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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
特別編 入蒙記
第1篇 日本より奉天まで
第1章 水火訓
第2章 神示の経綸
第3章 金剛心
第4章 微燈の影
第5章 心の奥
第6章 出征の辞
第7章 奉天の夕
第2篇 奉天より洮南へ
第8章 聖雄と英雄
第9章 司令公館
第10章 奉天出発
第11章 安宅の関
第12章 焦頭爛額
第13章 洮南旅館
第14章 洮南の雲
第3篇 洮南より索倫へ
第15章 公爺府入
第16章 蒙古の人情
第17章 明暗交々
第18章 蒙古気質
第19章 仮司令部
第20章 春軍完備
第21章 索倫本営
第4篇 神軍躍動
第22章 木局収ケ原
第23章 下木局子
第24章 木局の月
第25章 風雨叱咤
第26章 天の安河
第27章 奉天の渦
第28章 行軍開始
第29章 端午の日
第30章 岩窟の奇兆
第5篇 雨後月明
第31章 強行軍
第32章 弾丸雨飛
第33章 武装解除
第34章 竜口の難
第35章 黄泉帰
第36章 天の岩戸
第37章 大本天恩郷
第38章 世界宗教聯合会
第39章 入蒙拾遺
附 入蒙余録
大本の経綸と満蒙
世界経綸の第一歩
蒙古建国
蒙古の夢
神示の世界経綸
余白歌
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霊界物語
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山河草木(第61~72巻、入蒙記)
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<<< 仮司令部
(B)
(N)
索倫本営 >>>
第二〇章
春軍
(
しゆんぐん
)
完備
(
くわんび
)
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 特別篇 山河草木 入蒙記
篇:
第3篇 洮南より索倫へ
よみ(新仮名遣い):
とうなんよりそーろんへ
章:
第20章 春軍完備
よみ(新仮名遣い):
しゅんぐんかんび
通し章番号:
口述日:
1925(大正14)年08月
口述場所:
筆録者:
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年2月14日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
四月二十四日午後、ようやく五台の台車に武器が満載されてやってきた。それにつれて仮司令部の中も活気付き、兵士たちの士気も上がってきた。日本人側もようやく安堵し愁眉を開いた。
奥地は難所が多いために荷物を軽くしていくことになった。日出雄も霊界物語や支那服・日本服は洮南に送り返し、ラマの法衣のみを着ていくことになった。また日出雄と真澄別は宗教家として武器は携帯しなかった。
あけて四月二十六日、公爺府を出発した。日出雄は蒙古救援軍の総督太上将として索倫山に出発することとなったのである。
公爺府を出て八十支里、見渡す限り目も届かない大原野に、風景よき四方の岩山、柳や楡の古木が密生している。トール側の清流を隔てて岩山に金鉱を掘った後があり、その横にラマ教の金廟の壁が白く輝いている。珍しい鳥がさえずり、牛馬、山羊の群れが愉快そうに遊んでいる。
日出雄はかつて霊界において見聞した第三天国の光景にそっくりだといって喜んだ。
公爺府より西北の日出雄が通過した地点は、たくさんの木材が天然のままに遺棄されてあり、水田に適当な肥沃な野が、手持ち無沙汰に際限もなく横たわっている。
日出雄と真澄別は、こんなところを開墾して穀類を植え付け、鉄路を敷いて樹木をきり出し鉱物を採掘したならば、実に大なる国家の富源を得られるであろうと話しつつ、進んでいった。
四月二十八日早朝、ヘルンウルホの宿営を出発し、下木局子まで進むことになった。午前九時二十分、無事に下木局子に安着した。盧占魁は司令部に一行を案内した。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
2024/1/20出口王仁三郎全集第6巻を底本として校正。
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2024-01-20 03:38:55
OBC :
rmnm20
愛善世界社版:
180頁
八幡書店版:
第14輯 614頁
修補版:
校定版:
181頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
四
(
し
)
月
(
ぐわつ
)
二十四
(
にじふよつ
)
日
(
か
)
午後
(
ごご
)
洮南
(
たうなん
)
府
(
ふ
)
第
(
だい
)
二十七
(
にじふしち
)
師長
(
しちやう
)
張
(
ちやう
)
海鵬
(
かいほう
)
の
副官
(
ふくくわん
)
が
二十二
(
にじふに
)
名
(
めい
)
の
騎馬兵
(
きばへい
)
を
従
(
したが
)
へ、
002
五台
(
ごだい
)
の
大車
(
だいしや
)
に
武器
(
ぶき
)
を
満載
(
まんさい
)
し
送
(
おく
)
り
来
(
きた
)
る、
003
又
(
また
)
轎車
(
けうしや
)
三台
(
さんだい
)
を
列
(
つら
)
ねて
奉天
(
ほうてん
)
側
(
がは
)
の
参謀
(
さんぼう
)
がやつて
来
(
き
)
た。
004
岡崎鉄首
『
王
(
わう
)
元祺
(
げんき
)
が
麻雀
(
マージヤン
)
に
耽
(
ふけ
)
り、
005
阿片
(
あへん
)
を
喰
(
くら
)
ひ、
006
ゴロゴロと
寝
(
ね
)
てばつかりゐよる。
007
盧
(
ろ
)
の
奴
(
やつ
)
ア
仮
(
かり
)
司令部
(
しれいぶ
)
で、
008
此奴
(
こいつ
)
も
亦
(
また
)
武器
(
ぶき
)
も
到着
(
たうちやく
)
せないのに
気楽
(
きらく
)
相
(
さう
)
に
阿片
(
あへん
)
を
喰
(
くら
)
つてゐる。
009
其
(
その
)
外
(
ほか
)
の
参謀
(
さんぼう
)
の
奴
(
やつ
)
ア、
010
ど
奴
(
いつ
)
も
此奴
(
こいつ
)
も
阿片
(
あへん
)
を
喰
(
くら
)
ふ
位
(
くらゐ
)
だから、
011
碌
(
ろく
)
な
奴
(
やつ
)
ア
一匹
(
いつぴき
)
もけつからぬ。
012
こんな
事
(
こと
)
で
何
(
ど
)
うして
軍隊
(
ぐんたい
)
の
操縦
(
さうじう
)
が
出来
(
でき
)
るか……』
013
と
口角
(
こうかく
)
泡
(
あは
)
を
飛
(
と
)
ばし
真赤
(
まつか
)
な
面
(
かほ
)
で
怒
(
おこ
)
つてゐた
岡崎
(
をかざき
)
将軍
(
しやうぐん
)
も、
014
洮南
(
たうなん
)
府
(
ふ
)
から
武器
(
ぶき
)
が
来
(
き
)
たのを
見
(
み
)
て、
015
俄
(
にはか
)
に
機嫌
(
きげん
)
が
直
(
なほ
)
り
直
(
ただち
)
に
仮
(
かり
)
司令部
(
しれいぶ
)
に
走
(
はし
)
つて
行
(
い
)
つた。
016
茲
(
ここ
)
に
於
(
おい
)
て
公爺府
(
コンエフ
)
滞在
(
たいざい
)
の
将卒
(
しやうそつ
)
は
頓
(
とみ
)
に
活気
(
くわつき
)
づき、
017
鼻息
(
はないき
)
が
荒
(
あら
)
くなつて、
018
歩
(
ある
)
き
振
(
ぶり
)
迄
(
まで
)
が
変
(
かは
)
つて
来
(
き
)
た。
019
何
(
いづ
)
れの
兵士
(
へいし
)
も
武器
(
ぶき
)
が
来
(
き
)
たのを
見
(
み
)
て、
020
あゝ
力
(
ちから
)
が
来
(
き
)
たのだ……と
喜
(
よろこ
)
んだ。
021
岡崎
(
をかざき
)
は
笑壺
(
えつぼ
)
に
入
(
い
)
り
乍
(
なが
)
ら、
022
ソロソロ
鼻息
(
はないき
)
が
高
(
たか
)
うなり、
023
岡崎鉄首
『
公爺府
(
コンエフ
)
の
餓鬼
(
がき
)
や、
024
老
(
らう
)
印君
(
いんくん
)
の
爺
(
おやじ
)
奴
(
め
)
、
025
ゴテゴテ
吐
(
ぬか
)
すとモウ
承知
(
しようち
)
せぬぞ。
026
今迄
(
いままで
)
吾々
(
われわれ
)
を
馬鹿
(
ばか
)
にしよつた』
027
と
傍若
(
ばうじやく
)
無人
(
ぶじん
)
の
言語
(
げんご
)
を
放
(
はな
)
つてゐる。
028
日出雄
(
ひでを
)
、
029
真澄別
(
ますみわけ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
の
日本人
(
につぽんじん
)
側
(
がは
)
もヤツと
安心
(
あんしん
)
して
愁眉
(
しうび
)
を
開
(
ひら
)
いた。
030
翌
(
よく
)
二十五
(
にじふご
)
日
(
にち
)
正午
(
しやうご
)
頃
(
ごろ
)
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
を
招
(
まね
)
いて
奥地
(
おくち
)
行
(
ゆき
)
の
相談
(
さうだん
)
をした。
031
曼陀汗
(
マンダハン
)
が
一緒
(
いつしよ
)
にやつて
来
(
き
)
て、
032
曼陀汗
『
奥地
(
おくち
)
は
大変
(
たいへん
)
に
難所
(
なんしよ
)
が
多
(
おほ
)
いから、
033
沢山
(
たくさん
)
の
荷物
(
にもつ
)
は
到底
(
たうてい
)
携帯
(
けいたい
)
することは
出来
(
でき
)
ませぬ。
034
それ
故
(
ゆゑ
)
必要品
(
ひつえうひん
)
のみを
持
(
も
)
つて
行
(
ゆ
)
くこととし、
035
其
(
その
)
他
(
た
)
の
物
(
もの
)
は
奉天
(
ほうてん
)
へ
送
(
おく
)
り
返
(
かへ
)
す
方
(
はう
)
が
安全
(
あんぜん
)
です』
036
と
云
(
い
)
つた。
037
そこで
日出雄
(
ひでを
)
は
沢山
(
たくさん
)
の
霊界
(
れいかい
)
物語
(
ものがたり
)
を
初
(
はじ
)
め、
038
支那服
(
しなふく
)
や
日本服
(
につぽんふく
)
全部
(
ぜんぶ
)
を
轎車
(
けうしや
)
に
積
(
つ
)
んで、
039
先
(
ま
)
づ
洮南
(
たうなん
)
の
長栄号
(
ちやうえいがう
)
に
送
(
おく
)
り
届
(
とど
)
け、
040
喇嘛
(
ラマ
)
の
法衣
(
ほふえ
)
のみを
着
(
き
)
て
行
(
ゆ
)
くことになつた。
041
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
は
索倫山
(
ソーロンざん
)
の
奥
(
おく
)
、
042
興安嶺
(
こうあんれい
)
には
七千
(
しちせん
)
人
(
にん
)
の
赤軍
(
せきぐん
)
が
割拠
(
かつきよ
)
してゐるから、
043
必
(
かなら
)
ず
衝突戦
(
しようとつせん
)
が
起
(
おこ
)
るであらう、
044
それだから
凡
(
すべ
)
ての
荷物
(
にもつ
)
を
軽
(
かる
)
うしておかねばならぬのだ……と
口
(
くち
)
を
添
(
そ
)
へた。
045
此
(
この
)
日
(
ひ
)
午後
(
ごご
)
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
は
大事
(
だいじ
)
な
物
(
もの
)
を
日出雄
(
ひでを
)
に
預
(
あづ
)
けおき
張
(
ちやう
)
桂林
(
けいりん
)
事
(
こと
)
曼陀汗
(
マンダハン
)
の
先頭
(
せんとう
)
が
数十
(
すうじつ
)
騎
(
き
)
及
(
およ
)
び
二百
(
にひやく
)
の
歩兵
(
ほへい
)
を
率
(
ひき
)
ひ
索倫
(
ソーロン
)
へ
向
(
むか
)
つて
進
(
すす
)
む
事
(
こと
)
となつた。
046
守高
(
もりたか
)
、
047
名田彦
(
なだひこ
)
の
両人
(
りやうにん
)
には
十連発
(
じふれんぱつ
)
のモーゼル
銃
(
じゆう
)
を
一挺
(
いつてう
)
づつ
携帯
(
けいたい
)
せしめ、
048
坂本
(
さかもと
)
には
軽
(
けい
)
機関銃
(
きくわんじゆう
)
とモーゼル
銃
(
じゆう
)
を
携帯
(
けいたい
)
せしめ、
049
其
(
その
)
他
(
た
)
の
日本人
(
につぽんじん
)
にも
一々
(
いちいち
)
武器
(
ぶき
)
を
与
(
あた
)
へて
出発
(
しゆつぱつ
)
の
用意
(
ようい
)
をなさしめた。
050
但
(
ただ
)
し
日出雄
(
ひでを
)
、
051
真澄別
(
ますみわけ
)
は
宗教家
(
しうけうか
)
として
武器
(
ぶき
)
は
携帯
(
けいたい
)
しなかつたのである。
052
それから
岡崎
(
をかざき
)
は
一先
(
ひとま
)
づ
猪野
(
ゐの
)
を
従
(
したが
)
へ
奉天
(
ほうてん
)
へ
帰
(
かへ
)
り、
053
後
(
あと
)
の
準備
(
じゆんび
)
を
整
(
ととの
)
へて
再
(
ふたた
)
び
索倫山
(
ソーロンざん
)
に
向
(
むか
)
ふ
事
(
こと
)
とした。
054
あくれば
二十六
(
にじふろく
)
日
(
にち
)
、
055
何
(
か
)
全孝
(
ぜんかう
)
を
団長
(
だんちやう
)
となし、
056
馮
(
ひよう
)
虎臣
(
こしん
)
を
護衛長
(
ごゑいちやう
)
となし、
057
二百
(
にひやく
)
の
将卒
(
しやうそつ
)
を
引
(
ひ
)
きつれ、
058
日出雄
(
ひでを
)
、
059
真澄別
(
ますみわけ
)
の
両人
(
りやうにん
)
は
二台
(
にだい
)
の
轎車
(
けうしや
)
に
分乗
(
ぶんじやう
)
し、
060
公爺府
(
コンエフ
)
を
出発
(
しゆつぱつ
)
した。
061
此
(
この
)
日
(
ひ
)
は
旧暦
(
きうれき
)
の
三
(
さん
)
月
(
ぐわつ
)
二十三
(
にじふさん
)
日
(
にち
)
で
大本
(
おほもと
)
の
月並祭
(
つきなみさい
)
当日
(
たうじつ
)
である。
062
日出雄
(
ひでを
)
一行
(
いつかう
)
が
公爺府
(
コンエフ
)
を
去
(
さ
)
らむとする
時
(
とき
)
、
063
数多
(
あまた
)
の
老若
(
らうにやく
)
男女
(
なんによ
)
が
見送
(
みおく
)
つて
来
(
き
)
て、
064
別
(
わか
)
れを
惜
(
をし
)
み、
065
中
(
なか
)
には
地
(
ち
)
に
伏
(
ふ
)
して
涕泣
(
ていきふ
)
する
者
(
もの
)
さへあつた。
066
臍
(
へそ
)
の
緒
(
を
)
切
(
き
)
つてから
初
(
はじ
)
めて
軍隊
(
ぐんたい
)
を
引率
(
いんそつ
)
し、
067
蒙古
(
もうこ
)
救援軍
(
きうゑんぐん
)
の
総督
(
そうとく
)
太上将
(
たいじやうしやう
)
に
推
(
お
)
されて
索倫山
(
ソーロンざん
)
に
向
(
むか
)
ふ
日出雄
(
ひでを
)
の
感想
(
かんさう
)
は、
068
果
(
はた
)
して
何
(
ど
)
んなものであつたらう。
069
彼方
(
かなた
)
此方
(
こなた
)
の
楊柳
(
やなぎ
)
の
樹
(
き
)
は、
070
或
(
あるひ
)
は
紅
(
あか
)
く、
071
或
(
あるひ
)
は
黄
(
きいろ
)
く、
072
金赤
(
きんあか
)
の
水引
(
みづひ
)
きを
立
(
た
)
てた
如
(
よ
)
うに
梢
(
こずえ
)
を
飾
(
かざ
)
つてゐる。
073
四十
(
しじふ
)
支里
(
しり
)
を
経
(
へ
)
たる
桑噶爾巴
(
サンカルパ
)
と
云
(
い
)
ふ
部落
(
ぶらく
)
の、
074
ウフンシークの
家
(
いへ
)
に
休
(
やす
)
んで
昼食
(
ちうしよく
)
を
喫
(
きつ
)
し、
075
一
(
いち
)
時間
(
じかん
)
許
(
ばか
)
り
息
(
いき
)
を
休
(
やす
)
め
全
(
ぜん
)
部隊
(
ぶたい
)
の
到着
(
たうちやく
)
を
待
(
ま
)
つた。
076
それより
轎車
(
けうしや
)
を
走
(
はし
)
らせて
午後
(
ごご
)
五
(
ご
)
時
(
じ
)
三十
(
さんじつ
)
分
(
ぷん
)
阿布具伊拉
(
アフグイラ
)
に
安着
(
あんちやく
)
し、
077
農家
(
のうか
)
を
徴発
(
ちやうはつ
)
して
宿営
(
しゆくえい
)
することとなつた。
078
四五
(
しご
)
名
(
めい
)
の
家族
(
かぞく
)
で
比較
(
ひかく
)
的
(
てき
)
富裕
(
ふいう
)
な
家庭
(
かてい
)
と
見
(
み
)
えた。
079
家人
(
かじん
)
四五
(
しご
)
名
(
めい
)
が
代
(
かは
)
る
代
(
がは
)
る
日出雄
(
ひでを
)
や
真澄別
(
ますみわけ
)
の
前
(
まへ
)
にやつて
来
(
き
)
て、
080
活仏
(
くわつぶつ
)
の
来臨
(
らいりん
)
と
崇敬
(
すうけい
)
し、
081
土
(
つち
)
に
跪
(
ひざまづ
)
いて
礼拝
(
れいはい
)
するのであつた。
082
当家
(
たうけ
)
に
宿泊
(
しゆくはく
)
した
者
(
もの
)
は
日出雄
(
ひでを
)
、
083
真澄別
(
ますみわけ
)
、
084
守高
(
もりたか
)
、
085
名田彦
(
なだひこ
)
、
086
秦宣
(
しんせん
)
、
087
王
(
わう
)
元祺
(
げんき
)
、
088
坂本
(
さかもと
)
、
089
白凌閣
(
パイリンク
)
、
090
温
(
をん
)
長興
(
ちやうこう
)
、
091
馮
(
ひよう
)
虎臣
(
こしん
)
等
(
ら
)
である。
092
其
(
その
)
他
(
た
)
の
将卒
(
しやうそつ
)
は
附近
(
ふきん
)
の
部落
(
ぶらく
)
の
民家
(
みんか
)
を
徴発
(
ちやうはつ
)
して
宿営
(
しゆくえい
)
することとなつた。
093
此
(
この
)
夜
(
よ
)
の
口令
(
こうれい
)
は
春軍
(
しゆんぐん
)
[
*
底本(全集)ではフリガナは付いていない。
]
と
発布
(
はつぷ
)
した。
094
公爺府
(
コンエフ
)
を
去
(
さ
)
ること
正
(
まさ
)
に
八十
(
はちじふ
)
支里
(
しり
)
の
地点
(
ちてん
)
である。
095
見渡
(
みわた
)
す
限
(
かぎ
)
り
目
(
め
)
も
届
(
とど
)
かぬ
大原野
(
だいげんや
)
を
巡
(
めぐ
)
らす
風景
(
ふうけい
)
よき
四方
(
しはう
)
の
岩山
(
いはやま
)
に
楊柳
(
やなぎ
)
、
096
楡
(
にれ
)
の
古木
(
こぼく
)
が
密生
(
みつせい
)
し、
097
楡
(
にれ
)
の
古木
(
こぼく
)
には
白
(
しろ
)
き
花
(
はな
)
が
咲
(
さ
)
きほこり、
098
楊
(
やなぎ
)
の
芽
(
め
)
は
紅
(
あか
)
く
得
(
え
)
も
言
(
い
)
はれぬ
風情
(
ふぜい
)
である。
099
西北
(
せいほく
)
に
当
(
あた
)
つて
洮児
(
トール
)
河
(
がは
)
の
清流
(
せいりう
)
を
隔
(
へだ
)
て、
100
風光
(
ふうくわう
)
の
佳
(
よ
)
い
古木
(
こぼく
)
の
交
(
まじ
)
つた
岩山
(
いはやま
)
に
金鉱
(
きんくわう
)
を
掘出
(
ほりだ
)
した
跡
(
あと
)
があり、
101
其
(
その
)
稍
(
やや
)
横
(
よこ
)
の
方
(
はう
)
には
喇嘛教
(
ラマけう
)
の
金廟
(
アルタメウ
)
の
壁
(
かべ
)
が
白
(
しろ
)
く
夕日
(
ゆふひ
)
に
輝
(
かがや
)
いてゐる。
102
何
(
なん
)
とも
彼
(
か
)
とも
言
(
い
)
はれない
気分
(
きぶん
)
の
良
(
よ
)
い
風
(
かぜ
)
が
吹
(
ふ
)
いて
来
(
き
)
て、
103
珍
(
めづ
)
らしい
鳥
(
とり
)
は
林間
(
りんかん
)
に
囀
(
さへづ
)
り、
104
牛馬
(
ぎうば
)
、
105
山羊
(
やぎ
)
の
群
(
むれ
)
は
安
(
やす
)
らかに
愉快
(
ゆくわい
)
相
(
さう
)
に
遊
(
あそ
)
んでゐる。
106
古人
(
こじん
)
の
言
(
い
)
つた『
初
(
しよ
)
春
(
しゆん
)
柳
(
りう
)
含
(
がん
)
烟
(
えん
)
』の
句
(
く
)
も
当地
(
たうち
)
に
於
(
おい
)
ては
適用
(
てきよう
)
しない
様
(
やう
)
である。
107
凡
(
すべ
)
ての
柳
(
やなぎ
)
は
紅
(
あか
)
い
小枝
(
こえだ
)
を
真直
(
まつすぐ
)
に
天
(
てん
)
に
向
(
むか
)
つて
伸
(
の
)
ばし、
108
遠目
(
とほめ
)
には
秋
(
あき
)
の
紅葉
(
もみぢ
)
の
林
(
はやし
)
を
見
(
み
)
るやうである。
109
『
春
(
しゆん
)
来
(
らい
)
柳
(
りう
)
含
(
がん
)
火
(
くわ
)
』
[
*
「初春柳含烟」も「春来柳含火」も底本(全集)ではフリガナは付いていない。校定版・愛善世界社版にはフリガナが付与されている。
]
と
言
(
い
)
つた
方
(
はう
)
が
適当
(
てきたう
)
であらう。
110
日出雄
(
ひでを
)
は
嘗
(
かつ
)
て
霊界
(
れいかい
)
に
於
(
おい
)
て
見聞
(
けんぶん
)
したる
第三
(
だいさん
)
天国
(
てんごく
)
の
光景
(
くわうけい
)
にそつくりだと
言
(
い
)
つて
喜
(
よろこ
)
んだ。
111
『
春
(
はる
)
の
山姫
(
やまひめ
)
は
緑
(
みどり
)
紅
(
くれなゐ
)
こき
交
(
ま
)
ぜて
我
(
わが
)
神軍
(
しんぐん
)
を
迎
(
むか
)
へ
玉
(
たま
)
ふ』と
云
(
い
)
つて
真澄別
(
ますみわけ
)
は
勇
(
いさ
)
んでゐる。
112
日出雄
(
ひでを
)
はこの
曠原
(
くわうげん
)
を
天
(
あま
)
の
原
(
はら
)
と
命名
(
めいめい
)
し、
113
裏山
(
うらやま
)
の
大
(
だい
)
なる
岩窟
(
がんくつ
)
を
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
と
命名
(
めいめい
)
した。
114
○
115
翌日
(
よくじつ
)
午前
(
ごぜん
)
八
(
はち
)
時
(
じ
)
天
(
あま
)
の
原
(
はら
)
を
轎車
(
けうしや
)
に
乗
(
の
)
り、
116
二百
(
にひやく
)
の
兵士
(
へいし
)
を
引率
(
いんそつ
)
して
出発
(
しゆつぱつ
)
した。
117
蒙古
(
もうこ
)
の
河
(
かは
)
には
一
(
ひと
)
つも
橋
(
はし
)
が
架
(
かか
)
つてゐない。
118
それ
故
(
ゆゑ
)
、
119
広
(
ひろ
)
い
深
(
ふか
)
い
河
(
かは
)
を
騎馬
(
きば
)
にて
渡
(
わた
)
らねばならぬ。
120
日出雄
(
ひでを
)
、
121
真澄別
(
ますみわけ
)
の
乗
(
の
)
つた
轎車
(
けうしや
)
は
浅瀬
(
あさせ
)
を
考
(
かんが
)
へて、
122
やつとのことで
幾
(
いく
)
つも
幾
(
いく
)
つも
河
(
かは
)
を
渡
(
わた
)
り、
123
四十
(
しじふ
)
支里
(
しり
)
を
経
(
へ
)
たるヘルンウルホに
宿営
(
しゆくえい
)
することとなつた。
124
斯
(
か
)
かる
所
(
ところ
)
へ
洮南
(
たうなん
)
から
後
(
あと
)
を
追
(
お
)
つて
来
(
き
)
た
轎車
(
けうしや
)
が
三台
(
さんだい
)
、
125
又
(
また
)
もや
色々
(
いろいろ
)
の
食料品
(
しよくれうひん
)
を
積
(
つ
)
んで
来
(
き
)
たのに
途中
(
とちう
)
で
会
(
あ
)
つた。
126
此
(
この
)
間
(
かん
)
の
道筋
(
みちすぢ
)
は
実
(
じつ
)
に
麗
(
うるは
)
しく
大公園
(
だいこうゑん
)
の
中
(
なか
)
を
通過
(
つうくわ
)
する
様
(
やう
)
であつた。
127
途中
(
とちう
)
で
唐国別
(
からくにわけ
)
からの
手紙
(
てがみ
)
五通
(
ごつう
)
を
受取
(
うけと
)
つて、
128
奉天
(
ほうてん
)
や
日本
(
につぽん
)
の
情報
(
じやうほう
)
及
(
およ
)
び
新聞
(
しんぶん
)
の
切抜
(
きりぬ
)
きにて、
129
露
(
ろ
)
、
130
支
(
し
)
、
131
蒙
(
もう
)
の
関係
(
くわんけい
)
を
知
(
し
)
つた。
132
公爺府
(
コンエフ
)
以西北
(
いせいほく
)
の
日出雄
(
ひでを
)
が
通過
(
つうくわ
)
した
地点
(
ちてん
)
は、
133
沢山
(
たくさん
)
な
木材
(
もくざい
)
が
天然
(
てんねん
)
の
儘
(
まま
)
に
遺棄
(
ゐき
)
されてあり、
134
水田
(
すゐでん
)
に
適当
(
てきたう
)
な
沃野
(
よくや
)
が
開闢
(
かいびやく
)
以来
(
いらい
)
、
135
手持
(
てもち
)
無沙汰
(
ぶさた
)
に
際限
(
さいげん
)
もなく
横
(
よこた
)
はつてゐる。
136
こんな
所
(
ところ
)
を
開墾
(
かいこん
)
して
穀類
(
こくるゐ
)
を
植付
(
うゑつ
)
け、
137
又
(
また
)
は
鉄路
(
てつろ
)
を
布
(
し
)
いて
樹木
(
じゆもく
)
を
伐
(
き
)
り
出
(
だ
)
し
鉱物
(
くわうぶつ
)
を
採掘
(
さいくつ
)
したならば、
138
実
(
じつ
)
に
大
(
だい
)
なる
国家
(
こくか
)
の
富源
(
ふげん
)
を
得
(
え
)
られるであらうと、
139
日出雄
(
ひでを
)
、
140
真澄別
(
ますみわけ
)
は
道々
(
みちみち
)
話
(
はな
)
しつつ
進
(
すす
)
んで
行
(
い
)
つた。
141
此
(
この
)
日
(
ひ
)
は
都合
(
つがふ
)
に
依
(
よ
)
つて
僅
(
わづ
)
か
四十
(
しじふ
)
支里
(
しり
)
の
行軍
(
かうぐん
)
にとどめ、
142
日出雄
(
ひでを
)
一行
(
いつかう
)
はヘルンウルホの
公園
(
こうゑん
)
の
如
(
ごと
)
き
麗
(
うるは
)
しき
原野
(
げんや
)
の
中
(
なか
)
を
衛兵
(
ゑいへい
)
等
(
ら
)
に
先綱
(
さきづな
)
を
取
(
と
)
らせ、
143
騎馬
(
きば
)
にて
愉快気
(
ゆくわいげ
)
に
駆
(
か
)
け
廻
(
まは
)
りなどして、
144
半日
(
はんにち
)
を
費
(
つひや
)
した。
145
山羊
(
やぎ
)
、
146
豚
(
ぶた
)
、
147
犬
(
いぬ
)
、
148
牛馬
(
ぎうば
)
なども
沢山
(
たくさん
)
に
飼
(
か
)
つてある。
149
此
(
これ
)
等
(
ら
)
の
家畜
(
かちく
)
を
友
(
とも
)
として、
150
暖
(
あたた
)
かき
春
(
はる
)
の
日
(
ひ
)
を
送
(
おく
)
つた。
151
此処
(
ここ
)
には
露人
(
ろじん
)
と
蒙古人
(
もうこじん
)
との
中
(
なか
)
に
生
(
うま
)
れた
十
(
じつ
)
歳
(
さい
)
位
(
ぐらゐ
)
な
愛
(
あい
)
らしい
色
(
いろ
)
の
白
(
しろ
)
い
混血児
(
こんけつじ
)
が
一人
(
ひとり
)
あつた。
152
そして
其
(
その
)
母親
(
ははおや
)
といふのは、
153
少
(
すこ
)
し
許
(
ばか
)
り
垢抜
(
あかぬ
)
けのした
女
(
をんな
)
であつた。
154
此
(
この
)
夜
(
よ
)
の
口令
(
こうれい
)
は
完備
(
くわんび
)
[
*
底本(全集)にはフリガナは付いていない。
]
と
発布
(
はつぷ
)
された。
155
東西
(
とうざい
)
南北
(
なんぼく
)
の
山々
(
やまやま
)
は
火事
(
くわじ
)
を
起
(
おこ
)
し、
156
都合
(
つがふ
)
五
(
ご
)
ケ
所
(
しよ
)
から
天
(
てん
)
を
焦
(
こが
)
して
燃
(
も
)
え
上
(
あが
)
り、
157
炎
(
ほのほ
)
の
先
(
さき
)
がチラチラと
雲
(
くも
)
を
舐
(
な
)
めてゐるのが
見
(
み
)
える。
158
そして
此
(
この
)
夜
(
よ
)
は
満天
(
まんてん
)
墨
(
すみ
)
を
流
(
なが
)
した
如
(
ごと
)
く
曇
(
くも
)
り、
159
一点
(
いつてん
)
の
星影
(
ほしかげ
)
も
見
(
み
)
えず、
160
犬
(
いぬ
)
の
吠
(
ほ
)
ゆる
声
(
こゑ
)
、
161
殊更
(
ことさら
)
かしましく
聴
(
き
)
こえて
来
(
く
)
る。
162
坂本
(
さかもと
)
氏
(
し
)
のオチコ、
163
ウツトコに
関
(
くわん
)
する
無邪気
(
むじやき
)
な
話
(
はなし
)
や、
164
名田彦
(
なだひこ
)
が
内地
(
ないち
)
にある
妻
(
つま
)
を
追想
(
つゐさう
)
して、
165
オチコ、
166
ウツトコ、
167
ハテナの
話
(
はなし
)
に
面白
(
おもしろ
)
く
一夜
(
いちや
)
を
明
(
あ
)
かした。
168
あくれば
四
(
し
)
月
(
ぐわつ
)
二十八
(
にじふはち
)
日
(
にち
)
午前
(
ごぜん
)
五
(
ご
)
時
(
じ
)
半
(
はん
)
、
169
ヘルンウルホの
宿営
(
しゆくえい
)
を
出発
(
しゆつぱつ
)
し、
170
幾度
(
いくど
)
も
河
(
かは
)
を
横切
(
よこぎ
)
りて
下
(
しも
)
木局子
(
もくきよくし
)
に
向
(
むか
)
つて
進
(
すす
)
むこととなつた。
171
世界
(
せかい
)
各国
(
かくこく
)
の
言語
(
げんご
)
に
通
(
つう
)
じ、
172
柔術
(
じうじゆつ
)
の
達人
(
たつじん
)
、
173
米国
(
べいこく
)
理髪
(
りはつ
)
学士
(
がくし
)
、
174
乗馬
(
じやうば
)
の
達人
(
たつじん
)
と
言
(
い
)
うて
居
(
ゐ
)
た
名田彦
(
なだひこ
)
の
騎馬
(
きば
)
姿
(
すがた
)
は
却
(
かへ
)
つて
危
(
あやふ
)
く
見
(
み
)
え、
175
まだ
一度
(
いちど
)
も
馬
(
うま
)
に
跨
(
またが
)
つた
事
(
こと
)
の
無
(
な
)
い
真澄別
(
ますみわけ
)
、
176
守高
(
もりたか
)
の
両人
(
りやうにん
)
は、
177
チヤンと
姿勢
(
しせい
)
が
備
(
そな
)
はつて
今迄
(
いままで
)
に
乗馬
(
じやうば
)
を
練習
(
れんしふ
)
した
人
(
ひと
)
と
見
(
み
)
えるなどと、
178
兵士
(
へいし
)
が
口々
(
くちぐち
)
に
評
(
ひやう
)
し
乍
(
なが
)
ら、
179
長
(
なが
)
い
行列
(
ぎやうれつ
)
を
作
(
つく
)
つて
西北
(
せいほく
)
の
空
(
そら
)
を
目当
(
めあ
)
てに
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
180
索倫山
(
ソーロンざん
)
迄
(
まで
)
行
(
ゆ
)
かねば
乗馬
(
じやうば
)
が
揃
(
そろ
)
はないので、
181
徒歩
(
とほ
)
の
兵士
(
へいし
)
が
沢山
(
たくさん
)
あつた。
182
そこらに
遊
(
あそ
)
んで
居
(
ゐ
)
る
驢馬
(
ろば
)
を
引
(
ひ
)
つ
張
(
ぱ
)
つて
来
(
き
)
て
之
(
これ
)
に
跨
(
またが
)
り、
183
木局子
(
もくきよくし
)
の
近辺
(
きんぺん
)
迄
(
まで
)
行
(
い
)
つて
驢馬
(
ろば
)
の
首
(
くび
)
を
東南
(
とうなん
)
へ
立直
(
たてなほ
)
し、
184
尻
(
しり
)
をポンと
叩
(
たた
)
いて
放
(
はな
)
ちやつた。
185
驢馬
(
ろば
)
は
一目散
(
いちもくさん
)
に
元来
(
もとき
)
し
道
(
みち
)
へ
馳
(
は
)
せ
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
186
二十
(
にじふ
)
支里
(
しり
)
程
(
ほど
)
の
此方
(
こつち
)
から
索倫山
(
ソーロンざん
)
の
頂
(
いただき
)
が
見
(
み
)
えて、
187
白
(
しろ
)
く
雪
(
ゆき
)
が
光
(
ひか
)
つてゐた。
188
護衛兵
(
ごゑいへい
)
の
馮
(
ひよう
)
虎臣
(
こしん
)
は
日出雄
(
ひでを
)
に
山頂
(
さんちやう
)
の
雪
(
ゆき
)
を
指
(
ゆびさ
)
し、
189
憑虎臣
『あの
山
(
やま
)
の
麓
(
ふもと
)
が
最早
(
もは
)
や
木局子
(
もくきよくし
)
で
厶
(
ござ
)
います。
190
モウ
少時
(
しばらく
)
で
御座
(
ござ
)
いますから
御
(
ご
)
安心
(
あんしん
)
なさいませ』
191
と
云
(
い
)
ふ
意味
(
いみ
)
を
支那語
(
しなご
)
で
語
(
かた
)
り
聞
(
き
)
かせた。
192
日出雄
(
ひでを
)
一行
(
いつかう
)
は
勇気
(
ゆうき
)
頓
(
とみ
)
に
加
(
くは
)
はり、
193
轎車
(
けうしや
)
を
出
(
い
)
でて
駒
(
こま
)
に
鞭
(
むちう
)
ちつつ
午前
(
ごぜん
)
九
(
く
)
時
(
じ
)
二十
(
にじつ
)
分
(
ぷん
)
に
無事
(
ぶじ
)
下
(
しも
)
木局子
(
もくきよくし
)
に
安着
(
あんちやく
)
する
事
(
こと
)
を
得
(
え
)
た。
194
総司令
(
そうしれい
)
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
は
二百
(
にひやく
)
許
(
ばか
)
りの
兵士
(
へいし
)
を
引
(
ひ
)
きつれて
我
(
わが
)
一行
(
いつかう
)
を
迎
(
むか
)
へ、
195
直
(
ただち
)
に
手
(
て
)
を
取
(
と
)
つて
司令部
(
しれいぶ
)
へ
案内
(
あんない
)
した。
196
此
(
こ
)
の
司令部
(
しれいぶ
)
は
広大
(
くわうだい
)
なる
城廓
(
じやうくわく
)
構
(
かま
)
へで、
197
四五
(
しご
)
年前
(
ねんまへ
)
迄
(
まで
)
は
露国兵
(
ろこくへい
)
が
駐屯
(
ちうとん
)
し
木材
(
もくざい
)
の
税金
(
ぜいきん
)
を
取
(
と
)
つて
居
(
ゐ
)
た
所
(
ところ
)
だと
云
(
い
)
ふ。
198
普通
(
ふつう
)
の
蒙古
(
もうこ
)
の
家屋
(
かをく
)
と
異
(
ことな
)
り、
199
建築物
(
けんちくぶつ
)
も
余程
(
よほど
)
宏荘
(
くわうさう
)
であり、
200
美麗
(
びれい
)
である。
201
今
(
いま
)
は
黒竜江
(
こくりうこう
)
省
(
しやう
)
の
管轄
(
くわんかつ
)
に
属
(
ぞく
)
し、
202
黒竜江
(
こくりうこう
)
から
官吏
(
くわんり
)
が
出張
(
しゆつちやう
)
して
事務
(
じむ
)
を
執
(
と
)
つて
居
(
ゐ
)
る。
203
(
大正一四、八
、筆録)
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