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霊界物語
霊主体従(第1~12巻)
第10巻(酉の巻)
序歌
凡例
総説歌
信天翁(一)
第1篇 千軍万馬
第1章 常世城門
第2章 天地暗澹
第3章 赤玉出現
第4章 鬼鼻団子
第5章 狐々怪々
第6章 額の裏
第7章 思はぬ光栄
第8章 善悪不可解
第9章 尻藍
第10章 注目国
第11章 狐火
第12章 山上瞰下
第13章 蟹の将軍
第14章 松風の音
第15章 言霊別
第16章 固門開
第17章 乱れ髪
第18章 常世馬場
第19章 替玉
第20章 還軍
第21章 桃の実
第22章 混々怪々
第23章 神の慈愛
第24章 言向和
第25章 木花開
第26章 貴の御児
第2篇 禊身の段
第27章 言霊解一
第28章 言霊解二
第29章 言霊解三
第30章 言霊解四
第31章 言霊解五
第3篇 邪神征服
第32章 土竜
第33章 鰤公
第34章 唐櫃
第35章 アルタイ窟
第36章 意想外
第37章 祝宴
附録 第三回高熊山参拝紀行歌(三)
余白歌
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霊界物語
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霊主体従(第1~12巻)
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第10巻(酉の巻)
> 第1篇 千軍万馬 > 第23章 神の慈愛
<<< 混々怪々
(B)
(N)
言向和 >>>
第二三章
神
(
かみ
)
の
慈愛
(
じあい
)
〔四五三〕
インフォメーション
著者:
出口王仁三郎
巻:
霊界物語 第10巻 霊主体従 酉の巻
篇:
第1篇 千軍万馬
よみ(新仮名遣い):
せんぐんばんば
章:
第23章 神の慈愛
よみ(新仮名遣い):
かみのじあい
通し章番号:
453
口述日:
1922(大正11)年02月25日(旧01月29日)
口述場所:
筆録者:
松村真澄
校正日:
校正場所:
初版発行日:
1922(大正11)年8月20日
概要:
舞台:
ロッキー山城、ロッキー城
あらすじ
[?]
このあらすじは東京の望月さん作成です(一部加筆訂正してあります)。一覧表が「
王仁DB
」にあります。
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:
そこへ大自在天・大国彦がやってきて、常世城の広国別が攻め寄せてきた、と伝えた。そして自分はここで広国別を迎え撃つが、大国姫は黄泉島へ行って神軍と最後の決戦をするように命じた。
大国姫が黄泉島へ向かって出立すると、固虎と淤縢山津見がやってきて、大国彦にロッキー城の落城を告げた。大国彦は慌てて二人を連れてロッキー城に駆けつけると、そこには人影もなく、ただ城門が開け放たれているのみであった。
淤縢山津見と固虎は自らの三五教への改心を明かし、大国彦に降伏を迫った。大国彦は最後の力を振り絞って大刀を抜き放ち、二人に撃ってかかる。二人は剣の下をかいくぐり、表門めがけて逃げ出した。
固虎は逃げながら、三五教の教えのために大国彦に反撃できないことを嘆くが、淤縢山津見は固虎に、敵といえどもすべては神の子であり、神の子を傷つけることはできない、と諭し、大国彦に改心を迫るのはまたの機会にしよう、と告げた。
二人を追って来た大国彦は、この会話を聞いて三五教の仁慈に富んだ教えに心を打たれ、大声をあげて泣きはじめた。大国彦は、泣き声を聞きつけた淤縢山津見に対して、改心を申し出た。
淤縢山津見は大国彦に、これから常世城に向かって広国別を言向け和そう、と促した。三人が常世城に向かうと、常世城の竹山彦らの軍勢は案に相違して、歓呼で迎えた。
これより、常世城とロッキー山には、十耀の神旗が翻った。
主な登場人物
[?]
【セ】はセリフが有る人物、【場】はセリフは無いがその場に居る人物、【名】は名前だけ出て来る人物です。
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:
備考:
タグ:
データ凡例:
データ最終更新日:
2020-07-28 17:03:35
OBC :
rm1023
愛善世界社版:
172頁
八幡書店版:
第2輯 453頁
修補版:
校定版:
179頁
普及版:
80頁
初版:
ページ備考:
001
大国姫
(
おほくにひめの
)
命
(
みこと
)
は、
002
武虎別
(
たけとらわけ
)
と
共
(
とも
)
に、
003
此
(
この
)
場
(
ば
)
の
怪
(
あや
)
しき
光景
(
くわうけい
)
に
胆
(
きも
)
を
奪
(
うば
)
はれ、
004
呆然
(
ばうぜん
)
として
何
(
なん
)
の
辞
(
ことば
)
もなく
佇
(
たたず
)
み
居
(
ゐ
)
る
折
(
をり
)
しも、
005
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
と
称
(
しよう
)
する
大自在天
(
だいじざいてん
)
大国彦
(
おほくにひこ
)
は、
006
四五
(
しご
)
の
従者
(
じうしや
)
と
共
(
とも
)
に
此
(
こ
)
の
場
(
ば
)
に
現
(
あら
)
はれ
来
(
きた
)
り、
007
日の出神(に化けた大国彦)
『ヤア、
008
ロッキー
城
(
じやう
)
は
大変
(
たいへん
)
な
事
(
こと
)
が
起
(
おこ
)
つて
来
(
き
)
た。
009
常世城
(
とこよじやう
)
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
、
010
数多
(
あまた
)
の
軍勢
(
ぐんぜい
)
を
引連
(
ひきつ
)
れ
叛逆
(
はんぎやく
)
を
企
(
くはだ
)
て、
011
味方
(
みかた
)
に
於
(
おい
)
ては
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
、
012
固虎彦
(
かたとらひこ
)
を
以
(
もつ
)
て
之
(
これ
)
に
当
(
あた
)
らしめ
居
(
を
)
れども、
013
始終
(
しじう
)
の
勝利
(
しようり
)
は
覚束
(
おぼつか
)
なし。
014
汝
(
なんぢ
)
大国姫
(
おほくにひめ
)
、
015
今
(
いま
)
より
秘
(
ひそ
)
かに
黄泉島
(
よもつじま
)
に
渡
(
わた
)
り
伊弉冊
(
いざなみの
)
尊
(
みこと
)
と
称
(
しよう
)
して
出陣
(
しゆつぢん
)
し、
016
味方
(
みかた
)
の
士気
(
しき
)
を
鼓舞
(
こぶ
)
し
以
(
もつ
)
て
大勝利
(
だいしようり
)
を
博
(
はく
)
し、
017
神軍
(
しんぐん
)
を
追払
(
おつぱら
)
へよ。
018
然
(
しか
)
らば
如何
(
いか
)
に
広国別
(
ひろくにわけ
)
勢
(
いきほひ
)
猛
(
たけ
)
く
攻
(
せ
)
め
来
(
きた
)
るとも、
019
汝
(
なんぢ
)
が
武威
(
ぶゐ
)
に
恐
(
おそ
)
れて
忽
(
たちま
)
ち
降服
(
かうふく
)
せむ。
020
本城
(
ほんじやう
)
に
立籠
(
たてこも
)
り、
021
暗々
(
やみやみ
)
広国別
(
ひろくにわけ
)
に
滅
(
ほろ
)
ぼされむは
策
(
さく
)
の
得
(
え
)
たるものに
非
(
あら
)
ず。
022
吾
(
われ
)
は
是
(
これ
)
より
本城
(
ほんじやう
)
に
止
(
とどま
)
りて、
023
寄
(
よ
)
せ
来
(
く
)
る
敵
(
てき
)
を
待
(
ま
)
ち
討
(
う
)
たむ。
024
汝
(
なんぢ
)
は
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
黄泉島
(
よもつじま
)
に
向
(
むか
)
へ』
025
大国姫
(
おほくにひめ
)
『
委細
(
ゐさい
)
承知
(
しようち
)
仕
(
つかまつ
)
りました。
026
併
(
しか
)
しながら
怪事
(
くわいじ
)
多
(
おほ
)
き
此
(
この
)
城中
(
じやうちう
)
、
027
十二分
(
じふにぶん
)
の
御
(
ご
)
注意
(
ちうい
)
あれ』
028
と
言
(
い
)
ひ
棄
(
す
)
て、
029
天
(
あま
)
の
磐船
(
いはふね
)
に
乗
(
の
)
りて
天空
(
てんくう
)
を
轟
(
とどろ
)
かしながら、
030
四五
(
しご
)
の
従兵
(
じうへい
)
と
共
(
とも
)
に、
031
黄泉島
(
よもつじま
)
に
向
(
むか
)
つて
急
(
いそ
)
ぎ
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
032
この
時
(
とき
)
又
(
また
)
もや
門外
(
もんぐわい
)
騒
(
さわ
)
がしく、
033
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
は、
034
固山彦
(
かたやまひこ
)
と
共
(
とも
)
に
周章
(
あわただ
)
しく
入
(
い
)
り
来
(
きた
)
り、
035
淤縢山津見
『
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
に
申上
(
まをしあ
)
げます。
036
ロッキー
城
(
じやう
)
は、
037
最早
(
もはや
)
刀
(
かたな
)
折
(
を
)
れ
矢
(
や
)
尽
(
つ
)
き、
038
遂
(
つひ
)
に
敵
(
てき
)
の
占領
(
せんりやう
)
する
所
(
ところ
)
となりました』
039
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
(に化けた大国彦)
『エヽ
腑甲斐
(
ふがひ
)
なき
奴輩
(
やつばら
)
奴
(
め
)
。
040
吾
(
われ
)
は
是
(
これ
)
より
広国別
(
ひろくにわけ
)
の
軍
(
ぐん
)
に
向
(
むか
)
ひ
勝敗
(
しようはい
)
を
決
(
けつ
)
せむ。
041
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
、
042
固虎
(
かたとら
)
、
043
吾
(
われ
)
に
続
(
つづ
)
け』
044
と
言
(
い
)
ひながら、
045
駿馬
(
しゆんめ
)
に
跨
(
またが
)
り、
046
威風
(
ゐふう
)
凛々
(
りんりん
)
として
少数
(
せうすう
)
の
軍卒
(
ぐんそつ
)
を
率
(
ひき
)
ゐ、
047
ロッキー
山城
(
さんじやう
)
を
後
(
あと
)
に
見
(
み
)
て、
048
ロッキー
城
(
じやう
)
に
向
(
むか
)
つて
駆
(
か
)
けつくる。
049
ロッキー
城
(
じやう
)
に
致
(
いた
)
り
見
(
み
)
れば、
050
表門
(
おもてもん
)
は
開放
(
かいはう
)
され、
051
一人
(
ひとり
)
の
敵軍
(
てきぐん
)
もなければ
味方
(
みかた
)
の
影
(
かげ
)
もなし。
052
贋
(
にせ
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
は
怪
(
あや
)
しみながら、
053
将卒
(
しやうそつ
)
を
率
(
ひき
)
ゐて
四方
(
しはう
)
に
心
(
こころ
)
を
配
(
くば
)
りつつ
奥深
(
おくふか
)
く
進
(
すす
)
み
入
(
い
)
る。
054
見
(
み
)
れば、
055
狐
(
きつね
)
の
声
(
こゑ
)
四方
(
しはう
)
八方
(
はつぱう
)
より、
056
狐の声
『
狐々
(
こんこん
)
怪々
(
くわいくわい
)
』
057
寂
(
せき
)
として
人影
(
ひとかげ
)
もなし。
058
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
(に化けた大国彦)
『
合点
(
がてん
)
の
行
(
ゆ
)
かぬ
今
(
いま
)
の
鳴声
(
なきごゑ
)
。
059
アイヤ、
060
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
、
061
固虎彦
(
かたとらひこ
)
、
062
残
(
のこ
)
る
隅
(
くま
)
なく
捜索
(
そうさく
)
せよ』
063
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
『オー、
064
吾
(
われ
)
こそは
三五教
(
あななひけう
)
の
宣伝使
(
せんでんし
)
、
065
今
(
いま
)
まで
汝
(
なんぢ
)
が
味方
(
みかた
)
と
云
(
い
)
ひしは、
066
汝
(
なんぢ
)
の
悪逆
(
あくぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
を
懲
(
こら
)
さむ
為
(
ため
)
なり。
067
サア、
068
斯
(
か
)
くなる
以上
(
いじやう
)
は
尋常
(
じんじやう
)
に
降服
(
かうふく
)
するか』
069
日の出神(に化けた大国彦)
『エヽ』
070
固山彦
(
かたやまひこ
)
『
汝
(
なんぢ
)
は
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
と
名
(
な
)
を
偽
(
いつは
)
り、
071
ロッキー
城
(
じやう
)
に
立籠
(
たてこも
)
り、
072
神界
(
しんかい
)
の
経綸
(
けいりん
)
を
根底
(
こんてい
)
より
破壊
(
はくわい
)
せむとせし
悪鬼
(
あくき
)
羅刹
(
らせつ
)
の
張本
(
ちやうほん
)
、
073
斯
(
か
)
くなる
以上
(
いじやう
)
は、
074
隠
(
かく
)
るるとも
逃
(
に
)
ぐるとも、
075
最早
(
もはや
)
力
(
ちから
)
及
(
およ
)
ばぬ。
076
覚悟
(
かくご
)
を
致
(
いた
)
せ』
077
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
(に化けた大国彦)
『ヤー
残念
(
ざんねん
)
至極
(
しごく
)
、
078
大国姫
(
おほくにひめ
)
は
黄泉島
(
よもつじま
)
に
向
(
むか
)
つて
進軍
(
しんぐん
)
し、
079
部下
(
ぶか
)
の
勇将
(
ゆうしやう
)
猛卒
(
まうそつ
)
は、
080
或
(
あるひ
)
は
出陣
(
しゆつぢん
)
し
或
(
あるひ
)
は
遁走
(
とんそう
)
し、
081
今
(
いま
)
はわが
身
(
み
)
一
(
ひと
)
つの、
082
如何
(
いかん
)
とも
術
(
すべ
)
なし。
083
サア、
084
汝
(
なんぢ
)
等
(
ら
)
斬
(
き
)
るなら
斬
(
き
)
れよ、
085
殺
(
ころ
)
すなら
殺
(
ころ
)
せよ』
086
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
『アイヤ
贋
(
にせ
)
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
、
087
よつく
聴
(
き
)
け。
088
天地
(
てんち
)
の
神明
(
しんめい
)
は
愛
(
あい
)
を
以
(
もつ
)
て
心
(
こころ
)
となし
給
(
たま
)
ふ。
089
吾々
(
われわれ
)
人間
(
にんげん
)
として
如何
(
いかん
)
ともなし
難
(
がた
)
きは
空気
(
くうき
)
と
水
(
みづ
)
と
死
(
し
)
とである。
090
死
(
し
)
するも
生
(
い
)
くるも
神
(
かみ
)
の
御心
(
みこころ
)
だ。
091
徒
(
いたづら
)
に
汝
(
なんぢ
)
が
如
(
ごと
)
き
命
(
いのち
)
を
奪
(
うば
)
ひて
何
(
なん
)
の
効
(
かう
)
かあらむ。
092
仮令
(
たとへ
)
肉体
(
にくたい
)
は
死
(
し
)
するとも、
093
汝
(
なんぢ
)
の
霊
(
れい
)
は
再
(
ふたた
)
び
悪鬼
(
あくき
)
となりて
天下
(
てんか
)
に
横行
(
わうかう
)
し、
094
妖邪
(
えうじや
)
を
行
(
おこな
)
ふは
目
(
め
)
に
見
(
み
)
るが
如
(
ごと
)
し。
095
吾
(
われ
)
は
汝
(
なんぢ
)
の
生命
(
いのち
)
を
奪
(
うば
)
ひて
以
(
もつ
)
て
事
(
こと
)
足
(
た
)
れりとなすものでない。
096
汝
(
なんぢ
)
が
霊魂中
(
れいこんちう
)
に
割拠
(
かつきよ
)
せる
悪霊
(
あくれい
)
を
悔
(
く
)
い
改
(
あらた
)
めしめ、
097
或
(
あるひ
)
は
退去
(
たいきよ
)
せしめ、
098
改過
(
かいくわ
)
遷善
(
せんぜん
)
の
実
(
じつ
)
を
挙
(
あ
)
げさせむと
欲
(
ほつ
)
するのみ。
099
三五教
(
あななひけう
)
は
汝
(
なんぢ
)
らの
主張
(
しゆちやう
)
の
如
(
ごと
)
き、
100
武器
(
ぶき
)
を
以
(
もつ
)
て
人
(
ひと
)
を
征服
(
せいふく
)
し、
101
或
(
あるひ
)
は
他国
(
たこく
)
を
略奪
(
りやくだつ
)
するものにあらず。
102
至仁
(
しじん
)
至愛
(
しあい
)
の
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
、
103
よつく
耳
(
みみ
)
を
洗
(
あら
)
つて
聴聞
(
ちやうもん
)
せよ』
104
日の出神(に化けた大国彦)
『オー、
105
小賢
(
こざか
)
しき
汝
(
なんぢ
)
の
言葉
(
ことば
)
、
106
聞
(
き
)
く
耳
(
みみ
)
持
(
も
)
たぬ。
107
斯
(
か
)
くなる
以上
(
いじやう
)
は
最早
(
もはや
)
吾
(
われ
)
等
(
ら
)
の
運
(
うん
)
の
尽
(
つき
)
、
108
鍛
(
きた
)
へに
鍛
(
きた
)
へし
都牟刈
(
つむがりの
)
太刀
(
たち
)
を
味
(
あぢ
)
はつて
見
(
み
)
よ』
109
と
言
(
い
)
ふより
早
(
はや
)
く、
110
太刀
(
たち
)
をズラリと
引
(
ひ
)
き
抜
(
ぬ
)
いて、
111
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
、
112
固山彦
(
かたやまひこ
)
に
斬
(
き
)
つて
掛
(
か
)
かるその
勢
(
いきほひ
)
凄
(
すさま
)
じく、
113
恰
(
あたか
)
も
阿修羅
(
あしゆら
)
王
(
わう
)
の
荒
(
あ
)
れ
狂
(
くる
)
ふが
如
(
ごと
)
し。
114
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
、
115
固山彦
(
かたやまひこ
)
は
剣
(
つるぎ
)
の
下
(
した
)
をくぐり、
116
一目散
(
いちもくさん
)
に
表門
(
おもてもん
)
指
(
さ
)
して
逃
(
に
)
げ
出
(
いだ
)
す。
117
日出
(
ひのでの
)
神
(
かみ
)
(に化けた大国彦)
『ヤア、
118
卑怯
(
ひけふ
)
未練
(
みれん
)
な
奴
(
やつ
)
。
119
ナゼ
尋常
(
じんじやう
)
に
勝負
(
しようぶ
)
を
致
(
いた
)
さぬか』
120
固山彦
(
かたやまひこ
)
『エヽ
残念
(
ざんねん
)
だ、
121
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
さま、
122
如何
(
いか
)
に
三五教
(
あななひけう
)
の
玉
(
たま
)
の
教
(
をしへ
)
なればとて、
123
斯
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
き
侮辱
(
ぶじよく
)
を
受
(
う
)
けながら、
124
旗
(
はた
)
を
捲
(
ま
)
き
鋒
(
ほこ
)
を
納
(
をさ
)
めて、
125
この
場
(
ば
)
を
逃
(
に
)
ぐるは
卑怯
(
ひけふ
)
と
見
(
み
)
られませう。
126
変事
(
へんじ
)
に
際
(
さい
)
して
剣
(
つるぎ
)
の
威徳
(
ゐとく
)
を
現
(
あら
)
はすは、
127
神
(
かみ
)
も
許
(
ゆる
)
し
給
(
たま
)
ふべし』
128
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
『イヤイヤ、
129
至仁
(
しじん
)
至愛
(
しあい
)
の
神
(
かみ
)
の
心
(
こころ
)
を
以
(
もつ
)
て
吾
(
われ
)
は
此
(
この
)
場
(
ば
)
を
逃
(
に
)
ぐるなり。
130
竜虎
(
りうこ
)
共
(
とも
)
に
戦
(
たたか
)
はば
勢
(
いきほ
)
ひ
互
(
たがひ
)
に
全
(
まつた
)
からず。
131
彼
(
かれ
)
を
斬
(
き
)
るか、
132
斬
(
き
)
らるるか、
133
彼
(
かれ
)
も
神
(
かみ
)
の
子
(
こ
)
、
134
吾
(
われ
)
も
神
(
かみ
)
の
子
(
こ
)
、
135
神
(
かみ
)
の
御子
(
みこ
)
同士
(
どうし
)
傷
(
きず
)
つけ
合
(
あ
)
ふは、
136
親神
(
おやがみ
)
に
対
(
たい
)
して
申訳
(
まをしわけ
)
なし。
137
暫
(
しばら
)
く
彼
(
かれ
)
が
鋭鋒
(
えいほう
)
を
避
(
さ
)
けて、
138
更
(
あらた
)
めて
時
(
とき
)
を
窺
(
うかが
)
ひ
悔
(
く
)
い
改
(
あらた
)
めしめむと
思
(
おも
)
ふ』
139
固山彦
『エヽ
三五教
(
あななひけう
)
は
誠
(
まこと
)
に
以
(
もつ
)
て
行
(
や
)
り
難
(
にく
)
い
教
(
をしへ
)
であるワイ』
140
と
地団駄
(
ぢだんだ
)
踏
(
ふ
)
んで
口惜
(
くや
)
しがる。
141
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
は
見
(
み
)
え
隠
(
がく
)
れに
後
(
あと
)
をつけ
来
(
きた
)
り、
142
この
話
(
はなし
)
を
聞
(
き
)
いて
大
(
おほ
)
いに
驚
(
おどろ
)
き、
143
思
(
おも
)
はず、
144
日の出神(に化けた大国彦)
『ワツ』
145
とばかり
泣
(
な
)
き
伏
(
ふ
)
しにける。
146
固山彦
(
かたやまひこ
)
『ヤア、
147
なんだか
暗
(
くら
)
がりに
泣声
(
なきごゑ
)
が
致
(
いた
)
しますよ』
148
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
『さうだなア、
149
何
(
なん
)
だか
妙
(
めう
)
な
泣声
(
なきごゑ
)
だ、
150
よく
似
(
に
)
た
声
(
こゑ
)
だ。
151
ヤア、
152
暗中
(
あんちう
)
に
泣
(
な
)
き
叫
(
さけ
)
ぶは
何人
(
なんびと
)
なるぞ』
153
暗中
(
あんちう
)
より、
154
日の出神(に化けた大国彦)
『
私
(
わたくし
)
は
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
と
名
(
な
)
を
偽
(
いつは
)
つた
大国彦
(
おほくにひこ
)
であります。
155
只今
(
ただいま
)
貴方
(
あなた
)
の
仁慈
(
じんじ
)
に
富
(
と
)
める
御
(
お
)
言葉
(
ことば
)
を
聞
(
き
)
いて、
156
感涙
(
かんるい
)
に
咽
(
むせ
)
び
思
(
おも
)
はず
泣
(
な
)
きました。
157
私
(
わたくし
)
は
今迄
(
いままで
)
の
悪
(
あく
)
を
翻然
(
ほんぜん
)
として
悔
(
く
)
い
改
(
あらた
)
めます。
158
どうぞ
御
(
お
)
赦
(
ゆる
)
し
下
(
くだ
)
さいませ』
159
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
『ホー、
160
満足
(
まんぞく
)
々々
(
まんぞく
)
、
161
斯
(
か
)
くならば
敵
(
てき
)
も
味方
(
みかた
)
もない、
162
全
(
まつた
)
く
兄弟
(
きやうだい
)
だ。
163
兄弟
(
きやうだい
)
を
助
(
たす
)
けたさに、
164
吾
(
われ
)
は
宣伝使
(
せんでんし
)
となつて
苦労
(
くらう
)
を
致
(
いた
)
して
居
(
ゐ
)
るのだ。
165
貴方
(
あなた
)
の
知
(
し
)
らるる
如
(
ごと
)
く、
166
吾
(
われ
)
も
旧
(
もと
)
は
大逆
(
たいぎやく
)
無道
(
ぶだう
)
の
醜国別
(
しこくにわけ
)
、
167
神
(
かみ
)
の
仁慈
(
じんじ
)
の
雨
(
あめ
)
に
浴
(
よく
)
し、
168
悔
(
く
)
い
改
(
あらた
)
めて
宣伝使
(
せんでんし
)
となりし
者
(
もの
)
、
169
かくなる
上
(
うへ
)
は
貴下
(
きか
)
と
共
(
とも
)
に
是
(
これ
)
より
常世城
(
とこよじやう
)
に
進
(
すす
)
み、
170
常世
(
とこよ
)
神王
(
しんわう
)
広国別
(
ひろくにわけ
)
を
神
(
かみ
)
の
教
(
をしへ
)
に
帰順
(
きじゆん
)
せしめむ』
171
固山彦
(
かたやまひこ
)
『ヤア、
172
流石
(
さすが
)
は
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
さま、
173
本当
(
ほんたう
)
に
感心
(
かんしん
)
だ。
174
実地
(
じつち
)
の
良
(
よ
)
い
教訓
(
けうくん
)
を
受
(
う
)
けました。
175
サアサア
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
……ではない
大国彦
(
おほくにひこ
)
殿
(
どの
)
、
176
これより
常世城
(
とこよじやう
)
に
向
(
むか
)
ひませう』
177
嚇
(
おど
)
し
上手
(
じやうず
)
の
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
、
178
固
(
かた
)
い
一方
(
いつぱう
)
の
固山彦
(
かたやまひこ
)
、
179
目
(
め
)
から
火
(
ひ
)
の
出
(
で
)
る
日
(
ひ
)
の
出神
(
でのかみ
)
の、
180
意外
(
いぐわい
)
な
憂目
(
うきめ
)
に
大国彦
(
おほくにひこ
)
、
181
今
(
いま
)
は
全
(
まつた
)
く
悔
(
く
)
い
改
(
あらた
)
めて、
182
心
(
こころ
)
の
駒
(
こま
)
も
勇
(
いさ
)
み
立
(
た
)
ち、
183
三
(
さん
)
人
(
にん
)
一同
(
いちどう
)
に
連銭
(
れんぜん
)
葦毛
(
あしげ
)
の
駿馬
(
しゆんめ
)
に
跨
(
またが
)
り、
184
魔神
(
まがみ
)
の
猛
(
たけ
)
る
常世
(
とこよ
)
の
暗
(
やみ
)
の
常世城
(
とこよじやう
)
、
185
群
(
むら
)
がる
敵
(
てき
)
を
物
(
もの
)
ともせず、
186
神
(
かみ
)
を
力
(
ちから
)
に
信仰
(
しんかう
)
を
杖
(
つゑ
)
に、
187
生死
(
せいし
)
の
境
(
さかひ
)
を
超越
(
てうゑつ
)
し、
188
勇気
(
ゆうき
)
を
鼓
(
こ
)
して
敵
(
てき
)
の
群衆
(
ぐんしう
)
に
向
(
むか
)
つて、
189
馬
(
うま
)
の
蹄
(
ひづめ
)
の
音
(
おと
)
勇
(
いさ
)
ましく、
190
ハイヨーハイヨと
鞭
(
むち
)
を
加
(
くは
)
へて
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
191
竹山彦
(
たけやまひこ
)
その
他
(
た
)
の
部将
(
ぶしやう
)
は、
192
この
光景
(
くわうけい
)
を
見
(
み
)
て、
193
抵抗
(
ていかう
)
するかと
思
(
おも
)
ひの
外
(
ほか
)
、
194
馬上
(
ばじやう
)
より、
195
竹山彦
『ヤア、
196
大国彦
(
おほくにひこの
)
命
(
みこと
)
、
197
ウローウロー、
198
目出度
(
めでた
)
しめでたし、
199
一
(
いち
)
時
(
じ
)
も
早
(
はや
)
く
奥殿
(
おくでん
)
に
入
(
い
)
らせられよ』
200
と
案
(
あん
)
に
相違
(
さうゐ
)
の
挨拶
(
あいさつ
)
ぶり、
201
大国彦
(
おほくにひこ
)
は
怪訝
(
けげん
)
の
念
(
ねん
)
に
駆
(
か
)
られながら、
202
淤縢山津見
(
おどやまづみ
)
、
203
固山彦
(
かたやまひこ
)
と
共
(
とも
)
に、
204
馬上
(
ばじやう
)
ゆたかに
奥
(
おく
)
へ
奥
(
おく
)
へと
進
(
すす
)
み
行
(
ゆ
)
く。
205
今
(
いま
)
まで
雲霞
(
うんか
)
の
如
(
ごと
)
き
大軍
(
たいぐん
)
と
見
(
み
)
えしは、
206
夢
(
ゆめ
)
幻
(
まぼろし
)
と
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せて
跡形
(
あとかた
)
もなく、
207
奥殿
(
おくでん
)
には
嚠喨
(
りうりやう
)
たる
音楽
(
おんがく
)
響
(
ひび
)
き
渡
(
わた
)
り
爽快
(
さうくわい
)
身
(
み
)
に
迫
(
せま
)
る。
208
一同
(
いちどう
)
は
奥
(
おく
)
の
間
(
ま
)
に
端坐
(
たんざ
)
し、
209
天津
(
あまつ
)
祝詞
(
のりと
)
を
奏上
(
そうじやう
)
し
宣伝歌
(
せんでんか
)
を
唱
(
とな
)
ふ。
210
是
(
これ
)
よりロッキー
城
(
じやう
)
も
常世
(
とこよ
)
の
城
(
しろ
)
も、
211
十曜
(
とえう
)
の
神旗
(
しんき
)
翻
(
ひるが
)
へり、
212
神徳
(
しんとく
)
を
讃美
(
さんび
)
する
声
(
こゑ
)
天地
(
てんち
)
に
響
(
ひび
)
き、
213
常世国
(
とこよのくに
)
は
一
(
いち
)
時
(
じ
)
天国
(
てんごく
)
楽園
(
らくゑん
)
と
化
(
くわ
)
したるぞ
目出度
(
めでた
)
けれ。
214
(
大正一一・二・二五
旧一・二九
松村真澄
録)
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