、
020
支那
(
しな
)
官憲
(
くわんけん
)
の
圧迫
(
あつぱく
)
により、
021
何
(
いづ
)
れも
退去
(
たいきよ
)
を
命
(
めい
)
ぜられ、
022
特殊
(
とくしゆ
)
の
関係
(
くわんけい
)
あるもののみ
二十五
(
にじふご
)
人
(
にん
)
在留
(
ざいりう
)
して
居
(
ゐ
)
るだけである。
023
そうして、
024
日本人
(
につぽんじん
)
の
女
(
をんな
)
と
云
(
い
)
へば
僅
(
わづ
)
かに
五
(
ご
)
人
(
にん
)
と
云
(
い
)
ふことで、
025
一行
(
いつかう
)
七
(
しち
)
人
(
にん
)
は
此
(
この
)
旅館
(
りよくわん
)
に
宿泊
(
しゆくはく
)
して
種々
(
しゆじゆ
)
の
計画
(
けいくわく
)
に
着手
(
ちやくしゆ
)
して
居
(
ゐ
)
た。
026
平馬
(
へいま
)
[
*
本章に「平馬」が3回出るが、底本(全集)ではフリガナは最初だけ「へいま」で後2回は「ひらま」になっている。
]
氏
(
し
)
宅
(
たく
)
から
猪野
(
ゐの
)
、
027
大川
(
おほかは
)
の
二人
(
ふたり
)
が
来訪
(
らいほう
)
して
蒙古
(
もうこ
)
入
(
い
)
りの
壮挙
(
さうきよ
)
を
聞
(
き
)
き、
028
我
(
わ
)
が
国家
(
こくか
)
前途
(
ぜんと
)
の
為
(
ため
)
に
慶賀
(
けいが
)
に
堪
(
た
)
へないと
云
(
い
)
うて
賛意
(
さんい
)
を
表
(
へう
)
して
居
(
ゐ
)
る。
029
次
(
つぎ
)
に
満鉄
(
まんてつ
)
関係者
(
くわんけいしや
)
の
三井
(
みつゐ
)
貫之助
(
くわんのすけ
)
氏
(
し
)
が
来訪
(
らいほう
)
した。
030
併
(
しか
)
し
乍
(
なが
)
ら
日出雄
(
ひでを
)
や
真澄別
(
ますみわけ
)
は
一室
(
いつしつ
)
に
閉
(
と
)
ぢ
籠
(
こも
)
り、
031
岡崎
(
をかざき
)
、
032
大倉
(
おほくら
)
の
両人
(
りやうにん
)
が
接見
(
せつけん
)
する
事
(
こと
)
となつた。
033
大倉
(
おほくら
)
は
三井
(
みつゐ
)
と
共
(
とも
)
に
城内
(
じやうない
)
の
支那
(
しな
)
料理店
(
れうりてん
)
へ
出
(
で
)
かけ、
034
種々
(
しゆじゆ
)
の
運動
(
うんどう
)
を
開始
(
かいし
)
した。
035
夜分
(
やぶん
)
になると
東西
(
とうざい
)
南北
(
なんぼく
)
から
銃砲
(
じゆうはう
)
の
音
(
おと
)
が
頻
(
しき
)
りに
聞
(
きこ
)
えて
来
(
く
)
る。
036
之
(
これ
)
は
洮南
(
たうなん
)
府
(
ふ
)
の
周囲
(
しうゐ
)
に
散在
(
さんざい
)
して
居
(
ゐ
)
る
十数
(
じふすう
)
団
(
だん
)
の
馬賊
(
ばぞく
)
二千
(
にせん
)
余
(
よ
)
名
(
めい
)
が、
037
何時
(
いつ
)
洮南
(
たうなん
)
府
(
ふ
)
を
襲
(
おそ
)
ふかも
知
(
し
)
れないので、
038
夜
(
よ
)
になると
兵士
(
へいし
)
が
馬賊
(
ばぞく
)
威喝
(
いかつ
)
の
為
(
ため
)
に
発砲
(
はつぱう
)
するのだと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
である。
039
実
(
じつ
)
に
官憲
(
くわんけん
)
の
威力
(
いりよく
)
も
及
(
およ
)
ばず
、
040
物騒
(
ぶつそう
)
千万
(
せんばん
)
の
土地
(
とち
)
である。
041
此
(
この
)
洮南
(
たうなん
)
府
(
ふ
)
は
鄭家屯
(
ていかとん
)
を
北
(
きた
)
に
去
(
さ
)
る
鉄路
(
てつろ
)
百四十
(
ひやくよんじふ
)
哩
(
マイル
)
の
地点
(
ちてん
)
にあつて、
042
東蒙古
(
ひがしもうこ
)
に
於
(
お
)
ける
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
大市街
(
だいしがい
)
である。
043
支那人
(
しなじん
)
が
蒙古
(
もうこ
)
に
発展
(
はつてん
)
した
根拠地
(
こんきよち
)
は
即
(
すなは
)
ち
此
(
こ
)
の
地
(
ち
)
である。
044
四方
(
しはう
)
は
土
(
つち
)
の
城壁
(
じやうへき
)
をもつて
囲
(
かこ
)
み、
045
東西
(
とうざい
)
南北
(
なんぼく
)
に
六個
(
ろくこ
)
の
通行門
(
つうかうもん
)
があつて、
046
住民
(
ぢゆうみん
)
は
此処
(
ここ
)
から
出入
(
しゆつにふ
)
する。
047
門
(
もん
)
の
入口
(
いりぐち
)
には
支那
(
しな
)
の
官兵
(
くわんぺい
)
や
巡警
(
じゆんけい
)
が
控
(
ひか
)
へて
居
(
ゐ
)
て、
048
一々
(
いちいち
)
護照
(
ごせう
)
の
検査
(
けんさ
)
を
為
(
な
)
し、
049
携帯品
(
けいたいひん
)
や
出入
(
しゆつにふ
)
の
荷物
(
にもつ
)
に
対
(
たい
)
しては、
050
幾何
(
いくら
)
かの
税金
(
ぜいきん
)
を
現場
(
げんぢやう
)
で
徴収
(
ちやうしう
)
する。
051
洮南
(
たうなん
)
の
市街
(
しがい
)
は
南北
(
なんぽく
)
五
(
ご
)
支里
(
しり
)
、
052
東西
(
とうざい
)
五
(
ご
)
支里
(
しり
)
の
正方形
(
せいほうけい
)
の
面積
(
めんせき
)
を
有
(
いう
)
し、
053
此
(
この
)
城壁
(
じやうへき
)
内
(
ない
)
には
官公署
(
くわんこうしよ
)
や
各商店
(
かくしやうてん
)
が
軒
(
のき
)
を
並
(
なら
)
べて
居
(
ゐ
)
る。
054
純然
(
じゆんぜん
)
たる
蒙古
(
もうこ
)
の
土地
(
とち
)
でありながら、
055
其
(
その
)
勢力
(
せいりよく
)
も、
056
政治
(
せいぢ
)
関係
(
くわんけい
)
も
全
(
まつた
)
く
支那
(
しな
)
の
主権
(
しゆけん
)
に
属
(
ぞく
)
し、
057
奉天省
(
ほうてんしやう
)
が
管轄
(
くわんかつ
)
して
居
(
ゐ
)
る。
058
二十
(
にじふ
)
年
(
ねん
)
以前
(
いぜん
)
、
059
初
(
はじ
)
めて
支那人
(
しなじん
)
が
此
(
この
)
地
(
ち
)
に
市街
(
しがい
)
を
築
(
きづ
)
いた
時
(
とき
)
は、
060
僅
(
わづ
)
かに
三四十
(
さんしじつ
)
戸
(
こ
)
に
過
(
す
)
ぎなかつたが、
061
其
(
その
)
時
(
とき
)
から
道尹
(
だういん
)
衙門
(
がもん
)
を
設置
(
せつち
)
して
土地
(
とち
)
の
発展
(
はつてん
)
に
努
(
つと
)
めて
居
(
ゐ
)
る。
062
其
(
その
)
後
(
ご
)
洮南
(
たうなん
)
の
道尹
(
だういん
)
衙門
(
がもん
)
は
鄭家屯
(
ていかとん
)
に
引
(
ひ
)
き
移
(
うつ
)
り、
063
現在
(
げんざい
)
の
官公署
(
くわんこうしよ
)
、
064
県公署
(
けんこうしよ
)
、
065
第
(
だい
)
二十九
(
にじふく
)
師
(
し
)
司令部
(
しれいぶ
)
や、
066
監獄
(
かんごく
)
や、
067
警察署
(
けいさつしよ
)
、
068
審判庁
(
しんぱんちやう
)
、
069
捐務局
(
えんむきよく
)
、
070
兵営
(
へいえい
)
、
071
郵政局
(
いうせいきよく
)
、
072
電報局
(
でんぱうきよく
)
、
073
学校
(
がつかう
)
等
(
とう
)
がある。
074
国民
(
こくみん
)
小学校
(
せうがくかう
)
が
三
(
さん
)
ケ
所
(
しよ
)
、
075
国民
(
こくみん
)
女学校
(
ぢよがくかう
)
が
二
(
に
)
ケ
所
(
しよ
)
と
県立
(
けんりつ
)
高等
(
かうとう
)
小学校
(
せうがくかう
)
が
一
(
いつ
)
ケ
所
(
しよ
)
ある。
076
当地
(
たうち
)
の
支那
(
しな
)
官憲
(
くわんけん
)
は
総
(
すべ
)
ての
日本人
(
につぽんじん
)
に
対
(
たい
)
して
極力
(
きよくりよく
)
圧迫
(
あつぱく
)
を
加
(
くは
)
へ、
077
排日
(
はいにち
)
思想
(
しさう
)
の
最
(
もつと
)
も
盛
(
さか
)
んな
所
(
ところ
)
である。
078
それ
故
(
ゆゑ
)
、
079
鄭家屯
(
ていかとん
)
の
日本
(
につぽん
)
領事館
(
りやうじくわん
)
から
館員
(
くわんゐん
)
が
視察
(
しさつ
)
に
来
(
き
)
ても、
080
護照
(
ごせう
)
がなければ
通
(
とほ
)
さないと
云
(
い
)
つて、
081
入城
(
にふじやう
)
を
拒
(
こば
)
むと
云
(
い
)
ふ
有様
(
ありさま
)
である。
082
かういふ
状況
(
じやうきやう
)
に
在
(
あ
)
る
洮南
(
たうなん
)
府
(
ふ
)
へ
日出雄
(
ひでを
)
一行
(
いつかう
)
は
入
(
い
)
り
込
(
こ
)
んだから
083
中々
(
なかなか
)
晏如
(
あんじよ
)
たる
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
かないのである。
084
洮南
(
たうなん
)
へ
日出雄
(
ひでを
)
が
着
(
つ
)
いた
三日目
(
みつかめ
)
に、
085
秦宣
(
しんせん
)
及
(
およ
)
び
山田
(
やまだ
)
文治郎
(
ぶんぢらう
)
の
両人
(
りやうにん
)
が
佐々木
(
ささき
)
の
手紙
(
てがみ
)
を
持
(
も
)
つてやつて
来
(
き
)
た。
086
それは
帰化城
(
きくわじやう
)
方面
(
はうめん
)
の
支那人
(
しなじん
)
哥老会
(
からうくわい
)
の
耆宿
(
きしゆく
)
揚
(
やう
)
成業
(
せいげふ
)
が、
087
一万
(
いちまん
)
数千
(
すうせん
)
の
兵
(
へい
)
を
率
(
ひき
)
ゐて
参加
(
さんか
)
すると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
であつた。
088
此
(
この
)
時
(
とき
)
関東庁
(
くわんとんちやう
)
の
陸軍
(
りくぐん
)
三等
(
さんとう
)
主計正
(
しゆけいせい
)
なる
日本人
(
につぽんじん
)
某
(
ぼう
)
が
洮南
(
たうなん
)
視察
(
しさつ
)
にやつて
来
(
き
)
て
一夜
(
いちや
)
宿泊
(
しゆくはく
)
した
上
(
うへ
)
、
089
翌朝
(
よくてう
)
八
(
はち
)
時
(
じ
)
の
汽車
(
きしや
)
で
帰
(
かへ
)
つて
行
(
い
)
つた。
090
夜分
(
やぶん
)
になると、
091
鉦
(
かね
)
や
太鼓
(
たいこ
)
や
笛
(
ふえ
)
などの
楽器
(
がくき
)
で
賑々
(
にぎにぎ
)
しく
葬式
(
さうしき
)
の
行列
(
ぎやうれつ
)
が
街道
(
かいだう
)
を
通過
(
つうくわ
)
する
音
(
おと
)
が
聞
(
きこ
)
えるかと
思
(
おも
)
へば、
092
今度
(
こんど
)
は
又
(
また
)
嫁入
(
よめいり
)
の
行列
(
ぎやうれつ
)
が
同
(
おな
)
じやうな
鳴物
(
なりもの
)
で
通
(
とほ
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
093
さうして
爆竹
(
ばくちく
)
の
音
(
おと
)
が
四方
(
しはう
)
から
聞
(
きこ
)
えて
来
(
く
)
る。
094
室内
(
しつない
)
で
音
(
おと
)
ばかり
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
ると
葬式
(
さうしき
)
も
嫁入
(
よめいり
)
も
同
(
おな
)
じやうに
聞
(
きこ
)
える。
095
有名
(
いうめい
)
な
論評家
(
ろんぴやうか
)
の
黒頭巾
(
くろづきん
)
横山
(
よこやま
)
健堂
(
けんだう
)
が
096
日出雄
(
ひでを
)
と
入
(
い
)
れ
違
(
ちが
)
ひに
此
(
こ
)
のホテルを
辞
(
じ
)
し
帰
(
かへ
)
つて
行
(
い
)
つた。
097
此処
(
ここ
)
で
健堂
(
けんだう
)
の
揮毫
(
きがう
)
した
立派
(
りつぱ
)
な
書
(
しよ
)
をホテルの
支配人
(
しはいにん
)
から
示
(
しめ
)
され、
098
且
(
か
)
つ
揮毫
(
きがう
)
を
依頼
(
いらい
)
されたので、
099
日出雄
(
ひでを
)
は
之
(
これ
)
に
応
(
おう
)
じ
日本人
(
につぽんじん
)
に
書画
(
しよぐわ
)
を
描
(
か
)
き
与
(
あた
)
へた。
100
三
(
さん
)
月
(
ぐわつ
)
十一
(
じふいち
)
日
(
にち
)
の
未明
(
みめい
)
から
機関銃
(
きくわんじゆう
)
や
小銃
(
せうじゆう
)
の
音
(
おと
)
が
頻
(
しき
)
りに
聞
(
きこ
)
え、
101
何
(
なん
)
となく
不穏
(
ふをん
)
の
空気
(
くうき
)
が
漂
(
ただよ
)
うて
居
(
ゐ
)
る。
102
洮南
(
たうなん
)
府
(
ふ
)
一個
(
いつこ
)
旅団
(
りよだん
)
約
(
やく
)
四千
(
よんせん
)
人
(
にん
)
の
常備兵
(
じやうびへい
)
があつて、
103
東三省
(
とうさんしやう
)
の
北門
(
ほくもん
)
を
守
(
まも
)
つて
居
(
ゐ
)
るのだが、
104
ホテルの
支配人
(
しはいにん
)
に
聞
(
き
)
くと、
105
馬賊
(
ばぞく
)
の
一隊
(
いつたい
)
が
襲来
(
しうらい
)
したので
応戦
(
おうせん
)
して
居
(
ゐ
)
る
者
(
もの
)
だとの
事
(
こと
)
であつた。
106
明
(
あ
)
くれば
三
(
さん
)
月
(
ぐわつ
)
十二
(
じふに
)
日
(
にち
)
、
107
鄭家屯
(
ていかとん
)
の
日本
(
につぽん
)
領事館
(
りやうじくわん
)
書記生
(
しよきせい
)
某
(
ぼう
)
、
108
洮南
(
たうなん
)
視察
(
しさつ
)
の
為
(
ため
)
に
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
109
ホテルに
宿泊
(
しゆくはく
)
し、
110
満鉄
(
まんてつ
)
関係
(
くわんけい
)
の
三井
(
みつゐ
)
氏
(
し
)
が
調査
(
てうさ
)
した
書類
(
しよるゐ
)
を
書
(
か
)
き
写
(
うつ
)
し、
111
四五
(
しご
)
日間
(
にちかん
)
滞在
(
たいざい
)
して
帰
(
かへ
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
112
日本
(
につぽん
)
官吏
(
くわんり
)
の
調査
(
てうさ
)
はすべてこんな
具合
(
ぐあひ
)
に
行
(
おこな
)
はれて
居
(
ゐ
)
るのだ。
113
此
(
この
)
日
(
ひ
)
城内
(
じやうない
)
の
春山
(
はるやま
)
医院
(
いゐん
)
猪野
(
ゐの
)
敏夫
(
としを
)
氏
(
し
)
宅
(
たく
)
、
114
及
(
およ
)
び
平馬
(
へいま
)
慎太郎
(
しんたらう
)
氏
(
し
)
宅
(
たく
)
に
日本人
(
につぽんじん
)
全部
(
ぜんぶ
)
移転
(
いてん
)
することとなつた。
115
岡崎
(
をかざき
)
は
大変
(
たいへん
)
な
不気嫌
(
ふきげん
)
で
傍人
(
ばうじん
)
に
八
(
や
)
つ
当
(
あた
)
りの
態
(
てい
)
である。
116
それは
名田彦
(
なだひこ
)
が──
僕
(
ぼく
)
は
柔術
(
じうじゆつ
)
の
達人
(
たつじん
)
だとか、
117
米国
(
べいこく
)
の
理髪
(
りはつ
)
学士
(
がくし
)
だとか、
118
刀
(
かたな
)
一本
(
いつぽん
)
あれば
数十
(
すうじふ
)
人
(
にん
)
の
相手
(
あひて
)
を
瞬
(
またた
)
く
間
(
ま
)
に
斬
(
き
)
りなびけて
見
(
み
)
せるとか──
大法螺
(
おほぼら
)
を
吹
(
ふ
)
いて
威張
(
いば
)
り
散
(
ち
)
らすのが
癪
(
しやく
)
に
触
(
さは
)
つたのである。
119
支那
(
しな
)
では
理髪師
(
りはつし
)
と
云
(
い
)
へば
下職
(
げしよく
)
とみなされて
居
(
ゐ
)
るのに、
120
名田彦
(
なだひこ
)
が
得々
(
とくとく
)
として
理髪
(
りはつ
)
の
妙技
(
めうぎ
)
を
誇
(
ほこ
)
つたり、
121
又
(
また
)
ノコノコと
城内
(
じやうない
)
の
理髪店
(
りはつてん
)
に
出
(
で
)
かけて
行
(
い
)
つて、
122
剃刀
(
かみそり
)
の
使
(
つか
)
ひ
方
(
かた
)
がどうだの、
123
かうだのと
理窟
(
りくつ
)
を
云
(
い
)
ひ、
124
支那
(
しな
)
の
理髪師
(
りはつし
)
に
教
(
をし
)
へてやり、
125
いらざるお
節介
(
せつかい
)
をやつたと
云
(
い
)
ふのである。
126
おまけに
日本人
(
につぽんじん
)
が
洮南
(
たうなん
)
府
(
ふ
)
に
居
(
ゐ
)
ると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
秘密
(
ひみつ
)
にしておかねばならぬのに
127
『
自分
(
じぶん
)
は
三五
(
あなない
)
信者中
(
しんじやちう
)
の
全体
(
ぜんたい
)
から
選
(
えら
)
ばれて
来
(
き
)
た
神
(
かみ
)
の
寵児
(
ちようじ
)
だ』とか
128
『
日出雄
(
ひでを
)
先生
(
せんせい
)
の
一番
(
いちばん
)
の
弟子
(
でし
)
だ』とか
法螺
(
ほら
)
を
吹
(
ふ
)
くので、
129
岡崎
(
をかざき
)
が
憤慨
(
ふんがい
)
したのである。
130
そこへ
秦宣
(
しんせん
)
と
山田
(
やまだ
)
とが
佐々木
(
ささき
)
の
手紙
(
てがみ
)
をもつて
使
(
つか
)
ひに
来
(
き
)
たので、
131
岡崎
(
をかざき
)
の
機嫌
(
きげん
)
は
益々
(
ますます
)
悪
(
わる
)
い。
132
岡崎
(
をかざき
)
『
佐々木
(
ささき
)
、
133
大倉
(
おほくら
)
の
奴
(
やつ
)
、
134
乞食
(
こじき
)
のやうな
人足
(
にんそく
)
を
使
(
つか
)
ひに
寄
(
よ
)
こしよつた。
135
あんなものが
何
(
なん
)
になるか、
136
大倉
(
おほくら
)
の
奴
(
やつ
)
、
137
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
自分
(
じぶん
)
一人
(
ひとり
)
で
出来
(
でき
)
るやうに
吐
(
ぬ
)
かしよつて……
何
(
なん
)
だ
俺
(
おれ
)
が
居
(
ゐ
)
なければ
此
(
この
)
危険
(
きけん
)
な
洮南
(
たうなん
)
府
(
ふ
)
へ
来
(
き
)
て
今日
(
けふ
)
のやうな
事
(
こと
)
があつたらどうするか、
138
マサカ
三井
(
みつゐ
)
の
小
(
ち
)
つぽけな
借家
(
しやくや
)
へ
八
(
はち
)
人
(
にん
)
も
日本人
(
につぽんじん
)
が
宿
(
とま
)
る
訳
(
わけ
)
には
行
(
ゆ
)
くまい。
139
それだから
俺
(
おれ
)
が、
140
平馬
(
へいま
)
君
(
くん
)
を
手
(
て
)
に
入
(
い
)
れておいたのだ。
141
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
佐々木
(
ささき
)
や
大倉
(
おほくら
)
では
駄目
(
だめ
)
だ。
142
趙
(
てう
)
倜
(
てき
)
や
憑
(
ひよう
)
占元
(
せんげん
)
の
方
(
はう
)
から
日出雄
(
ひでを
)
先生
(
せんせい
)
を
引張
(
ひつぱ
)
りに
来
(
き
)
て
居
(
を
)
つたのに、
143
佐々木
(
ささき
)
の
奴
(
やつ
)
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
と
一緒
(
いつしよ
)
に
頼
(
たの
)
みやがるものだから
先生
(
せんせい
)
を
御
(
ご
)
依頼
(
いらい
)
して
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
の
方
(
はう
)
の
援助
(
ゑんじよ
)
をして
貰
(
もら
)
つたのだ。
144
本当
(
ほんたう
)
に
彼奴
(
あいつ
)
は
馬鹿
(
ばか
)
だからなア。
145
岡崎
(
をかざき
)
の
腹中
(
ふくちう
)
が
分
(
わか
)
らぬのだから』
146
と
大気焔
(
だいきえん
)
と
大憤慨
(
だいふんがい
)
の
呼吸
(
いき
)
で
室内
(
しつない
)
を
包
(
つつ
)
むで
仕舞
(
しま
)
つた。
147
名田彦
(
なだひこ
)
は
猪野
(
ゐの
)
、
148
大川
(
おほかは
)
の
在留
(
ざいりう
)
日本人
(
につぽんじん
)
に
向
(
むか
)
つて
滔々
(
たうたう
)
と
自慢話
(
じまんばなし
)
を
吹
(
ふ
)
きかけて
居
(
ゐ
)
る。
149
名田彦
『
自分
(
じぶん
)
は
沢山
(
たくさん
)
の
信者
(
しんじや
)
の
中
(
なか
)
から
選抜
(
せんばつ
)
せられて
居
(
ゐ
)
る
純
(
じゆん
)
信者
(
しんじや
)
だが、
150
今回
(
こんくわい
)
の
先生
(
せんせい
)
のお
供
(
とも
)
にぬけ
駆
(
が
)
けしてやつて
来
(
き
)
たのも、
151
今年
(
ことし
)
は
何
(
なん
)
でも
神勅
(
しんちよく
)
に
依
(
よ
)
つて
一億
(
いちおく
)
円
(
ゑん
)
の
財産
(
ざいさん
)
を
拵
(
こしら
)
へるつもりだからだ。
152
蒙古
(
もうこ
)
には
金
(
きん
)
銀
(
ぎん
)
銅
(
どう
)
鉄
(
てつ
)
の
鉱山
(
くわうざん
)
が
沢山
(
たくさん
)
にあると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だから、
153
此
(
こ
)
の
通
(
とほ
)
り
検鉱器
(
けんくわうき
)
迄
(
まで
)
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
て
居
(
ゐ
)
るのだ。
154
此
(
この
)
器械
(
きかい
)
さへあれば
一目
(
ひとめ
)
に
金
(
きん
)
か、
155
鉄
(
てつ
)
か、
156
銅
(
どう
)
か、
157
又
(
また
)
含有量
(
がんいうりやう
)
が
幾何
(
いくら
)
あるかと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
即座
(
そくざ
)
に
分
(
わか
)
る。
158
此
(
こ
)
の
検鉱器
(
けんくわうき
)
は
独逸
(
どいつ
)
製
(
せい
)
で、
159
日本
(
につぽん
)
の
鉱山師
(
くわうざんし
)
は
誰
(
たれ
)
も
持
(
も
)
つて
居
(
ゐ
)
ない
貴重品
(
きちようひん
)
だ。
160
それに
先生
(
せんせい
)
の
話
(
はなし
)
に
聞
(
き
)
くと
大庫倫
(
だいクウロン
)
迄
(
まで
)
神軍
(
しんぐん
)
を
進
(
すす
)
めると
云
(
い
)
ふお
話
(
はなし
)
だが、
161
大庫倫
(
だいクウロン
)
迄
(
まで
)
は
八千
(
はちせん
)
支里
(
しり
)
もあると
云
(
い
)
ふのじやないか。
162
こんな
事
(
こと
)
なら
来
(
く
)
るのぢやなかつたに、
163
チエツ……もう
帰
(
かへ
)
つてやらうか』
164
なぞと
不機嫌
(
ふきげん
)
な
顔
(
かほ
)
つきをして
呟
(
つぶ
)
やく。
165
かと
思
(
おも
)
へば
166
又
(
また
)
顔色
(
かほいろ
)
を
変
(
か
)
へて、
167
大本
(
おほもと
)
の
信者
(
しんじや
)
の
中
(
なか
)
でも
此
(
この
)
度
(
たび
)
のお
供
(
とも
)
をするやうな
精神
(
せいしん
)
の
研
(
みが
)
けた
人間
(
にんげん
)
は、
168
一万
(
いちまん
)
人
(
にん
)
の
中
(
なか
)
に
一人
(
ひとり
)
もあるまい。
169
それを
思
(
おも
)
へば
此
(
この
)
度
(
たび
)
のお
供
(
とも
)
は
不足
(
ふそく
)
ぢやない。
170
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
命令
(
めいれい
)
だと
思
(
おも
)
へば
実
(
じつ
)
に
私
(
わたし
)
は
幸福
(
かうふく
)
なものだ。
171
などと
一人
(
ひとり
)
免許
(
めんきよ
)
で
喜
(
よろこ
)
んで
居
(
ゐ
)
る。
172
其処
(
そこ
)
へ
日出雄
(
ひでを
)
が
何気
(
なにげ
)
なくやつて
来
(
き
)
て
名田彦
(
なだひこ
)
の
法螺
(
ほら
)
を
聞
(
き
)
き、
173
日出雄
『
大本
(
おほもと
)
の
信者
(
しんじや
)
は
千
(
せん
)
人
(
にん
)
が
千
(
せん
)
人
(
にん
)
乍
(
なが
)
ら
皆
(
みな
)
僕
(
ぼく
)
について
来
(
く
)
る
者
(
もの
)
ばかりぢや。
174
さう
自惚
(
うぬぼれ
)
するものぢやないよ』
175
と
云
(
い
)
つたので
名田彦
(
なだひこ
)
は
変
(
へん
)
な
顔
(
かほ
)
して
黙言
(
だまり
)
込
(
こ
)
んで
仕舞
(
しま
)
つた。
176
(
大正一四、八
、筆録)
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