霊界物語.ネット~出口王仁三郎 大図書館~
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第六章 額(がく)の裏(うら)〔四三六〕

インフォメーション
著者:出口王仁三郎 巻:霊界物語 第10巻 霊主体従 酉の巻 篇:第1篇 千軍万馬 よみ(新仮名遣い):せんぐんばんば
章:第6章 額の裏 よみ(新仮名遣い):がくのうら 通し章番号:436
口述日:1922(大正11)年02月19日(旧01月23日) 口述場所: 筆録者:森良仁 校正日: 校正場所: 初版発行日:1922(大正11)年8月20日
概要: 舞台:常世城 あらすじ[?]このあらすじはMさん作成です(一部加筆訂正してあります)。一部の章はAIによって要約を作成しています。[×閉じる]:
一同が照彦が消えてしまったことを不審に思っていると、欄間にかかっている額の裏から、唸り声が聞こえてきた。
一同が驚いていると、声は照彦を取り逃がした中依別の失態をあげつらい出した。照山彦が木刀で額を打つと、声は今度は別の方角から聞こえてきた。
そして、ロッキー山の偽伊弉冊命の計略や、常世神王も広国別の影武者であることを暴露して、声は消えてしまった。
固虎、蟹彦は声に馬鹿にされて、常世城への不満をひそひそと語り合っている。それを聞きつけた竹山彦ら上役が、二人をしかりつけているところへ、間の国から春山彦の三人娘を送り届けてきたという使いが返ってきた。
一同は、遠山別がそんなに早く間の国へ行って往復してこれるはずがない、と不審に思い、門を開けると、そこには誰もいなかった。(遠山別が帰城したのは夢だった)
主な登場人物[?]【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。[×閉じる]: 備考: タグ: データ凡例: データ最終更新日:2020-07-18 20:59:17 文字数:3653 OBC :rm1006
愛善世界社版:53頁 八幡書店版:第2輯 409頁 修補版: 校定版:56頁 普及版:24頁 初版: ページ備考:
001 鷹取別(たかとりわけ)、002中依別(なかよりわけ)、003その他(た)の並居(なみゐ)る役人(やくにん)共(ども)は呆気(あつけ)に取(と)られ居(ゐ)る時(とき)しも、004照山彦(てるやまひこ)はこの場(ば)に引返(ひきかへ)し来(きた)り、
005照山彦『ヤア、006妙(めう)な事(こと)もあるものですなア。007今(いま)御覧(ごらん)の如(ごと)く、008照彦(てるひこ)とやらこの場(ば)に現(あら)はれ、009忽(たちま)ち姿(すがた)を隠(かく)し、010門外(もんぐわい)にて又(また)もや数多(あまた)の従者(けらい)共(ども)を相手(あひて)に乱暴(らんばう)狼藉(ろうぜき)を働(はたら)くとの注進(ちゆうしん)によつて、011取(と)るものも取敢(とりあ)へず、012表(おもて)に駆(か)け出(だ)し様子(やうす)を見(み)れば、013豈計(あにはか)らむや、014人影(ひとかげ)さへもなく、015ただ彼方(かなた)の森(もり)に、016コンコンと狐(きつね)の鳴(な)き声(ごゑ)聞(きこ)ゆるのみで御座(ござ)つた。017さてもさても不思議(ふしぎ)な事(こと)で御座(ござ)るワイ』
018竹山彦(たけやまひこ)『不思議(ふしぎ)と言(い)つても、019斯様(かやう)な不思議(ふしぎ)が御座(ござ)らうか。020イヤ中依別(なかよりわけ)殿(どの)、021はるばると御(ご)苦労(くらう)千万(せんばん)にも、022間(はざま)の国(くに)まで御(ご)足労(そくらう)になつたのも全(まつた)く水(みづ)の泡(あわ)、023泡(あわ)を喰(く)つてアフンと致(いた)すとはこの事(こと)で御座(ござ)らう』
024鷹取別(たかとりわけ)『フギヤフギヤフギヤ』
025竹山彦(たけやまひこ)『是(これ)はしたり鷹取別(たかとりわけ)殿(どの)、026まだ明瞭(はつきり)とは申(まを)されませぬか。027寔(まこと)に以(もつ)て不憫(ふびん)、028不体裁(ふていさい)、029不幸(ふかう)、030フギヤフギヤの至(いた)りで御座(ござ)る』
031 欄間(らんま)の懸額(けんがく)の後(うしろ)より、032ウーと唸(うな)り声(ごゑ)響(ひび)き来(きた)る。033一同(いちどう)は合点(がてん)ゆかずと、034懸額(けんがく)に向(むか)つて目(め)を注(そそ)ぎ耳(みみ)を傾(かたむ)くれば、035額(がく)の後(うしろ)より、
036声『アハヽヽヽ、037アニ図(はか)らむや、038妹(いもうと)図(はか)らむや、039はかり知(し)られぬ神変(しんぺん)不思議(ふしぎ)の魔術(まじゆつ)にかけられ、040案(あん)に相違(さうゐ)の汝(なんぢ)らが、041アフンと致(いた)して呆(あき)れ果(は)てたるその面付(つらつ)き、042余(あま)りと云(い)へば余(あま)りでないか。043頭(あたま)拘(かか)へてアイタヽコイタヽ、044暗(やみ)から現(あら)はれた赤玉(あかだま)に、045頭(あたま)を押(おさ)へ叩(たた)かれ、046鼻(はな)をメシヤゲられ、047赤(あか)い顔(かほ)して目(め)をキヨロつかせた悪神(あくがみ)の寄合(よりあ)ひ、048浅(あさ)い智慧(ちゑ)を以(もつ)て何(なに)を企(たく)んでも、049足下(あしもと)の見(み)えぬ汝(なんぢ)等(ら)が盲目神(めくらがみ)、050足下(あしもと)から鳥(とり)が立(た)つぞよ。051何程(なにほど)焦慮(あせ)つても鉄面(あつかま)しう致(いた)しても細引(ほそびき)の褌(ふんどし)、052彼方(あちら)へ外(はづ)れ此方(こちら)へ外(はづ)れて、053後(あと)の始末(しまつ)はこの通(とほ)り、054あな可笑(をか)しやな。055三五教(あななひけう)の宣伝使(せんでんし)と侮(あなど)つて、056阿呆(あほう)の限(かぎ)りを尽(つく)した汝(なんぢ)等(ら)、057余(あま)りの事(こと)で二(ふた)つの眼(め)からあはれや雨(あめ)が降(ふ)る。058怪(あや)しい物音(ものおと)に耳(みみ)を澄(す)ませ、059有(あ)らう事(こと)か有(あ)ろまい事(こと)か、060肝腎(かんじん)の玉(たま)を取(と)られたその有様(ありさま)、061有(あ)るに有(あ)られぬ御(ご)心配(しんぱい)、062御(お)察(さつ)し申(まを)す、063アハヽヽヽ、064阿呆(あはう)々々(あはう)と烏(からす)のお悔(くや)み、065オホヽヽヽ』
066照山彦(てるやまひこ)『ヤア怪(あや)しき額(がく)の裏(うら)、067何(いづ)れの悪神(あくがみ)か、068汝(なんぢ)が正体(しやうたい)暴露(あらは)し呉(く)れむ』
069と額(がく)を目(め)がけて、070あり合(あ)ふ木刀(ぼくたう)を取(と)るより早(はや)くハツシと打(う)てば、071怪(あや)しき声(こゑ)は再(ふたた)び方向(はうかう)を転(てん)じ、072何処(どこ)ともなしに、
073声『イヒヽヽヽ、074いぢらしいものだ。075幾程(いくら)この方(はう)の所在(ありか)を探(さが)した処(ところ)で、076煎豆(いりまめ)に花(はな)が咲(さ)くまで此(この)方(はう)の姿(すがた)は判(わか)るまい。077如何(いかが)なるらむと呼吸(いき)も絶(た)えだえに心(こころ)を焦(いら)つ意気地(いくぢ)なし、078俺(おれ)が意見(いけん)をトツクと聞(き)け。079長途(ちやうと)の旅(たび)を漸(やうや)う此処(ここ)に手柄顔(てがらがほ)して威張顔(ゐばりがほ)、080帰(かへ)つて来(き)た中依別(なかよりわけ)、081一寸(ちよつと)一服(いつぷく)憩(いこ)ふ間(ま)もなくこの場(ば)の仕儀(しぎ)、082聊(いささ)か以(もつ)て御(ご)迷惑(めいわく)千万(せんばん)、083石(いし)が降(ふ)つても槍(やり)が降(ふ)つても、084照彦(てるひこ)の居所(ゐどころ)を探(さが)して常世(とこよ)神王(しんわう)の御(おん)目(め)にかけねば、085汝(なんぢ)の顔(かほ)は丸潰(まるつぶ)れ、086上役(うはやく)の椅子(いす)も保(たも)てまい。087今迄(いままで)の威勢(ゐせい)はさつぱり地(ち)に落(お)ちるぞよ。088手柄顔(てがらがほ)して欣々(いそいそ)帰(かへ)つた中依別(なかよりわけ)も、089嗚呼(ああ)痛(いた)はしやいたはしや、090只(ただ)一人(ひとり)の照彦(てるひこ)を数多(あまた)の人数(にんず)に守(まも)らせ、091漸(やうや)う帰(かへ)つて来(き)たものの、092何時(いつ)の間(ま)にやら蛻(もぬけ)の殻(から)、093お憫(いと)しい事(こと)で御座(ござ)るワイ。094今(いま)も古(いにしへ)も類例(ためし)なき赤恥(あかはぢ)を掻(か)いて、095犬(いぬ)にも劣(おと)る浅猿(あさま)しさ。096犬(いぬ)でさへも嗅付(かぎつ)けるのに、097何(なん)と困(こま)つたものだのう。098言(い)ひ甲斐(がひ)なき汝(なんぢ)ら一同(いちどう)、099忌々(いまいま)しさうなその面付(つらつき)、100常世(とこよ)の国人(くにびと)に茨(いばら)の如(ごと)く忌(い)み嫌(きら)はれ、101嫌(いや)らしい面付(つらつ)きになつて胴(どう)も据(すわ)らず、102いらいらとその肝煎(きもい)り、103曲津(まがつ)の神(かみ)の好(よ)い容器(いれもの)、104思案(しあん)の外(ほか)とは色情(いろ)ばかりではないぞよ。105ウフヽヽヽ』
106照山彦(てるやまひこ)『如何(いか)にも合点(がてん)のゆかぬ物声(ものごゑ)で御座(ござ)る。107何(いづ)れも方(がた)、108如何(いかが)いたしたらよからうかな。109色(いろ)いろと工夫(くふう)を致(いた)して、110斯(かく)の如(ごと)き異声(いせい)を打(う)ち消(け)さねばなりますまい』
111 又(また)もや何処(いづこ)ともなく、
112声『ウフヽヽヽ、113呆気(うつけ)もの、114狼狽(うろたへ)もの、115何(なに)をウサウサ吐(ほざ)くのか、116憂(う)いか、117辛(つら)いか、118うかうかと計略(けいりやく)にかかり、119こんな憂(う)き目(め)を見(み)せられて、120浮(うか)ぶ瀬(せ)もあろまい。121動(うご)きの取(と)れぬこの有様(ありさま)、122嘘(うそ)で捏(つく)ねた罰(ばち)は目(め)の前(まへ)、123頭(あたま)を打(う)たれ鼻(はな)を打(う)ち、124呆(とぼ)けた面(つら)して現(うつつ)三太郎(さんたらう)、125智慧(ちゑ)の疎(うと)いにも程(ほど)がある。126甘(うま)い企(たく)みも水(みづ)の泡(あわ)、127うようよと毛虫(けむし)のやうに何(なに)をして居(を)る。128ウラル彦(ひこ)の教(をしへ)を奉(ほう)ずる狼狽(うろたへ)もの、129この方(はう)の申(まを)す事(こと)は気(き)に入(い)ろまい、130煩(うる)さからう。131その憂(うれ)ひ顔(がほ)は何(なん)だ。132この上(うへ)もなき馬鹿(ばか)な目(め)に遇(あ)うて、133頭(あたま)はへさへられ、134鼻(はな)は挫(め)がれ、135照彦(てるひこ)には逃(に)げられ、136他所(よそ)の見(み)る目(め)も気(き)の毒(どく)なりける次第(しだい)だ。137ワハヽヽヽ』
138中依別(なかよりわけ)『ヤー方々(かたがた)、139あの声(こゑ)は何者(なにもの)で御座(ござ)らうな。140強(きつ)う耳(みみ)に触(さは)り申(まを)す。141ウラル教(けう)の宣伝歌(せんでんか)でも歌(うた)へば消(き)えるでせうかな。142コレコレ竹山彦(たけやまひこ)殿(どの)、143貴下(きか)は何(なん)とか御(ご)工夫(くふう)はあるまいか』
144竹山彦『サア、145吾々(われわれ)も斯(かく)の如(ごと)き声(こゑ)ばかりに向(むか)つては、146何(なん)の手段(しゆだん)も御座(ござ)らぬ』
147 額(がく)の上(うへ)より、
148声『エヘヽヽヽ、149オホヽヽヽ』
150照山彦(てるやまひこ)『エヽ又(また)始(はじ)まつた。151奇怪(きくわい)千万(せんばん)な笑(わら)ひ声(ごゑ)で御座(ござ)る』
152 何処(いづこ)ともなく、
153声『エヘヽヽヽ、154エヽ面倒(めんだう)な、155モー之(これ)位(くらゐ)で止(や)めようか。156イヤイヤまだあるまだある。157オホヽヽヽ、158大国彦(おほくにひこ)の神(かみ)を日(ひ)の出神(でのかみ)と偽(いつは)り、159大国姫(おほくにひめ)を伊邪那美(いざなみの)神(かみ)と偽(いつは)つて、160ロッキー山(ざん)に立籠(たてこも)り、161この世(よ)を乱(みだ)さむ汝(なんぢ)等(ら)一味(いちみ)の企(たく)み。162常世(とこよ)神王(しんわう)とは真赤(まつか)な偽(いつは)り、163極悪(ごくあく)無道(ぶだう)の広国別(ひろくにわけ)、164鬼(おに)とも蛇(じや)とも分(わか)らぬ悪人(あくにん)、165カヽヽヽ神(かみ)も堪(こら)へ袋(ぶくろ)が切(き)れるぞよ。166固虎(かたとら)や蟹彦(かにひこ)の不具(かたは)人足(にんそく)の構(かま)へて居(ゐ)る常世城(とこよじやう)の表門(おもてもん)、167体主霊従国(からくに)はサツパリ破(ば)れて今(いま)の状態(ありさま)、168悔(くや)んで還(かへ)らぬ照彦(てるひこ)の宣伝使(せんでんし)、169どうして顔(かほ)が立(た)つと思(おも)ふか、170返(かへ)す返(がへ)すも馬鹿(ばか)な奴(やつ)だ。171可憐相(かはいさう)なから、172神(かみ)は之(これ)きりにして帰(かへ)つてやらう。173今後(こんご)は気(き)を附(つ)けたが宜(よ)からう。174ウー』
175 固虎(かたとら)、176蟹彦(かにひこ)は広(ひろ)き庭前(にはさき)に蛙(かへる)突這(つくばひ)となつて、177蛙(かへる)に煙草(たばこ)の汁(ず)を呑(の)ませし如(ごと)く、178目(め)をしばしばさせながら、
179固虎(かたとら)『アヽヽ阿呆(あほ)らしい、180悪性(あくしやう)な目(め)に遇(あ)はされて、181イヽヽ何時(いつ)の世(よ)にか忘(わす)れられやうか。182ウヽヽ迂濶(うか)々々(うか)して居(ゐ)ると、183カヽヽ蟹彦(かにひこ)よ、184キヽヽ狂者(きちがひ)になるぞよ』
185蟹彦(かにひこ)『何(なん)だ、186貴様(きさま)は化物(ばけもの)の真似(まね)をしよつて、187クヽヽなんて目(め)計(ばか)りクルクル剥(む)いて、188黒(くろ)い面(つら)してくたばつて、189クヽヽもあつたものかい。190ケヽヽ怪体(けつたい)が悪(わる)いぞ、191怪(け)しからぬ目(め)に遇(あ)うた。192マア怪我(けが)がなくてまだしもだ。193コヽヽこんな目(め)に遇(あ)うたら、194如何(いか)な鷹取別(たかとりわけ)でも、195サヽヽ早速(さつそく)に開(あ)いた口(くち)が閉(すぼ)まるまい』
196声『シヽヽ静(しづ)かにせぬかい、197聞(きこ)えたら叱(しか)られるぞ、198スヽヽ好(す)かぬたらしい。199セヽヽせんぐりせんぐり仕様(しやう)もない事(こと)言(い)ひよつて、200背(せ)に腹(はら)が替(か)へられぬと言(い)ふ様(やう)な、201誰(たれ)も彼(かれ)も面付(つらつき)を遊(あそ)ばしたその可笑(をか)しさ。202タヽヽ狸(たぬき)の奴(やつ)に、203チヽヽチツクリ、204ツヽヽ魅(つま)まれよつて、205テヽヽ体裁(ていさい)の悪(わる)い、206トヽヽ蜥蜴面(とかげづら)して、207ナヽヽ何(なん)の態(ざま)だ。208中依別(なかよりわけ)もあつたものか。209ニヽヽ二進(につち)も三進(さつち)もならぬ目(め)に遇(あ)はされて、210月夜(つきよ)に釜(かま)を抜(ぬ)かれたやうな面(つら)をして、211根(ね)つから葉(は)つから見当(けんたう)が取(と)れぬでないか。212ノヽヽ進退(のつぴき)ならぬ目(め)に遇(あ)うて、213ハヽヽ恥(はぢ)を掻(か)き、214ヒヽヽ雲雀(ひばり)のやうに、215フヽヽふざいた、216ヘヽヽ屁理屈(へりくつ)も、217ホヽヽ反古(ほご)になつて、218マヽヽ松代姫(まつよひめ)や竹野姫(たけのひめ)、219梅ケ香姫(うめがかひめ)の、220ミヽヽ三人(みたり)の、221ムヽヽ娘(むすめ)を、222メヽヽ妾(めかけ)にしよつて、223モヽヽ桃(もも)の実(み)だとか、224梅(うめ)の実(み)だとか、225ウメイ事(こと)ばつかり、226ヤヽヽやらかそと思(おも)つても、227イヽヽいきはせぬぞよ。228ユヽヽ幽霊(いうれい)の浜風(はまかぜ)ぢやないが、229またドロンと消(き)えられて、230エヽヽ豪(えら)い泡(あわ)を吹(ふ)くのであらう。231ヨヽヽ余程(よつぽど)よい白痴(たわけ)ぢやワイ』
232竹山彦(たけやまひこ)『ヤイ、233その方(はう)共(ども)は何(なに)を小(ちひ)さい声(こゑ)で吐(ほざ)いて居(を)るか。234なぜもつと大(おほ)きな声(こゑ)で申(まを)さぬのか』
235固虎(かたとら)『カヽヽ勘忍(かんにん)して下(くだ)さいませ。236一寸(ちよつと)化物(ばけもの)のかたとらを行(や)りました。237固虎(かたとら)の狂言(きやうげん)、238がたがた顫(ぶる)ひの御(ご)一同(いちどう)、239実(まこと)に以(もつ)て御(お)気(き)の毒(どく)千万(せんばん)』
240 照山彦(てるやまひこ)は大声(おほごゑ)にて、
241照山彦『馬鹿(ばか)ツ』
242 固虎(かたとら)、243蟹彦(かにひこ)、244両手(りやうて)を拡(ひろ)げ立上(たちあが)り、
245固虎、蟹彦『アー』
246固虎(かたとら)『オイ蟹公(かにこう)、247貴様(きさま)は何(なに)を言(い)うたのだ』
248蟹彦(かにひこ)『固公(かたこう)、249貴様(きさま)は何(なに)言(い)うたのだい。250俺(おれ)は何(なに)も言(い)ふ積(つも)りぢやなかつたのに、251俄(にはか)に腹(はら)の中(なか)から何(なん)だか出(で)て来(き)よつて、252止度(とめど)もなく喋(しやべ)つたのだ』
253固虎『貴様(きさま)もさうか。254俺(おれ)も何(なん)だか腹(はら)の中(なか)から声(こゑ)が出(で)て来(き)よつて、255止(と)めようと思(おも)つても止(と)まらぬ。256止(と)めて止(や)まらぬこゑの道(みち)だ』
257蟹彦『洒落(しやれ)ない、258洒落(しやれ)どころの騒(さわ)ぎかい』
259 この時(とき)門前(もんぜん)に又(また)もや騒(さわ)がしき人馬(じんば)の物音(ものおと)聞(きこ)え来(きた)る。260一同(いちどう)は立(た)ち上(あが)り、261何事(なにごと)ならむと聞耳(ききみみ)立(た)つるを、262蟹彦(かにひこ)は矢庭(やには)に横(よこ)しなげになりて、263表門(おもてもん)に駆(か)け付(つ)くれば、
264遠山別『ヤアヤア吾(われ)こそは、265常世(とこよ)神王(しんわう)の命(めい)を奉(ほう)じ間(はざま)の国(くに)に使(つか)ひして、266月(つき)、267雪(ゆき)、268花(はな)の三(さん)人(にん)を奪(うば)ひ帰(かへ)つた手柄者(てがらもの)、269一(いち)時(じ)も早(はや)く此(この)門(もん)を開(あ)けよ』
270蟹彦(かにひこ)『何(なん)と合点(がてん)のゆかぬ事(こと)だワイ。271現(げん)に今夜(こんや)出立(しゆつたつ)した遠山別(とほやまわけ)が、272何(なに)ほど足(あし)が速(はや)いと言(い)つても、273間(はざま)の国(くに)へは三百(さんびやく)里(り)もある。274そんな馬鹿(ばか)な事(こと)があつて堪(たま)るものか。275這奴(こいつ)アまた化物(ばけもの)だ。276開(あ)けて堪(たま)らうかい』
277 門外(もんぐわい)より、
278遠山別『コラコラ門番(もんばん)、279何(なに)をグヅグヅ、280……速(すみや)かにこの門(もん)開(ひら)け』
281蟹彦『此(この)門(もん)も彼(あ)の門(もん)もあるもんか。282訳(わけ)の分(わか)らぬもんが遣(や)つて来(き)よつて、283又(また)も一(ひと)もんちやくを起(おこ)さうとするのか。284よしこの方(はう)にも考(かんが)へがある、285門番(もんばん)だとて馬鹿(ばか)にはならぬぞ。286この蟹彦(かにひこ)さまの腕力(わんりよく)で、287もんでもんで揉(も)み潰(つぶ)してやらうか。288オーイオーイ、289赤熊(あかぐま)早(はや)う来(こ)ぬかい、290又(また)こんこんさまだ。291今夜(こんや)のやうな怪体(けつたい)な夜(よ)さりと言(い)ふものは、292古今(ここん)独歩(どつぽ)珍無類(ちんむるゐ)だ。293今晩(こんばん)は非(ひ)が邪(じや)でも、294この門(もん)開(あ)ける事(こと)はまかり成(な)るもんか』
295と呶鳴(どな)り立(た)てて居(ゐ)る。
296 赤熊(あかぐま)はこの場(ば)に走(はし)り来(きた)り、
297赤熊『ヤイヤイ蟹彦(かにひこ)、298確(しつか)りせぬか。299何(なに)を吐(ほざ)いて居(を)るのだ。300門(もん)はすつかり開(あ)いてあるぢやないか、301開(あ)けるも開(あ)けぬもあつたもんかい。302モーつい夜(よ)が明(あ)けるのだ。303何(なに)を寝(ね)呆(とぼ)けて居(ゐ)るのだ』
304と拳固(げんこ)を固(かた)めて横面(よこづら)をポカンと打(う)てば、305蟹彦(かにひこ)は吃驚(びつくり)し目(め)を擦(こす)りながら、306よくよく見(み)れば門(もん)はがらりと開(ひら)いて人影(ひとかげ)もなく、307月(つき)は西山(せいざん)に落(お)ちて、308木枯(こがらし)の風(かぜ)ヒユウヒユウと笛(ふえ)吹(ふ)いて渡(わた)り行(ゆ)くのみなり。
309(大正一一・二・一九 旧一・二三 森良仁録)
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