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霊界物語
霊主体従(第1~12巻)
第10巻(酉の巻)
序歌
凡例
総説歌
信天翁(一)
第1篇 千軍万馬
第1章 常世城門
第2章 天地暗澹
第3章 赤玉出現
第4章 鬼鼻団子
第5章 狐々怪々
第6章 額の裏
第7章 思はぬ光栄
第8章 善悪不可解
第9章 尻藍
第10章 注目国
第11章 狐火
第12章 山上瞰下
第13章 蟹の将軍
第14章 松風の音
第15章 言霊別
第16章 固門開
第17章 乱れ髪
第18章 常世馬場
第19章 替玉
第20章 還軍
第21章 桃の実
第22章 混々怪々
第23章 神の慈愛
第24章 言向和
第25章 木花開
第26章 貴の御児
第2篇 禊身の段
第27章 言霊解一
第28章 言霊解二
第29章 言霊解三
第30章 言霊解四
第31章 言霊解五
第3篇 邪神征服
第32章 土竜
第33章 鰤公
第34章 唐櫃
第35章 アルタイ窟
第36章 意想外
第37章 祝宴
附録 第三回高熊山参拝紀行歌(三)
余白歌
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>
霊主体従(第1~12巻)
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第10巻(酉の巻)
> 第1篇 千軍万馬 > 第4章 鬼鼻団子
<<< 赤玉出現
(B)
(N)
狐々怪々 >>>
第四章
鬼鼻
(
きび
)
団子
(
だんご
)
〔四三四〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第10巻 霊主体従 酉の巻
篇:
第1篇 千軍万馬
よみ(新仮名遣い):
せんぐんばんば
章:
第4章 鬼鼻団子
よみ(新仮名遣い):
きびだんご
通し章番号:
434
口述日:
1922(大正11)年02月19日(旧01月23日)
口述場所:
筆録者:
河津雄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年8月20日
概要:
舞台:
常世城
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
松、竹、梅の三姉妹は、常世神王(広国別による影武者)の覚えめでたく、側近く仕えることになった。竹山彦も昇格し、鷹取別と同列の大臣扱いとなった。
松代姫は、ロッキー山に現れた伊弉冊命様を慕って常世国へ宣伝にやってきた、と言うと、常世神王は、伊弉冊命はロッキー山でウラル教を開いたのだ、としたり顔に偽りを言う。
そこへ、ロッキー山の使いとして、美山別と国玉姫がやってきた、という報せが届いた。常世神王は、鷹取別に神使と面会するよう命じると、自分は三姉妹を従えて寝殿に下がって休んだ。
鷹取別、竹山彦、遠山別の三人は神使に面会したが、ロッキー山の伊弉冊命の命令は、松・竹・梅の三姉妹をロッキー山に差し出せ、というものであった。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
[×閉じる]
:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-07-15 18:16:04
OBC :
rm1004
愛善世界社版:
32頁
八幡書店版:
第2輯 401頁
修補版:
校定版:
35頁
普及版:
14頁
初版:
ページ備考:
001
皮膚
(
ひふ
)
滑
(
なめら
)
かにして
雪
(
ゆき
)
の
如
(
ごと
)
く、
002
肌
(
はだ
)
柔
(
やはら
)
かにして
真綿
(
まわた
)
の
如
(
ごと
)
く、
003
眼
(
め
)
の
潤
(
うるほ
)
ひ
露
(
つゆ
)
の
滴
(
したた
)
る
如
(
ごと
)
く、
004
優
(
やさ
)
しみの
中
(
なか
)
に
何処
(
どこ
)
となく
威厳
(
ゐげん
)
の
備
(
そな
)
はる
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
娘
(
むすめ
)
、
005
天津
(
あまつ
)
乙女
(
をとめ
)
の
再来
(
さいらい
)
か、
006
さては
弥生
(
やよひ
)
の
桜花
(
さくらばな
)
、
007
臥竜
(
ぐわりう
)
の
松
(
まつ
)
か
雪
(
ゆき
)
の
竹
(
たけ
)
、
008
鶯
(
うぐひす
)
歌
(
うた
)
ふ
梅ケ香
(
うめがか
)
の、
009
春
(
はる
)
の
衿
(
ほこり
)
を
姉妹
(
おとどい
)
の、
010
松
(
まつ
)
、
011
竹
(
たけ
)
、
012
梅
(
うめ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
013
四辺
(
あたり
)
眩
(
まばゆ
)
き
銀燭
(
ぎんしよく
)
の、
014
光
(
ひかり
)
に
照
(
て
)
りて
一入
(
ひとしほ
)
の、
015
その
麗
(
うるは
)
しさを
添
(
そ
)
へにける。
016
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
は
御
(
ご
)
機嫌斜
(
きげんななめ
)
ならず、
017
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
娘
(
むすめ
)
を
左右
(
さいう
)
に
座
(
すわ
)
らせ、
018
満面
(
まんめん
)
笑
(
ゑみ
)
を
湛
(
たた
)
へながら、
019
常世神王(広国別)
『
見
(
み
)
れば
見
(
み
)
る
程
(
ほど
)
優
(
やさ
)
しき
女
(
をんな
)
の
姉妹
(
きやうだい
)
連
(
づ
)
れ、
020
ウラル
教
(
けう
)
の
最
(
もつと
)
も
盛
(
さか
)
んなる
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
に、
021
三五教
(
あななひけう
)
を
宣伝
(
せんでん
)
せむと、
022
華々
(
はなばな
)
しく
進
(
すす
)
み
来
(
きた
)
るその
勇気
(
ゆうき
)
には
感
(
かん
)
じ
入
(
い
)
つたり。
023
さりながら、
024
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
はウラル
教
(
けう
)
の
教
(
をしへ
)
を
以
(
もつ
)
て
国是
(
こくぜ
)
となす。
025
万民
(
ばんみん
)
これに
悦服
(
えつぷく
)
し、
026
その
神徳
(
しんとく
)
を
讃美
(
さんび
)
渇仰
(
かつかう
)
す。
027
然
(
しか
)
るに、
028
主義
(
しゆぎ
)
精神
(
せいしん
)
全
(
まつた
)
く
相反
(
あひはん
)
せる
三五教
(
あななひけう
)
を
此
(
この
)
地
(
ち
)
に
布
(
し
)
くことあらむか、
029
忽
(
たちま
)
ち
民心
(
みんしん
)
離反
(
りはん
)
して、
030
挙国
(
きよこく
)
一致
(
いつち
)
の
精神
(
せいしん
)
を
破
(
やぶ
)
り、
031
天下
(
てんか
)
の
争乱
(
そうらん
)
を
惹起
(
じやくき
)
せむは、
032
火
(
ひ
)
を
睹
(
み
)
るよりも
明
(
あきら
)
かなれば、
033
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
は
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝
(
せんでん
)
を
厳禁
(
げんきん
)
せり。
034
然
(
しか
)
るに
繊弱
(
かよわ
)
き
女
(
をんな
)
の
身
(
み
)
を
以
(
もつ
)
て、
035
雄々
(
をを
)
しくも
我
(
わが
)
国
(
くに
)
に
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
歌
(
うた
)
ふは、
036
天下
(
てんか
)
擾乱
(
ぜうらん
)
の
基
(
もとゐ
)
を
開
(
ひら
)
く
大罪人
(
だいざいにん
)
なれば、
037
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
姉妹
(
きやうだい
)
を
厳刑
(
げんけい
)
に
処
(
しよ
)
すべきは、
038
法
(
ほふ
)
の
定
(
さだ
)
むる
処
(
ところ
)
、
039
さりながら
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
姉妹
(
きやうだい
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は、
040
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
が
危急
(
ききふ
)
を
救
(
すく
)
ひたる
其
(
その
)
功
(
こう
)
に
愛
(
め
)
で、
041
今迄
(
いままで
)
の
罪
(
つみ
)
を
赦
(
ゆる
)
し、
042
殿内
(
でんない
)
の
一切
(
いつさい
)
を
任
(
まか
)
せ、
043
わが
身辺
(
しんぺん
)
に
侍
(
じ
)
して、
044
家事
(
かじ
)
万端
(
ばんたん
)
の
業務
(
げふむ
)
に
尽
(
つく
)
さしめむ』
045
と
厳命
(
げんめい
)
するにぞ、
046
松代姫
(
まつよひめ
)
は
莞爾
(
くわんじ
)
として、
047
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
に
向
(
むか
)
ひ、
048
羞
(
はづ
)
かしげに
花
(
はな
)
の
唇
(
くちびる
)
を
開
(
ひら
)
き、
049
松代姫
『
実
(
げ
)
に
有難
(
ありがた
)
き
御
(
おん
)
仰
(
あふ
)
せ、
050
世事
(
せじ
)
に
慣
(
な
)
れざる
不束者
(
ふつつかもの
)
の
妾
(
わらは
)
姉妹
(
きやうだい
)
を、
051
畏
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
くも
殿内
(
でんない
)
に
止
(
とど
)
めさせ
給
(
たま
)
ふは、
052
暗中
(
あんちう
)
に
光明
(
くわうみやう
)
を
得
(
え
)
、
053
盲亀
(
もうき
)
の
浮木
(
ふぼく
)
に
逢
(
あ
)
へるが
如
(
ごと
)
き
身
(
み
)
の
光栄
(
くわうえい
)
、
054
慎
(
つつし
)
んでお
受
(
う
)
け
致
(
いた
)
します』
055
と、
056
言葉
(
ことば
)
淀
(
よど
)
みなく
述
(
の
)
べ
立
(
た
)
てたり。
057
竹山彦
『ヤア、
058
松
(
まつ
)
、
059
竹
(
たけ
)
、
060
梅
(
うめ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
様
(
さま
)
、
061
貴女
(
あなた
)
方
(
がた
)
は
天地
(
てんち
)
赦
(
ゆる
)
すべからざる
大罪人
(
だいざいにん
)
なりしに、
062
今日
(
こんにち
)
只今
(
ただいま
)
よりは、
063
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
が
掌中
(
しやうちう
)
の
玉
(
たま
)
、
064
女御
(
によご
)
更衣
(
かうい
)
にも、
065
ずつと
優
(
すぐ
)
れたお
局様
(
つぼねさま
)
。
066
吾々
(
われわれ
)
は
今後
(
こんご
)
は
貴女
(
あなた
)
様
(
さま
)
の
御
(
ご
)
指揮
(
しき
)
を
仰
(
あふ
)
ぎ
奉
(
たてまつ
)
る。
067
何分
(
なにぶん
)
粗暴
(
そばう
)
極
(
きは
)
まる
竹山彦
(
たけやまひこ
)
、
068
御
(
ご
)
遠慮
(
ゑんりよ
)
なく
宜敷
(
よろし
)
く
御
(
お
)
叱
(
しか
)
り
下
(
くだ
)
さいませ』
069
と
敬意
(
けいい
)
を
表
(
へう
)
しける。
070
鷹取別
(
たかとりわけ
)
は
鼻
(
はな
)
をフガフガ
云
(
い
)
はせながら、
071
鷹取別
『ヤア、
072
目出度
(
めでた
)
いめでたい、
073
お
祝
(
いは
)
ひ
申
(
まを
)
す、
074
三
(
さん
)
人
(
にん
)
のお
局様
(
つぼねさま
)
、
075
如何
(
いか
)
に
出世
(
しゆつせ
)
をしたと
言
(
い
)
つて、
076
鼻
(
はな
)
を
高
(
たか
)
くしてはなりませぬぞ。
077
何
(
なん
)
と
言
(
い
)
つても、
078
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
の
宰相
(
さいしやう
)
は
此
(
こ
)
の
鷹取別
(
たかとりわけ
)
、
079
如何
(
いか
)
に
勢力
(
せいりよく
)
を
得
(
う
)
ればとて、
080
この
鷹取別
(
たかとりわけ
)
を
除外
(
ぢよぐわい
)
する
事
(
こと
)
はなりませぬ』
081
竹山彦
『アハヽヽヽヽ、
082
ヤア、
083
今迄
(
いままで
)
は
鷹取別
(
たかとりわけ
)
様
(
さま
)
の
家来
(
けらい
)
となつて
居
(
ゐ
)
た
竹山彦
(
たけやまひこ
)
、
084
今日
(
こんにち
)
より
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
のお
言葉
(
ことば
)
に
依
(
よ
)
りて、
085
直々
(
じきじき
)
の
家来
(
けらい
)
、
086
最早
(
もはや
)
貴下
(
あなた
)
の
臣下
(
しんか
)
では
御座
(
ござ
)
らぬ。
087
貴下
(
きか
)
は
吾々
(
われわれ
)
の
同僚
(
どうれう
)
と
心得
(
こころえ
)
られよ。
088
斯
(
か
)
く
申
(
まを
)
す
竹山彦
(
たけやまひこ
)
の
顔
(
かほ
)
の
真中
(
まんなか
)
なるこの
鼻
(
はな
)
は、
089
何時
(
いつ
)
とはなしに、
090
ムクムクと
高
(
たか
)
くなつた
心持
(
こころもち
)
が
致
(
いた
)
す。
091
それに
引替
(
ひきか
)
へ、
092
貴下
(
きか
)
は
火
(
ひ
)
の
玉
(
たま
)
に
鼻
(
はな
)
を
突
(
つ
)
かれ、
093
平素
(
ひごろ
)
の
鼻
(
はな
)
の
鷹取別
(
たかとりわけ
)
も、
094
お
気
(
き
)
の
毒
(
どく
)
千万
(
せんばん
)
、
095
柿
(
かき
)
の
へた
のやうに
潰挫
(
めしや
)
げて
終
(
しま
)
つて、
096
両方
(
りやうはう
)
の
頬辺
(
ほほべた
)
にひつ
附
(
つ
)
き
申
(
まを
)
した。
097
これからは
鼻
(
はな
)
の
低取別
(
ひくとりわけ
)
となつて、
098
今迄
(
いままで
)
の
傲慢
(
がうまん
)
不遜
(
ふそん
)
の
態度
(
たいど
)
を
改
(
あらた
)
められよ。
099
さてもさても
鼻持
(
はなもち
)
ならぬ
御
(
お
)
顔
(
かほ
)
だなア、
100
ワハヽヽヽヽ』
101
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
は
打解
(
うちと
)
け
顔
(
がほ
)
、
102
常世神王(広国別)
『
松代姫
(
まつよひめ
)
にお
尋
(
たづ
)
ね
申
(
まを
)
したき
事
(
こと
)
がござる。
103
貴女
(
あなた
)
方
(
がた
)
は
孱弱
(
かよわ
)
き
女
(
をんな
)
の
身
(
み
)
を
以
(
もつ
)
て、
104
この
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
に
宣伝
(
せんでん
)
すべく
御
(
お
)
出
(
い
)
でになつたのは、
105
何
(
なに
)
か
深
(
ふか
)
い
様子
(
やうす
)
が
御座
(
ござ
)
らう。
106
包
(
つつ
)
まず
隠
(
かく
)
さず
仰
(
あふ
)
せられたし。
107
斯
(
か
)
くなる
上
(
うへ
)
は、
108
何
(
なん
)
の
隔
(
へだ
)
てもなければ、
109
心
(
こころ
)
置
(
お
)
きなく
事実
(
じじつ
)
を
述
(
の
)
べられたし』
110
と
問
(
と
)
ひかくる。
111
松代姫
(
まつよひめ
)
は
言葉
(
ことば
)
も
軽々
(
かるがる
)
しく、
112
松代姫
『ハイ、
113
妾
(
わらは
)
姉妹
(
きやうだい
)
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
者
(
もの
)
、
114
艱難
(
かんなん
)
苦労
(
くらう
)
を
嘗
(
な
)
めて
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
に
参
(
まゐ
)
りしは、
115
余
(
よ
)
の
儀
(
ぎ
)
では
御座
(
ござ
)
いませぬ。
116
畏
(
おそ
)
れ
多
(
おほ
)
くも
三五教
(
あななひけう
)
の
守護神
(
まもりがみ
)
、
117
神
(
かむ
)
伊弉冊
(
いざなみの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
、
118
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
様
(
さま
)
、
119
ロッキー
山
(
ざん
)
に
現
(
あ
)
れますと
承
(
うけたま
)
はり、
120
お
跡
(
あと
)
慕
(
した
)
ひて
参
(
まゐ
)
りました。
121
郷
(
がう
)
に
入
(
い
)
つては
郷
(
がう
)
に
従
(
したが
)
へとかや、
122
妾
(
わらは
)
はこれより
三五教
(
あななひけう
)
を
棄
(
す
)
て、
123
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
の
奉
(
ほう
)
じ
給
(
たま
)
ふウラル
教
(
けう
)
に
帰依
(
きえ
)
いたします。
124
然
(
しか
)
しながら、
125
伊弉冊
(
いざなみの
)
命
(
みこと
)
様
(
さま
)
にも、
126
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
様
(
さま
)
にも、
127
矢張
(
やつぱ
)
り
三五教
(
あななひけう
)
をお
開
(
ひら
)
きで
御座
(
ござ
)
いませう』
128
遠山別
『イヤ、
129
伊弉冊
(
いざなみの
)
大神
(
おほかみ
)
、
130
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
は、
131
ロッキー
山
(
ざん
)
に
宮柱
(
みやはしら
)
太敷
(
ふとし
)
き
立
(
た
)
てウラル
教
(
けう
)
を
開
(
ひら
)
き
給
(
たま
)
ふぞ』
132
と、
133
したり
顔
(
がほ
)
に
述
(
の
)
べ
立
(
た
)
つる
遠山別
(
とほやまわけ
)
の
抗弁
(
かうべん
)
いと
怪
(
あや
)
し。
134
この
時
(
とき
)
門番
(
もんばん
)
の
蟹彦
(
かにひこ
)
は、
135
畏
(
おそ
)
る
畏
(
おそ
)
る
此
(
こ
)
の
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれ、
136
蟹彦
『
鷹取別
(
たかとりわけ
)
の
司
(
つかさ
)
に
申上
(
まをしあ
)
げます。
137
唯今
(
ただいま
)
ロッキー
山
(
ざん
)
より、
138
美山別
(
みやまわけの
)
命
(
みこと
)
、
139
国玉姫
(
くにたまひめ
)
と
共
(
とも
)
に、
140
御
(
ご
)
使者
(
ししや
)
として
御
(
ご
)
来城
(
らいじやう
)
、
141
別殿
(
べつでん
)
に
御
(
ご
)
休息
(
きうそく
)
せられあり。
142
如何
(
いかが
)
致
(
いた
)
しませうや』
143
常世神王(広国別)
『
吾
(
われ
)
は
是
(
これ
)
より
寝殿
(
しんでん
)
に
入
(
い
)
つて
休息
(
きうそく
)
せむ。
144
鷹取別
(
たかとりわけ
)
よ、
145
ロッキー
山
(
ざん
)
の
神使
(
しんし
)
の
御用
(
ごよう
)
の
趣
(
おもむき
)
、
146
しかと
承
(
うけたま
)
はり、
147
わが
前
(
まへ
)
に
報告
(
はうこく
)
せよ。
148
松
(
まつ
)
、
149
竹
(
たけ
)
、
150
梅
(
うめ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
局
(
つぼね
)
来
(
きた
)
れ』
151
と
云
(
い
)
ひつつ、
152
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
は
三女
(
さんぢよ
)
と
倶
(
とも
)
に
寝殿
(
しんでん
)
指
(
さ
)
して
悠々
(
いういう
)
と
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
153
鷹取別
(
たかとりわけ
)
は
蟹彦
(
かにひこ
)
に
向
(
むか
)
ひ、
154
鷹取別
『
汝
(
なんぢ
)
は
別殿
(
べつでん
)
に
於
(
おい
)
て、
155
美山別
(
みやまわけ
)
、
156
国玉姫
(
くにたまひめ
)
の
御
(
ご
)
上使
(
じやうし
)
に
向
(
むか
)
ひ、
157
速
(
すみや
)
かに
此
(
この
)
場
(
ば
)
に
御
(
ご
)
出場
(
しゆつぢやう
)
あらむ
事
(
こと
)
を
申伝
(
まをしつた
)
へよ』
158
蟹彦
『
委細
(
ゐさい
)
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
しました』
159
と
顔
(
かほ
)
を
上
(
あ
)
げる
途端
(
とたん
)
に、
160
鷹取別
(
たかとりわけ
)
の
顔
(
かほ
)
を
眺
(
なが
)
め、
161
蟹彦
『ヤア、
162
貴方
(
あなた
)
様
(
さま
)
、
163
その
鼻
(
はな
)
は
如何
(
どう
)
なさいました。
164
ハナ
ハナ
以
(
もつ
)
て
合点
(
がてん
)
の
行
(
ゆ
)
かぬ
御
(
おん
)
鼻
(
はな
)
、
165
一割
(
いちわり
)
高
(
たか
)
い
鷹取別
(
たかとりわけ
)
の
天狗鼻
(
てんぐ
ばな
)
も、
166
今
(
いま
)
は
殆
(
ほとん
)
ど
柿
(
かき
)
の
へた
同様
(
どうやう
)
でございますなア。
167
余
(
あま
)
り
慢心
(
まんしん
)
致
(
いた
)
して、
168
鼻
(
はな
)
ばかり
高
(
たか
)
う
致
(
いた
)
すと、
169
艮
(
うしとら
)
の
金神
(
こんじん
)
が
現
(
あら
)
はれて、
170
鼻
(
はな
)
を
捻折
(
ねじを
)
つて
潰挫
(
めしや
)
いで
終
(
しま
)
ふぞよと、
171
三五教
(
あななひけう
)
とやらの
教
(
をし
)
ふるとか
聞
(
き
)
きました。
172
真実
(
ほんと
)
に
貴方
(
あなた
)
の
鼻
(
はな
)
は、
173
へしやば
つて、
174
穴
(
あな
)
も
碌
(
ろく
)
に
見
(
み
)
えませぬ。
175
鼻
(
はな
)
の
穴
(
あな
)
ない
教
(
けう
)
ではございませぬか』
176
鷹取別
『
何
(
なに
)
馬鹿
(
ばか
)
申
(
まを
)
す、
177
速
(
すみや
)
かに
別殿
(
べつでん
)
に
報告
(
はうこく
)
致
(
いた
)
せ』
178
蟹彦
『これはこれは、
179
失礼
(
しつれい
)
致
(
いた
)
しました。
180
ハナ
ハナ
以
(
もつ
)
て
不都合
(
ふつがふ
)
千万
(
せんばん
)
、
181
平
(
ひら
)
た
蟹
(
がに
)
になつて
謝罪
(
あやま
)
ります。
182
何卒
(
どうぞ
)
カニ
して
下
(
くだ
)
さいませ』
183
と
蟹彦
(
かにひこ
)
は
馬鹿口
(
ばかぐち
)
を
叩
(
たた
)
きながら、
184
この
場
(
ば
)
を
立出
(
たちい
)
で
独言
(
ひとりごと
)
、
185
蟹彦
『
何
(
なん
)
だ、
186
折角
(
せつかく
)
美人
(
びじん
)
が
来
(
き
)
たから、
187
このお
使
(
つかひ
)
を
幸
(
さいはひ
)
に、
188
美
(
うつく
)
しいお
顔
(
かほ
)
を
拝
(
をが
)
みたいと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
たのに、
189
アタ
面白
(
おもしろ
)
うもない、
190
鷹取別
(
たかとりわけ
)
の
潰
(
つぶ
)
れ
面
(
づら
)
や、
191
照山彦
(
てるやまひこ
)
の
禿頭
(
はげあたま
)
を
見
(
み
)
せつけられて、
192
エエ
胸糞
(
むねくそ
)
の
悪
(
わる
)
い
事
(
こと
)
だワイ。
193
二
(
ふた
)
つ
目
(
め
)
には
竹山
(
たけやま
)
の
火事
(
くわじ
)
のやうに、
194
ポンポンと
吐
(
ぬ
)
かしよつた
鷹取別
(
たかとりわけ
)
、
195
何
(
なん
)
の
醜態
(
ざま
)
だい、
196
甚
(
はなは
)
だ
以
(
もつ
)
て
人気
(
にんき
)
の
悪
(
わる
)
い
面付
(
つらつき
)
だぞ』
197
斯
(
か
)
かる
処
(
ところ
)
へ
現
(
あら
)
はれ
出
(
い
)
でたる
固虎
(
かたとら
)
は、
198
固虎
『オイ、
199
蟹彦
(
かにひこ
)
、
200
今
(
いま
)
貴様
(
きさま
)
は
何
(
なに
)
を
言
(
い
)
つて
居
(
を
)
つたか、
201
天
(
てん
)
に
口
(
くち
)
あり
壁
(
かべ
)
に
耳
(
みみ
)
だ。
202
チヤンと
此
(
この
)
固虎
(
かたとら
)
さまのお
耳
(
みみ
)
に
這入
(
はい
)
つたのだ。
203
鷹取別
(
たかとりわけ
)
様
(
さま
)
に
言上
(
ごんじやう
)
するから、
204
覚悟
(
かくご
)
を
致
(
いた
)
せ』
205
蟹彦
『ヤアヤア、
206
痩児
(
やせご
)
に
蓮根
(
はすね
)
とは
此
(
この
)
事
(
こと
)
かい。
207
固虎
(
かたとら
)
奴
(
め
)
が
何時
(
いつ
)
の
間
(
ま
)
にか
聞
(
き
)
きよつて……
貴様
(
きさま
)
は
聞
(
き
)
かねばならぬ
事
(
こと
)
は
一寸
(
ちよつと
)
も
聞
(
き
)
かず、
208
聞
(
き
)
かいでもよい
事
(
こと
)
はよく
聞
(
き
)
く
奴
(
やつ
)
だ。
209
言
(
い
)
はねばならぬ
事
(
こと
)
は
一寸
(
ちよつと
)
も
能
(
よ
)
う
吐
(
ぬ
)
かさず、
210
言
(
い
)
はいでもよい
事
(
こと
)
はベラベラと
喋
(
しやべ
)
りたがるなり、
211
困
(
こま
)
つた
奴
(
やつ
)
だ。
212
が
貴様
(
きさま
)
が
鷹取別
(
たかとりわけ
)
様
(
さま
)
に
言
(
い
)
ふなら
言
(
い
)
つてもいい。
213
その
代
(
かは
)
りにこの
蟹彦
(
かにひこ
)
も
堪忍
(
かんにん
)
ならぬ。
214
貴様
(
きさま
)
は
最前
(
さいぜん
)
、
215
中門
(
なかもん
)
の
傍
(
そば
)
で、
216
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
娘
(
むすめ
)
を
魔性
(
ましやう
)
の
女
(
をんな
)
だと
言
(
い
)
つてゐたであらうがな。
217
チヤンとこの
蟹彦
(
かにひこ
)
が
聞
(
き
)
いてゐるのだ』
218
固虎
『オイ、
219
もうこんな
事
(
こと
)
は
為替
(
かはせ
)
だ
為替
(
かはせ
)
だ、
220
互
(
たがひ
)
に
言
(
い
)
はぬ
事
(
こと
)
にしようかい。
221
又
(
また
)
屑
(
くづ
)
が
出
(
で
)
ると
互
(
たがひ
)
の
迷惑
(
めいわく
)
だからなア』
222
蟹彦
『
態
(
ざま
)
見
(
み
)
やがれ、
223
固虎
(
かたとら
)
の
野郎
(
やらう
)
、
224
ガタガタ
慄
(
ぶる
)
ひしよつて、
225
他人
(
ひと
)
を
呪
(
のろ
)
へば
穴
(
あな
)
二
(
ふた
)
つだ。
226
二
(
ふた
)
つの
穴
(
あな
)
さへ
滅茶
(
めちや
)
々々
(
めちや
)
になつた。
227
鷹取別
(
たかとりわけ
)
の
鼻
(
はな
)
の
不態
(
ぶざま
)
つたら、
228
見
(
み
)
られた
醜態
(
ざま
)
ぢやありやアしない。
229
ヤア、
230
ガタ
虎
(
とら
)
、
231
貴様
(
きさま
)
も
来
(
こ
)
い』
232
と
肩肘
(
かたひぢ
)
怒
(
いか
)
らし、
233
横
(
よこ
)
に
歩
(
ある
)
いて
別殿
(
べつでん
)
に
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
つた。
234
蟹彦
(
かにひこ
)
、
235
固虎
(
かたとら
)
の
両人
(
りやうにん
)
は
恐
(
おそ
)
る
恐
(
おそ
)
る
別殿
(
べつでん
)
に
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
り、
236
右
(
みぎ
)
の
手
(
て
)
を
以
(
もつ
)
て
頭
(
あたま
)
を
幾度
(
いくど
)
となく
掻
(
か
)
きながら、
237
蟹彦、固虎
『これはこれは、
238
御
(
ご
)
上使
(
じやうし
)
様
(
さま
)
、
239
長
(
なが
)
らくお
待
(
ま
)
たせ
致
(
いた
)
しました。
240
サア、
241
案内
(
あんない
)
致
(
いた
)
しませう、
242
奥殿
(
おくでん
)
に……』
243
と
云
(
い
)
ひながら
先
(
さき
)
に
立
(
た
)
つて
手
(
て
)
を
振
(
ふ
)
り、
244
怪
(
あや
)
しき
歩
(
あゆ
)
み
恰好
(
かつかう
)
の
可笑
(
をか
)
しさ。
245
殊
(
こと
)
に
蟹彦
(
かにひこ
)
は
腰
(
こし
)
を
曲
(
ま
)
げ、
246
尻
(
しり
)
を
一歩
(
ひとあし
)
々々
(
ひとあし
)
、
247
プリンプリンと
振
(
ふ
)
りつつ
行
(
ゆ
)
く。
248
美山別
(
みやまわけ
)
、
249
国玉姫
(
くにたまひめ
)
は
悠々
(
いういう
)
として
奥殿
(
おくでん
)
に
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
り、
250
正座
(
しやうざ
)
に
着
(
つ
)
き、
251
美山別
(
みやまわけ
)
『オー、
252
常世城
(
とこよじやう
)
の
宰相神
(
さいしやうがみ
)
、
253
鷹取別
(
たかとりわけ
)
とはその
方
(
はう
)
なるや』
254
鷹取別
『ハイ、
255
仰
(
あふ
)
せの
如
(
ごと
)
く、
256
吾
(
われ
)
は
鷹取別
(
たかとりわけ
)
でございます』
257
美山別
『ヤア、
258
貴下
(
きか
)
の
顔
(
かほ
)
は
如何
(
いかが
)
なされた。
259
少
(
すこ
)
しく
変
(
へん
)
ではござらぬか』
260
鷹取別
『ハイ……』
261
竹山彦
(
たけやまひこ
)
は
恭
(
うやうや
)
しく、
262
竹山彦
『これはこれは
御
(
ご
)
上使
(
じやうし
)
様
(
さま
)
、
263
よく
入来
(
いら
)
せられました。
264
今迄
(
いままで
)
は
鷹取別
(
たかとりわけ
)
、
265
今日
(
けふ
)
よりは
鼻
(
はな
)
の
高
(
たか
)
きを
取
(
と
)
り、
266
低取
(
びくとり
)
屁茶彦
(
べちやひこ
)
と
改名
(
かいめい
)
致
(
いた
)
しました』
267
鷹取別
(
たかとりわけ
)
は
鼻
(
はな
)
をフガフガ
言
(
い
)
はせながら、
268
何事
(
なにごと
)
か
言
(
い
)
はむとすれども、
269
声調
(
せいてう
)
乱
(
みだ
)
れて
聞
(
き
)
き
取
(
と
)
り
得
(
え
)
ざるぞ
憐
(
あは
)
れなる。
270
美山別
『
何
(
なに
)
はともあれ、
271
伊弉冊
(
いざなみの
)
大神
(
おほかみ
)
の
御
(
ご
)
神勅
(
しんちよく
)
、
272
慥
(
たしか
)
に
承
(
うけたま
)
はれ。
273
常世
(
とこよ
)
の
国
(
くに
)
に
渡
(
わた
)
り
来
(
きた
)
る
松
(
まつ
)
、
274
竹
(
たけ
)
、
275
梅
(
うめ
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
は、
276
間
(
はざま
)
の
酋長
(
しうちやう
)
春山彦
(
はるやまひこ
)
の
家
(
いへ
)
に
隠匿
(
かくま
)
はれ
居
(
を
)
ると
聞
(
き
)
く。
277
汝
(
なんぢ
)
は
速
(
すみや
)
かに
捕手
(
とりて
)
を
遣
(
つか
)
はし、
278
彼
(
かれ
)
ら
三
(
さん
)
人
(
にん
)
を
生擒
(
いけどり
)
にして、
279
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
くロッキー
山
(
ざん
)
に
送
(
おく
)
り
来
(
きた
)
れよとの
厳命
(
げんめい
)
』
280
と
厳
(
おごそ
)
かに
言
(
い
)
ひ
渡
(
わた
)
す。
281
美山別
(
みやまわけ
)
の
言葉
(
ことば
)
に
蟹彦
(
かにひこ
)
は、
282
蟹彦
『モシモシ
美山別
(
みやまわけ
)
の
御
(
ご
)
上使
(
じやうし
)
様
(
さま
)
、
283
その
松
(
まつ
)
、
284
竹
(
たけ
)
、
285
梅
(
うめ
)
の
三
(
さん
)
人
(
にん
)
は
既
(
すで
)
にすでに
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
の
御
(
お
)
居間
(
ゐま
)
に……』
286
遠山別
(
とほやまわけ
)
『シーツ、
287
蟹彦
(
かにひこ
)
、
288
要
(
い
)
らざる
差出口
(
さしでぐち
)
……
門番
(
もんばん
)
の
分際
(
ぶんざい
)
として
何
(
なに
)
が
解
(
わか
)
るか。
289
汝
(
なんぢ
)
らの
口出
(
くちだし
)
すべき
場所
(
ばしよ
)
でないぞ、
290
退
(
さが
)
り
居
(
を
)
らう。
291
……これはこれは
御
(
ご
)
上使
(
じやうし
)
様
(
さま
)
、
292
鷹取別
(
たかとりわけ
)
は
御覧
(
ごらん
)
の
通
(
とほ
)
り
言語
(
げんご
)
も
明瞭
(
めいれう
)
を
欠
(
か
)
きますれば、
293
次席
(
じせき
)
なる
遠山別
(
とほやまわけ
)
が
代
(
かは
)
つてお
受
(
う
)
け
申
(
まを
)
さむ。
294
御
(
ご
)
上使
(
じやうし
)
の
趣
(
おもむき
)
、
295
委細
(
ゐさい
)
承知
(
しようち
)
仕
(
つかまつ
)
りました。
296
一
(
いち
)
日
(
にち
)
も
早
(
はや
)
く
三
(
さん
)
人
(
にん
)
の
娘
(
むすめ
)
を
生擒
(
いけどり
)
にし、
297
お
届
(
とど
)
け
申
(
まを
)
さむ』
298
美山別
『
早速
(
さつそく
)
の
承知
(
しようち
)
、
299
満足
(
まんぞく
)
々々
(
まんぞく
)
、
300
大神
(
おほかみ
)
におかせられても、
301
嘸
(
さぞ
)
御
(
ご
)
満足
(
まんぞく
)
に
思召
(
おぼしめ
)
すらむ。
302
さらば
某
(
それがし
)
は、
303
急
(
いそ
)
ぎロッキー
山
(
ざん
)
に
立帰
(
たちかへ
)
らむ。
304
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
に
委細
(
ゐさい
)
伝達
(
でんたつ
)
あれよ』
305
と
言
(
い
)
ひ
棄
(
す
)
て、
306
数多
(
あまた
)
の
家来
(
けらい
)
を
引連
(
ひきつ
)
れ、
307
馬上
(
ばじやう
)
裕
(
ゆたか
)
に
揺
(
ゆ
)
られながら、
308
国玉姫
(
くにたまひめ
)
と
諸共
(
もろとも
)
に
門外
(
もんぐわい
)
さして
帰
(
かへ
)
り
往
(
ゆ
)
く。
309
蟹彦
(
かにひこ
)
は
美山別
(
みやまわけ
)
の
後
(
あと
)
を
追駆
(
おつか
)
けながら、
310
蟹彦
『モシモシ
御
(
ご
)
上使
(
じやうし
)
様
(
さま
)
、
311
遠山別
(
とほやまわけ
)
の
トツケ
もない
言葉
(
ことば
)
に
欺
(
だま
)
されぬやうになされませや。
312
慥
(
たしか
)
にこの
蟹彦
(
かにひこ
)
が、
313
何
(
なに
)
も
カニ
も
承知
(
しようち
)
致
(
いた
)
して
居
(
を
)
ります』
314
と、
315
皺枯声
(
しはがれごゑ
)
に
叫
(
さけ
)
べども、
316
蹄
(
ひづめ
)
の
音
(
おと
)
に
遮
(
さへぎ
)
られ、
317
美山別
(
みやまわけ
)
は
耳
(
みみ
)
にもかけず、
318
足
(
あし
)
を
早
(
はや
)
めて
雲
(
くも
)
を
霞
(
かすみ
)
と
帰
(
かへ
)
り
行
(
ゆ
)
く。
319
(
大正一一・二・一九
旧一・二三
河津雄
録)
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