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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
特別編 入蒙記
第1篇 日本より奉天まで
第1章 水火訓
第2章 神示の経綸
第3章 金剛心
第4章 微燈の影
第5章 心の奥
第6章 出征の辞
第7章 奉天の夕
第2篇 奉天より洮南へ
第8章 聖雄と英雄
第9章 司令公館
第10章 奉天出発
第11章 安宅の関
第12章 焦頭爛額
第13章 洮南旅館
第14章 洮南の雲
第3篇 洮南より索倫へ
第15章 公爺府入
第16章 蒙古の人情
第17章 明暗交々
第18章 蒙古気質
第19章 仮司令部
第20章 春軍完備
第21章 索倫本営
第4篇 神軍躍動
第22章 木局収ケ原
第23章 下木局子
第24章 木局の月
第25章 風雨叱咤
第26章 天の安河
第27章 奉天の渦
第28章 行軍開始
第29章 端午の日
第30章 岩窟の奇兆
第5篇 雨後月明
第31章 強行軍
第32章 弾丸雨飛
第33章 武装解除
第34章 竜口の難
第35章 黄泉帰
第36章 天の岩戸
第37章 大本天恩郷
第38章 世界宗教聯合会
第39章 入蒙拾遺
附 入蒙余録
大本の経綸と満蒙
世界経綸の第一歩
蒙古建国
蒙古の夢
神示の世界経綸
余白歌
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山河草木(第61~72巻、入蒙記)
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特別編 入蒙記
> 第4篇 神軍躍動 > 第25章 風雨叱咤
<<< 木局の月
(B)
(N)
天の安河 >>>
第二五章
風雨
(
ふうう
)
叱咤
(
しつた
)
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 特別篇 山河草木 入蒙記
篇:
第4篇 神軍躍動
よみ(新仮名遣い):
しんぐんやくどう
章:
第25章 風雨叱咤
よみ(新仮名遣い):
ふううしった
通し章番号:
口述日:
1925(大正14)年08月
口述場所:
筆録者:
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1935(昭和10)年4月30日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
五月二十一日、盧占魁が幹部・参謀を引き連れて日出雄を訪問に来た。佐々木を介して盧が日出雄に懇願するには、だんだん蒙古兵も集まってきたので、救世主来迎のうわさを確実なものとするため、風雨を呼び起こして彼らの肝玉を奪ってもらいたい、とのことであった。
日出雄は、用もないのに勝手に風雨を起こして神界の規則に触れることを心配したが、真澄別が大事のためなら、自分が身代わりとなって行ってみたい、と申し出たので、許可した。盧占魁は、実はすでに奇跡を起こすと部隊に布告してしまっていた、と明かし、日出雄が了承してくれたことを喜んだ。
日出雄はトール河畔に自ら聖域を卜し、真澄別の修業を指導した。
五月二十三日、朝日は麗しい光を地上に投げ、青空には一点の雲もなかった。午前八時ごろに魏副官が日出雄一行を迎えに馬車でやってきた。日出雄に従って同行するはずだった温長興はにわかに頭痛が激しくなったため、車に乗せて下木局子へと向かった。
下木局子では、盧占魁の部隊が日出雄一行を待っていたが、このような蒙古晴れの空から雨を降らすなどは到底無理だろう、などと噂をしながら待機していた。
日出雄一行が下木局子に来着すると、小憩の後、日出雄の目配せを合図に真澄別が何事か黙祷するやいなや、たちまち司令部の上天は薄暗くなり、またたくまに全天雨雲に覆われ、一陣の怪風吹くとともに、激しい暴風雨が来襲した。
一同は驚きあわて、みなあっけに取られて言葉もなかった。しばらくして、今日は写真は駄目でしょう、という失望の声が聞こえてきた。真澄別は日出雄に、五分も経てば大丈夫、と言った。日出雄はやおら身を起こして雨中に降り立ち、点に向かって「ウー」と大喝した。
すると風勢は衰え、雨は次第に小降りとなり、真澄別の宣言のごとく、暴風雨は消え去って空は元のごとく晴朗に澄み切った。盧占魁は人々の間を立ち回り、自分の宣伝が誇大ではなかったことを誇って回った。
ここで幹部一同記念撮影をなし、卓を囲んで会食をしたときに、真澄別は温長興を指して、実は大先生(日出雄)が今日の役目を承った竜神を、温さんに懸けておいたので、温さんは朝から頭痛がしていたのだ、と説明すれば、一同はただ感嘆の言葉を漏らすほかはなかった。
夕方日の没するころに、再び天候が変わって雨模様となってきた。盧占魁らは今日はここに泊まっては、と言ったが、日出雄は自分の旅立ちに雨は止むでしょう、と微笑しつつ帰って行った。果たして、帰途には雨は降らず、日出雄が帰着と同時に強雨が降り注ぎ、地上の塵を一時に流し去るほどであった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
2024/1/28出口王仁三郎全集第6巻を底本として校正。
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2024-01-28 02:32:49
OBC :
rmnm25
愛善世界社版:
228頁
八幡書店版:
第14輯 630頁
修補版:
校定版:
231頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
五
(
ご
)
月
(
ぐわつ
)
二十一
(
にじふいち
)
日
(
にち
)
(
陰暦
(
いんれき
)
四
(
し
)
月
(
ぐわつ
)
十八
(
じふはち
)
日
(
にち
)
)
上
(
かみ
)
木局収
(
もくきよくしう
)
の
仮殿
(
かりどの
)
に
002
日出雄
(
ひでを
)
は
真澄別
(
ますみわけ
)
等
(
ら
)
と
西漸
(
せいぜん
)
の
時機
(
じき
)
に
就
(
つい
)
て
種々
(
しゆじゆ
)
協議
(
けふぎ
)
を
凝
(
こら
)
してゐた。
003
折柄
(
をりから
)
護衛
(
ごゑい
)
の
温
(
をん
)
長興
(
ちやうこう
)
は
004
夥
(
おびただ
)
しき
馬隊
(
ばたい
)
並
(
ならび
)
に
轎車
(
けうしや
)
が
砂塵
(
さぢん
)
を
蹴立
(
けた
)
てて、
005
此方
(
こちら
)
へ
向
(
むか
)
つて
来
(
く
)
る
事
(
こと
)
を
報
(
はう
)
じた。
006
それは
盧
(
ろ
)
司令
(
しれい
)
が
蒙古
(
もうこ
)
の
貝勒
(
バイロク
)
貝子
(
バイシ
)
、
007
劉
(
りう
)
陞三
(
しようさん
)
、
008
佐々木
(
ささき
)
、
009
大倉
(
おほくら
)
、
010
其
(
その
)
他
(
た
)
幹部
(
かんぶ
)
参謀
(
さんぼう
)
連
(
れん
)
を
引具
(
ひきぐ
)
し、
011
日出雄
(
ひでを
)
訪問
(
はうもん
)
の
為
(
ため
)
に
来
(
き
)
たのであつた。
012
盧
(
ろ
)
は
佐々木
(
ささき
)
を
介
(
かい
)
して
日出雄
(
ひでを
)
に
請
(
こ
)
ふやう『だんだん
蒙古兵
(
もうこへい
)
も
集
(
あつ
)
まつて
来
(
く
)
るし、
013
救世主
(
きうせいしゆ
)
来降
(
らいかう
)
の
噂
(
うはさ
)
が
益々
(
ますます
)
盛
(
さかん
)
に
宣伝
(
せんでん
)
せられつつある
際
(
さい
)
なれば、
014
此
(
この
)
際
(
さい
)
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
の
肝玉
(
きもたま
)
を
奪
(
うば
)
ふ
為
(
ため
)
、
015
風雨
(
ふうう
)
を
喚
(
よ
)
び
起
(
おこ
)
して
貰
(
もら
)
ひたい』といふのである。
016
日出雄
(
ひでを
)
『
私
(
わたし
)
に
風雨
(
ふうう
)
雷霆
(
らいてい
)
を
叱咤
(
しつた
)
し
得
(
う
)
る
自信
(
じしん
)
は
経験
(
けいけん
)
上
(
じやう
)
から
言
(
い
)
つてもありますが、
017
併
(
しか
)
しそれは
神界
(
しんかい
)
から
見
(
み
)
て
真実
(
しんじつ
)
必要
(
ひつえう
)
と
認
(
みと
)
むる
場合
(
ばあひ
)
以外
(
いぐわい
)
には
用
(
もち
)
ゆる
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ない
事
(
こと
)
になつてゐます。
018
必要
(
ひつえう
)
のない……
言
(
い
)
はば
奇術
(
きじゆつ
)
かなぞの
様
(
やう
)
に
濫用
(
らんよう
)
するのは
兇党界
(
きようたうかい
)
に
属
(
ぞく
)
する
仕事
(
しごと
)
であるので、
019
一寸
(
ちよつと
)
困
(
こま
)
るなア』
020
大倉
(
おほくら
)
『
併
(
しか
)
し
先生
(
せんせい
)
、
021
皆
(
みな
)
が
渇望
(
かつばう
)
してゐるし、
022
蒙古人
(
もうこじん
)
等
(
ら
)
が
更
(
さら
)
に
信仰
(
しんかう
)
の
度
(
ど
)
を
高
(
たか
)
める
材料
(
ざいれう
)
になるのですから、
023
神界
(
しんかい
)
から
見
(
み
)
て
必要
(
ひつえう
)
な
場合
(
ばあひ
)
と
認
(
みと
)
めてやつて
頂
(
いただ
)
く
訳
(
わけ
)
にはいかぬでせうか』
024
日出雄
(
ひでを
)
『
困
(
こま
)
るなア、
025
鎮魂
(
ちんこん
)
で
各自
(
かくじ
)
相応
(
さうおう
)
の
霊界
(
れいかい
)
でも
見
(
み
)
せてやればそれで
可
(
い
)
いぢやないか』
026
大倉
(
おほくら
)
『
併
(
しか
)
し
部分
(
ぶぶん
)
的
(
てき
)
でなく、
027
大勢
(
おほぜい
)
一緒
(
いつしよ
)
に
見
(
み
)
られる
様
(
やう
)
な
不思議
(
ふしぎ
)
を、
028
一
(
ひと
)
つ
現
(
あら
)
はして
頂
(
いただ
)
きたいものですなア、
029
司令
(
しれい
)
も
熱心
(
ねつしん
)
にああ
云
(
い
)
ふてゐるのですから……』
030
日出雄
(
ひでを
)
『キリストですら、
031
奇蹟
(
きせき
)
を
請
(
こ
)
はれて
怒
(
いか
)
つたではないか……』
032
真澄別
(
ますみわけ
)
『
奇蹟
(
きせき
)
を
見
(
み
)
ずして
神
(
かみ
)
を
信
(
しん
)
ずる
者
(
もの
)
は
幸
(
さいはひ
)
なり……といふ
神言
(
しんげん
)
もありますけれど、
033
現今
(
げんこん
)
で
言
(
い
)
はば、
034
朦昧
(
もうまい
)
の
人々
(
ひとびと
)
の
間
(
あひだ
)
に
出
(
で
)
かけて
来
(
き
)
てるのですから、
035
何
(
なん
)
とか
工夫
(
くふう
)
せねばなるまいと
思
(
おも
)
ひます。
036
私
(
わたし
)
は
永久
(
えいきう
)
兇党界
(
きようたうかい
)
へ
堕落
(
だらく
)
しても、
037
それがお
道
(
みち
)
の
為
(
ため
)
になるなら
構
(
かま
)
ひませぬから、
038
先生
(
せんせい
)
さへ
御
(
お
)
許
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
されば、
039
私
(
わたし
)
をお
使
(
つか
)
ひ
下
(
くだ
)
さつて
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
の
肝玉
(
きもつたま
)
を
挫
(
ひし
)
いでおくのも
満更
(
まんざら
)
無駄
(
むだ
)
ではありますまい。
040
奇蹟
(
きせき
)
を
見
(
み
)
たがる
者
(
もの
)
は
強
(
あなが
)
ち
蒙古人
(
もうこじん
)
計
(
ばか
)
りぢやありますまいから……』
041
日出雄
(
ひでを
)
は
少時
(
しばらく
)
沈思
(
ちんし
)
黙考
(
もくかう
)
して、
042
日出雄
『では、
043
潔斎
(
けつさい
)
修行
(
しうぎやう
)
して
見
(
み
)
るが
可
(
よ
)
い、
044
真澄別
(
ますみわけ
)
が
行
(
や
)
る
事
(
こと
)
になれば
構
(
かま
)
はぬだらう』
045
盧占魁
(
ろせんくわい
)
は、
046
盧占魁
『
実
(
じつ
)
は
全隊
(
ぜんたい
)
へ
布告
(
ふこく
)
して、
047
一同
(
いちどう
)
一
(
いつ
)
週間
(
しうかん
)
の
精進
(
しやうじん
)
を
命
(
めい
)
じ
置
(
お
)
き、
048
此
(
この
)
二十三
(
にじふさん
)
日
(
にち
)
を
以
(
もつ
)
て
終
(
をは
)
ります。
049
其
(
その
)
日
(
ひ
)
には
先生
(
せんせい
)
が
奇蹟
(
きせき
)
を
見
(
み
)
せて
下
(
くだ
)
さると
申渡
(
まをしわた
)
して
了
(
しま
)
つたのです。
050
何
(
いづ
)
れ
更
(
あらた
)
めてお
迎
(
むか
)
へに
参
(
まゐ
)
りますから、
051
是非
(
ぜひ
)
御
(
お
)
願
(
ねが
)
ひ
致
(
いた
)
します。
052
序
(
ついで
)
に
記念
(
きねん
)
の
撮影
(
さつえい
)
も
致
(
いた
)
したう
御座
(
ござ
)
いますから』
053
との
意
(
い
)
を
述
(
の
)
べて、
054
雑談
(
ざつだん
)
の
後
(
のち
)
嬉々
(
きき
)
として
一同
(
いちどう
)
駒
(
こま
)
の
足並
(
あしなみ
)
も
勇
(
いさ
)
ましく、
055
下
(
しも
)
木局子
(
もくきよくし
)
の
司令部
(
しれいぶ
)
指
(
さ
)
して
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
056
日出雄
(
ひでを
)
は
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ず、
057
真澄別
(
ますみわけ
)
をして
其
(
その
)
衝
(
しよう
)
に
当
(
あた
)
らしむべく、
058
洮児
(
トール
)
河畔
(
がはん
)
に
聖域
(
せいいき
)
を
卜
(
ぼく
)
し、
059
自
(
みづか
)
らも
出張
(
しゆつちやう
)
して
真澄別
(
ますみわけ
)
の
修業
(
しうげふ
)
を
指導
(
しだう
)
した。
060
五
(
ご
)
月
(
ぐわつ
)
二十三
(
にじふさん
)
日
(
にち
)
(
陰暦
(
いんれき
)
四
(
し
)
月
(
ぐわつ
)
二十日
(
はつか
)
)
朝暾
(
てうどん
)
殊
(
こと
)
の
外
(
ほか
)
麗
(
うる
)
はしき
光
(
ひかり
)
を
地上
(
ちじやう
)
に
投
(
な
)
げ、
061
蒼空
(
さうくう
)
一点
(
いつてん
)
の
雲翳
(
うんえい
)
なく、
062
樹々
(
きぎ
)
に
飛交
(
とびか
)
ふ
鳥
(
とり
)
の
声
(
こゑ
)
は
恰
(
あだか
)
も
天国
(
てんごく
)
の
春
(
はる
)
を
歌
(
うた
)
ふが
如
(
ごと
)
く、
063
庭前
(
ていぜん
)
に
休
(
やす
)
らふ
馬
(
うま
)
の
嘶
(
いなな
)
きも
一層
(
いつそう
)
勇
(
いさ
)
ましさを
加
(
くは
)
へて
聞
(
きこ
)
え
来
(
きた
)
る。
064
午前
(
ごぜん
)
八
(
はち
)
時
(
じ
)
頃
(
ごろ
)
魏
(
ぎ
)
副官
(
ふくくわん
)
は
日出雄
(
ひでを
)
、
065
真澄別
(
ますみわけ
)
を
迎
(
むか
)
ふべく
馬車
(
ばしや
)
を
急
(
いそ
)
がしてやつて
来
(
き
)
た。
066
折
(
をり
)
しも
日出雄
(
ひでを
)
に
扈従
(
こじう
)
すべく
準備
(
じゆんび
)
せし
温
(
をん
)
長興
(
ちやうこう
)
は、
067
俄
(
にはか
)
に
頭痛
(
づつう
)
烈
(
はげ
)
しく、
068
乗馬
(
じやうば
)
に
堪
(
た
)
へずと
愬
(
うつた
)
ふ。
069
日出雄
(
ひでを
)
は
思
(
おも
)
ふ
所
(
ところ
)
ありと
見
(
み
)
え、
070
温
(
をん
)
長興
(
ちやうこう
)
を
轎車
(
けうしや
)
に
乗
(
の
)
らしめ、
071
自
(
みづか
)
らは
真澄別
(
ますみわけ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
の
護衛兵
(
ごゑいへい
)
と
共
(
とも
)
に
馬
(
うま
)
に
鞭
(
むちう
)
ち、
072
法衣
(
はふい
)
を
風
(
かぜ
)
に
靡
(
なび
)
かせつつ
下
(
しも
)
木局子
(
もくきよくし
)
に
向
(
むか
)
ひ、
073
仮殿
(
かりどの
)
を
出発
(
しゆつぱつ
)
した。
074
一方
(
いつぱう
)
下
(
しも
)
木局子
(
もくきよくし
)
の
西北
(
せいほく
)
自治軍
(
じちぐん
)
司令部
(
しれいぶ
)
にては、
075
各分営
(
かくぶんえい
)
の
団長
(
だんちやう
)
以下
(
いか
)
悉
(
ことごと
)
く
来集
(
らいしふ
)
し、
076
『
斯
(
か
)
くの
如
(
ごと
)
き
蒙古晴
(
もうこばれ
)
の
空
(
そら
)
より
雨
(
あめ
)
を
降
(
ふ
)
らすなど、
077
幾
(
いく
)
ら
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
でも
嘸
(
さぞ
)
困難
(
こんなん
)
であらう』などと、
078
とりどりに
噂
(
うはさ
)
をし
乍
(
なが
)
ら
079
日出雄
(
ひでを
)
一行
(
いつかう
)
の
来着
(
らいちやく
)
を
待
(
ま
)
ち
兼
(
か
)
ねて
居
(
ゐ
)
た。
080
時
(
とき
)
しもあれ、
081
魏
(
ぎ
)
副官
(
ふくくわん
)
の
先導
(
せんだう
)
にて
日出雄
(
ひでを
)
の
一行
(
いつかう
)
は
総員
(
そうゐん
)
整列
(
せいれつ
)
出迎
(
でむか
)
への
中
(
なか
)
を
堂々
(
だうだう
)
と
乗込
(
のりこ
)
んで
来
(
き
)
た。
082
少憩
(
せうけい
)
の
後
(
のち
)
、
083
日出雄
(
ひでを
)
の
目配
(
めくば
)
せを
合図
(
あひづ
)
に
084
真澄別
(
ますみわけ
)
が
何事
(
なにごと
)
か
黙祷
(
もくたう
)
すると
見
(
み
)
るや、
085
司令部
(
しれいぶ
)
の
上天
(
じやうてん
)
俄
(
にはか
)
に
薄暗
(
うすぐら
)
くなり、
086
瞬
(
またた
)
く
間
(
ま
)
に
全天
(
ぜんてん
)
雨雲
(
あまぐも
)
に
蔽
(
おほ
)
われ
一陣
(
いちぢん
)
の
怪風
(
くわいふう
)
吹
(
ふ
)
き
来
(
きた
)
ると
共
(
とも
)
に、
087
激
(
はげ
)
しき
暴風雨
(
ばうふうう
)
窓
(
まど
)
を
破
(
やぶ
)
らむず
計
(
ばか
)
りに
襲来
(
しふらい
)
して
来
(
き
)
た。
088
一同
(
いちどう
)
驚
(
おどろ
)
きあわて、
089
窓
(
まど
)
を
閉
(
し
)
めるやら、
090
記念
(
きねん
)
撮影
(
さつえい
)
の
為
(
ため
)
とて
庭
(
には
)
に
列
(
なら
)
べてあつた
椅子
(
いす
)
を
持込
(
もちこ
)
むやら
混雑
(
こんざつ
)
一方
(
ひとかた
)
ならず、
091
皆々
(
みなみな
)
呆気
(
あつけ
)
に
取
(
と
)
られて、
092
暫
(
しば
)
し
言葉
(
ことば
)
もなかつたのである。
093
稍
(
やや
)
あつて『
大先生
(
タアセンシヨン
)
、
094
二先生
(
アルセンシヨン
)
、
095
今日
(
けふ
)
は
写真
(
しやしん
)
は
駄目
(
だめ
)
でせう』と、
096
さも
失望
(
しつばう
)
らしい
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
える。
097
真澄別
(
ますみわけ
)
は
日出雄
(
ひでを
)
の
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
て『ナアニ
五
(
ご
)
分間
(
ふんかん
)
経
(
た
)
てば
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だ』と
云
(
い
)
へば、
098
日出雄
(
ひでを
)
はやおら
身
(
み
)
を
起
(
おこ
)
して
雨中
(
うちう
)
に
降
(
お
)
り
立
(
た
)
ち、
099
天
(
てん
)
に
向
(
むか
)
つて『ウー』と
大喝
(
だいかつ
)
すれば、
100
風勢
(
ふうせい
)
頓
(
とみ
)
に
衰
(
おとろ
)
へ
雨
(
あめ
)
は
漸次
(
ぜんじ
)
小降
(
こぶ
)
りとなり、
101
果
(
はた
)
して
向
(
むか
)
ふ
五
(
ご
)
分間
(
ふんかん
)
てふ
真澄別
(
ますみわけ
)
の
宣言
(
せんげん
)
に
違
(
たが
)
はず、
102
如何
(
いか
)
に
成
(
な
)
り
行
(
ゆ
)
くかと
案
(
あん
)
ぜられし
暴風雨
(
ばうふうう
)
は、
103
夢
(
ゆめ
)
の
如
(
ごと
)
く
消
(
き
)
え
去
(
さ
)
り、
104
再
(
ふたた
)
び
日
(
ひ
)
は
赫々
(
かくかく
)
と
輝
(
かがや
)
きわたり、
105
空
(
そら
)
は
元
(
もと
)
の
如
(
ごと
)
く
晴朗
(
せいらう
)
に
澄
(
す
)
み
切
(
き
)
つたのである。
106
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
は
嬉
(
うれ
)
しさの
余
(
あま
)
り、
107
驚嘆
(
きやうたん
)
自失
(
じしつ
)
せる
人々
(
ひとびと
)
の
間
(
あひだ
)
を
立廻
(
たちまは
)
り、
108
自己
(
じこ
)
の
宣伝
(
せんでん
)
の
誇大
(
こだい
)
にも
虚偽
(
きよぎ
)
にもあらざるを
誇
(
ほこ
)
つたといふも
真
(
しん
)
に
無理
(
むり
)
ならぬ
事
(
こと
)
である。
109
茲
(
ここ
)
で
各営
(
かくえい
)
の
幹部
(
かんぶ
)
一同
(
いちどう
)
芽出度
(
めでたく
)
撮影
(
さつえい
)
の
後
(
のち
)
、
110
卓
(
たく
)
を
囲
(
かこ
)
んで
会食
(
くわいしよく
)
し、
111
談
(
はなし
)
は
徹頭
(
てつとう
)
徹尾
(
てつび
)
此
(
この
)
日
(
ひ
)
の
奇蹟
(
きせき
)
に
関
(
くわん
)
する
驚嘆
(
きやうたん
)
と
讃美
(
さんび
)
に
終始
(
しうし
)
し、
112
真澄別
(
ますみわけ
)
は、
113
此
(
この
)
時
(
とき
)
已
(
すで
)
に
朝来
(
てうらい
)
の
頭痛
(
づつう
)
は
忘
(
わす
)
れた
様
(
やう
)
に
平癒
(
へいゆ
)
しニコニコして
何
(
なに
)
くれとなく
斡旋
(
あつせん
)
の
労
(
らう
)
を
執
(
と
)
りつつありし
温
(
をん
)
長興
(
ちやうこう
)
を
指
(
さ
)
し、
114
『
実
(
じつ
)
は
今朝
(
こんてう
)
出発
(
しゆつぱつ
)
の
際
(
さい
)
大先生
(
だいせんせい
)
が
今日
(
けふ
)
の
役目
(
やくめ
)
を
承
(
うけたまは
)
るべき
竜神
(
りうじん
)
を、
115
温
(
をん
)
さんに
取
(
と
)
り
懸
(
か
)
けられたので、
116
それで
温
(
をん
)
さんは
頭
(
あたま
)
が
痛
(
いた
)
かつたのですよ。
117
つまりあの
轎車
(
けうしや
)
に
竜神
(
りうじん
)
が
乗
(
の
)
つて
来
(
き
)
たのです』と
云
(
い
)
へば、
118
科学
(
くわがく
)
万能
(
ばんのう
)
かぶれの
人
(
ひと
)
も、
119
虚妄
(
きよまう
)
と
感
(
かん
)
ずる
余裕
(
よゆう
)
もなく
思
(
おも
)
はず
感嘆
(
かんたん
)
の
詞
(
ことば
)
を
漏
(
も
)
らす
外
(
ほか
)
はなかつたのである。
120
日
(
ひ
)
は
漸
(
やうや
)
く
西天
(
せいてん
)
に
傾
(
かたむ
)
き、
121
日出雄
(
ひでを
)
等
(
ら
)
の
辞
(
じ
)
し
去
(
さ
)
らむとする
頃
(
ころ
)
は
天候
(
てんこう
)
変
(
かは
)
りて
又
(
また
)
もや
雨模様
(
あめもやう
)
となり、
122
今
(
いま
)
にも
空
(
そら
)
は
綻
(
ほころ
)
び
相
(
さう
)
に
見
(
み
)
えて
居
(
ゐ
)
た。
123
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
等
(
ら
)
は『
今晩
(
こんばん
)
は
此処
(
ここ
)
にお
泊
(
とま
)
りになつては
如何
(
いかが
)
です。
124
強
(
た
)
つてお
帰
(
かへ
)
りなさるなら、
125
こんな
空模様
(
そらもやう
)
ですから、
126
雨具
(
あまぐ
)
を
差上
(
さしあ
)
げませう』といふのを、
127
日出雄
(
ひでを
)
は『ナアニ
俺
(
おれ
)
が
旅立
(
たびだ
)
ちすれば
降
(
ふ
)
つてゐる
雨
(
あめ
)
も
歇
(
や
)
むのだ』と
微笑
(
びせう
)
し
乍
(
なが
)
ら、
128
上
(
かみ
)
木局子
(
もくきよくし
)
の
仮殿
(
かりどの
)
指
(
さ
)
して
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
129
果
(
はた
)
して
日出雄
(
ひでを
)
一行
(
いつかう
)
の
帰着
(
きちやく
)
迄
(
まで
)
は
雨
(
あめ
)
の
神
(
かみ
)
様
(
さま
)
も
遠慮
(
ゑんりよ
)
されたのか、
130
其
(
その
)
帰着
(
きちやく
)
と
同時
(
どうじ
)
に
沛然
(
はいぜん
)
として、
131
地上
(
ちじやう
)
の
塵
(
ちり
)
を
一時
(
いちじ
)
に
流
(
なが
)
し
去
(
さ
)
るかの
如
(
ごと
)
く
強雨
(
がうう
)
が
降
(
ふ
)
り
注
(
そそ
)
いだのである。
132
(
大正一四、八
、筆録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
<<< 木局の月
(B)
(N)
天の安河 >>>
霊界物語
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山河草木(第61~72巻、入蒙記)
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特別編 入蒙記
> 第4篇 神軍躍動 > 第25章 風雨叱咤
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【第25章 風雨叱咤|特別編 入蒙記|山河草木|霊界物語|/rmnm25】
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