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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
特別編 入蒙記
第1篇 日本より奉天まで
第1章 水火訓
第2章 神示の経綸
第3章 金剛心
第4章 微燈の影
第5章 心の奥
第6章 出征の辞
第7章 奉天の夕
第2篇 奉天より洮南へ
第8章 聖雄と英雄
第9章 司令公館
第10章 奉天出発
第11章 安宅の関
第12章 焦頭爛額
第13章 洮南旅館
第14章 洮南の雲
第3篇 洮南より索倫へ
第15章 公爺府入
第16章 蒙古の人情
第17章 明暗交々
第18章 蒙古気質
第19章 仮司令部
第20章 春軍完備
第21章 索倫本営
第4篇 神軍躍動
第22章 木局収ケ原
第23章 下木局子
第24章 木局の月
第25章 風雨叱咤
第26章 天の安河
第27章 奉天の渦
第28章 行軍開始
第29章 端午の日
第30章 岩窟の奇兆
第5篇 雨後月明
第31章 強行軍
第32章 弾丸雨飛
第33章 武装解除
第34章 竜口の難
第35章 黄泉帰
第36章 天の岩戸
第37章 大本天恩郷
第38章 世界宗教聯合会
第39章 入蒙拾遺
附 入蒙余録
大本の経綸と満蒙
世界経綸の第一歩
蒙古建国
蒙古の夢
神示の世界経綸
余白歌
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霊界物語
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山河草木(第61~72巻、入蒙記)
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> 第2篇 奉天より洮南へ > 第14章 洮南の雲
<<< 洮南旅館
(B)
(N)
公爺府入 >>>
第一四章
洮南
(
たうなん
)
の
雲
(
くも
)
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 特別篇 山河草木 入蒙記
篇:
第2篇 奉天より洮南へ
よみ(新仮名遣い):
ほうてんよりとうなんへ
章:
第14章 洮南の雲
よみ(新仮名遣い):
とうなんのくも
通し章番号:
口述日:
1925(大正14)年08月
口述場所:
筆録者:
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年2月14日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
当地の家屋は馬賊の襲来に備えて、塀高く壁厚い構造になっている。オンドルで昼夜暖かいが、屋外の寒気は厳しく、うっかりするとすぐに喉を痛めてしまう。城内の兵士や巡警にも馬賊上がりの者が多く、治安は良いとはいえない。
東蒙古地方の宗教的権威であるラマ教の活仏の名望は地に落ちている。支那人に麻雀で負けて十万余の借金が出来て広大な土地を奪われ、自身梅毒に苦しむ身であるという。
岡崎は日出雄から運動費を受け取ると、それを元手に当地の支那官吏に取り入って、彼らの歓心を買って便宜を図ろうとしていた。そのうち、洮南府の将校である某連長を懇意になり、兄弟分となってしまった。
気が緩んだ岡崎は大言壮語し、あたりかまわず洮南府を○○しようなどと主張し始めるものだから、ある日四平街の奥村氏がやってきて、ついに岡崎の言動が日本・支那の官憲の耳に入って疑いを受けつつあることを知らせて来た。しかし岡崎は、洮南府の将校連を買収しておいたから大丈夫だと、平気の様子である。
一行はいよいよ奥蒙古に入るに当たって、便宜のために家屋を借り、軍器や食料の中継場とした。
平馬氏宅に日本領事館員の月川左門氏がやってきて、猪野敏夫氏を長い間談義を交換していた。結局日本と支那との関係を円滑にするためには、日本の実力を示すより仕様がないと、満蒙経営談にふけっていた。
満鉄の山崎某という社員が、日出雄一行が洮南府へ来ていることを、四平街の日本憲兵隊へ密告したので、支那側の官憲が活動を始め出したという噂が耳に入った。日本領事館の月川書記生や満鉄の佐藤某が、平馬氏宅を窺うようになった。
日出雄は天下万民のために正々堂々と天地にはじない行動をとっているにもかかわらず、身を忍ばせて秘密の行動を採らなければならないというのは、要するに上に卑怯な為政者がいるからである。
警戒線を破って神界の経綸を行うべくはるばるやってきたのを、上下狼狽して懸賞付で捜索を始めたという。実に気の毒なものだ。世界平和の共栄の大理想を実行実現するために、日出雄はやってきたのだ。不義と罪悪の淵源である官憲・為政者たちから目を覚ましてくれなければ、到底東洋に国を安全に建てていくことは不可能である。
張作霖については、自分は金を出さずに人に苦労させて甘い汁を吸おうというとんでもない男だ。しかし、果たして盧占魁が張の思い通りに動くだろうか、という感想を持っている。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
2024/1/14出口王仁三郎全集第6巻を底本として校正。
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2024-01-14 02:16:07
OBC :
rmnm14
愛善世界社版:
121頁
八幡書店版:
第14輯 592頁
修補版:
校定版:
121頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
当地
(
たうち
)
の
家屋
(
かをく
)
は
内地
(
ないち
)
に
比
(
ひ
)
して
非常
(
ひじやう
)
に
変
(
かは
)
つてゐる。
002
何
(
いづ
)
れの
民家
(
みんか
)
も
皆
(
みな
)
家
(
いへ
)
の
周囲
(
しうゐ
)
に
高
(
たか
)
き
土塀
(
どべい
)
をめぐらし、
003
馬賊
(
ばぞく
)
の
襲来
(
しふらい
)
に
備
(
そな
)
へ、
004
屋内
(
をくない
)
は
室
(
へや
)
毎
(
ごと
)
に
入口
(
いりぐち
)
のみあつて
一方口
(
いつぱうぐち
)
である。
005
中
(
なか
)
から
鍵
(
かぎ
)
をかけて
寝
(
ね
)
る
構造
(
こうざう
)
となつてゐる。
006
一
(
いつ
)
尺
(
しやく
)
以上
(
いじやう
)
もある
様
(
やう
)
な
厚
(
あつ
)
い
壁
(
かべ
)
で
間
(
ま
)
を
仕切
(
しき
)
り、
007
そして
鰻
(
うなぎ
)
の
寝所
(
ねどこ
)
のやうな
細長
(
ほそなが
)
い
間取
(
まどり
)
になつてゐる。
008
冬季
(
とうき
)
は
昼夜
(
ちうや
)
温突
(
をんどる
)
に
火
(
ひ
)
を
入
(
い
)
れてあるから
室内
(
しつない
)
は
暖
(
あたた
)
かい。
009
之
(
これ
)
に
反
(
はん
)
し
一歩
(
いつぽ
)
屋外
(
をくぐわい
)
に
出
(
い
)
づれば
寒気
(
かんき
)
厳
(
きび
)
しく
身
(
み
)
に
迫
(
せま
)
り、
010
うつかりしてゐると、
011
直
(
す
)
ぐに
咽喉
(
いんこう
)
を
害
(
がい
)
して
了
(
しま
)
ふ。
012
それから
道
(
みち
)
行
(
ゆ
)
く
車馬
(
ばしや
)
を
見
(
み
)
ると、
013
例
(
れい
)
の
支那
(
しな
)
式
(
しき
)
の
床
(
とこ
)
の
低
(
ひく
)
い
梶棒
(
かぢぼう
)
の
篦棒
(
べらぼう
)
に
長
(
なが
)
い
人力車
(
じんりきしや
)
は
見
(
み
)
られないが、
014
不恰好
(
ぶかつかう
)
な
牛車
(
ぎうしや
)
や
馬車
(
ばしや
)
が
灰
(
はひ
)
の
様
(
やう
)
な
道路
(
だうろ
)
を
駆
(
か
)
け
廻
(
めぐ
)
り、
015
防砂
(
ばうしや
)
眼鏡
(
めがね
)
をかけねば
一歩
(
いつぽ
)
も
先
(
さき
)
を
通行
(
つうかう
)
することが
出来
(
でき
)
ない。
016
何
(
いづ
)
れの
家
(
いへ
)
も
入口
(
いりぐち
)
に
赤
(
あか
)
い
紙
(
かみ
)
を
張
(
は
)
り、
017
富貴
(
ふうき
)
だとか
幸福
(
かうふく
)
だとか、
018
瑞祥
(
ずゐしやう
)
だとか、
019
目出度
(
めでた
)
さうな
文字
(
もじ
)
を
誌
(
しる
)
してゐる。
020
そして
夕方
(
ゆふがた
)
から
城門
(
じやうもん
)
を
固
(
かた
)
く
閉
(
とざ
)
し、
021
夜分
(
やぶん
)
は
他
(
た
)
の
地方
(
ちはう
)
へ
出
(
で
)
られない
事
(
こと
)
になつてゐる。
022
当城内
(
たうじやうない
)
に
居
(
ゐ
)
る
数千
(
すうせん
)
の
兵士
(
へいし
)
も
数多
(
あまた
)
の
巡警
(
じゆんけい
)
も
大部分
(
だいぶぶん
)
馬賊
(
ばぞく
)
上
(
あが
)
りだから、
023
夜
(
よ
)
の
帳
(
とばり
)
がおりると
同時
(
どうじ
)
に、
024
平気
(
へいき
)
の
平左
(
へいざ
)
で、
025
軍服
(
ぐんぷく
)
の
儘
(
まま
)
泥棒
(
どろばう
)
をやると
云
(
い
)
ふのだから、
026
生命
(
せいめい
)
財産
(
ざいさん
)
の
保証
(
ほしよう
)
などは
到底
(
たうてい
)
駄目
(
だめ
)
である。
027
そして
城内
(
じやうない
)
の
三分
(
さんぶん
)
の
一
(
いち
)
迄
(
まで
)
は
馬賊
(
ばぞく
)
の
頭目
(
たうもく
)
や
小
(
せう
)
盗児
(
トル
)
連
(
れん
)
が
大小
(
だいせう
)
各店
(
かくてん
)
を
開
(
ひら
)
いてそ
知
(
し
)
らぬ
顔
(
かほ
)
してゐるのだからこれ
程
(
ほど
)
危険
(
きけん
)
極
(
きは
)
まる
話
(
はなし
)
はない。
028
此
(
この
)
附近
(
ふきん
)
の
馬賊
(
ばぞく
)
の
団体
(
だんたい
)
は
三十
(
さんじふ
)
人
(
にん
)
或
(
あるひ
)
は
五十
(
ごじふ
)
人
(
にん
)
の
小勢
(
せうぜい
)
で
村落
(
そんらく
)
に
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
029
三日間
(
みつかかん
)
位
(
ぐらゐ
)
其
(
その
)
村
(
むら
)
に
逗留
(
とうりう
)
して、
030
能
(
よ
)
く
食
(
く
)
ひ、
031
能
(
よ
)
く
飲
(
の
)
み、
032
女
(
をんな
)
と
見
(
み
)
れば
老若
(
らうにやく
)
の
別
(
べつ
)
なく
強姦
(
がうかん
)
をなし、
033
飲食物
(
いんしよくぶつ
)
がなくなると、
034
悠々
(
いういう
)
として
又
(
また
)
次
(
つぎ
)
の
村
(
むら
)
へ
行
(
い
)
つて
同
(
おな
)
じ
事
(
こと
)
を
繰返
(
くりかへ
)
すといふ
呑気
(
のんき
)
千万
(
せんばん
)
な
泥棒団
(
どろばうだん
)
が
横行
(
わうかう
)
し、
035
蒙古
(
もうこ
)
の
住民
(
ぢうみん
)
は
実
(
じつ
)
に
枕
(
まくら
)
を
高
(
たか
)
くする
事
(
こと
)
が
出来
(
でき
)
ないと
云
(
い
)
ふ
有様
(
ありさま
)
である。
036
それから
東
(
ひがし
)
蒙古
(
もうこ
)
地方
(
ちはう
)
の
俗称
(
ぞくしよう
)
活仏
(
くわつぶつ
)
の
名望
(
めいばう
)
と
信用
(
しんよう
)
は
全然
(
ぜんぜん
)
地
(
ち
)
に
墜
(
お
)
ち、
037
蒙古人
(
もうこじん
)
の
信仰
(
しんかう
)
が
動
(
うご
)
き
出
(
だ
)
したといふ。
038
現
(
げん
)
にパインタラの
活仏
(
くわつぶつ
)
は
麻雀
(
マージヤン
)
に
負
(
ま
)
けて
039
十万
(
じふまん
)
余
(
よ
)
の
負債
(
ふさい
)
が
出来
(
でき
)
、
040
広大
(
くわうだい
)
な
土地
(
とち
)
は
支那人
(
しなじん
)
にボツたくられ、
041
且
(
か
)
つ
婦女子
(
ふぢよし
)
を
小口
(
こぐち
)
から
引
(
ひ
)
つかけて、
042
今
(
いま
)
は
梅毒
(
ばいどく
)
に
罹
(
かか
)
り
苦
(
くる
)
しんでゐるといふ
有様
(
ありさま
)
だ。
043
王爺廟
(
ワンエメウ
)
の
活仏
(
くわつぶつ
)
も
又
(
また
)
いろいろ
面白
(
おもしろ
)
からぬ
評判
(
ひやうばん
)
が
立
(
た
)
つてゐる。
044
昨年
(
さくねん
)
の
三
(
さん
)
月
(
ぐわつ
)
十四
(
じふよつ
)
日
(
か
)
満鉄
(
まんてつ
)
の
上村
(
かみむら
)
某
(
ぼう
)
が
当地
(
たうち
)
にて
馬賊
(
ばぞく
)
に
擲
(
なぐ
)
り
殺
(
ころ
)
された
一周忌
(
いつしうき
)
に
当
(
あた
)
るといふので、
045
其
(
その
)
追悼会
(
つゐたうゑ
)
が
日本人
(
につぽんじん
)
間
(
かん
)
で
行
(
おこな
)
はれた。
046
上村
(
かみむら
)
は
剣道
(
けんだう
)
の
達人
(
たつじん
)
であつたが、
047
暗夜
(
やみよ
)
に
後
(
うしろ
)
から
棍棒
(
こんぼう
)
で
脳天
(
のうてん
)
を
擲
(
なぐ
)
りつけられて
一堪
(
ひとたま
)
りもなく
斃
(
たほ
)
れたとの
事
(
こと
)
である。
048
寒風
(
かんぷう
)
烈
(
はげ
)
しく
吹
(
ふ
)
きまくり、
049
黄塵
(
くわうぢん
)
万丈
(
ばんじやう
)
の
巷
(
ちまた
)
をいろいろの
鳴物
(
なりもの
)
入
(
い
)
りで
葬式
(
さうしき
)
の
行列
(
ぎやうれつ
)
が
通
(
とほ
)
つて
行
(
ゆ
)
く、
050
窓内
(
さうない
)
より
眺
(
なが
)
むれば
喇嘛僧
(
らまそう
)
が
二十
(
にじふ
)
人
(
にん
)
許
(
ばか
)
り、
051
黄
(
き
)
や
赤
(
あか
)
の
衣
(
ころも
)
を
着
(
つ
)
け、
052
面白
(
おもしろ
)
い
旗
(
はた
)
を
沢山
(
たくさん
)
押立
(
おした
)
て、
053
死骸
(
しがい
)
を
輿
(
こし
)
に
載
(
の
)
せ、
054
五六間
(
ごろくけん
)
もあるやうな
長
(
なが
)
い
棒
(
ぼう
)
でかついで、
055
チワチワさせ
乍
(
なが
)
ら、
056
馬車
(
ばしや
)
数台
(
すうだい
)
に
豚
(
ぶた
)
や
羊
(
ひつじ
)
などを
縛
(
しば
)
りつけて
長
(
なが
)
い
行列
(
ぎやうれつ
)
を
作
(
つく
)
つて
通
(
とほ
)
る。
057
恰
(
あだか
)
も
氏神
(
うぢがみ
)
の
祭礼
(
さいれい
)
の
神輿
(
みこし
)
渡御
(
とぎよ
)
の
様
(
やう
)
な
光景
(
くわうけい
)
である。
058
斯
(
かか
)
る
立派
(
りつぱ
)
な
葬式
(
さうしき
)
は
此
(
この
)
土地
(
とち
)
でも
余程
(
よほど
)
名
(
な
)
の
売
(
う
)
れた
人士
(
じんし
)
だと
云
(
い
)
ふことだ。
059
岡崎
(
をかざき
)
は
日出雄
(
ひでを
)
の
手
(
て
)
から
運動費
(
うんどうひ
)
を
受取
(
うけと
)
りニコニコし
乍
(
なが
)
ら、
060
洮南
(
たうなん
)
府
(
ふ
)
知事
(
ちじ
)
の
縁類
(
えんるゐ
)
なる
将校
(
しやうかう
)
と
共
(
とも
)
に
五六
(
ごろく
)
人
(
にん
)
の
支那
(
しな
)
官吏
(
くわんり
)
を
招
(
まね
)
き
底抜
(
そこぬけ
)
散財
(
さんざい
)
をやり、
061
且
(
か
)
つ
小遣
(
こづかひ
)
を
与
(
あた
)
へて
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
の
歓心
(
くわんしん
)
を
買
(
か
)
ひ、
062
まさかの
時
(
とき
)
の
用意
(
ようい
)
にと
極力
(
きよくりよく
)
運動
(
うんどう
)
をやつてゐた。
063
日出雄
(
ひでを
)
の
宿泊
(
しゆくはく
)
してゐる
平馬
(
へいま
)
氏
(
し
)
[
*
ここの「平馬」のフリガナは底本(全集)では「ひらま」。以降「平馬」が3つあるがいずれもフリガナは「へいま」なので、ここも「へいま」に直した。
]
と
同
(
おな
)
じ
邸内
(
ていない
)
に
洮南
(
たうなん
)
府
(
ふ
)
の
将校
(
しやうかう
)
某
(
ぼう
)
連長
(
れんちやう
)
が
住
(
す
)
んでゐる。
064
岡崎
(
をかざき
)
は
此
(
この
)
連長
(
れんちやう
)
と
懇意
(
こんい
)
になり、
065
互
(
たがひ
)
に
往復
(
わうふく
)
してゐた。
066
連長
(
れんちやう
)
夫婦
(
ふうふ
)
が
大喧嘩
(
おほけんくわ
)
をおつ
初
(
ぱじ
)
め、
067
死
(
し
)
ぬの
走
(
はし
)
るの、
068
暇
(
ひま
)
くれの、
069
殺
(
ころ
)
すの
殺
(
ころ
)
せのと、
070
悋気
(
りんき
)
喧嘩
(
げんくわ
)
が
起
(
おこ
)
る
度
(
たび
)
毎
(
ごと
)
に、
071
下女
(
げじよ
)
が
驚
(
おどろ
)
いて
岡崎
(
をかざき
)
を
呼
(
よ
)
びに
来
(
く
)
るといふ
深
(
ふか
)
い
仲
(
なか
)
になり、
072
遂
(
つひ
)
には
兄弟分
(
きやうだいぶん
)
となつて
了
(
しま
)
つた。
073
岡崎
(
をかざき
)
は
得意然
(
とくいぜん
)
として
大
(
おほ
)
きな
声
(
こゑ
)
で
辺
(
あた
)
り
構
(
かま
)
はず、
074
遂
(
つひ
)
には
洮南
(
たうなん
)
府
(
ふ
)
を○○しようと
云
(
い
)
ふやうな
事
(
こと
)
まで
主張
(
しゆちやう
)
し
出
(
だ
)
し、
075
それが
支那
(
しな
)
官憲
(
くわんけん
)
の
耳
(
みみ
)
に
這入
(
はひ
)
つたとか、
076
日本
(
につぽん
)
官憲
(
くわんけん
)
の
耳
(
みみ
)
に
這入
(
はひ
)
つたとか
云
(
い
)
ふので、
077
日本人
(
につぽんじん
)
側
(
がは
)
は
非常
(
ひじやう
)
に
気
(
き
)
を
揉
(
も
)
んだ。
078
それでなくても
排日
(
はいにち
)
思想
(
しさう
)
の
烈
(
はげ
)
しい
洮南
(
たうなん
)
府
(
ふ
)
に
潜伏
(
せんぷく
)
してゐるのだから、
079
こんな
事
(
こと
)
が
仮令
(
たとへ
)
冗談
(
じようだん
)
にもせよ、
080
日本人
(
につぽんじん
)
の
口
(
くち
)
から
出
(
で
)
たと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
が
支那
(
しな
)
官憲
(
くわんけん
)
に
聞
(
きこ
)
えようものなら、
081
何
(
ど
)
んな
事
(
こと
)
になるかも
知
(
し
)
れないと、
082
岡崎
(
をかざき
)
の
失言
(
しつげん
)
が
奉天
(
ほうてん
)
の
同志
(
どうし
)
に
伝
(
つた
)
はつたので、
083
唐国別
(
からくにわけ
)
、
084
佐々木
(
ささき
)
、
085
大倉
(
おほくら
)
は
顔色
(
かほいろ
)
を
変
(
か
)
へ、
086
狼狽
(
らうばい
)
し、
087
岡崎
(
をかざき
)
君
(
くん
)
を
奉天
(
ほうてん
)
に
返
(
かへ
)
さないやうにして
貰
(
もら
)
ひたい。
088
そして
一日
(
いちにち
)
も
早
(
はや
)
く
日出雄
(
ひでを
)
先生
(
せんせい
)
が
岡崎
(
をかざき
)
を
引張
(
ひつぱ
)
つて
公爺府
(
こんえふ
)
へ
行
(
い
)
つて
貰
(
もら
)
ひたいなどと
言
(
い
)
ふ
手紙
(
てがみ
)
を
坂本
(
さかもと
)
広一
(
くわういち
)
に
持
(
も
)
たせて
依頼
(
いらい
)
して
来
(
き
)
た。
089
岡崎
(
をかざき
)
はそんな
事
(
こと
)
には
少
(
すこ
)
しも
頓着
(
とんちやく
)
なく……
国家
(
こくか
)
の
為
(
ため
)
、
090
社会
(
しやくわい
)
の
為
(
ため
)
に
吾々
(
われわれ
)
は
最善
(
さいぜん
)
の
方法
(
はうはふ
)
を
講
(
かう
)
じてゐるのだ。
091
大体
(
だいたい
)
佐々木
(
ささき
)
、
092
大倉
(
おほくら
)
の
奴
(
やつ
)
肝玉
(
きもたま
)
の
小
(
ちひ
)
さい
腰抜
(
こしぬ
)
けだから、
093
何
(
なん
)
でもない
事
(
こと
)
を
心配
(
しんぱい
)
しよつて、
094
そんな
事
(
こと
)
で、
095
こんな
大事
(
だいじ
)
が
成就
(
じやうじゆ
)
するものか、
096
ヘン、
097
馬鹿
(
ばか
)
馬鹿
(
ばか
)
しい……と
鼻
(
はな
)
の
先
(
さき
)
で
吹
(
ふ
)
き
散
(
ち
)
らしてゐる。
098
日出雄
(
ひでを
)
は
岡崎
(
をかざき
)
に
向
(
むか
)
つて……『
今
(
いま
)
の
場合
(
ばあひ
)
は
可成
(
なるべく
)
秘密
(
ひみつ
)
を
守
(
まも
)
り、
099
余
(
あま
)
り
大事
(
だいじ
)
なことは
口外
(
こうぐわい
)
せないよう』……と
注意
(
ちうい
)
すると、
100
誰
(
たれ
)
のいふことも
聞
(
き
)
かない
岡崎
(
をかざき
)
も
二三
(
にさん
)
日間
(
にちかん
)
は
神妙
(
しんめう
)
に
沈黙
(
ちんもく
)
を
守
(
まも
)
つてゐた。
101
すると
一日
(
いちにち
)
四平街
(
しへいがい
)
の
奥村
(
おくむら
)
幹造
(
かんざう
)
氏
(
し
)
が
倉皇
(
さうくわう
)
としてやつて
来
(
き
)
た。
102
岡崎
(
をかざき
)
の
大言
(
たいげん
)
壮語
(
さうご
)
が
祟
(
たた
)
り、
103
日支
(
につし
)
官憲
(
くわんけん
)
の
耳
(
みみ
)
に
這入
(
はひ
)
つた
様
(
やう
)
なので
日出雄
(
ひでを
)
一行
(
いつかう
)
の
身
(
み
)
の
上
(
うへ
)
を
案
(
あん
)
じ、
104
親切
(
しんせつ
)
に
見舞
(
みまひ
)
に
来
(
き
)
たのである。
105
其処
(
そこ
)
へ
岡崎
(
をかざき
)
が
這入
(
はひ
)
つて
来
(
き
)
て、
106
支那
(
しな
)
の
各
(
かく
)
将校
(
しやうかう
)
と
前夜
(
ぜんや
)
青楼
(
せいろう
)
に
上
(
あが
)
り
一緒
(
いつしよ
)
に
麻雀
(
マージヤン
)
や
散財
(
さんざい
)
をして
彼
(
かれ
)
等
(
ら
)
を
全
(
まつた
)
く
買収
(
ばいしう
)
しておいたからモウ
安心
(
あんしん
)
だと、
107
意気
(
いき
)
揚々
(
やうやう
)
として
語
(
かた
)
る。
108
奥村
(
おくむら
)
は
岡崎
(
をかざき
)
の
平気
(
へいき
)
な
顔
(
かほ
)
を
見
(
み
)
て
意外
(
いぐわい
)
の
感
(
かん
)
に
打
(
う
)
たれてゐた。
109
日出雄
(
ひでを
)
一行
(
いつかう
)
は
愈
(
いよいよ
)
蒙古
(
もうこ
)
奥地
(
おくち
)
へ
入
(
い
)
るに
付
(
つい
)
て、
110
万事
(
ばんじ
)
便宜
(
べんぎ
)
の
為
(
ため
)
支那
(
しな
)
の
家屋
(
かをく
)
を
王
(
わう
)
元祺
(
げんき
)
の
名義
(
めいぎ
)
にて
一
(
いつ
)
ケ
年
(
ねん
)
百五十
(
ひやくごじふ
)
円
(
ゑん
)
の
家賃
(
やちん
)
で
借入
(
かりい
)
るることとなつた。
111
温突
(
をんどる
)
付
(
つき
)
四間
(
よんま
)
の
家屋
(
かをく
)
で、
112
長栄号
(
ちやうえいがう
)
と
命名
(
めいめい
)
し
表面
(
へうめん
)
は
貿易商
(
ぼうえきしやう
)
といふことになし、
113
軍器
(
ぐんき
)
や
糧食
(
りやうしよく
)
の
中継場
(
ちうけいぢやう
)
とした。
114
日出雄
(
ひでを
)
が
守高
(
もりたか
)
と
共
(
とも
)
に
平馬
(
へいま
)
氏
(
し
)
の
宅
(
たく
)
に
書見
(
しよけん
)
をしてゐると、
115
日本
(
につぽん
)
領事館
(
りやうじくわん
)
員
(
ゐん
)
月川
(
つきかは
)
左門
(
さもん
)
氏
(
し
)
がやつて
来
(
き
)
た。
116
そして
猪野
(
ゐの
)
敏夫
(
としを
)
と
長
(
なが
)
い
間
(
あひだ
)
種々
(
しゆじゆ
)
の
談話
(
だんわ
)
を
交換
(
かうくわん
)
し、
117
結局
(
けつきよく
)
日本
(
につぽん
)
と
支那
(
しな
)
との
関係
(
くわんけい
)
を
円滑
(
ゑんくわつ
)
ならしむるには
日本
(
につぽん
)
の
実力
(
じつりよく
)
を
示
(
しめ
)
すより
仕様
(
しやう
)
がないと、
118
満蒙
(
まんもう
)
経営談
(
けいえいだん
)
に
耽
(
ふけ
)
つてゐた。
119
日出雄
(
ひでを
)
は
次
(
つぎ
)
の
間
(
ま
)
から
両人
(
りやうにん
)
の
談話
(
だんわ
)
を
聞
(
き
)
いてゐた。
120
暫時
(
しばらく
)
すると
支那
(
しな
)
将校
(
しやうかう
)
がやつて
来
(
き
)
て、
121
一
(
ひと
)
つの
卓子
(
テーブル
)
を
囲
(
かこ
)
み、
122
嬉
(
うれ
)
し
相
(
さう
)
に
笑
(
わら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
123
麻雀
(
マージヤン
)
と
云
(
い
)
ふ
博奕
(
ばくち
)
を
深更
(
しんかう
)
迄
(
まで
)
やつてゐる。
124
平馬
(
へいま
)
氏
(
し
)
夫人
(
ふじん
)
の
二葉子
(
ふたばこ
)
も
一緒
(
いつしよ
)
に
麻雀
(
マージヤン
)
に
耽
(
ふけ
)
つてゐた。
125
文学
(
ぶんがく
)
趣味
(
しゆみ
)
を
有
(
も
)
つた
日出雄
(
ひでを
)
は
幾
(
いく
)
日間
(
にちかん
)
一室
(
いつしつ
)
に
閉籠
(
とじこも
)
つてゐても
少
(
すこ
)
しも
苦痛
(
くつう
)
を
感
(
かん
)
じないのみならず、
126
いろいろな
思想
(
しさう
)
の
泉
(
いづみ
)
が
湧
(
わ
)
いて
来
(
く
)
ると
云
(
い
)
つて、
127
面白
(
おもしろ
)
く
楽
(
たの
)
しく
日
(
ひ
)
を
送
(
おく
)
り
詩歌
(
しいか
)
などに
耽
(
ふけ
)
つてゐる。
128
其
(
その
)
中
(
なか
)
の
数首
(
すうしゆ
)
を
左
(
さ
)
に、
129
十二夜
(
じふにや
)
の
月
(
つき
)
見
(
み
)
る
度
(
たび
)
に
思
(
おも
)
ふかな
我
(
わが
)
生
(
うま
)
れたる
夜半
(
よは
)
はいかにと
130
日
(
ひ
)
の
本
(
もと
)
を
立出
(
たちい
)
で
再
(
ふたた
)
び
十二夜
(
じふにや
)
の
月
(
つき
)
を
蒙古
(
もうこ
)
の
空
(
そら
)
に
見
(
み
)
るかな
131
大空
(
おほぞら
)
に
月
(
つき
)
は
慄
(
ふる
)
ひて
風
(
かぜ
)
寒
(
さむ
)
しされど
我
(
わが
)
身
(
み
)
は
神
(
かみの
)
懐
(
ふところ
)
[
※
2ヶ所「我」があるが校定版や愛善世界社版では「吾」に直している。
]
132
鈴
(
すず
)
の
音
(
おと
)
いと
賑
(
にぎ
)
はしく
聞
(
きこ
)
えけり
又
(
また
)
もや
馬車
(
ばしや
)
の
路
(
みち
)
を
行
(
ゆ
)
くらむ
133
潜竜
(
せんりう
)
の
潜
(
ひそ
)
む
此
(
この
)
家
(
や
)
は
神界
(
しんかい
)
の
深
(
ふか
)
き
仕組
(
しぐみ
)
の
館
(
やかた
)
なるらむ
134
三
(
さん
)
月
(
ぐわつ
)
十六
(
じふろく
)
日
(
にち
)
(
旧
(
きう
)
二
(
に
)
月
(
ぐわつ
)
十三
(
じふさん
)
日
(
にち
)
)
満鉄
(
まんてつ
)
社員
(
しやゐん
)
の
山崎
(
やまざき
)
某
(
ぼう
)
が
四平街
(
しへいがい
)
の
日本
(
につぽん
)
憲兵隊
(
けんぺいたい
)
へ、
135
日出雄
(
ひでを
)
一行
(
いつかう
)
が
洮南
(
たうなん
)
府
(
ふ
)
へ
来
(
き
)
た
事
(
こと
)
を
密告
(
みつこく
)
したので、
136
支那
(
しな
)
側
(
がは
)
の
官憲
(
くわんけん
)
が
活動
(
くわつどう
)
を
始
(
はじ
)
め
出
(
だ
)
したと
云
(
い
)
ふ
噂
(
うはさ
)
が
耳
(
みみ
)
に
入
(
い
)
り、
137
一行
(
いつかう
)
は
薄氷
(
はくひやう
)
を
踏
(
ふ
)
むが
如
(
ごと
)
き
思
(
おも
)
ひに
悩
(
なや
)
んでゐた。
138
そして
月川
(
つきかは
)
書記生
(
しよきせい
)
や
満鉄
(
まんてつ
)
の
佐藤
(
さとう
)
某
(
ぼう
)
が
代
(
かは
)
る
代
(
がは
)
る
平馬
(
へいま
)
氏
(
し
)
の
宅
(
たく
)
を
窺
(
うかが
)
つてゐた。
139
洮南
(
たうなん
)
へ
来
(
きた
)
りて
安心
(
あんしん
)
する
間
(
ま
)
もなく
又
(
また
)
もや
深
(
ふか
)
き
悩
(
なや
)
みするかな
140
と
日出雄
(
ひでを
)
は
口誦
(
くちずさ
)
んだ。
141
併
(
しか
)
し
彼
(
かれ
)
は、
142
危険
(
きけん
)
なる
家
(
いへ
)
に
留
(
とど
)
まり
居
(
ゐ
)
るも
却
(
かへ
)
つて
安全
(
あんぜん
)
なるべし、
143
窮鳥
(
きうてふ
)
懐
(
ふところ
)
に
入
(
い
)
れば
猟夫
(
れうふ
)
も
之
(
これ
)
を
殺
(
ころ
)
さずとの
金言
(
きんげん
)
と
神力
(
しんりよく
)
[
*
フリガナ「しんりよく」は底本(全集)通り。
]
とを
頼
(
たの
)
みとして
日
(
ひ
)
を
送
(
おく
)
つて
居
(
ゐ
)
たのである。
144
其
(
その
)
当時
(
たうじ
)
の
日出雄
(
ひでを
)
の
述懐
(
じゆつくわい
)
に
左
(
さ
)
の
如
(
ごと
)
き
一節
(
いつせつ
)
がある。
145
(日出雄)
『
日出雄
(
ひでを
)
が
天下
(
てんか
)
万民
(
ばんみん
)
の
為
(
ため
)
に
正々
(
せいせい
)
堂々
(
だうだう
)
と
天地
(
てんち
)
に
愧
(
は
)
ぢざる
行動
(
かうどう
)
を
採
(
と
)
つて
居
(
ゐ
)
ながらも、
146
斯
(
か
)
くの
如
(
ごと
)
く
身
(
み
)
を
忍
(
しの
)
ばせ、
147
秘密
(
ひみつ
)
の
行動
(
かうどう
)
を
採
(
と
)
らねばならないといふのは、
148
要
(
えう
)
するに
上
(
うへ
)
に
卑怯
(
ひけふ
)
なる
為政者
(
ゐせいしや
)
が
居
(
ゐ
)
るからである。
149
内強
(
ないきやう
)
外弱
(
ぐわいじやく
)
唯々
(
ゐゐ
)
諾々
(
だくだく
)
として
外人
(
ぐわいじん
)
の
鼻息
(
はないき
)
のみを
伺
(
うかが
)
つて
居
(
ゐ
)
る
日本
(
につぽん
)
外交官
(
ぐわいかうくわん
)
及
(
および
)
内閣員
(
ないかくゐん
)
の
少
(
すこ
)
しでも
心配
(
しんぱい
)
せない
様
(
やう
)
との
慮
(
おもんぱか
)
りからである。
150
其
(
その
)
癖
(
くせ
)
日本
(
につぽん
)
の
官憲
(
くわんけん
)
は
支那
(
しな
)
や
朝鮮
(
てうせん
)
、
151
露国
(
ろこく
)
に
対
(
たい
)
しては、
152
随分
(
ずゐぶん
)
鼻意気
(
はないき
)
荒
(
あら
)
く
凡
(
すべ
)
てが
威圧
(
いあつ
)
的
(
てき
)
であるに
拘
(
かかは
)
らず、
153
英米
(
えいべい
)
に
対
(
たい
)
しては、
154
頭
(
あたま
)
から
青痰
(
あをたん
)
を
吐
(
は
)
きかけられても
小言
(
こごと
)
一
(
ひと
)
つ
言
(
い
)
ひ
得
(
え
)
ない
腰抜
(
こしぬ
)
けばかりだ。
155
皇道
(
くわうだう
)
大本
(
おほもと
)
の
勢力
(
せいりよく
)
が
大
(
おほ
)
きいと
云
(
い
)
つて、
156
所在
(
あらゆる
)
圧迫
(
あつぱく
)
を
加
(
くは
)
へ
遂
(
つひ
)
には
純忠
(
じゆんちう
)
無二
(
むに
)
の
大
(
だい
)
思想家
(
しさうか
)
に、
157
無理槍
(
むりやり
)
に
冤罪
(
えんざい
)
を
被
(
かむ
)
らせたり、
158
天地
(
てんち
)
の
大神
(
おほかみ
)
の
宮
(
みや
)
を
毀
(
こぼ
)
つたり、
159
色々
(
いろいろ
)
雑多
(
ざつた
)
の
悪政
(
あくせい
)
暴虐
(
ばうぎやく
)
を
加
(
くは
)
へ、
160
正義
(
せいぎ
)
の
団体
(
だんたい
)
を
見
(
み
)
るに
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
むだう
)
を
以
(
もつ
)
てする、
161
実
(
じつ
)
に
呆
(
あき
)
れ
果
(
は
)
てたるものである。
162
而
(
しか
)
も
東洋
(
とうやう
)
の
君子国
(
くんしこく
)
、
163
浦安国
(
うらやすくに
)
と
自惚
(
うぬぼ
)
れて
居
(
ゐ
)
るのだから
堪
(
たま
)
らない。
164
自分
(
じぶん
)
が
警戒線
(
けいかいせん
)
を
悠々
(
いういう
)
と
破
(
やぶ
)
つて、
165
神界
(
しんかい
)
の
経綸
(
けいりん
)
を
行
(
おこな
)
ふべく、
1651
遥々
(
はるばる
)
やつて
来
(
き
)
たのに
対
(
たい
)
して、
166
上下
(
しやうか
)
狼狽
(
らうばい
)
、
167
一千
(
いつせん
)
円
(
ゑん
)
の
懸賞附
(
けんしやうつき
)
で
捜索
(
そうさく
)
を
始
(
はじ
)
めかけたと
云
(
い
)
ふ、
168
実
(
じつ
)
に
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
なものだ。
169
然
(
しか
)
し
決
(
けつ
)
して
心配
(
しんぱい
)
下
(
くだ
)
さるな、
170
滅多
(
めつた
)
に
諸君
(
しよくん
)
等
(
ら
)
の
為
(
ため
)
にならない
様
(
やう
)
な
拙劣
(
へた
)
な
事
(
こと
)
はせないから、
171
世界
(
せかい
)
平和
(
へいわ
)
共栄
(
きようえい
)
の
大理想
(
だいりさう
)
を
実行
(
じつかう
)
実現
(
じつげん
)
の
為
(
ため
)
だ。
172
君
(
きみ
)
等
(
ら
)
の
様
(
やう
)
な
尻
(
しり
)
の
穴
(
あな
)
や
睾丸
(
かうぐわん
)
で、
173
一体
(
いつたい
)
今日
(
こんにち
)
の
世
(
よ
)
の
中
(
なか
)
に
於
(
おい
)
て
何
(
なに
)
が
出来
(
でき
)
ると
思
(
おも
)
ふか、
174
どうして
万世
(
ばんせい
)
一系
(
いつけい
)
の
国家
(
こくか
)
が
守
(
まも
)
つて
行
(
い
)
けるか、
175
不義
(
ふぎ
)
と
罪悪
(
ざいあく
)
との
淵源
(
えんげん
)
たる
君
(
きみ
)
等
(
ら
)
から、
176
少
(
すこ
)
しは
眼
(
め
)
を
覚
(
さ
)
まして
呉
(
く
)
れねば、
177
東洋
(
とうやう
)
に
国
(
くに
)
を
安全
(
あんぜん
)
に
建
(
た
)
てて
行
(
ゆ
)
く
事
(
こと
)
は
不可能
(
ふかのう
)
だ、
178
現
(
げん
)
に
今日
(
こんにち
)
の
状態
(
じやうたい
)
は
何
(
な
)
んだい……』
179
又
(
また
)
張
(
ちやう
)
作霖
(
さくりん
)
に
関
(
くわん
)
しては
左
(
さ
)
の
如
(
ごと
)
く
評
(
ひやう
)
してゐた。
180
(日出雄)
『
東三省
(
とうさんしやう
)
の
張
(
ちやう
)
作霖
(
さくりん
)
も
随分
(
ずゐぶん
)
支那人
(
しなじん
)
としては
豪
(
えら
)
い
男
(
をとこ
)
だ、
181
コソコソと
画策
(
くわくさく
)
を
廻
(
めぐ
)
らすのも
中々
(
なかなか
)
上手
(
じやうず
)
だ。
182
そして
自分
(
じぶん
)
は
肝心
(
かんじん
)
の
金
(
かね
)
を
出
(
だ
)
さず、
183
人
(
ひと
)
に
苦労
(
くらう
)
さして
自分
(
じぶん
)
がそつと
甘
(
あま
)
い
汁
(
しる
)
を
吸
(
す
)
はふといふのだから
堪
(
たま
)
らぬ。
184
併
(
しか
)
し
資本
(
しほん
)
なしの
商売
(
しやうばい
)
は
結局
(
けつきよく
)
駄目
(
だめ
)
に
了
(
をは
)
るだらう。
185
利
(
り
)
は
元
(
もと
)
にありだ。
186
資本主
(
しほんぬし
)
が
最後
(
さいご
)
の
勝利
(
しようり
)
だ。
187
盧
(
ろ
)
氏
(
し
)
果
(
はた
)
して
永遠
(
えいゑん
)
に
張
(
ちやう
)
の
頤使
(
いし
)
に
甘
(
あま
)
んずるで
在
(
あ
)
らうか、
188
直奉間
(
ちよくほうかん
)
の
引掛合
(
ひきかけあひ
)
も
久
(
ひさ
)
しいものだが、
189
何
(
いづ
)
れ
遠
(
とほ
)
からぬ
中
(
うち
)
に
何
(
なん
)
とか
一幕
(
ひとまく
)
の
芝居
(
しばゐ
)
が
打
(
う
)
たれるだらう
190
云々
(
うんぬん
)
』
191
(
大正一四、八
、筆録)
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(B)
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