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霊界物語
山河草木(第61~72巻、入蒙記)
特別編 入蒙記
第1篇 日本より奉天まで
第1章 水火訓
第2章 神示の経綸
第3章 金剛心
第4章 微燈の影
第5章 心の奥
第6章 出征の辞
第7章 奉天の夕
第2篇 奉天より洮南へ
第8章 聖雄と英雄
第9章 司令公館
第10章 奉天出発
第11章 安宅の関
第12章 焦頭爛額
第13章 洮南旅館
第14章 洮南の雲
第3篇 洮南より索倫へ
第15章 公爺府入
第16章 蒙古の人情
第17章 明暗交々
第18章 蒙古気質
第19章 仮司令部
第20章 春軍完備
第21章 索倫本営
第4篇 神軍躍動
第22章 木局収ケ原
第23章 下木局子
第24章 木局の月
第25章 風雨叱咤
第26章 天の安河
第27章 奉天の渦
第28章 行軍開始
第29章 端午の日
第30章 岩窟の奇兆
第5篇 雨後月明
第31章 強行軍
第32章 弾丸雨飛
第33章 武装解除
第34章 竜口の難
第35章 黄泉帰
第36章 天の岩戸
第37章 大本天恩郷
第38章 世界宗教聯合会
第39章 入蒙拾遺
附 入蒙余録
大本の経綸と満蒙
世界経綸の第一歩
蒙古建国
蒙古の夢
神示の世界経綸
余白歌
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山河草木(第61~72巻、入蒙記)
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特別編 入蒙記
> 第4篇 神軍躍動 > 第23章 下木局子
<<< 木局収ケ原
(B)
(N)
木局の月 >>>
第二三章
下
(
しも
)
木局子
(
ムチヅ
)
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 特別篇 山河草木 入蒙記
篇:
第4篇 神軍躍動
よみ(新仮名遣い):
しんぐんやくどう
章:
第23章 下木局子
よみ(新仮名遣い):
しもむちず
通し章番号:
口述日:
1925(大正14)年08月
口述場所:
筆録者:
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1925(大正14)年2月14日
概要:
舞台:
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
五月六日、萩原敏明、井上兼吉が軍用品を数台の台車に満載してやってきた。萩原はこの日が初めての蒙古入りであった。その中には、日出雄の西王母の服や数珠や払子、宣伝使服などが入っていた。
五月十一日は、日出雄が出国以来満三ケ月になる。蒙古の現地の民が鶏を献上しに来たので、洗礼を施していると、公爺府の老印君らがやってきて、日出雄と盧占魁に挨拶に来た。そして、ともに進軍することを願ってやまなかった
五月十三日には仏爺ラマが、部下のラマ僧と兵士を従えて日出雄を来訪した。日出雄は真澄別に接見を任せて、ラマ教との提携を約束せしめた。
旅長の張彦三は兵士を引き連れて、上木局子に進軍した。これは日出雄の宿営地を調査するためであった。
同じ日に、洮南府の長栄号主任・三井寛之助および佐々木から、一千の官兵が馬賊討伐のために進軍中なので、日本人の索倫入りは困難である旨、連絡が来た。盧占魁の進言により、上木局子へと進出することとなった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
2024/1/23出口王仁三郎全集第6巻を底本として校正。
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2024-01-23 03:04:55
OBC :
rmnm23
愛善世界社版:
209頁
八幡書店版:
第14輯 624頁
修補版:
校定版:
211頁
普及版:
初版:
ページ備考:
001
五
(
ご
)
月
(
ぐわつ
)
六日
(
むいか
)
(
旧
(
きう
)
四
(
し
)
月
(
ぐわつ
)
三日
(
みつか
)
)
日出雄
(
ひでを
)
は
朝
(
あさ
)
から
晩
(
ばん
)
まで
達頼
(
タアライ
)
喇嘛
(
ラマ
)
の
法服
(
ほふふく
)
をつけて
悍馬
(
かんば
)
に
跨
(
またが
)
り、
002
大原野
(
だいげんや
)
を
馳駆
(
ちく
)
した
結果
(
けつくわ
)
にや、
003
腰
(
こし
)
を
痛
(
いた
)
め、
004
午前中
(
ごぜんちう
)
は
臥床
(
ぐわしやう
)
してゐたが、
005
俄
(
にはか
)
に
便通
(
べんつう
)
を
催
(
もよほ
)
し、
006
パサパーナの
為
(
た
)
めに
陣営
(
ぢんえい
)
の
北方
(
ほくほう
)
なる
枯草
(
かれくさ
)
の
野
(
の
)
に
出
(
い
)
で『イリチーカ』(
驢馬
(
ろば
)
)の
交尾
(
かうび
)
する
様
(
さま
)
を
面白
(
おもしろ
)
く
笑
(
わら
)
ひ
乍
(
なが
)
ら
打眺
(
うちなが
)
め、
007
其
(
その
)
オチコの
大
(
だい
)
なること、
008
馬
(
うま
)
の
如
(
ごと
)
くなるに
呆
(
あき
)
れ、
009
従卒
(
じうそつ
)
と
共
(
とも
)
に
広野
(
くわうや
)
に
横臥
(
わうぐわ
)
し、
0091
大笑
(
おほわら
)
ひをしてゐると、
010
そこへ
萩原
(
はぎはら
)
敏明
(
としあき
)
、
011
井上
(
ゐのうへ
)
兼吉
(
かねきち
)
の
二
(
に
)
名
(
めい
)
が
軍用品
(
ぐんようひん
)
を
数台
(
すうだい
)
の
大車
(
だいしや
)
に
満載
(
まんさい
)
し、
012
悍馬
(
かんば
)
に
鞭
(
むちう
)
ち
驀地
(
まつしぐら
)
に
走
(
はし
)
つて
来
(
き
)
た。
013
萩原
(
はぎはら
)
が
蒙古入
(
もうこいり
)
をしたのは
此
(
この
)
日
(
ひ
)
が
初
(
はじ
)
めてである。
014
萩原
(
はぎはら
)
は
洮南
(
たうなん
)
より
索倫
(
ソーロン
)
に
来
(
きた
)
る
途中
(
とちう
)
、
015
三回
(
さんくわい
)
も
落馬
(
らくば
)
した
失敗談
(
しつぱいだん
)
を
繰返
(
くりかへ
)
して
語
(
かた
)
つた。
016
そこへ
三
(
さん
)
名
(
めい
)
の
騎兵
(
きへい
)
に
追
(
お
)
はれて
017
上
(
かみ
)
木局子
(
もくきよくし
)
方面
(
はうめん
)
から
数百
(
すうひやく
)
頭
(
とう
)
の
荒馬
(
あらうま
)
が
司令部
(
しれいぶ
)
へ
着
(
つ
)
いた。
018
之
(
これ
)
は
馬
(
うま
)
の
操縦
(
さうじう
)
に
妙
(
めう
)
を
得
(
え
)
たる
蒙古人
(
もうこじん
)
であつて、
019
其
(
その
)
後
(
あと
)
から
十数
(
じふすう
)
名
(
めい
)
の
騎兵
(
きへい
)
が
之
(
これ
)
を
守
(
まも
)
りつつ
進
(
すす
)
んで
来
(
き
)
た。
020
萩原
(
はぎはら
)
、
021
井上
(
ゐのうへ
)
の
送
(
おく
)
つて
来
(
き
)
た
軍需品
(
ぐんじゆひん
)
の
中
(
なか
)
には
西王母
(
せいわうぼ
)
の
服
(
ふく
)
や、
022
珠数
(
じゆづ
)
[
*
「珠数」は底本(全集)通り。一般には「数珠」と書くが「珠数」でも間違いではない。
]
、
023
払子
(
ほつす
)
、
024
宣伝使
(
せんでんし
)
服
(
ふく
)
等
(
とう
)
、
025
日出雄
(
ひでを
)
の
必要品
(
ひつえうひん
)
が
這入
(
はい
)
つて
居
(
ゐ
)
た。
026
萩原
(
はぎはら
)
はその
翌日
(
よくじつ
)
から
公爺府
(
コンエフ
)
以西
(
いせい
)
で
撮影
(
さつえい
)
した
写真
(
しやしん
)
の
現像
(
げんぞう
)
を
始
(
はじ
)
めた。
027
夜
(
よ
)
に
入
(
い
)
つて
日出雄
(
ひでを
)
は
真澄別
(
ますみわけ
)
と
共
(
とも
)
に
四五
(
しご
)
の
護衛兵
(
ごゑいへい
)
を
引連
(
ひきつ
)
れ、
028
衛門
(
ゐいもん
)
を
出
(
で
)
て
空
(
そら
)
を
眺
(
なが
)
めてゐると、
029
忽然
(
こつぜん
)
として
西北
(
せいほく
)
の
空
(
そら
)
に
大彗星
(
だいすゐせい
)
が
出現
(
しゆつげん
)
した。
030
不思議
(
ふしぎ
)
にも
此
(
この
)
彗星
(
すゐせい
)
は
三四十
(
さんしじつ
)
分
(
ぷん
)
の
間
(
あひだ
)
に
跡
(
あと
)
もなく
消
(
き
)
えて
了
(
しま
)
つた。
031
護衛長
(
ごゑいちやう
)
の
馮
(
ひやう
)
巨臣
(
きよしん
)
は
此
(
この
)
現象
(
げんしやう
)
を
見
(
み
)
て、
032
『
屹度
(
きつと
)
明日
(
みやうにち
)
は
大暴風
(
だいばうふう
)
が
起
(
おこ
)
ります。
033
あの
彗星
(
すゐせい
)
が
出
(
で
)
ますと
昔
(
むかし
)
から
蒙古
(
もうこ
)
では
大暴風
(
だいばうふう
)
があるのです。
034
さうして
此
(
この
)
彗星
(
すゐせい
)
は
御覧
(
ごらん
)
の
如
(
ごと
)
く
低空
(
ていくう
)
に
懸
(
かか
)
つて
居
(
を
)
ります。
035
それ
故
(
ゆゑ
)
支那
(
しな
)
や
朝鮮
(
てうせん
)
からは
仰
(
あふ
)
ぎ
見
(
み
)
ることは
出来
(
でき
)
ませぬ
云々
(
うんぬん
)
』と
説明
(
せつめい
)
した。
036
軍
(
ぐん
)
司令部
(
しれいぶ
)
の
編成
(
へんせい
)
が
成
(
な
)
つたので
日出雄
(
ひでを
)
は
暫
(
しばら
)
く
小閑
(
せうかん
)
を
得
(
え
)
、
037
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
、
038
何
(
か
)
全孝
(
ぜんかう
)
、
039
温
(
をん
)
長興
(
ちやうこう
)
、
040
真澄別
(
ますみわけ
)
其
(
その
)
他
(
た
)
十数
(
じふすう
)
名
(
めい
)
の
衛兵
(
ゑいへい
)
を
伴
(
ともな
)
ひ、
041
北方
(
ほくほう
)
の
丘陵
(
きうりよう
)
に
上
(
のぼ
)
り、
042
地図
(
ちづ
)
を
披
(
ひら
)
いて
地形
(
ちけい
)
を
調
(
しら
)
べてゐた。
043
日出雄
(
ひでを
)
と
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
は
山下
(
やました
)
の
原野
(
げんや
)
に
数多
(
あまた
)
の
兵士
(
へいし
)
が
調練
(
てうれん
)
をやつてゐるのを
望遠鏡
(
ばうゑんきやう
)
を
以
(
もつ
)
て
瞰下
(
かんか
)
してゐたが、
044
忽
(
たちま
)
ち
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
は『ブウブウブウブウ』と
七八
(
しちはち
)
弾
(
だん
)
連発
(
れんぱつ
)
的
(
てき
)
に
放屁
(
はうひ
)
をなし、
045
ニツコリともせず
真面目
(
まじめ
)
な
顔
(
かほ
)
してゐる、
046
日出雄
(
ひでを
)
も
負
(
ま
)
けぬ
気
(
き
)
になり、
047
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
の
前
(
まへ
)
に
立
(
た
)
つて
八九
(
はちきう
)
発
(
はつ
)
機関銃
(
きくわんじう
)
のやうに
連発
(
れんぱつ
)
したが、
048
それでも
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
はニコリともせず、
049
素知
(
そし
)
らぬ
顔
(
かほ
)
をしてゐる。
050
蒙古人
(
もうこじん
)
は
人
(
ひと
)
の
前
(
まへ
)
で
屁
(
へ
)
を
放
(
ひ
)
ることは
何
(
なん
)
とも
思
(
おも
)
つてゐない。
051
又
(
また
)
人
(
ひと
)
が
屁
(
へ
)
を
放
(
はな
)
つても
意
(
い
)
に
介
(
かい
)
せず、
052
日本人
(
につぽんじん
)
のやうに
可笑
(
をか
)
しがつて
笑
(
わら
)
ふと
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
はない。
053
屁
(
へ
)
は
出物
(
でもの
)
、
054
腫物
(
はれもの
)
、
055
処
(
ところ
)
嫌
(
きら
)
はずだ。
056
三宝
(
さんぽう
)
さんが
欠伸
(
あくび
)
した
位
(
くらゐ
)
に
感
(
かん
)
じてゐると
云
(
い
)
ふ
事
(
こと
)
だ。
057
之
(
これ
)
に
反
(
はん
)
して
人
(
ひと
)
の
前
(
まへ
)
で
欠伸
(
あくび
)
をすることは
大変
(
たいへん
)
な
失礼
(
しつれい
)
になり、
058
侮辱
(
ぶぢよく
)
したと
云
(
い
)
つて
怒
(
いか
)
ると
云
(
い
)
ふ。
059
処
(
ところ
)
変
(
かは
)
れば
品
(
しな
)
変
(
かは
)
るとは、
060
よく
云
(
い
)
つたものである。
061
一同
(
いちどう
)
は
山
(
やま
)
を
下
(
くだ
)
つて
或
(
ある
)
民家
(
みんか
)
に
立寄
(
たちよ
)
ると
沢山
(
たくさん
)
の
鶏
(
とり
)
が
飼
(
か
)
つてあつた、
062
今
(
いま
)
生
(
う
)
んだ
計
(
ばか
)
りの
皮
(
かは
)
の
柔
(
やはらか
)
い
鶏卵
(
けいらん
)
が
二
(
ふた
)
つ
三
(
みつ
)
つあつた。
063
それを
其
(
その
)
家
(
いへ
)
の
主人
(
しゆじん
)
が
直
(
す
)
ぐに
手
(
て
)
に
載
(
の
)
せて
日出雄
(
ひでを
)
の
前
(
まへ
)
に
跪
(
ひざまづ
)
き、
064
イオエミトポロハナ、
065
テーハウントコ、
066
シヤルトゲア(
大活仏
(
だいくわつぶつ
)
、
067
鶏卵
(
けいらん
)
献上
(
けんじやう
)
)と
云
(
い
)
つて
日出雄
(
ひでを
)
に
与
(
あた
)
へた。
068
日出雄
(
ひでを
)
は
喜
(
よろこ
)
んで
真澄別
(
ますみわけ
)
と
共
(
とも
)
に
一個
(
いつこ
)
づつ
其
(
その
)
場
(
ば
)
で
吸
(
す
)
うた。
069
これより
沢山
(
たくさん
)
の
兵士
(
へいし
)
は
鶏
(
とり
)
の
卵
(
たまご
)
の
生
(
う
)
みたてがあれば、
070
騎馬
(
きば
)
に
跨
(
またが
)
り
五六
(
ごろく
)
支里
(
しり
)
の
処
(
ところ
)
も
遠
(
とほ
)
しとせず、
071
日出雄
(
ひでを
)
が
好
(
す
)
きだと
云
(
い
)
ふので
持
(
も
)
つて
来
(
く
)
るやうになつた。
072
夜
(
よ
)
になると『カツコーカツコー』と
云
(
い
)
ふて
彼方
(
あち
)
此方
(
こち
)
からの
山林
(
さんりん
)
から
妙
(
めう
)
な
声
(
こゑ
)
が
聞
(
きこ
)
えて
来
(
く
)
る。
073
此
(
この
)
鳥
(
とり
)
が
鳴
(
な
)
き
出
(
だ
)
すと
蒙古人
(
もうこじん
)
は
粟
(
あは
)
や
高粱
(
かうりやう
)
の
種
(
たね
)
を
蒔
(
ま
)
き
初
(
はじ
)
めるのである。
074
昼
(
ひる
)
は
真澄別
(
ますみわけ
)
が
日出雄
(
ひでを
)
の
認
(
したた
)
めておいた
日記
(
につき
)
や
支那字
(
しなじ
)
で
作
(
つく
)
つた
小説
(
せうせつ
)
等
(
とう
)
を
読
(
よ
)
んで
日出雄
(
ひでを
)
の
無聊
(
ぶれう
)
を
慰
(
なぐさ
)
め、
075
守高
(
もりたか
)
、
076
坂本
(
さかもと
)
は
日出雄
(
ひでを
)
の
手足
(
てあし
)
を
揉
(
も
)
んだり、
077
日出雄
(
ひでを
)
の
日記
(
につき
)
を
浄写
(
じやうしや
)
したりしてゐた。
078
名田彦
(
なだひこ
)
は
公爺府
(
コンエフ
)
以来
(
いらい
)
、
079
日出雄
(
ひでを
)
の
頭髪
(
とうはつ
)
を
揃
(
そろ
)
へたり、
080
顔
(
かほ
)
を
剃
(
そ
)
つたり、
081
洮児
(
トール
)
河
(
がは
)
で
捕獲
(
ほくわく
)
して
兵士
(
へいし
)
が
送
(
おく
)
つて
来
(
き
)
た『トーラボー』と
云
(
い
)
ふ
魚
(
うを
)
を
料理
(
れうり
)
し
日出雄
(
ひでを
)
一行
(
いつかう
)
に
勧
(
すす
)
めて
居
(
ゐ
)
た。
082
蒙古兵
(
もうこへい
)
、
083
支那兵
(
しなへい
)
は
昼夜
(
ちうや
)
間断
(
かんだん
)
なく、
084
交
(
かは
)
る
代
(
がは
)
る、
085
日出雄
(
ひでを
)
が
住宅
(
ぢゆうたく
)
の
入口
(
いりぐち
)
に
二
(
に
)
名
(
めい
)
づつ
立
(
た
)
つて
護衛
(
ごゑい
)
してゐた。
086
時々
(
ときどき
)
角砂糖
(
かくざたう
)
や
飴
(
あめ
)
を
日出雄
(
ひでを
)
の
手
(
て
)
から
貰
(
もら
)
つて
子供
(
こども
)
の
如
(
ごと
)
くに
喜
(
よろこ
)
んでゐる。
087
日出雄
(
ひでを
)
は
沢山
(
たくさん
)
な
腕時計
(
うでどけい
)
を
奉天
(
ほうてん
)
より
送
(
おく
)
らせ
088
護衛兵
(
ごゑいへい
)
一般
(
いつぱん
)
に
一個
(
いつこ
)
づつ
与
(
あた
)
へ、
089
支那製
(
しなせい
)
の
巻煙草
(
まきたばこ
)
二十本
(
にじつぽん
)
入
(
い
)
りを
一人
(
ひとり
)
に
二個
(
にこ
)
づつ
日々
(
ひび
)
に
与
(
あた
)
へてゐた。
090
さうして
食料
(
しよくれう
)
は
支那米
(
しなまい
)
や
其
(
その
)
外
(
ほか
)
昆布
(
こんぶ
)
、
091
和布
(
わかめ
)
、
092
いろいろの
缶詰
(
かんづめ
)
、
093
鯣
(
するめ
)
等
(
とう
)
を
沢山
(
たくさん
)
に
持
(
も
)
つてゐたので、
094
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
の
司令部
(
しれいぶ
)
に
居
(
を
)
つて、
0941
不味
(
まづ
)
い
高粱
(
かうりやう
)
の
粥
(
かゆ
)
を
食
(
く
)
はされてゐるのに
比
(
ひ
)
し、
095
非常
(
ひじやう
)
に
結構
(
けつこう
)
だと
云
(
い
)
ふので
日出雄
(
ひでを
)
の
護衛
(
ごゑい
)
にならむ
事
(
こと
)
を
希望
(
きばう
)
する
者
(
もの
)
、
096
日々
(
ひび
)
に
殖
(
ふ
)
えて
来
(
き
)
て、
097
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
も
大
(
おほ
)
いに
閉口
(
へいこう
)
したと
云
(
い
)
ふ。
098
そして
日出雄
(
ひでを
)
の
希望
(
きばう
)
に
依
(
よ
)
つて
白馬
(
はくば
)
のみを
集
(
あつ
)
め、
099
護衛兵
(
ごゑいへい
)
全部
(
ぜんぶ
)
は
白馬隊
(
はくばたい
)
の
如
(
ごと
)
き
感
(
かん
)
があつた。
100
五
(
ご
)
月
(
ぐわつ
)
十一
(
じふいち
)
日
(
にち
)
(
旧
(
きう
)
四
(
し
)
月
(
ぐわつ
)
八日
(
やうか
)
)は
日出雄
(
ひでを
)
が
出国
(
しゆつこく
)
以来
(
いらい
)
、
101
満
(
まん
)
三
(
さん
)
ケ
月
(
げつ
)
に
当
(
あた
)
る
吉日
(
きちにち
)
である。
102
日出雄
(
ひでを
)
の
元気
(
げんき
)
は
最
(
もつと
)
も
旺盛
(
わうせい
)
にして
103
朝
(
あさ
)
早
(
はや
)
くから
原野
(
げんや
)
に
出
(
い
)
で、
104
乗馬
(
じやうば
)
姿
(
すがた
)
の
写真
(
しやしん
)
を
撮影
(
さつえい
)
したり、
105
又
(
また
)
は
野
(
の
)
に
火
(
ひ
)
を
放
(
はな
)
つて
興
(
きよう
)
に
入
(
い
)
つたり、
106
コルギーホワラ、
107
チチクの
咲
(
さ
)
き
誇
(
ほこ
)
つた
花
(
はな
)
の
野
(
の
)
に
寝転
(
ねころ
)
んだり、
108
兎
(
うさぎ
)
を
追
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
したり、
109
太陽
(
たいやう
)
の
傾
(
かたむ
)
く
頃
(
ころ
)
まで
遊
(
あそ
)
んで
帰
(
かへ
)
つて
来
(
く
)
ると、
110
蒙古
(
もうこ
)
の
土人
(
どじん
)
が
鶏
(
にはとり
)
を
四五
(
しご
)
羽
(
は
)
持
(
も
)
つて
日出雄
(
ひでを
)
に
面会
(
めんくわい
)
を
求
(
もと
)
めて
来
(
き
)
た。
111
日出雄
(
ひでを
)
は
鶏
(
にはとり
)
を
贈
(
おく
)
られた
厚意
(
かうい
)
を
謝
(
しや
)
し、
112
蒙古人
(
もうこじん
)
の
額
(
ひたひ
)
に
手
(
て
)
を
軽
(
かる
)
くあて、
113
洗礼
(
せんれい
)
を
施
(
ほどこ
)
してゐると、
114
そこへ
公爺府
(
コンエフ
)
の
協理
(
けふり
)
や
主事
(
しゆじ
)
が
二十
(
にじふ
)
人
(
にん
)
の
騎兵
(
きへい
)
を
引率
(
いんそつ
)
し、
115
日出雄
(
ひでを
)
及
(
および
)
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
に
挨拶
(
あいさつ
)
の
為
(
た
)
めに
訪
(
たづ
)
ねて
来
(
き
)
た。
116
さうして
老
(
らう
)
印君
(
いんくん
)
等
(
ら
)
は
何処
(
どこ
)
までも
盧
(
ろ
)
に
従軍
(
じうぐん
)
せむ
事
(
こと
)
を
願
(
ねが
)
つて
已
(
や
)
まなかつた。
117
日出雄
(
ひでを
)
は
此処
(
ここ
)
でも
沢山
(
たくさん
)
の
歌
(
うた
)
を
詠
(
よ
)
んだ。
118
其
(
その
)
一部
(
いちぶ
)
を
左
(
さ
)
に
紹介
(
せうかい
)
する。
119
駒
(
こま
)
並
(
な
)
めて
木局
(
ムチ
)
の
荒野
(
あれの
)
を
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く
我
(
わが
)
軍卒
(
ぐんそつ
)
の
姿
(
すがた
)
雄々
(
をを
)
しき
120
シヤカンメラ(
白馬
(
はくば
)
)
轡
(
くつわ
)
並
(
なら
)
べて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
けば
神代
(
かみよ
)
に
住
(
す
)
める
人
(
ひと
)
の
心地
(
ここち
)
す
121
村肝
(
むらぎも
)
の
心
(
こころ
)
もみつつ
我
(
わが
)
軍師
(
ぐんし
)
洮南
(
たうなん
)
あたり
進
(
すす
)
むなるらむ
122
官兵
(
くわんぺい
)
の
出馬
(
しゆつば
)
と
聞
(
き
)
いて
我
(
わが
)
同志
(
どうし
)
索倫
(
ソーロン
)
入
(
い
)
りに
悩
(
なや
)
むなるらむ
123
数千
(
すうせん
)
里
(
り
)
山河
(
さんが
)
隔
(
へだ
)
てて
我
(
われ
)
は
今
(
いま
)
木局子
(
ムチズ
)
の
野辺
(
のべ
)
に
駒
(
こま
)
に
鞭
(
むち
)
うつ
[
*
「駒並めて」以降、「我」が4つ出るがいずれも底本(全集)通り。校定版や愛善世界社版では「吾」に修正されている。
]
124
バカホンナお
留守
(
るす
)
にお
山
(
やま
)
の
大将
(
たいしやう
)
を
気取
(
きど
)
りて
神
(
かみ
)
を
汚
(
けが
)
す
枉
(
まが
)
あり
125
新緑
(
しんりよく
)
の
絹
(
きぬ
)
をまとひて
今頃
(
いまごろ
)
は
日本
(
につぽん
)
の
山野
(
さんや
)
栄
(
さか
)
えぬるらむ
126
はや
初夏
(
しよか
)
の
頃
(
ころ
)
とはなれど
蒙古地
(
もうこぢ
)
は
春
(
はる
)
の
初
(
はじ
)
めの
姿
(
すがた
)
なりけり
127
雲
(
くも
)
の
窓
(
まど
)
明
(
あ
)
けて
覗
(
のぞ
)
きし
月影
(
つきかげ
)
は
一入
(
ひとしほ
)
清
(
きよ
)
く
神軍
(
いくさ
)
を
照
(
て
)
らす
128
バラガーサ、ホントルモトの
茂
(
しげ
)
りたる
林
(
はやし
)
に
駒
(
こま
)
を
鞭
(
むちう
)
ち
遊
(
あそ
)
ぶ
129
雪
(
ゆき
)
解
(
と
)
けて
川水
(
かはみず
)
日々
(
ひび
)
に
増
(
ま
)
し
行
(
ゆ
)
けば
少時
(
しばし
)
木局子
(
ムチズ
)
に
駒
(
こま
)
を
駐
(
とど
)
むる
130
枯山
(
かれやま
)
は
日々
(
ひび
)
に
青
(
あを
)
みて
水
(
みづ
)
ぬるみオブスレブチもホラに
茂
(
しげ
)
り
行
(
ゆ
)
く
131
○
132
五
(
ご
)
月
(
ぐわつ
)
十三
(
じふさん
)
日
(
にち
)
仏爺喇嘛
(
フエラマ
)
部下
(
ぶか
)
の
喇嘛僧
(
ラマそう
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
と
兵士
(
へいし
)
数名
(
すうめい
)
を
従
(
したが
)
へ、
133
司令部
(
しれいぶ
)
に
日出雄
(
ひでを
)
を
来訪
(
らいほう
)
したので、
134
日出雄
(
ひでを
)
は
真澄別
(
ますみわけ
)
をして
接見
(
せつけん
)
せしめ、
135
喇嘛教
(
ラマけう
)
との
提携
(
ていけい
)
を
約
(
やく
)
さしめた。
136
旅長
(
りよちやう
)
張
(
ちやう
)
彦三
(
けんさん
)
は
数多
(
あまた
)
の
兵
(
へい
)
を
率
(
ひき
)
ゐて
上
(
かみ
)
木局子
(
もくきよくし
)
に
進軍
(
しんぐん
)
した。
137
之
(
これ
)
は
日出雄
(
ひでを
)
の
宿営地
(
しゆくえいち
)
を
調査
(
てうさ
)
せむが
為
(
ため
)
であつた。
138
蒙古
(
もうこ
)
には
仏爺喇嘛
(
フエラマ
)
即
(
すなは
)
ち
活仏
(
くわつぶつ
)
と
称
(
しよう
)
するもの
約
(
やく
)
一千
(
いつせん
)
人
(
にん
)
ありと
云
(
い
)
ふ。
139
同日
(
どうじつ
)
洮南
(
たうなん
)
府
(
ふ
)
長栄号
(
ちやうえいがう
)
主任
(
しゆにん
)
三井
(
みつゐ
)
寛之助
(
くわんのすけ
)
及
(
および
)
佐々木
(
ささき
)
より、
140
一千
(
いつせん
)
の
官兵
(
くわんぺい
)
、
141
馬賊
(
ばぞく
)
討伐
(
たうばつ
)
のため
進軍中
(
しんぐんちう
)
なれば
日本人
(
につぽんじん
)
の
索倫入
(
ソーロンいり
)
は
大困難
(
だいこんなん
)
なりと
報
(
はう
)
じ
来
(
きた
)
る。
142
盧
(
ろ
)
占魁
(
せんくわい
)
の
進言
(
しんげん
)
に
依
(
よ
)
り
日出雄
(
ひでを
)
は
上
(
かみ
)
木局子
(
もくきよくし
)
へ
進出
(
しんしゆつ
)
する
事
(
こと
)
に
決定
(
けつてい
)
した。
143
此
(
この
)
時
(
とき
)
王
(
わう
)
元祺
(
げんき
)
は
左
(
さ
)
の
詩
(
し
)
を
作
(
つく
)
つて
日出雄
(
ひでを
)
を
讃歎
(
さんたん
)
した。
144
救世至尊
[
*
底本(全集)では「至尊」は欠けており「救世」しか書いていなが、校定版や愛善世界社版では「救世至尊」になっている。『王仁蒙古入記』261頁では「救主至尊」になっている。
]
145
弥勒為心
146
無分貴賤
147
一視同仁
148
(
大正一四、八
、筆録)
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