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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
特別編 入蒙記
第1篇 日本より奉天まで
第1章 水火訓
第2章 神示の経綸
第3章 金剛心
第4章 微燈の影
第5章 心の奥
第6章 出征の辞
第7章 奉天の夕
第2篇 奉天より洮南へ
第8章 聖雄と英雄
第9章 司令公館
第10章 奉天出発
第11章 安宅の関
第12章 焦頭爛額
第13章 洮南旅館
第14章 洮南の雲
第3篇 洮南より索倫へ
第15章 公爺府入
第16章 蒙古の人情
第17章 明暗交々
第18章 蒙古気質
第19章 仮司令部
第20章 春軍完備
第21章 索倫本営
第4篇 神軍躍動
第22章 木局収ケ原
第23章 下木局子
第24章 木局の月
第25章 風雨叱咤
第26章 天の安河
第27章 奉天の渦
第28章 行軍開始
第29章 端午の日
第30章 岩窟の奇兆
第5篇 雨後月明
第31章 強行軍
第32章 弾丸雨飛
第33章 武装解除
第34章 竜口の難
第35章 黄泉帰
第36章 天の岩戸
第37章 大本天恩郷
第38章 世界宗教聯合会
第39章 入蒙拾遺
附 入蒙余録
大本の経綸と満蒙
世界経綸の第一歩
蒙古建国
蒙古の夢
神示の世界経綸
余白歌
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霊界物語
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山河草木(第61~72巻、入蒙記)
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> 第5篇 雨後月明 > 第36章 天の岩戸
<<< 黄泉帰
(B)
(N)
大本天恩郷 >>>
第三六章
天
(
あま
)
の
岩戸
(
いはと
)
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 特別篇 山河草木 入蒙記
篇:
第5篇 雨後月明
よみ(新仮名遣い):
うごげつめい
章:
第36章 天の岩戸
よみ(新仮名遣い):
あまのいわと
通し章番号:
口述日:
1925(大正14)年08月16日(旧06月27日)
口述場所:
筆録者:
北村隆光
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年2月14日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
門司署の三階から街道を見れば、あまたの信徒が大道に列を作って自分らを見上げていた。自分は空前絶後の大業を企てたが、不幸にして中途で帰国するに至ったのも、神界の経綸として止む無きことではあるが、妻子兄弟、役員信者の胸のうちはいかばかりであろう、と思わず万感が胸に満ちた。
続いて下関所に送られ、しばらく休憩の後に自動車で駅に送られた。警察の門口には直霊が待っていた。汽車で大阪に向かい、途中大竹、上郡警察署の拘留所にそれぞれ一泊した。
相生橋署を経て大阪駅に下車すると、見物人が蟻の山のごとく、新聞社の取材班がレンズを向けて待ち構える中を、曽根崎署、続いて天満署の拘留所へ、そして同署の裏門から徒歩で若松支所に向かった。
支所内で書籍の差し入れを受けて、大本役員が債権問題について青くなっていることや、債権者が厳しい催促を始めたことがわかって、歯がゆい思いをしていた。結局九十八日間、入獄することになったが、その間に精神の修養をなし、日出雄の蒙古入りについての記事を読んだりして、あっという間に日々をすごしてしまった。
旧七月十五日の夜、女神が自分に朝日タバコを渡して、莞爾として姿を消したもうた。これは、朝日を渡されたので、やがて岩戸が開くだろうが、一服して時を待て、という意味であると知った。これにより、長期の入獄を覚悟した。
また、新暦十月の中ごろ、母と一緒に本宮山のような丘陵を歩いていると、大本信者が一人、一生懸命に雑木を伐り、土をひきならして道を開いていた。これは保釈を許される前兆であろうと知った。
その次は、自分が非常に高いとがった山の上に登ったが、下り道がどこにもない。すると白馬が二頭現れて、鎖をかけてくれたと見るや、ものすごい勢いで帰ってしまった。自分のために活路を開くべく奮闘している信者のあることを感じたのである。
ある日真澄別が面会に来て、霊眼で「十一」を見せてもらったという。果たして、日出雄の保釈が決定したのが旧暦十月一日であり、若松支所を出たのが新暦十一月一日の午前十一時十一分であった。
聖地では秋季大祭があり、分所支部長会議では財政整理問題について激論が始まっていた。そこへ、保釈の報が届いたので、一同神言を奏上し、大阪へ迎えに来たのであった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
2024/2/18出口王仁三郎全集第6巻を底本として校正。
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2024-02-18 16:54:55
OBC :
rmnm36
愛善世界社版:
330頁
八幡書店版:
第14輯 668頁
修補版:
校定版:
333頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
異境
(
いきやう
)
万里
(
ばんり
)
の
旅
(
たび
)
を
終
(
を
)
へ、
002
不敬
(
ふけい
)
並
(
ならび
)
に
新聞紙法
(
しんぶんしはふ
)
違反
(
ゐはん
)
の
責付
(
せきふ
)
取消
(
とりけし
)
と
云
(
い
)
ふ、
003
あんまり
有難
(
ありがた
)
からぬ
悪名
(
あくめい
)
を
負
(
を
)
ひ、
004
漸
(
やうや
)
くにして
再
(
ふたた
)
び
日本
(
につぽん
)
の
風光
(
ふうくわう
)
に
接
(
せつ
)
し、
005
純真
(
じゆんしん
)
なる
役員
(
やくゐん
)
信徒
(
しんと
)
に
遥々
(
はるばる
)
迎
(
むか
)
へられ、
006
門司
(
もじ
)
水上
(
すゐじやう
)
警察署
(
けいさつしよ
)
に
送
(
おく
)
られ
形式
(
けいしき
)
ばかりの
質問
(
しつもん
)
を
受
(
う
)
け、
007
門司署
(
もじしよ
)
の
三階
(
さんがい
)
の
風当
(
かぜあた
)
りよき
北側
(
きたがは
)
の
窓
(
まど
)
にそふて
椅子
(
いす
)
にかかり
煙草
(
たばこ
)
をくゆらし
乍
(
なが
)
ら、
008
階下
(
かいか
)
の
街道
(
かいだう
)
を
見
(
み
)
れば、
009
数多
(
あまた
)
の
信徒
(
しんと
)
は
羽織
(
はおり
)
袴
(
はかま
)
又
(
また
)
は
洋服姿
(
ようふくすがた
)
にて
大道
(
だいだう
)
に
列
(
れつ
)
を
作
(
つく
)
り、
010
自分
(
じぶん
)
等
(
ら
)
を
見上
(
みあ
)
げてゐる。
011
中
(
なか
)
には
嬉
(
うれ
)
しさの
余
(
あま
)
り、
012
歔欷
(
きよき
)
するものさへあつた。
013
日出雄
(
ひでを
)
、
014
心
(
こころ
)
の
中
(
なか
)
にて
思
(
おも
)
ふやう
015
日出雄
『ああ、
016
ああして
信徒
(
しんと
)
が
自分
(
じぶん
)
を
迎
(
むか
)
へて
呉
(
く
)
れて
居
(
ゐ
)
るが、
017
ゆつくりと
蒙古
(
もうこ
)
の
話
(
はなし
)
をする
時間
(
じかん
)
も
与
(
あた
)
へられず、
018
諸所
(
しよしよ
)
の
警察
(
けいさつ
)
から
警察
(
けいさつ
)
へと
送
(
おく
)
られ、
019
二三
(
にさん
)
日
(
にち
)
の
中
(
うち
)
には、
020
目出度
(
めでた
)
目出度
(
めでた
)
の
若松
(
わかまつ
)
さまでは
無
(
な
)
うて、
021
よしもあしきも
難波江
(
なにはえ
)
の
若松
(
わかまつ
)
監獄
(
かんごく
)
に
未決
(
みけつ
)
収監
(
しうかん
)
の
身
(
み
)
とならねばならぬ。
022
自分
(
じぶん
)
は
空前
(
くうぜん
)
絶後
(
ぜつご
)
の
大業
(
たいげふ
)
を
企
(
くはだ
)
て、
023
不幸
(
ふかう
)
にして
中途
(
ちうと
)
に
帰国
(
きこく
)
するの
止
(
や
)
むを
得
(
え
)
ざるに
立到
(
たちいた
)
つたのも、
024
神界
(
しんかい
)
の
御
(
ご
)
経綸
(
けいりん
)
として
是非
(
ぜひ
)
なき
事
(
こと
)
である。
025
又
(
また
)
別
(
べつ
)
に
大
(
おほ
)
きい
心配
(
しんぱい
)
もしてゐない。
026
乍然
(
しかしながら
)
妻子
(
さいし
)
、
027
兄弟
(
きやうだい
)
、
028
役員
(
やくゐん
)
信者
(
しんじや
)
の
心
(
こころ
)
の
裡
(
うち
)
はどんなであらう』
029
等
(
など
)
と
思
(
おも
)
へば
万感
(
ばんかん
)
胸
(
むね
)
に
充
(
み
)
ち、
030
不思
(
おもはず
)
不知
(
しらず
)
両眼
(
りやうがん
)
に
涙
(
なみだ
)
がにじみ
出
(
で
)
た。
031
我
(
われ
)
と
我
(
わが
)
手
(
て
)
に
心
(
こころ
)
を、
032
とり
直
(
なほ
)
し
033
日出雄
『エー、
034
馬鹿
(
ばか
)
々々
(
ばか
)
しい、
035
こんな
気
(
き
)
の
弱
(
よは
)
い
事
(
こと
)
でどうして
天下
(
てんか
)
を
救
(
すく
)
ふ
神業
(
しんげふ
)
に
奉仕
(
ほうし
)
する
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
やうか、
036
比較
(
ひかく
)
的
(
てき
)
……
人間
(
にんげん
)
と
云
(
い
)
ふものは
強
(
つよ
)
いやうでも
弱
(
よわ
)
いものだなア』
037
と
自分
(
じぶん
)
の
心
(
こころ
)
をたしなめたり
嘲
(
あざけ
)
つたりもし
乍
(
なが
)
ら、
038
時
(
とき
)
の
移
(
うつ
)
るを
待
(
ま
)
つてゐると、
039
門司署
(
もじしよ
)
は
又
(
また
)
逃
(
に
)
げられては
大変
(
たいへん
)
だとでも
思
(
おも
)
つたものか、
040
数多
(
あまた
)
の
信者
(
しんじや
)
を
駅
(
えき
)
の
方
(
はう
)
へ
追
(
お
)
ひやり、
041
倉皇
(
さうくわう
)
として
日出雄
(
ひでを
)
、
042
真澄別
(
ますみわけ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
を
小蒸汽
(
こじようき
)
に
乗
(
の
)
せ、
043
下関署
(
しものせきしよ
)
へ
送
(
おく
)
り
届
(
とど
)
けた。
044
下関署
(
しものせきしよ
)
へ
行
(
い
)
つて
見
(
み
)
ると
信者
(
しんじや
)
らしいものは
一人
(
ひとり
)
も
来
(
き
)
てゐない、
045
暫
(
しば
)
らく
休憩
(
きうけい
)
の
後
(
のち
)
、
046
下関
(
しものせき
)
署員
(
しよいん
)
三
(
さん
)
名
(
めい
)
に
送
(
おく
)
られて
自動車
(
じどうしや
)
の
客
(
きやく
)
となると、
047
直霊
(
なをひ
)
が
警察
(
けいさつ
)
の
門口
(
かどぐち
)
に
待
(
ま
)
つてゐた。
048
内地
(
ないち
)
へ
帰
(
かへ
)
つてから
初
(
はじ
)
めて
見
(
み
)
た
青物店
(
あをもの
)
屋
(
や
)
の
西瓜
(
すゐくわ
)
や
甜瓜
(
うり
)
、
049
バナナ、
050
林檎
(
りんご
)
等
(
とう
)
が、
051
うまさうに
芳
(
かむば
)
しい
香
(
かほり
)
を
立
(
た
)
てて
蒙古
(
もうこ
)
の
荒野
(
くわうや
)
を、
0511
さまようた
鼻
(
はな
)
を
非常
(
ひじやう
)
に
刺戟
(
しげき
)
する。
052
『
久振
(
ひさしぶ
)
りで
一
(
ひと
)
つ
西瓜
(
すゐくわ
)
を
喰
(
く
)
つて
見
(
み
)
たらなア』と
思
(
おも
)
へど、
053
そんな
気儘
(
きまま
)
を
云
(
い
)
ふては
悪
(
わる
)
からうと
遠慮
(
ゑんりよ
)
した。
054
駅
(
えき
)
につくと
汗
(
あせ
)
をタラタラ
流
(
なが
)
し
乍
(
なが
)
ら
柴田
(
しばた
)
健次郎
(
けんじらう
)
氏
(
し
)
が
只
(
ただ
)
一人
(
ひとり
)
、
055
あわてて
飛
(
と
)
んで
来
(
き
)
た。
056
護送
(
ごそう
)
の
警官
(
けいくわん
)
と
共
(
とも
)
に
三等室
(
さんとうしつ
)
に
乗
(
の
)
つて
見
(
み
)
ると
057
直霊
(
なをひ
)
、
058
井上
(
ゐのうへ
)
会長
(
くわいちやう
)
、
059
東尾
(
ひがしを
)
、
060
湯浅
(
ゆあさ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
の
役員
(
やくゐん
)
信者
(
しんじや
)
が
満載
(
まんさい
)
されてゐた。
061
次
(
つ
)
いで
大竹
(
おほたけ
)
、
062
上郡
(
かみごほり
)
等
(
とう
)
の
警察
(
けいさつ
)
の
拘留所
(
かうりうじよ
)
に
一泊
(
いつぱく
)
し
乍
(
なが
)
ら
大阪
(
おほさか
)
へと
向
(
むか
)
ふのであつた。
063
大竹
(
おほたけ
)
警察署
(
けいさつしよ
)
で
湯
(
ゆ
)
を
沸
(
わ
)
かして
貰
(
もら
)
ひ、
064
盥
(
たらひ
)
で
行水
(
ぎやうずゐ
)
をやつた。
065
体量
(
たいりやう
)
頓
(
とみ
)
に
減
(
げん
)
じて
十五
(
じふご
)
貫
(
くわん
)
五百
(
ごひやく
)
目
(
め
)
、
066
肩
(
かた
)
の
骨
(
ほね
)
が
尖
(
とが
)
り、
067
肋骨
(
ろくこつ
)
は
高
(
たか
)
く
現
(
あら
)
はれてゐるのを
見
(
み
)
て、
068
背中
(
せなか
)
を
流
(
なが
)
しに
来
(
き
)
た
加藤
(
かとう
)
明子
(
はるこ
)
があた
外聞
(
ぐわいぶん
)
の
悪
(
わる
)
い──
泣
(
な
)
くのには
一寸
(
ちよつと
)
面喰
(
めんく
)
らはざるを
得
(
え
)
なかつた。
069
上郡
(
かみごほり
)
では
真澄別
(
ますみわけ
)
と
一所
(
いつしよ
)
に
新
(
あたら
)
しい
拘留所
(
かうりうじよ
)
で
一夜
(
いちや
)
を
明
(
あ
)
かし、
070
神戸駅
(
かうべえき
)
へ
着
(
つ
)
くと
沢山
(
たくさん
)
な
出迎人
(
でむかへにん
)
がやつて
来
(
き
)
て
一々
(
いちいち
)
挨拶
(
あいさつ
)
をする。
071
二代
(
にだい
)
、
072
宇知丸
(
うちまる
)
は
上郡駅
(
かみごほりえき
)
から
一所
(
いつしよ
)
であつた。
073
相生橋
(
あひおひばし
)
署
(
しよ
)
を
経
(
へ
)
て
大阪駅
(
おほさかえき
)
に
下車
(
げしや
)
するや、
074
見物人
(
けんぶつにん
)
は
蟻
(
あり
)
の
山
(
やま
)
の
如
(
ごと
)
く、
075
毎日
(
まいにち
)
新聞
(
しんぶん
)
の
活動
(
くわつどう
)
写真隊
(
しやしんたい
)
や
各
(
かく
)
新聞社
(
しんぶんしや
)
がレンズを
向
(
む
)
けて
待
(
ま
)
ち
構
(
かま
)
へてゐる
中
(
なか
)
を、
076
人波
(
ひとなみ
)
を
分
(
わ
)
けて
人力車
(
じんりきしや
)
に
乗
(
の
)
り、
077
曽根崎
(
そねざき
)
署
(
しよ
)
へと
送
(
おく
)
られ、
078
次
(
つ
)
いで
天満署
(
てんましよ
)
の
拘留所
(
かうりうじよ
)
へ
三十
(
さんじつ
)
分
(
ぷん
)
ばかり
投
(
な
)
げ
込
(
こ
)
まれ、
079
同署
(
どうしよ
)
の
裏門
(
うらもん
)
から
徒歩
(
とほ
)
にて
若松
(
わかまつ
)
支所
(
ししよ
)
へ
行
(
ゆ
)
かむとするや、
080
大本
(
おほもと
)
役員
(
やくゐん
)
信者
(
しんじや
)
及
(
およ
)
び
見物人
(
けんぶつにん
)
は
山
(
やま
)
の
如
(
ごと
)
く
雑踏
(
ざつたう
)
を
極
(
きは
)
めた。
081
支所
(
ししよ
)
の
入口
(
いりぐち
)
には
又
(
また
)
もや
沢山
(
たくさん
)
な
新聞社
(
しんぶんしや
)
の
写真班
(
しやしんはん
)
が
待
(
ま
)
ち
構
(
かま
)
へてゐて、
082
盛
(
さか
)
んにシヤツターの
音
(
おと
)
をさせてゐる。
083
此
(
この
)
門
(
もん
)
を
潜
(
くぐ
)
るや
否
(
いな
)
や、
084
信愛
(
しんあい
)
なる
役員
(
やくゐん
)
信者
(
しんじや
)
に
別
(
わか
)
れねばならぬ。
085
殆
(
ほと
)
んど
暗
(
くら
)
い
穴
(
あな
)
へでも、
086
もぐり
込
(
こ
)
むやうな
気分
(
きぶん
)
が
漂
(
ただよ
)
ふてゐた。
087
直
(
ただち
)
に
支所長
(
ししよちやう
)
の
室
(
しつ
)
に
導
(
みちび
)
かれ、
088
先
(
ま
)
づ
第一
(
だいいち
)
に
背
(
せ
)
の
高
(
たか
)
さや、
089
体
(
からだ
)
の
目方
(
めかた
)
や、
090
身体
(
しんたい
)
の
特徴
(
とくちやう
)
などを
調
(
しら
)
べた
上
(
うへ
)
、
091
前以
(
まへもつ
)
て
差入
(
さしい
)
れてあつた
軽
(
かる
)
い
浴衣
(
ゆかた
)
と
着換
(
きか
)
へ、
092
支所長
(
ししよちやう
)
の
役人気
(
やくにんき
)
離
(
はな
)
れての
打解話
(
うちとけばなし
)
に、
093
蒙古
(
もうこ
)
に
於
(
お
)
ける
奮戦
(
ふんせん
)
苦闘
(
くたう
)
の
状況
(
じやうきやう
)
を
面白
(
おもしろ
)
く
聞
(
き
)
かせ
所長
(
しよちやう
)
をアツと
云
(
い
)
はせ、
094
直
(
ただ
)
ちに、
095
同所
(
どうしよ
)
の
二階
(
にかい
)
の
九十八
(
きうじふはち
)
号
(
がう
)
に
収容
(
しうよう
)
されて
終
(
しま
)
つた。
096
此
(
この
)
室
(
しつ
)
は
北
(
きた
)
に
窓
(
まど
)
があけてあり、
097
さうして
建物
(
たてもの
)
が
立
(
た
)
つてゐないので
風当
(
かぜあた
)
りが
非常
(
ひじやう
)
によい、
098
そして
窓
(
まど
)
からのぞけば
梅田
(
うめだ
)
の
停車場
(
ていしやば
)
附近
(
ふきん
)
まで
見
(
み
)
られる、
099
支所内
(
ししよない
)
第一
(
だいいち
)
の
上等室
(
じやうとうしつ
)
であつた。
100
どの
室
(
しつ
)
もどの
室
(
しつ
)
も
独房
(
どくばう
)
は
横巾
(
よこはば
)
四
(
よん
)
尺
(
しやく
)
、
101
縦
(
たて
)
七
(
なな
)
尺
(
しやく
)
強
(
きやう
)
にて
殆
(
ほと
)
んど
一
(
ひと
)
坪
(
つぼ
)
に
足
(
た
)
らない
狭隘
(
けふあい
)
なる
西洋
(
せいやう
)
式
(
しき
)
の
監房
(
かんばう
)
である。
102
その
中
(
なか
)
で
布団
(
ふとん
)
も
布
(
し
)
き、
103
手水
(
てふづ
)
も
使
(
つか
)
ひ、
104
荷物
(
にもつ
)
も
置
(
お
)
き
大小便
(
だいせうべん
)
もやらねばならぬ。
105
おきて
半畳
(
はんでふ
)
、
106
寝
(
ね
)
て
一畳
(
いちでふ
)
といつも
悟
(
さと
)
つた
顔
(
かほ
)
して
云
(
い
)
つて
居
(
を
)
つても、
107
実際
(
じつさい
)
、
108
こんな
所
(
ところ
)
に
突込
(
つきこ
)
まれたのは
可
(
か
)
なりつらかつた。
109
渺茫
(
びやうぼう
)
として
天
(
てん
)
につらなる
蒙古
(
もうこ
)
の
野辺
(
のべ
)
に、
110
ツツパリのない
空
(
そら
)
を
屋根
(
やね
)
となし
際限
(
さいげん
)
もない
大地
(
だいち
)
を
褥
(
しとね
)
となしてグウグウと
寝
(
ね
)
てゐた
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
へば、
111
俄
(
にはか
)
に、
112
象
(
ぞう
)
が
黴菌
(
ばいきん
)
に
変化
(
へんくわ
)
したやうな
気分
(
きぶん
)
になつた。
113
当年
(
たうねん
)
は
特別
(
とくべつ
)
暑熱
(
しよねつ
)
烈
(
はげ
)
しく、
114
殆
(
ほと
)
んど
堪
(
た
)
へきれない
程
(
ほど
)
で、
115
身体
(
からだ
)
一面
(
いちめん
)
から
油
(
あぶら
)
のやうな
汗
(
あせ
)
が
滲
(
に
)
じみ
出
(
で
)
る、
116
窓
(
まど
)
はあつても
六
(
ろく
)
尺
(
しやく
)
も
上
(
うへ
)
にあいてゐるのだから、
117
あまり
涼
(
すず
)
しくもない。
118
乍然
(
しかしながら
)
パインタラの
遭難
(
さうなん
)
の
事
(
こと
)
を
思
(
おも
)
へば
119
(日出雄)
『マアマア
結構
(
けつこう
)
だ、
120
ここに
居
(
ゐ
)
れば
生命
(
いのち
)
は
大丈夫
(
だいぢやうぶ
)
だ、
121
今
(
いま
)
こそ、
122
こんな
狭
(
せま
)
い
所
(
ところ
)
に
蚕
(
かひこ
)
の
蛹
(
さなぎ
)
のやうに
繭
(
まゆ
)
の
中
(
なか
)
にすつこんでゐるが、
123
メツタに
熱湯
(
にえゆ
)
の
中
(
なか
)
に
放
(
はう
)
り
込
(
こ
)
まれて
殺
(
ころ
)
される
心配
(
しんぱい
)
も
要
(
い
)
らず、
124
やがて
此
(
この
)
殻
(
から
)
を
破
(
やぶ
)
つて
蝶
(
てふ
)
と
孵化
(
ふくわ
)
し、
125
沢山
(
たくさん
)
の
子
(
こ
)
を
産
(
う
)
んで
再
(
ふたた
)
び
再生
(
さいせい
)
の
春
(
はる
)
に
会
(
あ
)
ふ』
126
のを
唯一
(
ゆゐいつ
)
の
楽
(
たの
)
しみとなし
二日
(
ふつか
)
三日
(
みつか
)
と
日
(
ひ
)
を
送
(
おく
)
つた。
127
今迄
(
いままで
)
刑務所
(
けいむしよ
)
へは
法律
(
はふりつ
)
に
関
(
くわん
)
する
書籍
(
しよせき
)
と
宗教
(
しうけう
)
に
関
(
くわん
)
する
書籍
(
しよせき
)
の
外
(
ほか
)
差入
(
さしいれ
)
を
許
(
ゆる
)
されなかつたのが、
128
一
(
いつ
)
ケ
月
(
げつ
)
以前
(
いぜん
)
から
肩
(
かた
)
のこらぬ
講談
(
かうだん
)
雑誌
(
ざつし
)
や
面白
(
おもしろ
)
倶楽部
(
くらぶ
)
その
他
(
た
)
時事
(
じじ
)
に
関
(
くわん
)
するものも
差入
(
さしいれ
)
を
許
(
ゆる
)
す
事
(
こと
)
となり、
129
非常
(
ひじやう
)
に
無聊
(
むりやう
)
を
慰
(
なぐさ
)
むるに
都合
(
つがふ
)
よくなつてゐた。
130
又
(
また
)
『
神
(
かみ
)
の
国
(
くに
)
』や『
霊界
(
れいかい
)
物語
(
ものがたり
)
』の
差入
(
さしいれ
)
が
許
(
ゆる
)
されたので、
131
ゐながらにして
大本
(
おほもと
)
の
状況
(
じやうきやう
)
を
知
(
し
)
る
事
(
こと
)
を
得
(
え
)
た。
132
が
然
(
しか
)
し、
133
いい
事
(
こと
)
があればその
反面
(
はんめん
)
に
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
のあるものだ。
134
大本
(
おほもと
)
役員
(
やくゐん
)
が
債権
(
さいけん
)
問題
(
もんだい
)
について
青
(
あを
)
くなつてゐる
事
(
こと
)
や、
135
新
(
あらた
)
に
債権者
(
さいけんしや
)
が、
136
きびしい
請求
(
せいきう
)
を
始
(
はじ
)
めた
事
(
こと
)
が
分
(
わか
)
つて
非常
(
ひじやう
)
に
歯
(
は
)
がゆく
思
(
おも
)
つたが、
137
何
(
なん
)
と
云
(
い
)
つても
囚
(
とらは
)
れの
身
(
み
)
、
138
自由
(
じいう
)
が
利
(
き
)
かぬのに
少
(
すこ
)
しく
当惑
(
たうわく
)
せざるを
得
(
え
)
なかつた。
139
役員
(
やくゐん
)
信者
(
しんじや
)
の
面会
(
めんくわい
)
、
140
弁護士
(
べんごし
)
の
面会
(
めんくわい
)
にて
午前中
(
ごぜんちう
)
は
相当
(
さうたう
)
に
忙
(
いそが
)
しく、
141
隔日
(
かくじつ
)
に
葉書
(
はがき
)
を
書
(
か
)
く、
142
一週間
(
いつしうかん
)
目
(
め
)
に
散髪
(
さんぱつ
)
をする、
143
四日目
(
よつかめ
)
位
(
ぐらゐ
)
に
風呂
(
ふろ
)
に
這入
(
はい
)
る、
144
医者
(
いしや
)
の
診察
(
しんさつ
)
を
受
(
う
)
ける、
145
その
間
(
あひだ
)
に
筆硯
(
ひつけん
)
を
握
(
にぎ
)
つて
詩歌
(
しか
)
を
書
(
か
)
きつける、
146
面白
(
おもしろ
)
い
小説
(
せうせつ
)
を
読
(
よ
)
む、
147
随分
(
ずゐぶん
)
日
(
ひ
)
を
経
(
ふ
)
るに
従
(
したが
)
つて
手紙
(
てがみ
)
の
数
(
すう
)
も
殖
(
ふ
)
えて
来
(
く
)
るなり、
148
忙
(
いそが
)
しさを
感
(
かん
)
じて
来
(
き
)
た。
149
その
為
(
た
)
め
九十八
(
きうじふはち
)
日間
(
にちかん
)
の
収監
(
しうかん
)
もあまり
長
(
なが
)
くは
感
(
かん
)
じなかつたのである。
150
殺人犯
(
さつじんはん
)
や
暴動罪
(
ばうどうざい
)
や
詐欺
(
さぎ
)
、
151
泥棒
(
どろぼう
)
等
(
とう
)
の
未決囚
(
みけつしう
)
と
共
(
とも
)
に、
152
日曜
(
にちえう
)
を
除
(
のぞ
)
く
外
(
ほか
)
は
毎日
(
まいにち
)
看守
(
かんしゆ
)
に
送
(
おく
)
られて
長
(
なが
)
い
廊下
(
らうか
)
を
渡
(
わた
)
り
面会所
(
めんくわいじよ
)
に
順番
(
じゆんばん
)
の
来
(
く
)
るのを
待
(
ま
)
つてゐた。
153
その
間
(
あひだ
)
には
種々
(
しゆじゆ
)
の
面白
(
おもしろ
)
い
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
き、
154
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
の
心理
(
しんり
)
状態
(
じやうたい
)
を
知悉
(
ちしつ
)
する
事
(
こと
)
を
得
(
え
)
た。
155
足立
(
あだち
)
弁護士
(
べんごし
)
がやつて
来
(
き
)
て、
156
その
筋
(
すぢ
)
の
諒解
(
りやうかい
)
を
得
(
え
)
て
置
(
お
)
いたから、
157
直
(
す
)
ぐに
保釈
(
ほしやく
)
の
許可
(
きよか
)
になるだらうから
安心
(
あんしん
)
せよと
云
(
い
)
つた。
158
自分
(
じぶん
)
も
是非
(
ぜひ
)
一度
(
いちど
)
帰
(
かへ
)
つて
早
(
はや
)
く
蒙古
(
もうこ
)
事情
(
じじやう
)
を
役員
(
やくゐん
)
信者
(
しんじや
)
に
話
(
はな
)
して
安心
(
あんしん
)
させ
度
(
た
)
いと
思
(
おも
)
つた
矢先
(
やさき
)
だから、
159
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
く
出監
(
しゆつかん
)
し
度
(
た
)
いと
思
(
おも
)
つてゐると、
160
○
原
(
はら
)
○
嶺
(
れい
)
[
※
○は伏せ字。栗原白嶺だと思われる。
]
氏
(
し
)
より
大変
(
たいへん
)
都合
(
つがふ
)
の
悪
(
わる
)
い
長
(
なが
)
たらしい
書面
(
しよめん
)
が
日出雄
(
ひでを
)
名
(
な
)
宛
(
あて
)
に
舞
(
ま
)
ひ
込
(
こ
)
んで
来
(
き
)
た、
161
その
結果
(
けつくわ
)
はとうとう
保釈
(
ほしやく
)
もオヂヤンになり、
162
九十八
(
きうじふはち
)
日間
(
にちかん
)
入牢
(
にふろう
)
せなくてはならぬやうな
破目
(
はめ
)
になつたのである。
163
乍然
(
しかしながら
)
その
間
(
かん
)
に
精神
(
せいしん
)
の
修養
(
しうやう
)
をなし、
164
今
(
いま
)
日蓮
(
にちれん
)
の
予言録
(
よげんろく
)
や
蒙古
(
もうこ
)
王国
(
わうこく
)
の
夢
(
ゆめ
)
等
(
など
)
と
云
(
い
)
ふ
日出雄
(
ひでを
)
の
記事
(
きじ
)
を
読
(
よ
)
み、
165
沢山
(
たくさん
)
の
信徒
(
しんと
)
から
送
(
おく
)
つて
来
(
く
)
る
名所
(
めいしよ
)
ハガキを
見
(
み
)
て、
166
非常
(
ひじやう
)
に
面白
(
おもしろ
)
く
楽
(
たの
)
しく
入獄
(
にふごく
)
の
身
(
み
)
たる
事
(
こと
)
を
忘
(
わす
)
れ、
167
夏
(
なつ
)
と
秋
(
あき
)
とを
知
(
し
)
らぬ
間
(
ま
)
に
送
(
おく
)
つて
終
(
しま
)
つたのである。
168
入監中
(
にふかんちゆう
)
に
沢山
(
たくさん
)
の
面白
(
おもしろ
)
い
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
た。
169
その
一二
(
いちに
)
をここに
書
(
か
)
き
止
(
と
)
めておかう。
170
旧
(
きう
)
七
(
しち
)
月
(
ぐわつ
)
十五
(
じふご
)
日
(
にち
)
の
夜
(
よ
)
、
171
十七八
(
じふしちはつ
)
歳
(
さい
)
の
女神
(
めがみ
)
が
忽然
(
こつぜん
)
と
現
(
あら
)
はれて
自分
(
じぶん
)
に
朝日
(
あさひ
)
煙草
(
たばこ
)
一
(
いつ
)
ケを
手渡
(
てわた
)
し……
莞爾
(
くわんじ
)
として
姿
(
すがた
)
を
消
(
け
)
し
玉
(
たま
)
ふた。
172
自分
(
じぶん
)
は
目
(
め
)
が
覚
(
さ
)
めてから、
173
やがて
岩戸
(
いはと
)
が
開
(
ひら
)
くだらう、
174
朝日
(
あさひ
)
の
煙草
(
たばこ
)
を
賜
(
たま
)
はつたから。
175
然
(
しか
)
しユツクリ
一服
(
いつぷく
)
して
時節
(
じせつ
)
を
待
(
ま
)
てとの
事
(
こと
)
だらう、
176
到底
(
たうてい
)
ここ
五日
(
いつか
)
や
十日
(
とをか
)
の
中
(
うち
)
に
出獄
(
しゆつごく
)
する
事
(
こと
)
は
出来
(
でき
)
ないだらうと
感
(
かん
)
じたのであつた。
177
それから
四五
(
しご
)
日
(
にち
)
すると、
178
北海道
(
ほくかいだう
)
に
自分
(
じぶん
)
は
巡教
(
じゆんけう
)
に
行
(
ゆ
)
くと
大
(
おほ
)
きな
南瓜畑
(
かぼちやばたけ
)
があり、
179
南瓜
(
かぼちや
)
の
作
(
つく
)
り
主
(
ぬし
)
は
自分
(
じぶん
)
にその
中
(
うち
)
の
最
(
もつと
)
も
大
(
だい
)
なるものを、
180
むしり
採
(
と
)
り、
181
二個
(
にこ
)
呉
(
く
)
れた
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
た。
182
出獄
(
しゆつごく
)
して
綾部
(
あやべ
)
へ
帰
(
かへ
)
つて
居
(
ゐ
)
ると
183
四五
(
しご
)
日
(
にち
)
してから
北海道
(
ほくかいだう
)
の
信者
(
しんじや
)
が、
184
日出雄
(
ひでを
)
が
夢
(
ゆめ
)
に
見
(
み
)
た
同様
(
どうやう
)
の
南瓜
(
かぼちや
)
を
二個
(
にこ
)
持
(
も
)
つて
来
(
き
)
てくれたのには、
185
夢
(
ゆめ
)
の
適中
(
てきちう
)
した
事
(
こと
)
を
感歎
(
かんたん
)
せずには
居
(
ゐ
)
られなかつた。
186
新
(
しん
)
十
(
じふ
)
月
(
ぐわつ
)
の
中頃
(
なかごろ
)
、
187
本宮山
(
ほんぐうやま
)
のやうな
丘陵
(
きうりよう
)
があつて、
188
その
山麓
(
さんろく
)
を
自分
(
じぶん
)
の
母
(
はは
)
と
二人
(
ふたり
)
歩
(
ある
)
いてゐると、
189
母
(
はは
)
の
姿
(
すがた
)
は
俄
(
にはか
)
に
見
(
み
)
えなくなつた。
190
自分
(
じぶん
)
は
山
(
やま
)
の
中
(
なか
)
へでも
母
(
はは
)
が
隠
(
かく
)
れたのではないかと
思
(
おも
)
ひ、
191
小山
(
こやま
)
の
南麓
(
なんろく
)
から
青々
(
あをあを
)
とした
萱草
(
かやくさ
)
を
分
(
わ
)
けつつ
上
(
のぼ
)
つて
見
(
み
)
ると、
192
大本
(
おほもと
)
信者
(
しんじや
)
の
一人
(
ひとり
)
が
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
一丁
(
いつちやう
)
ばかりの
間
(
あひだ
)
雑木
(
ざうき
)
を
伐
(
き
)
り、
193
土
(
つち
)
を
引
(
ひ
)
きならして
三間
(
さんげん
)
斗
(
ばか
)
りの
道
(
みち
)
を
開
(
ひら
)
いてゐる。
194
そこを
歩
(
ある
)
いて
上
(
あが
)
つて
行
(
ゆ
)
くと、
195
十字形
(
じふじがた
)
に
大道
(
だいだう
)
が
貫通
(
くわんつう
)
してゐた。
196
つまり
塞
(
ふさ
)
がつてゐたのは
五六十
(
ごろくじつ
)
間
(
けん
)
許
(
ばか
)
りの
間
(
あひだ
)
であつた。
197
こりや
屹度
(
きつと
)
保釈
(
ほしやく
)
を
許
(
ゆる
)
されて
近
(
ちか
)
い
中
(
うち
)
に
出
(
で
)
るだらうと
感
(
かん
)
じた。
198
その
次
(
つぎ
)
は
自分
(
じぶん
)
が
非常
(
ひじやう
)
な
高
(
たか
)
い
尖
(
とが
)
つた
岩山
(
いはやま
)
の
上
(
うへ
)
に、
199
いつしか
上
(
のぼ
)
つてゐたが、
200
何処
(
どこ
)
からも
下
(
くだ
)
る
道
(
みち
)
がない、
201
どうしやうかと
思
(
おも
)
つてゐると、
202
白馬
(
はくば
)
が
二頭
(
にとう
)
現
(
あら
)
はれて
203
鉄
(
てつ
)
のくさりを
喰
(
くは
)
へて
自分
(
じぶん
)
の
居
(
ゐ
)
る
岩
(
いは
)
の
上
(
うへ
)
にガチリと
音
(
おと
)
をさせて
掛
(
か
)
けおき、
204
山
(
やま
)
の
横腹
(
よこはら
)
を
一瀉
(
いつしや
)
千里
(
せんり
)
の
勢
(
いきほひ
)
で
帰
(
かへ
)
つて
終
(
しま
)
つた。
205
目
(
め
)
が
覚
(
さ
)
めてから、
206
自分
(
じぶん
)
の
為
(
ため
)
に
活路
(
くわつろ
)
を
開
(
ひら
)
くべく
獅子
(
しし
)
奮迅
(
ふんじん
)
の
活躍
(
くわつやく
)
をしてゐる
信者
(
しんじや
)
のある
事
(
こと
)
を
感
(
かん
)
じた。
207
次
(
つぎ
)
に
本宮山
(
ほんぐうやま
)
の
東麓
(
とうろく
)
の
傾斜地
(
けいしやち
)
を、
208
中野
(
なかの
)
岩太
(
いはた
)
氏
(
し
)
が
一生
(
いつしやう
)
懸命
(
けんめい
)
に
引
(
ひ
)
きならし、
209
行儀
(
ぎやうぎ
)
よく
小松
(
こまつ
)
を
植
(
う
)
ゑてゐた
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
た。
210
或
(
ある
)
日
(
ひ
)
真澄別
(
ますみわけ
)
が
面会
(
めんくわい
)
に
来
(
き
)
て
云
(
い
)
ふのは
211
真澄別
『
先生
(
せんせい
)
、
212
私
(
わたし
)
は
霊眼
(
れいがん
)
で
十一
(
じふいち
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
を
見
(
み
)
せて
頂
(
いただ
)
きましたが、
213
どう
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
でせうか』
214
と
尋
(
たづ
)
ねたので
日出雄
(
ひでを
)
は
215
日出雄
『フン、
216
大方
(
おほかた
)
十
(
じふ
)
に
一
(
いち
)
と
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だらう、
217
十中
(
じつちう
)
の
九
(
く
)
まで
保釈
(
ほしやく
)
が
許
(
ゆる
)
されないのかも
知
(
し
)
れない。
218
又
(
また
)
考
(
かんが
)
へて
見
(
み
)
れば
十中
(
じつちう
)
の
十一
(
じふいち
)
迄
(
まで
)
無罪
(
むざい
)
になる
事
(
こと
)
かも
知
(
し
)
れぬ』
219
と
云
(
い
)
つて
笑
(
わら
)
つて
別
(
わか
)
れた。
220
然
(
しか
)
るに
日出雄
(
ひでを
)
の
保釈
(
ほしやく
)
が
決定
(
けつてい
)
したのは
旧
(
きう
)
十
(
じふ
)
月
(
ぐわつ
)
一
(
いち
)
日
(
にち
)
であり、
221
若松
(
わかまつ
)
支所
(
ししよ
)
を
出
(
で
)
たのは
新暦
(
しんれき
)
十一
(
じふいち
)
月
(
ぐわつ
)
一
(
いち
)
日
(
にち
)
の
午前
(
ごぜん
)
十一
(
じふいち
)
時
(
じ
)
十一
(
じふいつ
)
分
(
ぷん
)
であつた。
222
十五
(
じふご
)
貫
(
くわん
)
五百
(
ごひやく
)
目
(
め
)
[
※
15.5貫=58.1kg
]
の
体量
(
たいりやう
)
に
減
(
げん
)
じてゐた
自分
(
じぶん
)
は、
223
九十八
(
きうじふはち
)
日間
(
にちかん
)
の
監房
(
かんばう
)
生活
(
せいくわつ
)
の
結果
(
けつくわ
)
十七
(
じふしち
)
貫
(
くわん
)
六百
(
ろつぴやく
)
目
(
め
)
[
※
17.6貫=66kg
]
に
体量
(
たいりやう
)
が
増
(
ま
)
してゐた。
224
支所長
(
ししよちやう
)
始
(
はじ
)
め
所内
(
しよない
)
の
役人
(
やくにん
)
全部
(
ぜんぶ
)
に
見送
(
みおく
)
られて
門内
(
もんない
)
を
出
(
で
)
ると、
225
大本
(
おほもと
)
役員
(
やくゐん
)
信者
(
しんじや
)
数百
(
すうひやく
)
名
(
めい
)
、
226
其
(
その
)
他
(
た
)
新聞
(
しんぶん
)
記者
(
きしや
)
及
(
およ
)
び
大阪
(
おほさか
)
市内
(
しない
)
の
見物人
(
けんぶつにん
)
が
黒山
(
くろやま
)
の
如
(
ごと
)
くに
沿道
(
えんだう
)
に
堵列
(
とれつ
)
してゐる。
227
小雨
(
こさめ
)
がシヨボシヨボと
降
(
ふ
)
つてゐる
中
(
なか
)
を、
228
さぬきや
旅館
(
りよくわん
)
に
這入
(
はい
)
り、
229
ここにて
数多
(
あまた
)
の
信者
(
しんじや
)
と
食卓
(
しよくたく
)
を
共
(
とも
)
にし、
230
無事
(
ぶじ
)
帰綾
(
きりよう
)
する
事
(
こと
)
となつた。
231
これより
先
(
さき
)
、
232
聖地
(
せいち
)
では
秋季
(
しうき
)
大祭
(
たいさい
)
があり、
233
分所
(
ぶんしよ
)
支部長
(
しぶちやう
)
会議
(
くわいぎ
)
が
始
(
はじ
)
まり
財政
(
ざいせい
)
整理
(
せいり
)
問題
(
もんだい
)
について、
234
かなりの
激論
(
げきろん
)
が
始
(
はじ
)
まつてゐた。
235
そこへ
保釈
(
ほしやく
)
許可
(
きよか
)
の
電報
(
でんぱう
)
が
大阪
(
おほさか
)
の
弁護士
(
べんごし
)
からついたので、
236
今迄
(
いままで
)
の
争論
(
そうろん
)
は
水
(
みづ
)
の
泡
(
あわ
)
の
如
(
ごと
)
く
消
(
き
)
え、
237
何
(
いづ
)
れも
一斉
(
いつせい
)
に
神言
(
かみごと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し、
238
それより
一同
(
いちどう
)
打揃
(
うちそろ
)
ふて
大阪
(
おほさか
)
に
迎
(
むか
)
へに
来
(
き
)
たのであつた。
239
これで
蒙古入
(
もうこいり
)
の
大芝居
(
おほしばゐ
)
も
一寸
(
ちよつと
)
黒幕
(
くろまく
)
が
下
(
お
)
りたやうなものである。
240
(
大正一四、八、一六
北村隆光
筆録)
Δこのページの一番上に戻るΔ
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(B)
(N)
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特別編 入蒙記
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【第36章 天の岩戸|特別編 入蒙記|山河草木|霊界物語|/rmnm36】
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